JP4573494B2 - バンパー補強材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に車体のポール衝突時の強度に優れたエネルギー吸収部材(以下、アルミニウムを単にAlと言う)、特にバンパー補強材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体には、バンパー補強材やドアビーム等の車体用エネルギー吸収部材が設けられている。この内、例えば、車体の前端(フロント)および後端(リア)に取り付けられているバンパーの内部には、強度補強部材としてのバンパー補強材(バンパーリインフォースメント、或いはバンパーレインフォースなどとも言う)が設けられている。
【0003】
このバンパー補強材は、周知の通り、バンパーステイなどの車体連結用部材を介して、フロントサイドメンバやリヤサイドメンバ等、車体前後方向の骨格部材の車体フレーム(車体メンバ)に連結、固定されて、バンパーと車体間で、車体用エネルギー吸収部材を構成している。また、前記ドアビームなどはブラケットやフレームなどの車体連結用部材を介して、車体としてのドアフレームに連結、固定されて、車体用エネルギー吸収部材を構成している。
【0004】
今、バンパー補強材の場合を例にすると、車体長手方向に延在するサイドメンバの前部或いは後部などの車体に、断面形状が略矩形の中空構造のバンパーステイーなどを介して、バンパー補強材を略車幅方向(略水平方向)に固定、延在させる。そして、このような構造とすることによって、車体の前方や後方からの、あるいは前方や後方への衝突に対し、バンパー補強材が横方向(略水平方向)に圧壊して衝突エネルギーを吸収する。
【0005】
したがって、これら車体用エネルギー吸収部材としてのバンパー補強材には、車体の衝突により加わった外力のエネルギー(衝突エネルギー)を、自らの曲げ変形や断面のつぶれ(圧壊)により吸収し、車体を保護する性能が求められている。
【0006】
近年、これらバンパー補強材やバンパーステイ、或いはフロントサイドメンバやリヤサイドメンバ等に、軽量化のために、従来使用されていた鋼材に代わって、5000系、6000系、7000系等の高強度Al合金製の押出形材(長手方向に同一断面形状を有する形材)が使用され始めている。
【0007】
Al合金は、鋼などに比して、同じ重量の場合には前記エネルギー吸収性能に優れる。また、長手方向に同一断面形状を有するAl合金製押出形材は、剛性に優れた断面形状が略矩形の中空構造を、効率的に、かつ大量に製造することが可能である。このため、車体用エネルギー吸収部材として、バンパー補強材やバンパーステイ、あるいはドアビームなどに汎用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような断面形状が略矩形の中空構造を有し、Al合金製押出形材からなる車体用エネルギー吸収部材において、例えば自動車のリアバンパー補強材に用いた場合、車体のポール衝突時に、車体用エネルギー吸収部材に対する略水平方向からの荷重(車両の衝突時の)に対し、曲げ強度が不足する場合があるという問題を生じる。
【0009】
従来のAl合金製押出形材からなるバンパー補強材の場合を例にとって、図6(a)の断面図(図6(b)のA−A線一部断面図で、車体の側面方向から見た図)、図6(b)の平面図で、具体例を説明する。図6(a)において、従来のAl合金製押出形材からなるバンパー補強材101は、前壁部104と後壁部105とを2つの側壁(ウエブ)103a、103bにより接続し、中リブ107を設けた断面形状が日形の矩形形状を有している。この他、断面形状は、中リブを設けない口形、中リブを設けて補強した目形、田形等の場合もある。
【0010】
このバンパー補強材101は、図6(b)に示すように、サイドメンバ108a、108bの先端に、バンパーステイ102a、102bなどを介して取り付けられる。そして、図6(c)の車体リア部分の車体方向の断面図に示すように、自動車車体Aに対し略水平方向で、車幅方向に対し平行に延在するように、バンパー106と自動車車体Aとの間に固定されている。この際、バンパー補強材101とバンパーステイ102とは、溶接あるいはボルト等の適宜の締結具107等により互いに固定される。また、バンパーステイ102は、断面形状が略矩形状の中空構造のAl合金製押出形材や鋼製などからなる。
【0011】
