JP4572995B1 - 容積型流体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベーンとベーン溝とで形成される摺動部の摺動抵抗の軽減と、これら摺動部の編摩耗を抑制し、シリンダの内周面の摺接面とベーンの先端の摺接部との摺動抵抗を軽減して耐久性と作動領域のシール性の向上を図り、圧縮効率と入力効率を高める。
【解決手段】作動領域R内に偏心して設けられたロータ21の公転に伴って、吸入路140から作動領域R内へ流体を吸入し、吐出路150から作動領域R外へ流体を吐出する容積型流体装置。ロータ21の内部に向けて形成されるベーン溝2と、ベーン溝2内に出没可能に収容され、先端に平面摺接部3tを有するベーン3と、前記シリンダ11の内周面から外方へ溝形成され、底部に摺接底部41を有した摺接溝4を具備する。ロータ21の公転によって、平面摺接部3tが摺接溝4内を平面接触したまま往復摺動する。
【選択図】図7

Description

本発明は、空気または冷媒ガス等の圧縮性流体を取り扱うロータ公転型の容積型流体装置であって、特に、シリンダ内周面とベーン先端部とで構成される摺接部のシール性を高めて圧縮効率の向上を図ると共に、作動領域を形成するベーンの低圧側側面および高圧側側面とベーン溝とに形成されるこれら摺接部の摺動に伴うエネルギー損失と磨耗を抑制しようとするものに関する。
従来、真空ポンプとして、ハウジングの筒状空間に収容されたロータが自転して、ロータ内に嵌挿されたベーンが筒状空間を区切ってポンプ効果を発生させるロータ自転型の回転ベーンポンプが、特許文献1に開示される。これはロータの側壁表面に設けた第1連通溝を通して、ロータの複数の溝底部空間に存在する空気等の気体を相互に移動させて、ロータの回転に伴って、ベーンが嵌挿されたロータの溝底部空間の容積が増減しても、その複数の各溝底部空間の気圧が大幅に低下したり大幅に上昇したりするのを防ぐものとされる。
特開2004−308503号公報
上記特許文献1にみられるロータ自転型の回転ベーンポンプは、ハウジング内をロータと一体に回転するベーンの先端部に形成される円弧状摺接部とハウジング内周面とが、狭い幅の接触面で摺動しながら高速回転するものとなっており摺動抵抗が増大して入力効率の低下並びに、ベーンの先端に形成される摺動部の摩耗とシール性および低圧となった筒状空間側のベーン摺接面がロータ溝の摺接面に引き付けられ、さらに高圧となった筒状空間の圧力によってベーンの摺接面がロータ溝の摺接面に押し付けられながら摺動しているため、これら摺接面の摺動抵抗の増大と磨耗が懸念される。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ベーンの前後摺接面とベーン溝の摺接面とで形成される摺動部の摺動抵抗の軽減と、これら摺動部の編摩耗を抑制すると共に、シリンダの内周面に形成される摺接面とベーンの先端に形成される摺接部との摺動抵抗を軽減して耐久性と作動領域のシール性の向上を図り、かつ、圧縮効率と入力効率を高めようとする容積型流体装置の提供を課題とする。
(1)上記課題を達成するため本発明の容積型流体装置は、円筒状のシリンダ11の内周面とこの内周面の前後をそれぞれ閉塞するフロントプレート12、リアプレート13とによって領域形成され、吸入路140および吐出路150によってそれぞれ外部連通した作動領域Rと、前記作動領域R内に偏心して設けられ、自身の外周部の一部を前記シリンダ11の内周面に近接させながら公転するロータ21を備え、ロータ21の公転に伴って、前記吸入路140から作動領域R内へ流体を吸入し、前記吐出路150から作動領域R外へ流体を吐出する容積型流体装置において、前記ロータ21の外周部を溝開口部とし、ロータ21の内部に向けて形成されるベーン溝2と、このベーン溝2内に出没可能に収容された、所定の厚さの板状体からなり、先端の少なくとも一部に傾斜平面からなる平面摺接部3tを有するベーン3と、前記シリンダ11の内周面から外方へ、前記ベーン3の厚さよりも広い溝幅で溝形成され、底部に前記ベーン3の平面摺接部3tと摺接する摺接底部41を有した摺接溝4を具備し、この摺接底部41は、ロータ公転方向前方に向かって外方側へ傾いた傾斜平面が、前記平面摺接部3tと略平行に形成されたものであり、前記ロータ21の公転に伴って、前記摺接底部41内の溝幅方向を前記平面摺接部3tが平面接触した状態を維持して往復移動することを特徴とする。
摺接溝4は、ロータ公転方向後方から前方へ向く傾斜面で前記シリンダ11の内周面から断面視外方へ向けて深まるように形成され、前記ベーン3の平面摺接部3tと摺接する傾斜平面の摺接底部41を有する。この容積型流体装置のベーン3は、ロータ21のベーン溝2から突出して摺接底部41に摺接することで、ロータ21と共に作動室を複数の作動領域R1、R2に区切っている。この区切られた各作動領域R1、R2には、作動流体を外部連通させる吸入口14及び吐出口15が設けられる。ロータ21が公転すると各作動領域Rは容積の拡縮を繰り返し、この容積の拡縮と共に作動流体を吸入路140から作動領域R内に吸入し、吐出路150から吐出する。
上記ベーン3の平面摺接部3tは摺接溝4内で平面接触しながらこの溝幅方向を平行に往復摺動するため、複雑な構造とすることなくベーン3先端部のシール性を確保しながら摺動抵抗を抑制したベーン運動を行うものとなる。またベーン3と摺接溝4の接触摺動面がベーン溝に対して傾斜した傾斜面からなることで、より大きな接触面積が確保されてシール性が高まると共に、ジャンピングやチャタリングの発生が抑制される。
さらに摺接底部の傾斜方向が、ベーン3の平面摺接部3tと垂直な厚さ方向に対してロータ公転方向であると、ベーン3を先端側に付勢する付勢部材51又は底部付勢部材52の付勢力或いは作動領域R2によって圧縮される流体圧力によってベーン3の平面摺接部3tを高圧の作動領域R2側に逃がすことができ低圧の作動領域R1側ベーン3の側面とベーン溝2との摺動抵抗を軽減することでき入力効率が向上すると共に、ベーン3およびベーン溝2の摺接部の磨耗を抑制することができる。
(2)前記記載の容積型流体装置において、前記ベーン溝2のロータ公転方向前方側の側部には、ベーン3をロータ21の外周側へ弾性付勢する側部付勢材51が収容され、この側部付勢材51がベーン3を平面摺接部3t方向およびロータ公転方向後方側へ傾斜付勢することが好ましい。かかる側部付勢材51はベーン3をその先端側およびロータ公転方向後方側へ付勢するため、平面摺接部3tと摺接底部41によって作動領域Rのシール性の改善を図りつつ、ロータ公転方向後方側作動領域Rに発生する高圧の作動流体が及ぼすベーン3への偏荷重を緩和することができる。
