JP4572429B2 - 円筒形リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒形リチウム二次電池の、特にその封口部の形状に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話,ノート型パーソナルコンピューター等のコードレス機器の小型,軽量,薄型化に伴い、その駆動用電源として小型,軽量で高エネルギー密度の円筒形や長円形のリチウム二次電池が用いられてきた。なかでもスペースの有効利用の観点から薄型電池に要望が集まりつつある。薄型電池としては、従来から角形ニッケルカドミウム電池や、角形ニッケル水素電池が主に用いられている。しかし、これらの電池は封口板とケース開口部をレーザー溶接して密閉しているため、コストが高く生産性も悪いという問題点があった。また、リチウム二次電池は有機電解液を用いているため溶接にレーザーを用いる場合、その溶接工程の管理が重要であった。そこで、コストや生産性に優れたかしめ封口方式の円筒形リチウム二次電池が望まれている。
【0003】
そのため、有底筒状の電池ケースの開口部近傍に全周にわたって溝入れ加工をし、その溝入れ加工部の開口側に絶縁ガスケットを介して封口板(絶縁ガスケットを装着した封口板)を載置し、縦断面がR形状のかしめ封口をした円筒形リチウム二次電池が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有底筒状の電池ケースの開口部近傍に全周にわたって溝入れ加工をし、その溝入れ加工によって形成された環状溝の上部開口部内に絶縁ガスケットを装着した封口板を挿入載置する際、その挿入を容易にするために、前記環状溝上部の開口端部の内寸は絶縁ガスケットを装着した封口板の外寸よりやや大きく設定している。このため、環状溝上部を縦断面がR形状にかしめた際、絶縁ガスケットの外周側面部と環状溝上部の電池ケース内側面部との間に僅かな隙間が生じる。電池製造工程において電池内に電解液を注入する際、環状溝上部の開口端近くまで電解液を入れた後静置して、電解液を極板群に浸透させる工程を何度か繰り返して、規定量の電解液を電池内に注入するのであるが、この時に環状溝上部の電池ケース内側面部に電解液が付着して残存することがある。この状態で、絶縁ガスケットを装着した封口板を挿入載置し、環状溝上部を縦断面がR形状にかしめた際、絶縁ガスケットの外周側面部と環状溝上部の電池ケース内側面部との間に生じた僅かな隙間に、付着した電解液が存在したままの状態でかしめられることになる。
【0005】
電池のかしめは、電解液を完全に電池内に封じ込めて、あらゆる環境下においても電解液が外部に漏れないようにする耐漏液性を確保するものであって、R形状のかしめにおいては、環状溝と封口板間に介在する絶縁ガスケットの圧縮および電池ケース先端部と封口板間に介在する絶縁ガスケットの圧縮の双方の圧縮率バランスを保ち、環状溝下方の極板群に浸透した電解液を、環状溝と封口板間に介在する絶縁ガスケットの圧縮を適正状態に保つことによって耐漏液性を確保している。
【0006】
一方、前述したように、かしめ後に絶縁ガスケットの外周側面部と環状溝上部の電池ケース内側面部との間にできる僅かな隙間に電解液が存在する場合、耐漏液性を確保するためには、かしめ上部の電池ケースと封口板間の密閉性を高める必要がある。断面がR形状のかしめでは、電池ケース先端部と封口板間の絶縁ガスケットの圧縮によってのみ、かしめ上部の密閉性を確保している。しかし、かしめ後の電池ケース先端部の外形寸法は、かしめ前の電池ケース外形寸法より小さくなるため、電池ケース先端部が波状のしわになりやすい。このため、電池ケース先端部の封口板間に介在する絶縁ガスケットの圧縮状態にばらつきが生じ、かしめ後の電池ケース先端部分において、均一な密閉性を確保できない。このため、通常使用時とは違ったある厳しい条件、特に高温保存と低温保存を繰り返すようなヒートサイクル時の絶縁ガスケットの膨張,収縮を伴うような場合に、絶縁ガスケットの外周側面部と環状溝上部の電池ケース内側面部との間の僅かな隙間に残存する電解液が、外部に漏れ出すことがあり、十分な耐漏液性を確保できない問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点を解決するもので、有底筒状の電池ケースを用いた電池のかしめ形状を適正状態に保つことによって電池の密閉性を高め、信頼性に優れた円筒形リチウム二次電池を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、電池ケースに、正極板,負極板およびセパレータからなる極板群と電解液を収容し、さらに前記電池ケースの開口部近傍の外周面に、開口部に沿った環状溝を凹設し、前記電池ケースの前記環状溝の上部開口端内周面に絶縁ガスケットを介して、電流遮断機構を設けた封口板を載置させ、前記環状溝上部を縦断面がR形状にかしめて密封口した円筒形リチウム二次電池であって、前記縦断面がR形状のかしめ部において、前記電池ケースの先端部分の外形寸法が根元部分の外形寸法より小さい傾斜側面部を形成し、この傾斜側面部の傾斜角度を5°〜15°の範囲としたものである。