図1に示されるように、本例の表示パネル20は、複数の電子放出素子1が設けられたカソード基板であるリアプレート2と、該リアプレート2の電子放出素子1からの電子線の照射を受ける側のアノード基板であるフェースプレート3とを、隙間をあけて対向させ、両者の周囲を枠部材4で囲んで封止し、内部を減圧空間としたパネル状をなしている。
リアプレート2に設けられた電子放出素子は、X方向配線(上配線)5と、Y方向配線(下配線)6とによってマトリクス状に接続されており、X方向配線5に接続された引き出し端子Dx1〜Dxnと、Y方向配線6に接続された引き出し端子Dy1〜Dymを介してマトリクス駆動されるものとなっている。また、フェースプレート3の内面側には、電子放出素子1からの電子線の照射を受けて発光し、画像を表示するための蛍光体7と、電子放出素子1からの電子を加速するための電極であるメタルバック8が設けられている。Hvは、メタルバック8に高電圧を供給するための高圧端子である。
図2に示される第1の例においては、作成したリアプレート2に枠部材4とスペーサ9を接合した後、別途作成したフェースプレート3と貼り合わせて封着する前にSE検出工程とSE源除去工程を行うものとなっている。
さらに図1および図2を参照して説明すると、リアプレート2となる基板に電子放出素子1、X方向配線、Y方向配線および引き出し端子Dx1〜Dxn,Dy1〜Dymを形成した後、別途作成した枠部材4とスペーサ9を接合する。そして、枠部材4とスペーサ9を接合したリアプレート2に対してSE検出工程とSE源除去工程を施す。
上記リアプレート2とは別に、蛍光体7、メタルバックおよび高圧端子Hvを形成したフェースプレート3を作成し、このフェースプレート3と前記リアプレート2を、排気されて減圧雰囲気になったチャンバー内に搬入し、両者を向き合わせて貼り合わせ、封着してパネル状の密閉容器とすることで、図1に示される表示パネル20を得ることができる。
図3において、10はアノード電極、11は移動装置、12は高圧電源、13は電流計、14は制御装置で、2は図1に示されるリアプレートで、電子放出素子1、X方向配線5、Y方向配線6、引き出し端子Dx1〜Dxn,Dy1〜Dym、枠部材4およびスペーサ9は省略してある。
アノード電極10は、高圧電源12によって高圧が印加されると共に、移動装置11によって、リアプレート2内面との対向位置(図1におけるX,Y方向の位置)およびリアプレート2とアノード電極10との間隔(図1におけるZ方向位置)が可変になっている。電流計13は、SEによりリアプレート2を介して流れるエミッション電流を測定するもので、リアプレート2上の導電性部材に対して共通に接続されている。制御装置14は、電流計13からの電流値を読み取り、移動装置11によるアノード電極10の位置および高圧電源12の電圧値を制御するものとなっている。
まず、移動装置11によって、リアプレート2とアノード電極10間の間隔Dを所定の間隔D1とし、高圧電源12によって、アノード電極10に加える電圧VとしてV1を印加する。その際、電界強度E1=V1/D1は画像表示時に印加する値と同等またはそれ以下とする。
次に、移動装置11により、D1の間隔を保ちながら、リアプレート2内を走査し、その際に電流計13によって面内の各位置での電流値と、アノード電極10のX,Y座標値とを読み取る。このとき、アノード電極10がリアプレート2に接合されたスペーサ9(図1参照)などに触れないように走査を行う。
次に、移動装置11により、リアプレート2とアノード電極10間の間隔をD1からD2(D1>D2)に変更し、かつ高圧電源12によって印加する電圧値を、電界強度が一定となるようなV2(V2=V1×D2/D1)として、再度リアプレート2面内を走査し、面内の各位置での電流値と、アノード電極10のX,Y座標値とを読み取る。同様の走査を間隔D3、D4(D2>D3、D3>D4)についても行う。
この例では、電流が局所的に高くなる部分(SE電流分布点)はa〜eまでの計5箇所で、SE電流分布点a〜eはSEにより生じるものである。図示しないが、同様な電流分布点が間隔D2〜D4についても求められる。
次に、各電流分布点a〜eにおける電流が極大値となるピークをSE極大電流点として、SE極大電流点を検出した時のリアプレート2内におけるアノード電極10のX,Y座標を求め、図5に示すように、間隔Dを横軸に、X座標(またはY座標)を縦軸にしたプロットを作成する。図5は、例えば図4におけるSE電流分布点aのSE極大電流点について、間隔D1でのX座標値X1、間隔D2でのX座標値X2、間隔D3でのX座標値X3、間隔D3でのX座標値X3をそれぞれプロットしたものである。
ところで、図5に示されるように、各間隔D1〜D4でSE極大電流点のX座標値が異なる理由は、図1に示されるような画像表示装置を初めとする電子線装置は、通常、リアプレート2上に、主に配線に起因する凹凸が存在し、その電界により、SEの電子軌道が曲げられてしまうことにある。
図6において、15、16は、リアプレート2に形成されたSE源(不図示)から、所定の電圧が印加されたフェースプレート3方向に発生するエミッションの電子軌道である。図示されるように、リアプレート2上の凸部33の頂点にSE源が位置するような場合は偏進量が少なく(電子軌道16)、凸部33の脇(側部)に位置するような場合は、偏進量が大きい(電子軌道15)。また、SE源が突起である場合には、その傾き方向に電子軌道が偏進する。