(3)前記駆動軸20の端部近傍に駆動軸20と同期回転する回転ディスク18が設けられ、回転ディスク18の背面側に当接してリアプレート13が設けられ、この回転ディスク18には、リアプレート13側に形成した吸入連通口214cと、作動領域R側に形成した吸入円弧溝214a、214bとを結んで吸入合流孔23aが内部連通すると共に、リアプレート13側に形成した吐出連通口224cと、作動領域R側に形成した吐出円弧溝224a、224bとを結んで、吐出合流孔23bが、作動領域R側からリアプレート13側へのみ流体を流通させる吐出弁225、227を介装して内部連通し、リアプレート13には、前記吸入連通口214cと当接して連通する吸入円形溝24aと、背面側に形成した吸入路140とが内部連通すると共に、前記吐出連通口224cと当接して連通する吐出円形溝24bと、背面側に形成した吐出路150とが内部連通し、吸入行程においては、作動流体が、リアプレート13の前記吸入路140を通り、吸入円形溝24aに当接連通した前記吸入連通口214cから回転ディスク18の吸入合流孔23aを通って、吸入円弧溝214a、214bから吸入行程にある作動領域R内に吸入され、吐出行程においては、作動流体が、吐出行程にある作動領域R内から前記吐出円弧溝224a、224bを介して回転ディスクの前記吐出合流孔23bを通り、吐出連通口224cに連通したリアプレート13の前記吐出路150から吐出されることが好ましい。
上記構成における作動流体は、リアプレート13の吸入路140を流通し、次に吸入路140と当接連通した回転ディスク18内に設けた吸入連通口214cと吸入円弧溝214a、及び、吸入合流孔23aと吸入円弧溝214bを介して吸入行程にある作動領域R内へ流入する。吸入行程にある前記作動領域R内に吸入された作動流体は、前記回転ディスク18の作動領域R側に形成された円弧溝224a、224bのリアプレート13側に配置された吐出弁225、227とを結ぶ吐出合流路23b、及び吐出連通口224cを介して、リアプレート13に形成された吐出円形溝24bに連通され、吐出路150から外部へと吐出される。吸入側の流体流通経路および吐出側の流体流通経路が軸方向片側の回転ディスク18に纏めて構成されることにより、モータ、入力プーリ等の駆動機器の配置と干渉しにくくなり、コンパクトな容積型流体装置を構成することが可能となる。
(4)前記いずれか記載の容積型流体装置において、ロータ21の側面の少なくとも一部分には、係合穴61内を係合ピン62が遊嵌係合することでロータ21の自転を防止する自転防止機構6が設けられることが好ましい。自転防止機構6によってスムーズなロータ21の公転運動が実現される。実施例では円柱状のロータ21の片端面と、これに当接するフロントプレート12とに自転防止機構6が設けられるが、リアプレート13側に設けられるものでもよく、両方に設けられるものでもよい。また自転防止機構6を構成する係合穴61、係合ピン62はロータ21側、フロント/リアプレート12/13側のどちらに設けられていてもよい。
(5)前記いずれか記載の容積型流体装置において、ベーン3の先端にはロータ公転方向後方側の一部端面を切り欠いた端部切り欠き31が設けられ、この端部切り欠き31に充填された作動流体によって、ベーン3をロータ公転方向後方に付勢することが好ましい。この端部切り欠き31をロータ公転方向後方に付勢する付勢力は傾斜面法線方向の流体反力であり、ベーン3に対して作動領域R2側に向く付勢力が及ぶことで、作動領域R2の圧縮流体がベーン3の作動領域R2側側面に作用する流体圧に対向して、ベーン3の側部摺接面とベーン溝2の摺接面との摺動抵抗を緩和することができる。
(6)前記いずれか記載の容積型流体装置において、ベーン3の側面にはロータ公転方向後方側の一部分を窪ませた側面ポケット32が形成され、この側面ポケット32に充填された作動流体圧によって、ベーン3の側部に反力を与えることが好ましい。側面ポケット32からの流体反力により、ベーン3の先端部の突出量が少ない場合でも、ベーン3にロータ公転方向前方に向く付勢力を付与することができる。
上記手段により、ロータ21が作動領域R内を公転し、ベーン溝2に収容されたベーン3が突出入して、ベーン3の先端部に傾斜形成された平面摺接部3tが、摺接溝4の摺接底部41内を平面接触した状態を維持して往復摺動することとなる。これにより、ベーン3による作動領域Rのシール性を高めて圧縮効率を向上させることができる。
実施例1の容積型流体装置の軸断面構造説明図。 実施例1の容積型流体装置のロータ及びベーンの構造を示す斜視分解説明図。 図1のA−A線断面図。 図1のC−C線断面図。 図1のB−B線端面図。 各作動領域を構成する要素の作動状態を便宜的に示す断面図。 図6の状態から駆動軸が200°回転した状態を示す断面図。 図7の状態から駆動軸が40°回転した状態を示す断面図。 図1のD−D断面図。 実施例2の容積型流体装置の軸断面構造説明図。 実施例2の容積型流体装置のロータ及びベーンの構造を示す斜視分解説明図。 実施例2の容積型流体装置の回転ディスク及びリアプレートの構造を示す斜視分解説明図。 図10のE−E線断面図。 図10のF−F線断面図。 図10のG−G線断面図。 図10のH−H線断面図。 各作動領域を構成する要素の作動状態を便宜的に示す断面図。 図17の状態から駆動軸が90°回転した各作動領域の作動状態を示す断面図。 図17の状態から駆動軸が45°回転した各作動領域の作動状態を示す断面図。
以下、本発明の容積型流体装置10の実施形態を複数の実施形態により図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において、先の実施形態と後の実施形態とが実質的に同一部材、或いは同一の部分があるときは、互いに同一の符号を用い、後の実施形態において詳細な説明は省略することとする。
図1は実施例1を示す、ロータ公転型の容積型流体装置10の駆動軸方向縦断面図であり、シリンダ11は図1に仮想線で示す吸入路140および吐出路150を備え、図5にみられるように内周面に吸入口14及び吐出口15を有した略円筒体からなるシリンダ11の内周側に作動領域R1、R2が形成される。そして、図1に示すように、その前後の開口部をそれぞれフロントプレート12、リアプレート13によって閉塞される。このフロントプレート12、リアプレート13は、周囲の複数の固定ボルト12P、13Pによってシリンダ11の前後端部に固定される。
