JP4565197B2 - 反射率制御光学素子及び超薄膜光吸収増強素子 - Google Patents

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Description

本発明は、波長に応じて光の反射率や吸収率を変化させることができる光学素子に関する。
デジタル情報を記録・再生するためのCD、DVDをはじめとする各種の光記録媒体は広く普及しているが、昨今の各種技術の進歩に伴う情報量の飛躍的な増大により、これらの光記録媒体に記録することができる情報量も増大させることが求められている。
光記録媒体の記録密度を上昇させることを目的として、関連する様々な技術が開発されている。例えば特許文献1には、直径100nm以下の微小な金属粒子からなる島状金属薄膜を1つの光記録層とし、分光特性の異なる複数の島状金属薄膜と透明樹脂層とを積層することにより得られる多層膜構造を波長多重光記録媒質として用いることが記載されている。各金属薄膜の共鳴波長近傍の高エネルギー密度のレーザ光を照射することにより金属粒子が光を吸収して発熱し、周辺の透明樹脂媒体が局所的に融解もしくは変形して、レーザ照射部の反射率が変化することにより、マークを記録する。
このような光の反射や透過を利用する技術において、情報を安定して記録したり再生したりするためには、情報の記録時に、記録層を形成する媒体の反射率や透過率が可能な限り大きく変化することが重要である。この技術に関し、特許文献2には、光反射材料と、光反射材料上の光透過材料の層と、光透過層上の光吸収材料の層とを含む、光透過材料融除式三層光学的記録媒体が開示されており、これによれば、光透過層の厚みや光吸収材料層の厚みを適宜に設定することにより、光吸収材料層における光の反射率を低下させることができる。また、光吸収層を融除することにより開孔を生じさせ、下層の光反射層を露出させることによって、光吸収層の高い反射率と光吸収材料層の低い反射率との差を利用した光学的記録を行うことができる。
特許文献3には、特許文献2に記載されているような三層光学的記録媒体において、最外層に、粒径が10〜30nm程度の金属粒子が互いに5〜20nm程度離れて独立して存在した形態のいわゆるアイランド膜を利用する技術が開示されている。特許文献3では金属粒子として特に大気中での安定性に優れた金を用いている。これによると、アイランド膜にレーザ光を照射することにより、被照射箇所の周辺部が盛り上がるような形で熱的に凝集して隙間が増え、結果としてその箇所の光の吸収性が低下するため、この光学的変化を利用して光学的記録を行うことができる。
特開2002-11957号公報 米国特許第4329697号公報 国際公開第83/043327号パンフレット
特許文献3において開示されている金を用いたアイランド膜では、レーザ光を照射してアイランド膜を形成する粒子を凝集粒状化させた場合、粒状化した粒子が可視領域に強いプラズモン吸収を持つため、光の吸収率が低下する波長が限定されるのみならず、波長によっては吸収が増加してしまうという問題がある。また、金によって構成されるアイランド膜は、酸化に対しては高い安定性を備えているものの、光の吸収特性は時間経過とともに変化してしまうことが多く、光学素子として用いるうえでの安定性に欠けるという問題もあった。
また、反射率を大きく変調させることができる積層構造の光学素子は、特許文献2や特許文献3に記載されているように従来から知られていた。とはいえ、基本的構成が知られていた程度であり、その光学特性を充分に活かすうえでの最適な構成であるとは到底言えなかった。
上記課題を解決するために成された本発明に係る反射率制御光学素子は、波長に応じて光の反射率が変化する反射率制御光学素子であって、 高反射率を有する材料から成る基板と、該基板表面に形成される光透過性を有する材料から成る透明膜と、該透明膜表面に形成される所定の光吸収性を有する超薄膜と、を含んで成る反射率制御光学素子において、前記超薄膜が、平均粒径が10nm以下である金属ナノ粒子が近接している状態または接触している状態にある程度に密集することにより光学的には完全な連続膜と等価であり、熱的及び電気的には不連続である金属薄膜であり、該金属が白金元素単体、白金元素同士の合金、白金元素及びニッケルの合金のうちのいずれかから成ることを特徴とする。
