JP4568914B2 - 真偽判別可能な情報担持体 - Google Patents

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Description

本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等の貴重印刷物の分野において、特に、観察角度によって変化する効果を付与した偽造防止用又は真偽判別用の情報担持体にかかわるものである。
近年、セキュリティを要する貴重印刷物等には、新しい意匠性を持ち、偽造防止効果の高い偽造防止要素及び印刷技術が望まれている。このため、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク及び光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合することで、観察角度によって色彩変化を生じさせるカラー・フリップフロップ性に優れた印刷物又は観察角度によって画像が変化するホログラム等の光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
前述のような光学的な変化を示す偽造防止印刷物は、一般的に高価で特殊な装置及び材料を必要とするため、付加的な製造工程が必要になり、コスト的にも負荷が高くなるといった問題があった。
そこで、本出願人は、以上のような問題点を解決するために、一般的で、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用し、特定の観察角度において、人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明を出願している(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1による偽造防止用情報担持体は、比較的安価なアルミニウム粉末又は真鍮粉末を成分とした市販の銀色又は金色インキを用いて、一般的な印刷手段により、ホログラム的な効果を呈するセキュリティ画像を直接的に印刷物の基材に付与する構成を特徴とし、コストパフォーマンス及び機械的な流通強度が優れた偽造防止及び真偽判別印刷物である。
この特許文献1で開示された偽造防止用情報担持体は、一つ目の効果として、基材上に適切な面積率の疎密差を持つ二つの光輝性材料層により第1の印刷画像が形成されているとき、拡散光領域においては、二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量が互いに小さくなるため、第1の印刷画像を容易に認識することが可能になる。一方、正反射光領域では、二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量が共に極端に大きくなるため、第1の印刷画像を視認することが難しくなる。
さらに、二つ目の効果として、前述した面積率の極めて密な光輝性材料層に形成された第1の印刷画像と、その光輝性材料に比較して可視光吸収性の高い色材料を用いて形成された面積率の極めて疎な色材料層を重ねた層による第2の印刷画像は、拡散光領域において、観察者の目に到達する反射光量が互いに小さくなるため、構成成分は異なっているにもかかわらず、二つの層からの色調及び光反射性の差を視認することが難しく、同じ程度の刺激として人の目に観察されるため第2の印刷画像は視認できない。一方、正反射光領域では、光輝性材料のみの層から観察者の目に到達する反射光量は極端に大きくなるのに対して、可視光吸収性の高い色材料を光輝性材料層に重ねた層から観察者の目に到達する反射光量は相対的に小さくなるため、反射光量の差による色調差によって、第2の印刷画像を容易に視認することが可能になる。
また、本出願人は、可視光領域における観察では埋め込み画像を認知できず、赤外線領域における観察では埋め込み画像を認知できる網点印刷物を出願している(例えば、特許文献2参照)。この技術は、目視では可視画像の中に不可視の埋め込み画像が付与されていることに気が付かないため、偽造防止として有効な手段である。
この特許文献2による網点印刷物は、一般商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のプロセス基本4原色インキを用いて、可視及び不可視画像を生成し、現在の写真製版装置では複製が困難であり、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いない限り認識できない不可視画像を安価に印刷する方法である。この発明は、一般の商業印刷で使用されるプロセス基本4原色インキのうちのブラック(K)を、紫外線領域から赤外線領域まで全域にわたり吸収を示すカーボンブラックを主体とした黒色顔料と、赤外線を吸収しないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を重ね合せたブラック(K)とを利用し、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて観察することにより、カーボンブラック含有のブラック(K)インキで構成された画像を視認することができる原理を利用している。
この特許文献2による発明以前の不可視画像を埋め込むセキュリティ印刷物は、赤外線領域で吸収を示すカーボンブラックを主体としたインキと、赤外線領域で吸収しないクロモファインブラックインキを使い分けて印刷することで、高いセキュリティ性を維持していたが、この特許文献2により、プロセス基本4原色インキを備えたインクジェットプリンタで容易に作製可能となった。
特許第3398758号公報 特許第3544536号公報
しかしながら、特許文献1による発明は、二つの効果を重ね合わせることで、拡散光領域においては第1の印刷画像が視認でき、正反射光領域においては第2の印刷画像を確認できる偽造防止情報担持体を形成できるが、第1の印刷画像を構成している光輝性材料層と、第2の印刷画像を構成している色材料層を、同一ピッチで精密に刷り合わせる必要がある。したがって、第1の印刷画像と第2の印刷画像の刷り合わせを、常に適正に品質を管理しながら製造することが必要である。
また、特許文献1記載の偽造防止情報担持体を形成するためには、第1の印刷画像を構成する光輝性材料層と、第2の印刷画像を構成している色材料層が、拡散光領域において同色(近似色)に見えるような適切な面積率の疎密差を見極めなければならない。それには、可視光吸収性の高い色材料の色彩の種類と面積率を何通りにも変えて印刷し、第1の印刷画像から第2の印刷画像へ最適なスイッチ性が得られるような、可視光吸収性の高い色材料の色彩と面積率を見極めるまでに、多大な労力を必要とする。
また、観察角度による反射光を利用して、二つの画像がスイッチして視認できるものであるため、観察角度及び照射している光等の条件により、二つの画像の視認状態に影響があり、完全にスイッチした画像を視認することには若干の問題点があった。
また、最適な画像のスイッチ性を得るために、可視光吸収性の高い色材料による第2の印刷画像の面積率は、15〜30%の特定の範囲で形成されなければならない。さらに、第1の印刷画像の極めて密な光輝性材料層の上に規則性を合せて印刷することから、第2の印刷画像は、2値画像で表現することができる文字や記号等の比較的単純なデザインしか表現できなかった。
