JP4570817B2 - フェノール系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノール系樹脂組成物に関する。詳しくは、環境水分の変化に対して安定であり、且つ、速硬化性、柔軟性、耐熱性に優れるフェノール系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェール系樹脂は、硬化性、成形性等が比較的良好であり、その硬化物は、電気特性、機械的特性に優れ、バランスのとれた材料として成形材、積層材、ディスクブレーキパッド等の摩擦材、シェルモールド、注形材、発泡材等に幅広く利用されており、工業的に価値のある材料である。
【0003】
しかし、フェノール系樹脂は、環境水分が変化した場合には吸湿し易く、吸湿した場合は、硬化速度が速くなる等、硬化挙動が変化するため、成形時の歩留まりが悪化したり、成形品の性能がばらついたりしていた。ところがこれらに関する有効な対策は何ら提案されていないのが実状である。
【0004】
また、フェノール系樹脂は、優れた機械的特性、電気特性、耐熱性及び接着性などを有するバインダーとなり得る反面、その成形品は柔軟性、振動吸収性が劣るという欠点を持っている。このような諸性能を改善するため、変性フェノール系樹脂の研究が盛んに行われており、油変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂などが検討され、一部実用に供されている。
【0005】
例えば、特開平11−323080号公報には、針入度が10〜500である付加反応型シリコーンをベースとしたシリコーンゲルをフェノール樹脂に加圧式混合機を用いて混練するフェノール樹脂組成物の製造方法が開示されている。しかし、この方法で得られる変性フェノール系樹脂組成物は、柔軟性、振動吸収性等がある程度改善されているものの、環境水分の変化に対する安定性については不十分であった。
【0006】
また、特開平11−071497号公報には、フェノール類とアルデヒド類との重縮合物であって、樹脂中のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が1.0以上、4.5未満であるフェノール樹脂とゴム成分を必須成分として含有するフェノール樹脂組成物であって、該ゴム成分として、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリル酸エステル含有エラストマーを用いるゴム変性フェノール樹脂組成物が開示されている。
【0007】
しかし、該ゴム変性フェノール系樹脂組成物は、柔軟性、振動吸収性等がある程度改善されているものの、耐熱性及び環境水分の変化に対する安定性については不十分であった。因みに、該公報に記載されたo/p比は、赤外吸収スペクトルの800〜840cm-1に現れるパラ結合の吸光度に対する、730〜770cm-1に現れるオルソ結合の吸光度の比によって求められたものである。この測定方法により得られるo/p比の値は、本発明の実施例に記載した測定方法により得られるo/p比の値より低い値となる。具体的には、前者の測定方法によるo/p比が1.0以上、4.5未満なる範囲は、本発明の実施例に記載した測定方法によるo/p比では、およそ0.4以上、2未満の範囲に相当する。
【0008】
さらに、特開2000−144106号公報には、非石綿系摩擦材のバインダーとして、ゴム変性ハイオルソフェノール樹脂を用いることが記載されていて、該ゴム成分としてNBRを用い、ハイオルソフェノール樹脂の樹脂中のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が1.0以上、好ましくは1.0〜4.5であると開示されている。しかし、該ゴム変性フェノール系樹脂組成物は、柔軟性、振動吸収性等がある程度改善されているものの、耐熱性及び環境水分の変化に対する安定性については不十分であった。因みに、該公報記載のo/p比は、上記特開平11−071497号公報と同様の測定法である。従って、上記と同様、該公報に記載された好ましいo/p比の範囲は、本発明のo/p比より低い範囲にある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、環境水分の変化に対して安定であり、且つ、速硬化性、柔軟性、及び耐熱性に優れたフェノール系樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、フェノール系樹脂及びゴム成分を必須成分とする樹脂組成物を調製するに際し、フェノール系樹脂中のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が特定の範囲に制御された樹脂を用い、且つ、特定のゴム成分を特定量含有させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到った。
【0011】
すなわち、本発明は、フェノール系樹脂70〜97重量%、及びシリコーン系ゴム成分3〜30重量%を含むフェノール系樹脂組成物であって、フェノール系樹脂中のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が2〜9であることを特徴とするフェノール系樹脂組成物である。
【0012】