上記のように電子線装置におけるSEの軌道は偏進することがあるが、図5に示すように、前記SE極大電流点のプロットを外挿することにより、間隔D=0の時のX方向の位置Xaを求めることができる。このXaの座標が、SE電流分布点aの発生原因となっている、リアプレート2上でのSE源のX座標となる。同様にして、間隔D=0の時のY方向の位置を求めることで、SE電流分布点aの発生原因となっているSE源のY座標を求めることができる。
以上の方法により、リアプレート2面内でのSE源の位置を正確に導出することができる。特に、間隔Dをできるだけ小さくしたり、測定点を増やすことで、より正確な位置導出が可能となる。
アノード電極10は、図7に示すように、電圧を印加し、かつ信号を検出する信号検出部17と、電圧を印加する補助電極18に分けて構成しても良い。この場合、図8に示すように、電流計13は高圧電源12と信号検出部17の間に接続される。補助電極18は、電圧を印加する機能を有し、信号検出部17周辺の電界を平行電界にして、検出を容易にする。補助電極18のリアプレート2と対向する面の面積は、信号検出部17の3〜5倍程度が好ましい。信号検出部17は電圧を印加しない構成としても良い。
なお、本説明ではSE検出工程における検出信号として電流値を示したが、光ディテクターを用いて測定した光強度値を用いることもできる。また、電流値や光強度を検出する信号検出器をマルチチャンネル化して、電流分布や光強度分布を大面積で測定することも可能である。また、電流値と光強度を同時に測定する方法でも良い。
光強度値を測定する場合のアノード電極10及び信号検出部17は、図7の構成の他、ITO等の透明電極を施したアノード電極の後方に信号検出部17を設けて、アノード電極10越しに光強度を検出するという方法も考えられる。
以上の説明においては、リアプレート2にスペーサ9および枠部材4を取り付ける構成を示したが、フェースプレート3にスペーサ9および枠部材4を取り付ける構成でも良い。この場合は、リアプレート2上をアノード電極10で走査する場合に、スペーサ2を避ける必要がなくなり、走査がしやすくなる。
次に、高圧電源12で所定の電圧Vrを印加する。印加する電圧Vrの極性は、SE源側を正極性とすることが好ましい。このとき、設定されたDrおよびVrで決まる電界強度Er=Vr/Drは、前述のSE検出工程の電界強度E1より高く、SEを除去するのに十分な値が設定される。電圧を印加する手法としては、一定の電圧を長時間与えてエミッションの劣化を図る方法、電圧を徐々に上げて放電させる方法が考えられる。さらに、ヒーターやレーザー照射などで熱エネルギーを与えて除去効果を高める方法も考えられる。いずれの場合も電流計13によって電流値をモニターしながらSE除去の判定を行う。また、熱エネルギーのみでSE源そのものを破壊する方法も考えられる。
図9に、本発明の製造方法で図1に示される表示パネルを製造する場合の製造手順の第2の例を示す。図9に示した工程では、図1に示されるフェースプレート3とリアプレート2を貼り合わせた後にSE検出工程およびSE除去工程を施している点が前記の第1の例とは異なる。
図9の例においては、電子放出素子1、X方向配線5、Y方向配線6、引き出し端子Dx1〜Dxn,Dy1〜Dymを含むリアプレート2を作成した後、リアプレート2上に枠部材4およびスペーサ9を所定の個所に接合する。そして、別途作成したフェースプレート3を減圧雰囲気下でリアプレート2と貼り合わせ接合して密閉容器を形成する。その後、次に述べるSE検出およびSE源除去処理を施して表示パネル20を完成させる。
表示パネル20は、フェースプレート3面が発光検出器19と向き合うように設置される。発光検出器19は、SEの光強度を検出するために設けられている。発光検出器19は、単一の受光器でも良いし、マルチチャンネル化して光強度分布を検出する構成でも良い。移動装置11は、発光検出器19の位置を移動させるために設けられている。制御装置14は、移動装置11による発光検出器19の位置および高圧電源12から印加する電圧Vの値を制御するために設けられている。
高圧電源12によって、フェースプレート3の高圧端子Hvから所定の電圧V11を印加すると、SEが発生している場合、SEによる発光点を生じる。移動装置11で発光検出器19をリアプレート2の面内位置で移動させて、光強度分布を測定し、光強度が局所的に大きくなる部分(SE発光強度分布点)における光強度が極大値となるピークをSE極大発光点として、そのX,Y座標を取得する。
以上の工程により、図11に示すように、電圧Vと座標位置(X軸方向)の関係が得られる。これらのプロットを外挿することにより、電圧Vが無限大となる位置Xgが求まる。この座標がリアプレート2でのX軸方向でのSE源の位置となる。同様に、Y軸方向についてもSE源の位置を求め、これによってリアプレート面内でのSE源の位置を導出することができる。なお、プロット軸としては、電圧ではなく電界を用いても良い。
SEの電子軌道は、電圧が高くなる(電界強度が大きくなる)と、リアプレート2上の凹凸の影響が小さくなり、その偏進量が減少する。本例ではそれを利用して、封着後にSE源の位置を導出する。