このようなバンパー補強材を自動車車体のリアに用い、自動車がポール衝突した場合の状況を、図7により説明する。今、図7(a)に示す様な、車体が比較的低速でバック走行して、消火栓、電柱、門柱などと衝突するポール衝突時には、リアのバンパー補強材101に対し、略水平方向から荷重が加わる。この場合、荷重が大きいと、バンパー補強材101の強度が不足し、図7(b)に示す様に、バンパー補強材101が中央部より水平方向に折れ曲がり、車体に損傷を与えることが生じる。この現象は、荷重の大きさによっては、バンパー補強材の断面形状が日形だけではなく、断面形状が口形、あるいは目形、田形等の中リブを設けてより補強したタイプのバンパー補強材においても生じる可能性がある。
【0012】
これに対し、前記ポール衝突時の折れ曲がりを防止するためには、バンパー補強材の曲げ強度を大きくする必要がある。そして、このための手段としては、バンパー補強材を構成するAl合金自体を高強度化する、或いはウエブ103a、103bや前壁部104、後壁部105の厚みを厚くする、更にはバンパー補強材の幅を大きくする等の方法が考えられる。
【0013】
しかし、Al合金材を高強度化した場合に、押出等の形材製造や曲げ等の形材の成形加工が難しくなるとともに、割れが生じやすく、却って、衝突のエネルギー吸収量を小さくすることにもつながる。また、単にAl合金材の厚みを厚くしたり、バンパー補強材の幅を大きくした場合、重量が増加して、Al合金による軽量化の利点が損なわれる。更に、単にAl合金材の厚みを厚くした場合、バンパー補強材の圧壊時の最大荷重が、サイドメンバーの許容荷重以上に高くなり、却って、フロントサイドメンバ等の車体メンバ類に損傷を与える可能性も高い。
【0014】
また、バンパー補強材などの車体用エネルギー吸収部材の、特に、折れ曲がりやすい長手方向の中央部分に、鋼製など別の補強材を、衝突面側の前面に取り付けられることも実際には行われている。
【0015】
更に、特開平6−286536号公報などには、バンパーリインフォースメントの前部の長手方向中央部に、Al合金製中空形材で形成された補強体(例えば、断面形状は前面が半円形で後面が平面であり、内部に2本の支柱乃至リブを設けて補強している)を、接着剤により接着固定した補強構造が開示されている。
【0016】
しかし、前記鋼製の補強材の場合、充分な補強効果を得るためには、補強材取り付けによる重量増加が大きく、エネルギー吸収部材へのAl合金採用による軽量化の利点が損なわれる。
【0017】
また、前記特開平6−286536号公報のAl合金製中空形材で形成された補強体の場合、前記鋼製の補強材に比べて、軽量化は図れる。しかし、やはり、補強体を設けない場合に比べて、閉断面からなる中空形材補強体による重量増加が大きい。
【0018】
そして、同公報では、補強体の補強により、Al合金製中空形材製バンパーリインフォースメント本体の薄肉化による軽量化が図れるとしている。しかし、補強体が閉断面からなる中空構造であり、また更に内リブ(支柱)による補強もされているために、補強体の圧壊強度はかなり高くなる。このため、バンパーリインフォースメント本体の前記薄肉化を行った場合、前記ポール衝突などの際に、補強体の方よりも、バンパーリインフォースメント本体の方が却って先に圧壊してしまう、という可能性も生じる。
【0019】
更に、補強体の形状が閉断面からなる中空形材であるため、補強体のバンパーリインフォースメント本体へのボルト等による機械的な接合や溶接による接合が実質的に不可能である。このため、公報に記載されている通り、前記接着剤による固定方式とならざるを得ない。そして、この接着剤による固定方式は、機械的な接合や溶接による接合に比して、車体構造材としては著しく信頼性に欠けることとなる。
【0020】
このため、特に、リアバンパー補強材などの車体用エネルギー吸収部材には、Al合金による軽量化の利点をできるだけ損なわずに、また、車体の衝突時におけるエネルギー吸収量も低下させずに、曲げ強度を高め、前記ポール衝突時にも、前記図7(b)に示した様な、車体用エネルギー吸収部材が中央部より水平方向に折れ曲がったり座屈しないことが求められている。
【0021】
