JP4568219B2 - 均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法 - Google Patents

均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、均質なチタニアを含有するシリカガラス(以下、シリカ・チタニアガラスと称する)の製造方法及び均質なシリカ・チタニアガラスに関し、特に、波長13.5nmの超短波長紫外線を光源とするEUVリソグラフィー(Extreme Ultra-Violet Lithography)の反射光学系を構成するミラー基板や反射型マスクの基板に好適な均質で少なくとも一方向に脈理のないシリカ・チタニアガラスの製造方法及び少なくとも一方向に脈理が存在せず均質なシリカ・チタニアガラスに関する。
半導体素子の製造技術開発は留まることを知らないが、線幅が45nmよりも細い、次々世代の露光技術として、波長13.5nmのEUV光を用いたEUVリソグラフィー技術が最も有力視されている。このような超短波長の光は適切な透過材料が存在しないため、光学系は全て反射系で構成され、また、マスク材料も反射型マスクが用いられると考えられている。
このような光学ミラー及びマスク基板の材料は露光操作中に熱膨張等で変形しては困るために、使用温度範囲での線膨張係数が極めて小さい超低膨張ガラスが必要とされる。また、これらの基板面はサブナノメーターのオーダーで平面もしくは球面、非球面に研磨できなければならない。このような超低膨張ガラスとしては、特許文献1に示されるようにTiO2濃度が6〜8質量%程度、残部がSiO2で構成されるシリカ・チタニアガラスが挙げられ、該シリカ・チタニアガラスは約20〜35℃の間で約±20ppb/℃の範囲の一様な線膨張係数を有する。
このようなシリカ・チタニアガラスを製造する方法として一般的な方法はシリカ原料である揮発性珪素化合物(四塩化珪素や環状シロキサン等)とチタニア原料である揮発性チタン化合物(四塩化チタンやチタンアルコキシド)をバーナー火炎中に導入して、回転する基体上に、原料の火炎加水分解によって生じるシリカ微粒子とチタニア微粒子を同時に堆積、溶融して製造する直接法が一般的である。
この方法は所謂合成シリカガラスを製造する方法と同一であるが、得られるシリカ・チタニアガラスの高温での粘度がシリカガラスの粘度に比べて10〜20%低いため、得られるガラスを横向きに保持する横型直接法によって成長させることは困難で、下から上に徐々にガラスを成長させる縦型法が主たる方法である。
このような縦型直接法によって製造されたシリカ・チタニアガラスはガラス成長中の基体の回転に伴う成長縞が層状の脈理を形成する。このような脈理部分においては、シリカ・チタニアの構成割合が微妙に変化するために線膨張係数が変化していると考えられる上、硬さも微妙に異なるため、高精度な研磨を施した場合、脈理部分だけ凹凸が出来るという不具合が生じ、EUVリソグラフィー用光学系に要求されるサブナノメーターオーダーの平坦面を形成するには甚だ不都合である。
このような不都合を解消するために特許文献2ではシリカ・チタニアガラス成長時の温度条件を極めて均一に設定し、存在する脈理を屈折率差で10-7以下と極めて“薄く”することで解決しようとしているが、本発明のように機械的に脈理を除去することに関しては何等記載されていない。
また、このような脈理は成長面に平行に形成されるものであるから、平面状に加工して使用される平面ミラーやマスク材料としては使用することが可能であると思われるが、実際には成長面は完全には平行ではなく、若干の凹凸を持った面であることが多く、そのような場合には、完全な平面を形成した場合に、凹凸部分が切り出され、脈理として観察され、不具合を生じることがある。
なお、特許文献3及び4は、スート法により製造されたシリカ・チタニアガラスを開示している。しかしながら、特許文献3のシリカ・チタニアガラスは、平滑性を向上させるために脈理のピッチを小さくすることを目的とする、即ち必ず脈理が存在するものであり、脈理の除去を目的とする本発明とは全く異なる。また、特許文献4はアニール処理により仮想温度を制御し、熱膨張係数の温度変化を小さくするものであり、脈理の除去については何等記載されていない。
国際公開第03/077038号パンフレット 米国特許出願公開第2004/0027555号明細書 特開2004−315351号公報 特開2005−22954号公報 特開平7−267662号公報 非晶質シリカ材料応用ハンドブック:リアライズ社刊、川副博司編集、平成11年発行
本発明は、少なくとも一方向に脈理が存在せず、かつシリカ・チタニアの成分濃度が部材全体に渡って均一である均質なシリカ・チタニアガラスを製造する方法、及び一方向又は三方向に脈理が存在せず、部材に渡って濃度が均一である均質なシリカ・チタニアガラスを提供することを目的としている。
前記課題を解決する為に、本発明の少なくとも一方向に脈理のない均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法は、シリカ原料及びチタニア原料を酸水素火炎中に導入し、シリカ・チタニアガラス微粒子を回転する基体上に垂直方向に堆積、成長して多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を加熱して透明化し、円柱状のシリカ・チタニアガラス体を作製する作製工程と、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って成長軸方向に切断し、棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、前記棒状ガラス体を、該ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、を含むことを特徴とする。
本発明方法において、前記均質化処理工程後、前記ガラス体の成長軸方向に重力が加わるように加熱変形させる成型工程を含むことが好ましい。
本発明方法において、前記均質化処理工程後、更に前記ガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程を含むことが好適である。また、前記第2の均質化処理工程後、前記第2の均質化処理軸方向に重力が加わるように加熱変形させる成型工程を含むことが好ましい。
前記切り出し工程前又は前記第1の均質化処理工程前に、前記ガラス体の外周部を除去する除去処理工程を含むことが好ましい。
前記切り出し工程において、前記シリカ・チタニアガラス体を3以上10以下に分割することが好適である。
前記均質化処理において、前記ガラス体の両端部を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、均質化処理を施すことが好ましい。
