JP4567116B2 - 合成樹脂製容器の蝶番構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば化粧料コンパクト容器のように、合成樹脂製の本体と蓋体とから成る合成樹脂製容器の蝶番構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂製の本体と蓋体とを蝶着してなる合成樹脂製容器は、本体と蓋体とにぞれぞれ蝶番部が一体に形成されており、各蝶番部の軸孔に蝶番ピンを挿通することにより本体と蓋とを開閉自在に連結したものである。
【0003】
旧来、合成樹脂製の容器の蝶番ピンとしては、金属棒や硬質合成樹脂棒が使用されていたが、金属棒によるものは、回転運動によって蝶番部の軸孔が少しでも摩耗すると早急に摩擦抵抗力を喪失して蓋体が任意の開閉角度の位置で固定しなくり、使用勝手が悪くなる欠点を有している。更に蝶番ピン自体が弾性不足の為に蝶番部の応力が集中し易く衝撃によって蝶番部が破壊されやすい。また、硬質合成樹脂棒によるものは、剪断強さが不足しており、蝶番ピン自体が衝撃で折れ易い欠点を有していて、これらは現在では殆ど使用されていない。
【0004】
特に化粧用コンパクト容器のように化粧鏡を使用するものは、蓋体が任意の開閉角度で固定できる機能が必要不可欠とされており、この機能と強度を兼ね備えた蝶番ピンとして、帯状の薄い鋼板を螺旋巻きにして棒状に形成し周囲に螺旋状の合わせ目を有するスパイラルピンと称されているものや、薄い鋼板の長手方向両側縁を波形に形成し、これをロール状に巻き合わせて長手方向に生ずる合わせ目を波形に形成したウエーブピンと称されている蝶番ピンが使用されている。
【0005】
これらの蝶番ピンは、自身の強度がある上に、鋼板の合わせ目で圧縮されながら蝶番の軸孔に打ち込まれるので、固定された蝶番ピンに僅かに復元力が生じ、これにより蝶番部が摩擦抵抗力を喪失することなく開閉の固定機能を維持するものであり、合成樹脂製容器の蝶番部に多く利用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、環境問題や省資源化問題に発し、廃棄製品の再資源化の観点から廃棄物を材質別に分別して廃棄収集する気運が高まっており、日常的に消費される容器も廃棄する際には、燃えるゴミと燃えないゴミとの分別に対応していること、更に進んで、容器の構成部材が材質別に簡単に分離できること、リサイクルに適合した同系の材質からなることなどが望まれている。
【0007】
しかしながら、従来の金属製の蝶番ピン使用した蝶番で開閉する小型の合成樹脂製容器にあっては、ペンチ等の工具を使用して蝶番部を破壊しなければ蝶番ピンを分離することができず、家庭において分離作業が実行されることは殆ど期待できなかった。
【0008】
また、合成樹脂製容器には、薄肉一体ヒンジや蝶番ピンを使用しない合成樹脂のみによる蝶番構造のものもあり、これらは旧来の合成樹脂製の蝶番ピンによるものも含めて分別廃棄収集の問題には対応している。しかしながら、これらの蝶番構造は、金属製のスパイラルピンやウエーブピンを使用した蝶番構造のものに比較して機能や外観、強度で劣り、特に蝶番開閉の固定機能が求められる化粧用コンパクト容器には不適格であるとされ、現在ではほとんど採用されていない。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、蓋体を任意の開閉位置に固定できる固定機能を保持すると共に廃棄物の分別廃棄収集問題にも対応できる十分な強度を有する蝶番構造とすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、容器本体と蓋体とをそれぞれの一端部で蝶着して成る合成樹脂製容器における蝶番部の軸孔に、単位繊維度1.5〜30デニールの熱固定性のある複数の糸を熱固定型を用いて圧縮しつつ集束固定して熱加工により外径を棒状に保持させると共に周囲を滑面に研磨した毛細間隙を有する集束繊維プラスチック棒から形成された蝶番ピンを打ち込んで蝶着する構成とした。これにより、適度な剛性強度と弾性を兼ね備えた強化プラスチック蝶番ピンにより蓋体が任意な位置で止まる蝶番部の開閉固定力が維持されると共に、廃棄に際しては容器から蝶番ピンを分離することなく分別廃棄収集に対応することができる。
【0011】
また、蝶番ピンの集束繊維にポリアミド系繊維を用いることにより、蝶番ピンは耐摩耗性と剪断強さに優れたものとなり、十分な強度の蝶番構造とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成樹脂製容器の蝶番構造の好適な実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態を合成樹脂製の化粧用コンパクト容器を例として示すもので、容器Gは、AS、PS、ABS、PP、PE等の汎用合成樹脂材料を用いて射出成形方法で形成されており、白粉等の固形化粧料2を収納した扁平な容器本体1と、容器本体1の後端部に蝶番ピン20、20で回動自在に蝶着されて容器本体1の上面を被覆する板状の蓋体10とで構成されている。
【0014】
容器本体1の前壁3中央には凹所4が設けられ、凹所4の奥壁には係止突起5が突設されている。また、後壁6の両側には蝶番ピン20が挿通する軸孔7が貫設された本体側蝶番部8、8が設けられている。
【0015】
一方、蓋体10の裏面中央部には合成樹脂製の化粧鏡11が接着されており、前端部中央には前記凹所4の係止突起5と係合する係止突起12を突設したフック13が垂設されている。また、後端部には前記本体側蝶番8、8と連結する蓋体側蝶番部15が垂設されており、蓋体側蝶番部15の両端には前記本体側蝶番部8、8の軸孔7に連通する軸孔14が穿設されている。尚、ガラス製の化粧鏡11を使用する場合は、剥離容易に接着することが望ましい。