なお、前述した封着前のリアプレート2に施すSE検出工程において、リアプレート2とアノード電極10間の間隔Dを一定とし、アノード電極10に印加する電圧VをV11〜V14に変化させて、流分布点における電流が極大値となるピークであるSE極大電流点を検出した時のリアプレート2内におけるアノード電極10のX,Y座標を求め、これに基づいて電圧Vが無限大となる位置を求めることでもSE源の位置を検出することができる。
表示パネル20は、リアプレート2の面がレーザー発生器21と向き合うように設置される。レーザー発生器21は局所的に表示パネル20を加熱するために設けられている。移動装置11は、レーザー発生器21の位置を制御するために設けられている。制御装置14は、レーザー発生器21、移動装置14、高圧電源12を制御するために設けられている。
まず、SE検出工程によって特定されたSE源の位置に移動装置14でレーザー発生器21を移動する。次に、高圧電源12によって所定の電圧Vsを印加する。その後、レーザー発生器21で局所的な加熱を行う。加熱することによって、SE源である陰極側の温度が上昇し、低い放電しきい(電界)値でダメージを抑制しながら放電除去することができる(この原理については、T.Utsumi,J.Appl.Phys.,Vol.38,No.7,P.2989(1967)を参照)。
以上のように、封着後でもSE源の位置に限定して所定のエネルギーを付与してSE除去工程を施すことができ、これによって、SE源の位置以外での不要な放電を防ぎつつ、SEを除去することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述する。
[参考例1]
本参考例は、封着前にSE検出を行い、SE除去を局所コンディショニングで行うものである。
(表示パネルの概要)
製造対象とする画像表示装置の表示パネル20は、既に説明した図1に示されるようなものであり、内部は10-5Pa程度の真空に保持されている。
(リアプレートの作成)
図1に示されるように、リアプレート2には、複数の電子放出素子1が配置されている。この電子放出素子1は、冷陰極素子で、その配列の代表的な方式には、図13に示すように、一対の素子電極22,23のそれぞれをX方向配線5とY方向配線6で接続した単純マトリクス配置が挙げられる。
電子放出素子1はn×m個形成されている。このn×m個の電子放出素子1は、n本のX方向配線5とm本のY方向配線6により単純マトリクス配線されている。本参考例では、n=1024×3、m=768である。
電子放出素子1の材料や形状あるいは製法に制限はない。電子放出素子1としては、例えば表面伝導型電子放出素子、FE型電子放出素子、はMIM型電子放出素子などの冷陰極素子を用いることができる。
X方向配線5とY方向配線6の交差する部分には絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。X方向配線5の線幅は50μm、Y方向配線6の線幅は250μmである。X方向配線5およびY方向配線6は、Agフォトペーストインキを用い、スクリーン印刷した後、乾燥させてから所定のパターンに露光し現像、480℃前後で焼成して作成した。また、絶縁層は、PbOを主成分とする感光性ガラスペーストを用い、スクリーン印刷した後、露光−現像を行うことを3回繰り返した後、480℃前後で焼成することで形成した。
X方向配線5、Y方向配線6、絶縁層(不図示)、および電子放出素子1の素子電極22,23と、各素子電極22,23間に跨る導電性薄膜24を形成した後、X方向配線5およびY方向配線6を介して各素子電極22,23間に給電して通電フォーミング処理(後述)と通電活性化処理(後述)を行うことにより、複数の電子放出素子1が単純マトリクス配線されたマルチ電子ビーム源を製造した。25は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、26は通電活性化処理により形成した炭素膜である。
(電子放出素子の作成)
次に、電子放出素子1の一例として、表面伝導型電子放出素子の素子構成と製法について説明する。
図14は、表面伝導型電子放出素子の構成を説明するための模式図で、(a)は平面図、(b)破断面図である。図中、22と23は素子電極、24は導電性薄膜、25は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、26は通電活性化処理により形成した膜、27は、リアプレート2のベースとなる基板である。
基板27にはPD−200(旭硝子社製)を用い、素子電極22,23にはPt薄膜を用いた。素子電極22,23の厚さdは500Å、電極間隔Lは10μmとした。
導電性薄膜24の主要材料としてPdもしくはPdOを用い、膜厚は約100Å、幅Wは100μmとした。
図15の(a)〜(d)は、表面伝導型電子放出素子の製造工程の説明図で、各部材の符号は図14と同一である。
〔1〕まず、図15(a)に示すように、基板27上に素子電極22,23を形成する。形成にあたっては、あらかじめ基板27に蒸着法やスパッタ法などで素子電極22,23の材料を堆積させる。その後、堆積した電極材料を、フォトリソグラフィー・エッチング技術等を用いてパターニングし、(a)に示した一対の素子電極22,23を形成する。