図1に示すように、容積型流体装置1の中心部に横架配置され、図示しない駆動源により回転駆動される駆動軸20はフロントプレート12に装着されるベアリング12Bおよびリアプレート13に装着されるベアリング13Bを介して回転自在に支持される。そして、この駆動軸20と一体に形成される偏心部22軸部外周にベアリング20Bが装着され。ベアリング20Bの外周部にロータ21が嵌合される。ロータ21は、シリンダ11の内周空間に形成される作動領域R内に偏心配置され、フロントプレート12とロータ21との間に設けられた係合穴61と係合ピン62からなる自転防止機構6によって、前記作動領域R1、R2内を公転運動する。
実施例の自転防止機構6は、ベアリング20Bの外周部に嵌合されるロータ21のフロントプレート12側の側部に設けられた係合ピン62と、フロントプレート12のロータ21への当接面であって係合ピンが遊転可能に係合する位置に設けられた係合穴61とからなる。係合穴61の穴径は、駆動軸20及びロータ21の中心線の距離と、係合ピン62の半径との和に略等しい。係合ピン62の外周部は、駆動軸20の回転駆動に伴って、係合穴61の内周部に沿って円運動する。ロータ21はこの自転防止機構6により自転が防止されることで、それ自身の外周面の一部をシリンダ11の内周面に近接させながら円滑に公転運動を行うことができる。
尚、ロータ21の公転運動とは、ロータ21がベアリング20Bの中心線を軸にして自転しない状態を保って、駆動軸20の中心線を中心に駆動軸20の回転と同期して、その偏心方向を連続的に位相変化させる運動である。
図2、図4、図5にみられるように、実施例1ではロータ21の周部を溝開口部として深度方向にベーン溝2が一条形成される。このベーン溝2は、軸横断面視にて傾斜しており、ロータ21の径方向を基準として、ロータ周部側の溝開口部がロータ21の公転方向後方側へ、ベーン溝2の溝底がロータ21公転方向前方側へずれている。
このベーン溝2内に摺動自在に収容されるベーン3は、ロータ21の外周部からシリンダ11の内周面側に突出可能となっており、ベーン3の基端部側に図5に示すように基端窪み33が形成されている。この基端窪み33とベーン溝2の間には、底部付勢材52が介設され、ベーン3は、ベーン溝2に沿って摺動し、その先端側をシリンダ11側へ突出するように常時弾性付勢されている。
図4に示すように、ベーン3は、後述する摺接溝4の溝幅4Wよりも小さい厚さ3Wの板状体からなり、図5の上方に示す拡大図にみられるように、このベーン3の先端側の少なくとも一部が傾斜平面からなる平面摺接部3tを有する。この平面摺接部3tは、ロータ公転方向後方側がベーン3の先端側となるように、摺接底部41の傾斜方向と略平行した角度でロータ21の公転方向後方側へ傾いた傾斜平面からなり、ベーン3先端の平面摺接部3tが摺接底部41に対して互いに平面摺接部による接触を維持して作動領域R1、作動領域R2の2つの作動領域に区切っている。
さらに、ベーン3の先端部に形成される平面摺接部3tよりもロータ21の公転方向後方側に延びる段付きの面には、ベーン3の側面部との直交面を基準として、ロータ公転方向後方側へ向く傾斜面からなり、摺接底部41の傾斜面との間に作動領域R2内の流体を導くことが可能な最小限度の隙間からなる端部切り欠き31が形成される。またベーン3の作動領域R2側の先端部近傍に、断面略コ字状に窪ませた側面ポケットが形成される(いずれも図2、及び図5、7、8の各拡大図参照)。この端部切り欠き31や側面ポケット32は作動流体が充填されることで、ベーン3をその切り欠き面の法線方向へ付勢する。
図5に示すように、シリンダ11の内周面を窪ませて形成される摺接溝4は、ベーン3のロータ公転方向前方の側面と略平行の溝壁5と、溝底に形成される摺接底部41からなる二面溝で構成されている。そして、この摺接底部41は、図4に示すようにベーン3の厚さ3Wよりも広い溝幅4Wで形成され、ロータ公転方向後方から前方へ向かって深くなっている。さらに、この溝底傾斜平面の傾斜角度は、前記ベーン3の平面摺接部3tの傾斜角度と略平行に形成され、平面摺接部3tとの常時平面摺接が可能な摺接底部41の傾斜面を、ロータ21の公転運動に伴ってベーン3が往復移動しながら作動領域R1と作動領域R2の2つの作動領域に区切っている。
図1の仮想線や図5に示すように、シリンダ11の軸方向略中央部分には吸入路140および吐出路150を有した吸入フランジ142と吐出フランジ152が周方向に離間して設けられ、シリンダ11の内周面には吸入路140および吐出路150の内方が吸入口14と吐出口15とが作動領域Rに開口連通する。また吐出路150と吐出ロ15との間に吐出口15側からは流体を流通させ逆流を防ぐ吐出弁151が介装される。
なお、実施例では吸入路140及び吐出路150或いは吐出弁151と吸入口14、吐出口15をシリンダ11側に配置しているが、これらをフロントプレート12若しくはリアプレート13側に配置してもよい。
次に上記のように構成される実施例1の容積型流体装置10の作用について図6〜図8を参照して説明する。図6〜図8は、その構成要素の配置を便宜的に表す断面図であり、かつ、駆動軸20の回転に従ってロータ21が位相変化するのに伴って変遷する作動領域R1、R2の作動状態を示す説明図である。
図6にみられるように駆動軸20と一体に回転する偏心部22の偏心方向と同期して位相変化するロータ22が断面視鉛直下方にある状態を示し、ベーン3は上死点に位置する直前の状態を示し、作動領域R1は吸入行程にある。この状態において吸入路140および吸入口14を介して作動領域R1に流体が吸入されている。一方、作動領域R2内に満たされた流体が、その容積を約50%程度に圧縮された流体圧力により、ベーン3の作動領域R2側に晒される側面には押圧力が作用しており、ベーン3にはベーン溝2を支点とするモーメントが作用している。このモーメントによりベーン3の作動領域R1側の摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付けようとする付勢力(以下F1と称する)が作用している。
そして、ベーン3は底部付勢材52によって先端側に付勢されている。この状態において、図6の上方の拡大図にみられるように、ベーン3は、平面摺接部3tが作動領域R2側に向く傾斜面の摺接底部41に押圧されている。これにより平面摺接部3tには作動領域R2側に向く摺接反力(F2)が作用している。尚、押圧されながら摺動する面には必然的に摩擦が生じるものであるが摺接面の材料及び粗密或いは潤滑の状態等により摩擦係数を導き出す条件がそれぞれ異なるため、ここでは摩擦力は考慮しないこととする。