したがって、本発明の目的は、軽量化やエネルギー吸収性などの利点を損なわずに、Al合金製車体用エネルギー吸収部材を高強度化して、前記ポール衝突時にも、折れ曲がって車体を損傷することがない、車体用エネルギー吸収部材、特にバンパー補強材を提供しようとするものである。また、本発明の別の目的は、軽衝突の場合に、バンパー補強材の本体部分の圧壊を防止して、バンパー補強材全体の交換をしなくても済むようにすることである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバンパー補強材は、アルミニウム合金製の中空形材と、この中空形材の長手方向中央部の衝突面側の前面に取り付けられ、前記中空形材の中央部の曲げ強度を補強するアルミニウム合金製の補強形材とからなり、前記補強形材は、略垂直な衝突壁と該衝突壁に略直交する3本以上の横リブを有し前記中空形材の衝突面側が開放した開断面の形材からなり、全ての横リブの先端に前記中空形材の衝突面側の前面に面接触する縦フランジが設けられ、前記中央部への略水平方向からの荷重に対し、前記中空形材より先に横圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであることを特徴とし、ポール衝突性に優れる。荷重が小さい軽衝突の場合、補強形材のみの圧壊で衝突エネルギーを吸収し、中空形材を圧壊させなくて済む。
【0023】
【発明の実施の形態】
上記バンパー補強材の具体的な形態としては、例えば、中空形材と補強形材が共にアルミニウム合金製の押出形材からなり、前記補強形材が、前記中空形材の衝突面と略平行な衝突壁と、この衝突壁を補強する互いに平行な複数の横リブと、この横リブ先端に設けられるとともに補強形材の外側に張り出した縦フランジとから構成される断面略ハット型の開断面を有し、前記縦フランジにおいて断面矩形の前記中空形材の衝突面と接続されている。
【0024】
この場合、まず、▲1▼中空形材と補強形材がアルミニウム合金製の押出形材よりなるために、全体としての軽量化が図れ、補強形材の分の重量増加も少なくて済む。また、特に重要なことは、▲2▼補強形材が開断面を有し、4辺を有する閉断面の矩形中空型ではないので、補強形材による重量の増加を最小限に抑制しつつ、高強度化することができる。更に、▲3▼横リブ先端に設けた縦フランジにおいて、中空形材の衝突面と接続されるために、取り付けが容易である等々の利点を有する。
【0025】
前記中空形材は、中リブを設けて補強した日形、目形、田形等から選択される断面形状を有することができる。この場合、口形断面に比して、中空形材の外形状(高さや幅)を大きくすることができる。
【0026】
更に、前記補強形材は、その横リブが、略水平方向からの荷重に対して、形材断面の内側に屈曲するように構成することができる。具体的には、例えば横リブと縦フランジとの交差部を円弧状に接続する。これにより、補強形材の横リブが各々断面外側に屈曲する場合に比して、変形に伴う荷重の低下が抑えられ、衝突エネルギーの吸収量がより大きくなる効果を有する。
この結果、略水平方向からの荷重が比較的小さい軽衝突の場合には、中空形材の方を圧壊させずに、補強形材のみの圧壊で済ますことも可能となる。これは、前記衝突後の修理を補強形材のみの取り替えで済すことができる利点となる。
【0027】
前記バンパー補強材を構成する中空形材及び補強形材は、Al合金であれば、AA乃至JIS5000系、6000系、7000系から選択することができる。これらのAl合金は成形性に優れかつ高強度であるので、押出加工等の製造がしやすく、衝突エネルギー吸収性能も高めることができる。
【0028】
本発明に係るバンパー補強材は、車体のリアバンパーやフロントバンパーの補強材として用いられて好適である。
【0029】
以下、本発明に係るバンパー補強材について、図面を用いて説明する。
【0030】
本発明に係るバンパー補強部材の一実施態様を、図1の断面図(図2のA−A線断面図で、車体側面方向から見た図)および図2の平面図で示す。これら各図の通り、バンパー補強部材は、基本的に、車体に対し略水平方向に延在し、主たる車体用エネルギー吸収部材であるAl合金製の断面矩形の中空形材1と、この中空形材の衝突面4a側の前面に取り付けられたAl合金製補強形材2とから構成される。
【0031】
中空形材1は、衝突面4aを構成する前壁部4と後壁部5とを、2つの側壁(ウエブ)3a、3bにより接続し、中空構造内に補強用の中リブ11を入れた、断面形状が略日形の中空一体構造を有している。そして、この中空形材1はAl合金製押出形材からなり、中空一体構造の断面形状は、口形、日形、目形、田形等の種類にかかわらず、中空形材1の長手方向に渡って同一である。
