JP4574298B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

Description

本発明は動力伝達装置に関し、主として自動車の変速機に関する。

従来、自動車用変速機の歯車機構の潤滑構造としては、複数の歯車を同軸上に備えた歯車機構をハウジングに収納し、該ハウジングの下部をオイル溜まりとして、該歯車の歯先で該オイル溜まり内のオイル（潤滑油）を掻き上げて、歯車機構の噛合部の潤滑を行うものが一般に提供されている。
そして、この場合、歯車の形状に応じて多段状の段部を形成したバッフルプレートを該ハウジングの底部に設けて、オイル溜まりを実質上底上げすることによって、オイル量を増大させることなくオイルレベルを高めることを可能としている（特許文献１参照）。

実用新案登録第２５９０９０７号公報（第２−５頁、第１図）

しかしながら上記従来の構造では、ハウジングの底部に設けられたバッフルプレートは、オイルレベルを高めて潤滑油の量を削減するという一つの機能しか発揮していないという問題があった。そのため、潤滑油の量を削減して軽量化を図る機能のほかに更なる機能が追加されて、複数の機能を有する構造が要求されていた。

本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、潤滑油が収容されたケース２と、該ケース２に軸支された入力軸Ｓ１，Ｓ２と、前記ケース２に軸支されるとともに前記入力軸Ｓ１，Ｓ２に平行に配置されたカウンタ軸ＳＣと、一端が前記ケース２に軸支されるとともに前記入力軸Ｓ１，Ｓ２および前記カウンタ軸ＳＣに平行に配置されたリバースアイドラ軸ＳＲと、前記入力軸に配設された第１ギヤＧ１，Ｇ２，Ｇ３，Ｇ４，Ｇ５，Ｇ６，ＧＲと、前記カウンタ軸ＳＣに配設されると共に前記第１ギヤＧ１，Ｇ２，Ｇ３，Ｇ４，Ｇ５，Ｇ６，ＧＲに噛合う第２ギヤＧ１’，Ｇ２’，Ｇ３’，Ｇ４’，Ｇ５’，Ｇ６’，ＧＲ’と、前記ケース２内に突出して前記リバースアイドラ軸ＳＲの他端を支持する突出支持部５と、を備える動力伝達装置１であって、前記突出支持部５は、中空に形成されて前記潤滑油の比重に比して小さな比重に設定されており、少なくとも一部が前記潤滑油に浸漬するとともに少なくとも前記第１ギヤＧ１，Ｇ２，Ｇ３，Ｇ４，Ｇ５，Ｇ６，ＧＲの周面形状に沿った形状に形成されてなる動力伝達装置１を提供するものである。
前記突出支持部５は、前記第１ギヤＧ１，Ｇ２，Ｇ３，Ｇ４，Ｇ５，Ｇ６，ＧＲのうち前記潤滑油に浸漬している部分の外周面の形状に沿った形状とされていることが望ましい。
更に、前記突出支持部５は、全部が前記潤滑油に浸漬していることが望ましい。
また更に、前記ケース２は、メインケース３と該メインケース３の側部に取付けられるサイドケース４とを有しており、前記突出支持部５は、前記サイドケース４に設けられていることが望ましい。

本発明の動力伝達装置１では、突出支持部５の少なくとも一部がケース２内の潤滑油に浸漬しており、該突出支持部５の比重が該潤滑油の比重に比して小さく設定されているため、オイルレベルＬの高さを変えることなく、該浸漬している突出支持部５の容積分だけ潤滑油の量を削減することができる。
また、ケース２の内側に向けて突出する突出支持部５によってリバースアイドラ軸ＳＲを支持しているため、該突出量の分だけ該リバースアイドラ軸ＳＲの長さを短くすることができ、該リバースアイドラ軸ＳＲの剛性を高めることができる。
従って本発明では、潤滑油の量を削減して装置１の軽量化を図ることができるとともに、リバースアイドラ軸ＳＲの剛性を高めて装置１の耐久性を向上させることが可能となる。

本発明を図１〜図３に示す一実施例によって説明する。本実施例では、動力伝達装置が自動車用のツインクラッチ式の自動シフト式手動変速機１である場合を例示する。
自動シフト式手動変速機１は、アクチュエーター（図示せず）によって摺動可能かつ回動可能とされているアクチュエーターロッド（図示せず）が設けられており、シフトレバー（図示せず）の操作に基づいて該アクチュエーターが作動し、該アクチュエーターロッドに取り付けられているシフター（図示せず）によって、回転部材である駆動歯車Ｇ（図２〜図３において、Ｇ１〜Ｇ６およびＧＲをまとめてＧとする。）が被駆動歯車Ｇ’（図３において、Ｇ１’〜Ｇ６’をまとめてＧ’とする。）と噛合して変速段が達成されるように構成されている。