また、前記均質化処理において、前記ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、該ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、該一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去しチタニア濃度の均質化を図る均質化処理を施すことが好適である。前記均質化処理において、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法としては、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転することが好ましい。
前記一対の回転可能な保持手段が旋盤に設けられた左右のチャックであることが好ましい。本発明方法において、前記均質化処理を複数回繰り返すことが好適である。
前記シリカ・チタニアガラスの組成が、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることが好ましい。
本均質なシリカ・チタニアガラスは、本発明方法により製造されるものであって、少なくとも一方向に脈理のないことを特徴とする。本均質なシリカ・チタニアガラスは、EUVリソグラフィー用の反射光学材料又は反射型マスク材料として特に好適である。
本発明方法によれば、機械的に脈理を除去することによって完全に少なくとも一方向に脈理を消滅させ、且つシリカ・チタニアガラスの成分濃度を部材全体に渡って極めて均一にすることができるため、極めて均質なシリカ・チタニアガラスを得ることができる。本発明方法により製造される本均質なシリカ・チタニアガラス体は、一方向又は三方向に脈理が存在せず、シリカ・チタニアガラスの成分濃度が部材に渡って均一であり、部材全体に渡って極めて均質な線膨張係数を得ることができるため、EUVリソグラフィーの反射光学系を構成するミラー基板又は反射型マスクの基板等として特に好適である。
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第1の例について説明する。図1は、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第1の例の手順の大略を示すフローチャートである。図1に示すように、まず、シリカ原料及びチタニア原料を酸水素火炎中に導入し、シリカ・チタニアガラス微粒子(スート)を回転する基体上に垂直方向に堆積、成長して多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を炉内で加熱して透明化し、円柱状のシリカ・チタニアガラス体を作製する、いわゆるVAD法(vapor phase axial deposition)によりシリカ・チタニアガラス体を作製する(ステップ100:VAD法によるシリカ・チタニアガラス体の作製工程)。その後、得られたシリカ・チタニアガラス体を半径に沿って成長軸方向に切断し、棒状ガラスを切り出した後(ステップ102:切り出し工程)、該棒状ガラス体に対して前記ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法(特許文献5)を適用して脈理の機械的除去と攪拌による均質化を行う均質化処理を施すことにより(ステップ108:第1の均質化処理工程)、シリカとチタニアの成分濃度が全体に渡って均一であり、少なくとも一方向に完全に脈理がない均質なシリカ・チタニアガラスを得ることができる。
シリカガラスの製造方法としては、酸水素火炎中にシリカ原料を導入して火炎加水分解反応を生じせしめ、生成するシリカガラス微粒子を回転する皿状基体に下から上方向に層状に堆積させると同時に火炎の熱により溶融する直接法、同様に酸水素火炎中に原料を送り込み生成するシリカガラス微粒子を垂直方向に保持した回転する棒状基体上に堆積して、シリカガラス多孔質体を製造し、このシリカガラス多孔質体を電気炉内で加熱して棒状の透明シリカガラス体を作製するVAD法、生成するシリカガラス微粒子を水平方向に保持した基体上に層状に堆積してシリカガラス多孔質体を製造し、このシリカガラス多孔質体から基体を引き抜いた後、電気炉内で加熱溶融して中空シリンダ状の透明シリカガラス体を作製するOVD法(outside vapor deposition)等が挙げられる。前者の直接法との関係で、多孔質体を経由する後二者はまとめてスート法と呼ばれている。
シリカ・チタニアガラスの製造方法としては従来直接法が用いられてきたが、一度多孔質ガラス体を経由するスート法の方が、多孔質ガラス体を経由せず、直接溶融してしまう直接法と比較して、シリカ・チタニアガラスの成長温度が低いために、成長時の条件の揺らぎによる不均質が少なく、得られたシリカ・チタニアガラス体に内在する脈理の強度が直接法で作製されたシリカ・チタニアガラスの脈理強度よりもかなり弱くすることが可能であることを見出した。
一方スート法であるOVD法とVAD法を比較すると、脈理の強さという観点で見るとVAD法の方が有利であることが判った。
図2はステップ100におけるVAD法による多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。図2において、10は成長中のスート体であり、11aは成長軸を示す。図2に示した如く、シリカ原料ガス(例えば、四塩化珪素や環状シロキサン等の揮発性珪素化合物)及びチタニア原料ガス(例えば、四塩化チタンやチタンアルコキシド等の揮発性チタン化合物)を酸水素火炎バーナー33aに導入して火炎加水分解反応を生じせしめ、生成するシリカ・チタニアガラス微粒子(スート)を垂直方向に保持した棒状基体31aの先端上に堆積させ、該基体31aを回転しながら軸方向に引き上げて、円柱形状の多孔質ガラス体を製造する。
図3はOVD法による多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。図3において、13は成長中のスート体であり、11bは成長軸を示す。図3に示した如く、OVD法では、水平に保持された基体31bに対して垂直にバーナー33bを設置し、酸水素火炎バーナー33bに、シリカ原料ガス及びチタニア原料ガスを導入し、生じたシリカ及びチタニアガラス微粒子を回転する基体31b上に層状に堆積することにより、円筒形状の多孔質ガラス体が形成される。
即ち、OVD法においては回転する基体31b、あるいは堆積したスート体13とバーナー火炎の位置関係は図3に示される如くで、基体31bあるいはスート体13全体がバーナー火炎に覆われることはなく、常にバーナー火炎と反対側は大気による冷却が行われる。一方でVAD法においては、図2に示すように回転する基体31aあるいは堆積したスート体10の成長端部全体をバーナー火炎で覆うことが出来る為にスート体10の成長端はOVD法と比較して温度条件が均一になりやすい。
