JP4566113B2 - 鉄道レール用の一体型可変軌道パッド - Google Patents

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Description

この発明は、鉄道レールとタイプレートや枕木等のレール支持体との間に挿入される可変軌道パッド、詳しくは軌道パッド及び軌道パッドを高さ調節する可変パッドを一体化して成る可変軌道パッドに関する。
従来、鉄道レール(以下単にレールとする)とタイプレートや枕木等のレール支持体との間に軌道パッドと可変パッドとを、軌道パッドを上側に可変パッドを下側にしてレール長手方向に所定間隔ごとに、例えば60cmごとに挿入し、それらを介してレールを支持する技術が公知である。
例えば下記特許文献1,特許文献2にこれらの技術が開示されている。
ここで軌道パッドはゴム等の弾性板から成る部材で、レール上を列車が走行する際の緩衝材としての働きをなし、その緩衝作用により騒音防止したり、レールからタイプレート等のレール支持体を介して設置面に振動が伝達されるのを防止したり、或いは列車内の乗員の乗り心地を良くする働きをなす。
一方可変パッドは袋状をなしていて、その内部への反応硬化型樹脂の樹脂液の注入及びその後の硬化により、レールを水平且つ適正高さに保持する働きをなす。
図15はそれら軌道パッド及び可変パッドの一例を施工完了状態で周辺部とともに示したものである。
同図において200はレールで、202はコンクリート基盤であり、このコンクリート基盤202上に金属製のタイプレート(レール支持体)204が、ボルト206にて絶縁板208を介し固定されている。
ここでボルト206は、コンクリート基盤202内に埋設された埋込栓209にねじ込まれている。
このタイプレート204には、レール200の基底部200-1の幅に対応した間隔で突出する一対の突出部210が設けられていて、それら突出部210と210との間に、レール200の基底部200-1が嵌め入れられて位置決めされている。
各突出部210にはレール固定用の板ばね212がボルト214及びナット216により取り付けられており、その板ばね212の自由端部がレール200の基底部200-1を下向きに押圧している。
レール200とタイプレート204との間には、弾性板から成り列車走行時に緩衝作用をなす軌道パッド218と、袋状をなす可変パッド220とが挿入されている。
可変パッド220の内部には反応硬化型樹脂の樹脂液が注入され、その後にこれが硬化されている。
可変パッド220は、その樹脂液の注入量に応じて膨張によりその厚みを増し、そしてその厚みが適正に調整されることによって軌道パッド218とともにレール200を適正高さ且つ水平に保持する。
図16は袋状の可変パッド220を膨らませる前の状態を表している。
レール200は可変パッド220を膨らませる前に、図17に示すレール高さ調節用のスペーサ222により事前に高さ調整されており、従って図16に示しているように可変パッド220を膨らませる前において、レール200と軌道パッド218との間には隙間Sが生じている。
可変パッド220は、この状態で隙間Sが埋まるまで内部に樹脂液が注入されて膨張せしめられ、その状態で注入された樹脂液が硬化させられて、レール200を予め調整された高さに保持する。
尚ここでは軌道パッド218の上面にSUS鋼板が滑り板224として固着され、その滑り板224に対してレール200の基底部200-1が接触せしめられている。
ここで滑り板224は、レール200が熱により膨張或いは収縮したときにレール200を滑り板224の上面で滑らせることで、レール200の膨張,収縮による位置移動により軌道パッド218及び可変パッド220が変形したり、或いはタイプレート204等のレール支持体から位置ずれし、または場合によって外れてしまうのを防ぐ働きをなす。
図18は軌道パッド218及び可変パッド220の施工手順を表している。
同図に示しているように軌道パッド218及び可変パッド220をレール200とタイプレート204との間の空間に挿入するには、別体をなす軌道パッド218と可変パッド220とを先ず予め上下に重ねて揃えておき、その状態で軌道パッド218と可変パッド220とを、タイプレート204の一対の突出部210と210との間且つレール200とタイプレート204の上面との間の空間にレール長手方向に挿入する。
ここで可変パッド220は、従来、2枚の樹脂シートを周縁部でヒートシールして袋状となしており、このものは内部への樹脂液の注入によって厚み方向に膨らむときに、幅方向において寸法収縮する。
可変パッド220はその収縮状態で軌道パッド218と同等の適正な幅となることが求められ、そのため可変パッド220は樹脂液を注入して膨らませる前の状態では、幅方向の寸法が軌道パッド218及び一対の突出部210と210との間の寸法よりも予め大寸法とされている。