この手段によって密閉性のより良い円筒形リチウム二次電池を提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、円筒形リチウム二次電池の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
有底筒状の電池ケース缶に、正極板,負極板およびセパレータからなる極板群と電解液を収容し、さらに開口部近傍の外周面に開口部に沿った環状溝を凹設し、前記電池ケース缶の環状溝上部の開口端内周面に絶縁ガスケットを介して封口板を載置させ、環状溝上部をかしめて密封口する。そして前記かしめ工程において用いる金型としては、本発明に用いるR形状かしめ金型Aの概略を図2に、従来のR形状かしめ金型Bの概略を図5に示す。また、本発明のかしめ金型Aを用いてかしめたかしめ部の縦断面を図1に、従来のかしめ金型Bを用いてかしめたかしめ部の縦断面を図4に示す。図4に示すように、従来のかしめ金型Bを用いたかしめ先端部1Bによる絶縁ガスケット2Bの圧縮は、封口板3Bと電池ケース先端部の狭い範囲でのみ行われるのに対し、図1に示すように、本発明のかしめ金型Aを用いたかしめ先端部1Aによる絶縁ガスケット2Aの圧縮は、かしめ先端部1Aの外形寸法が、根元部4Aの外形寸法より小さいため、環状溝5A上部のかしめ部の根元部4Aからかしめ先端部1Aにかけて、絞り込むような傾斜角度αの傾斜側面部6Aを形成したかしめ状態が得られ、封口板3Aの側面部からかしめ先端部1Aの広い範囲に渡って絶縁ガスケット2Aの圧縮が得られる。本発明では従来のかしめで見られるような、かしめ後の電池ケース先端部の外寸法が、かしめ前の電池ケース外寸法より小さくなる結果生じる先端部の波状のしわによる電池ケース先端部と封口板間の不均一な密閉状態(絶縁ガスケット圧縮率のばらつき)を、封口板3Aの側面部の絶縁ガスケット2Aの圧縮による密閉性の向上によって補うことができる。その結果、絶縁ガスケット2Aの外周側面部と環状溝5A上部の電池ケース内側面部との間の僅かな隙間7Aに存在する電解液を完全に閉じ込めることができ、耐漏液性に優れた円筒形リチウム二次電池を提供することができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
【0012】
図3は、本発明の実施例における電池の一部縦断斜面を示すもので、本発明を直径18mmの円筒形リチウム二次電池に適用したものである。図3において、8は電池ケース、9は封口板、10は正極板、11は負極板、12はセパレータ、13は正極リード、14は負極リード、15は絶縁ガスケット、16はかしめ部を示している。
【0013】
正極板10はコバルト酸リチウムを活物質とし、これに導電剤と結着剤を混合,練合してペースト状とした合剤をアルミニウム箔からなる芯材の両面に塗着,乾燥後圧延し、アルミニウム製の正極リード13を芯材にスポット溶接したものである。また負極板11は、炭素粉末を活物質とし、結着剤を混合,練合してペースト状とした合剤を、鋼箔からなる芯材の両面に塗着,乾燥後圧延して、負極リード14をスポット溶接したものである。セパレータ12はポリエチレンからなる多孔性フィルムを、正極板10および負極板11よりも幅広く裁断して用いた。
【0014】
これらの正極板10,負極板11,セパレータ12を渦巻き状に巻回して極板群を構成し、電池ケース8に挿入した後、電池ケース8の開口部に沿った環状溝17を凹設した。そして、正極リード13と封口板9とをスポット溶接し、電解液を注入した後、かしめによる封口を経て円筒形リチウム二次電池を構成した。
【0015】
前記封口工程において図5に示した従来のかしめ金型Bを用いてかしめ部を形成した電池を従来電池とした。一方、図2に示した本発明のかしめ金型Aを用いてかしめ部を形成する本発明の実施例電池および参考例電池を作製するにあたり、図1に示すかしめ部の傾斜側面部6Aの傾斜角度αが1°のものを参考例電池Aとし、かしめ部の傾斜側面部6Aの傾斜角度αが5°のものを本発明の実施例電池Bとし、かしめ部の傾斜側面部6Aの傾斜角度αが15°のものを本発明の実施例電池Cとした。