このような理由によりOVD法で作製したシリカ・チタニアガラス体には直接法で作製したものよりは弱いものの、同心円状の脈理が存在するのに対し、VAD法で作製したシリカ・チタニアガラス体においては、成長軸方向の脈理が極めて弱いか、部位によっては殆ど存在しないことを見出した。
一方で、シリカ・チタニアガラスのような多成分系ガラスの成分濃度の均質性という観点で考えるとVAD法には不利な点があることが判った。これは同一火炎中にシリカ及びチタニアという異なる化学種の原料を同時に導入してシリカガラス及びチタニアガラスの微粒子を火炎加水分解によって形成する方法において、シリカガラス微粒子及びチタニアガラス微粒子の生成速度及び生成した微粒子が基体及び成長中の多孔質体に付着する割合が、温度条件によって異なることに起因する。
一般的に沸点の低い化合物程、高温では析出しづらいため、温度の高い部分での捕集効率は低下するので、高温部の濃度は低下する。シリカガラスとチタニアガラスではシリカガラスの方が沸点が低い為、温度の高い部分ではチタニアの濃度が高くなる傾向が生じる。VAD法においては成長端は火炎に覆われているが、火炎内の温度分布によって成長面内にシリカ・チタニアの濃度分布が生じやすく、ガラス体の半径方向に濃度分布が出来やすい。即ち、VAD法は脈理的には有利であるが、半径方向のシリカ・チタニア成分濃度の分布が形成されやすいという不利があることが判明した。
このような特徴に対し、帯域溶融法による均質化を適用することを考えてみると、帯域溶融法による均質化は、ちょうど雑巾を絞るように均質化処理軸を中心にこれと垂直方向にせん断応力を作用させることで均質化を行う為に、せん断応力は均質化処理軸を中心とする円周方向に最も強く働く。このため、円周方向は極めて良く混ざりこみが生じるが、反面半径方向に対する混ざりこみ効果は相対的に小さくなる傾向がある。
VAD法では垂直方向に保持された回転する基体上に多孔質体を成長させる事から、円周方向の濃度の均一性は極めて良く、先ほど述べた理由により半径方向の濃度の均質性はあまり良くない。
このような濃度分布を有するVAD法により作製されたシリカ・チタニアガラス体に帯域溶融法による均質化手段を効率的に適用する為に発明者らが鋭意検討を加えた結果、シリカ・チタニアガラス体を、半径に沿って成長軸方向に切断し、断面扇形の棒状ガラス体を切り出した後、これを均質化することにより、効率よく均質化が行えることを見出した。
図4は、前記棒状ガラス体の切り出し工程(ステップ102)を原理的に示す概略説明図である。図4に示した如く、VAD法により作製された円柱状のシリカ・チタニアガラス体12を、半径に沿って成長軸11方向に切断することにより、扇柱状の棒状ガラス体14が形成される。なお、図4において、Xは円柱状のガラス体の中心軸、Yはガラス体の外周であり、ガラス体の中心軸Xと成長軸11は一致している。
図5及び図6は前記切り出し工程の有無による均質化の効率を模式的に説明するものである。図5は、VAD法により作製したシリカ・チタニアガラス体におけるチタニア濃度分布の概念説明図であり、(a)は均質化処理前の円柱状のガラス体12の円形断面の直径方向のチタニア濃度分布、(b)は均質化処理後の円柱状のガラス体の円形断面の直径方向のチタニア濃度分布をそれぞれ示す。図6は、VAD法により作製し、半径に沿って成長軸方向に切断後の棒状ガラス体におけるチタニア濃度分布の概念説明図であり、(a)は均質化処理前の扇柱状の棒状ガラス体14の扇形断面の端部である円の中心部X1から外周部Y1方向のチタニア濃度分布、(b)は均質化処理後の円柱状のガラス体の円形断面の直径方向のチタニア濃度分布をそれぞれ示す。図5及び図6において、X1〜X3はガラス体の円形断面における円の中心部、Y1〜Y6はガラス体の外周部であり、42は均質化処理軸である。なお、図5及び図6において、チタニア濃度の分布は強調して示されている。
図5に示した如く、VAD法により作製されたシリカ・チタニアガラス体12のチタニア濃度の分布は、成長軸11を対称軸とする対称形をしているが、均質化処理軸42は成長軸11と一致するので、均質化処理によりお互い対称な部分(例えば、12aと12b)が均質化される効率が高いのに比べて、半径方向の均質化効率は相対的に低いので、1回の均質化処理では、分布の山谷が若干低くなるに留まる。一方、図6に示した如く、半径に沿って成長軸方向に切断された棒状ガラス体14の場合、成長軸11と外周部Y1の丁度中間に均質化処理軸42が存在する為に、濃度不均一な部分(例えば、14aと14b)が良く混ざり合い、均質化効率が格段に向上する。
このため、VAD法で得られたガラス体12を単に均質化するのに比べて、前記ガラス体12から棒状ガラス体14を切り出した後、該棒状ガラス体14を均質化する本発明方法によれば、より少ない均質化回数で高い均質性を得ることができ、また、同じ均質化回数を施す場合には、より高均質なシリカ・チタニアガラス体を得ることが出来る。
本発明方法において、シリカ・チタニアガラス体の組成は特に限定されないが、好ましくはチタニアとSiO2からなり、チタニア濃度は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
次に、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第2の例について説明する。図7は、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第2の例の手順の大略を示すフローチャートである。本発明方法においては、均質化処理中の泡の巻き込みを避けるために均質化処理工程に先立って均質化されるガラス体を円柱状に加工することが好ましい。
円柱状のガラス体に加工する方法としては特に限定されないが、図2に示した如く、前記第1の例と同様にVAD法によりシリカ・チタニアガラス体を作製し(ステップ100)、前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って成長軸方向に切断し、扇柱状の棒状ガラス体を切り出した後(ステップ102)、前記棒状ガラス体の角部を除去処理し(ステップ104:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ106:第1の成型工程)、均質化処理を実施する(ステップ108:第1の均質化処理工程)ことが好適である。
前記ステップ100及び102は前記第1の例と同様に行えばよいが、VAD法により得られた円柱状のシリカ・チタニアガラス体のドーム形状の上部及び下部を切断した後、円形断面が円分割されるように半径に沿って成長軸方向に切断することが好ましい。なお、分割方法は等分割でなくてもよい。