本発明は、一般的で比較的安価な材料及び印刷方式を用い、大量生産も容易である。また、人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、別の情報に変化するため、カラー複写機では再現不可能な偽造防止情報担持体を提供するものである。
本発明は、赤外線反射性を有する基材と、基材上の印刷画像領域に、第1の印刷層、第2の印刷層及び第3の印刷層とが順次積層された偽造防止用情報担持体であって、第1の印刷層は、基材とは異なる色で、かつ、赤外線を吸収しない有色インキにより印刷された画像部と背景部から成る第1の印刷画像であり、第2の印刷層は、基材とは異なる色で、かつ、赤外線を吸収する光輝性材料を有するインキにより印刷された画像部と背景部から成る第2の印刷画像であり、第3の印刷層は、赤外線を吸収しない透明インキにより印刷された画像部と背景部から成る第3の印刷画像であり、第1の印刷層と第2の印刷層は、印刷画像領域内において同じ大きさ及び形状に配置され、第3の印刷層は、前記印刷画像領域の少なくとも一部に配置されていることを特徴とした偽造防止用情報担持体である。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像が面積率15〜100%で、画像部と背景部の面積率の差が15〜50%の範囲であり、第2の印刷画像は、面積率が40〜100%で、画像部と背景部との面積率の差が10〜20%の範囲であることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像を印刷するための有色インキ及び第2の印刷画像を印刷するための光輝性材料を有するインキが黒成分を有しており、有色インキの黒成分が光輝性材料を有するインキの黒成分よりも色濃度が高いことを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第3の印刷画像が面積率0〜100%の範囲内で階調表現された多階調画像であることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第3の印刷画像の画像部がロゴマーク、番号、文字、記号又はバーコードの認証性を有する有意味情報であって、第3の印刷画像の画像部と背景部の面積率の差が75%以上あることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、網点形状の大小及び疎密によって形成されていることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、万線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、波線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、破線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第2の印刷画像を形成する光輝性材料が、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄のいずれかの光輝性材料を含む印刷インキであることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第3の印刷画像を形成する透明インキが、透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキのいずれかであることを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第3の印刷画像を印刷する透明インキに、更に蛍光材料を含有したことを特徴とする。
本発明の偽造防止用情報担持体は、第3の印刷画像の一部に、第3の印刷画像を印刷する透明インキに蛍光材料を含有させたインキで第4の印刷画像を形成したことを特徴とする。
本発明は、以上の構成であることから次の効果が生じる。
本発明の偽造防止用情報担持体を可視光下で観察した場合、正反射光領域では透明インキにより印刷された第3の印刷画像が視認され、拡散光領域では有色インキにより印刷された第1の印刷画像が視認され、更に赤外線領域で観察した場合には、光輝性材料を有するインキにより印刷された第2の印刷画像を視認することができる。
本発明は、第3の印刷画像が透明インキで印刷されていることから、特許文献1記載の発明のように、光輝性材料層と色材料層が、拡散光領域において同色(近似色)に見えるような適切な面積率の疎密差を見極める作業を必要としないため、簡単に形成できる。
本発明は、第3の印刷画像が透明インキにより印刷されていることにより、特許文献1記載の発明のように、拡散光領域における第1の印刷画像の観察において、第3の印刷画像が若干見えてしまうこともなく、第1の印刷画像から第3の印刷画像へ明瞭に画像がスイッチする。
本発明の第3の印刷画像は、特許文献1記載の発明のように、特定の面積率といった階調制限がないので、文字や単純な記号だけではなく、顔画像や写真画像などの複雑な画像も階調のある画像で表現することが可能である。
また、第2の印刷画像を構成する光輝性材料は、赤外線領域における拡散光状態において赤外線を吸収するのに対し、第1の印刷画像や第3の印刷画像を構成する透明インキや一般的なプロセスインキは、赤外線を吸収しないため、赤外線領域の観察においては第2の画像だけを視認できることを利用し、第2の印刷画像の下に赤外線を吸収しないインキで第3の印刷画像となるカモフラージュ画像を形成し、可視光領域における観察画像と赤外線領域における観察画像を異ならせることができる。
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
図1は、本発明の情報担持体(1)を示す。図2は、本発明の第1の印刷画像(4)を示す。図3は、本発明の第2の印刷画像(5)を示す。図4は、本発明の第3の印刷画像(6)を示す。図5は、本発明の情報担持体を観察するときの照明光源(7)と視点(8)と情報担持体の位置関係を示す。図6は、本発明の情報担持体を赤外線領域で観察するときの視点(8)と赤外線光源(9)と赤外線カメラ(10)と情報担持体の位置関係を示す。
図7は、本発明の印刷画像領域(3)を観察する視点角度に依存した観察図を示す。図8は、本発明の情報担持体(1)の断面図であり、詳しくは、図1の情報担持体(1)のX−X部の断面図である。図9は、本発明の実施形態において仮に考えられる8つの積層パターン領域の断面図である。図10は、本発明の実施形態において、拡散光領域における「C」の背景部(4b)に、「A」の背景部(5b)を重ねた領域を基準値0としたときの各積層パターン領域の色差ΔEを示す。図11は、本発明の実施形態において、正反射光領域における「C」の背景部(4b)に、「A」の背景部(5b)を重ねた領域を基準値0としたときの各積層パターン領域の色差ΔEを示す。
図12は、実施例1における情報担持体(27)を示す。図13は、実施例1における第1の印刷画像(29)を示す。図14は、実施例1における第2の印刷画像(30)を示す。図15は、実施例1における第3の印刷画像(31)を示す。図16は、実施例1における正反射光領域で観察した第3の印刷画像(32)を示す。図17は、実施例1における印刷画像領域(28)を観察する視点角度に依存した観察図を示す。