また、作動領域R2側に向く端部切り欠き31の傾斜面に充填された作動領域R2内の流体圧力により作動領域R2側に向く流体反力(以下F3と称する)が作用している。これらの摺接反力(F2)と流体反力(F3)とにより合成された反力(以下F4と称する)は、ベーン3を作動領域R2側に向けて押し付けようとしている。これにより作動領域R1側に向く付勢力(F1)と対向する合成反力(F4)とが互いに打ち消し合われ、ベーン3の作動領域R1側摺接面とベーン溝2の作動領域R1側摺接面との摺動抵抗が緩和され、これら摺接面の磨耗が抑制されると共にエネルギー損失も軽減される。
さらに、摺接底部41と平面摺接部3tとで構成されるこれら平面摺接部のシール性を維持するのに適した接触圧を得るために必要な底部付勢材52の最適な弾性反力、すなわち、ベーン3を先端部に向けて付勢する好ましい押圧力となるように底部付勢材52の弾性反力の大きさと、流体反力(F3)を発生させる端部切り欠き31に作動領域R2内の流体が作用し反力を発生させる面積が最適に設定されることにより摺接底部41と平面摺接部3tとの接触圧は常に過不足なく保たれ、摺接底部41と平面摺接部3tとの摺動抵抗と磨耗が抑制される。なお、この状態においては側面ポケット32にも作動領域R2内の流体圧力が作用しベーン3を作動領域R1側に向けて付勢している。
図7は図6の状態から駆動軸20を駆動軸20の回転方向D回りに200°回転させた状態を示し、作動領域R2の容積を最拡張させ吸入行程を終了した後、駆動軸20の回転に伴ってロータ21の外周摺接面とシリンダ11の内周摺接面との近接部位が駆動軸20の回転方向D回りに移動し、この近接部位が吸入口14の開口部を通過するまでの間、(図8にみられる状態)作動領域R2は、その容積が縮小されるのに伴って作動領域R2内に吸い込まれていた流体を吸入路140側へ押し戻し、吸入口14を介して吸入路140側へ排出されている。
ここで、このようにして排出された流体の容積の量に応じて吸入効率の低下を招くという課題が発生する。このような課題を解消するための手段として広く知られる手段であるため、敢えて図示による詳細な説明は省略するが、吸入口14と吸入路140の間に吸入路140側から作動領域R1側へは流体を流通させ逆流を防ぐ吐出弁を設けることにより上記課題を解決し、吸入効率を高めても良い。尚、このような課題は、後述する実施例2にみられるような回転ディスクによる流体分配手段によっても解決できる。
そして作動領域R2は圧縮行程の最終期にあり作動領域R2内の圧力が吐出路150内の圧力より高くなって吐出弁151が開弁し作動領域R2内の流体が吐出路150へと排出されている。この状態において、図7の上方に示す拡大図にみられるように、ベーン3の作動領域R2側に晒されている面積は極端に狭いものとなっている。このため流体の圧力と受圧面積の積によって定まる付勢力、すなわち、ベーン3の作動領域R1側摺接面を、ベーン溝2の作動領域R1側摺接面に押し付けようとする付勢力(F1)は極端に小さなものとなっている。
そして底部付勢材52は、最収縮されつつあり最も大きな弾性反力でベーン3の平面摺接部3tを摺接底部41に押し付けている。この弾性反力の大きさにしたがって平面摺接部3tに作用する作動領域R2側に向く摺接反力(F2)と端部切り欠き31に作用する流体反力(F3)との大きな合成反力(F4)が、小さな付勢力(F1)を上回りベーン3の作動領域R2側の摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付けようとする付勢力(F5)が作用している。この付勢力(F5)は、ベーン3の作動領域R2側の摺接面とベーン溝2の摺接面との摺動抵抗を増加させ入力効率を低下させると共にこれら摺接面の磨耗を早めるという課題を生じている。
このような課題を改善するため、図示しない図6と図7の中間の行程、すなわち作動領域R2において圧縮行程のピーク時に発生した高圧の作動流体を、図7の上方に示す拡大図にみられる側面ポケット32に充填された高圧の流体がベーン溝2の摺接面によって閉じ込められている。この流体圧力によりベーン3に作動領域R1側に向く付勢力(F6)を発生させている。このようにして、上述の作動領域R1側に向く弱い付勢力(F1)と作動領域R1側に向く付勢力(F6)とで合成れた作動領域R1側に向く付勢力(F7)と対向する合成反力(F4)とが互いに打ち消し合われ、ベーン3の作動領域R2側摺接面とベーン溝2との摺動抵抗および磨耗が抑制される。
図8は図7の状態からさらに駆動軸20を約40°回転方向D回りに回転させた状態を示し、作動領域R1側が吸入行程開始の状態を示している。そして作動領域R2側は圧縮行程初期の状態を示している。この状態において、一方を基端窪み33に収容され、他方をベーン溝2の底部に当接させて伸張に伴う弾性反力を発生している底部付勢材52は、平面摺接部3tを摺接底部41に押圧している。平面摺接部3tおよびベーン3を支持体とする反力が、ベーン溝2の底部を介してロータ21にロータ21の公転方向、すなわち駆動軸20の回転向きのトルクを駆動軸20に付与している。これにより作動領域R2の圧縮行程時に底部付勢材52を収縮させるときに要した入力トルクの一部が、ロータ21およびベアリング20Bと偏心部22を介して駆動軸20に回生されている。
そして、作動領域R2は、圧縮行程の初期にあって低圧の流体圧力が発生している。この低圧の流体に晒されているベーン3の作動領域R2側側面に作用しベーン3の作動領域R1側摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付けようとする小さな付勢力(F1)が作用している。さらに、この低圧の流体圧力が作用する作動領域R2に晒されているベーン3の面積は、図8の上方に示す拡大図にみられるように極端に狭いものとなっている。このため、この小さな付勢力(F1)はさらに小さな値となっている。これに対して、この状態における底部付勢材52は大きな弾性反力でベーン3を先端方向に押圧しており、平面摺接部3tには作動領域R2側に向く大きな摺接反力(F2)が発生している。また、端部切り欠き31にも、上記、低圧の流体圧力が作用しており、作動領域R2側に向く小さな流体反力(F3)が発生している。
