JP4567867B2 - 磁気記録ディスク用成膜装置及び磁気記録ディスク製作方法 - Google Patents

磁気記録ディスク用成膜装置及び磁気記録ディスク製作方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、磁気記録ディスクの製作に関するものであり、特に、記録層としての磁性膜の上に作成されるカーボンよりなる保護膜の作成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録ディスクは、ハードディスクやCD−ROM等として従来から良く知られている。このような磁気記録ディスクは、金属製又は誘電体製の基板の表面に記録層を形成した構造であり、基板に対する表面処理を経て製作される。このような表面処理を、ハードディスクの製作を例にして説明する。
【0003】
ハードディスクを製作する場合、一般的には、NiPコーティングされたアルミニウム製の基板を用いる。この基板の上に、まず、Cr等の金属の下地膜を作成し、その上に、CoCrTa等の磁性膜を記録層として作成する。そして、記録層の上に保護膜を設けることでハードディスクが製作される。
保護膜は、記録再生用の磁気ヘッドによる衝撃や摩耗から記録層を守るため及び耐候性を確保するために設けられるものであり、潤滑性のある強固な膜が必要とされている。この保護膜には、通常、カーボン膜が使用される。尚、以下の説明では、カーボンよりなる保護膜をカーボン保護膜と称する。
【0004】
カーボン保護膜は、記録密度の増加に伴い、より薄い厚さで必要な耐久性を備えることが要求されている。記録密度の増加は、セクタ間距離の減少を意味する。セクタ間距離が減少すると、記録層に対する磁気ヘッドの距離も短くしなければならない。カーボン保護膜は、記録層の上に形成されるから、磁気ヘッドまでの距離を短くするには、保護膜の厚さを薄くしなければならない。現在市販されている例えば1.6ギガビット/平方インチ程度の記録密度のハードディスクでは、保護膜の厚さは100〜150オングストローム程度であるが、記録密度が向上して3ギガビット/平方インチ程度になると、保護膜の厚さは50〜100オングストローム程度になると予想されている。
【0005】
その一方で、カーボン保護膜は、衝撃や摩耗、熱、湿度等から記録層を十分に保護できるものでなければならない。このためには、一般的には、緻密な構造の硬度の高い膜でなければならない。つまり、磁気記録ディスクにおける保護膜は、より薄い厚さでかつ十分な硬度で作成されることが要求されている。
【0006】
従来、このようなカーボン保護膜は、スパッタリングによって作成されている。即ち、カーボンよりなるターゲットをスパッタして基板の表面にカーボンよりなる膜を堆積させ、保護膜としている。
しかしながら、より薄くて高硬度の膜の作成には、スパッタリングよりも化学蒸着(Chemical Vapor Deposition,CVD)の方が適している。即ち、カーボン膜は、アモルファス状のカーボン膜と結晶化したカーボン膜に大きく分けられる。
そして、結晶化したカーボン膜は通常グラファイトカーボン膜であるが、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜と呼ばれるものがある。DLC膜は、一般的には、ダイヤモンドに類似した構造のカーボン膜を意味する。プラズマCVDによると、DLC膜が得られ易くなるので、磁気記録ディスクにおける保護膜用に適している。
【0007】
図7は、従来の磁気記録ディスク用成膜装置の要部の構成を示す正面概略図であり、プラズマCVDによってカーボン保護膜を作成する構成が示されている。
図7に示す装置は、排気系61を備えた保護膜作成チャンバー6と、保護膜作成チャンバー6内に所定のプロセスガスを導入するガス導入系62と、導入されたプロセスガスにエネルギーを与えてプラズマを形成するプラズマ形成手段63と、保護膜作成チャンバー6内に基板9を搬入する不図示の搬送系とから主に構成されている。
【0008】
ガス導入系62は、CH4 等の有機化合物ガスを導入するようになっている。
プラズマ形成手段63は、プロセスガスに高周波放電を生じさせてプラズマを形成するようになっており、保護膜作成チャンバー6内に設けられた放電用電極631と、整合器632を介して放電用電極631に高周波電力を供給する放電用電源633とから主に構成されている。
【0009】
放電用電極631は、内部が中空であり、基板9と対向する面(以下、対向面)にガス吹き出し孔630を多数有している。ガス導入系62は、放電用電極631内を経由してガス吹き出し孔630からプロセスガスを導入するようになっている。放電用電源633によって高周波電圧が放電用電極631に与えられると、放電用電極631と基板9との間に高周波電界が与えられ、プロセスガスに放電が生じてプラズマが形成される。そして、プラズマ中でのガスの分解等により、基板9の表面にカーボンの薄膜が堆積する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したカーボン保護膜を作成する磁気記録ディスク用成膜装置において、カーボン膜は、基板の表面のみならず保護膜作成チャンバー内の他の露出面にも堆積する。この膜の堆積量が多くなると、膜は内部応力や自重などによって剥離する。この剥離によって、保護膜作成チャンバー内にカーボンの微粒子(パーティクル)が生じてしまう。このパーティクルが基板の表面に付着すると、カーボン保護膜の表面に突起が形成されて局所的な膜厚異常となり、製品不良の原因になる。