(発明の概要)
本発明の情報担持体(1)は、基材(2)に図2の第1の印刷画像(4)を印刷し、その上に図3の第2の印刷画像(5)を印刷し、更にその上に図4の第3の印刷画像(6)を印刷することで形成され、図1の情報担持体(1)をX−X部の断面を観察すると図8のような層構造を成している。
なお、本発明において赤外線を吸収しない有色インキにより印刷された第1の印刷画像と、赤外線吸収特性を持つ光輝性材料を有するインキにより印刷された第2の印刷画像は、同じ大きさ及び形状により積層されて配置されており、その同じ領域内の全部又は一部に赤外線を吸収しない透明インキにより印刷された第3の印刷画像が配置されていることから、本発明における印刷画像領域とは、基材上の全部又は一部において、第1の印刷画像及び第2の印刷画像が印刷されている領域のことを示している。
基材は、赤外線を反射する用紙等を用い、第2の印刷画像(5)は、赤外線を吸収し可視光で光沢を有するインキを用い、第1の印刷画像(4)と第3の印刷画像(6)は、赤外線を吸収しないインキを用いることが必須条件となる。ここでの赤外線を吸収しないインキとは、赤外線吸収材料を含まないインキのことである。また、各印刷層の面積率を変化させることで、本発明の特徴である一つの効果を発揮する。このとき、第1の印刷層となる第1の印刷画像(4)のコントラストを強調し、第2の印刷層となる第2の印刷画像(5)のコントラストを抑えることで、第2の印刷画像(5)をカモフラージュし、可視光において第1の印刷画像(4)である「C」が視認され、第2の印刷画像(5)である「A」は視認できない。ただし、第2の印刷画像(5)は、赤外線領域で観察したときには「A」を視認できる程度のコントラストを有している。
また、図7に、本発明の情報担持体(1)の特殊な効果を示す。情報担持体(1)を観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変えることで、第1の印刷画像(4)である「C」から第3の印刷画像(6)である「B」に視認情報が変わり、また、赤外線の拡散光領域で観察することで第2の印刷画像(5)である「A」が視認できる。したがって、異なる二つの観察方法で「A」、「B」、「C」と三つの画像を視認することができる。
なお、基材(2)は、白色用紙に限定するものではなく、上質紙、コート紙又はプラスチックカード等の印刷画像を担持できる平面を有し、赤外線領域において反射特性を示すものであればよい。
また、印刷方式は、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷又は凹版印刷等、特に限定するものではない。
また、以降の説明では、一定面積の印刷領域において、下層の印刷画像を隠蔽しうる面積を%で表した面積率とし、特に網点形状の大小及び疎密で下層の印刷画像を隠しうる場合を網点面積率として記載するが、網点形状に限定するものではなく、万線形状、波線形状又は破線形状の面積率としてもよい。
(第1の印刷層の構成)
ここで具体的な各印刷層の構成を説明する。
まず、第1の印刷層となる図2の第1の印刷画像(4)は、赤外線領域で吸収しない特性を有するインキにより印刷される。この赤外線領域で吸収しないインキとしては、例えば、公知の材料である赤外線反射材料のクロモファインブラック(大日精化工業株式会社製)を配合することにより得ることができるが、商業印刷用のプロセスインキであるシアン(C)、マセンダ(M)及びイエロー(Y)のように、あくまでも赤外線領域で吸収しない特性を有すればよく、配合する材料等はこれに限定されない。
このとき、第1の印刷画像(4)の網点面積率は15〜100%であり、「C」の画像部(4a)の網点面積率は50〜100%、「C」の背景部(4b)の網点面積率は15〜65%で、画像部と背景部の網点面積率の差が15〜50%の範囲で印刷が施されている。
(第2の印刷層の構成)
第2の印刷層となる図3の第2の印刷画像(5)は、赤外線吸収特性を持つ光輝性材料を配合して作られたインキにより印刷される。この光輝性材料としては、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉、錫粉又はリン化鉄などを成分とする銀色、青味金色又は赤味金色の材料であり、また赤外線領域で吸収するインキとしては、例えば、紫外線硬化型の金属光沢インキ「東洋インキ製造株式会社 UV FLASH DRY FD OL シルバー」を用いることができるが、あくまでも可視光で光沢を有し、かつ、赤外線領域で吸収する特性を有すればよく、これに限定されない。
このとき、第2の印刷画像(5)の網点面積率は40〜100%であり、「A」の画像部(5a)の網点面積率は50〜100%、「A」の背景部(5b)の網点面積率は45〜85%で、画像部と背景部の網点面積率の差が10〜20%の範囲で印刷が施されている。
(第3の印刷層の構成)
第3の印刷層となる図4の第3の印刷画像(6)を形成するBの画像部(6a)は、赤外線を吸収しない透明インキにより印刷される。この透明インキとしては、例えば、透明ニス、インキワニス、透明インキ、メジウムインキ、半透明着色インキ又は半透明着色ニスを用いることができ、具体的には赤外線透過特性を有する紫外線硬化型の透明ニス「T&A TOKA UVマット OPニス 3H」がある。ただし、あくまでも赤外線を吸収しない透明インキであればよく、これらに限定されるものではない。また、紫外線硬化型に限定するものでもなく、酸化重合型インキ、浸透型インキ、過熱乾燥インキ、蒸発乾燥インキなどの印刷インキであってもよい。
第3の印刷層は、網点面積率が0〜100%の範囲で多階調画像として印刷されるものであるが、この場合、画像部を透明インキにより印刷し、背景部は印刷しない領域としてもよい。
(拡散光領域と正反射光領域、赤外線領域の定義)
図5は、前述した情報担持体(1)を、拡散光領域及び正反射光領域で観察したときの照明光源(7)、視点(8)及び情報担持体(1)の三つの位置関係を図示したものである。情報担持体(1)を、照明光源(7)が入射角−45°のときに垂直方向0°の視点(8)の位置で観察した場合、拡散光領域の観察(a)となり、情報担持体(1)を、照明光源(7)が入射角−45°のときに垂直方向0°から45°傾けた視点(8)の位置で観察した場合、正反射光領域の観察(b)となる。また、図6のように、情報担持体(1)に対する赤外線光源(9)の入射光を−45°にし、垂直方向0°から赤外線カメラ(10)を通して情報担持体(1)を観察した場合、赤外線の拡散光が観察されるため、赤外線領域の観察(c)となる。なお、赤外線カメラについては、赤外線領域が観察可能であれば特に限定しないが、例えば、波長920nmの照明光源と映像モニターを備えた赤外インク可視化装置〔グローリー工業株式会社〕を用いることができる。
本実施形態における情報担持体(1)は、図7のように、拡散光領域で観察すると「C」の画像が視認され、正反射光領域で観察すると「B」の画像が視認され、更に赤外線の拡散光領域で観察すると「A」の画像が視認される。
これは、図5に示した拡散光領域の観察(a)及び正反射領域の観察(b)における色差ΔEを用いて説明することができる。色差ΔEとは、Lab空間での二つの色の距離であり、色差ΔEが小さいほど両者の色の差を認識しづらく、色差ΔEが大きいほど両者の色の差を認識しやすいことを表す定量的な評価方法である。