〔2〕次に、同図(b)に示すように、導電性薄膜24形成する。形成にあたっては、まず前記(a)の処理を施した基板27に有機金属溶液をディッピング法などで塗布してから乾燥し、加熱焼成処理して微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・エッチングにより所定の形状にパターニングする。ここで、有機金属溶液とは、導電性薄膜24に用いる微粒子の材料を主要元素とする有機金属化合物で、本例では主要元素としてPdを用いた。
〔3〕上記導電性薄膜24を形成した後、同図(c)に示すように、フォーミング用電源28から素子電極22素子電極23の間に適宜の電圧を印加し、通電フォーミングを行って、導電性薄膜24に電子放出部25を形成した。通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作られた導電性薄膜24に通電を行って、その一部を適宜に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うのに好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜で作られた導電性薄膜24のうち電子放出を行うのに好適な構造に変化した部分(すなわち電子放出部25)においては、導電性薄膜24に適当な亀裂が形成されている。
〔4〕次に、同図(d)に示すように、活性化用電源29を使用して素子電極22と素子電極23の間に適宜の電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性の改善を行う。通電活性化処理とは、前記通電フォーミング処理により形成された電子放出部25に適宜の条件で通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積せしめる処理のことである(図においては、炭素もしくは炭素化合物よりなる堆積物を炭素膜26として模式的に示した)。具体的には、10-3乃至10-4Paの範囲内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは炭素化合物を堆積させる。
以上のようにして、図14に示す表面伝導型電子放出素子を製造した。
次に、前述した「リアプレートの作成」の欄で説明したリアプレート2について、図1に示されるように、X方向配線5とY方向配線6の交差部にスペーサ9を配置した。スペーサ9は、リアプレート2のベースとなる基板27と同様のPD−200を材料とした円筒形の支柱であり、直径100μm、長さ2.0mmである。スペーサ9は、接合部材であるフリットガラスによってリアプレート2に接着し、400〜500℃で10分程度加熱して固定した。
また、枠部材4もフリットガラスよってリアプレート2に接着し、400〜500℃で10分程度加熱して固定した。なお、スペーサ9は、後述するIn膜による封着時に厚み規定部材として機能するよう、枠部材4より僅かに高くなるように設定されている。
以上の工程により、リアプレート2へのスペーサ9および枠部材4の取り付けを完了した。
(フェースプレートの作成)
次に、フェースプレート3について説明する。
フェースプレート3のベースとなる基板30には、PD−200を用い、その下面(内面)には、図1に示されるように、蛍光膜7を形成した。本例においては、カラー画像表示を行うため、蛍光膜7の部分には、RTの分野で用いられる赤、緑、青の3原色の蛍光体を塗り分けた。図16に示すような各色蛍光体が列方向(Y方向)に延びるストライプ形状を採用し、ブラックマトリクスと呼ばれる黒色導電体29が、各色蛍光体(R,G,B)間およびY方向の各画素間をも分離するように配置されている。蛍光膜7および黒色導電体29はそれぞれ蛍光体ペースト、黒色顔料ペーストを用い、それらをスクリーン印刷し、450℃前後で4時間ベーキングすることで基板30に密着させた。
次に、反射層としてメタルバック8を設けた。メタルバック8は、蛍光膜7が発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させ、負イオンの衝突から蛍光膜7を保護すると共に、電子ビーム加速電圧を印加するための電極や、蛍光膜7を励起した電子の導電路として作用する。メタルバック8は蛍光膜7表面を平滑化処理し、その上にAlを500nmの厚さで真空蒸着し、ベーキングを行うことにより形成した。
以上のようにして、フェースプレート3を作成した。
以上のように作成されたリアプレート2およびフェースプレート3を1×10-5Pa程度に減圧された真空チャンバー内にそれぞれ投入し、300℃で5時間ベークを行った。
(SE検出工程)
次に、真空チャンバー内において、SE検出工程を実施した。SE検出は、図3に示される装置を用いて行った。
アノード電極10は、リアプレート2と対向する面に位置させる。リアプレート2と対向するアノード電極10の面の大きさは、測定する電流分布の分解能と測定時間を決める。本参考例では、アノード電極10のリアプレート2と対向する面の大きさを約0.01mm2とした。実用上は、1〜0.0001mm2が好ましい。また、サイズの異なるアノード電極10を複数有し、それらを切り替える構成とすることもできる。