【0011】
より具体的に説明すると、ハードディスクの場合、カーボン保護膜の上に高分子等で形成された潤滑膜が作成されて最終的に製品となる。この場合、カーボン保護膜の表面に突起が形成されていると、その影響で潤滑膜の表面にも突起が形成され易い。このように突起が形成されていると、情報の記録や読み出しを行う磁気ヘッドがその突起に接触して動かなくなってしまったり、突起が磁気ヘッドによって削られてそれが引きずられる結果、表面が傷つけられてしまったりする問題がある。
【0012】
現状では、カーボン保護膜作成後にテープバーニッシュと呼ばれる工程があり、上記のような突起は、テープバーニッシュ工程で削られて除去されている。しかしながら、突起の数が多くなると、テープバニッシ工程ですべての突起を除去するが困難になる。また、パーティクルが重なったりして大きな突起が形成されていると、その突起を除去する際にそれを引きずって基板の表面を傷付けたり凹みを作ったりする問題がある。このような傷や凹みがあると、サーティファイテスト(記録再生テスト)で不良となることが多い。
【0013】
パーティクルによる突起の形成を防止する構成としては、保護膜作成チャンバー内をプラズマクリーニングする構成が挙げられる。プラズマクリーニングは、例えば酸素ガスを保護膜作成チャンバー6内に導入し、酸素プラズマを形成することにより行う。
酸素プラズマ中では、酸素活性種や酸素イオンが生成される。生成された酸素活性種や酸素イオンは、保護膜作成チャンバー内に堆積したカーボン膜と反応し、カーボン膜をアッシングする。アッシングにより、カーボン膜が炭酸ガス等の揮発物となり、排気系61によって保護膜作成チャンバー6外に排出される。
【0014】
しかしながら、このようなプラズマクリーニングを行う構成でも、以下のような問題がある。
まず、カーボン保護膜作成の際には、カーボン膜は放電用電極631の表面にも堆積する。プラズマクリーニングにより保護膜作成チャンバー6内の露出面のカーボン膜を除去すると、この放電用電極631の表面のカーボン膜も除去してしまう。
【0015】
一方、前述したようにプラズマを形成した際、放電用電極631とプラズマとの間にはシース電界又はセルフバイアスによる電界が形成される。この電界によりプラズマ中のイオンが入射し、放電用電極631の表面のスパッタリングが生じることがある。スパッタリングが生ずると、放電用電極631の材料のスパッタ粒子が放出され、これがカーボン保護膜中に混入することがある。このような不純物が混入すると、一般的に膜質が低下する。特に、プラズマクリーニング直後に作成したカーボン保護膜は硬度の低下が生ずる。これは、プラズマクリーニング中に放電用電極631の表面が酸化され、カーボン保護膜作成の際にその酸化物がスパッタされて混入することによる生ずると考えられる。
【0016】
このような問題を解決する方法として、プラズマクリーニング後、ダミーの基板を配置して数回カーボン保護膜の作成を行い、放電用電極631の表面にカーボン膜をある程度の厚さ堆積させる方法がある。しかしながら、放電用電極631の表面のみにカーボン膜を堆積させることは困難であり、他の露出面にも堆積してしまう。そして、堆積したカーボン膜は同様にパーティクル発生の原因となり易い。また、このようなダミーの工程があると、プラズマクリーニング後に通常のカーボン保護膜の作成を再開するまでに長い時間を要してしまい、生産性の点で問題が生ずる。
【0017】
また、従来のように放電用電極631が多数のガス吹き出し孔630を有する構成では、カーボン膜がガス吹き出し孔の縁にも堆積する。しかしながら、ガス吹き出し孔630の縁に堆積したカーボン膜は、プラズマがガス吹き出し孔に入り込みにくいため、プラズマクリーニングを行っても充分に除去できないという問題がある。ガス吹き出し孔630の大きさを大きくすれば、問題は解決されるが、基板9に平行な面内でのガス圧分布が不均一となり、これが原因で成膜が不均一になり易い。
【0018】
本願の発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、保護膜作成チャンバー内のパーティクル発生を効果的に防止した構成を提供する技術的意義がある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、基板に作成された記録用の磁性膜の上にカーボンよりなる保護膜を作成する磁気記録ディスク用成膜装置であって、内部に基板が配置されて前記保護膜が作成される保護膜作成チャンバーと、保護膜作成チャンバー内の露出面に堆積したカーボンの膜をプラズマによって除去するプラズマクリーニングを行うクリーニング手段とを備えており、保護膜作成チャンバー内に酸素ガスを導入することが可能なガス導入系が設けられており、クリーニング手段は、導入された酸素ガスに放電を生じさせて酸素プラズマを形成する放電用電源と、保護膜作成チャンバー内に表面が露出しているとともに放電用電源によって