本発明に係わるフェノール系樹脂組成物の好ましい態様として、シリコーン系ゴムの粘度が、50℃において5000〜200000mm2/sである該樹脂組成物が挙げられる。更に、シリコーン系ゴムが、分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン85〜99重量%、及びシラノール縮合用架橋剤1〜15重量%との化合物であることを特徴とする該フェノール系樹脂組成物が挙げられる。
【0013】
上記分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとしては、一般式(1)〔化2〕
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R1、R2は同種または異種の1価の炭化水素基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、キシリル基等のアリール基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化1価炭化水素、nは4〜675の整数を示す)で表されるものが挙げられる。
【0016】
また、上記シラノール縮合用架橋剤としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノオキシ基、及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を3個以上けい素原子に直結してなる多官能シラン化合物が挙げられる。
【0017】
本発明に係わるフェノール系樹脂組成物は、該樹脂組成物100重量部に対し、ヘキサメチレンテトラミン3〜20重量部を含んでもよい。かかる樹脂組成物は、摩擦材用結合剤として好適に用いられる。
【0018】
本発明の特徴は、メチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が特定の範囲に制御されたフェノール系樹脂を用いる点、及び、シリコーン系ゴム成分を特定量含む点にある。シリコーン系ゴム成分としては、好ましくは、上記一般式(1)で表される分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、及びシラノール縮合用架橋剤との化合物が挙げられる。特定の粘度を有するシリコーン系ゴムが好ましい。
【0019】
本発明のフェノール系樹脂組成物は、環境水分の変化に対して安定である。即ち、吸湿速度が遅くて、1重量%吸湿によるゲルタイム変化量が少ない。また、速硬化性、柔軟性、及び耐熱性に優れる。更に、柔軟性に優れることから、ブレーキ材等の摩擦材に使用した場合には、振動吸収性、及び鳴き(brake squeal)特性に優れる。従って、各種成形材料、摩擦材料として使用することができ、産業上極めて有用である。
【0020】
尚、本発明におけるフェノール系樹脂のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)、及び、シリコーン系ゴムの粘度は、後述する実施例に記載した方法により測定した値である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のフェノール系樹脂組成物は、フェノール系樹脂にゴム成分を添加、混合することにより製造される。本発明に用いるフェノール系樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを重縮合することにより製造される樹脂である。
【0022】
フェノール系樹脂を製造するために使用するフェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。好ましくはフェノールである。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。フェノール類とアルデヒド類とを反応する際の触媒としては、酢酸亜鉛等の金属塩類、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の酸類を単独または2種類以上併用して使用できる。通常、触媒の使用量は、フェノール類100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0024】
フェノール系樹脂中のo/p比を高くする有効な方法としては、アルデヒド類としてパラホルムアルデヒドを使用し、マンガン、マグネシウム、亜鉛等の2価の金属塩触媒を用いて、反応系のpHを4〜7とし、反応温度を100〜160℃の範囲に制御する方法が挙げられる。
【0025】
本発明に用いるフェノール系樹脂は、樹脂中のメチレン基におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(以下、o/p比という)が2〜9、好ましくは、o/p比が2.5〜7である。o/p比が2未満であると、硬化速度が十分に速くなく、吸湿前後における硬化速度に差が生じ、成形性にばらつきが出る。場合によっては成形時の歩留まりが悪化することがある。因みに、本発明の実施例に記載した測定方法によるo/p比が2〜9なる範囲は、特開平11−071497号公報に記載された赤外吸収スペクトルによる方法で求めたo/p比では、およそ4.9〜22の範囲に相当する。
【0026】