また、本発明に係る反射率制御光学素子の他の態様である、超薄膜における光吸収増強素子は、上記反射率制御光学素子において、基板表面が光散乱性反射膜であることを特徴としている。
なお、本明細書において光は、可視光以外の電磁波を含むものとする。
本発明の反射率制御光学素子は、反射率が波長に応じて変化するため、反射率の変化によってデジタル情報を記録または再生する光記録媒体の信頼性を格段に向上させることができる。そして、透明膜及び超薄膜の材料やその厚みなどを適切に設定することにより、反射率が極大となる波長及び極小となる波長を自由制御することが可能であるため、広い分野にわたり応用することができる。そして、超薄膜が平均粒径が10nm以下である白金系金属ナノ粒子が近接している状態または接触している状態にある金属薄膜であるという構成により、パルスレーザ照射によって超薄膜の実質的な存在の有無を精密に制御することが可能となり、本発明の反射率制御光学素子を光記録媒体として利用する際等にはその高い分解能を利用して高密度記録を実現することが可能となる。
また、本素子の基本構成は三層から成る簡単な構造であるため、製作コストが非常に安価であるという長所も兼ね備える。
また、本発明に係る反射率制御光学素子の他の形態である光吸収増強素子は、極めて簡単な構造により、超薄膜における光の吸収効果を10倍以上に増強することができる。従って、厚みが極めて薄く、且つ光吸収能力に優れた超薄膜を形成することができる。
本発明に係る反射率制御光学素子の概略構成図。 DCスパッタ法で作製したPt超薄膜のAFM像。 図2のPt超薄膜にパルスレーザを照射した後のAFM像。 Pt超薄膜へのパルスレーザ照射前及び照射後の吸収スペクトル。 本発明に係る反射率制御光学素子の反射率を表すグラフ。 透明膜の厚みを0.5μmとした場合の反射率を表すグラフ。 透明膜の厚みを90nmとした場合の反射率を表すグラフ。 透明膜の屈折率と透明膜の厚みを変化させた場合の反射率を表すグラフ。 超薄膜の厚みと反射率の関係を表すグラフ。 本発明に係る素子において超薄膜に色素を用いた場合の反射率を表すグラフ。 3種類の異なる色素を積層して超薄膜とした場合の反射率を表すグラフ。 本発明に係る超薄膜における光吸収増強素子の概略構成図(上段)、及び光吸収増強効果の発現の説明図(下段)。 本発明に係る超薄膜における光吸収増強素子の他の構成を示す図。 超薄膜における光吸収増強素子の増強効果実験における比較例用の素子の構成図。 各比較例用素子の励起光波長と蛍光強度との関係を示すグラフ。 蛍光強度と透明膜の厚みとの関係を示すグラフ。 サンプルAg-SSの光散乱反射膜の表面粗さ(上段)、SOG表面の表面粗さ(下段)の測定結果グラフ。 サンプルAg-Sの光散乱反射膜の表面粗さ(上段)、SOG表面の表面粗さ(下段)の測定結果グラフ。 サンプルAg-SSの正反射スペクトル(左)と散乱スペクトル(右)。 サンプルAg-Sの正反射スペクトル(左)と散乱スペクトル(右)。 超薄膜における光吸収増強素子及び比較例素子の波長及び蛍光強度の関係を示すグラフ。 透明膜の厚みを変化させることにより反射率を変化させる場合の素子の構成図及び透明膜の厚みと反射率の関係を示す表。 Pt超薄膜(厚み5nm)にパルスレーザを照射して作製した干渉パターンの走査型電子顕微鏡像。 Pt超薄膜(厚み20nm)にパルスレーザを照射して作製した干渉パターンの光学顕微鏡像。 本発明に係る素子を用いて作成した回折格子の1次回折効率を示すグラフ。
符号の説明
1…基板
2…透明膜
3…超薄膜
本発明に係る反射率制御光学素子の概略図を図1に示す。本発明に係る反射率制御光学素子は、基本的に、基板1、透明膜2、超薄膜3の三層から成る。以下、各層を形成する材料について説明する。