酸素プラズマ形成用の電圧が印加される放電用電極とから構成されており、さらに、放電用電極は、金属部と、金属部の表面に設けられたカーボン層とより成り、カーボン層は、前記保護膜作成及び前記プラズマクリーニングが繰り返された場合にも完全に削られることが無い厚さを有しており、カーボン層の厚さは2mm以上であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項の構成において、前記ガス導入系は、前記保護膜作成チャンバー内にプロセスガスを導入するものであって、前記放電用電極に放電用の電圧を印加してプロセスガスに放電を生じさせて基板に前記カーボンより成る保護膜を作成する放電用電源が設けられており、前記放電用電極は中空の構造であって、前記ガス導入系は、前記放電用電極内の空間を経由して前記保護膜作成チャンバー内に前記プロセスガスを導入するものであり、前記放電用電極は、基板と対向する面である対向面を有するとともに、対向面の周縁又はその近傍にガス吹き出し孔が設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項の構成において、前記ガス吹き出し孔は、前記クリーニング手段が形成する酸素プラズマが進入可能な程度以上の大きさを有するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、前記請求項の構成において、前記ガス吹き出し孔は、幅が1mm以上のスリット、直径1mm以上の複数の円形の孔、又は、一辺が1mm以上の複数の方形の孔であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項記載の発明は、保護膜作成チャンバーを備えた成膜装置を使用して基板にカーボンよりなる保護膜を作成する工程を有する磁気記録ディスク製作方法であって、
成膜装置は、保護膜作成チャンバー内の露出面に堆積したカーボンの膜をプラズマによって除去するプラズマクリーニングを行うクリーニング手段と、保護膜作成チャンバー内に酸素ガスを導入することが可能なガス導入系とを備えており、
クリーニング手段は、導入された酸素ガスに放電を生じさせて酸素プラズマを形成する放電用電源と、保護膜作成チャンバー内に表面が露出しているとともに放電用電源によって酸素プラズマ形成用の電圧が印加される放電用電極とから構成されており、
さらに、放電用電極は、金属部と、金属部の表面に設けられたカーボン層とより成り、
放電用電極のカーボン層を完全に削らない範囲で前記プラズマクリーニングを行うという構成を有する。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本願発明の実施の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る磁気記録ディスク用成膜装置の概略構成を示す平面図である。本実施形態の装置は、インライン式の装置になっている。インライン式とは、複数のチャンバーが一列に縦設され、それらのチャンバーを経由して基板の搬送路が設定されている装置の総称である。本実施形態の装置では、複数のチャンバー1,2,3,4,5,6,7,8が方形の輪郭に沿って縦設されており、これに沿って方形の搬送路が設定されている。
【0021】
各チャンバー1,2,3,4,5,6,7,8は、専用又は兼用の排気系によって排気される真空容器である。各チャンバー1,2,3,4,5,6,7,8の境界部分には、ゲートバルブ10が設けられている。基板9は、キャリア90に搭載されて図1中不図示の搬送機構によって搬送路に沿って搬送されるようになっている。
複数のチャンバー1,2,3,4,5,6,7,8のうち、方形の一辺に隣接して配置された二つのチャンバー1,2が、キャリア90への基板9の搭載を行うロードロックチャンバー1及びキャリア90からの基板9の回収を行うアンロードロックチャンバー2になっている。
【0022】
また、方形の他の三辺に配置されたチャンバー3,4,5,6,7は、各種処理を行う処理チャンバーになっている。具体的には、薄膜の作成の前に基板9を予め加熱するプリヒートチャンバー3と、プリヒートされた基板9に下地膜を作成する下地膜作成チャンバー4と、下地膜の作成された基板9に磁性膜を作成する磁性膜作成チャンバー5と、磁性膜の上に保護膜を作成する保護膜作成チャンバー6とが設けられている。また、方形の角の部分のチャンバー8は、基板9の搬送方向を90度転換する方向転換機構を備えた方向転換チャンバーになっている。
【0023】
キャリア90は、基板9の周縁を数カ所で接触保持して基板9を保持するものである。搬送機構は、磁気結合方式により動力を真空側に導入してキャリア90を移動させる。キャリア90は、搬送ラインに沿って並べられた多数の従動ローラに支持されながら移動する。このようなキャリア90及び搬送機構の構成としては、特開平8−274142号公報に開示された構成を採用することができる。
【0024】
次に、本実施形態の装置の大きな特徴点を成す保護膜作成チャンバー6の構成について図2を使用して説明する。図2は、図1に示す保護膜作成チャンバー6の構成を説明する側面断面概略図である。