例えば、硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物の吸湿速度が、25℃、相対湿度(RH)60%の条件において1重量%/hrを超えると、保管時等の環境水分の変化に対して硬化速度が変化する恐れがある。また、硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物の1重量%吸湿によるゲルタイム(秒/150℃)の変化量が10秒を超えると成形品の歩留まりの悪化や成形品の性能ばらつきの原因となることが予想される。また、o/p比が9を超える樹脂を用いると、成形する際に、成形品表面の硬化が速すぎるためガスの抜けが悪く、ふくれが生じ易いため成形が困難である。
【0027】
フェノール系樹脂のo/p比が2〜9である樹脂を用い、更に、特定のゴム成分を特定量含有させることにより、環境水分の影響を受ける前後、即ち、吸湿前後における硬化速度の差が少なく、成形時の硬化速度も速くなり、柔軟性、振動吸収性、耐熱性に優れる成形品が得られる。これは、分子構造上、環境水分の影響を受け難くなっていることに起因するものと推定される。
【0028】
本発明に用いるゴム成分は、シリコーン系ゴムである。シリコーン系ゴムとしては、分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン85〜99重量%とシラノール縮合用架橋剤1〜15重量%との化合物が好ましい。シラノール縮合用架橋剤が1重量%未満である場合は、シリコーン系ゴムの架橋が不充分となり柔軟性、振動吸収性の改善効果が低下するので好ましくなく、15重量%を超える場合は、耐熱性が低下し、好ましくない。
【0029】
上記の好ましいシリコーン系ゴム成分は、加熱、溶融したフェノール系樹脂に、分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン及びシリコーン系乳化剤を添加し、次いで、シラノール縮合用架橋剤及びシラノール縮合用触媒を添加してフェノール系樹脂中で架橋反応を行うことにより調製される。分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとしては、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく、その数平均分子量は、1000〜50000が好ましい。
【0030】
シラノール縮合用架橋剤としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノオキシ基及びアミノ基等から選ばれた少なくとも1種の官能基を3個以上けい素原子に直結した多官能シラン化合物が挙げられる。
【0031】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリス(ジメチルオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン等のケトオキシムシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等のアシルオキシシラン、ビニルトリプロペニルオキシシラン、メチルトリイソブテニルシラン等のアルケニルオキシシラン、メチルトリス(N,N−ジアミルアミノオキシ)シラン等のアミノオキシシラン、ビニルトリス(N−ブチルアミノ)シラン等のアミノシランが挙げられる。好ましくは、テトラ(n−プロポキシ)シラン、メチルトリエトキシシランである。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
フェノール系樹脂100重量部に対し、上記分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンは2.6〜42.4重量部、シラノール縮合用架橋剤は、0.03〜6.4重量部添加することが好ましい。シラノール縮合用架橋剤は、1種または2種以上併用しても良い。
【0033】
シリコーン系乳化剤については、特に制限はなく公知の物を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。好ましい乳化剤としては、一般式(2)〔化3〕
【0034】
【化3】
【0035】
(式中、R1、R2は同種または異種のC2〜C5の2価の炭化水素基、POAはエチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシドの付加物よりなるポリオキシアルキレン基、xは200〜990の整数、y+z=10〜800、且つ、x+y+z<1000である)で表される側鎖にエポキシ基及び/またはポリオキシアルキレン基を有する変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0036】
この乳化剤として使用する変性シリコーンオイルの分子量、つまり上記一般式(2)中のx、y、zの値、あるいは、ポリオキシアルキレン基の鎖長に特に制限はないが、zの値(ポリオキシアルキレン基の数)が増し、鎖長が長くなるとフェノール系樹脂に対する分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの相溶性が増大して樹脂中に含まれるシリコーン系ゴムの分散粒径が微小となり、また、zの値を減らして鎖長が短くなると逆に相溶性が低下してくるという性質がある。即ち、x、y、zの値を選択することにより、フェノール系樹脂中に分散するシリコーン系ゴムの粒子径を0.1〜10μmの範囲に制御することが可能となる。
