JP4566586B2 - 光触媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、消臭や微生物の殺菌、空気中の低濃度窒素酸化物の除去などの様々な反応を誘起する光触媒粒子を化学結合してなる光触媒体の製造方法に関する。
光触媒粒子は、光励起により生じた電子の持つ強い還元力や正孔の持つ強い酸化力により、防汚、防曇、殺菌、消臭、空気浄化などの様々な性能を発現することから、日用品や建材、土木など、様々な分野での応用開発が進められている。また、最近では可視光でも応答する可視光応答型光触媒粒子も開発されてきており、紫外線量が少ない室内での応用展開も可能なことから、実用性に優れた応用が期待されている。そこで、光触媒粒子の持つ様々な有効な機能を、日用品や建材、土木などの様々な分野で応用するためには、光触媒粒子をあらゆる基体上に、その光触媒機能を損なうことなく、強固に、かつ、結合する基体への光触媒機能が及ぼさないように接着、結合する方法が求められている。特に、光触媒粒子を結合する基体が樹脂の場合では、光触媒粒子の持つ強い酸化力により樹脂が劣化して結合した光触媒粒子の脱離による光触媒機能の低下や、樹脂基体の本来の持つ機能が損なわれる問題があった。したがって、光触媒粒子を樹脂からなる繊維やフィルム、成型体などの表面に結合して利用する際に、樹脂の劣化が起こり難い光触媒粒子の結合法は、実用性の観点から極めて重要な技術となる。
従来、光触媒粒子の樹脂基体上への結合としては、光触媒粒子が持つ強い酸化力でも劣化し難いとされる、フッ素樹脂などの有機系バインダーを用いる方法(例えば、特許文献1参照。)、シリコーン樹脂などの有機系バインダーを用いる方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。また、基体樹脂と光触媒微粒子の接触を防ぐ方法も提案されており、例えば、光触媒微粒子表面を水ガラスやメチルシリケートなどの無機物で被覆してバインダー樹脂で繊維表面に固定する方法(例えば、特許文献3参照。)、スパッタリング法で樹脂表面にケイ素酸化物や酸化アルミニウムなどの無機皮膜を形成する方法(例えば、特許文献4,5参照。)などがある。
特開平10−216210号公報 特開平10−001879号公報 特開平11−269760号公報 特開平10−017614号公報 特開2002−248355号公報
前述のフッ素樹脂をバインダーに使用する場合、最も耐酸化性に優れた4フッ化エチレンでは樹脂基体表面に接着し難く、そのため、接着性を改善するために熱硬化性樹脂などを混合して用いられている。しかしながら、フッ素樹脂以外に炭化水素からなる樹脂が混合されるため、光触媒粒子が持つ強い酸化力で炭化水素からなる樹脂が分解されることから、着色や悪臭などが発生する問題があった。また、シリコーン樹脂の場合、使用するシリコーン樹脂の種類によっては樹脂基体との密着性や均一な光触媒粒子の固定層を形成することが困難であるなどの問題があった。
他方、光触媒粒子と樹脂基体との接触を防ぐために、光触媒微粒子表面を他の無機物で被覆する方法も提案されているが、光触媒活性が低下するなどの問題があり、さらには、スパッタリング法により樹脂基体表面にバリヤ性に優れた緻密なケイ素酸化物や酸化アルミニウムなどの無機膜を形成する方法も提案されているが、樹脂基体と無機膜の熱膨張係数の違いや樹脂の種類によっては、接着性に優れた無機膜を形成することは困難であり、また、スパッタリングにより発生する熱による樹脂基体の変形や、生産性が低いなど、様々な解決しなければならない問題が残されていた。
本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、繊維やフィルム、布などからなる少なくとも表面が樹脂からなる基材の光触媒による劣化が起こり難く、且つ、消臭や微生物の殺菌、空気中の低濃度窒素酸化物の除去など、様々な目的に適合した光触媒体を製造するための方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、反応性に優れた不飽和結合を有するシランカップリング剤を用いることにより、光触媒微粒子を、光触媒活性を極力損なわずに、基材の表面に強固に、且つ、基体樹脂の光触媒微粒子による劣化が起こり難く結合させる方法を見出し、これにより結合させた光触媒微粒子の活性を最大限に発揮できることが可能となる知見を得るに至り、新規な光触媒体の製造方法を創出した。
すなわち、発明は、少なくとも基体表面が樹脂からなる光触媒体の製造方法であって、光触媒微粒子の表面に不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜を形成し、前記基体表面と前記光触媒微粒子表面に形成した薄膜とを接触させ、該接触状態で、前記基体表面と前記薄膜に存在する不飽和結合とを、化学結合させてなる光触媒体の製造方法を提供するものである。
さらに、基体表面(樹脂面)は、少なくとも不飽和結合を有するシランカップリング剤からなるコーティング薄膜で形成されるようにしてもよい。
さらにまた、本発明は、上記いずれかの発明方法において、前記化学結合がグラフト重合であることを特徴とする光触媒体の製造方法を提供するものである。