図2に示すように、保護膜作成チャンバー6は、排気系61を備えた気密な真空容器である。排気系61は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを備えて保護膜作成チャンバー6内を10−4Pa程度まで排気可能に構成されている。
【0025】
また、保護膜作成チャンバー6は、原料となるガスを含むプロセスガスを導入するガス導入系62と、導入されたプロセスガスにエネルギーを与えてプラズマを形成するプラズマ形成手段63とを備えている。ガス導入系62は、プロセスガスとしてCHとHの混合ガスを所定の流量で導入できるよう構成されている。
【0026】
プラズマ形成手段63は、導入されたプロセスガスに高周波放電を生じさせてプラズマを形成するようになっている。プラズマ形成手段63は、保護膜作成チャンバー6内に設けられた放電用電極631と、放電用電極631に整合器632を介して高周波電力を供給する放電用電源633とから主に構成されている。
【0027】
放電用電極631の構成は、本実施形態の装置の大きな特徴点の一つである。
以下、この点について説明する。
図2に示すように、放電用電極631は、板状の電極本体635と、電極本体635を取り囲む電極カバー636とから主に構成されている。図3は、図2に示す電極本体635の斜視概略図である。図4は、図2及び図3に示す電極本体635の取付構造について示す断面概略図であり、図3のX−Xの方向における放電用電極631の断面図である。
【0028】
電極本体635は、図3に示すように、方形の両側が半円状に膨らんだような形状となっている。本実施形態では、二枚の基板9に同時に成膜行うようになっている。二枚の基板9は、成膜時には、電極本体635の両側の半円状の部分とほぼ同軸上の位置に配置される。
図2に示すように、電極本体635の背面(基板9を臨む面とは反対側の面)と、電極カバー636とは接触しておらず、隙間がある。但し、図4に示すように、電極カバー636には部分的に突出した部分があり、この部分は電極本体635に接触している。また、図2及び図4に示すように、電極本体635の端面と電極カバー636とは接触しておらず、隙間がある。
【0029】
そして、図4に示すように、電極本体635の前面(基板9を臨む面)の周縁に接触するようにして取付リング637が設けられている。取付リング637は、不図示の取付ネジによって電極カバー636の端部に固定されており、電極本体635を電極カバー636に押さえ付けている。
【0030】
また、図3に示すように、電極本体635は、上下左右の縁に凹部が形成されている。この凹部と取付リング637によって、放電用電極631の対向面の周縁にスリット状の孔638が形成されるようになっている。このスリット状の孔638は、放電用電極631内のプロセスガスを吹き出させて放電用電極631と基板9とが向かい合う空間(以下、対向空間)にを導入するためのものであり、ガス吹き出し孔である。
【0031】
図2に示すように、ガス導入系62の配管は、電極カバー636に接続されている。プロセスガスは、電極カバー636と電極本体635との隙間にいったん溜まり、その後、電極本体635の周縁をまわってガス吹き出し孔638から対向空間に拡散する。
【0032】
また、本実施形態の装置の別な特徴点は、電極本体635や電極カバー636等の放電用電極631を構成する部材の表面がカーボン製となっていることである。具体的には、図2中に拡大して示すように、例えば電極本体635は、ステンレス又はアルミニウム等の金属部と、金属部635aの表面に設けたカーボン層635bとより成っている。カーボン層635bは、コーティングや蒸着等の方法により予め形成される。
【0033】
カーボン層635bは、より詳しくは、カーボングラファイトや、パイロリティックカーボン(熱分解炭素)より成っている。例えば、アドバンスドセラミックコーポレーション社製のベーサルプレーンパイロリティックグラファイト等が使用できる。
このような放電用電極631は、絶縁ブロック634を介して保護膜作成チャンバー6に気密に接続されている。そして、放電用電源633は、例えば13.56MHz500W程度の高周波電力の高周波電極631に供給するようになっている。
【0034】
上記構成の保護膜作成チャンバー6において、排気系61によって保護膜作成チャンバー6内が所定の圧力まで排気され、ガス導入系62によってプロセスガスが所定の流量で導入される。基板9は、キャリア90に保持された図2に示す位置に停止している。この状態で、放電用電源633が動作し、放電用電極631に高周波電圧が与えられる。この結果、対向空間に高周波電界が設定され、プロセスガスに高周波放電が生じてプロセスガスのプラズマPが形成される。プラズマP中では、CHガスの分解反応が生じて、基板9の表面にカーボンが堆積し、カーボン保護膜が作成されるようになっている。
【0035】
尚、成膜中に基板9にバイアス電圧を与えてプラズマ中のイオンを引き出し基板9の表面を衝撃するようにすると、膜質の改善や成膜速度の向上といった効果が得られることが多い。特に、プラズマCVDによるカーボン保護膜の作成では、基板9へのバイアス電圧の印加によりイオン衝撃を行うと、C−H結合及びCの二重結合が減少してC単結合が多くなり、ダイヤモンド構造の割合が高くなる。即ち、DLC膜の構造が容易に得られる。