移動装置11は、ピエゾ駆動とステッピングモーター駆動を併用した可動装置となっており、リアプレート2の面内移動に関しては、3μm程度の分解能および位置再現性を有する。また、リアプレート2との間隔は、5μm程度の分解能および位置再現性を有し、0〜10mm程度の範囲で制御することができる。
高圧電源12は、市販の高圧電源を使用し、最大20KVまで印加できる。
電流計13は、市販のピコアンメーターを使用し、10fA程度の電流分解能を有する。
電流計13は、リアプレート2の配線に接続されている。リアプレート2は配線を総て共通にしており、リアプレート2に流れる総ての電流を測定できる。
制御装置14は、移動装置11の座標値、高圧電源12の電圧値、電流計13の電流値をモニターし、制御する機能を有する。
本参考例では、まず、高圧電源12の電圧を10KV、リアプレート2とアノード電極10の間隔D1を2mmに設定し、移動装置11でアノード電極10を移動させてリアプレート2の面内走査を行い、電流分布を測定した。なお、リアプレート2に配線などによる凹凸が存在するが、間隔D1は、それらの凹凸のうちで最も高い部分(スペーサを除く)からアノード電極10までの距離を示している。また、リアプレート2にはスペーサ9が配置されているが、スペーサ9にアノード電極10が接触しないよう、その周辺は走査を行わない。
図17に、間隔D1で得られたリアプレート2面内の電流値分布図(等高線図)を示す。
図17において、SE電流分布点はf〜iの計4箇所である。これらはいずれもSEによるエミッション電流を示している。
図18に、SE電流分布点fの周辺の極大電流点を含む面のX軸方向の電流分布の断面図を示す。
次に、移動装置11により、D1からD2=0.5mmに間隔を変更し、かつ電圧値V2=2.5KVとし、アノード電極10で再度リアプレート2面内を走査して電流分布を求めた。同様の操作を間隔D3=0.3mm(印加電圧V3=1.5KV)、D4=0.1(印加電圧V4=0.5KV)についても行った。間隔D1におけるSE極大電流点と同様にして、D2〜D4についてもSE極大電流点が求まる。
図19に、SE電流分布点fにおけるSE極大電流点のX,Y座標をプロットした図を示す。図19において、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)、は間隔D1〜D4における、SE電流分布点fのSE極大電流点の座標を示す。このように、間隔Dに依存してSE極大電流点のX,Y座標が移動する。
図19におけるX方向座標成分を取り出し、間隔Dとの関係を示した図を図20に示す。これらを結んだ線分(放物線)は、SEの電子軌道を示している。この線分を外挿し、D=0mmの位置がSE源のX軸方向の座標Xfとなる。同様にY軸方向についてもSE源の位置を導出し、SE極大電流点の発生位置として、その座標を求める。
同様の操作をSE電流分布点g〜iの各SE極大電流点についても行った。なお、SE発生位置(SE源の位置)を導出する処理は制御装置14で行われる。
同様の工程を経た別のリアプレート2を真空チャンバーから取り出し、確認のために走査型電子顕微鏡(SEM)にて、SE発生位置を観察したところ、それぞれのSE発生位置周辺にエミッション源と思われる異物が確認された。本発明人の検討によると、推定されたSE発生位置に対して、エミッション源の異物との距離は20μm以内であった。
(SE除去工程)
次に、SE除去工程について説明する。
本参考例では、図3の装置を除去工程に用いた。
検出されたSE源の位置に移動装置11でアノード電極10を移動し、間隔Dr=0.2mmに設定する。次に、高圧電源12で電圧を徐々に上げていく。
図21に、高圧電源12の電圧値Vと電流計13の電流値A(対数表示)の関係を示す。電圧増加に伴って、電流計13で測定されるSE電流の増加が見られる。しかし、所定の電圧(V1≒2.3KV)で放電が発生し、SE電流値が観察されなくなった。このことは、画像表示時相当の電界強度(V2=1KV程度)ではSE電流値が観察されず、SEが除去されたことを意味する。同様に、SE発生位置b〜dについても除去処理を行った。
(封着および表示)
次に、リアプレート2とフェースプレート3を封着した。
枠部材4にIn膜を塗布した後、対向させたフェースプレート3とリアプレート2の間に一定の間隔を設けた状態で、両者を保持し、Inの融点近傍まで温度を上げる。位置決め装置により、フェースプレート3とリアプレート2との間隔を徐々に縮めていき、両者の接合、すなわち封着して表示パネル20とした。
なお、封着した表示パネル20内の真空度を維持するために、パネル内の所定の位置にゲッター膜(不図示)を形成した。ゲッター膜は、Baを主成分とするゲッター材料をヒーターもしくは高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜であり、該ゲッター膜の吸着作用により表示パネル20内は1×10-4乃至1×10-6Paの真空度に維持される。
なお、本参考例ではスペーサ9、枠部材4をリアプレート2に固定してからSE検出、除去工程を行ったが、これらの工程の後にスペーサ9、枠部材4を固定するという方法でも良い。
このようにして作成された表示パネル20に、走査回路、制御回路、変調回路、直流電圧源などからなる駆動回路を接続し、本発明の電子線装置の一つである画像表示装置が製造された。