分割数は複数であれば特に限定されないが、角部の除去量を低減させ、前記第1の成型工程において泡の巻き込みを防止するためには3分割以上が好ましい。また、作業性の点から分割数は8以下であることが好ましい。ガラス体を円柱状に加工するためには、出発材料の断面形状はなるべく円形に近い方がロスも少なく作業も容易であるため、理想的には分割数は4〜6分割が最も好ましいが、実際には質量の関係により6分割することは難しい場合がある。現実的には所定の製品質量が確保できる範囲で4〜6分割に最も近い分割数を選択することが好適である。分割数が多く目的質量が得られない場合には、分割したガラス体同士を縦に溶接または継ぎ足して均質化処理を施すことも可能である。
図8は、ステップ104を原理的に示す断面概略説明図であり、15は除去処理された棒状ガラス体を示す。ステップ104において、除去処理方法及び除去処理加工の形状は特に限定されるものではないが、図8に示した如く、扇柱状の棒状ガラス体14の角部3箇所をグラインダー等で面取りし、棒状ガラス体の断面が略円形状又は略楕円形状に近づくように加工することが好ましい。
図9は、ステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)は成型工程で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。図9に示した如く、前記除去処理された棒状ガラス体15を、該棒状ガラス体15の成長軸11方向の両端部を一対の回転可能な保持手段、例えば、旋盤のチャック32a,32bで保持し、バーナー34で該ガラス体15の一部を加熱しながら該旋盤の左右のチャック32a,32bに回転差を与え、該棒状ガラス体15の溶接部分をゆっくりと捻りながら該バーナー34を移動することにより、断面が略円形な円柱状の棒状ガラス体16に成型することが好ましい。
前記棒状ガラス体15を旋盤のチャック32a,32bで保持する際、0〜900℃における線膨張係数が0×10-7/℃以上6×10-7/℃以下のガラス支持棒30を介して保持することが好ましい。本発明者らはシリカ・チタニアガラスに帯域溶融法による均質化処理を施す際、旋盤に把持する際の支持棒の線膨張係数が処理物であるシリカ・チタニアガラスの線膨張係数と大きく異なる場合、線膨張係数の不適合によりクラック等が生じることがある為、支持棒の材質についても検討を加えたが、クラックが生じない線膨張係数の範囲として、3.0×10-7/℃±3.0×10-7/℃の範囲、即ち、0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下の線膨張係数の材料であることが必要であることを見出した。シリカガラスは線膨張係数が0℃〜900℃の温度領域で5.0×10-7/℃であるため、ガラス支持棒として特に好ましいものである。
加えて、シリカ・チタニアガラスは粘度がシリカガラスよりも10%程低いことから、帯域溶融法により均質化する際に、均質化径が細すぎると自重による変形が生じ、安定した溶融帯域の保持が困難であることが判った。従って、前記成型された円柱状のガラス体16の外径を30mm以上にすることが重要である。径を太くする場合は特別制限はないが、溶融帯域内に強いせん断応力を生じさせる為には径が太すぎる場合、旋盤のチャックのトルクが過大になりすぎて機械的に大掛かりになりすぎるため、径の最大値は150mm以下であることが好ましい。
図10はステップ108を原理的に示す概略説明図である。図10に示した如く、前記成型された棒状ガラス体16の一部をバーナー34で強熱して溶融帯域16aを形成した後、前記左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与え捻りながらバーナー34を移動させることにより、溶融帯域16a内に成長軸11方向と垂直方向のせん断応力を発生させ、溶融帯域を攪拌して脈理除去とチタニア濃度の均一化を行う均質化処理を行うことが好ましい。図10において、42は均質化処理軸であり、図6(a)に示した如く、均質化処理軸42と成長軸11は平行している。左右のチャック32a,32bに大きな回転差を与える方法としては、例えば、左右のチャック32a,32bを逆回転させることが好適である。この均質化処理は1回以上行えばよいが、2回以上繰り返すことが脈理の除去及び組成の均一化により効果的である。
前記均質化処理工程後、前記得られたガラス体を加熱しながら成型することにより(ステップ110:成型工程)、円柱状等、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス体を得ることができる。成型方法は特に限定されないが、該ガラス体の成長軸方向、即ち均質化処理軸方向に重力が加わるように加熱変形し、成型することが好ましい。
以下に均質化処理後のガラス体の成型方法(ステップ110)の好ましい一例を述べる。図11及び図12は均質化処理後のガラス体の成型方法の一例を示す概略説明図である。図11に示した如く、前記均質化処理後のガラス体18の一部をバーナー34で強熱しつつ、前記旋盤の両チャック32a,32b間の距離を狭めることにより、該ガラス体18の径を大きくし、球状ガラス体20に成型した後(ステップ112:第2の成型工程)、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離す。なお、図11においては球状ガラス体として円球状のガラス体を示したが、球状とは円球状のみならず、ラクビーボール型形状等の楕円球形状等の種々の球状形態をも含むものである。
その後、成型炉36内の成型用容器24に前記切り出されたガラス体20を設置し、加熱成型することにより、所望の形状に成型されたシリカ・チタニアガラス体22が得られる(ステップ114:成型用容器内での成型工程)。図12はステップ114を原理的に示す概略説明図であり、36は成型炉、38は加熱手段、24は成型用容器である。前記ステップ114は、図12に示した如く、成長軸11方向と同一方向の均質化処理軸42方向に重力が加わるように設置し、自重により加熱変形させることが好ましい。
前記本発明方法により機械的に脈理が除去され完全に一方向に脈理がなく、全体的な成分均質性も向上しており、均質性が大幅に改善された高均質なシリカ・チタニアガラスを製造することができる。
次に、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第3の例について説明する。本発明方法において、さらに厳密な均質性が要求される場合、均質化処理軸を変えて複数回均質化処理を施すことが好ましい。図13は、ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を二つの均質化処理軸に対してそれぞれ行う場合の好ましい一例を示すフローチャートである。