ここで、これらの大きな摺接反力(F2)と小さな流体反力(F3)とによって合成された反力すなわち、作動領域R2側に向く大きな付勢力(F4)が上記小さな付勢力(F1)を上回り、図8にみられる行程においても上述したように、ベーン3の作動領域R2側摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付け摺動抵抗を増加させ入力効率を低下させると共にこれら摺接面の磨耗を早めるという課題が発生している。このような課題を解決するため、上述と同様な作動領域R2の作動形態を辿り、図8の上方に示す拡大図にみられる側面ポケット32に充填された圧力流体がこの行程においてもベーン溝2の摺接面によって閉じ込められている。この流体圧力によりベーン3に作動領域R1側に向く付勢力(F6)を発生させている。このようにして、上述の作動領域R1側に向く弱い付勢力(F1)と作動領域R1側に向く付勢力(F6)とによって合成さされた作動領域R1側に向く付勢力(F7)と対向する合成反力(F4)とが互いに打ち消し合われる。
以上に説明した実施例1による容積型流体機械10によれば、駆動軸20の回転に伴って作動室R1、R2が拡縮を繰り返す全ての行程においてベーン溝2とベーン3との摺動抵抗の軽減を図れると共に、ベーン3の先端部とシリンダ11の内周面とのシール性を向上させることができる。
図10は実施例2の容積型流体装置10の駆動軸20方向縦断面図であり、図13にみられるフロントプレート12に装着されるベアリング12B、および図16にみられるリアプレート13に装着されるベアリング13Bを介して、駆動軸20が回転自在に支持される。そしてロータ21は実施例1と同様の構成によって支持され、実施例1と同様の自転防止機構6を有して公転運動が実現される。
ロータ21の外周部に開口して、断面視対称位置に二つのベーン溝2a、2bが形成される。各ベーン溝2a、2bの溝方向は中心軸からロータ21の公転方向前方へオフセットされる。そしてこれらベーン溝2a、2bにはベーン3a、3bがそれぞれ出没可能に収容される。このベーン3a、3bは、ロータ21の公転方向前方側のベーン溝2a、2bの側面に、側部付勢部材(コイルバネ)51の一方の端部を収容する有底の穴からなる収容部25がそれぞれ形成される。そして、側部付勢部材51の他方の端部を収容する有底の穴からなる収容部35が、ロータ21の公転方向後方側のベーン3a、3bの側部にそれぞれ形成される。
図14にみられるように、実施例2のベーン溝2のロータ公転方向前方側の側部と、ベーン3との間に、ベーン3をロータ21の外周側へ弾性付勢する側部付勢材51が介装される。この側部付勢材51は、ベーン3を平面摺接部3t方向と、ロータ公転方向後方側に傾斜付勢する。
また、ベーン溝2の底部を、後述する副作動領域として活用する場合に、従来から広く知られ、或いは、上記、実施例1にみられるようにベーン基端部とベーン溝底との間に、ベーン付勢材を配置した場合、ベーン溝底およびベーン基端部とに形成されるベーン付勢材着座部とベーン付勢材の間に残留流体が存在する空間、すなわち、死容積領域が形成され圧縮効率が低下するという課題があった。実施例2では、ベーン3を側部から付勢する構成としたことによって上記課題を解決している。このように配置され付勢されるベーン3a、3bによって、主作動領域R1、R2は二分割され、さらに、駆動軸20の回転駆動に伴うロータ21の公転にしたがって変遷するシリンダ11の内周面にロータ21の外周部が近接される部位の前後を境にして形成される主作動領域は、吸入側作動領域R1a、R2aおよび吐出側作動領域R1b、R2bの四室に分割される行程が、後述の図17、18、19にみられる。
ロータ21の公転にしたがって、ベーン溝2a、2b内を往復摺動するベーン3a、3bの基端部とベーン溝底側とで形成される空間を、図14にみられるように、副作動領域RDa、RDbとして活用されており、実施例1例にみられる容積型流体装置10の形態に比べ、実施例2による容積型流体装置10の副作動領域の容積が増加するため、装置の小型軽量化が実現される。
図10および図12に示すように回転自在な駆動軸20と一体に回転する回転ディスク18がリアプレート13側の端部近傍に設けられている。そして、図15に示す回転ディスク18のロータ21側摺接部の側面図にみられるようにロータ21側の側部に開口され、吸入行程にある主作動領域のR1、R2、R1a、R2aおよび副作動領域のRDa、RDbに流体を導くように駆動軸20の中心線と略同心円の吸入円弧溝214a、214bが形成される。そして、図10にみられるように回転ディスク18の内部に形成される孔からなる合流路23aに連通される。この合流路23aの孔は、リアプレート13側の摺接面に開口しており、図10および図16に示すようにリアプレート13の回転ディスク18側の摺接面には駆動軸20の中心線と略同心円からなる吸入円形溝24aが形成され、この吸入円形溝24aの溝底の一部に形成された孔を介して吸入路140に連通されている。
また、図10および図16に示すように回転ディスク18のロータ21側の摺接面には、吐出行程にある主作動領域R1b、R2bおよび副作動領域RDa、RDbと連通するように駆動軸20の中心線と略同心円の吐出円弧溝224a、224bが形成される。この吐出円弧溝224a、224bのリアプレート13側に近接させて、主作動領域R1b、R2bおよび副作動領域RDa、RDb内の作動流体を吐出円弧溝224a、224bから、回転ディスク18内に形成される吸入合流孔23a、吐出合流孔23b側へのみ流通させ、逆流を防ぐ吐出弁225、227がそれぞれ設けられている。
図10および図16に示すように、リアプレート13の回転ディスク18への当接面側には、吸入円形溝24aと吐出円形溝24bが同軸2重円状に設けられる。吸入円形溝24aは吸入連通口214cの開口部半径位置と略同心円で形成され、吐出円形溝24bは吐出連通口224cの開口部半径位置と略同心円で形成される。吸入円形溝24aはリアプレート13内を厚さ方向に貫通する吸入路140と連通し、吐出円形溝24bはリアプレート13内を厚さ方向に貫通する吐出路150と連通する。回転ディスク18のリアプレート13への当接面に形成された吸入連通口214c、吐出連通口224cは、回転ディスク18の回転位相に拘わらず、吸入円形溝24a、吐出円形溝24bに摺接して作動流体の移動を常時可能にしている。