図1において、引き出し端子Dx1〜Dxn,Dy1〜Dymを通じて電子放出素子1に15Vの電位差を与えると、各電子放出素子1から電子が放出された。それと同時にメタルバック8に高圧端子Hvを通じて10KVの高圧を印加すると、上記放出された電子が加速し、フェースプレート3の内面に衝突し、蛍光膜7をなす各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示された。なお、電子放出素子1である表面伝導型電子放出素子への印加電圧は10〜20V程度、メタルバック8と電子放出素子1との距離は0.1mmから8mm程度、メタルバック8電子放出素子1間の電圧は1KVから20KV程度が好ましい。
画像表示の結果、SEによる不要な輝点がなく、かつ放電ダメージのない優れた表示特性を有する画像表示装置(電子線装置)であることを確認した。
本参考例のように、アノード電極10(の容量)を十分に小さくすることで、放電時の電荷量を抑え、放電ダメージをSE発生位置のみに限定させる効果が得られる。40インチ相当の表示パネル20の場合、アノードの容量は数nFであるのに対して、本例のアノード電極は数〜数10pFに抑えられている。
なお、本参考例の別の例として、高圧電源12とアノード電極10の間に電流制限抵抗(1K〜1GΩ)を挿入することで、より放電ダメージを抑制する構成としても良い。また、高圧電源12からの電圧値を負にして同様の除去工程を行っても良い。この場合は、SE発生源がアノードとなり、電子線衝撃によるダメージで、SE除去を促進させることができる。
[実施例1]
本実施例は、封着して表示パネル20を組み立てた後にSE検出工程を行い、SE除去工程をレーザー加熱によって行うものである。
(表示パネルの概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成)
本実施例において、表示パネル20概要、リアプレート2およびフェースプレート3の作成に関しては参考例1と同様であるので説明を省略する。
(封着)
リアプレート2とフェースプレート3の封着は、枠部材4にIn膜を塗布した後、対向させたフェースプレート3とリアプレート2の間に一定の間隔を設けた状態で、両者を保持し、Inの融点近傍まで温度を上げ、位置決め装置により、フェースプレート3とリアプレート2との間隔を徐々に縮めて当接させることで行った。フェースプレート3とリアプレート2の間隔は2.0mmとした。
(SE検出工程)
SE検出は図10の装置を用いて行った。
発光検出器19は、市販の冷却CCD(16ビット階調)を用いた。移動装置11は参考例1と同じ構造で、発光検出器19の位置を制御するために設けられている。制御装置14は、移動装置11の座標値、高圧電源12の電圧値、発光検出器19の光強度出力値をモニターし、制御する機能を有する。
本実施例では、高圧電源12の電圧V1を15KVに設定し、移動装置11で発光検出器19を面内走査し、リアプレート2面内の光強度分布を測定した。
図22にSE光強度分布図(等高線図、高さは階調数)を示す。図22において、光強度が局所的に高奇なる場所(SE発光強度分布点)はj〜lの計3箇所である。各SE発光強度分布点において、光強度が極大値となる点をSE極大発光点とし、その座標を求める。
次に、高圧電源の電圧V2=10KV、V3=5KVに設定して、前述と同様の測定を行った。
SE発光強度分布点jにおける、電圧V1〜V3でのSE極大発光点のX,Y座標をプロットした結果を図23に示す。
次に、図23におけるX方向座標成分を取り出し、印加電圧Vとの関係を示した図を図24に示す。この線分(放物線)を外挿したV=∞の位置がSE源のX軸方向の位置Xjとなる。同様にY軸方向についてもSE源の位置を導出し、SE発光強度分布点jについてのSE源のY軸方向位置として、そのX,Y座標を求めた。同様の処理をSE発光強度分布点k,lのSE極大発光点についても行った。なお、SE源の位置を導出する一連の処理は制御装置14で行われる。
同様の工程を経た別の表示パネル20を分解し、確認のために走査型電子顕微鏡(SEM)にて、リアプレート2のSE源の位置を観察したところ、それぞれ推定されたSE源の位置付近にエミッション源と思われる異物が確認された。本発明人の検討によると、推定されたSE源の位置に対して、エミッション源の異物との距離は50μm以内であった。
(SE除去工程)
次に、SE除去工程について説明する。
SEの除去は、図12に示される装置を用いて行った。
図12において、21はレーザー発生器、11は移動装置、12は高圧電源、20は表示パネル、14は制御装置である。
表示パネル20はリアプレート2側がレーザー発生器21を向くように設置される。レーザー発生器21としては、CO2レーザーを用いた。CO2レーザーは、連続、パルス発振可能であり、光学系によってφ70μm程度に集光されている。制御装置14は、レーザー発生器21の出力、移動装置11の座標、高圧電源12の電圧値をモニター、制御する機能を有する。
まず、高圧電源12の電圧を7KVに設定する。
