JP4925980B2 - 光触媒体および光触媒体を用いたコーティング組成物 - Google Patents

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本発明は光触媒体および光触媒体を用いたコーティング組成物に関するものであり、主として建物外壁に施工して自己浄化作用を付与するために用いられる。
ビル等の建構築物の外壁には、空気中に含まれる煤塵や排気ガスなどの燃焼生成物や、上方にあるシーラントから溶出する汚れ、建物の排気口から排出される汚染物質等の疎水性汚れによる汚れなどが付着するので経時的に美観を損ねることになる。
そこで、従来から建物等における外壁の汚れを洗浄するする手段として光触媒を用いたコーティング組成物を用いることが知られており、例えば特許第3465664号公報などに提示されている。この公報に提示されている従来の光触媒を用いたコーティング組成物は、外壁に施工(コーティング)したときに、太陽による紫外線により生じる光触媒の光励起により、水との接触角を10度以下に減少させて親水化させ、雨水でその汚れを洗い流すというものである。
しかしながら、前記公報に提示されている光触媒は、例えばアナターゼ型酸化チタンのような紫外線対応型光触媒を用いたものであり、太陽がよく当たる南側の壁面や日差しの強い夏場には豊富な紫外線により光触媒効果が発揮されて所定の洗浄効果を発揮させることができるが、北側の壁面や冬場など太陽の照射光量が少なく充分な紫外線がない場合には効果を期待できない。
また、前記従来のコーティング組成物は、光触媒が励起することにより親水性が増して雨水により汚れを洗い流すものであり、前述の如く北側の壁面や冬場など太陽の照射光量の少ない箇所に施工された場合には常時において水との接触角が減少しない。即ち、親水性が低いままであることから付着した汚れを雨水により荒い流すことが困難となる、という問題がある。
特許第3465664号公報
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、照射光量が少ない場合においても充分に励起して光酸化作用を発揮するばかりか予め有している所定の保水性を維持する光触媒体、および前記光触媒体を用いて汚染を防ぐ能力が低下しない外壁用建材に使用されるコーティング組成物を提供することを課題とする。
前記課題を解決するためになされた本発明である光触媒体は、可視光応答型光触媒、保水材およびバインダーをそれぞれ所定量ずつ含有して予め水との接触角に換算した親水性が5〜45度の範囲に調整されているとともに、前記可視光応答型光触媒が励起したときに、前記水との接触角を変化させずに前記可視光応答型光触媒による光酸化作用を生じさせることを特徴とする。
本発明である光触媒体は可視光線があたることにより光励起するので光酸化により大部分の汚れの元となる炭化水素系の物質は酸化分解して除去される。このとき、水との接触角は太陽光にあたる前後で実質的には変化せず、常時、親水角度が防汚染に適切な範囲にとどまる。好ましい水との接触角度は具体的には、親水角は5度以上、45度以内(通常は12度以上、45度以内)であり、かつ、光を照射すると著しく低汚染型となる。ただし、光照射の前後において、実質的には親水性は変化しないか、むしろ若干疎水化する場合もある。このタイプの光触媒体における汚染を防ぐ能力においては、太陽光があたることによって強い親水性(たとえば接触角が10度以下)を呈する従来の光触媒体に比しても高いものがある。
本発明である光触媒体は、光触媒の価電子帯上端と伝導帯下端とのエネルギーギャップ以上のエネルギーを有する光が光触媒に照射されて、光触媒の価電子帯中の電子が励起されて伝導電子と正孔が生成し、水と酸素、特に酸素を励起することにより、活性酸素種の増加が顕著となり、表面に物理的、化学的に付着する炭化水素等の汚染物質とを酸化し、表面の汚れを分解、除去する。また、保水性材料による適度の吸着水の相乗作用もあり、結果として、常時において汚染しにくいものとなる。
本発明に用いられる可視光に応答する光触媒としては、特に制限は無く、酸化物、硫化物、窒化物、酸窒化物等が任意に使用可能であるが、特に、可視光活性のある酸化チタンを少なくとも一部に含むことが特に好ましい。酸素欠陥を持つ酸化チタンとバインダー、保水性材料を含有した場合には、太陽光があたる前後で親水角が低下しない防汚染型外外壁材料として好適な光触媒体を得ることができる。