図8の情報担持体(1)における印刷画像領域(3)の積層パターンの層構成としては、3層構造で重ね刷りされた領域として考えた場合、例えば、黒色インキを網点面積率100%で印刷した「C」の画像部(4a)、黒色インキを網点面積率50%で印刷した「C」の背景部(4b)、金属光沢インキを網点面積率70%で印刷した「A」の背景部(5b)、金属光沢インキを網点面積率80%で印刷した「A」の画像部(5a)、透明ニス網点面積率100%の「B」の画像部(6a)、透明ニス網点面積率0%の「B」の背景部(6b)から成っており、「A」、「B」、「C」それぞれの画像部又は背景部のどちらかが3層重ね合わされた領域から成っている。そこで、本発明の3層の印刷画像の組合せとして考えられる八つの積層パターン領域を抽出し、拡散光領域の観察(a)及び正反射領域の観察(b)における八つの積層パターン領域の色差ΔEを測定し、画像がスイッチすることを説明する。
図9は、情報担持体(1)の異なる八つの積層パターン領域の断面図である。
図9(a)は、「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)が重ねられ、更にその上に実際には印刷されない「B」の背景部(6b)とした領域(11)の断面図、図9(b)は「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域(12)の断面図、図9(c)は「C」の背景部(4b)に「A」の画像部(5a)を重ねた領域(13)の断面図、図9(d)は「C」の背景部(4b)に「A」の画像部(5a)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域(14)の断面図、図9(e)は「C」の画像部(4a)に「A」の背景部(5b)を重ねた領域(15)の断面図、図9(f)は、「C」の画像部(4a)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域(16)の断面図、図9(g)は「C」の画像部(4a)に「A」の画像部(5a)を重ねた領域(17)の断面図、図9(h)は「C」の画像部(4a)に「A」の画像部(5a)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域(18)の断面図である。
図9(a)の領域(11)を、色差の一方の色となる基準値0と定め、その他の七つの積層パターン領域を他方の色とし、変角分光測色システムGCMS−4型〔村上色彩技術研究所製〕を使用して色差ΔEを測定した。
(拡散光領域の測定)
拡散光領域の観察(a)を装置上で再現するために、測定サンプルに対する光源の入射光を−45°に固定し、受光角度を−10°から0°まで変化させて測定し、正反射領域の観察(b)を装置上で再現するために、測定サンプルに対する光源の入射光を−45°に固定し、受光角度を40°から50°まで変化させて測定した。
図10のグラフ(19a)は、図5の拡散光領域の観察(a)の測定結果である。
図9(a)の領域(11)を色差ΔEの基準値0として、図9(b)の領域(12)との色差ΔEを示す折れ線(20)の値が0.6前後、図9(d)の領域(14)との色差ΔEを示す折れ線(21)の値が2.3前後、図9(c)の領域(13)との色差ΔEを示す折れ線(22)の値が3.3前後と、1層目が「C」の背景部(4b)の各領域は相対的に小さい値、つまり基準となる図9(a)の領域(11)と比較的近い色となった。
それに対し、図9(a)の領域(11)を色差ΔEの基準値0として、図9(h)の領域(18)との色差ΔEを示す折れ線(23)の値が6.6前後、図9(f)の領域(16)との色差ΔEを示す折れ線(24)の値が7.1前後、図9(e)の領域(15)との色差ΔEを示す折れ線(25)の値が9.5前後、図9(g)の領域(17)との色差ΔEを示す折れ線(26)の値が12.2前後と、1層目が「C」の画像部(4a)の各領域は相対的に大きい値、つまり基準となる図9(a)の領域(11)と異なる色であった。
拡散光領域の観察(a)では、「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)を重ねた図9(a)の領域(11)を基準値0とした場合、「C」の背景部(4b)に重ねられる2層目の「A」の印刷画像(5)及び3層目の「B」の印刷画像(6)が、どの組合せであろうと色差ΔEが0.6〜3.3前後の相対的に小さい値を示しているのに対して、「C」の画像部(4a)に2層目の「A」の印刷画像(5)及び3層目の「B」の印刷画像(6)が重ねられた領域との色差ΔEは、6.6〜12.2前後と相対的に大きい値を示していることから、「A」の印刷画像(5)及び「B」の印刷画像(6)は視認し難く、「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の色差のみ強く視認できるため、拡散光における観察では、黒色インキで印刷される1層目の「C」という画像が認識される結果となる。
(正反射光領域の測定)
次に、図11のグラフ(19b)は、図5の正反射領域の観察(b)の測定結果である。
図9(a)の領域(11)をΔEの基準値0とした場合、図9(h)の領域(18)との色差ΔEを示す折れ線(23)の値が74.5前後、図9(d)の領域(14)との色差ΔEを示す折れ線(21)の値が73.7前後、「C」の画像部(4a)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた図9(f)の領域(16)との色差ΔEを示す折れ線(24)の値が70.7前後、「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた図9(b)の領域(12)との色差ΔEを示す折れ線(20)の値が66.8前後と、3層目が「B」の画像部(6a)の各領域は相対的に大きい値、つまり基準となる図9(a)の領域(11)と異なる色であった。
それに対し、図9(e)の領域(15)との色差ΔEを示す折れ線(25)の値が41.2前後、図9(g)の領域(17)との色差ΔEを示す折れ線(26)の値が32.3前後、図9(c)の領域(13)との色差ΔEを示す折れ線(22)の値が12.7前後と、3層目がBの背景画像(6b)の各領域は相対的に小さな値、つまり基準となる図9(a)の領域(11)と比較的近い色であった。
正反射領域の観察(b)では、1層目のCの印刷画像(4)及び2層目のAの印刷画像(5)がどの組合せであろうと、3層目にBの画像部(6a)が重ねられる場合に色差ΔEが66.8〜74.5と相対的に大きな値を示しているのに対して、3層目にBの背景部(6b)となるBの画像部(6a)が重ね刷りされていない場合は、色差ΔEが相対的に小さな値となっていることから、「A」の印刷画像(5)及び「C」の印刷画像(4)を視認し難く、Bの画像部(6a)とBの背景部(6b)の色差のみ強く視認できるため、正反射光における観察では透明ニスで印刷される3層目の「B」という画像が認識される結果となる。
すなわち、図1の印刷画像領域(3)は、観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることによって、図7のように「C」の画像が潜像化して「B」の画像に変化する。