【0037】
シリコーン系乳化剤の添加量は、特に制限はないが、フェノール系樹脂100重量部に対して0.01〜30重量部とするのが好ましい。0.01重量部未満では、フェノール系樹脂中のシリコーン系ゴムの粒子径を0.1〜10μmの範囲内に制御することが困難となる。また、30重量部を超えるとコスト高になり好ましくない。
【0038】
シラノール縮合用触媒については、特に制限はなく公知の物を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。即ち、従来からシリコーン系ゴムを生成するために使用されている有機錫化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等が挙げられ、好ましくは、有機錫化合物である。
【0039】
具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オレイン酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物が挙げられる。好ましくはジブチル錫ジアセテートである。これらのシラノール縮合用触媒は、分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1〜5重量部添加することが好ましい。
【0040】
本発明に係わるフェノール系樹脂組成物は、フェノール系樹脂70〜97重量%に対し、上記ゴム成分3〜30重量%を含む。ゴム成分の含有量が3重量%未満である場合は、本発明の特徴である柔軟性を有する摩擦材が得られず、30重量%を超える場合は、流動性が低下し成形品の外観が悪化したり機械的強度が低下し好ましくない。
【0041】
シリコーン系ゴムの粘度は、温度50℃において、5000〜200000mm2/sが好ましい。より好ましくは、10000〜100000mm2/sである。粘度が5000mm2/s未満の場合は、シリコーン系ゴムが樹脂表面に分離析出し、流動性等に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。また、粘度が200000mm2/sを超える場合は、耐熱劣化が速くなり、摩擦材に用いた時に鳴きが発生する等の欠点があり好ましくない。
【0042】
本発明のフェノール系樹脂組成物は、フェノール系樹脂及びシリコーン系ゴムを上記比率で含有しておれば、本発明の目的を損なわない範囲において、他のゴム成分を併用してもよい。併用してもよい他のゴム成分としては、NBR、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリル酸エステル含有エラストマー、等が挙げられる。
【0043】
本発明のフェノール系樹脂組成物を成形材料として用いる場合、硬化剤を添加して使用する。硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、各種の2官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン及び環状ホルマール等が挙げられる。硬化性、耐熱性等を考慮するとヘキサメチレンテトラミンが好ましい。硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その添加量はフェノール系樹脂組成物100重量部に対して3〜20重量部、好ましくは7〜15重量部である。3重量部未満では樹脂の硬化が不十分になり、また、20重量部を超えるとヘキサメチレンテトラミンの分解ガスが成形品にふくれ、亀裂などを発生させる。
【0044】
上記のようにして得られる本発明のフェノール系樹脂組成物は、速硬化で柔軟性、振動吸収性、耐熱性に優れ、且つ、環境水分の変化に対して安定である。具体的には、温度25℃、相対湿度(RH)60%における吸湿速度が1重量%/hr以下である。
【0045】
本発明のフェノール系樹脂組成物の用途としては、成形材料用資材、有機繊維結合剤、ゴム配合剤、研磨材用結合剤、摩擦材用結合剤、無機繊維結合剤、電子電気部品被覆剤、摺動部材結合剤、エポキシ樹脂原料及びエポキシ樹脂硬化剤などが挙げられる。摩擦材用結合剤が特に好ましい用途である。
【0046】
上記の硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物に成形用基材を混合することにより摩擦材組成物が調製される。その場合、硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物は、成形用基材の結合剤として用いられる。成形用基材としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、セラミック繊維、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、アルミナ、黒鉛、有機ダストのカシューダスト等が挙げられる。これらは2種以上の混合物として用いることが一般的である。
【0047】