【0032】
また、更に、中空形材1は、前壁部4と後壁部5との両端部に、後述する補強形材2との取り付け部や、車体との取り付け部となるフランジ9a、9bおよび13a、13b(中空形材1の両側方外側への張出部分)を有した構造となっている。このフランジ9a、9bおよび13a、13bを設けず、中空形材1自体の幅(高さ)を大きくして、前壁部4や後壁部5の両端部を、補強形材2や車体との取り付け部としても良いが、後述する補強形材2の取り付けや車体との取り付けが煩雑になる。したがって、中空形材1のフランジ9a、9bおよび13a、13bは設けた方が好ましい。
【0033】
ここにおいて、中空形材1の断面形状は、軽量化の点からは、口形の中空構造でもよい。しかし、中空形材の外形状(高さや幅)を大きくする場合の強度低下を防止したり、より高強度化する場合には、中空構造内に補強用の中リブを入れて、断面形状を日形、目形、田形等にすることが好ましい。
【0034】
この図1の中空形材1の場合、前壁部4と後壁部5と2つの側壁3a、3bとは直線的に接続されている。この結果、車両の衝突時に、中空形材に対する略水平方向からの荷重Fに対して、前記中空形材の両側壁3a、3cの立脚方向(水平方向)に力がかかる結果、側壁は曲げ変形箇所を起点に、通常、中空構造断面の外側方向に変形、座屈して、中空形材1が横圧壊(水平方向に変形)状態となり、衝突エネルギーを吸収する。
【0035】
なお、この中空形材1の2つの側壁3a、3cの、前壁部4や後壁部5との接続を工夫して、中空形材に対する略水平方向からの荷重Fに対して、前記中空形材の両側壁3a、3cが、図3(図2の部材圧壊時のA−A線断面図)のような圧壊状態のように、中空構造断面の内側に屈曲(屈曲部12a、12b)した横圧壊状態となるようにしてもよい。このように構成した場合、前記中空形材の両側壁3a、3cが中空構造断面の外側に屈曲する場合に比して、更に衝突エネルギー吸収量を高めることが可能となる。
【0036】
前記中空形材の両側壁3a、3cを、図3の屈曲部12a、12bのように、中空構造断面の内側に屈曲させるためには、側壁3a、3cの前壁部4や後壁部5と接続する上部や下部のコーナー部を中空構造の内側に向いた円弧状として、前壁部4や後壁部5と接続させるなどすれば良い。
【0037】
また、一方、図1において、Al合金製補強形材2は、衝突壁6と、互いに平行な複数の横リブ7a、7b、7cと、縦フランジ8a、8b、8cとから構成される断面略ハット型の開断面を有する。
【0038】
この内、略垂直な衝突壁(縦壁あるいは縦フランジ)6は、前記中空形材1の衝突面4aと平行な衝突壁面6aを、中空形材1の衝突面4aの前面で構成する。また、この衝突壁6を後方から支持補強する横リブ(側壁乃至横壁)は、衝突壁6と略直交するように接続された、互いに平行な複数の略水平な横リブ7a、7b、7cから構成される。
【0039】
更に、縦フランジ8a、8b、8cは、横リブ7a、7b、7cの各先端部に、各横リブと直交するように設けられている。このうち、特に両端の横リブ7a、7cは補強形材の両側方から補強形材の外側(図では上下方向)に向かって、張り出して延在するように設けられている。そして、この張り出した縦フランジ8a、8bにおいて、前記中空形材の衝突面4aと接するとともに、縦フランジ8a、8bにおいて、ボルトなどの公知の締結具10a、10bで中空形材の衝突面4aに接続されている。また、中空形材の内側にある(中央の)縦フランジ8cは、設けられる横リブとの関係で、中空形材の衝突面4aとの接続性の向上のために、設けられる。
【0040】
なお、補強形材2はAl合金製押出形材などからなり、断面形状は補強形材2の長手方向に渡って同一である。
【0041】
このAl合金製補強形材2は、特に、リアバンパー補強材などのポール衝突時に、中空形材1に対し、略水平方向から大きな荷重が加わった場合、前記図7(b)に示した様に、中空形材1が中央部より水平方向に折れ曲がることの無いように、特に、中空形材1の長手方向の中央部の曲げ強度を補強するためのものである。
【0042】
まず、この補強形材2の構造が前記断面略ハット型の開断面を有することによって、閉断面の矩形中空形状とする場合よりも、補強形材付加による重量の増加を最小限に抑制することができる。
【0043】