次に、検出されたSE源の位置に移動装置11でレーザー発生器21を移動し、その位置にレーザーを照射し、局所的な加熱を行う。昇温レートは、レーザー照射するSE源部分の材料、厚みなどで異なるため、レーザー出力の設定は慎重に調整する必要がある。あらかじめリアプレート2の各部材の出力と昇温テーブルを作成しておき、各部材が融点に達しない出力を最大値としておく。そして、レーザー出力を徐々に上げていくと、SEによる発光が不安定になり、やがて放電が発生した。他の2箇所のSE源の位置についても同様の処理を行った。
本実施例では、加熱用レーザーとしてCO2レーザーを用いたが、本発明においてはYAG、UVレーザーなど、様々なレーザーが使用可能である。
(表示)
このようにして作成された表示パネル20に、走査回路、制御回路、変調回路、直流電圧源などからなる駆動回路を接続し、本発明に係る電子線装置を製造した。
参考例1と同様に、図1に示される引き出し端子Dx1〜Dxm,Dy1〜Dynに15Vの電位差を与え、高圧端子Hvに10KVの高圧を印加すると画像が表示された。画像表示の結果、従来見られるようなSEによる不要な輝点のなく、かつ放電ダメージのない優れた表示特性を有する電子線装置であることが確認された。
[参考例2]
本参考例は、封着前にSE検出工程を行い、SE除去工程をエミッションを継続させて劣化させることにより行うものである。
(表示パネルの概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成、SE検出工程)
本参考例において、表示パネル20の概要、リアプレート2およびフェースプレート3の作成、SE検出に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。
(SE除去工程)
SE除去工程について説明する。
本例では、放電させずにエミッションを持続させてエミッションを低下させることで、SE源を除去した。
本参考例のSE除去には、図3に示される装置を用いた。
まず、検出されたSE源の位置に移動装置11でアノード電極10を移動し、間隔Dr=0.2mmに設定する。次に、電流計13の電流値の値に応じて高圧電源12の電圧Vrを設定する。Vrは、SEが放電する電圧より低く、かつ最も大きな電圧が好ましい。一般的には、SEの放電しきい電流値は5〜50μA程度なので、電流値が1〜3μAとなるような電圧Vrとする。また、放電直前にはSEの電流値の不安定性が見られるため、それを元に電圧Vrを求める方法もある。本参考例では、Vr=1.5KVとなり、画像表示に必要な電界よりやや大きい電界であった。
(封着および表示)
封着、周辺装置取り付けおよび表示方法に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。
画像表示の結果、SEによる不要な輝点のない優れた表示特性を有する電子線装置が得られた。
以上のように、本参考例では、所定の電圧を印加し続けることでエミッションの劣化を促してSE源を除去するので、例えば作成した電子放出素子1の近傍にSE源が存在し、放電させると電子放出素子1にダメージが入る恐れがあるような場合に特に有効である。但し、エミッションを劣化させるために数時間から十数時間が必要であるため、処理に時間がかかる。
[参考例3]
本参考例は、封着前にSE検出工程を行い、SE除去工程を、加熱を併用して行うものである。
(表示パネルの概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成、SE検出工程)
本参考例において、表示パネル20の概要、リアプレート2およびフェースプレート3の作成、SE検出に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。
(SE除去工程)
次に、SE除去工程について説明する。
本例のSE除去は、参考例1に対して、SE源の位置を加熱しながら除去する点が異なる。
本参考例のSE除去工程を図25を用いて説明する。
図25において、10はアノード電極、11は移動装置、12は高圧電源、13は電流計、14は制御装置、2はリアプレート、31はヒーターである。
図示されるように、図3の装置と同装置を用いて行うものであるが、ヒーター31を併用するものとなっている。このヒーター31は、シースヒーターが内蔵された面ヒーター(ホットプレート)であり、リアプレート2に密着させて加熱を行うものとなっている。
まず、ヒーター31でリアプレート2を400℃程度に加熱した後、検出してあるSE源の位置に、移動装置11でアノード電極10を移動し、間隔Dr=0.2mmに設定する。次に、高圧電源12で電圧を徐々に上げていく。所定の電圧(本参考例では2.0KV)で放電が発生し、電流計13で電流値が観察されなくなった。同様の処理を全てのSE源について行った。
(封着および表示)
封着、周辺装置取り付けおよび表示方法に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。画像表示の結果、従来見られるようなSEによる不要な輝点のない優れた表示特性を有する電子線装置が得られた。
以上のように、本参考例では、電圧印加に加え、SE源を加熱することで、より低い電圧値で放電させることができ、参考例1に比べ、放電ダメージがより小さくなる。但し、リアプレート2を加熱する時間が付加されることや、アノード電極10などに耐熱性を持たせるなどが必要となる。
[参考例4]