ツインクラッチ式の変速機１は、変速機１のケース２と、軸部材である第一入力軸Ｓ１および第二入力軸Ｓ２と、該第二入力軸Ｓ２の回転を反転可能なリバース用アイドラ歯車ＧＩが担持されているリバースアイドラ軸ＳＲと、第一入力軸Ｓ１または第二入力軸Ｓ２からの動力を伝達するとともにディファレンシャルギア（図示せず）を介して駆動輪（図示せず）に動力を出力するカウンタ軸ＳＣとから構成されている。

該変速機１のケース２は、メインケース３と該メインケース３の側端部に取り付けられるサイドケース４とを有しており、該サイドケース４の中央側部下寄りには、内側に向けて突出している突出支持部５が設けられている。

第一入力軸Ｓ１の一端部には中空部が設けられており、第一入力軸Ｓ１の他端部は、ボールベアリング６を介してサイドケース４の中央部に軸支されている。また、該第一入力軸Ｓ１の中空部には第二入力軸Ｓ２の他端部が内挿支持されており、該第二入力軸Ｓ２の一端部は、ボールベアリング７を介してメインケース３の中央部に軸支されている。そして、該第一入力軸Ｓ１および該第二入力軸Ｓ２の他端は、図示しないクラッチ等（ダンパーを含む）を介してエンジンによって駆動される駆動軸に連結されている。

該第一入力軸Ｓ１には、他端側（ボールベアリング６側）から順に２速用駆動歯車Ｇ２、４速用駆動歯車Ｇ４、６速用駆動歯車Ｇ６が固定的に担持されており、該第二入力軸Ｓ２には、一端側（ボールベアリング７側）から順に１速用駆動歯車Ｇ１、リバース用駆動歯車ＧＲ、５速用駆動歯車Ｇ５、３速用駆動歯車Ｇ３が固定的に担持されている。
このように、比較的低回転で大トルクの出力を伝動する２速用駆動歯車Ｇ２や１速用駆動歯車Ｇ１、リバース用駆動歯車ＧＲ等をボールベアリング６，７の近傍に配置することで、第一入力軸Ｓ１や第二入力軸Ｓ２への負荷を低減することができ、強度上有利なものとすることができる。

カウンタ軸ＳＣの一端部はローラーベアリング８を介してメインケース３の中央部に軸支されており、カウンタ軸ＳＣの他端部はローラーベアリング９を介してサイドケース４の中央部に軸支されている。
そして、該カウンタ軸ＳＣには、一端側（ボールベアリング８側）から順に１速用被駆動歯車Ｇ１’、リバース用被駆動歯車ＧＲ’、５速用被駆動歯車Ｇ５’、３速用被駆動歯車Ｇ３’、６速用被駆動歯車Ｇ６’、４速用被駆動歯車Ｇ４’、２速用被駆動歯車Ｇ２’、出力歯車ＧＯが回転自在に担持されている。
また、該カウンタ軸ＳＣには、２−４速用同期装置Ｃ１、６速用同期装置Ｃ２、３速用同期装置Ｃ３、１−５速用同期装置Ｃ４が固定的に担持されており、これらの同期装置Ｃ１〜Ｃ４によって、駆動歯車Ｇ１〜Ｇ６と被駆動歯車Ｇ１’〜Ｇ６’とはそれぞれ選択的に噛合可能とされている。

リバースアイドラ軸ＳＲの一端部はメインケース３の中央側部下寄りに固定的に支持されており、リバースアイドラ軸ＳＲの他端部はサイドケース４の突出支持部５に固定的に支持されている。
そして、該リバースアイドラ軸ＳＲには、リバース用アイドラ歯車ＧＩが回転自在に担持されている。
本実施例では、該リバースアイドラ軸ＳＲは、４速用駆動歯車Ｇ４や６速用駆動歯車Ｇ６の近傍に配置されているので、４速用駆動歯車Ｇ４や６速用駆動歯車Ｇ６との干渉を避けるために縮径されている。

また、変速機１のケース２内には潤滑油（図示せず）が入れられており、該ケース２の下部はオイル溜まりとされている。図２において破線で示すように、オイルレベルＬの高さは該ケース２の略中央の高さ位置に設定されており、該突出支持部５の全部が該潤滑油に浸漬している。
本実施例では、該突出支持部５は中空に形成されており、該突出支持部５の比重は、該潤滑油の比重に比して小さく設定されている。

更に、該突出支持部５の第一入力軸Ｓ１側の部分の形状は、該第一入力軸Ｓ１に担持されている２速用駆動歯車Ｇ２およびカウンタ軸ＳＣに担持されている２速用被駆動歯車Ｇ２’のうち潤滑油に浸漬している部分の一部（突出支持部５側の部分）の外周面の円弧形状に沿った凹面形状とされている（図１参照）。