また、図17の上方に示す拡大図にみられるように、上記実施例1にみられた端部切り欠き31と摺接底部41との隙間によって形成される死容積領域をなくすため、実施例2において端部切り欠き31は省略されている。このようにして、ベーン3aの先端部に形成される平面摺接部3tの幅がベーン3aの厚さを最大限活用しており、摺接底部41に摺接する広幅の平面摺接部3tが確保されている。これにより、摺接底部41と平面摺接部3tとの磨耗を低減し、圧縮された主作動領域R2内の高圧空気が低圧側の作動領域R1aへ漏洩するのを抑制することで、容積型流体装置10の良好な耐久性と真空効率を確保している。
次に、上記のように構成される実施例2の容積型流体装置10を、例えば車両のブレーキブースタの圧力室内の空気を吸引する真空ポンプとして利用される場合の容積型流体装置10の縦断面図である図10および、その構成要素の配置を便宜的に表す横断面図であって、駆動軸20の回転に伴って変化する主作動領域R1、R2、R1a、R2a、R1b、R2bおよび副作動領域RDa、RDbの作動状態を示す図17、図18、図19を参照して説明する。
図17に示す状態において主作動領域R1aは吸入行程にあり、例えば、上述したブレーキブースタの図示しない圧力室(以下ATと称する)内の空気を吸引する場合に、図10に示す吸入路140、吸入円形溝24a、合流路23a、吸入円弧溝214aを介して、その容積を拡大中の主作動領域R1aは圧力室(AT)内の空気を吸引しており、主作動領域R1a内の圧力は負圧となっている。このため、主作動領域R1a側に晒されているベーン3aの側面には吸引力(以下V1と称する)が作用している。
そして、圧縮行程にある主作動領域R2側に晒されているベーン3aの側面には、その圧縮された空気の圧力(以下P1と称する)が作用している。また、吸入行程にある副作動領域RDaもその容積を拡大中であり吸入路140、吸入円形溝24a、吸入合流孔23a、吸入円弧溝214bを介して圧力室(AT)内の空気を吸引している。このため負圧となっている副作動領域RDaに晒されている傾斜面34aには吸引力(V2)が作用している。これらの吸引力(V1)、押圧力(P1)、吸引力(V2)によって合成された力はベーン3aの主作動領域R1a側の摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようといる。これに対して、側部付勢材51aの弾性反力は、ベーン3aに主作動領域R2側に向く付勢力(以下SPと称する)を及ぼしている。さらに、この側部付勢材51aの弾性反力は、実施例1の説明で述べたような作用によって、平面摺接部3tに主作動領域R2側に向く摺接反力(以下F2と称する)を発生している。これらの付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きはベーン3aの主作動領域R2側の摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようとしている。これにより、吸引力(V1)、押圧力(P1)、吸引力(V2)によって合成された力の向きと、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きが互いに対向して打ち消し合われ、ベーン3aの作動領域R1a側の摺接面とベーン溝2a摺接面との摺動抵抗が軽減されると共に磨耗も抑制される。
主作動領域R1bは圧縮行程の最終期の状態を示しており、図10に示す吐出円弧溝224aおよび合流路23b内の圧力より高まった主作動領域R1b内の空気圧によって開弁された吐出弁225、吐出合流孔23b、吐出円形溝24b、吐出路150を介して主作動領域R1b内の空気が機外へ排出される。
一方、作動領域R2は圧縮行程の初期にあり、この主作動領域R2側に晒されているベーン3bの側面には圧縮された低い空気の圧力押圧力(P1)が作用している。また、副作動領域RDbは圧縮行程の最終期にあり、吐出円形溝24b、合流孔23a23b、円形溝24b、吐出路150を介して空気を機外へ排出している。この状態におけるベーン3bの基端部に形成される傾斜面34bには圧縮された空気の圧力押圧力(P3)が作用している。そして、最も圧縮された側部付勢材51bの弾性反力によって押圧されている平面摺接部3tの摺接反力(F2)も最大となっている。これらの押圧力(P1)、押圧力(P3)、摺接反力(F2)によって合成された大きな付勢力によって、ベーン3bの主作動領域R1b側摺接面をベーン溝2bの摺接面に押し付けようとしている。
これに対して、下死点に到達直前のベーン3bの主作動領域R1bに晒されている面積は最縮小化している。このため、ベーン3bの主作動領域R2側摺接面をベーン溝2bの摺接面に押し付けようとする付勢力は極端に小さい。このため、この行程におけるベーン3bの主作動領域R1b側摺接面とベーン溝2bの摺接面との摺動環境は最も過酷な状態となっている。このような厳しい摺動環境を緩和する手段として実施例1では側面ポケット32内の流体反力を活用していたが圧縮行程にある主作動領域R1b或いは主作動領域R2b内の圧縮空気が側面ポケット32内に残留して圧縮効率の低下を招くため、実施例2では真空効率をより高めることをテーマにしており、側面ポケット32を省略している。このため、この行程においてのみ、これら摺動部の摺動抵抗が増大して磨耗が早まる。このような課題を解決すべく、実施例2ではベーン溝2およびベーン3のロータ公転方向後方の摺接部の辺を径方向に長くして、これらの摺接部面積を拡大しており、耐久性の向上を図っている。
なお、この行程における前記課題を改善するため、上記以外の手段としてベーン3a、ベーン3bの基端部に形成されるこれらの傾斜面34a、34bの傾斜角を、本実施形態とは逆向き或いはその他の角度に変更して傾斜面34a、34bに発生する付勢力の向きを変えてもよい。
図18は、図17の状態から駆動軸20を回転方向D回りに90°回転させた状態を示している。この状態における主作動領域R1は、吸入行程のピークにあり、圧力室(AT)内の空気が、吸入円弧溝214aを介して吸引されており、主作動領域R1内の圧力は負圧となっている。このため、主作動領域R1側に晒されているベーン3aの側面には吸引力(V1)が作用している。また、主作動領域R2bは、圧縮行程のピークに差しかかっており、吐出円弧溝224aを介して主作動領域R2b内の空気が吐出円弧溝224aを介して機外へ排出される。そして主作動領域R2b側に晒されているベーン3aの側面には、その圧縮された空気圧による押圧力(P2)が作用している。これらの吸引力(V1)、(P2)によって合成された付勢力は、ベーン3aの作動領域R1側摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようとしている。