バイアス電圧の印加は、高周波とプラズマとの相互作用による自己バイアス電圧によることが多い。具体的には、キャリア90に接触したり離れたりするスイッチを介して高周波電源をキャリア90に接続し、キャリア90を介して基板9に高周波電圧を印加するようにする。
【0036】
また、本実施形態の装置は、保護膜作成チャンバー6内でのパーティクル発生を防止するため、プラズマクリーニングを行う構成となっている。プラズマクリーニングは、前述したように、保護膜作成チャンバー6内に酸素プラズマを形成してアッシングする構成である。
具体的には、保護膜作成チャンバー6のガス導入系62は、図2に示すように、プロセスガスに代えて酸素ガスを導入できるようになっている。導入された酸素ガスは、プロセスガスの場合と同様にプラズマ形成手段63によってエネルギーが与えられ、酸素プラズマが形成される。プラズマ中では酸素イオンや励起酸素(酸素活性種)等が盛んに生成される。
【0037】
酸素プラズマによるカーボン膜のアッシングのメカニズムについて、多少繰り返しになるが、より詳しく説明する。保護膜作成チャンバー6内の露出面に堆積するカーボン膜は、水素を含んだ膜であることが多い。即ち、C−C結合の他に、C−H結合を含んだ膜である。このようなカーボン膜に化学的な活性な酸素イオンや励起酸素が触れると、C−C結合やC−H結合は以下のような機構により分解される。尚、*は活性種であることを意味する。
→2O(又は2O
(C−C)+4O(又は4O)→2CO(又は2CO+O
(C−H)+2O(又は2O)→CO +H
分解によって生じたCO,CO,O,HOはいずれもガスであり、排気系61によって保護膜作成チャンバー6から排出される。従って、十分な量の酸素プラズマを形成してカーボン膜を酸素プラズマに晒すとともに、排気系61の排気速度を十分確保することによって、カーボン膜を保護膜作成チャンバー6から取り除くことができる。
【0038】
尚、プラズマクリーニングは、保護膜作成チャンバー6内に基板9を配置しない状態で行う必要がある。基板9が配置されていると、酸素プラズマにより基板9の表面が酸化されるなどのダメージが生ずるからである。尚、特開平11−229150号公報に開示されているように、プラズマクリーニング中に基板9を退避させるための専用のチャンバーを設けると好適である。
【0039】
また、図2に示すように、本実施形態の装置におけるガス導入系62は、アルゴンガスを導入できるようになっている。これは、プラズマクリーニング後における酸素脱離処理のためのである。
具体的に説明すると、上記プラズマクリーニングが終了した際、放電用電極631の表面等の保護膜作成チャンバー6内の露出面には、酸素分子が付着していることがある。この状態でカーボン保護膜作成を再開すると、カーボン保護膜中に酸素分子が混入し、硬度低下等の膜質の悪化が生ずる恐れがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、プラズマクリーニング終了後、カーボン保護膜作成を再開する前に、保護膜作成チャンバー6内にアルゴンガスを導入し、同様に高周波放電によりプラズマを形成する。プラズマ中ではアルゴンイオンが生成され、このイオンが露出面を衝撃する。この結果、露出面に付着している酸素分子は弾き飛ばされ、排気系61によって保護膜作成チャンバー6から排出される。従って、カーボン保護膜中に酸素が混入することが抑制される。
【0041】
次に、図1に示す他の各処理チャンバー3,4,5の構成について説明する。
プリヒートチャンバー3は、内部に配置された輻射加熱ランプにより基板9を所定温度まで加熱する構成とされる。プリヒートは、脱ガス即ち基板9の吸蔵ガスを放出させる目的で行われる。脱ガスを行わないで成膜を行うと、成膜時の熱による吸蔵ガスの放出によって膜中に気泡が形成されたり、発泡によって膜の表面が粗くなったりする問題がある。このため、プリヒートチャンバー4で、基板9を100〜300℃程度まで予め加熱するようになっている。
【0042】
次に、下地膜作成チャンバー4及び磁性膜作成チャンバー5の構成について説明する。下地膜作成チャンバー4及び磁性膜作成チャンバー5は、ともにスパッタリングによって下地膜や磁性膜を作成するようになっている。両チャンバーの構成は、ターゲットの材質が異なるのみであり、他の構成は基本的に同じである。以下の説明では、一例として、磁性膜作成チャンバーの構成を説明する。図5は、磁性膜作成チャンバー5の構成を説明する平面断面概略図である。
【0043】
磁性膜作成チャンバー5は、内部を排気する排気系55と、内部にプロセスガスを導入するガス導入系56と、内部の空間に被スパッタ面を露出させて設けたターゲット57と、ターゲット57にスパッタ放電用の電圧を印加するスパッタ電源58と、ターゲット57の背後に設けられた磁石機構59とから主に構成されている。
排気系55は、クライオポンプ等の真空ポンプを備えて磁性膜作成チャンバー5内を10−6Pa程度まで排気可能に構成される。ガス導入系56は、プロセスガスとしてアルゴン等のガスを所定の流量で導入できるよう構成される。
【0044】