【0016】
本発明の効果を検討するため、充電状態で、60℃で2時間、−10℃で2時間保存するヒートサイクル試験Aと、さらに厳しい試験として、85℃で2時間、−40℃で2時間保存するヒートサイクル試験Bを、各100個ずつの電池を用いて2週間行った後の漏液電池の数を測定し表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
表1からわかるように、ヒートサイクル試験Aでは、参考例電池A,本発明の実施例電池B,Cはいずれも漏液電池は見られなかったのに対し、従来電池では、100個中18個漏液が発生した。一方、ヒートサイクル試験Bでは、かしめ部の傾斜側面部の傾斜角度に応じて、参考例電池A,本発明の実施例電池B,Cにおいても僅かに耐漏液特性に差が見られるが、従来電池に比べると全てが格段に優れていることがわかる。さらに、これらの漏液電池の漏液した部分の電解液を抜き取った後、漏液試験を継続しても漏液が発生しないことから、いずれのかしめ状態においても環状溝17と封口板9間の絶縁ガスケット15の圧縮による密閉性は十分に確保されており、前述した漏液は絶縁ガスケット15の外周側面部と環状溝17上部の電池ケース8内側面部との間の図1に示す僅かな隙間7Aに存在する少量の電解液の漏出が原因であることがわかる。かしめ部の傾斜側面部の傾斜角度を1°〜15°の範囲とした理由は、図1に示す傾斜角度αが1°未満の場合は封口板9の側面部と電池ケース8間の絶縁ガスケット15の圧縮面積も少なく、また圧縮率も高くないので従来電池とほとんど変わらない耐漏液性しか得られず、一方、傾斜角度が15°より大きくなると、封口板9に対し横方向の応力が高くなるため封口板9が変形する不具合が生じるからである。特にリチウムイオン二次電池の場合、封口板内には電流遮断機構が設けられており、封口板が変形すると電流遮断機構の誤動作等の不具合が生じ電池として使用不能になる場合があるため、封口板の変形が生じない傾斜角度を選択しなければならない。
【0019】
以上、図1に示すように、環状溝5A上部の断面がR形状のかしめ先端部1Aの外形寸法が根元部4Aの外形寸法より小さい傾斜側面部6Aを設け、その傾斜角度αが1°〜15°の範囲のR形状かしめを行うことによって、耐漏液性のさらなる向上が図れることがわかった。
【0020】
以上の説明では、円筒形リチウム二次電池について行った場合の例を示したが、円筒形,長円形を問わず、また、一次電池,二次電池を問わず他の電池系でも同様な効果が得られるものである。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように本発明では、環状溝上部の断面がR形状のかしめ先端部分の外形寸法が根元部の外形寸法より小さい傾斜側面部を設け、その傾斜角度が5°〜15°の範囲の断面がR形状かしめを行うことによって、かしめ部の広い範囲に渡って密閉性を確保でき、耐漏液性の向上が図れ、信頼性に優れた円筒形リチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のかしめによるかしめ部の縦断面図
【図2】 本発明に用いたかしめ金型の概略断面図
【図3】 本発明の実施例における円筒形リチウム二次電池の一部縦断斜面図
【図4】 従来のかしめによるかしめ部の縦断面図
【図5】 従来のかしめ金型の概略断面図
【符号の説明】
1A,1B かしめ先端部
2A,2B,15 絶縁ガスケット
3A,3B,9 封口板
4A 根元部
5A,17 環状溝
6A 傾斜側面部
7A 隙間
8 電池ケース
10 正極板
11 負極板
12 セパレータ
13 正極リード
14 負極リード
16 かしめ部
α 傾斜角度
Claims (1)
- 電池ケースに、正極板,負極板およびセパレータからなる極板群と電解液を収容し、さらに前記電池ケースの開口部近傍の外周面に、開口部に沿った環状溝を凹設し、前記電池ケースの前記環状溝の上部開口端内周面に絶縁ガスケットを介して、電流遮断機構を設けた封口板を載置させ、前記環状溝上部を縦断面がR形状にかしめて密封口した円筒形リチウム二次電池であって、前記縦断面がR形状のかしめ部において、前記電池ケースの先端部分の外形寸法が根元部分の外形寸法より小さい傾斜側面部を形成し、この傾斜側面部の傾斜角度を5°〜15°の範囲としたことを特徴とする円筒形リチウム二次電池。
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