さらにまた、本発明は、グラフト重合として放射線グラフト重合を用いることを特徴とする光触媒体の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、少なくとも基体表面が樹脂からなる光触媒体の製造方法であって、基体の表面に対して、光触媒微粒子が、シランカップリング剤を介した化学結合によって固定化され、さらに、樹脂表面と光触媒微粒子の間にはアルコキシ基の加水分解で形成したシラノール基が脱水縮合して形成された酸化ケイ素の緻密な薄膜や無機微粒子からなる緻密な薄膜が形成されていることから、この緻密な酸化ケイ素や無機微粒子の薄膜は光触媒粒子と樹脂基体との直接接触を阻止するため、樹脂基体表面は光触媒粒子の持つ強い酸化、還元作用を受けないので、充分な耐久性を保持した光触媒体を製造して提供することが可能となる。
したがって、本発明の製造方法によれば、光触媒微粒子が様々な樹脂基材の表面に強固に結合された耐久性に優れた光触媒体を提供することが可能となる。また、光触媒微粒子はバインダーで覆われることなく基材の表面に配置されるので、光触媒微粒子の活性が損なわれることが少なく、さらに、光触媒微粒子は島状、単粒子膜状や多層粒子膜状にも繊維やフィルム、布などからなる基材に固定化できるので、これらの基材の風合いを損なわないことから、様々な分野で応用できる光触媒体を提供することが可能となる。
なお、本発明方法において、基体は、例えば、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った様々な形態(形状、大きさ等)とすることが可能である。したがって、本発明の製造方法によれば、これら様々な形態の各種基体に光触媒微粒子が持つ機能を付加することが可能となり、外壁材、サッシ、ドア、ブラインドなどの建装材、壁紙、カーペット、樹脂タイルなどの内装材、衣類、インナーウェア、靴下、手袋、靴等の履物、該履物用の中敷、パジャマ、マット、シーツ、枕、枕カバー、毛布、タオルケット、蒲団および蒲団カバーなどの寝装材、帽子、ハンカチ、タオル、絨毯、カーテン、空気清浄機やエアコン、換気扇、電気掃除機、扇風機などのフィルターまたは防虫網などの製品へ応用が可能となる。
以下に本発明についてさらに詳述する。
本発明で用いられる光触媒微粒子とは、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射することで、光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウムなどの公知の金属化合物半導体を、単一または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの光触媒微粒子のうち、透明性、耐久性に優れ、無害である酸化チタンが好ましく用いられる。
酸化チタンの結晶構造はルチル型、アナダーセ型、ブルカイト型、その他、無定形であっても本発明では問わない。また、酸化チタンの一部の酸素原子がアニオンである窒素原子で置換されたTiO2-xや酸素原子が欠落して化学量論比から著しく外れたTiO2-x(Xは1.0以下)なども用いられる。
光触媒微粒子の内部やその表面に、光触媒機能を増す目的で、バナジウム、銅、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、銀、白金、金などの金属や金属化合物を含有させても良い。
また、光触媒微粒子とともに吸着剤を用いても良く、消臭性能や環境大気中の汚染物質除去性能は、光触媒微粒子と吸着剤を併用することで向上できる。吸着剤としては、活性炭などの炭素系吸着剤、ゼオライト系吸着剤、モレキュラシーブ、アパタイト、アルミナ、酸化ケイ素などの金属酸化物系吸着剤、キレート樹脂などが好適である。
また、光触媒微粒子とともに、銀、銅、亜鉛などの金属およびそれらの化合物から選ばれる1種以上の抗菌性を有する材料からなる微粒子、デービト鉱、センウラン鉱、ブランネル石、ニンギョウ石、リンカイウラン石、カルノー石、ツャムン石、メタチャムン石、フランセビル石、トール石、コフィン石、サマルスキー石、トリウム石、トロゴム石、サマルスキー石、トリウム石、トロゴム石、モナズ石、タンタル石、バデライト、イルメナイトなどの放射性希有元素を微量含有する天然放射性有元素鉱物や、これらの鉱物の一部を精製して得られる電融ジルコニアなどのマイナスイオンを発生する材料からなる微粒子、Al、TiO、ZrO、SiO、Fe、CoO、CuO、MgOなどの金属酸化物やこれらの混合物、例えば、コージライト、βスポジューメン、チタン酸アルミニウムなどの遠赤外線を放出する材料の微粒子、LaB、CeB、NdB、SnO、In、酸化ルテニウム、酸化レニウムなどの近赤外線を吸収する材料からなる微粒子など、様々な機能を有する材料からなる微粒子を複数混合して用いても良い。
なお、光触媒微粒子の径、及びその他上記各種材料の微粒子径については特に限定されないが、後述するグラフト重合を好適に行うには、これらの微粒子径につき平均の粒子径が500nm以下とすることが好ましく、さらに平均の粒子径が300nm以下であれば、基体へのより強固な結合が達成されるため、耐久性の点より一層好適である。
本発明では、光触媒微粒子を、不飽和結合を有するシランカップリング剤により、樹脂基体の表面、無機微粒子からなるコーティング薄膜の表面、シランカップリング剤からなるコーティング薄膜の表面の何れかに化学結合により固定化するものである。具体的なシランカップリング剤が有する不飽和結合としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。本発明は、反応性に優れたシランカップリング剤を用いることで、光触媒微粒子を、シランカップリング剤が有するシラノール基の脱水縮合反応による光触媒微粒子の化学結合と前記官能基の基体樹脂表面へのグラフト重合による化学結合または、無機微粒子で形成されたコーティング薄膜に存在する不飽和結合とを介して基体表面に結合せしめた微粒子固定化体の製造方法である。