スパッタ電源58は、ターゲット57に−300V〜−500V程度の負の高電圧を印加できるよう構成される。磁石機構59は、マグネトロン放電を達成するためのものであり、中心磁石591と、この中心磁石591を取り囲むリング状の周辺磁石592と、中心磁石591と周辺磁石592とをつなぐ板状のヨーク593とから構成される。尚、ターゲット57や磁石機構59は、絶縁ブロック571を介して磁性膜作成チャンバー5に固定されている。磁性膜作成チャンバー5は電気的には接地されている。
【0045】
ガス導入系56によってプロセスガスを導入しながら排気系55によって磁性膜作成チャンバー5内を所定の圧力に保ち、この状態でスパッタ電源58を動作させる。この結果、スパッタ放電が生じてターゲット57がスパッタされ、スパッタされたターゲット57の材料が基板9に達して基板9の表面に所定の磁性膜が作成される。例えば、ターゲット57はCoCrTaで形成され、基板9の表面にCoCrTa膜が作成される。尚、図5から分かるように、ターゲット57、磁石機構59及びスパッタ電源58の組は、磁性膜作成チャンバー5内の基板配置位置を挟んで両側に設けられており、基板9の両面に同時に磁性膜が作成されるようになっている。
【0046】
また、図5に示すように、各ターゲット57の大きさは、一枚の基板9よりも少し大きい程度となっている。キャリア90は、磁性膜作成チャンバー5内で移動し、二枚の基板9が順次ターゲット57の正面に位置するようになっている。
即ち、最初は搬送方向前方の基板9がターゲット57の正面に位置する状態となってこの基板9に成膜が行われる。そして、その後、所定距離前進して搬送方向後方の基板9がターゲット57の正面に位置する状態となり、この基板9への成膜が行われる。
【0047】
尚、図1に示すように、さらに別の処理チャンバー7が余っている。この処理チャンバー7は、カーボン保護膜作成後に基板9を冷却する冷却チャンバーや、表面に潤滑膜を作成する潤滑膜作成チャンバーとして構成される。
【0048】
次に、図1を使用して本実施形態の装置の全体の動作について説明する。
まず、ロードロックチャンバー1内で未処理の二枚の基板9が最初のキャリア90に搭載される。このキャリア90はプリヒートチャンバー3に移動して、基板9がプリヒートされる。この際、次のキャリア90への二枚の未処理の基板9の搭載動作が行われる。1タクトタイムが経過すると、キャリア90は下地膜作成チャンバー4に移動し、基板9に下地膜が作成される。この際、次のキャリア90はプリヒートチャンバー3に移動し、基板9がプリヒートされ、ロードロックチャンバー1内でさらに次のキャリア90への基板9の搭載動作が行われる。
【0049】
このようにして、1タクトタイム毎にキャリア90が移動し、プリヒート、下地膜の作成、磁性膜の作成、保護膜の作成の順で処理が行われる。そして、保護膜の作成の後、キャリア90はアンロードロックチャンバー2に達し、このキャリア90から処理済みの二枚の基板9の回収動作が行われる。尚、本実施形態では、下地膜作成チャンバー4は二つ設けられている。従って、最初の下地膜作成チャンバー4で半分の厚さの成膜を行い、次に下地膜作成チャンバー4で残りの半分の厚さの成膜を行う。この点は、磁性膜作成チャンバー5や保護膜作成チャンバー6でも同じである。
【0050】
所定の枚数の基板9について上記処理を行った後、保護膜作成チャンバー6内に基板9が無い状態とする。具体的には、専用の退避チャンバーに退避させたり、冷却チャンバー等の他の処理チャンバーに退避させたりして、保護膜作成チャンバー6内に基板9が無い状態とする。この状態で、保護膜作成チャンバー6内を再度高真空排気する。そして、バルブを切り替え、保護膜作成チャンバー6内に酸素ガスを導入する。次に、放電用電源633を動作させて酸素プラズマを形成し、前述したようにプラズマクリーニングを行う。
【0051】
上記カーボン保護膜の作成の際、ガス吹き出し孔638の縁にもカーボン膜が堆積しているが、プラズマクリーニングの際にプラズマが充分にガス吹き出し孔638に拡散するため、ガス吹き出し孔638の縁のカーボン膜は充分にアッシングされて除去される。ガス吹き出し孔638は、プラズマが充分に進入できる大きさを有する。具体的には、スリット状のガス吹き出し孔638の幅(図2にWで示す)は、最も狭いところでも1mm以上である。
【0052】
また、放電用電極631の表面がカーボンより成るので、プラズマクリーニングの際にカーボン膜がすべて除去されてしまった場合でも、成膜中又はプラズマクリーニング中にカーボン以外の不純物が保護膜作成チャンバー内に放出されることがない。また、ダミーのプラズマCVD処理を行う必要が無いので、生産性が低下することもない。
【0053】
尚、プラズマクリーニングやプラズマCVDによる成膜の際に放電用電極631の表面はスパッタリングされることがあり、放電用電極631の表面のカーボン層635bが削られることがある。従って、カーボン層635bは、相当回数のプラズマクリーニング及びプラズマCVDを繰り返しても完全に削られることが無い程度の厚さとすることが必要である。具体的には、カーボン層635bの厚さは、2mm程度以上とすることが好ましい。
また、図2から解るように、本実施形態における放電用電極631は、対向面にガス吹き出し孔を有しない。従って、基板9に平行な面内でガス圧分布が不均一になって成膜が不均一になる恐れがない。