摩擦材組成物中には、本発明に係わる硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物1〜33重量%、及び上記成形用基材67〜99重量%を含む。好ましくは、前者が5〜23重量%、後者が77〜95重量%を含む。本発明に係わる硬化剤を含むフェノール樹脂組成物を結合剤として用いることによって得られる摩擦材組成物は、環境水分の変化に対して安定であり、且つ、速硬化性、柔軟性、耐熱性、及び鳴き(brake squeal) 特性に優れる摩擦材を与える。そのため、本発明に係わる摩擦材組成物は、自動車等の摩擦材用資材として極めて有用である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明について更に詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、実施例及び比較例に記載されている「部」及び「%」は、すべて「重量部」及び「重量%」を示す。尚、実施例に示したo/p比、及びその他の特性は、下記方法により測定した。
【0049】
(1)o/p比
実施例、比較例で得られたフェノール系樹脂に関し2核体の各種異性体の量を下記条件で測定し、下記数式に基づいて算出する。(2核体とは、フェノール2個の間にメチレン基が結合した物である。)液体クロマトグラフ〔ポンプ:島津製作所(株)製、LC−10AD、検出器:日本分光(株)製、UV−970、カラム:GLサイエンス(株)製、商品名 inertsil C4 5μm(4.6ID×150mm)〕を用いる。
【0050】
<測定条件>
温度:37℃、サンプル濃度:0.2%、サンプル注入量:5μl、波長:254nm、溶媒:H2O/CH3CN(アセトニトリル)、流量:1ml/min、グラジエント条件:組成比H2O/CH3CN(70/30vol%)を12分間で(58/42vol%)まで、さらに35分間で(0/100vol%)まで組成を変化させる。その後10分間保持する。検出時間:p−p体;8.4分、o−p体;10.1分、o−o体;13.7分。
【0051】
<計算式>
〔o/p比〕=〔(o-o)+(o-p)/2〕/[(o-p)/2+(p-p)]
上記数式において、(o−o)、(o−p)は、それぞれオルソ−オルソ結合の量、オルソ−パラ結合の量を示す。
【0052】
(2)硬化剤含有フェノール樹脂組成物の調製
実施例、比較例で得られたフェノール系樹脂組成物100部にヘキサメチレンテトラミン10部を加え、粉砕機(ホソカワミクロン製、形式:バンタムミルAP−B型)で粉砕して粉末状の、硬化剤を含むフェノール系樹脂組成物110部を得る。使用する粉砕スクリーンは、ヘリンボーン型0.5mmで粒度を細かくするために2度粉砕する。
【0053】
(3)吸湿速度(重量%/hr)
前項(2)で得られた硬化剤含有フェノール系樹脂組成物を25℃・RH(相対湿度)60%の恒温恒湿槽に入れ、硬化剤含有フェノール系樹脂組成物中の水分が1重量%に達するまでの時間を測定し、吸湿速度を算出する。
【0054】
(4)吸湿によるゲルタイム変化量(秒)
前項(2)及び(3)で得られた硬化剤含有フェノール系樹脂組成物各々について、JIS K6909に規定される方法により測定し、吸湿前のゲルタイムから吸湿後のゲルタイムを差し引いた値を吸湿によるゲルタイム変化量とする。
【0055】
(5)シリコーン系ゴムの粘度(mm2/s:50℃)
実施例、比較例で得られたフェノール系樹脂組成物を4倍重量のアセトンに溶解し、遠心分離器(国産遠心器(株)製、型式:H−200)で回転数166.7S-1で遠心分離を10分間行い、不溶分としてシリコーン系ゴムを分離する。
この操作を繰り返し4回行う。分離したシリコーン系ゴムは、温度80℃の真空乾燥器に入れて0.67kPa以下の圧力において1時間乾燥させアセトンを除去する。乾燥させたシリコーン系ゴムをコーンプレート粘度計(東亜工業(株)製、形式:CV−1S)を用いて、50℃における粘度を測定する。
【0056】
(6)耐熱性試験(重量変化率)(%)
前項(2)で得られた硬化剤含有フェノール系樹脂組成物4.5gをキュラストメーターV型[(株)オリエンテック製]試験機のダイスの上に投入する。2分間放置し樹脂全体が溶融したのを確認してから扉を閉めてダイスを閉じ各々後項(9)で求めた最高硬度到達時間硬化させ、気泡の混入していない約3gの樹脂形品を得る。その樹脂成形品を220℃のオーブン中で1時間焼成し計量する。
得られた焼成後樹脂成形品を温度300℃で100時間熱処理を行い計量する。
熱処理後の重量変化率を下記計算式より算出する。
<樹脂成形品作製のキュラストメーター条件>
温度:150℃、ダイス:P−200、振幅角度:±π/180rad、時間:各々後項(9)で求めた最高硬度到達時間。
<計算式>
Wr=〔(W1−W2)/W2〕×100
ここで;Wr:熱処理後の重量変化率(%)、W1:温度300℃で100時間熱処理後の重量(g)、W2:220℃で1時間焼成後の重量(g)。
【0057】
(7)動的弾性率(Pa)
前項(2)で得られた硬化剤含有フェノール系樹脂組成物を乳酸エチルに溶かし、濃度50重量%の溶液を調製する。この溶液を鉄板に塗布して180℃で5時間硬化させ、厚み約60μmのフィルムを作成する。このフィルムを所定の大きさに切断後、自動動的粘弾性測定器〔(株)エー・アンド・ディ製、商品名 レオバイブロン、形式 DDV−II−E〕を用いて下記条件で測定する。
<測定条件>
温度:−100〜300℃、昇温速度:2℃/min、測定間隔:2℃、初期張力:7.5g、荷重検出レンジ:10db、励振駆動周波数:110Hz、正弦波の片振幅値:0.016cm。