基板を形成する材料は特に限定されないが、大きな反射率の差を得るという観点からすれば、当然のこととして、なるべく高い反射率を有する材料であることが望ましい。そのような材料の例としては、アルミニウム、金、銀といった金属がある。また、本発明において基板の厚みは限定されず、薄膜であってもバルクであってもよい。
透明膜を形成する材料は、光透過性を有する物質であれば、各種ガラス、ポリマーをはじめとしてどのようなものでも構わないが、高い反射率を得るという観点からして、なるべく透明度が高い(光吸収率が低い)ものが望ましい。また、本発明の反射率制御光学素子の光吸収増強効果を利用する際に、透明膜に例えばITO(Indium Tin Oxide;インジウムスズ酸化物)のような透明電極を利用してもよい。
後述するように、この透明膜の厚み及び屈折率によって、本発明の反射率制御光学素子の波長に応じた反射率が変化する。
超薄膜は、上記透明膜の表面に形成され、その厚みは通常は数十nm以下とする。本発明の光学素子では、基板及び透明膜のいずれにおいても、入射された光が吸収されることはほとんどない。従って、この超薄膜の存在が、反射率の大きな変化の主因となっていると考えられる。超薄膜を形成する材料は特に限定されないが、反射率の変化を大きくするためには、光吸収性が高い(後述するような本発明において好適な厚みの場合に、光吸収率が反射率を上回る)材料とするのが望ましい。
超薄膜は、金属ナノ粒子から成り、その各粒子が互いに近接している状態または接触している状態にあるような程度に密集しており、厚み方向には単層〜数層を形成し、平面方向にはほぼ一様に分布しているような金属薄膜とする。この金属薄膜においては、金属ナノ粒子の平均的な粒径が3〜10nmであることが好適である。このような構成の金属薄膜は、例えばDCスパッタ法によって作製することができる。図2に、DCスパッタ法で作製した白金(Pt)超薄膜のAFM像を示す。膜厚は約5nmである。
このような金属薄膜は、光学的には完全な連続膜と等価であり、シミュレーションにおいてバルクの光学定数を用いることができるため、素子の設計において有利である。他方、熱的及び電気的には不連続であるため、膜に沿った熱拡散が発生しにくく、導電性も低い。
超薄膜が上記のような特性を備えていることは、本発明に係る素子を光記録媒体として利用する際に有利となる。例えば、超薄膜の所定の領域にレーザ照射を行う場合のことを考える。その領域に存在する金属ナノ粒子は、照射された光のエネルギーを吸収、発熱して溶融し、複数の金属ナノ粒子が合体して凝集粒状化する。この凝集粒状化した領域においては以下の理由により光の吸収が生じないため、実質的に超薄膜が存在しない領域を形成することができる。とりわけ、熱拡散が生じにくいという特性のため、超薄膜のうち、レーザが照射された部分のみにエネルギーが集中する。従って、超薄膜の実質的な存在の有無を精細に制御することが可能となり、分解能に優れた高密度記録を実現することができる。なお、この分解能をさらに向上させるためには、レーザ照射時における熱拡散を最小に抑えるため、パルスレーザを用いるのがよい。
上記のような超薄膜を比較的容易に実現することができる金属として、白金やパラジウムといった白金元素が特に好適であることを本発明者は見いだした。白金の元素は金、銀、銅等と比較して、熱伝導率が約1/5程度と低く、且つ化学的安定性及び熱的安定性に優れている。金、銀、銅等では、超薄膜を作製する際に個々の粒子の粒径が大きくなりやすく、金属ナノ粒子の粒径を10nm以下とするのは困難である。さらに、白金元素の独立した球状ナノ粒子は可視光領域にほとんど吸収を持たないため、超薄膜の材料として使用されているとき(その可視光領域での吸収はナノ粒子の近接あるいは接触により生じる)、レーザが照射されて凝集粒状化すると、その粒状化した箇所は可視領域において透明となる。図3に図2の白金薄膜にパルスレーザを照射した後のAFM像を示す。膜状に拡がっていた白金が球状に凝集・粒状化していることが観察される。このように、レーザ照射後でも全体の数十%の面積は凝集化した粒子によって覆われている(図3)にもかかわらず、図4に示すパルスレーザ照射前及び照射後の吸収スペクトルの変化のグラフから示されるように、その光吸収性がほとんど無いことがわかる。