この光触媒体は、親水角が11度以上、通常は15度以上、ないしは20度以上の場合もあり、汚染を防ぐ高い能力を持つ。一般の通説と異なり、強い親水性(たとえば親水角が10度以下)の物質に比べて本発明の光触媒体がより適切な防汚染性能を有するかについては必ずしも明確ではないが、現実の使用環境においては、多種類の親水性物質、疎水性物質の汚染が、重畳して存在しており、極端な親水性を有することは、結果としての防汚染にはつながらないことが理由としてあげられる。
特に、太陽光に含まれる紫外線のみならず、可視光線、特に青色光に応答する酸化チタン系光触媒を含む本発明における光触媒体の場合は、可視光線に応答することから、化学的エネルギーが紫外線より弱い可視光がその表面に照射された場合、炭化水素系の汚染は酸化されても、完全酸化はされないか、完全酸化する速度が低下する。完全酸化前の中間酸化物は適度な親水性を持つ複合性の炭化水素系物質となり、雨水になじみやすくなることも本発明の光触媒体が高い防汚染性能を保有する理由と考えられる。
また、本発明における可視光応答型光触媒が少なくとも420nmを超える波長を有する光線で励起するとよい。これは、冬季や屋外などは、常時、紫外線が少ないことが常態であり、たとえば日本国内で12月や1月にはmw/平方センチメートル程度以下の微弱なUV/A光しか、外壁上の光触媒体に照射されない場合が多いが、少なくとも420nm以上の光により光酸化力の発揮に資する光触媒であれば、防汚性能の低下を最小限に抑えることが可能だからである。
更に、本発明におけるコーティング組成物は、前記光触媒体にコーティング材を加えて作成し、基板の表面にコーティングされて前記光触媒体を形成する光触媒の太陽光による光励起によって表面の付着物を酸化・分解し、降雨時等に前記分解物が雨滴により洗い流され表面が清浄化する作用を有することを特徴とする。
可視光応答型光触媒と保水性材料、バインダーを含む表面層を備えることにより、光触媒の光励起による光酸化能力およびこれに保水材を加えたことによる適度な親水能力のコントロールにより、施工された外壁用建材表面がそのままでも徐々に汚れが低減し、また、雨水があたった場合や水で洗浄する場合はさらに容易に清浄化される。なお、複数の違う組成の光触媒を組み合わせせると特に効果が大である場合がある。その場合、可視光に応答する光触媒と紫外線にのみ応答する光触媒の双方を組み合わせてもよい。たとえば可視光に応答する酸化チタン系光触媒と紫外線のみに応答する酸化亜鉛系光触媒の組み合わせがあり、好適な結果を得ることができる。
本発明である光触媒体は、照射光量が少ない場合においても充分に励起して光酸化作用を発揮するばかりか予め有している所定の保水性を維持することにより各種の用途に利用可能性を有している。また、本発明におけるコーティング組成物は、外壁用建材の表面に施工することにより、表面層の表面は汚染されにくくなり、紫外線だけに応答する光触媒を使用する場合に比して、汚染を少なくする効果が高くなる。さらに、水で濯ぐ又は散水のみで前記表面層の表面が清浄化されるようになる。
本発明の好ましい態様においては、保水材料としては、たとえばシリカゲルないしはアパタイト等が含まれていることが好ましい。ただし、保水材料は上述のものにとどまらず、公知のものが任意に使用できる。これら保水材料が加わることにより、むしろ現実の環境下では不適切な、強度の光親水性の悪影響から逃れることができる。ただし、保水材料が加わることにより、膜の強度、耐候性が低下することがあるので、保水材料を一定以上加えることは適当ではない。これら保水材料の光触媒体に占める重量費はたとえば、光触媒、バインダー、保水材料で構成される光触媒体の場合、バインダーが固形化した後、あるいは溶媒が実質的に蒸発、飛散した後のバインダー重量を100とした時点で、保水材料の重量比は1から100であり、好ましくは1から50、さらに好ましくは1から30ないしは1から5である。保水材料が3以下の重量比で膜中に存在する場合、この光触媒体の耐候性はほとんど低下しない場合が多い。なお、光触媒にアパタイトを被覆してバインダーを加えた材料自体は公知であるが、本発明は、仮にアパタイトを保水材料として使用する場合においても、アパタイトを被覆していない光触媒にアパタイトを加え、さらにはバインダーを加えるものであり、従来のものと異なり独自の製法であり、防汚性能も異なっている。