本発明で用いられるシランカップリング剤の一例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
これらのシランカップリング剤は一種もしくは二種以上混合して用いられる。その使用形態としては、必要量のシランカップリング剤をメタノールやエタノール、アセトン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤に溶解し、必要に応じて加水分解に必要な水を加えて用いられる。また、分散性を改善するために塩酸、硝酸などの鉱酸などが加えられる。用いられる溶剤としては、エタノール、メタノール、プロパノールやブタノールなどの低級アルコール類、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセロソルブ類を単独または複数組み合わせて用いても良い。さらに、シランカップリング剤を水溶液の状態で使用しても良く、水への溶解性が悪い場合では、酢酸を添加してpHを弱酸性に調整してアルコキシシランの加水分解性を促進し、水溶性を上げて用いられる。
本発明に用いられる光触媒微粒子は、前述したシランカップリング剤の溶液に分散した状態で製造に用いられる。様々な機能を有する微粒子の分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散や、ボールミル、サンドミル、高速回転ミル、ジェットミルなどを用いた粉砕・分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
また、光触媒微粒子は分散したコロイド状分散液や、粉砕により微粒子化して得られた分散液の状態で微粒子固定体の製造に用いられる。光触媒微粒子分散液は、コロイド状分散液や粉砕して得られた分散液にシランカップリング剤を加え、その後、還流下で加熱させながら光触媒微粒子表面にシランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させてシランカップリング剤からなる薄膜を形成する。還流下で光触媒微粒子に反応結合させるシランカップリング剤の量は微粒子の平均粒子径にもよるが、反応結合させる微粒子の重量に対して0.01%重量から5.0重量%であれば光触媒微粒子の結合強度は実用上問題ない。また、結合に預からない余剰のシランカップリング剤があっても良い。
特に光触媒微粒子からなる薄膜が厚くなると、前記薄膜の応力や使用環境によっては凝集破壊により光触媒薄膜が劣化することもあるので、還流処理後必要に応じて不飽和結合を有するシランカップリング剤や、Si(OR14(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどや、R2nSi(OR34-n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシランなど、他にアルコキシオリゴマーなどが添加されて用いられる。
次に、光触媒微粒子の基体樹脂表面への酸化や還元などによる影響を阻害させるための無機微粒子からなる緻密なコーティング薄膜およびシランカップリング剤からなる緻密なコーティング薄膜について詳述する。
本発明に用いられる無機微粒子としては、光触媒微粒子に光が照射された際に発生するヒドロキシラジカルなどの活性種に影響されない材料から構成されていれば良い。具体的に用いられる材料としては酸化ケイ素、酸化アルミナ、酸化ジルコニア、酸化インジウム、酸化錫などの金属酸化物、窒化チタン、窒化クロム、窒化タンタルなどの窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化タングステンなどの炭化物など、無機化合物が挙げられる。
また、吸着性を有する材料、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素化合物、アパタイト、γ−アルミナなどの活性アルミナ、酸化ケイ素、ゼオライト系吸着剤、モレキュラシーブなども用いられる。さらに、前述したマイナスイオンを発生させる材料や遠赤外線を放出する材料、近赤外線を吸収する材料なども微粒子状態で用いられる。これら材料からなる微粒子には前述した不飽和結合を有したシランカップリング剤の薄膜が脱水縮合反応により形成されていても良い。さらに、前記無機微粒子からなるコーティング薄膜を形成する際には、過剰の不飽和結合を有するシランカップリング剤が含まれていても良い。
さらに、前記無機微粒子からなるコーティング薄膜を形成する際には、過剰の不飽和結合を有するシランカップリング剤が含まれていても良く、その他に、シラン化合物が含まれていても良い。用いられるシラン化合物としては、不飽和結合を有しないシランカップリング剤、例えば、ビニルトリクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミンップロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
また、その他のシラン化合物としては、Si(OR14(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどや、R2nSi(OR34-n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシランなど、さらには、アルコキシオリゴマーなどが挙げられる。