図13に示した如く、前記第2の例と同様に、VAD法によりシリカ・チタニアガラス体を作製し(ステップ100)、該シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って成長軸方向に切断し、扇柱状の棒状ガラス体を切り出し(ステップ102)、該棒状ガラス体の角部を除去処理し(ステップ104:除去処理工程)、断面が略円形な棒状ガラス体に成型した後(ステップ106:第1の成型工程)、該ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して均質化処理を行う(ステップ108:第1の均質化処理工程)。その後、均質化処理後のガラス体を成型して球状ガラス体とし(ステップ109:第2の成型工程)、軸を変えるように該球状ガラス体を持ち替えた後(ステップ111:持ち替え工程)、該球状ガラス体を加熱しながら延伸し(ステップ113:延伸工程)、均質化に適した円柱状等の形状のガラス体に成型した後(ステップ115:第3の成型工程)、再度、帯域溶融法による均質化処理を実施し(ステップ117:第2の均質化処理工程)、ガラス体を成型処理することにより(ステップ119:成型工程)、完全に三方向に脈理が存在せず、極めて高均質なシリカ・チタニアガラスが得られる。
前記ステップ100、102、104、106及び108はそれぞれ、前記第2の例と同様に行えばよい。なお、図13においては、第1の均質化処理前に円柱状のガラス体に加工する好ましい方法として前記ステップ104及び106を示したが、加工方法は特に限定されないものである。
また、図13においては、第1の均質化処理後、均質化処理軸を変える好ましい方法として前記ステップ109、111、113及び115を示したが、本発明において、均質化処理軸を変える方法は特に限定されない。前記ステップ109は前記第2の例におけるステップ112(第2の成型工程)と同様に行うことが好ましい。
図14はステップ111を原理的に示す概略説明図である。図14に示した如く、前記成型された球状ガラス体20を前記ガラス支持棒30から切り離し、軸が変わるように再度ガラス支持棒30を取り付けることにより、該球状ガラス体20が持ち替えられる。図14において、42aは第1の均質化処理における均質化処理軸であり、42bは第2の均質化処理における均質化処理軸である。持ち替え方法は特に限定はないが、図14に示した如く、ガラス支持棒30から切り離した球状ガラス体30を、略90度回転させ、第1の均質化処理軸42aと第2の均質化処理軸42bが略直交するように設置することが好ましい。
図15はステップ113を原理的に示す概略説明図である。図15に示した如く、前記持ち替えた球状ガラス体20をバーナー34で加熱しつつ前記左右のチャック32a,32b間隔を広げることによりガラス体21が延伸される。
図16はステップ115を原理的に示す概略説明図である。図16に示した如く、前記延伸したガラス体21に対して、前記左右のチャック32a,32bの回転数に差分を与え捻りながら、バーナー34を移動することにより、該ガラス体全体が円柱状に成型され、断面が略円形な棒状ガラス体23が得られる。
前記成型された棒状ガラス体23に対し前記ステップ108と同様に均質化処理を施すことにより(ステップ117)、機械的に脈理が除去された完全に三方向に脈理のない高均質なシリカ・チタニアガラスが製造される。前記均質化されたガラス体を前記第2の例におけるステップ110と同様に成型処理することにより(ステップ119)、円柱状等、所望の形状に成型された均質なシリカ・チタニアガラスが得られる。なお、前記ステップ119において、成型炉内で成型する際は、ガラス体を第2の均質化処理軸42b方向に重力が加わるように設置し、自重により加熱変形させることが好ましい。
前記方法により得られる、複数軸による均質化処理を施したシリカ・チタニアガラスは3方向に完全に脈理が除去されている上、全体的な成分均質性も極めて向上しているので、EUVリソグラフィー用反射光学系用の基板材料として要求される高い線膨張係数の均質性を満たすものである。
次に、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第4の例について説明する。本発明方法においては、最初の均質化処理前にガラス体の外周部を除去することにより均質性を向上させることができる。図17は、本発明の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法の第4の例の手順の大略を示すフローチャートである。
VAD法によって作製したシリカ・チタニアガラス体における成分濃度分布について調べた結果、チタニア濃度はガラス体の内部ではかなり緩やかな分布をしており、外周部で大きく変化していることが判明した。従って、ガラス体の外周部の濃度不均質部分を研削等で除去し(ステップ101:外周部の除去処理工程)、原料の均質性を高めた後、均質化を行うことで、より高均質なシリカ・チタニアガラス体を得ることが出来る。
外周部の除去処理工程は均質化処理の前であれば行う順番は特に限定されないが、作業性の点から図17に示した如く、VAD法によりシリカ・チタニアガラス体を作製した後、外周部の除去処理を行い、その後、棒状ガラス体を切り出すことが好ましい。なお、図17においては、前記第1の例に更に外周部の除去処理工程を適用した場合の例を示したが、前記第2の例及び前記第3の例に対しても同様に外周部の除去処理を施すことができる。
シリカ・チタニアガラス体の外周部の濃度不均質部分はガラス体の外径や製造条件等によって異なるが、直径がφ40mm〜160mmのガラス体では外周からほぼ2mmから8mmの範囲であることが判った。従って、ガラス体の外径がφ40mm〜160mmの範囲の場合、均質性の向上の点からは、除去量は外周の外表面から2mm〜10mmの範囲で適宜決定されることが好ましい。しかしながら、外周部の除去処理工程は収率の点からは不利であるため、要求される品質度合いによって必要に応じて選択するものである。
次に、少なくとも一方向(即ち、一方向又は三方向)に脈理がない状態について説明する。図18〜図20はそれぞれ、三方向に脈理のある状態、一方向に脈理のない状態、三方向に脈理のない状態を示す概略説明図であり、(a)は斜視説明図、(b)はA視点から観察した図(上面図)、(c)はB視点から観察した図(側面図)をそれぞれ示す。図18〜図20において、50は脈理である。
脈理とは、ガラス等の光透過性材料中において、屈折率が急激に変化している部分を指すが、一般的な光学ガラスでは脈理は糸状あるいはひも状に現れるのに対し、シリカガラスの場合には、シート状、層状に現れる(非特許文献1、127頁参照)。本発明の対象であるシリカ・チタニアガラスも製造方法的にシリカガラスと類似している為に、脈理の現れ方はシリカガラスと同一である。
このようなシート状の脈理は通常、完全な平面状ではなく、凹凸のある立体的な構造を取っていることが多く、この場合には、例えば立方体にガラスを加工した場合、どの側面からも脈理が観察される、所謂、全ての方向に脈理がある(三方向に脈理が存在する)ことになる(図18参照)。