従ってそのままでは可変パッド220を突出部210と210との間に挿入できず、そこで図18に示しているように予め幅方向両端部を折り曲げた状態とし、その状態で軌道パッド218と可変パッド220とを、一対の突出部210と210との間に挿入する。
このようにして軌道パッド218と可変パッド220とを挿入し終わった状態が図16に示す状態であり、この状態で可変パッド220内に樹脂液が注入されてその後硬化せしめられる。
ここで予め軌道パッド218と可変パッド220とを上下に重ね揃えた状態で挿入作業するのは、何れか一方を先に挿入した後に他方を挿入すると、その他方の挿入によって先に挿入したものが位置ずれを起してしまい、軌道パッド218と可変パッド220とを、ともに適正な位置にセットするのが難しくなるためで、そのためにこれら2つを揃えておいて同時に挿入作業する。
しかしながら互いに別体をなす軌道パッド218と可変パッド220とを上下に重ね且つ位置を揃えた上で、これらを同時にしかも挿入作業中に一方が他方に対してずれないように挿入することは作業上多大な面倒を伴う。
このため必然的に作業は遅くなって、作業に要する時間も長くなる。
またその際に幅広の可変パッド220を、左右の幅方向の両端部で折り曲げた状態で挿入しなければならないため、このことが挿入作業をより困難化する。
そこで本出願人は先の特許願(特願2004−208215:未公開)において、軌道パッドと可変パッドとを、レールとレール支持体との間への挿入前に予め一体化して成る可変軌道パッドを提案している。
図19はその具体例を示している。
同図において226Aは一体の可変軌道パッドで、弾性板(ここではゴム製)から成る軌道パッド218と可変パッド228とを接合し、一体に組み付けてある。
軌道パッド218はここではゴム製で、薄肉ひれ状のゴム膜(弾性膜)230が外周に沿って環状に一体に成形されている。
ここでゴム膜230は、同図中(B)に示しているように軌道パッド218の上端から立ち下がる立下り部232と、その下端の折返し部234で折り返されて立ち上がる立上り部236とから成っており、全体として横断面形状がU字状をなしている。
一方可変パッド228は薄肉のゴム製のもので、底部238とその外周端から立ち上がる周壁部240とを有しており、その周壁部240の上端部内周面に対し上記のゴム膜230、詳しくは立上り部236の上端部外周面が接着により固着されている。
この図19に示す可変軌道パッド226Aでは、可変パッド228内部に樹脂液を注入すると、同図中(C)の部分拡大図に示しているように折畳み状態のゴム膜230が上向きに延びることによって軌道パッド218が押し上げられ、最終的にレール200に接触せしめられる。
この図19に示す可変軌道パッド226Aの場合、軌道パッド218と可変パッド228とが予め一体化されているため、それら軌道パッド218,可変パッド228の互いの位置ずれを気にすること無く容易にレールとレール支持体との間に挿入でき、その挿入作業性が良好となって挿入作業に要する時間を短縮化することができ、軌道パッド218及び可変パッド228の施工に要するコストを低減することができる。
更にまたこの可変軌道パッド226Aは、ゴム膜230の可撓性に基づいて全体が上向きに厚みを増すことができるため、その際に可変軌道パッド226A全体が幅方向に収縮することが無く、従って可変パッド228を予めその挿入空間の幅に合致させておくことができ、このことによっても可変軌道パッド226Aの挿入作業性を良好となすことができる。
しかしながら一方でこの図19に示す可変軌道パッド226Aの場合、軟らかくて変形し易い薄肉のゴム膜同士(軌道パッド218の立上り部236と可変パッド228の周壁部240と)を、その上端部で接着して軌道パッド218と可変パッド228とを一体化するため、その接着による一体化のための作業が難しいといった問題がある。
更にこれらゴム膜同士の接着による一体化では、軌道パッド218と可変パッド228との固定の信頼性の点で不十分で、部分的若しくは全体的に接着剥れを生じて樹脂液の漏れを生じたり、或いは軌道パッド218と可変パッド228とが部分的に分離してしまう恐れがある。
特公昭48−5644号公報 実公平4−5532号公報