このように、本発明の光触媒体のほうが防汚性能は高い。これは光触媒にアパタイトを被覆した場合に光触媒の周りをアパタイトが過度に被覆してしまい、特に一定以上のアパタイト量を被覆した場合は肝心の炭化水素系物質をはじめとする汚れの酸化分解力が著しく低下することが理由であると考えられる。シリカゲル系材料とアパタイトその他の保水材料は単独でも、組み合わせて使用することも任意である。
可視光応答型の光触媒として酸化チタン系材料を用いた場合において、酸化チタン系光触媒は特許第3894144号公報、特許第3962770号公報、特許第3799653号公報等に記載のもの、その他公知のものが任意に使用可能であるが、特に酸素欠陥を持つ酸化チタン系光触媒であることが好ましい場合があり、また、四塩化チタンを原料にする可視光応答型酸化チタン系光触媒が特に高い防汚染能力を保有する場合がある。
バインダーについても珪素系、アモルファスチタン系、フッ素系、アクリル系、アクリルシリコン系、ジルコニア系、その他公知の素材を単一で、あるいは混合して任意に用いることができる。界面活性剤、水やアルコール等の溶媒、その他、コーティング材、塗料に使用されることが可能な物質は、むろん任意に使用することができる。本発明の光触媒体を形成するためのコーティング材は基材に塗布した後、乾燥させて使用する場合が多いが、焼付け塗装等、公知の皮膜形成方法はすべて利用可能である。
そして、本発明の光触媒体を含むコーティング組成物を外壁用建材表面に施工すると基材の表面に可視光に応答する酸化チタン系光触媒および保水材料およびバインダーを含む層が形成され、可視光に応答する酸化チタン系光触媒の光励起に応じて炭化水素が酸化され、かつ、保水材による親水性コントロールを受ける。
そのため、前記表面層の表面に付着する堆積物または汚染物の少なくとも一方が分解されるか、雨滴により洗い流されるようになる。さらに、外壁用建材の表面に、上記表面構造を設けた場合に、前記表面層の表面に付着する堆積物または汚染物の少なくとも一方を水で容易に洗浄することができるようになり、晴天の日が続く場合でも水濯ぎや散水程度で清浄化されるようになる。
本発明が利用できる外壁用建材基体には、施釉タイル、無釉タイル、レンガ、結晶化ガラス、ガラスブロック、コンクリート、石材、木材、軽量気泡コンクリート板、石綿セメントケイ酸カルシウム板、プレキャスト鉄筋コンクリート板、石綿スレート板、パルプセメント板、石膏ボード板などの無機基材の表層に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、シリコーン、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂などの樹脂塗料を塗装した化粧無機建材が用いられる。
また、前記本発明が利用できる外壁用建材基体には、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等の金属基材の表層に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、シリコーン、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂などの樹脂塗料を塗装した塗装鋼板、アクリル板、ポリカーボネート板等のプラスチック板又はその塗装物等が好適に利用でき、さらに前記表面層の表面に、更に親水化可能な耐摩耗性又は耐食性の保護層や他の機能膜を設けても良い。
さらに、基材がナトリウムのようなアルカリ網目修飾イオンを含むガラス(ソーダライムガラス、並板ガラス等)の場合には、基材と表面層との間にシリカ等の中間層を形成してもよく、この場合には焼成中にアルカリ網目修飾イオンが基材から表面層へ拡散するのが防止されて光触媒機能がよりよく発揮される。
次に、前記表面層の形成方法について説明する。
前記表面層の形成方法には、次に示す自然乾燥法と強制乾燥法とがある。