さらに、シランカップリング剤からなるコーティング薄膜は、不飽和結合を有するシランカップリング剤を主体に、他に、前述した無機化合物からなる微粒子や不飽和結合を有しないシランカップリング剤、さらには前述したアルコキシシラン化合物やアルコキシオリゴマーが必要に応じて含まれる。
シランカップリング剤からなるコーティング薄膜は、シランカップリング剤に含まれるアルコキシ基が加水分解し、加水分解により生成したシラノール基が脱水縮合反応により結合して緻密な酸化ケイ素の薄膜を形成することから、形成された緻密な酸化ケイ素薄膜は光触媒により発生するヒドロキシラジカルなどの活性種の基体樹脂への接触を阻害するために、基体樹脂が劣化し難くなることから、経時安定性に優れた光触媒体の製造が可能となる。
本発明の光触媒体の製造に用いられる基体を構成する材料としては、不飽和結合を有するシランカップリング剤による化学結合が可能なものであれば良く、このような材料としては、例えば、各種樹脂や、合成繊維、天然繊維などが挙げられる。また、本発明の光触媒体の製造に用いられる基体は、少なくともその表面が樹脂からなるものであれば良い。
ここで、基体の表面乃至全体を構成する樹脂としては、合成樹脂や天然樹脂が用いられ、その一例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、EVA樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、PTFEなどの熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、修飾でんぷん樹脂、ポリカプロラクト樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ケイ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、シリコーン樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマー、漆などの天然樹脂、などが挙げられる。
本発明方法では、これらの樹脂の形態は、板状、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った種々の形状及びサイズ等のものが適用でき、特に制限されるものではない。また、これらの樹脂は、基体の主要部がアルミニウムやマグネシウム、鉄などの金属材料や、ガラス、セラミックスなどの無機材料である場合には、これら各材料の表面に、フィルム状に積層されたり、吹き付け塗装や浸漬塗装、静電塗装などの塗装法や、スクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷法により薄膜として形成されたものであっても良い。さらに、これらの樹脂は、顔料や染料などにより着色されてあっても良く、シリカ、アルミナ、珪藻土、マイカなどの無機材料が充填されたものであっても良い。
また、基体は、合成樹脂からなる繊維(合成繊維、化学繊維)であっても良く、基体を構成する合成繊維の例としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリカーボネイト繊維、フッソ繊維、ポリ尿素繊維、エラストマー繊維、また、これら繊維を構成する材料と前記樹脂材料との複合繊維などが挙げられる。なお、本願発明方法においては、上述のように基体表面が樹脂であれば良いので、基体材料に合成樹脂以外の繊維を用いる場合には、樹脂を上述した各種塗装法で繊維表面に塗装することで、樹脂を薄膜として形成しておけば良い。したがって、天然繊維の例として、綿、麻、絹、天然繊維から得られた和紙なども、基体の材料として用いることが可能である。
さらに、本発明方法におけるグラフト重合としては、例えばパーオキサイド触媒を用いるグラフト重合、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合、放射線によるグラフト重合、などが挙げられ、このうち重合プロセスの簡便性、生産スピード等の観点より、放射線グラフト重合が特に適している。ここで、グラフト重合において用いられる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができるが、本発明において用いるのには、γ線、電子線、紫外線が特に適している。
本発明でのグラフト重合を用いた光触媒体の製造方法は、以下に記した方法により好適に製造される。発明における第一の好適な方法としては、不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜が形成された光触媒微粒子が分散した溶液を、結合しようとする基体表面に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去した後、γ線、電子線、紫外線などの放射線を、前記シランカップリング剤の薄膜が形成された光触媒微粒子の混合物が塗布された基体表面に照射することで、前記シランカップリング剤を基体表面にグラフト重合させると同時に光触媒微粒子を結合させることで行われる所謂同時照射グラフト重合により製造される。
また、発明における第二の好適な方法としては、光触媒微粒子を結合しようとする基体表面にγ線、電子線、紫外線などの放射線を照射した後、不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜が形成された光触媒微粒子が分散した溶液を塗布して、前記シランカップリング剤と基体とを反応させると同時に光触媒微粒子を結合させる所謂前照射グラフト重合により製造される。