本発明はこのような事情を背景とし、レールとレール支持体との間への挿入を容易になし得て施工性が良く、更にまた軌道パッドと可変パッドとの固定強度を高強度となし得る可変軌道パッドを提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、鉄道レールとタイプレート等のレール支持体との間に挿入され、鉄道車両の走行の際の緩衝材として働くゴム等の弾性板から成る軌道パッドと、該軌道パッドとともに且つ該軌道パッドの下側において前記レールとレール支持体との間に挿入され、反応硬化型樹脂の樹脂液が内部に注入されることで厚みを増し、前記軌道パッドと前記レールとの間の隙間を埋める可変パッドとを有しており、前記軌道パッドには薄肉ひれ状の弾性膜が外周に沿って環状に一体に設けられているとともに、該弾性膜の外周端には上下方向に突出した形態の係合凸部が全周に亘って一体に設けられており、また前記可変パッドは底部と、該底部の外周端から立ち上がる環状の周壁部を備えた、前記軌道パッドよりも硬質の容器状をなしていて、該容器内部への前記樹脂液の注入により該軌道パッドを押し上げるものとされているとともに、前記周壁部には前記係合凸部を係入させて抜止めする係合凹部が該周壁部に沿って環状に設けられており、それら係合凸部と係合凹部との係合に基づいて前記軌道パッドと可変パッドとが前記挿入前において予め一体に組み付けられていることを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、前記可変パッドは樹脂にて構成されていることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記可変パッドの周壁部は、前記係合凹部の位置で上部と下部とに分割されていて、該上部と下部とを上下に組み付けることにより前記係合凹部が形成されるとともに、同時に前記弾性膜の係合凸部を上下に挟み込んで該係合凹部に係入状態とするものであることを特徴とする。
請求項4のものは、請求項3において、前記上部と下部とは組付時に前記係合凸部を上下に弾性圧縮するものとなしてあることを特徴とする。
請求項5のものは、請求項3において、前記下部の上面に対して前記弾性膜の外周端部が下向きに接着してあることを特徴とする。
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記係合凸部は横断面形状が角形状をなしていることを特徴とする。
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、前記弾性膜は前記軌道パッドの下端部から上向きに延び出しており、前記樹脂液の注入前の状態において該下端部より上方位置において前記係合凸部が前記周壁部の係合凹部に係入していることを特徴とする。
請求項8のものは、請求項1〜7の何れかにおいて、前記可変パッドの周壁部には前記樹脂液の注入口と、前記容器内部の空気を排出する排気口とが設けられており、且つ該排気口が前記レール支持体に対しレール長手方向において前記注入口と同じ側に設けられていることを特徴とする。
発明の作用・効果
以上のように本発明は、軌道パッドの外周に沿って薄肉ひれ状の弾性膜を環状に一体に設けて、その外周端に上下方向に突出した形態の係合凸部を全周に亘って一体に設ける一方、可変パッドは硬質の容器状となして、その周壁部に上記係合凸部を係入させて抜止めする係合凹部を周壁部に沿って環状に設け、それら係合凸部と係合凹部との係合に基づいて、軌道パッドと可変パッドとを挿入前において予め一体に組み付けたものである。
かかる本発明では、軌道パッドの弾性膜を可変パッドの周壁部に対し係合凸部と係合凹部との物理的な係合に基づいて一体に組み付けるようになしているため、それらを単に接着だけで固定し組み付ける場合に比べて、両者の固定及び組付けを容易に行うことができる。
また接着による固定と異なって接着剥れにより軌道パッドと可変パッドとが分離してしまう恐れが無く、両者を強固に固定することができるとともに、その固定の信頼性を高めることができる。
本発明の可変軌道パッドは、軌道パッドと可変パッドとを予め一体に組み付けたものであるため、同じく軌道パッドと可変パッドとを一体に組み付けて成る図19に示す比較例の可変軌道パッドの利点を併せ有するものである。
即ち、軌道パッドと可変パッドとの互いの位置ずれを気にすること無くレールとレール支持体との間に軌道パッドと可変パッドとを容易に挿入でき、挿入作業性が良好であって挿入作業に要する時間を短縮化することができ、軌道パッド及び可変パッドの施工に要するコストを低減することができる。
更に加えて、図19に示す可変軌道パッドの場合、可変パッドが薄肉ゴム製であるのに対し、本発明ではかかる可変パッドが硬質材で構成されているため、レールとレール支持体との間への挿入を図19に示すものに比べてより簡単に行うことができる。
また本発明の可変軌道パッドは、薄肉ひれ状の弾性膜の可撓性に基づいて軌道パッドを上向きに押し上げ、全体の厚みを増すものであるため、樹脂液の注入による膨張によってその幅が特に狭小化することが無く、従って図15〜図18に示す従来の可変パッドと異なって、その幅を予め挿入空間の幅よりも大きくしておいてこれを折り畳んだ状態で挿入するといった必要は無く、このこともまた可変軌道パッドの挿入性を高める上で有利に働く。
ここで硬質材から成る上記可変パッドは、これを樹脂にて構成しておくことができる(請求項2)。