本参考例は、封着前にSE検出工程を行い、SE除去工程を、ガスの導入を併用して行うものである。
(表示パネルの概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成、SE検出工程)
本参考例において、表示パネル20の概要、リアプレート2およびフェースプレート3作成、SE検出工程に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。
(SE除去工程)
次に、SE除去工程について説明する。
本例では、ガスを導入しながらSEを除去する点が参考例1と異なる。
本参考例のSE除去工程を図26を用いて説明する。
図26において、10はアノード電極、11は移動装置、12は高圧電源、13は電流計、14は制御装置、32はガス噴出口である。
図示されるように、図3の装置と近似した装置を用いて行うものであるが、アノード電極10の付近にガス噴出口32が設けられた装置を用いるものとなっている。ガス噴出口32は、ガス導入管(不図示)より導入されたガスを所定の圧力でアノード電極10付近に導入する機能を有する。制御装置14は、図3の制御装置14で説明した機能に加え、ガス噴出口32から導入されるガスの圧力および位置を制御する機能を有する。移動装置14は、図3の移動装置14で説明した機能に加え、アノード電極10と共にガス噴出口32の位置を移動する機能を有する。
検出したSE源の位置5に、移動装置11でアノード電極10とガス噴出口32を移動し、アノード電極10とリアプレート2(図3参照)の間隔Dを0.5mmに設定する。
次に、ガス噴出口32から所定の圧力でガスを導入する。ガスとしては、N2、O2、CO2、H2,Arなど、SE源のエミッション作用を低下させまたは放電しきい値を低下させることができる様々なガスが使用可能である。Arガスなどの不活性ガスを使用する場合には、スパッタ効果により、SE源にダメージを与えて劣化させることができる。O2、CO2ガスなどは酸化層を形成することでエミッション抑制を可能にする。N2、H2ガスなどは放電しきい値を低下させ、かつ放電ダメージを抑制する効果が得られる。本参考例ではN2を使用した。ガス圧力はアノード電極10付近で0.1Pa程度になるように調整した。
高圧電源12の電圧を徐々に上昇させると、0.5KV程度で放電が発生し、電流計13で電流値が観察されなくなった。同様の処理を全てのSE源について行った。
(封着および表示)
封着、周辺装置取り付けおよび表示方法に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。画像表示の結果、従来見られるようなSEによる不要な輝点のない優れた表示特性を有する電子線装置が得られた。
以上のように、本参考例では、電圧印加に加え、SE源付近にガスを導入することで、より低い電圧で放電させることができ、参考例1に比べ、放電ダメージがより小さくなる。一方、導入したガスを再び排気する工程や、SE源除去のための装置にガス導入系を付加することが必要となる。
[参考例5]
本参考例は、封着前にSE検出工程を行い、SE除去工程を物理的に行うものである。
(表示パネルの概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成、SE検出工程)
本参考例において、表示パネル概要、リアプレートおよびフェースプレートの作成、SE検出工程に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。
(SE除去工程)
次に、SE除去工程について説明する。
本例では、SE源を局所的に加熱して、SE源を変形、除去する点が参考例1と異なる。
本参考例のSE除去は、図27の装置を用いて行うことができる。
レーザー発生器21は、UVレーザー(YAG4次高調波、波長266nm)であり、光学系によりφ15μm程度に集光されており、所定の場所に照射することで、その場所の部材を加熱して、変形または蒸発することができる。移動装置11は、レーザー発生器19の位置を移動する機能を有する。
検出されたSE源の位置に、移動装置11でレーザー発生器21を移動する。
次に、レーザー発生器21より生じるレーザー光をSE源の位置に照射する。SE源部分の材料、厚みなどにより、レーザー光出力に対する部材変形の程度が異なるため、レーザー出力設定は慎重に調整する必要がある。あらかじめリアプレート2の各部材のレーザー出力と昇温テーブルを作成しておき、SE源部分のリアプレート2などの部材が融点に達しない条件に出力値を設定する。同様の処理を全てのSE源について行った。
(封着および表示)
封着、周辺装置取り付けおよび表示方法に関しては、参考例1と同様であるので説明を省略する。画像表示の結果、SEによる不要な輝点のない優れた表示特性を有する電子線装置が得られた。
以上のように、本参考例では、レーザー照射によりSE源を局所的に加熱して、変形させることができるので、放電ダメージを与えることなく、SE除去が可能となる。一方、SE源が、リアプレート2などの部材より融点がはるかに高い(配線であるAgの上にSE源としてタングステン片が有る場合)などの場合は、リアプレート2を変形させてSE発生源を間接的に変形させるなどの除去手法に工夫が必要である。