発明の応用例(参考例)としては、予め基体表面に不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜が形成された無機微粒子からなるコーティング薄膜を形成した後、必要に応じて乾燥により溶剤を除去したり、或いは放射線を照射してグラフト重合により基体表面にシランカップリング剤を介して結合させ、次に、不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜を形成した光触媒微粒子が分散した溶液を前記無機微粒子からなるコーティング薄膜表面に形成して、放射線を照射することにより、前記無機微粒子に形成されたコーティング薄膜と基材および光触媒微粒子に形成したシランカップリング剤とを基体とを反応させることにより光触媒粒子を結合させる方法により製造される。
発明における第三の好適な方法としては、予め基体表面にシランカップリング剤を、γ線、電子線、紫外線などの放射線の同時照射法や前照射法によりグラフト重合してシランカップリング剤からなるコーティング被膜を形成した後、シランカップリング剤が結合された微粒子が分散した溶液を、前記基体表面のコーティング被膜上に塗布し、その後、放射線を照射することにより、グラフト重合により微粒子を基体表面に結合させる方法により製造される。この場合でも、シランカップリング剤を基体表面に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥などの方法により除去したコーティング被膜上に、シランカップリング剤が結合された微粒子が分散した溶液を塗布し、放射線を照射することにより、グラフト重合により微粒子を基体表面に結合させる方法で製造することも可能である。
発明の他の応用例(参考例)としては、予め基体表面(樹脂面)に不飽和結合を有するシランカップリング剤を、γ線、電子線、紫外線などの放射線の同時照射法や前照射法によりグラフト重合した後、光触媒微粒子が分散した溶液を、前記シランカップリング剤がグラフト重合された基体表面に塗布し、その後、加熱などのエネルギーを加えて、グラフト重合により基体表面に導入したシラノール基と光触媒微粒子表面に存在する水酸基との脱水縮合反応により、光触媒微粒子を基体表面に結合させる方法により製造される。
本実施形態では、上述したように、固定化する光触媒微粒子が分散した溶液を、固定化する基体表面に塗布して光触媒固定化体を製造するが、具体的な光触媒微粒子の分散液の塗布方法としては、一般に行われているスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャストコート法、バーコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、または部分的に塗布する方法として、スクリーン印刷法、パッド印刷法、オフセット印刷法、ドライオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などの様々な方法が用いられ、目的に合った塗布ができれば特に限定されない。
また、シランカップリング剤のグラフト重合を効率良く、かつ、均一に行わせるためには、予め、樹脂基体表面がコロナ放電処理やプラズマ放電処理、火炎処理、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理などにより親水化処理されてあっても良い。
本発明によれば、前述したように、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状、ハニカム状など、使用目的に合った様々な形態(形状、大きさ等)に光触媒微粒子が固定化できるので、外壁材、サッシ、ドア、ブラインドなどの建装材、壁紙、カーペット、樹脂タイルなどの内装材、衣類、インナーウェア、靴下、手袋、靴等の履物、該履物用の中敷、パジャマ、マット、シーツ、枕、枕カバー、毛布、タオルケット、蒲団および蒲団カバーなどの寝装材、帽子、ハンカチ、タオル、絨毯、カーテン、空気清浄機やエアコン、換気扇、電気掃除機、扇風機などのフィルターまたは防虫網などに様々な機能を付加できることが可能となる。従って、本発明は、様々な分野に優れた各種製品を提供することができる有用な方法である。
また、本発明によれば、光触媒微粒子を化学結合により基体上に強固に固定できることから、紡糸後に製品形状とした後で、または、製品化の過程で行うことが可能であり、このため、光触媒微粒子の存在が紡糸性に影響しない、というメリットがある。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<光触媒体の作製>
本発明方法による下記の各実施例及び参考例の光触媒体の製造にあたっては、岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型電子線照射装置、CB250/15/180L、を用い、電子線グラフト重合により実施した。これに対して、各比較例の光触媒体の製造にあたっては、電子線は用いず、塗布後加熱、乾燥の方法とした。
実施例1:
市販の光触媒微粒子(エコデバイス株式会社製、BA−PW25)をメタノールに5.0重量%分散してpHを1.5に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。得られた光触媒微粒子粉砕分散溶液に不飽和結合を有する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを光触媒微粒子に対して1.0重量%加えた後、前記粉砕分散溶液を、冷却管を備えたフラスコに移してフラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することにより光触媒微粒子表面に前記シランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させて薄膜を形成した。得られた光触媒微粒子分散溶液中の光触媒微粒子の平均粒子径は14nmであった。
また、125μmのポリエステルフィルム(ミラー(東レ(株)登録商標))の表面に、前記光触媒微粒子分散溶液をバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、光触媒微粒子分散液を塗布したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、光触媒微粒子をシランカップリング剤のグラフト重合によりポリエステルフィルム表面に結合させた光触媒体を得た。
実施例2:
実施例1で基体に用いたポリエステルフィルムに、電子線を200kVの加速電圧で10Mrad照射した後、実施例1で調整した光触媒微粒子分散溶液に電子線を照射したポリエステルフィルムを浸漬して電子線照射によりフィルム表面および内部に発生したラジカルによりシランカップリング剤をポリエステルフィルム表面にグラフト重合させることで光触媒微粒子を結合させ、その後、余分の分散液を洗浄により除去することで光触媒体を得た。
実施例3:
不飽和結合を有する3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの5.0重量%のイソプロピルアルコール溶液を実施例1で用いたポリエステルフィルム表面にバーコーターにより塗布した。120℃、5分間乾燥した後、電子線を200kVの加速電圧で3Mrad照射することでシランカップリング剤をグラフト重合によりポリエステルフィルム表面に結合させてなるコーティング薄膜を形成した。次に、コーティング薄膜表面に実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液をバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した後、電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、光触媒微粒子をシランカップリング剤のグラフト重合によりコーティング薄膜表面に結合させた光触媒体を得た。
参考例1:
実施例1で基体に用いたポリエステルフィルムに、電子線を200kVの加速電圧で10Mrad照射した後、不飽和結合を有する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを1.0重量%含んだイソプロピルアルコール溶液に浸漬し、電子線照射によりフィルム表面および内部に発生したラジカルによりシランカップリング剤をポリエステルフィルム表面にグラフト重合してコーティング薄膜を形成した。次に、市販の光触媒微粒子が分散した水溶液(昭和電工株式会社製NTB−200)をコーティング薄膜表面にバーコーターにて塗布した後、120℃、20分間乾燥することで、コーティング薄膜に存在するシラノール基と光触媒微粒子表面に存在するヒドロキシル基とを脱水縮合反応により結合させた光触媒体を得た。
参考例2:
平均粒子径10nmのシリカ微粒子がイソプロピルアルコールに分散したコロイダルシリカ溶液(日産化学工業株式会社製IPA−SZ−S)に不飽和結合を有する3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランをシリカ微粒子に対して2.0重量%加えた後、冷却管を備えたフラスコに移し、その後フラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することによりシリカ微粒子表面にシランカップリング剤を脱水縮合反応により薄膜を形成した。
また、実施例1で用いたポリエステルフィルム表面をコロナ処理することで親水化した後、前記シランカップリング剤の薄膜が形成されたシリカ微粒子分散溶液の固形分を5.0重量%に調整し、調整した分散液を前記ポリエステルフィルム表面にバーコーターで被覆し、120℃、5分間乾燥することで無機微粒子からなるコーティング薄膜を形成した。その後、実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液を前記コーティング薄膜表面にバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥後、電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、光触媒微粒子をシランカップリング剤のグラフト重合によりコーティング薄膜表面に結合させた光触媒体を得た。
参考例3:
実施例1で用いたポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で10Mrad照射した後、参考例2で用いたシランカップリング剤の薄膜が形成されたシリカ微粒子が分散したイソプロピルアルコール溶液に前記ポリエステルフィルムを浸漬し、電子線照射によりフィルム表面および内部に発生したラジカルにより前記薄膜が形成されたシリカ微粒子からなるコーティング薄膜をポリエステルフィルム表面にグラフト重合により形成した。余分の無機微粒子分散溶液を洗浄により除去した後、実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液を前記無機微粒子からなるコーティング薄膜表面にバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した後、電子線を 200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、光触媒微粒子をグラフト重合により無機微粒子からなるコーティング薄膜表面に結合させた光触媒体を得た。