透明ニスにより形成される第3の印刷画像(6)のBの画像部(6a)を、ここではベタ印刷とし、Bの背景部(6b)を印刷しない構成としたが、Bの画像部(6a)とBの背景部(6b)との網点面積率差が75%以上ある画像としてもよいし、画像部と背景部を分けない多階調画像としても、正反射光における観察で同様の結果が得られる。
(赤外線領域の観察)
次に図6の赤外線領域の観察(c)について説明する。赤外線領域とは、一般に可視光より波長領域が高く、肉眼では視認できない750nm以上の波長領域である。赤外線画像は、赤外線を反射又は透過する領域(いわゆる、赤外線を吸収しない領域)と、赤外線を吸収する領域に分けることができる。これらの領域の画像を赤外線カメラ等で観察した場合、赤外線を反射又は透過する領域は白く視認され、赤外線を吸収する領域は黒く視認されることから、白黒画像を視認することができる。
情報担持体(1)を赤外線カメラ(10)を用いて赤外線の拡散光領域で観察した場合、金属光沢インキの層から赤外線カメラ(10)への赤外線の反射光が少なく、他の層と比べて黒く視認されることから赤外線を吸収する領域と言える。「A」の印刷画像(5)の画像部(5a)と背景部(5b)との網点面積率が異なることから、各部における赤外線カメラ(10)による赤外線の反射光は異なり、その結果、「A」の赤外線画像が現れる。
本発明の実施形態における情報担持体(1)をカラーコピー機でコピーした場合、オリジナルの情報担持体(1)とは全く視感性が異なり、光反射性及び観察角度による画像の変化を示すことがないだけではなく、赤外線光源下での観察において「A」の画像も視認できないため、本発明の実施形態における情報担持体(1)は、カラーコピーによる偽造に対する防止効果にも優れている。
次に、第1の印刷画像を印刷する有色インキの色について説明する。
第1の印刷画像(4)である「C」は、拡散光領域では「C」が視認され、正反射光領域では「C」が消失しなければならない。さらに、その上に重ね刷りされる第2の印刷画像(5)である「A」は、赤外線領域では視認でき、可視光下における拡散光領域及び正反射光領域の両方の観察においてはカモフラージュされていなければならないが、基材、インキ、光輝性材料、背景部と画像部の網点面積率及びこれらの組合せによって最適な印刷条件が異なる。そこで、本発明を実施するための好適な有色インキの色について説明する。
(第1の印刷画像が黒インキの場合の好適な網点面積率)
基材(2)である白色のコート紙上において、黒インキによる第1の印刷画像「C」の画像部(4a)の網点面積率、「C」の背景部(4b)の網点面積率、金属光沢インキによる第2の印刷画像「A」の画像部(5a)の網点面積率及び「A」の背景部(5b)の網点面積率の組合せを換えて印刷を試みた結果が以下の表1である。
Figure 0004568914
画像の良好なスイッチ性を得た条件は、第1の印刷画像(4)は、「C」の画像部(4a)の網点面積率が100%〜50%、「C」の背景部(4b)の網点面積率が55〜15%であり、かつ「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率の差が15%〜50%であった。また、第2の印刷画像(5)は、「A」の画像部(5a)の網点面積率が100%〜80%、「A」の背景部(5b)の網点面積率が85%〜55%であり、かつ「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率の差が10%〜20%であった。
第2の印刷画像(5)がカモフラージュされており、第1の印刷画像(4)に第2の印刷画像(5)を重ね刷りした印刷領域(3)が、可視光における観察において「C」の視認状態から潜像状態へスイッチすることが確認できたら、第2の印刷画像(5)の上に透明インキによる図15の第3の印刷画像(6)である「B」の画像を印刷することで、情報担持体(1)を形成することができる。
(第1の印刷画像が紅インキの場合の好適な網点面積率)
次に、カモフラージュ画像となる第1の印刷画像(4)を紅インキとした場合の情報担持体(1)について説明する。
情報担持体(1)は、基材(2)である白色用紙上の印刷画像領域(3)に、紅インキで第1の印刷画像(4)である「C」の印刷画像を印刷し、その上に光輝性材料を含む金属光沢インキで第2の印刷画像(5)である「A」の印刷画像を印刷し、さらにその上に透明インキで第3の印刷画像(6)である「B」の印刷画像を重ねて印刷することは、前述した黒インキの場合と同様である。
ただし、第1の印刷画像(4)を構成する「C」の画像部(4a)及び「C」の背景部(4b)は、赤外線領域で反射する紅インキ(例えば、「大日本インキ化学工業株式会社 Dai Cure セプターDT プロセス 紅 N」)を用いて、ウェットオフセット印刷によって印刷が施してある。
第1の印刷画像(4)である「C」は、拡散光領域では「C」が視認され、正反射光領域では「C」が消失しなければならない。さらに、その上に重ね刷りされる第2の印刷画像(5)である「A」は、赤外線領域で視認でき、可視光下の拡散光領域及び正反射光領域の両方の観察においてはカモフラージュされていなければならないが、基材、赤外線領域で反射又は透過するインキ、光輝性材料、背景部と画像部の網点面積率及びこれらの組合せによって最適な印刷条件が異なる。
そこで、基材(2)である白色のコート紙上において、紅インキによる「C」の画像部(4a)の網点面積率、紅インキによる「C」の背景部(4b)の網点面積率、金属光沢インキによる「A」の画像部(5a)の網点面積率及び金属光沢インキによる「A」の背景部(5b)の網点面積率の組合せを換えて印刷を試みた結果が以下の表2である。
Figure 0004568914
画像の良好なスイッチ性を得た条件は、第1の印刷画像(4)は、紅インキによる「C」の画像部(4a)の網点面積率が80%〜50%、紅インキによる「C」の背景部(4b)の網点面積率が65〜15%であり、かつ「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率差が15%〜50%であった。また、第2の印刷画像(5)は、「A」の画像部(5a)の網点面積率が100%〜80%、「A」の背景部(5b)の網点面積率が85%〜55%であり、かつ「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率差が10%〜20%であった。
第1の印刷画像(4)に第2の印刷画像(5)を重ね刷りした印刷領域(3)が、可視光下における観察において「C」の視認状態から潜像状態へスイッチすることが確認できたら、第2の印刷画像(5)の上に透明インキによる第3の印刷画像(6)である「B」の印刷画像を印刷することで、情報担持体(1)が形成することができる。
(第1の印刷画像が藍インキの場合の好適な網点面積率)
次に、カモフラージュ画像となる第1の印刷画像(4)を藍インキとした場合の情報担持体(1)について説明する。
情報担持体(1)は、基材(2)である白色用紙上の印刷画像領域(3)に、藍インキで第1の印刷画像(4)である「C」の印刷画像を印刷し、その上に光輝性材料を含む金属光沢インキで第2の印刷画像(5)である「A」の印刷画像を印刷し、さらにその上に透明インキで第3の印刷画像(6)である「B」の印刷画像を重ねて印刷することは、前述した黒インキの場合と同様である。