【0058】
(8)摩擦材の配合及び予備成形
前項(2)で得られた硬化剤含有フェノール系樹脂組成物:15重量部、ガラス繊維:10重量部、炭酸カルシウム:50重量部、アラミド繊維:5重量部、黒鉛:10重量部、カシューダスト:10重量部。これらの配合物200gをヘンシェルミキサーにおいて2800回転で3分間混合する。その混合物を、長さ:95mm、幅:95mm、の金型に投入し、室温で、圧力4.9MPaにおいて予備成形し形を整える。
【0059】
(9)最高硬度到達時間(分)
前項(8)で得られた予備成形品を、長さ:100mm、幅:100mm、の金型に投入し、温度150℃、圧力19.6MPaにおいて本成形する。時間は1、3、5、7、9、11、13、15分と変え合計8点成形する。所定時間成形した直後に成形品を取り出し、熱時のロックウェル硬度(HRR)をJIS K7202に規定される方法により各々測定する。成形時間と硬度のグラフを作成し、硬度が上昇し最高に達した時間をグラフから読み取り最高硬度到達時間とする。
【0060】
(10)摩擦材の成形及びロックウェル硬度(HRS)
前項(8)で得られた予備成形品を用いて、成形条件、温度150℃、圧力19.6MPaにおいて、各々前項(9)で求めた最高硬度到達時間、本成形する。その後、オーブン中において180℃で5時間焼成して成形品のロックウェル硬度をJIS K7202に規定される方法により測定する。
【0061】
(11)摩擦材の外観
[吸湿していないもの]
吸湿していない硬化剤含有フェノール樹脂組成物を用いて、前項(8)で得られた予備成形品を前項(10)の本成形条件で各々成形する。
[吸湿したもの]
前項(3)で1重量%吸湿させた硬化剤含有フェノール樹脂組成物を用いて、前項(8)と同様に予備成形品を作成し、前項(10)と同様に各々本成形する。
次に、各々オーブン中において180℃で5時間焼成後、室温に冷却した後、外観を観察する。
〔評価基準〕評価基準は次の通り。○:ひび、膨れ、亀裂がないもの、△:ひびが発生したもの、×:膨れ、亀裂ができて成形できないもの。
【0062】
実施例1
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置にフェノール100部、80重量%パラホルムアルデヒド28部及び酢酸亜鉛0.20部を仕込み後、徐々に昇温して温度が100℃に達してから60分間還流反応を行った。内温が160℃に達するまで徐々に昇温しながら第2反応及び常圧脱水を4時間かけて行い、次いで真空脱水を行った。内容物を反応器より取り出して常温で固形のフェノール系樹脂100部を得た。次に、得られたフェノール系樹脂100部を170℃の温度で加熱、溶融させた。次に、これを撹拌しながら上記一般式(1)で表され、R1、R2がメチル基である数平均分子量33000の分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名BY16−873)10部を添加し、1時間撹拌した。
【0063】
次に、上記一般式(2)で表され、エポキシ基とPOA基の両方を持ち25℃における粘度が3500mm2/sの変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名SF8421)を1.0部加え30分間撹拌を行った。この反応液中の水分をカールフイツシヤー式水分計で測定したところ、0.02重量%であった。反応液中の水分が0.2重量%になるようにイオン交換水を加えた後、シラノール縮合用架橋剤としてテトラ(n−プロポキシ)シラン0.4部とシラノール縮合用触媒としてジ−n−ブチル錫ジアセテート0.1部の混合物を加えてそのまま170℃の温度で30分攪拌した。次に、この反応液にイオン交換水をフェノール系樹脂組成物100部に対し、2.4部/hr加え、発生する縮合物を系外に留出させながら170℃において2時間のシリコーンの架橋反応を行った後、系内に残る水分を1.34kPaの圧力において吸引除去し、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0064】
実施例2
実施例1と同様の反応装置にフェノール100部、80重量%パラホルムアルデヒド29部及び塩化亜鉛0.20部を仕込んだ後、徐々に昇温して温度が100℃に達してから60分間還流反応を行った。内温が160℃に達するまで徐々に昇温しながら第2反応及び常圧脱水を4時間かけて行い、次いで真空脱水を行った。内容物を反応器より取り出して常温で固形のフェノール系樹脂を得た。次に、得られたフェノール系樹脂から実施例1と同様にゴム成分を含有する、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0065】
実施例3
シラノール縮合用架橋剤とシラノール縮合用触媒の混合物を添加後、イオン交換水を加えるまでの時間を2時間攪拌した以外は、実施例1と同様にゴム成分を含有する、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0066】
実施例4
シラノール縮合用架橋剤とシラノール縮合用触媒の混合物を添加後、イオン交換水を加えるまでの時間を5時間攪拌した以外は、実施例1と同様にゴム成分を含有する、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0067】
比較例1