実施例
実施例3で用いた不飽和結合を有する3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの濃度を10.0重量%とし、これに平均粒子径100nmのアルミナをシランカップリング剤に対して30重量%分散した以外は、実施例3と同様の条件で光触媒体を得た。
実施例
実施例3で用いた不飽和結合を有する3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの5.0重量%のイソプロピルアルコール溶液にシラン化合物としてテトラエトキシシランをシランカップリング剤に対して30重量%分散した以外は、実施例3と同様の条件で光触媒体を得た。
参考例4:
参考例2で用いたシランカップリング剤の薄膜が形成されたシリカ微粒子が5重量%分散した溶液に3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを固形分に対して20重量%加えた以外は、参考例2と同様の条件で光触媒体を得た。
参考例5:
参考例2で用いたシランカップリング剤の薄膜が形成されたシリカ微粒子5重量%分散溶液に3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランとテトラエトキシシランのそれぞれを固形分に対して10重量%加えた以外は、参考例2と同様の条件で光触媒体を得た。
実施例
実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを分散溶液の固形分に対して10重量%加え、実施例1で用いたバーコーターよりも5倍程度厚く光触媒微粒子薄膜が形成できるバーコーターを用いた以外は、実施例1と同様の条件で光触媒体を得た。
実施例
実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液にテトラエトキシシランを分散溶液の固形分に対して10重量%加え、実施例1で用いたバーコーターよりも5倍程度厚く光触媒微粒子薄膜が形成できるバーコーターを用いた以外は、実施例1と同様の条件で光触媒体を得た。
実施例
実施例1で用いた光触媒微粒子分散溶液に参考例2で用いたシランカップリング剤の薄膜を形成したシリカ粒子が分散したイソプロピルアルコール溶液を、光触媒微粒子とシリカ微粒子の混合比が8:2の重量比になるように混合した。得られた混合液を実施例1で用いたポリエステルフィルムにバーコーターで塗布し、120℃、3分間乾燥した。次に、前記混合液を塗布したポリエステルフィルムに電子線を200kVの加速電圧で10Mrad照射することで、光触媒微粒子にシリカ微粒子を混在させてシランカップリング剤のグラフト重合によりポリエステルフィルム表面に結合させた光触媒体を得た。
実施例
可視光応答型光触媒(石原産業株式会社製MTP621)とヒドロキシアパタイトの粉末(富田製薬株式会社製)を7:3の重量比で混合してメタノールに5重量%加えた。塩酸を加えてpHを3.0に調製した後、ビーズミルにより平均粒子径30nmに粉砕分散した。得られた粉砕分散メタノール溶液に不飽和結合を有するN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩を前記粉砕分散メタノール溶液の固形分に対して2.0重量%加えた後、冷却管を備えたフラスコに移してフラスコをオイルバスで加熱し、4時間還流下で処理することにより光触媒微粒子とヒドロキシアパタイト微粒子表面に前記シランカップリング剤を脱水縮合反応により結合させて薄膜を形成した。得られた粉砕分散メタノール溶液中の微粒子の平均粒子径は25nmであった。次に、実施例1で用いたポリエステルフィルムにバーコーターでシランカップリング剤の薄膜が形成された光触媒微粒子とヒドロキシアパタイト微粒子が分散したメタノール溶液を塗布した後、実施例と同様の条件で乾燥および電子線を照射することで光触媒微粒子にヒドロキシアパタイト微粒子を混在させてシランカップリング剤によりポリエステルフィルム表面に結合させた光触媒体を得た。
実施例10
実施例で用いたヒドロキシアパタイトを酸化アルミニウム微粒子(昭和タイタニウム株式会社製UFA−150)に替えた以外は、実施例と同様の条件で光触媒微粒子にγ−アルミナ微粒子を混在させてシランカップリング剤によりポリエステルフィルム表面に結合させた光触媒体を得た。
比較例1:
実施例1で得られた光触媒微粒子粉砕分散溶液に不飽和結合がない3−アミノプロピルトリエトキシシランを固形分に対して10重量%加えた溶液を実施例1で用いたポリエステルフィルム表面にバーコーターで被覆し、120℃、60分間乾燥することで光触媒体を得た。
比較例2:
フッ素系樹脂溶液(旭硝子株式会社製、CTX−102A)に実施例1で用いた光触媒微粒子をフッ素樹脂溶液の固形分に対して50重量%加え、ビーズミルで粉砕分散した。得られた光触媒分散フッ素樹脂溶液中の光触媒微粒子の平均粒子径は580nmであり、粉砕分散時間を2倍以上にしても光触媒微粒子の平均粒子径はほとんど変化しなかった。次に、実施例1で用いたポリエステルフィルム表面にバーコーターで前記光触媒分散フッ素樹脂溶液を塗布し、120℃、30分乾燥することで光触媒体を得た。