しかしながら、例えば、前記第1及び第2の例において述べた如く、一方向に均質化処理を行って、均質化処理軸と垂直な脈理成分を完全に除去したような場合には、シート状の脈理は完全な平面形状になる。従って、図19に示した如く、処理したガラス体を立方体に成型して観察すると、均質化処理軸方向(A視点)に透過する光で観察した場合、この方向の脈理は完全に見えなくなる[図19(b)]。一方、均質化処理軸と垂直な方向(B視点)に対しては脈理が直線状に観察されることになる[図19(c)]。この状態を一方向に脈理がない状態と称する。
更に、前記第3の例において述べた如く、複数軸の均質化処理軸を行うと、脈理は全ての方向において完全に除去される為、処理ガラスを立方体に加工して観察した場合、どの方向から見ても脈理が全く認められなくなる(図20参照)。この状態を三方向に脈理がない状態と称する。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
(実施例1)
四塩化珪素及び四塩化チタンを酸水素バーナーによって得られる酸水素火炎中に導入し垂直に保持され回転している直径30mm、長さ1mのシリカガラス製基体上に堆積して直径300mm、長さ1000mm、質量25kg弱のシリカ・チタニアガラス多孔質体を得た。
得られたシリカ・チタニアガラス多孔質体をヘリウムガス雰囲気のゾーン加熱電気炉内をゆっくりと移動させつつ、1500℃に加熱して透明な直径100mm、長さ1350mmのインゴット状のシリカ・チタニアガラス体を得た(VAD法によるシリカ・チタニアガラス体の作製工程)。シリカ・チタニアガラスを成長する際の四塩化珪素と四塩化チタンの流量割合を調整して、得られるシリカ・チタニアガラスの組成をシリカ分93質量%、チタニア分7質量%に調整した。
作製したシリカ・チタニアガラス体の両端をそれぞれ75mmずつカットし、直径φ100mm、長さ1200mmの円柱状のシリカ・チタニアガラス体を形成した後、半径に沿って成長軸方向に切断し、ガラス体を3分割して、断面が扇形の質量約8kgの扇柱状のシリカ・チタニアガラス体を得た(切り出し工程)。この扇柱状のガラス体の角部3箇所を5〜10mmずつ面取りを行った(除去処理工程)。
前記除去処理後のシリカ・チタニアガラス体の両端に線膨張係数5×10-7/℃のシリカガラスロッド支持棒を溶接し、支持棒を介して旋盤の両チャックに固定した。旋盤の両チャックを同期させつつ20rpmで回転させ、支持棒とシリカ・チタニアガラス体の左側の溶接部分近傍を酸水素バーナーで強熱して、シリカ・チタニアガラス体が溶解した事を確認してから、旋盤の右側のチャックの回転数を40rpmに上げ、両チャック間の回転数に差動を与え、角柱状のシリカ・チタニアガラス体をゆっくりと捻ることにより円柱状に成型しつつ、かつ両チャック間隔を詰めてガラス体の径を太めながら、バーナーを10mm/分の速度で右方に移動させ、ガラス体全体を直径約φ80mmの円柱状に成型した(第1の成型工程)。尚、この場合、両チャックの回転方向は同じである。
シリカ・チタニアガラス体の成型が終了した後は左右のチャックの回転数を50rpmで同期させて回転しつつ、シリカ・チタニアガラス体の左端にバーナーを戻し、強熱して溶融帯域を形成した。溶融帯域が形成されたことを確認した後、右側の旋盤のチャックの回転を左側のチャックの回転方向と逆回転、60rpmで回転させ、強いせん断応力を与えて溶融帯域内を攪拌した。同時にバーナーを右方に10mm/分のゆっくりとした速度で移動させる事により溶融帯域を移動させ、シリカ・チタニアガラス体全体の均質化を行った(一方向目の均質化処理工程)。同様の操作で同方向に再度均質化処理を施し、合計2回の均質化処理を行った。
前記均質化処理後、両チャックの回転方向を揃え、かつ50rpmで同期させて回転させ、バーナーをシリカ・チタニアガラス体の左端に戻し強熱して溶融した。シリカ・チタニアガラス体が溶融したことを確認した後、右側の旋盤のチャックをゆっくりと押し狭めてシリカ・チタニアガラス体を押し潰し、直径約180mm弱の球状に成型した(第2の成型工程)。
前記第2の成型工程を経た球状のガラス体の両端を支持棒から切り離し、一方の切断面を下にして内径φ200mmの円筒状の成型用容器(グラファイト製)内に入れ、成型用容器ごと真空炉内に設置し、1800℃にて10分加熱して直径200mm、厚さ95mmのシリカ・チタニアガラス円盤を得た(成型用容器内での成型工程)。更に得られたシリカ・チタニアガラス円盤を大気雰囲気下で1150℃で100時間保持後300℃まで1時間辺り1℃の割合で徐冷して歪を除去した(徐歪処理工程)。このようにして直径200mm、厚さ95mmのシリカ・チタニアガラス成型体を得た。
得られた成型体の上下面を10mmずつカットし、残った成型体の上面及び上下面に対して垂直な面から厚さ10mmのサンプルを切り出し、シュリーレン装置(溝尻光学製SCHLIEREN COMPACT 150)を用いたシュリーレン像観察による脈理観察を行った。結果を表1に示す。なお、一般的に光学ガラスにおける脈理の測定には米軍軍事規格であるMIL-G-174が適用される。即ち、ピンホールから出る光をコリメートレンズで平行光にし、サンプルを照射し、その像を集光レンズで絞り込み、その焦点位置で目視観察する方法であるが、シュリーレン装置による脈理観察はより簡便にこの方法と同等の精度の測定が行えるため、普及している方法である。
図21は、シリカ・チタニアガラス成型体からのサンプルの切り出し方法を示す概略説明図であり、39はシリカ・チタニアガラス成型体、40及び41はそれぞれ上面及び下面のカット部分、44は上面から切り出された脈理観察用のサンプル、46は垂直面から切り出された脈理観察用のサンプル、48は上面から切り出された干渉縞測定用のサンプルをそれぞれ示す。表1において、上面から切り出されたサンプルは正面方向、垂直面から切り出されたサンプルは横方向を評価するものとして示した。
更に、図21に示した如く上面から切り出したサンプルの中央部から直径60mm、厚さ10mmの円板を取り出し干渉縞測定を行い、屈折率の均質性Δnを測定し、写真撮影を行った。干渉縞測定はZygo Mark GPIを用いた。結果を表1及び図22に示す。
シリカガラス中にドープされたチタニアはシリカガラスの屈折率を上げるため、シリカ・チタニアガラスに関しても干渉縞により屈折率の均質性を調べることにより、TiO2濃度の分布を調べることが出来る。
非特許文献1によるとTiO2が1mol%存在するとシリカガラスの屈折率は4.5×10-3上昇するので、例えば屈折率の均質性が1×10-5のシリカ・チタニアガラスの場合、チタニア以外の要因による屈折率変動がないと仮定して計算すると、チタニア濃度に22.2molppm、質量換算すると1900wtppm程度の分布があることを意味する。実際には仮想温度等のチタニア以外の屈折率の変動要因はかなり大きいので単純に上記のような計算にはならないが、同じ処理条件の場合は、これらの影響は相対的に相殺されると考えられるので、干渉縞測定による屈折率の均質性Δnはチタニア濃度の均質性を表す有効で簡便な尺度となる。