フェノールノボラック樹脂(三井化学(株)製、ノボラック#2000)を使用した以外は、実施例1と同様にゴム成分を含有する、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0068】
比較例2
実施例2で得られたフェノール系樹脂に、シリコーン系ゴム含有量が1重量%になるように数平均分子量33000の分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン1部を添加し、上記一般式(2)で表され、エポキシ基とPOA基の両方を持ち25℃における粘度が3500mm2/sの変性シリコーンオイルを0.05部加え、シラノール縮合用架橋剤としてテトラ(n−プロポキシ)シラン0.05部とシラノール縮合用触媒としてジ−n−ブチル錫ジアセテート0.01部の混合物を加えた以外は、実施例1と同様にして、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0069】
比較例3
実施例1と同様の反応装置にフェノール100部、80%パラホルムアルデヒド28部及び酢酸亜鉛0.25部を仕込み、徐々に昇温して温度が110℃に達してから60分間還流反応を行った。内温が160℃に達するまで4時間かけて、系内にある水分を39.9kPaの圧力において吸引除去しながら昇温して第2反応を行った。次いで真空脱水を行い、内容物を反応器より取り出して常温で固形のフェノール系樹脂を得た。次に、得られたフェノール系樹脂から実施例1と同様にゴム成分を含有する、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0070】
比較例4
実施例2で得られたフェノール系樹脂に、シリコーン系ゴム含有量が36重量%になるように数平均分子量33000の分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン50部を添加し、上記一般式(2)で表され、エポキシ基とPOA基の両方を持ち25℃における粘度が3500mm2/sの変性シリコーンオイルを3.0部加え、シラノール縮合用架橋剤としてテトラ(n−プロポキシ)シラン2.5部とシラノール縮合用触媒としてジ−n−ブチル錫ジアセテート0.5部の混合物を加えた以外は、実施例1と同様にして、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0071】
比較例5
ステンレス製重合反応器にアクリロニトリル30部、1,3−ブタジエン70部、脂肪酸石ケン2.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、及び水200部を装入して、窒素雰囲気下において、撹拌下、45℃で20時間重合反応を行い、転化率90重量%で重合を終了した。未反応の単量体を減圧ストリッピングにより除き、固形分濃度約30重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックスを得た。また、ラテックスより固形分を回収し、乾燥後、元素分析によりゴム中の1,3−ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の含有量を求めたところ、1,3−ブタジエン単位が71%、アクリロニトリル単位が29%であった。
【0072】
次に、実施例1と同様に、反応装置にフェノール100部、80重量%パラホルムアルデヒド28部及び酢酸亜鉛0.20部を仕込んだ後、徐々に昇温して温度が100℃に達してから60分間還流反応を行った。この反応液に、上記記載のアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックス26.7部と47重量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(日本乳化剤(株)製、商品名:Newcol−271S)0.3部を充分混合したものを1時間かけて加えながら、内温が160℃に達するまで徐々に昇温しつつ、同時に常圧脱水を4時間かけて行い、次いで真空脱水を行った。系内に残る水分を1.34kPaの圧力において吸引除去し、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0073】
比較例6
実施例1と同様の反応装置を用い、先ず、酢酸エチル50部を仕込み、次に、ブチルアクリレート75部、アクリロニトリル20部、グリシジルメタアクリレート2部、ブチルメタアクリレート3部、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部、酢酸エチル50部よりなる混合物を常圧、窒素雰囲気下、酢酸エチルを還流させながら、8時間逐次滴下して重合した。引き続き、酢酸エチルの還流下で2時間後重合を行い、アクリルゴムの酢酸エチル溶液を得た。このゴム溶液の固形分は、49重量%であった。この溶液の一部を乾燥して得られた重合体の5重量%酢酸エチル溶液の粘度は、25℃で1.5mPa・sであった。
【0074】
次に、実施例1と同様の反応装置に実施例1で得られたフェノール樹脂100部、上記のアクリルゴムの酢酸エチル溶液20部を仕込んだ後、160℃の温度で留出する酢酸エチルを抜き出しながら60分間加熱撹拌した。更に、系内に残る酢酸エチル、水分等を1.34kPaの圧力において吸引除去し、水分量が0.05重量%以下のフェノール系樹脂組成物を得た。