本発明においては、可変パッドの周壁部を係合凹部の位置で上部と下部とに分割し、そして上部と下部とを上下に組み付けることで係合凹部を形成すると同時に、弾性膜の係合凸部を上下に挟み込んで係合凹部に係入状態とするものとなしておくことができる(請求項3)。
このようにしておけば、上部と下部とを組み付けるだけで容易に係合凸部と係合凹部とを係合状態として軌道パッドと可変パッド、詳しくは軌道パッドの薄肉ひれ状の弾性膜と可変パッドの周壁部とを結合固定することができる。
この場合において、その上部と下部とは組付時に係合凸部を上下に弾性圧縮するものとなしておくことができる(請求項4)。
このようにすれば、両者の結合固定力を効果的により高強度となすことができるとともに、係合凸部の弾性圧縮に基づいてそこにシール機能を持たせ、或いはシール性を高めることができる。
一方、本発明では請求項5に従って上記下部の上面に対して弾性膜の外周端部を下向きに接着しておくことができ、その接着によってシール性を持たせ又は高めることができる。
本発明においてはまた、上記係合凸部の横断面形状を角形状となしておくことができる(請求項6)。
このようにしておくことで、係合凹部からの係合凸部の抜けをより確実に防止することができる。
次に請求項7は、上記弾性膜を軌道パッドの下端部から上向きに延び出させてその外周端部即ち上端部の係合凸部を、樹脂液の注入前の状態において上方位置にある周壁部の係合凹部に係入させるようになしたものである。
このようにしておくことで弾性膜を図19に示す比較例の可変軌道パッドのように折返し形状としておかなくても、樹脂液の注入によってこれを大きく上向きに膨らませ、軌道パッドを上昇させることができる。
即ちこのようにしておくことで、高さ調節機能を効果的に高めることができる。
次に請求項8は可変パッドの周壁部に、可変パッド内部に樹脂液を注入するための注入口と、内部の空気を排出するための排気口とを、レール支持体に対しレール長手方向において同じ側に設けたものである。
図17に示す従来の可変パッド220にあっては、内部に樹脂液を注入するための注入口242と、内部の空気を排出するための排気口244とが、タイプレート204等のレール支持体に対してレール長手方向の反対側に設けてあり、しかもその排気口244は、注入口242の側から見てレール200の下側に隠れた状態となる。
可変パッド220への樹脂液の注入は、注入口242側で作業者がそこから可変パッド220内部に樹脂液を注入し、そして排気口244から樹脂液が流出し始めたところで、樹脂液の注入を停止するが、上記のように排気口244は注入口242側の作業者から見てタイプレート204の向こう側且つレール200の下側に隠れた状態にあるため、排気口244からの樹脂液の流出のし始めの時期を正しく監視することは困難である。
従って従来にあっては、注入口242から樹脂液を注入する作業者と、その反対側に位置して排気口244から樹脂液が流出し始める時期を監視する作業者との2人の作業者が必要で、その作業者のためのコストが高くなる問題があった。
また注入口242から樹脂液を注入する作業者と、排気口244から樹脂液が流出し始めるのを監視する作業者とが別々であって、その後者の作業者からのストップの声に基づいて前者の作業者が樹脂液の注入を停止させなければならないため、そのストップの声から注入停止までの間に時間差が生じ、その間樹脂液が注入され続けてしまう。
その間の樹脂液の無駄な注入量を極力少なくするために、樹脂液の注入をゆっくりした速度で行わざるを得ず、これにより注入のための作業に時間がかかってしまって、このこともまたコストを高める要因となっていた。
しかるにこの請求項8によれば、注入口から樹脂液を注入する作業者が、同じ位置で容易に排気口からの樹脂液の流出のし始めの時期を監視することができ、可変パッドへの樹脂液の注入作業を1人作業で行うことができる。
これにより作業に要する人件費を削減し得て、施工コストを更に低減することができる。
また樹脂液の注入と排気口からの樹脂液の流出とを同一の作業者が行うことで、排気口から樹脂液が流出し始めた段階で直ちに樹脂液の注入を停止でき、従って樹脂液の注入速度を速め得て注入作業自体の時間も短縮化することができる。
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
先ず図1は、本実施形態の可変軌道パッド10を施工完了状態で表している。
同図において12はレール、14はコンクリート基盤、16は金属製のタイプレート(レール支持体)、18は絶縁板をそれぞれ表している。
タイプレート16はボルト20にて絶縁板18を介してコンクリート基盤14の上面に固定されている。
ここでボルト20は、コンクリート基盤14に埋設された埋込栓22にねじ込まれている。
24はタイプレート16に設けられた一対の突出部で、そこにレール固定用の板ばね26が、ボルト28及びナット30により取り付けられている。