上記のような変速機１において潤滑を行う場合、該第一入力軸Ｓ１に担持されている２速用駆動歯車Ｇ２、４速用駆動歯車Ｇ４、６速用駆動歯車Ｇ６や、該第二入力軸Ｓ２に担持されている１速用駆動歯車Ｇ１、３速用駆動歯車Ｇ３、５速用駆動歯車Ｇ５、リバース用駆動歯車ＧＲが回転すると、該駆動歯車Ｇ１〜Ｇ６、ＧＲの回転に伴って該駆動歯車Ｇ１〜Ｇ６、ＧＲの歯先で潤滑油が掻き上げられて、噛合部の潤滑が行われる。

上記のように、突出支持部５の少なくとも一部が（本実施例では、突出支持部５の全部が）ケース２内の潤滑油に浸漬しており、該突出支持部５の比重が該潤滑油の比重に比して小さく設定されているため、オイルレベルＬの高さを変えることなく、該浸漬している突出支持部５の容積分だけ潤滑油の量を削減することができる。本実施例では、該突出支持部５を中空とすることによって、該突出支持部５の比重を該潤滑油の比重に比して容易に小さくすることができる。
また、ケース２の内側に向けて突出する突出支持部５によって軸部材であるリバースアイドラシャフトＳＲを支持しているため、該突出量の分だけ該リバースアイドラシャフトＳＲの長さを短くすることができ、該リバースアイドラシャフトＳＲの剛性を高めることができる。
従って、上記の変速機１では、突出支持部５の容積分だけ潤滑油の量を削減して変速機１の軽量化を図ることができるとともに、リバースアイドラシャフトＳＲの剛性を高めて変速機１の耐久性を向上させることが可能となる。

その上、突出支持部５の少なくとも一部（突出支持部５の第一入力軸Ｓ１側の部分）が、回転部材の少なくとも一部（２速用駆動歯車Ｇ２の突出支持部５側の部分）の形状に沿った形状とされているため、該突出支持部５が該２速用駆動歯車Ｇ２に干渉することがなく、該突出支持部５の容積を効率よく大きくすることができる。
また、突出支持部５の少なくとも一部（突出支持部５の第一入力軸Ｓ１側の部分）が、回転部材である２速用駆動歯車Ｇ２のうち該潤滑油に浸漬している部分の一部（突出支持部５側の部分）の形状に沿った形状とされているため、該突出支持部５の形状に沿って該２速用駆動歯車Ｇ２が回転し、該２速用駆動歯車Ｇ２の歯先で潤滑油を効率よく掻き上げることができる。
更に、本実施例では、突出支持部５の全部が潤滑油に浸漬しているので、突出部材の一部のみが潤滑油に浸漬している場合に比して、大幅にかつ効率よく潤滑油の量を削減することができ、動力伝達装置である変速機１の更なる軽量化を図ることができる。
また更に、変速機１のケース２がメインケース３と該メインケース３の側部に取付けられるサイドケース４とからなり、突出支持部５が該サイドケース４に設けられているため、突出支持部５の形状が複雑な場合であっても、メインケース３に突出支持部５を形成する場合に比して、突出支持部５を形成する加工を容易に行うことができる。

以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
例えば、本実施例では、動力伝達装置１がツインクラッチ式の自動シフト式手動変速機であるものとして説明したが、本実施例以外、動力伝達装置１は通常の手動変速機や自動変速機、トランスファーであってもよい。

本発明は、軽量化を図ることができるとともに耐久性を向上させることができる動力伝達装置として、産業上利用することが出来る。

変速機の断面斜視図である。 変速機の説明側断面図である。 変速機の説明平断面図である。

１ 動力伝達装置
２ ケース
３ メインケース
４ サイドケース
５ 突出支持部
Ｇ 回転部材
Ｓ 軸部材

Claims (4)

1. 潤滑油が収容されたケースと、
   該ケースに軸支された入力軸と、
   前記ケースに軸支されるとともに前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、
   一端が前記ケースに軸支されるとともに前記入力軸および前記カウンタ軸に平行に配置されたリバースアイドラ軸と、
   前記入力軸に配設された第１ギヤと、
   前記カウンタ軸に配設されると共に前記第１ギヤに噛合う第２ギヤと、
   前記ケース内に突出して前記リバースアイドラ軸の他端を支持する突出支持部と、
   を備える動力伝達装置であって、
   前記突出支持部は、中空に形成されて前記潤滑油の比重に比して小さな比重に設定されており、少なくとも一部が前記潤滑油に浸漬するとともに少なくとも前記第１ギヤの周面形状に沿った形状に形成されてなる
   ことを特徴とする動力伝達装置。
2. 前記突出支持部は、前記第１ギヤのうち前記潤滑油に浸漬している部分の外周面の形状に沿った形状に形成されてなる
   請求項１に記載の動力伝達装置。
3. 前記突出支持部は、全部が前記潤滑油に浸漬している
   請求項１または請求項２に記載の動力伝達装置。
4. 前記ケースは、メインケースと該メインケースの側部に取付けられるサイドケースとを有しており、
   前記突出支持部は、前記サイドケースに設けられている
   請求項１〜請求項３のいずれかに記載の動力伝達装置。

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