(1)自然乾燥法
可視光に応答する光触媒を含むか、乾燥することにより、可視光に応答する酸化チタン系光触媒を形成するゾルと、アパタイト等の保水材、アモルファス酸化チタン系バインダー、ジルコニア系バインダー、シリカ系バインダー(あるいはテトラアルコキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等もシリカ系バインダーの範疇に含む、また、シリコーンの前駆体も含む)と水なしいはアルコールの少なくとも片方を含むコーティング材を、基材表面に、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法等の方法で塗布し、自然乾燥させる。
(2)強制乾燥法
可視光に応答する光触媒を含むか、乾燥することにより、可視光に応答する酸化チタン系光触媒を形成するゾルと、アパタイト等の保水材、アモルファス酸化チタン系バインダー、ジルコニア系バインダー、シリカ系バインダー(あるいはテトラアルコキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等もシリカ系バインダーの範疇に含む、また、シリコーンの前駆体も含む)と水なしいはアルコールの少なくとも片方を含む溶媒、ないしはトルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒のいずれかを含むコーティング材を、基材表面に、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法等の方法で塗布し、ヒーター、温風等で強制的に乾燥する。
ここで、シリコーンの前駆体としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジブトキシシラン、フェニルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びそれらの加水分解物、それらの混合物が好適に利用できる。
その他、前記コーティングを塗布したフィルムを基材表面に接着剤を用いて貼着してもよく、フィルム基材としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン等のプラスチック製フィルムが好適に利用できる。
可視光に応答する可視光応答型光触媒である酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタン(色調は黄色であり、450nmの単波長の光で炭化水素の酸化活性を空気中で保有する)と保水材としてアパタイトを含む水分散液体ゾル16重量部と、バインダーとしてのシリカゾル9重量部を混合後、メチルトリメトキシシラン3重量部とエタノール452重量部を添加し、さらに2時間撹拌し、メチルトリメトキシシランを部分的に加水分解反応と脱水縮重合反応させてコーティング液を調製した(なお、可視光に応答する、酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタンとアパタイトの固形分の重量費は100対2であった)。このコーティング液をフローコーティング法により、化粧無機建材の表面に塗布した後、140℃で30分間加熱し照射して試料を得た。
前述の加工前の化粧無機建材を比較例1とし、前記実施例1に使用した可視光に応答する、酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタンとアパタイトを含む水分散液体ゾル16重量部にかえて、450nmでの可視光での光触媒活性はもたないが紫外線での光触媒活性は保有する通常のアナターゼ型酸化チタン(実質的に酸素欠陥が観測されず、色調は白色である)にかえた以外は、重量比、その他全て同一のコーティング液を作成し、さらに化粧無機建材の表面に塗布した後、140℃で30分間加熱し照射し、比較例2とした。
前記実施例、比較例1および比較例2において得られた試料に水滴を滴下し、水との接触角の測定を行った。ここで水との接触角は接触角測定器を用い、滴下後30秒後の水との接触角で評価した。その結果、比較例1では水との接触角が90度と疎水性を示したのに対し、実施例および比較例2では水との接触角が20度から21度と親水性を示した。この試験を行った部屋は外光から遮断されており、可視光は天井にある60Wの白熱灯であり、試験試料のある場所は50ルクス以下の照度であった。