ただし、第1の印刷画像(4)を構成する「C」の画像部(4a)及び「C」の背景部(4b)は、赤外線領域で反射する藍インキ(例えば、「大日本インキ化学工業株式会社 DaiCure セプターDT プロセス 藍 UV」)を用いて、ウェットオフセット印刷によって印刷が施してある。
第1の印刷画像(4)である「C」は、拡散光領域では「C」が視認され、正反射光領域では「C」が消失しなければならない。さらに、その上に重ね刷りされる第2の印刷画像(5)である「A」は、赤外線領域で視認でき、可視光下における拡散光領域及び正反射光領域の両方の観察においてカモフラージュされていなければならないが、基材、赤外線領域で反射又は透過するインキ、光輝性材料、背景部と画像部の網点面積率及びこれらの組合せによって最適な印刷条件が異なる。
そこで、基材(2)である白色のコート紙上において、藍インキによる「C」の画像部(4a)の網点面積率、藍インキによる「C」の背景部(4b)の網点面積率、金属光沢インキによる「A」の画像部(5a)の網点面積率及び金属光沢インキによる「A」の背景部(5b)の網点面積率の組合せを換えて印刷を試みた結果が以下の表3である。
Figure 0004568914
画像の良好なスイッチ性を得た条件は、第1の印刷画像(4)が、藍インキによる「C」の画像部(4a)の網点面積率が50%、藍インキによる「C」の背景部(4b)の網点面積率が35〜15%であり、かつ、「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率差が15%〜50%であった。第2の印刷画像(5)は、「A」の画像部(5a)の網点面積率が100%〜80%、「A」の背景部(5b)の網点面積率が80%〜50%であり、かつ、「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率差が10%〜20%であった。
第1の印刷画像(4)に第2の印刷画像(5)を重ね刷りした印刷領域(3)が、可視光下における観察において「C」の視認状態から潜像状態へスイッチすることが確認できたら、第2の印刷画像(5)の上に透明インキによる第3の印刷画像(6)である「B」の印刷画像を印刷することで、情報担持体(1)を形成することができる。
結果、第1の印刷画像(4)は、「C」の画像部(4a)の網点面積率が100%〜50%、「C」の背景部(4b)の網点面積率が65〜15%であり、かつ、「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率の差が15%〜50%であった。第2の印刷画像(5)は、「A」の画像部(5a)の網点面積率が100%〜50%、「A」の背景部(5b)の網点面積率が85%〜40%であり、かつ、「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率の差が10%〜20%である場合に、良好な画像のスイッチ性を得られる印刷条件範囲となった。
この最適な印刷条件範囲を外れた場合、例えば、第1の印刷画像(4)に網点面積率15%未満の部分があると、カモフラージュすべき「A」の画像が拡散光領域の観察において視認されてしまう。
第1の印刷画像(4)を構成する「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率の差が15%未満の場合は、コントラストが足りず、拡散光領域の観察で「C」の画像が判別しづらい。
第1の印刷画像(4)を構成する「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の網点面積率の差が50%を超える場合は、正反射光領域の観察で「C」の画像が消失せず、画像のスイッチ性を得られない。
また、第2の印刷画像(5)に網点面積率40%未満の部分がある場合、正反射光領域の観察において、「C」の画像が消失せずに視認されたままとなり、画像のスイッチ性が得られない。
第2の印刷画像(5)を構成する「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率の差が10%未満の場合、図6の赤外線領域における観察において、コントラストが足りずに「A」の画像が視認しにくい。
第2の印刷画像(5)を構成する「A」の画像部(5a)と「A」の背景部(5b)の網点面積率差が20%を超える場合、可視光領域の拡散光領域においてカモフラージュ画像の「C」と共に「A」の画像も視認されてしまうため、「A」の画像を潜像画像とすることができない。
また、金属光沢インキによって形成される第2の印刷画像(5)の面積率は、「A」の画像部(5a)を密とし、「A」の背景部(5b)を疎としたが、疎密を逆にしてもよい。有色インキによって形成される第1の印刷画像(4)についても同様に「C」の画像部(4a)と「C」の背景部(4b)の疎密を逆にしてもよい。
なお、本発明の偽造防止用情報担持体は、例えば、銀行券、パスポート、運転免許証、株券、債券、小切手、IDカード、クレジットカード、商品券、ギフト券、通行券、回数券、切手、査証、はがき、シール又は本等の偽造防止効果を必要とする媒体で、本発明の構成が形成可能な対象物であれば特に限定しない。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図12は、第1の実施例である情報担持体(27)である。
情報担持体(27)は、基材(2)である白色用紙上の印刷画像領域(28)に、赤外線領域で反射する黒インキで図13の第1の印刷画像(29)である「R」の印刷画像を印刷し、その上に光輝性材料を含む金属光沢インキで図14の第2の印刷画像(30)である「A」の印刷画像を印刷し、更にその上に透明ニスなどで図15の第3の印刷画像(31)である「バラ」の画像を重ねて印刷した。
このとき、第2の印刷画像(30)は、第1の印刷画像(29)でカモフラージュされており、可視光において第2の印刷画像(30)である「A」が視認されず、第1の印刷画像(29)である「R」が視認される。
図17に、情報担持体(27)の特殊な効果を示す。情報担持体(27)を観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変えることで、第1の印刷画像(29)である「R」から第3の印刷画像(31)である「バラ」に視認情報が変わり、また、赤外線の拡散光領域で観察することで第2の印刷画像(30)である「A」が視認できる。従って、「R」、「バラ」及び「A」と三つの画像を視認することができる。
図13の第1の印刷画像(29)は、赤外線領域で反射するクロモファインブラックを配合して作られた黒インキを用いて、ウェットオフセット印刷方式により印刷した。このとき、第1の印刷画像(29)の「R」の画像部(29a)は網点面積率80%、「R」の背景部(29b)は網点面積率65%としている。
図14の第2の印刷画像(30)は、光輝性材料を配合して作られた紫外線硬化型の金属光沢インキ「東洋インキ製造株式会社 UV FLASH DRY FD OL シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷方式により印刷している。このとき、第2の印刷画像(30)の「A」の画像部(30a)は、網点面積率70%で、「A」の背景部(30b)は、網点面積率55%で印刷が施されている。