表1に示した如く、実施例1のシリカ・チタニアガラス成型体は、上面及び垂直面のいずれのサンプルも脈理が観察されず、良好な均質性が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、VAD法によるシリカ・チタニアガラス体の作製工程、切り出し工程、除去処理工程、第1の成型工程を行った後、実施例1と同様の方法で一方向の均質化処理を1回行った(第1の均質化処理工程)。
均質化処理後、実施例1と同様の方法により第2の成型工程を行った。
前記第2の成型工程を経た球状のガラス体(直径約180mm)の両端を支持棒から切り離し、該球状のシリカ・チタニアガラス体の一方の切断面を下にして台上に置き、球状ガラス体の両側面に再度支持棒を溶接した。切り離したボールの両端を結ぶ軸が第1の均質化処理の軸であるから、新たに溶接した両支持棒を繋ぐ軸は第1の均質化の軸と直交していることになる(持ち替え工程)。
両支持棒により球状ガラス体全体を同期させて20rpmで回転させながらバーナー火炎でガラス体全体を強加熱し、ガラス体全体を溶融した。ガラス体全体が溶融したことを確認した後、旋盤の両チャックを引き離し、ガラス体を延伸した(延伸工程)。延伸した形の不揃いなシリカ・チタニアガラス体を前記第1の成型工程と同様の操作で直径約φ70mmの円柱状のシリカ・チタニアガラス体に成型した(第3の成型工程)。
このシリカ・チタニアガラス体に対し第1の均質化処理と同様の操作で均質化処理を施した(第2の均質化処理工程)。この場合の均質化処理における軸は第1の均質化処理における軸とは直交している。第2の均質化処理を終えたシリカ・チタニアガラス体を前記第2の成型工程と同様の操作で球状に成型した後(第4の成型工程)、実施例1の成型用容器内での成型工程と同様の操作により、真空炉内で円盤状に成型した(成型用容器内での成型工程)。
得られたシリカ・チタニアガラス円盤はカットロスもあって実施例1よりは小さく、直径φ200mm、厚さ80mmであった。更に得られたシリカ・チタニアガラス円盤を実施例2の徐歪処理工程と同様の操作により歪を除去し、シリカ・チタニアガラス成型体を得た。
実施例1と同様の方法で、前記得られた成型体からサンプルを切り出し、脈理測定及び干渉縞測定を行った。結果を表1及び図23に示す。表1に示した如く、実施例2のシリカ・チタニアガラス体は、上面及び垂直面のいずれのサンプルも脈理が観察されず、良好な均質性が得られた。
(実施例3)
実施例1と同様の方法でVAD法によりシリカ・チタニアガラス体を作製し、該ガラス体の両端を切断し、直径φ100mm、長さ1200mmの円柱状のシリカ・チタニアガラス体を形成した。その後、該ガラス体の外周を深さで5mm除去し、直径φ90mm、長さ1200mmのシリカ・チタニアガラス体を得た。
得られたガラス体に対し、実施例1と同様に切り出し工程、除去処理工程、第1の成型工程、均質化処理工程、第2の成型工程、成型用容器内での成型工程、徐歪処理工程を行い、シリカ・チタニアガラス成型体を得た。得られたシリカ・チタニアガラス成型体の大きさは直径φ200mm、厚さ80mm弱であった。
実施例1と同様の方法で、前記得られた成型体からサンプルを切り出し、脈理測定及び干渉縞測定を行った。結果を表1及び図24に示す。表1に示した如く、実施例3のシリカ・チタニアガラス体は、上面及び垂直面のいずれのサンプルも脈理が観察されず、良好な均質性が得られた。
(実施例4)
実施例3と同様に切り出し工程前に外周を除去した以外は、実施例2と同様の方法で実験を行い、シリカ・チタニアガラス成型体を得た。得られたシリカ・チタニアガラス成型体の大きさは直径φ200mm、厚さ70mmであった。
実施例1と同様の方法で、前記得られた成型体からサンプルを切り出し、脈理測定及び干渉縞測定を行った。結果を表1及び図25に示す。表1に示した如く、実施例4のシリカ・チタニアガラス体は、上面及び垂直面のいずれのサンプルも脈理が観察されず、良好な均質性が得られた。
(実施例5)
シリカ及びチタニアの原料ガスの比率を変えてシリカ分98質量%、チタニア分2質量%及びシリカ分87質量%、チタニア分13質量%のシリカ・チタニアガラス体をそれぞれ実施例1と同径、同サイズで作製した。これらのガラス体についてそれぞれ実施例1〜4と同様の処置を施し、評価を行った結果、実施例1〜4と同様の結果を得た。
(実施例6)
切り出し工程を、3分割ではなく4分割又は6分割に変更した以外は実施例1と同様の方法で実験を行った結果、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、VAD法によるシリカ・チタニアガラスを作製した後、シリカ・チタニアガラス体を分割せずにそのまま溶融帯域法により均質化処理を施した。その後、実施例1と同様に成型処理、徐歪処理を行い脈理観察及び干渉縞測定を行った。
また、成型体の側面と平行に厚さ10mmのサンプルを切り出し脈理観察を行った。結果を表1及び図26に示す。表1に示した如く、比較例1のシリカ・チタニアガラス成型体は、上面及び垂直面の両サンプルにおいて脈理が観察され、均質性も悪かった。
本発明方法の第1の例の手順の大略を示すフローチャートである。 本発明方法の第1の例におけるステップ100における多孔質ガラス体の作製方法の一例を示す概略説明図である。 OVD法による多孔質ガラス体の製造方法を示す概略説明図である。 本発明方法の第1の例におけるステップ102を原理的に示す概略説明図である。 VAD法により作製したシリカ・チタニアガラス体におけるチタニア濃度分布の概念説明図であり、(a)は均質化処理前のチタニア濃度分布、(b)は均質化処理後のチタニア濃度分布をそれぞれ示す。 本発明の切り出し工程後の棒状ガラス体におけるチタニア濃度分布の概念説明図であり、(a)は均質化処理前のチタニア濃度分布、(b)は均質化処理後のチタニア濃度分布をそれぞれ示す。 本発明方法の第2の例の手順の大略を示すフローチャートである。 本発明方法の第2の例におけるステップ104を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第2の例におけるステップ106を原理的に示す概略説明図であり、(a)はステップ106で用いられる装置を含む概略説明図であり、(b)はステップ106による棒状ガラス体の形状の変化を示す概略説明図である。 本発明方法の第2の例におけるステップ108を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第2の例におけるステップ112を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第2の例におけるステップ114を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第3の例の手順の大略を示すフローチャートである。 