一対の突出部24と24との間には、レール12の基底部12-1が嵌め込まれて位置決めされ、その基底部12-1が板ばね26の自由端部にて下向きに押圧されている。
そしてレール12の基底部12-1が、可変軌道パッド10を介してタイプレート16により支持されている。
尚32はSUS鋼板から成る滑り板で、後述の軌道パッド34の上面に固着されている。
尚この滑り板32は場合により省略可能である。
図2〜図6に本実施形態の可変軌道パッド10の具体的構成が示してある(但し施工前の状態)。
先ず図4において、可変軌道パッド10はゴム板(弾性板)から成る四角形状の軌道パッド34と、容器状をなす四角形状の可変パッド36とを一体に組み付けて構成してある。
軌道パッド34の上面にはレール長手方向に延びる凹溝38が、その直角方向に所定ピッチで形成されている。
一方、図3に示しているように軌道パッド34の下面はその中央部40が平坦面とされており、そしてこの平坦な中央部40から下面が水平且つ平坦な凸条部42が外周部に向って放射状に延びている。
軌道パッド34の下面のこれら中央部40及び凸条部42を除く部分は、中央部40から外周部に向って角度θ(図5(B)参照)で斜め上向きに傾斜する傾斜面44とされている。
この結果、図5(A)にも示しているように傾斜面44と凸条部42との間に段差が生ぜしめられている。
即ちこの軌道パッド34は、その下面が中央部40及び凸条部42と傾斜面44とによって凹凸形状をなしている。
ここで傾斜面44は、容器状を成す可変パッド36の内部に反応硬化型の樹脂液が注入されたときに、内部の空気を中央部から外周部に向って誘導し逃がす働きをなす。
この軌道パッド34の下面にはまた、レール長手方向の両端部に上向きに凹陥した形態の樹脂溜り部46が、幅方向に沿って細長く形成されている(図3,図5(A)参照)。
この樹脂溜り部46はまた、傾斜面44の作用によって中央部から外周側に誘導された空気を溜める空気溜り部としての働きも有している。
図4(B)に詳しく示しているように、軌道パッド34には薄肉ひれ状のゴム膜(弾性膜)48が、外周に沿って全周に亘り環状に一体に成形されている。
このゴム膜48は、軌道パッド34の下端部から上向きに延び出している。
このゴム膜48の上端部には水平に折れ曲がった折曲り部50が設けられており、更にこの折曲り部50に続く先端に、上下に突出した、横断面形状が四角形状をなすゴム製の係合凸部52が同じく全周に亘り環状に一体に成形されている。
一方可変パッド36は、図3に示しているように底部54と、底部54の外周端から立ち上がる周壁部56とを有する浅い容器状の部材であって、ここでは可変パッド36は硬質の樹脂(ここではアクリル樹脂)にて構成されている。
この可変パッド36の底部54の上面には平坦な中央部58と、その中央部58から外周部に向って放射状に延びる凹条部60が設けられている。
そして底部54の上面はこれら中央部58,凹条部60を除く部分が、中央部58から外周部に向って角度θ(図6(B)参照)で斜め上向きに傾斜する傾斜面62とされている。
ここで中央部58,凹条部60及び傾斜面62は、それぞれ軌道パッド34における下面の中央部40,凸条部42,傾斜面44に対応する位置において対応する形状で設けられており、樹脂液を注入する前の状態では、図4(B)に示しているように軌道パッド34底面の凸条部42と可変パッド36における底部54上面の凹条部60とが互いに凹凸嵌合している。
尚図3において、64は可変パッド36内部にセットされたガラスクロスで、このガラスクロス64は、注入された樹脂液が硬化することによってこれと一体化し、万一硬化後の樹脂が衝撃により破断した場合においても、その破片が飛散するのを防止する繋ぎ材としての働きをなす。
このガラスクロス64はまた、硬化樹脂に埋設されることによってこれを補強する働きもなす。
この可変パッド36にはまた、図2及び図3に示しているようにレール長手方向の同じ側に、反応硬化型樹脂の樹脂液を注入するための注入口66と、内部の空気を排出するための排気口68とが設けられている。これら注入口66,排気口68は可変パッド36の周壁部56に一体成形にて設けてある。
この排気口68はまた、過剰量の樹脂液を外部に排出する働きも成す。
図4(B)に示しているように可変パッド36の周壁部56には、軌道パッド34の側に設けられた係合凸部52に対応した横断面四角形状の係合凹部70が、周壁部56に沿って全周に亘り環状に形成されており、そこに係合凸部52が係入させられ抜止めされている。
周壁部56にはまた、この係合凹部70に続いてスリット72が環状に形成されており、そこにゴム膜48の水平な折曲り部50が挿入せしめられている。
本実施形態において、周壁部56は係合凹部70の位置において上部74と下部76とに上下に2分割されており、それらが上下に互いに組み付けられて周壁部56が構成されている。
ここで上部74と下部76とは接着により固定されている。