これに対して、副作動領域RDaは圧縮行程の初期にあり副作動領域RDa内の圧縮された空気の圧力により傾斜面34aには主作動領域R2側に向く押圧力(P3)が作用している。そして、側部付勢材51aの弾性反力は、ベーン3aに主作動領域R2側に向く付勢力(SP)を及ぼしている。さらに、平面摺接部3tの摺接反力(F2)は、ベーン3aに主作動領域R2側に向く付勢力を及ぼしている。これらの押圧力(P3)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された付勢力は、ベーン3aの主作動領域R2b側摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようとしている。これにより、吸引力(V1)、(P2)によって合成された力の向きと、押圧力(P3)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きが互いに対向して打ち消し合われ、ベーン3aの摺接面とベーン溝2aの摺接面との摺動抵抗が軽減される。
一方、主作動領域R1は、吸入行程のピークにあり、圧力室(AT)内の空気が、吸入円弧溝214aを介して吸引されており、主作動領域R1内の圧力は負圧となっている。このため、主作動領域R1側に晒されているベーン3bの、ロータ公転方向後方側の側面には、吸引力(V1)が作用している。そして、側部付勢材51aの弾性反力は、ベーン3bに主作動領域R1側に向く付勢力(SP)を及ぼしている。さらに、平面摺接部3tの摺接反力(F2)は、ベーン3bに主作動領域R1側に向く付勢力を与えている。これらの吸引力(V1)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された付勢力は、ベーン3bの作動領域R1側の摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようとしている。
これに対して、主作動領域R2aはその容積の拡大開始直後の状態を示し、吸入円弧溝214aを介して主作動領域R2aに圧力室(AT)内の空気が吸引されており、主作動領域R2aは負圧となっている(図18下図参照)。主作動領域R2aに晒されているベーン3bの、ロータ公転方向前方側の側面には、吸引力(V1)が作用している。そして、副作動領域RDbも吸入行程初期にあり吸入円弧溝214bを介して圧力室(AT)内の空気が副作動領域RDbに吸引されている。副作動領域RDbは負圧となっており、傾斜面34bには吸引力(V2)が作用している。これらの吸引力(V1)と吸引力(V2)によって合成された吸引力は、ベーン3bの作動領域R2b側の摺接面をベーン溝2bの摺接面に引き付けようとしている。これにより、吸引力(V1)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きと、吸引力(V1)、吸引力(V2)によって合成された力の向きが互いに対向して打ち消し合われ、ベーン3bの摺接面とベーン溝2bの摺接面との摺動抵抗が軽減される。
図19は、図18の状態から駆動軸20を回転方向D回りに45°回転させた状態を示している。この状態における主作動領域R1は、吸入行程を終了し、吸入円弧溝214aとの連通は遮断されると時に主作動領域R1を形成するベーン3aは、主作動領域R2b方向にその位置を移動させ、ベーン3aの主作動領域R1側の側面と溝壁5との距離が大きくなっており、溝底4と溝壁5とで形成される吸入行程時の主作動領域容積が増加している。このような現象は吸入行程終了時の主作動領域R1および主作動領域R2においてそれぞれみられるため吸入効率が高まる。
この行程における主作動領域R1の容積は最拡張された状態にあり、負圧となっている。このため、主作動領域R1側に晒されているベーン3aの側面には吸引力(V1)が作用している。さらに、主作動領域R2bは圧縮行程のピークにあり、主作動領域R2b側に晒されているベーン3aの側面には圧縮された空気による押圧力(P1)が作用している。これらの吸引力(V1)、押圧力(P1)によって合成された付勢力はベーン3aの主作動領域R1側摺接面をベーン溝2aの摺接面に押し付けようとしている。
これに対して、副作動領域RDaは圧縮行程にあり、副作動領域RDa内の圧縮された空気の圧力によって傾斜面34aには主作動領域R2b側に向く押圧力(P3)が作用している。そして、側部付勢材51aの弾性反力は、ベーン3aに主作動領域R2b側に向く付勢力(SP)を及ぼしている。さらに、平面摺接部3tの摺接反力(F2)は、ベーン3aに主作動領域R2b側に向く付勢力を及ぼしている。これらの押圧力(P3)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された付勢力は、ベーン3aの主作動領域R2b側摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付けようとしている。これにより、吸引力(V1)、(P2)によって合成された力の向きと、押圧力(P3)、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きが互いに対向して打ち消し合われ、ベーン3aの摺接面とベーン溝2aの摺接面との摺動抵抗と磨耗が軽減される。
一方、主作動領域R2aは吸入行程にありベーン3bの主作動領域R2a側側面には吸引力(V1)が作用している。そして、副作動領域RDbも吸入行程にあり傾斜面34bには吸引力(V2)が作用している。これらの吸引力(V1)、吸引力(V2)により合成された吸引力はベーン3bの主作動領域R2a側の摺接面をベーン溝2bの摺接面に引き付けようとしている。
これに対して、側部付勢材51aの弾性反力は、ベーン3aに主作動領域R2b側に向く付勢力(SP)を及ぼしている。さらに、平面摺接部3tの摺接反力(F2)は、ベーン3aに主作動領域R2b側に向く付勢力を及ぼしている。これらの付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された付勢力は、ベーン3aの主作動領域R2b側摺接面をベーン溝2の摺接面に押し付けようとしている。これにより、吸引力(V1)、吸引力(V2)によって合成された力の向きと、付勢力(SP)、摺接反力(F2)によって合成された力の向きが互いに対向して打ち消し合われる。その他、特記しない構成及び作用は実施例1と同様である。