次に、衝突壁6を補強する互いに平行な複数の横リブ7a、7b、7cを有するため、重量の増加を最小限に抑制しつつ、補強形材2自体の強度を増し、補強材としての機能を果たすことができる。即ち、ポール衝突時等、補強形材2中空形材1)に対する略水平方向からの荷重Fに対して、まず、補強形材2が横圧壊(水平方向に変形)し、衝突エネルギーを吸収することにより、後方の中空形材1を保護して、補強材としての曲げ強度を高めることが可能となる。
【0044】
この横リブ(側壁)は、図1の態様では3本設けている。横リブの本数は、3本に限らず、衝突壁6の補強のために、両端の横リブ7a、7cのほか、衝突壁6の補強の必要性、あるいは、中空形材1の中央部の補強の必要性に応じて、内部の方の横リブ7bの数を、1〜4本等、大きな重量増加にならない範囲で、適宜選択して設ける。即ち、図4に補強形材の断面図を示すように、図4(a)の両端の横リブ7a、7cのみとしてもよく、図4(b)の更に横リブ7d、7eを付加した形としてもよい。
【0045】
また、Al合金製補強形材2の横リブ7a、7b、7cの先端に設けた縦フランジ8a、8b、8cは、中空形材1の衝突面4aと接続するためのものである。中央部の縦フランジ8cの設置は選択的であるが、特に、両端部の縦フランジ8a、8b(補強形材の両側方から補強形材の外側に向かって張り出している)の存在は、補強形材2を、機械的な接合や溶接による接合で、中空形材1に簡便かつ確実に固定すために重要である。
【0046】
即ち、図1に示す通り、両端部の縦フランジ8a、8bの部分において、中空形材1の側のフランジ9a、9bと、締結具(ボルト等)10a、10bを介して、簡便に締結固定できる。また、縦フランジ8a、8bの側と中空形材1のフランジ9a、9bの側との両方から電極を当てられるため、溶接法の中でも簡便なスポット溶接法により締結することもできる。
【0047】
この縦フランジ8a、8bが無い場合、補強形材2の衝突壁6と中空形材1の前壁部4とをつなぐ長いボルトで接続するなど、補強形材2と中空形材1との接続が難しくなる。このため、簡便に接続するためには、前記特開平6−286536号公報の補強体と同様に、接着剤により行う必要が生じてしまい、信頼性に欠けることにつながる。
【0048】
補強形材2は、中空形材前面の長手方向全般に渡って設けてもよい。ただ、補強形材2の付加による重量増加を抑制する観点からは、中空形材前面の長手方向全般に渡って設ける必要はなく、曲げ強度の補強が必要な中空形材前面部分に適宜設ければ良い。この点、図2に示した例では、中空形材1の長手方向の中央部(曲げ強度の補強が必要な部分)にのみ部分的に設けている。
【0049】
図2は車体のリアバンパー補強材やフロントバンパー補強材として、補強形材2を設けた中空形材1を、車体に対し略水平方向に延在するように配置した場合を示している。補強形材2を設けた中空形材1は(前記図1のフランジ13a、13bの部分で)締結具により、ステイ15a、15bと締結されるとともに、このステイ15a、15bを介して、車体のサイドアーム16a、16bと締結されている。
【0050】
なお、図2の中空形材1の態様では、中空形材1の中央部は直線状だが、両端部は車体形状(デザイン)にあわせて湾曲した構造を示している。これについて、中空形材1全体を直線状とするか、全体乃至両端部を湾曲した構造とするかは、車体やバンパーの形状、構造に応じて適宜選択される。
【0051】
更に、図5(図1と同様の断面図)はAl合金製補強形材の別の実施態様を示しており、基本的な構成は図1の態様と同じである。ただ、図5(a)に示す通り、両端の横リブ7a、7cと縦フランジ(8a、8c)とが接続するコーナー部は、図1のように直角に交差接続する形ではなく、断面の内側に向いた円弧状の折曲げ箇所R1、R2を設けて接続されている。
【0052】
このように、横リブと縦フランジとの交差部が円弧状に接続されている場合、図5(b)に示すように、略水平方向からの荷重Fに対して、補強形材2の横リブ7a、7cが横圧壊する際、前記円弧状の折曲げ箇所R1、R2を起点に、横リブ7a、7cが断面構造の内側に屈曲するようにできる。
【0053】
そして、このように構成することによって、横リブ7a、7cが断面外側に屈曲する場合に比して、補強形材2のエネルギー吸収量を高めることが可能となる。また、この結果、略水平方向からの荷重Fの大きさにもよるが、荷重Fが小さい軽衝突の場合には、補強形材2のエネルギー吸収量が高いため、図5(b)に示すように、中空形材1を圧壊させずに、補強形材2のみの圧壊で済む。したがって、略水平方向からの荷重が比較的小さい軽衝突の場合には、中空形材の方を圧壊させずに、補強形材のみの圧壊で済ますことも可能となる。そして、前記衝突後の修理も補強形材のみの取り替えで済すことができる。