また本実施形態においては下部76の上面に対して、詳しくはスリット72を形成する上面に対して、軌道パッド34のゴム膜48における折曲り部50が下向きに接着され、周壁部56に対し液密にシールされている。
この実施形態では、図7に示しているように周壁部56における上部74と下部76とを上下に組み付けることにより係合凹部70が形成されるとともに、同時にゴム膜48の係合凸部52を上下に挟み込んで係合凹部70に係入状態とし、係合凸部52を周壁部56から抜止めする。
尚このとき、上部74と下部76とはゴム膜48の折曲り部50を上下に挟んだ状態となる。
尚上部74は下部76に対し上記のように接着により固定される。
図8は可変パッド36の内部に樹脂液を注入したときの可変軌道パッド10の作用を表している。
可変パッド36の注入口66から反応硬化型樹脂の樹脂液を注入すると、同図に示しているようにその注入量の増大につれて軌道パッド34が、ゴム膜48を撓ませながら上向きに押し上げられて行く。即ち可変軌道パッド10が上下方向の厚みを増して行く(図8(I),(II)参照)。
可変軌道パッド10は図8(III)に示しているようにゴム膜48の下端(基端側)がその上端(係合凸部52側)を越えて上昇し、そしてゴム膜48が伸び切るまで厚みを増すこと、即ち軌道パッド34の高さを高くすることができる。
次に本実施形態の可変軌道パッド10の作用を施工手順とともに以下に説明する。
図9(I)は、タイプレート16を敷設した状態を表しており、この後において図9(II)に示しているようにレール12がタイプレート16の一対の突出部24と24との間に嵌め入れられ且つ高さ調節された上でスペーサ78により支持される。
このとき、レール12とタイプレート16との間には隙間が存在する。
このようにしてレール12の高さ調節を行った後において、図12に示すように可変軌道パッド10をレール12とタイプレート16との間にレール長手方向に挿入する。
本実施形態において、可変軌道パッド10は左右方向の寸法を特に変化させること無くゴム膜48によって上下方向の厚みを厚く変化させ得るものであり、従って可変軌道パッド10は、予めその左右寸法を突出部24と24との間の寸法と略同等寸法(ないし僅かに小さい寸法)となしておくことができる。
さてこのようにして図10(III)に示すように可変軌道パッド10を挿入したら、図10(IV)に示すように注入口66を通じて可変パッド36の内部に反応硬化型樹脂の樹脂液を注入する。
この樹脂液の注入は、注入口66と同じ側にある排気口68から樹脂液が流出するまで行う。
この樹脂液の排気口68からの流出は、樹脂液の注入により可変軌道パッド10が上向きに膨らんで、軌道パッド34がレール12との間の隙間S(図10(III)(B)参照)を埋めたところで生ずる。
換言すればこの排気口68から樹脂液が流出し始めたときが、レール12と軌道パッド34との間の隙間Sがゼロとなったときである。従ってその時点で樹脂液の注入を停止する。
さてこのようにして樹脂液を注入した後、これを硬化せしめる。
ここにおいて適正高さに調節されたレール12が、可変軌道パッド10によりその調整高さに支持される状態となる。
この樹脂液の硬化後においては軌道パッド34の下面の凸条部42が樹脂の硬化時に生じた凹部に、また相対的に凹形状となる傾斜面44の位置する部分が同じく樹脂の硬化時に生じた凸部にそれぞれ凹凸嵌合し、これによって樹脂の硬化後においてはそれらの凹凸嵌合に基づいて軌道パッド34が硬化した樹脂に対しずれ防止される。
また一方可変パッド36の上面の凹凸形状が同じく樹脂の硬化時に生じた凹凸部に凹凸嵌合して可変パッド36が硬化した樹脂に対し凹凸嵌合しずれ防止される。
このようにして樹脂の硬化により可変軌道パッド10にレール12に対する支持力が生じたところで、図11(V)に示しているようにレール高さ調節用のスペーサ78を取り外す。
図13はスペーサ78を取り外した状態で可変軌道パッド10がレール12を支持した状態を表している。
以上のような本実施形態の可変軌道パッド10では、軌道パッド34のゴム膜48を可変パッド36の周壁部56に対し、係合凸部52と係合凹部70との物理的な係合に基づいて一体に組み付けているため、それらを単に接着だけで固定し組み付ける場合に比べて両者の固定及び組付けを容易に行うことができる。
また接着による固定と異なって、接着剥れにより軌道パッド34と可変パッド36とが離れてしまう恐れが無く、両者を強固に固定することができるとともにその固定の信頼性を高めることができる。
また本実施形態の可変軌道パッド10は、軌道パッド34と可変パッド36とを予め一体に組み付けたものであるため、それらの互いの位置ずれを気にすること無く、レール12とタイプレート16との間に容易に挿入でき、挿入作業性が良好であって挿入作業に要する時間を短縮化することができ、軌道パッド34及び可変パッド36の施工に要するコストを低減することができる。