なお、滴下後30秒後の水との接触角を測定した後、ブラックライト(60W)を50cmの距離から1時間にわたって照射した後、さらに水との接触角の測定を行ったが実施例、比較例1、比較例2のいずれも親水性の変化は観測されなかった。
次に、前記実施例、比較例1、比較例2の各試料を屋外に設置して、防汚染性能について調べた。尚、防汚染性能は、まず、屋外の日陰ができない場所に屋外汚れ加速試験場所を設置した。雨は自然に各試料の表面に筋を成して流下するようになっている。実施例と比較例1の試料を置き、2007年6月1日から1か月間天候条件そのままに暴露し、1か月後に観察したところ、本発明の光触媒体を有していない比較例2では、試料表面に縦筋状の汚れが顕著に観察された。これに対して、光触媒被膜のある実施例および比較例1では、汚れは観察されなかった。
その様子を加速試験装置取り付け前後に最も顕著に汚れた部分の色差変化で調べた。ここで色差は色差計を用い、日本工業規格(JIS)H0201に従い、ΔE*表示を用いて調べた。その結果、光触媒被膜のない比較例1では色差変化は7.0と非常に大きく汚れが顕著であるのに対し、光触媒体の存在する実施例および比較例2では、色差変化は0.4と非常に小さかった。
同様の試験開始時期、また期間に並行して、上記方法と同様にして、建物の北側で、かつ、まわりに障壁物が多く、日があたらないわけではないが、直射日光は少ない場所で同様に実施例の試料、比較例1、比較例2の試料を屋外に設置して、防汚染性能について調べた。ただし、雨水には実施例の試料と同様に暴露されている。
更に、1か月後に観察したところ、本発明の光触媒体を有していない比較例1の試料では、試料表面に縦筋状の汚れが顕著に観察された。これに対して、可視光に応答する、酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタン光触媒を含む光触媒体を持つ実施例の試料では、汚れは観察されなかった。可視光に応答する、酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタン光触媒を含まず、紫外線に応答するアナターゼ型酸化チタン光触媒を含む光触媒体を持つ比較例2では比較例1に比べると、汚れは少ないものの、明らかに汚れが観察された。
その様子を加速試験装置取り付け前後に最も顕著に汚れた部分の色差変化で調べた。ここで色差は色差計を用い、日本工業規格(JIS)H0201に従い、ΔE*表示を用いて調べた。その結果、光触媒被膜のない比較例1では色差変化は7.0と非常に大きく汚れが顕著であるのに対し、可視光に応答する、酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタン光触媒を含む光触媒体をもつ実施例では、色差変化は0.4と非常に小さかったが、可視光に応答する酸素欠陥を持つアナターゼ型酸化チタン光触媒を含まず、紫外線に応答するアナターゼ型酸化チタン光触媒を含む光触媒体を持つ比較例2では色差変化は3.0であり、実施例と比較例1との中間的な値となった。

Claims (3)

  1. 可視光応答型光触媒、保水材およびバインダーをそれぞれ所定量ずつ含有して予め水との接触角に換算した親水性が5〜45度の範囲に調整されているとともに、前記可視光応答型光触媒が励起したときに、前記水との接触角を変化させずに前記可視光応答型光触媒による光酸化作用を生じさせることを特徴とする光触媒体。
  2. 前記可視光応答型光触媒が少なくとも420nmを超える波長を有する光線で励起することを特徴とする請求項1に記載の光触媒体。
  3. 請求項1または2に記載の光触媒体にコーティング材を加えて作成し、基板の表面にコーティングされて前記光触媒体を形成する光触媒の太陽光による光励起によって表面の付着物を酸化・分解し、降雨時等に前記分解物が雨滴により洗い流され表面が清浄化する作用を有することを特徴とする光触媒体を用いたコーティング組成物。
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