【0054】
(適用Al合金)次に、本発明で用いることができるAl合金について説明する。断面矩形中空形材と補強形材とに用いるAl合金自体は、通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS5000系、6000系、7000系等の耐力の比較的高い汎用(規格)Al合金から選択して用いられる。この中でも、特に、これら7000系(Al−Zn−Mg系)Al合金や6000系(Al−Mg−Si系)Al合金を、押出加工後人工時効処理したT5や押出加工後更に溶体化処理した後に人工時効硬化処理(過時効処理も含む)したT6等の調質処理材が、強度、耐食性、加工性の点で好ましい。
【0055】
しかし、一方で、前記した材料側から種々提案されている成分や組織を制御した特殊なAl合金であっても、本発明の構成をとることによって、当然、強度やエネルギー吸収性能も優れたものとなる。したがって、コスト的には、従来の汎用(規格)Al合金材が有望であるものの、従来の特殊なAl合金であっても、勿論、本発明には使用可能である。
【0056】
(Al合金製形材の製造)また、前記断面矩形中空形材と補強形材とに係るAl合金製形材の製造自体は、鋳造、均質化熱処理、熱間押出、調質熱処理等を、主要工程とする常法により適宜製造される。このような押出による形材を使用することにより、断面が複雑な形状の形材であっても、容易に、かつ効率的に製造することが可能となる。
【0057】
【実施例】
(実施例1)次に、本発明の実施例を説明する。車体のリアバンパー補強部材を想定して、発明例1として、図1に示した構造で、各々JIS6N01Al合金押出形材のT5材(耐力240N/mm2)製の、断面矩形の中空形材1と補強形材2とを準備した。
【0058】
なお、この6N01Al合金押出形材のT5材は、車体用のエネルギー吸収材として汎用されており、同じく汎用されているJIS7003Al合金等の7000系Al合金に比べると、衝突荷重時に割れやすいという特性を有する。したがって、本実施例における6N01Al合金押出形材での良好な結果は、JIS7003Al合金等の7000系Al合金押出形材の結果にも反映させることが可能である。
【0059】
ここにおいて、比較のために、前記発明例1の中空形材1のみとし、補強形材2を設けない例を、比較例2として準備した。また、前記図6で示した構造を有し、発明例1と同じくJIS6N01Al合金押出形材のT5材(耐力240N/mm2)製のバンパー補強部材101を比較例3として準備した。なお、比較例3は前記発明例1と同等の曲げ強度を有するために、各部の厚みを設定した場合を準備した。
【0060】
発明例1および比較例2の中空形材1の仕様は以下の通りとした。中空形材1は直線状とし、全体の長さを1200mmとした。また、前壁部と後壁部の長さを(フランジ長さ各15mmを含めて)100mm、これらの肉厚を3.0mm、側壁3a、3cの長さを70mm、これらの各肉厚を中リブを含めて2.0mm、側壁と中リブ間の間隔を32mmとした。
【0061】
また、発明例1の補強形材2の仕様は以下の通りとした。補強形材2の長さは400mmとし、中空形材1の中央部にセンターがくるように配置し、前記図1に示したようにフランジ部においてボルトで中空形材1に固定した。また、衝突壁6の厚さを3.0mm、横リブ7a、7c、縦フランジ8a、8b、8cの厚さを各2.0mm、横リブ7bの厚さを2.5mm、衝突壁6の長さを70mm、縦フランジ長さを各15mm、横リブ7a、7b、7cの長さを25mm、横リブの間隔を32mmとした。
【0062】
比較例3の中空形材の仕様は、前壁部104や後壁部105の長さを100mm、これらの各肉厚を4.5mmとした。また、側壁103の長さを95mm、これらの各肉厚を中リブ107を含め2.5mmとした。
【0063】
そして、これら発明例と比較例の、ポール衝突試験を想定した、有限要素法(FEM)解析を行って、中空形材中央部の変形量を計測し、リアバンパー補強部材としての中空形材中央部の曲げ強度を評価した。この際、発明例と比較例の重量もFEM解析し、比較例2を100%とした時の、発明例の重量増加分を%として計算した。表1にこれらの結果を示す。