本発明の実施形態は上述したとおりであるが、上述の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各構成の抽出、一部構成同士の省略あるいは組み合わせの変更、ベーンや各種ピン等の数量、或いは係合穴61と係合ピン62の取り付け位置の交換といった配置変更、流体経路の変更等、各種代替形態への変更等が可能である。
以上に説明したように、ベーン摺動部の摺動抵抗と磨耗を大幅に抑制可能な本発明の容積型流体装置の摺動部材を自己潤滑性コーティング材料などで構成することによって、更に、潤滑油の供給を長期間必要としない空気ポンプが提供される。このようなオイルレスポンプは特に、潤滑油などの不純物の混入を嫌う燃料電池のセルに空気を供給する空気ポンプ、或いは食品加工機械などの真空ポンプとして用いることができる。
図面中、R、R1、R2は作動領域、11はシリンダ、12はフロントプレート、13はリアプレート、140は吸入路、150は吐出路、18は回転ディスク、2、2a、2bはベーン溝、20は駆動軸、21はロータ、214a、214bは吸入円弧溝、214cは吸入連通口、224a、224bは吐出円弧溝、224cは吐出連通口、225、及び227は吐出弁、23aは吸入合流孔、23bは吐出合流孔、24aは吸入円形溝、24bは吐出円形溝、3、3a、3bはベーン、3tは平面摺接部、31は端部切り欠き、32は側面ポケット、4は摺接溝、41は摺接底部、51、51a、51bは側部付勢材、6は自転防止機構、61は係合穴、62は係合ピンをそれぞれ示す。

Claims (6)

  1. 円筒状のシリンダ(11)の内周面とこの内周面の前後をそれぞれ閉塞するフロントプレート(12)、リアプレート(13)とによって領域形成され、吸入路(140)および吐出路(150)によってそれぞれ外部連通した作動領域(R)と、前記作動領域(R)内に偏心して設けられ、自身の外周部の一部を前記シリンダ(11)の内周面に近接させながら公転するロータ(21)を備え、ロータ(21)の公転に伴って、前記吸入路(140)から作動領域(R)内へ流体を吸入し、前記吐出路(150)から作動領域(R)外へ流体を吐出する容積型流体装置において、
    前記ロータ(21)の外周部を溝開口部とし、ロータ(21)の内部に向けて形成されるベーン溝(2)と、このベーン溝(2)内に出没可能に収容された、所定の厚さの板状体からなり、先端の少なくとも一部に傾斜平面からなる平面摺接部(3t)を有するベーン(3)と、前記シリンダ(11)の内周面から外方へ、前記ベーン(3)の厚さよりも広い溝幅で溝形成され、底部に前記平面摺接部(3t)と摺接する摺接底部(41)を有した摺接溝(4)を具備し、この摺接底部(41)は、ロータ公転方向前方に向かって外方側へ傾いた傾斜平面が、前記平面摺接部(3t)と略平行に形成されたものであり、前記ロータ(21)の公転に伴って、前記摺接底部(41)内の溝幅方向を前記平面摺接部(3t)が平面接触した状態を維持して往復移動することを特徴とする容積型流体装置。
  2. 前記ベーン溝(2)のロータ公転方向前方側の側部とベーン(3)との間に側部付勢材(51)が介装され、この側部付勢材(51)が、ベーン(3)をロータ(21)の外周側及びロータ公転方向後方側へ傾斜付勢する請求項1記載の容積型流体装置。
  3. 前記ロータ(21)の駆動軸(20)の端部近傍に駆動軸(20)と同期回転する回転ディスク(18)が設けられ、回転ディスク(18)の背面側に当接してリアプレート(13)が設けられ、この回転ディスク(18)には、リアプレート(13)側に形成した吸入連通口(214c)と、作動領域(R)側に形成した吸入円弧溝(214a、214b)とを結んで吸入合流孔(23a)が内部連通すると共に、リアプレート(13)側に形成した吐出連通口(224c)と、作動領域(R)側に形成した吐出円弧溝(224a、224b)とを結んで、吐出合流孔(23b)が、作動領域(R)側からリアプレート(13)側へのみ流体を流通させる吐出弁(225、227)を介装して内部連通し、リアプレート(13)には、前記吸入連通口(214c)と当接して連通する吸入円形溝(24a)と、背面側に形成した吸入路(140)とが内部連通すると共に、前記吐出連通口(224c)と当接して連通する吐出円形溝(24b)と、背面側に形成した吐出路(150)とが内部連通し、
    吸入行程においては、作動流体が、リアプレート(13)の前記吸入路(140)を通り、吸入円形溝(24a)に当接連通した前記吸入連通口(214c)から回転ディスク(18)の吸入合流孔(23a)を通って、吸入円弧溝(214a、214b)から吸入行程にある作動領域(R)内に吸入され、吐出行程においては、作動流体が、吐出行程にある作動領域(R)内から前記吐出円弧溝(224a、224b)を介して回転ディスクの前記吐出合流孔(23b)を通り、吐出連通口(224c)に連通したリアプレート(13)の前記吐出路(150)から吐出される請求項1又は2記載の容積型流体装置。
  4. 前記ロータ(21)の側面の少なくとも一部分には、係合穴(61)内を係合ピン(62)が遊嵌係合することでロータ(21)の自転を防止する自転防止機構(6)が設けられる請求項1、2又は3のいずれか記載の容積型流体装置。
  5. ベーン(3)の先端にはロータ公転方向後方側の一部端面を切り欠くことで、ロータ(21)の公転方向後方側に延びる段付きの面であってベーン(3)の側面部との直交面を基準として、ロータ公転方向後方側へ向く傾斜面からなる端部切り欠き(31)が設けられ、この端部切り欠き(31)に充填された作動流体による傾斜面法線方向の流体反力によって、ベーン(3)をロータ公転方向後方に付勢する請求項1、2、3又は4のいずれか記載の容積型流体装置。
  6. ベーン(3)の側面にはロータ公転方向後方側の一部分であってベーン3の先端部近傍を断面略コ字状に窪ませた側面ポケット(32)が形成され、この側面ポケット(32)に高圧の流体がベーン溝の摺接面によって閉じ込められることで、充填された作動流体圧によってベーン(3)をその切り欠き面の法線方向へ付勢し、ベーン(3)の側部にロータ公転方向前方に向く付勢力を付与する請求項1、2、3、4又は5のいずれか記載の容積型流体装置。
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