本発明方法の第3の例におけるステップ111を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第3の例におけるステップ113を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第3の例におけるステップ115を原理的に示す概略説明図である。 本発明方法の第4の例の手順の大略を示すフローチャートである。 三方向に脈理のある状態を示す概略説明図であり、(a)は斜視説明図、(b)はA視点から観察した図、(c)はB視点から観察した図をそれぞれ示す。 一方向に脈理のない状態を示す概略説明図であり、(a)は斜視説明図、(b)はA視点から観察した図、(c)はB視点から観察した図をそれぞれ示す。 三方向に脈理のない状態を示す概略説明図であり、(a)は斜視説明図、(b)はA視点から観察した図、(c)はB視点から観察した図をそれぞれ示す。 実施例1のサンプルの切り出し方法を示す概略説明図である。 実施例1の干渉縞測定の結果を示す写真である。 実施例2の干渉縞測定の結果を示す写真である。 実施例3の干渉縞測定の結果を示す写真である。 実施例4の干渉縞測定の結果を示す写真である。 比較例1の干渉縞測定の結果を示す写真である。
符号の説明
10:VAD法により成長中のスート体、11,11a,11b:成長軸、12:VAD法により作製されたシリカ・チタニアガラス体、12a,12b:12の一部、13:OVD法により成長中のスート体、14:扇柱状の棒状ガラス体、14a,14b:14の一部、15:角部の除去処理後の棒状ガラス体、16:成型された棒状ガラス体、16a:溶融帯域、18:均質化処理後のガラス体、20:球状ガラス体、21:延伸されたガラス体、22:成型されたシリカ・チタニアガラス体、23:成型された棒状ガラス体、24:成型用容器、30:ガラス支持棒、31a,31b:基体、32a,32b:チャック、33a,33b,34:バーナー、36:成型炉、38:加熱手段、39:シリカ・チタニアガラス成型体、40:成型体の上面のカット部分、41:成型体の下面のカット部分、42:均質化処理軸、42a:第1の均質化処理軸、42b:第2の均質化処理軸、44:上面から切り出された脈理観察用のサンプル、46:垂直面から切り出された脈理観察用のサンプル、48:上面から切り出された干渉縞測定用のサンプル、50:脈理、X:円柱状のガラス体の中心軸、X1〜X3:ガラス体の円形断面における円の中心部、Y:ガラス体の外周、Y1〜Y6:ガラス体の外周部。

Claims (12)

  1. 少なくとも一方向に脈理のない均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法であって、
    シリカ原料及びチタニア原料を酸水素火炎中に導入し、シリカ・チタニアガラス微粒子を回転する基体上に垂直方向に堆積、成長して多孔質ガラス体を作製し、該多孔質ガラス体を加熱して透明化し、円柱状のシリカ・チタニアガラス体を作製する作製工程と、
    前記シリカ・チタニアガラス体を半径に沿って成長軸方向に切断し、棒状ガラス体を形成する切り出し工程と、
    前記棒状ガラス体を、該ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力が作用するように帯域溶融法を適用して脈理を除去する均質化処理を施す第1の均質化処理工程と、を含むことを特徴とする均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  2. 前記均質化処理工程後、前記ガラス体の成長軸方向に重力が加わるように加熱変形させる成型工程を含むことを特徴とする請求項1記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  3. 前記均質化処理工程後、更に前記ガラス体に対し均質化処理軸の方向を変えて帯域溶融法による均質化処理を施す第2の均質化処理工程を含むことを特徴とする請求項1記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  4. 前記第2の均質化処理工程後、前記第2の均質化処理軸方向に重力が加わるように加熱変形させる成型工程を含むことを特徴とする請求項3記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  5. 前記切り出し工程前又は前記第1の均質化処理工程前に、前記ガラス体の外周部を除去する除去処理工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  6. 前記切り出し工程において、前記シリカ・チタニアガラス体を3以上10以下に分割することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  7. 前記均質化処理において、前記ガラス体の両端部を0〜900℃における線膨張係数が0.0×10-7/℃以上6.0×10-7/℃以下のガラス支持棒を介して一対の回転可能な保持手段で保持し、均質化処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニ アガラスの製造方法。
  8. 前記均質化処理において、前記ガラス体の両端部を一対の回転可能な保持手段で保持し、該ガラス体の一部をバーナーで強熱しつつ、該一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与えながらバーナーを移動させることにより該ガラス体の成長軸に対して垂直な方向にせん断応力を作用させて、脈理を除去しチタニア濃度の均質化を図る均質化処理を施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  9. 前記均質化処理において、前記一対の回転可能な保持手段に大きな回転差を与える方法が、前記一対の回転可能な保持手段を逆回転することであることを特徴とする請求項8記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  10. 前記一対の回転可能な保持手段が旋盤に設けられた左右のチャックであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  11. 前記均質化処理を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
  12. 前記シリカ・チタニアガラスの組成が、チタニア濃度が2質量%以上15質量%以下で残部がSiO2であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の均質なシリカ・チタニアガラスの製造方法。
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