【0054】
【実施例】
次に、上記実施形態に属する実施例について説明する。
まず、プラズマCVDによるカーボン保護膜作成は、一例として以下の条件により行うことができる。
プロセスガス:CH(100cm/分)+H(100cm/分)
保護膜作成チャンバー6内の圧力:4Pa
放電用電源:13.56MHz,700W
基板9へのバイアス電圧:−150V
【0055】
上記条件により成膜を行うと、0.5nm/分程度でカーボン保護膜の作成ができる。そして、作成されたカーボン保護膜は、硬度30GPa程度のDLC膜となる。尚、プロセスガスとして、CHのみを使用する場合もあり、この場合も同様の流量100cm/分で良い。
上記条件によりプラズマCVDを行う場合、10回程度の成膜処理を繰り返した後、プラズマクリーニングが必要になる。尚、パーティクル仕様(許容されるパーティクルの数)が厳しい場合には、1回の成膜処理のたびに行った方が良い場合もある。
【0056】
プラズマクリーニングの具体的な条件としては、以下の通りである。
酸素ガスの流量:400cm/分
保護膜作成チャンバー6内の圧力:10Pa
放電用電力:13.56MHz,700W
また、前述した酸素分子除去のためのアルゴンの放電条件の一例について示すと、以下の通りである。
アルゴンガスの流量:100cm/分
保護膜作成チャンバー6内の圧力:0.2Pa
放電用電力:13.56MHz,200W
【0057】
次に、表面がカーボン層である放電用電極を使用した場合と、全体がステンレス製の放電用電極とを使用した場合の比較実験の結果について説明する。図6は、この実験の結果について示した図である。
図6に結果を示す実験では、表面がカーボン層である放電用電極と、全体がステンレス製の放電用電極とをそれぞれ使用し、プラズマCVD及びプラズマクリーニングを行った。そして、プラズマクリーニング直後のプラズマCVDにより作成されたカーボン保護膜をラマン分光分析した結果を示したのが図6である。
図6の横軸はラマン・シフト、縦軸はラマン光(散乱光)の強度である。尚、プラズマCVD及びプラズマクリーニングの条件は、上記実施例のものと同様である。
【0058】
DLC膜のラマン・スペクトルは、一般的に、900〜1500cm−1付近のDLCの構造を反映したピークと、3000cm−1付近にピークを持ち非常に広いバンドにわたるバックグランドノイズとから成る分布であるとされている。バックグラウンドノイズは、カーボン保護膜が発する蛍光によるものである。
蛍光は、カーボン保護膜がポリマー化している部分で生じ、ポリマー化しているほど、バックグラウンドノイズ(蛍光ノイズ)が大きくなる。
【0059】
図6に示すように、実施形態の放電用電極(表面がカーボン層)の場合には、バックグラウンドノイズが小さいのに対し、全体がステンレスの放電用電極の場合にはバックグラウンドノイズが大きい。そして、このノイズは、高波数になるほど高くなっており、3000cm−1付近にピークを持つ蛍光ノイズであると判断される。つまり、全体がステンレスである放電用電極の場合、ポリマー化している部分が実施形態の場合に比べて多いことを図6は示している。
【0060】
そして、膜の硬度について測定してみると、実施形態の放電用電極を使用した場合には30GPaであったのに対し、全体がステンレスの放電用電極を使用した場合、25GPaにまで硬度が低下していた。このように、本実施形態及び本実施例の構成によれば、硬度の高いカーボン保護膜が作成できる。
【0061】
上記実施形態では、プラズマクリーニングのための酸素ガスを導入するものとして、プロセスガスを導入するガス導入系62が兼用されたが、各々別のものを使用しても良い。同様に、プラズマクリーニングのためのプラズマを形成する手段としてプラズマCVD用のプラズマ形成手段を兼用したが、これも別のものを使用するようにしても良い。尚、プラズマクリーニングの際の放電条件とプラズマCVDの際の放電条件とは異なる場合があるから、放電用電源633は出力が可変であることが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、ガス吹き出し孔638はスリット状であったが、円形又は方形等のものを複数設ける構成でも良い。但し、この場合でも、その大きさはプラズマクリーニングの際にプラズマが進入できる大きさとする。具体的には、円形の場合には直径1mm以上、方形の場合には辺の長さが1mm以上である。
【0063】
また、上記実施形態では、ガス吹き出し孔638は、放電用電極631の対向面の周縁に位置していたが、周縁の近傍でも良い。「周縁の近傍」とは、基板9に平行な面内でガス圧分布が均一になるよう対向空間にガスを導入できる範囲内で「近傍」という意味である。
【0064】
また、上記実施形態では、放電用電極631が金属部を有する点は、ねじ止め等の固定が容易にできるというメリットある。保護膜作成チャンバー6のガス導入系62は、プロセスガスとして、CHの他、CCH、C、C等のガスを導入するよう構成される場合もある。
【0065】