さらに、図15の第3の印刷画像(31)の「バラ」の画像は、第2の印刷画像(30)の上に重ね刷りする形で、無色透明材料である紫外線硬化型の透明ニス「T&A TOKA UVマット OPニス 3H」を用いて、ウェットオフセット印刷方式によって網点面積率0〜100%までを使用した多階調画像で施してある。
ここで、情報担持体(27)を、拡散光領域及び正反射領域で観察したときの照明光源(7)、視点(8)及び情報担持体(27)の三つの位置関係は、図5と同様である。照明光源(7)と視点(8)が拡散光領域の観察(a)にあるとき、情報担持体(27)には、図13の「R」の画像が視認され、照明光源(7)と視点(8)が正反射光領域の観察(b)にあるときは、図16のように「バラ」の画像が視認される。
赤外線領域における観察についても、図6と同様に、情報担持体(27)に対する赤外線光源(9)の入射光を−45°にし、垂直方向0°から赤外線カメラ(10)を通して情報担持体(1)を観察した場合、「A」の画像が視認される。
本実施例1では、第2の印刷画像を金属光沢インキ「東洋インキ FLASH DRY FD OL シルバー」を用いて形成しているが、金属光沢インキに限定するものではなく、「T&K TOKA UV NO3 シルバー」、「大日本インキ化学工業株式会社 ニューチャンピオンゴールド(赤口)」又は「大日本インキ化学工業株式会社 ニューチャンピオンゴールド(青口)」を用いても同様の効果が得られる。
また、本実施例1では、コート紙の上に光輝性材料を含む金属光沢インキで第2の印刷画像を形成し、光沢度の低い透明ニスで第3の印刷画像を形成している。なお、第2の印刷画像を形成する金属光沢インキの皮膜と第3の印刷画像を形成する透明ニスの皮膜、二つの皮膜の光沢度を測定するためにディジタル光沢計GM−3D〔村上色彩技術研究所製〕を使用し、光源を60°で測定した。
金属光沢インキの面積率100%の光沢度は30であり、透明ニス (T&A TOKA UVマット OPニス 3H)の面積率100%の皮膜の光沢度は13である。金属光沢インキと透明ニスによる色差ΔEは、光沢度差に起因する明度差ΔLの影響が大きいことから、大きな色差ΔEを得るために光輝性材料の皮膜と透明な皮膜の光沢度の差は少なくとも10以上あることが望ましく、それ以下では正反射光領域での第3の印刷画像のコントラストが大きく低下する。光輝性材料の皮膜と透明な皮膜の光沢度差が大きければ大きいほど正反射光領域での第3の印刷画像の視認性は高くなる傾向にあることから、二つの皮膜間の光沢度差が大きくなる材料を用いることが望ましい。また、本実施例1では、光輝性材料よりも低光沢な透明ニス(T&A TOKA UVマット OPニス 3H)を使用したが、例えば、光輝性材料より高光沢な透明ニス(DIC製 New Champion ハイグロス OPニス)を用いても、本発明のスイッチ効果は生じる。ただし、第3の印刷画像に光輝性材料よりも高光沢なインキを用いる場合には、第3の印刷画像は完全な正反射光領域において濃淡反転した画像として出現することから、あらかじめ第3の印刷画像を階調反転して光輝性材料上に形成することが望ましい。
また、本実施例1では、第1の印刷画像を形成する有色インキを赤外線領域で反射するクロモファインブラックを配合して作られた黒インキ、赤外線領域で反射する紅インキ「大日本インキ化学工業株式会社 Dai Cure セプターDT プロセス 紅 N」、赤外線領域で反射する藍インキ「大日本インキ化学工業株式会社 DaiCure セプターDT プロセス 藍 UV」としているが、これらの色に限定するものではなく、他の色、例えば赤外線領域で反射する緑色でも同様の結果を得た。このことから、第1の印刷画像を形成する有色インキは、紅色や藍色に限定されるものではなく、赤外線領域で吸収を示さず、発明を実施するための最良の形態で述べた面積率の範囲内で第2の印刷画像をカモフラージュできる着色インキであればよい。
ただし、第1の印刷画像に黄色のような隠蔽性の著しく低い着色インキを選択した場合、面積率の組合せをどのように換えても第2の印刷画像をカモフラージュすることはできない。表4は、第2の印刷画像を構成する金属光沢インキと第1の印刷画像に用いるインキの色をSpectrolino〔Gretag Macbeth社製〕において測定したときのYMCKの色濃度成分の値であるが、隠蔽性は、黒成分(K値)の測定結果から推測することができる。
Figure 0004568914
カモフラージュすべき第2の印刷画像を構成する金属光沢インキのK値0.35に比べ、黄色インキのK値は0.06と低いため第2の印刷画像をカモフラージュできず、黒色インキ、紅色インキ及び藍色インキのようにK値が金属光沢インキのK値より高い着色インキは、カモフラージュすることができる。このことから、第1の印刷画像に使用できる有色インキは、黒色、紅色及び藍色に限定されるものではなく、K値が金属光沢インキより高い値を示す有色インキであればよい。
また、透明インキに蛍光材料を加えることで、情報担持体の意匠性や偽造防止効果を高めることができる。例えば、透明インキで表現する画像の一部に、蛍光材料を加えた透明インキで第4の印刷画像を形成する場合である。ただし、これらの材料を加えたために、拡散光領域において第3の印刷画像が視認できてしまうと、本発明の特徴である明瞭な画像のスイッチ効果は得られなくなってしまうため、黄色や水色などの光吸収性の弱い着色顔料や色濃度の低い赤外吸収材料を用いて、拡散光領域における色差ΔEの値が5以下程度の半透明に留める必要がある。
本発明の実施形態における情報担持体を示す。 本発明の実施形態における第1の印刷画像を示す。 本発明の実施形態における第2の印刷画像を示す。 本発明の実施形態における第3の印刷画像を示す。 本発明の情報担持体を観察するときの照明光源と視点と情報担持体の位置関係を示す。 本発明の情報担持体を赤外線領域で観察するときの視点と赤外線カメラと情報担持体の位置関係を示す。 本発明の実施形態における印刷画像領域を観察する視点角度に依存した観察図を示す。 本発明の実施形態における情報担持体のXの破線における断面図を示す。 本発明の実施形態において考えられる八つの積層パターン領域の断面図を示す。 本発明の実施形態において、拡散光領域におけるCの背景部(4b)にAの背景部(5b)を重ねた領域を基準値0としたときの各積層パターン領域の色差ΔEを示す。 本発明の実施形態において、正反射光領域におけるCの背景部(4b)にAの背景部(5b)を重ねた領域を基準値0としたときの各積層パターン領域の色差ΔEを示す。 実施例1における情報担持体を示す。 実施例1における第1の印刷画像を示す。 実施例1における第2の印刷画像を示す。 実施例1における第3の印刷画像を示す。 実施例1における正反射光領域で観察した第2の印刷画像を示す。 実施例1における印刷画像を観察する視点角度に依存した観察図を示す。
符号の説明
1 本発明の実施形態の情報担持体
2 基材
3 本発明の実施形態の情報担持体における印刷画像領域
4 本発明の実施形態の情報担持体における第1の印刷画像
4a 本発明の実施形態の情報担持体における第1の印刷画像であるAの画像部
4b 本発明の実施形態の情報担持体における第1の印刷画像であるAの背景部