<光触媒体の評価>
得られた光触媒体の外観は目視で観察した。また、光触媒体の触媒活性は、アセトアルデヒドガスの光触媒体による分解性により評価した。まず、作製した光触媒体をテドラーパックに入れた後、100ppm程度の濃度のアセトアルデヒドを同テドラーパック内に3L注入した。次に、テドラーパック内のアセトアルデヒド濃度が一定になるように30分間程度放置した後、試料表面での紫外線光強度が1.0mW/cm2となるように20Wのブラックライト(東芝ライテック株式会社製、FL20SBLB)を用いて、紫外線を120分間光触媒体に照射した。テドラーパック内のアセトアルデヒドの濃度はアセトアルデヒドガス検知管(株式会社ガステック製)を用いて測定した。触媒活性は紫外線照射前のアセトアルデヒド濃度を100とした場合での相対値でガス分解率として示した。
さらに、耐久性は、耐候性試験により評価した。具体的には、耐候性試験機(岩崎電気株式会社製、アイスーパーUVテスター)を用いて2時間毎にイオン交換水を2分間噴霧しながら連続して紫外線を照射した後、外観を目視で観察し、また、試験後の触媒活性をアセトアルデヒドガスの分解により評価した。それらの結果を表1に示す。



本発明で得られた光触媒体は、各実施例及び応用例(参考例)の結果が示すように、極めて透明性に優れたものであり、均一性に優れた光触媒であることが確認され、また、ガス分解率も非常に高いことから触媒活性に優れていることが示された。これにより、本発明の製造方法は、均一性に優れ、且つ、触媒活性に優れた光触媒体が提供できることが確認された。さらに、耐候性試験では、基体表面にシランカップリング剤からなる薄膜(あるいは無機微粒子からなる薄膜が形成された本実施例(及び各参考例)の光触媒体では外観的な変化は認められず、光触媒体の劣化や光触媒活性の低下も認められないことから、耐久性に優れた光触媒体が製造できることが実証された。これらの結果に対し、上記方法によらない比較例では、基体に対する固着強度が低いことに起因して耐久性が低く、さらに、フッ素樹脂をバインダーに用いた場合では、均一性、密着性、触媒活性が低いことが確認され、実用性に乏しいことが確認された。
以上説明したように、本発明の製造方法は、シランカップリング剤のグラフト重合等の化学結合により光触媒微粒子を樹脂表面に固定化する方法であり、シランカップリング剤のアルコキシ基の加水分解により生成したシラノール基が、光触媒微粒子の表面に脱水縮合反応で強固に化学的に結合し、さらに、シランカップリング剤のビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロ基、アクリロキシ基、イソシアネート基などの不飽和二重結合を有する官能基が、例えば放射線の照射により生成したラジカルによるグラフト重合等の化学結合で樹脂基体表面に化学的に結合することによってなされている。よって、製造された光触媒微粒子は樹脂基体表面にシランカップリング剤により化学的な結合で強固に結合させることから、本発明方法によれば、過酷な環境で使用しても様々な機能を有する微粒子の脱離などが起こり難い耐久性に優れた微粒子固定化体を供給することが可能となる。さらに、光触媒粒子と樹脂基体との間には、シランカップリング剤に存在するアルコキシ基の加水分解で形成したシラノール基が、脱水縮合して酸化ケイ素の緻密な薄膜を形成していることから、これらの薄膜は光触媒粒子表面に発生したヒドロキシラジカルの樹脂基体との直接接触を阻害するため、樹脂基体表面は光触媒粒子の持つ強い酸化、還元作用を受けない。また、本発明では、透明性に優れた光触媒体が製造できることから、様々な分野に応用しても、それらの外観意匠性を損なうことがなく、処理条件を選択することにより繊維やそれらからなる構造体の風合いを損なうことも無いなど、様々な分野に応用できる実用性に優れた有用な光触媒体の製造方法を提供することが可能となる。

Claims (5)

  1. 少なくとも基体表面が樹脂からなる光触媒体の製造方法であって、
    光触媒微粒子の表面に不飽和結合を有するシランカップリング剤の薄膜を形成し、
    前記基体表面と前記光触媒微粒子表面に形成した薄膜とを接触させ、
    該接触状態で、前記基体表面と前記薄膜に存在する不飽和結合とを、化学結合させてなる
    光触媒体の製造方法。
  2. 前記基体表面は、少なくとも不飽和結合を有するシランカップリング剤からなるコーティング薄膜で形成されてなることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒体の製造方法。
  3. 前記光触媒微粒子表面に薄膜を形成するために使用するシランカップリング剤の量を、化学結合させる光触媒微粒子の重量に対して0.01〜5重量%とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光触媒体の製造方法。
  4. 前記化学結合がグラフト重合であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光触媒体の製造方法。
  5. 前記グラフト重合が、放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項4に記載の光触媒体の製造方法。
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