【0075】
<特性評価>
実施例、及び比較例記載のフェノール系樹脂のo/p比、シリコーン系ゴムの粘度、硬化剤含有フェノール系樹脂組成物の吸湿速度及び吸湿によるゲルタイムの変化量を測定した。又、硬化剤含有フェノール系樹脂組成物の耐熱性試験として熱処理後の重量変化率、柔軟性評価として動的粘弾性を測定した。結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0076】
<摩擦材の調製及び評価>
実施例、及び比較例で得られたフェノール系樹脂組成物をそれぞれ用いて、前項(8)記載の配合割合の摩擦材を調製した。速硬化性の評価として最高硬度到達時間の測定、及び、摩擦材の柔軟性評価として、ロックウェル硬度を測定した。得られた結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<[表1]〜[表3]の説明>
ゴム含有量(重量%)は、下記数式により算出した。
GUM=〔(A+B)/(A+B+C)〕×100
ここで、GUM:ゴム含有量(重量%)、A:分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン量(g)、B:シラノール縮合用架橋剤量(g)、C:フェノール系樹脂量(g)。但し、比較例5及び比較例6については、A及びBは、NBR又はアクリルゴムの固形分重量(g)とした。
また、比較例3、5〜6の「−」は、測定不能を意味する。
【0081】
<実施例の考察>
〔表1〕〜〔表3〕の記載より明らかなように、o/p比が適度に高く、特定のゴム成分を特定量含む実施例1〜4で得られたフェノール系樹脂組成物は、ロックウェル硬度及び動的弾性率(E′)の値が低いことから柔軟性に優れ、熱処理後の重量変化率が低いことから耐熱性に優れる。また、ゲルタイムが短く、熱時のロックウェル硬度の最高硬度到達時間が短いことから、速硬化性に優れる。
更に、吸湿速度が小さく、1重量%吸湿によるゲルタイム変化量が少ないことから環境水分の変化に対して安定である。
【0082】
これらに対して、o/p比が本発明の範囲より低い比較例1で得られたフェノール系樹脂組成物は、ゴム成分を含有し、柔軟性、耐熱性は良いものの、吸湿速度が大きく、1重量%吸湿によるゲルタイム変化量も大きく、環境水分に対して不安定である他、吸湿した樹脂組成物を用いて成形した摩擦材にひびが発生した。ゴム成分が本発明の範囲より少ない比較例2は、ロックウェル硬度、及び動的弾性率が高く、柔軟性に欠けている他、熱処理による重量変化率が大きいことから、耐熱性に劣る。o/p比が本発明の範囲より高い比較例3は、成形時にガスぶくれを生じ、得られる摩擦材の外観が劣っている。ゴム成分が本発明の範囲より多い比較例4は、得られる摩擦材にひびが発生した。シリコーン系ゴム以外のゴム成分を用いた比較例5及び比較例6は、熱処理による重量変化率が大きいことから、耐熱性に劣る。また、1重量%吸湿によるゲルタイム変化量も大きく、環境水分の変化に対して不安定である。
【0083】
【発明の効果】
本発明のフェノール系樹脂組成物は、環境水分の変化に対して安定である。即ち、吸湿速度が遅くて、1重量%吸湿によるゲルタイム変化量が少ない。また、速硬化性、柔軟性、及び耐熱性に優れる。更に、柔軟性に優れることから、ブレーキ材等の摩擦材に使用した場合には、振動吸収性、及び鳴き(brake squeal)特性に優れる。従って、各種成形材料、摩擦材料として使用することができ、産業上極めて有用である。
Claims (9)
- フェノール系樹脂70〜97重量%、及びシリコーン系ゴム成分3〜30重量%を含むフェノール系樹脂組成物であって、フェノール系樹脂のメチレン結合におけるパラ結合に対するオルソ結合の比(o/p比)が2.5〜9であることを特徴とするフェノール系樹脂組成物。
- シリコーン系ゴムの粘度が、50℃において5000〜200000mm2/sである
ことを特徴とする請求項1記載のフェノール系樹脂組成物。 - シリコーン系ゴムが、分子の両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン85〜99重量%、及びシラノール縮合用架橋剤1〜15重量%との化合物であることを特徴とする請求項1記載のフェノール系樹脂組成物。
- シラノール縮合用架橋剤が、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトオキシム基、アルケニルオキシ基、アミノオキシ基、及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を3個以上けい素原子に直結してなる多官能シラン化合物である請求項3記載のフェノール系樹脂組成物。
- 請求項1記載のフェノール系樹脂組成物100重量部及びヘキサメチレンテトラミン3〜20重量部を含むフェノール系樹脂組成物。
- 25℃、相対湿度60%における吸湿速度が1重量%/hr以下である請求項6記載の
フェノール系樹脂組成物。 - 1重量%吸湿によるゲルタイムの変化量が10秒以下である請求項6記載のフェノール系樹脂組成物。
- 請求項6記載のフェノール系樹脂組成物1〜33重量%、及び、成形用基材67〜99重量%を含む摩擦材組成物。
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