5 本発明の実施形態の情報担持体における第2の印刷画像
5a 本発明の実施形態の情報担持体における第2の印刷画像であるBの画像部
5b 本発明の実施形態の情報担持体における第2の印刷画像であるBの背景部
6 本発明の実施形態の情報担持体における第3の印刷画像
6a 本発明の実施形態の情報担持体における第3の印刷画像であるCの画像部
6b 本発明の実施形態の情報担持体における第3の印刷画像であるCの背景部
7 照明光源
8 視点
9 赤外線光源
10 赤外線カメラ
11 「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)が重ねられ、更にその上に実際には印刷されない「B」の背景部(6b)とした領域
12 「C」の背景部(4b)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域
13 「C」の背景部(4b)に「A」の画像部(5a)を重ねた領域(13)
14 「C」の背景部(4b)に「A」の画像部(5a)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域
15 「C」の画像部(4a)に「A」の背景部(5b)を重ねた領域
16 「C」の画像部(4a)に「A」の背景部(5b)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域
17 「C」の画像部(4a)に「A」の画像部(5a)を重ねた領域
18 「C」の画像部(4a)に「A」の画像部(5a)と「B」の画像部(6a)を重ねた領域
19a 拡散光領域で、領域(11)を基準値0としたときの他の領域との色差ΔEを表すグラフ
19b 正反射光領域で、領域(11)を基準値0としたときの他の領域との色差ΔEを表すグラフ
20 領域(11)と領域(12)との色差ΔEを示す折れ線
21 領域(11)と領域(14)との色差ΔEを示す折れ線
22 領域(11)と領域(13)との色差ΔEを示す折れ線
23 領域(11)と領域(18)との色差ΔEを示す折れ線
24 領域(11)と領域(16)との色差ΔEを示す折れ線
25 領域(11)と領域(15)との色差ΔEを示す折れ線
26 領域(11)と領域(17)との色差ΔEを示す折れ線
27 実施例1の情報担持体
28 実施例1の印刷画像領域
29 実施例1の第1の印刷画像
30 実施例1の第2の印刷画像
31 実施例1の第3の印刷画像
32 実施例1の情報担持体を正反射光領域で観察したときの観察図を示す。

Claims (13)

  1. 赤外線反射性を有する基材と、前記基材上の印刷画像領域に、第1の印刷層、第2の印刷層及び第3の印刷層とが順次積層された偽造防止用情報担持体であって、前記第1の印刷層は、前記基材とは異なる色で、かつ、赤外線を吸収しない有色インキにより印刷された画像部と背景部から成る第1の印刷画像であり、前記第2の印刷層は、前記基材とは異なる色で、かつ、赤外線を吸収する光輝性材料を有するインキにより印刷された画像部と背景部から成る第2の印刷画像であり、前記第3の印刷層は、赤外線を吸収しない透明インキにより印刷された画像部と背景部から成る第3の印刷画像であり、前記第1の印刷層と前記第2の印刷層は、前記印刷画像領域内において同じ大きさ及び形状に配置され、前記第3の印刷層は、前記印刷画像領域の少なくとも一部に配置されていることを特徴とした偽造防止用情報担持体。
  2. 前記第1の印刷画像は、面積率が15〜100%で、画像部と背景部の面積率の差が15〜50%の範囲であり、前記第2の印刷画像は、面積率が40〜100%で、画像部と背景部との面積率の差が10〜20%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用情報担持体。
  3. 前記第1の印刷画像を印刷するための前記有色インキ及び前記第2の印刷画像を印刷するための前記光輝性材料を有するインキは黒成分を有しており、前記有色インキの黒成分が前記光輝性材料を有するインキの黒成分よりも色濃度が高いことを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用情報担持体。
  4. 前記第3の印刷画像は、面積率0〜100%の範囲内で階調表現された多階調画像であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の偽造防止用情報担持体。
  5. 前記第3の印刷画像が、前記第3の印刷画像の画像部はロゴマーク、番号、文字、記号又はバーコードの認証性を有する有意味情報であって、前記第3の印刷画像の画像部と背景部との面積率の差が75%以上あることを特徴とする請求項1、2又は3記載の偽造防止用情報担持体。
  6. 前記第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、網点形状の大小及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の偽造防止用情報担持体。
  7. 前記第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、万線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の偽造防止用情報担持体。
  8. 前記第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、波線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の偽造防止用情報担持体。
  9. 前記第1の印刷画像、第2の印刷画像及び/又は第3の印刷画像の一つ以上の少なくとも一部が、破線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項項1、2、3、4又は5記載の偽造防止用情報担持体。
  10. 前記第2の印刷画像を形成する光輝性材料は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄のいずれかの光輝性材料を含む印刷インキであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の偽造防止用情報担持体。
  11. 前記第3の印刷画像を形成する透明インキは、透明ニス、インキワニス、透明インキ、メジウムインキのいずれかであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の偽造防止用情報担持体。
  12. 前記第3の印刷画像を印刷する透明インキに、更に蛍光材料を含有したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の偽造防止用情報担持体。
  13. 前記第3の印刷画像の一部に、前記第3の印刷画像を印刷する前記透明インキに蛍光材料を含有させたインキで第4の印刷画像を形成したことを特徴とする項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の偽造防止用情報担持体。
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