更に加えて本実施形態の可変軌道パッド10の場合、可変パッド36が硬質の樹脂にて構成されているため、レール12とタイプレート16との間への挿入をより簡単に行うことができる。
また本実施形態の可変軌道パッド10は、薄肉ひれ状のゴム膜48の可撓性に基づいて軌道パッド34を上向きに押し上げ、全体の厚みを増すものであるため、樹脂液の注入による膨張によってその幅が特に狭小化することが無く、従って図15〜図18に示す従来の可変パッドと異なって、その幅を予め挿入空間の幅よりも大きくしておいてこれを折り畳んだ状態で挿入するといった必要は無く、このこともまた可変軌道パッド10の挿入性を高めている。
また本実施形態においては、可変パッド36の周壁部56を係合凹部70の位置で上部74と下部76とに分割し、そして上部74と下部76とを上下に組み付けることで係合凹部70を形成すると同時に、ゴム膜48の係合凸部52を上下に挟み込んで係合凹部70に係入状態とするものとなしてあるため、上部74と下部76とを組み付けるだけで、容易に係合凸部52と係合凹部70とを係合状態となし得て、軌道パッド34と可変パッド36、詳しくは軌道パッド34の薄肉ひれ状のゴム膜48と可変パッド36の周壁部56とを結合固定することができる。
更に本実施形態ではゴム膜48の外周端部(折曲り部50)の下面を下部76の上面に接着しており、その接着によってシール性を持たせ又は高めることができる。
尚この接着は上下方向の接着であって内外方向(図中左右方向)の接着では無く、加えてゴム膜48における外周端部の接着相手が硬質の樹脂であるため、接着を容易に行うことができる。
また本実施形態の上記係合凸部52の横断面形状は四角形状であるため、係合凹部70からの抜けをより確実に防止することができる。
更に本実施形態では、ゴム膜48を軌道パッド34の下端部から上向きに延び出させて、その外周端部即ち上端部の係合凸部52を、樹脂液の注入前の状態において上方位置にある周壁部56の係合凹部70に係入するようになしてあるため、ゴム膜48を図19に示す比較例の可変軌道パッドのように折返し形状としておかなくても、樹脂液の注入によってこれを大きく上向きに膨らませ、軌道パッド34を上昇させることができる。即ちこのようにしておくことで高さ調節機能を効果的に高めることができる。
因みに従来の可変パッドの場合、高さ調節可能な範囲が3〜14mm程度であったのが、本実施形態によれば3〜20mmの範囲内で高さ調節することが可能である。
更に本実施形態では可変パッド36の周壁部56に、可変パッド36内部に樹脂液を注入するための注入口66と、内部の空気を排出するための排気口68とを、タイプレート16に対しレール長手方向において同じ側に設けてあるため、注入口66から樹脂液を注入する作業者が同じ位置で容易に排気口68からの樹脂液の流出のし始めの時期を監視することができ、可変パッド36への樹脂液の注入作業を1人作業で行うことができる。
これにより作業に要する人件費を削減し得て、施工コストを更に低減することができる。
また樹脂液の注入と排気口68からの樹脂液の流出とを同一の作業者が行うことで、排気口68から樹脂液が流出し始めた段階で直ちに樹脂液の注入を停止でき、従って樹脂液の注入速度を速め得て注入作業自体も短縮化することができる。
次に図14(A)は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、可変パッド36の周壁部56における上部74に、下向きに延びる弾性アーム80及びその先端の掛止爪82を設ける一方、下部76に掛止段部84を設けて、そこに掛止爪82を弾性的に掛止させることで、上部74を下部76に対して組付固定するようになしたものである。
この例の場合、上部74を下部76に対して組み付けるに際し、上記実施形態のように接着固定を必要とせず、より簡単に上部74と下部76とを組付固定することができる。
尚上記実施形態及び図14(A)に示す実施形態において、上部74を下部76に組み付けるに際し、図14(B)に示しているように係合凸部52を上下方向に弾性圧縮した状態となすことができる。
このようにすれば両者の結合固定力を効果的により高強度となすことができるとともに、係合凸部52の弾性圧縮に基づいてそこにシール機能を持たせ、或いはシール性を高める機能を持たせることができる。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示である。
例えば上記係合凸部の形状はあくまで一例であって、これを他の様々な角形状となすことができるし、或いはまた可変パッドにおける周壁部の上部と下部との組付構造を上例以外の他の様々な組付構造となすことも可能である。
更に容器状を成す可変パッドを樹脂以外の他の硬質材で構成するといったことも可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