【0016】
本体側蝶番部8の軸孔7と蓋体側蝶番部の軸孔14には蝶番ピン20が打ち込まれて容器本体1と蓋体10とは蝶番部Hで蝶着される。本実施の形態の蝶番ピン20には、図2に一例として示すように、毛細間隙21を有しこの毛細間隙21に連通し軸方向に貫通する通路22を形成した集束繊維プラスチック棒23を所定の長さに切断したものが使用されている。本実施の形態の蝶番構造における蝶番ピン20にあっては、その集束繊維はポリアミド系繊維を使用している。
【0017】
集束繊維プラスチック棒23は、ポリアミド系繊維など熱固定性のある繊維を単位繊維度1.5〜30デニールの捲縮加工糸、フィラメント糸、紡績糸などの連続性の糸とし、これら複数の糸を熱固定型を用いて圧縮しつつ集束固定して熱加工、樹脂加工等により外径を棒状に保持させると共に周囲を滑面に研磨したものであり、繊維間には微細な毛細間隙21が形成されている。
【0018】
本実施の形態で蝶番ピン20として使用するポリアミド系繊維による集束繊維プラスチック棒23は、筆記具のインキ誘導芯やペン先として使用されている周知ものであり、周知の設備と成形方法によって製造されたものを使用している。
この為、蝶番ピン20には、毛細間隙21に連通し軸方向に貫通する通路22が形成されているが、この通路22はなくてもよい。
【0019】
ポリアミド繊維による集束繊維プラスチック棒23は、剛性、耐摩耗性、剪断強さに優れ、且つ毛細間隙により蝶番ピン20として好適な放射方向の適度な弾性を保持させることが可能である。本実施の形態の蝶番構造は、この点に着目して集束繊維プラスチック棒23を適宜の長さに切断することにより応力歪みに強い蝶番ピン20として使用したものである。尚、蝶番ピン20は、ポリアミド系繊維によるものに限るものではなく、ポリエステル系繊維による集束加工体も蝶番ピン20として有力であり、これらの複合繊維によるものも可能である。
【0020】
また、集束繊維プラスチック棒23は、その太さや毛細間隙21の気孔率を所定の範囲で自由に形成できるものである。従って、合成樹脂製容器Gの大きさやそれに伴う軸孔7の大きさに対応して機能する蝶番ピン20とすることが可能である。
【0021】
以上の集束繊維プラスチック棒23による蝶番ピン20は、剛性が高いので従来の金属ピンと同様に自動ピン打機を使って打ち込むことが可能であり、既製の設備で合成樹脂製容器Gの蝶着作業ができる。蝶番ピン20が打ち込まれた合成樹脂容器Gの蝶番Hは、使い易い所望の回転摩擦抵抗力が付与されると共に、蝶番ピン20の摩耗が少ないことから蓋体10を任意の開閉角度に固定する機能を長期間維持することが可能である。
【0022】
そして、合成樹脂容器Gを廃棄する際は、蝶番部をプラスチック材料のみで形成してあるので面倒な蝶番ピンの分離作業をすることなくプラスチック材として廃棄をすることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0024】
合成樹脂製容器における蝶番部の軸孔に毛細間隙を有する集束繊維プラスチック棒からなる蝶番ピンを打ち込んで蝶着する構成としたので、蓋体が任意な位置で止まる蝶番部の開閉固定力が維持されると共に、蝶番ピンには剛性と共に適度な弾性があるので蝶番部の耐衝撃破壊性にも優れており、高い機能性が求められる化粧料容器の蝶番として好適に利用することができる。
【0025】
また、蝶番ピンの材料となる集束繊維プラスチック棒は、従来筆記具に使用していた液体誘出用の繊維加工体の生産設備と製造方法で所望の太さや強度のものが製造できる。従って、蝶番ピンのための新たな設備投資を必要としないうえに、蝶着作業も従来の設備でできるので、新たな設備負担を負うことなく合成樹脂容器に採用することができる。
【0026】
また、蝶番部の高機能性を維持しながら容器全体を合成樹脂製とすることが可能であるので、分別廃棄に当たり、容器を分解する必要がなくなり、廃棄者の分別作業に要する負担を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合成樹脂製容器の蝶番構造を示す合成樹脂容器の分解斜視図。
【図2】図1の蝶番構造に蝶番ピンとして使用される集束繊維プラスチック棒の一例を模試的に示す拡大端面図。
【符号の説明】
1 容器本体,7 軸孔,10 蓋体,14 軸孔,20 蝶番ピン,21 毛細間隙,23 集束繊維プラスチック棒,G 合成樹脂製容器,H 蝶番部,
Claims (2)
- 容器本体と蓋体とをそれぞれの一端部で蝶着して成る合成樹脂製容器における蝶番部の軸孔に、単位繊維度1.5〜30デニールの熱固定性のある複数の糸を熱固定型を用いて圧縮しつつ集束固定して熱加工により外径を棒状に保持させると共に周囲を滑面に研磨した毛細間隙を有する集束繊維プラスチック棒から形成された蝶番ピンを打ち込んで蝶着したことを特徴とする合成樹脂製容器の蝶番構造。
- 蝶番ピンの集束繊維にポリアミド系繊維を用いたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製容器の蝶番構造。
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- 1999-06-17 JP JP17067299A patent/JP4567116B2/ja not_active Expired - Lifetime
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