【0064】
ポール衝突試験の解析条件は、各々略水平方向に配置した発明例と比較例のバンパー補強部材を、前記組み立て体を鋼製ポール(175mm径)に、バンパー補強部材の中央部前面を、2.2m/sec(8km/hr)の速度で衝突させ、バンパー補強部材の中央部前面に略水平方向に衝撃力が加わるものと設定した。
【0065】
表1から明らかな通り、発明例1は、比較例3と比較して、同じ程度の曲げ強度を得るために、比較例3の重量増加量に比して、補強形材による重量増加の割合が著しく少くて済む。
【0066】
また、比較例2に比して、発明例1は、補強形材による重量増加の割合が少なく、中空形材中央部の変形量も著しく少なく、曲げ強度の向上効果が優れている。
【0067】
したがって、発明例1は、バンパー補強部材として、前記ポール衝突性に優れていることが分かる。
【0068】
【表1】
【0069】
以上の結果から、本発明に係るバンパー補強材は、軽量化の利点を損なわずに、曲げ強度が高く、ポール衝突性に優れている効果が裏付けられる。なお、これらの結果は、ドアビームやブラケットやフレームなどの、他の車体エネルギー吸収部材にも同様に適用可能であることを示している。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量化の利点を損なわずに、高強度化でき、ポール衝突時などの長手方向の折れ曲がりや座屈等を防止したバンパー補強材を提供することができる。また、軽衝突の場合に、中空形材を圧壊させず、補強形材のみの圧壊で済ますことも可能となり、前記衝突後の修理も補強形材のみの取り替えで済ますことができる。本発明は、バンパー補強部材用に、Al合金材の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバンパー補強材の一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明に係るバンパー補強材の取付けの態様を示す平面図である。
【図3】本発明に係るバンパー補強材の衝突時の態様を示す断面図である。
【図4】本発明に係るバンパー補強材の内の、補強形材の別の実施態様を示
す断面図である。
【図5】本発明に係るバンパー補強材の別の実施態様を示す断面図である。
【図6】従来のバンパー補強材を示し、図6 (a)は一部断面図、図6(b)は平面図、図6(c)は車体リア部分の断面図である。
【図7】従来のバンパー補強材の衝突時の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
1:中空形材、2:補強材、3:側壁、4:前壁部、5:後壁部、6:衝突壁、7:横リブ、8:縦フランジ、9:フランジ、10:締結具、11:中リブ、12:折れ曲がり部、13:フランジ、15:ステイ、16:サイドアーム
Claims (2)
- アルミニウム合金製の中空形材と、この中空形材の長手方向中央部の衝突面側の前面に取り付けられたアルミニウム合金製の補強形材とからなるバンパー補強材であって、前記補強形材は、略垂直な衝突壁と該衝突壁に略直交する3本以上の横リブを有し前記中空形材の衝突面側が開放した開断面の形材からなり、全ての横リブの先端に前記中空形材の衝突面側の前面に面接触する縦フランジが設けられ、前記中央部への略水平方向からの荷重に対し、前記中空形材より先に横圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであることを特徴とするポール衝突性に優れたバンパー補強材。
- アルミニウム合金製の中空形材と、この中空形材の衝突面側の長手方向中央部の前面に取り付けられたアルミニウム合金製の補強形材とからなるバンパー補強材であって、前記中空形材が押出形材からなり、前記補強形材は、略垂直な衝突壁と該衝突壁に略直交する3本以上の横リブを有し前記中空形材の衝突面側が開放した開断面の押出形材からなり、全ての横リブの先端に前記中空形材の衝突面側の前面に面接触する縦フランジが設けられ、前記中央部への略水平方向からの荷重に対し、前記中空形材より先に横圧壊して衝突エネルギーを吸収するものであることを特徴とするポール衝突性に優れたバンパー補強材。
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