本発明の一実施形態である可変軌道パッドを施工完了状態で周辺部とともに示す図である。 図1の可変軌道パッドを単独で示す斜視図である。 図1の可変軌道パッドを各部材に分解して示す斜視図である。 図1の可変軌道パッドを示す断面図である。 図3の軌道パッドの要部を拡大して示す図である。 図3の可変パッドの要部を拡大して示す図である。 図3の軌道パッドと可変パッドとを組み付ける際の組付手順を示した図である。 可変パッドの内部に樹脂液を注入したときの可変パッドの作用を示す図である。 同実施形態の可変パッドの施工手順を示す図である。 図9に続く施工手順を示す図である。 図10に続く施工手順を示す図である。 可変パッドをレールとタイプレートとの間に挿入する手順を示す図である。 可変軌道パッドを施工完了状態で示す要部拡大図である。 本発明の他の実施形態を示す図である。 従来の可変パッド及び軌道パッドを施工完了状態で周辺部とともに示す図である。 図15における可変パッドの膨らませる前の状態を示す図である。 図15に示す状態の平面図である。 従来の可変軌道パッドの施工手順及びその問題点を説明するための図である。 本発明の先願に係る可変軌道パッドの例を比較例として示す比較例図である。
符号の説明
10 可変軌道パッド
12 レール(鉄道レール)
16 タイプレート(レール支持体)
34 軌道パッド
36 可変パッド
48 ゴム膜(弾性膜)
52 係合凸部
54 底部
56 周壁部
66 注入口
68 排気口
70 係合凹部
74 上部
76 下部
S 隙間

Claims (8)

  1. 鉄道レールとタイプレート等のレール支持体との間に挿入され、鉄道車両の走行の際の緩衝材として働くゴム等の弾性板から成る軌道パッドと、該軌道パッドとともに且つ該軌道パッドの下側において前記レールとレール支持体との間に挿入され、反応硬化型樹脂の樹脂液が内部に注入されることで厚みを増し、前記軌道パッドと前記レールとの間の隙間を埋める可変パッドとを有しており、
    前記軌道パッドには薄肉ひれ状の弾性膜が外周に沿って環状に一体に設けられているとともに、該弾性膜の外周端には上下方向に突出した形態の係合凸部が全周に亘って一体に設けられており、
    また前記可変パッドは底部と、該底部の外周端から立ち上がる環状の周壁部を備えた、前記軌道パッドよりも硬質の容器状をなしていて、該容器内部への前記樹脂液の注入により該軌道パッドを押し上げるものとされているとともに、前記周壁部には前記係合凸部を係入させて抜止めする係合凹部が該周壁部に沿って環状に設けられており、それら係合凸部と係合凹部との係合に基づいて前記軌道パッドと可変パッドとが前記挿入前において予め一体に組み付けられていることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  2. 請求項1において、前記可変パッドは樹脂にて構成されていることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記可変パッドの周壁部は、前記係合凹部の位置で上部と下部とに分割されていて、該上部と下部とを上下に組み付けることにより前記係合凹部が形成されるとともに、同時に前記弾性膜の係合凸部を上下に挟み込んで該係合凹部に係入状態とするものであることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  4. 請求項3において、前記上部と下部とは組付時に前記係合凸部を上下に弾性圧縮するものとなしてあることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  5. 請求項3において、前記下部の上面に対して前記弾性膜の外周端部が下向きに接着してあることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、前記係合凸部は横断面形状が角形状をなしていることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、前記弾性膜は前記軌道パッドの下端部から上向きに延び出しており、前記樹脂液の注入前の状態において該下端部より上方位置において前記係合凸部が前記周壁部の係合凹部に係入していることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
  8. 請求項1〜7の何れかにおいて、前記可変パッドの周壁部には前記樹脂液の注入口と、前記容器内部の空気を排出する排気口とが設けられており、且つ該排気口が前記レール支持体に対しレール長手方向において前記注入口と同じ側に設けられていることを特徴とする鉄道レール用の一体型可変軌道パッド。
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