上記実施形態では、磁気記録ディスクとして専らハードディスクを採り上げたが、フレキシブルディスクやZIPディスクのような他の磁気記録ディスクでもよい。また、光磁気ディスク(MOディスク)のような磁気の作用とともに磁気以外の作用を利用する記録ディスクについても、本願発明を利用することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1記載の発明によれば、放電用電極の表面がカーボンより成るので、プラズマクリーニングの際にカーボン膜がすべて除去されてしまった場合でも、成膜中又はプラズマクリーニング中にカーボン以外の不純物が保護膜作成チャンバー内に放出されることがない。また、ダミーのプラズマCVD処理を行う必要が無いので、生産性が低下することもない。
また、請求項3又は4記載の発明によれば、プラズマクリーニングの際にプラズマが充分にガス吹き出し孔に拡散するため、ガス吹き出し孔の縁のカーボン膜は充分にアッシングされて除去される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施形態に係る磁気記録ディスク用成膜装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す保護膜作成チャンバー6の構成を説明する側面断面概略図である。
【図3】図2に示す電極本体635の斜視概略図である。
【図4】図2及び図3に示す電極本体635の取付構造について示す断面概略図であり、図3のX−Xの方向における放電用電極631の断面図である。
【図5】磁性膜作成チャンバー5の構成を説明する平面断面概略図である。
【図6】表面がカーボン層635bである放電用電極631を使用した場合と、全体がステンレス製の放電用電極とを使用した場合の比較実験の結果について示す図である。
【図7】従来の磁気記録ディスク用成膜装置の要部の構成を示す正面概略図であり、プラズマCVDによってカーボン保護膜を作成する構成が示されている。
【符号の説明】
6 保護膜作成チャンバー
61 排気系
62 ガス導入系
63 プラズマ形成手段
631 放電用電極
633 放電用電源
635 電極本体
635a 金属部
635b カーボン層
636 電極カバー
637 取付リング
638 ガス吹き出し孔

Claims (5)

  1. 基板に作成された記録用の磁性膜の上にカーボンよりなる保護膜を作成する磁気記録ディスク用成膜装置であって、
    内部に基板が配置されて前記保護膜が作成される保護膜作成チャンバーと、保護膜作成チャンバー内の露出面に堆積したカーボンの膜をプラズマによって除去するプラズマクリーニングを行うクリーニング手段とを備えており、保護膜作成チャンバー内に酸素ガスを導入することが可能なガス導入系が設けられており、クリーニング手段は、導入された酸素ガスに放電を生じさせて酸素プラズマを形成する放電用電源と、保護膜作成チャンバー内に表面が露出しているとともに放電用電源によって酸素プラズマ形成用の電圧が印加される放電用電極とから構成されており、
    さらに、放電用電極は、金属部と、金属部の表面に設けられたカーボン層とより成り、カーボン層は、前記プラズマクリーニングが繰り返された場合にも完全に削られることが無い厚さを有しており、カーボン層の厚さは2mm以上であることを特徴とする磁気記録ディスク用成膜装置。
  2. 前記ガス導入系は、前記保護膜作成チャンバー内にプロセスガスを導入するものであって、前記放電用電極に放電用の電圧を印加してプロセスガスに放電を生じさせて基板に前記カーボンより成る保護膜を作成する放電用電源が設けられており、
    前記放電用電極は中空の構造であって、前記ガス導入系は、前記放電用電極内の空間を経由して前記保護膜作成チャンバー内に前記プロセスガスを導入するものであり、前記放電用電極は、基板と対向する面である対向面を有するとともに、対向面の周縁又はその近傍にガス吹き出し孔が設けられていることを特徴とする請求項記載の磁気記録ディスク用成膜装置。
  3. 前記ガス吹き出し孔は、前記クリーニング手段が形成する酸素プラズマが進入可能な程度以上の大きさを有するものであることを特徴とする請求項記載の磁気ディスク用成膜装置。
  4. 前記ガス吹き出し孔は、幅が1mm以上のスリット、直径1mm以上の複数の円形の孔、又は、一辺が1mm以上の複数の方形の孔であることを特徴とする請求項記載の磁気記録ディスク用成膜装置。
  5. 保護膜作成チャンバーを備えた成膜装置を使用して基板にカーボンよりなる保護膜を作成する工程を有する磁気記録ディスク製作方法であって、
    成膜装置は、保護膜作成チャンバー内の露出面に堆積したカーボンの膜をプラズマによって除去するプラズマクリーニングを行うクリーニング手段と、保護膜作成チャンバー内に酸素ガスを導入することが可能なガス導入系とを備えており、
    クリーニング手段は、導入された酸素ガスに放電を生じさせて酸素プラズマを形成する放電用電源と、保護膜作成チャンバー内に表面が露出しているとともに放電用電源によって酸素プラズマ形成用の電圧が印加される放電用電極とから構成されており、
    さらに、放電用電極は、金属部と、金属部の表面に設けられたカーボン層とより成り、
    放電用電極のカーボン層を完全に削らない範囲で前記プラズマクリーニングを行うことを特徴とする磁気記録ディスク製作方法。
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