本発明の素子においては、白金元素は単体で用いてもよいし、合金であっても構わない。また、超薄膜の機械的強度や透明膜への付着強度を上げるために、超薄膜を形成する材料を、ニッケルのような硬い材料との合金とすることもできる。
以下、本発明に係る反射率制御光学素子の詳細構成及び超薄膜光吸収増強素子について説明する。
<透明膜の厚み>
本発明に係る反射率制御光学素子の波長に応じた反射率は、透明膜2の厚みによって変化する。図5に、基板に銀、透明膜にPVA(Poly Vinyl Alcohol:ポリビニルアルコール)、超薄膜に白金を用い、透明膜の厚みが2.6μm、超薄膜の厚みが5nmである場合の素子の反射率を測定したグラフを示す。素子が基板のみから成る場合や、基板及び透明膜から成る場合、基板及び超薄膜から成る場合と比較すると、素子が基板、透明膜、超薄膜の三層から成る場合のみにおいて反射率が著しく変化し、入射光の波長に応じて極小と極大を有する。
上記条件において、透明膜の厚みを0.5μmとした場合の反射率のグラフを図6に示す。また、透明膜の厚みを90nmとした場合の反射率のグラフを図7に示す。透明膜の厚みを小さくすることにより、反射率の極大・極小の周期が大きくなることが確認される。また、この結果は、本発明者が行ったシミュレーション結果と極めてよい一致をみた。すなわち、透明膜の厚みを適切に設定することにより、所望の波長において反射率が大きく低下する特性を有する反射率制御光学素子を設計することが可能である。
<透明膜の屈折率>
透明膜の屈折率が波長に応じた反射率の変化に及ぼす影響について調べるためのシミュレーションを行った。基板を銀、超薄膜を厚みが5nmの白金とし、可視領域の全般にわたって反射率が低下するように透明膜の屈折率及び厚さを変化させた。図8にこの場合の反射率を表すグラフを示す。透明膜の屈折率の増加とともに透明膜の厚みを減少させることにより、入射光の波長に対する反射率の変化を制御できることがわかった。また、できるだけ広い波長範囲で、反射率を大きく低下させるためには、屈折率の比較的小さな透明膜を用いるのが好ましいことが確認された。
<超薄膜の厚み>
次に、超薄膜の厚みが反射率の低下にどのように寄与するかを調べる実験を行った。基板に銀、透明膜として厚みが80nmのスピンオングラス(屈折率n≒1.3〜1.5)を用い、超薄膜(白金)の厚みを3nm〜10nmの間で変化させた。図9に結果を示す。なお、図9では1〜7の順に超薄膜の厚みが減少する。この結果から、数nmの厚みの超薄膜の存在によって反射率が大きく低下することが確認された。さらに、図示せぬシミュレーション結果も併せて考慮すると、超薄膜の厚みが大きすぎても小さすぎても反射率は全体的に上昇する傾向を示し、厚みが数nm〜数十nm程度の場合に反射率が最も低下することが確認された。ある波長における反射率が最低となるための超薄膜の最適な厚みを一般的に表すために、厚み方向の光透過率で表すと、超薄膜のその波長での光透過率が30〜60%となるように厚みを設定することが好ましいことがわかった。
<色素超薄膜>
超薄膜の材料として、金属ナノ粒子ではなく色素を使用することもできる。なお、本発明において色素とは、一般に色素と呼ばれるものに限定されず、特定の波長域の光を吸収する性質を有する材料のことを指す。これには、主成分として色素を含むような複合材料も含むものとする。色素単体では、色素膜の厚みが増しても光の吸収率はそれほど変化しない。一方、色素を本発明の素子の超薄膜に使用することにより、その光の吸収率を著しく高めることが可能となる。図10に、基板(銀)、透明膜(反射率n=1.3、厚み80nm)、色素超薄膜(厚み10nm)から成る素子の反射率のシミュレーション結果のグラフを示す。基板及び色素超薄膜のみから素子が成る場合の反射率と比較すると、透明膜が存在することによって、反射率が大きく低下することがわかる。また、このように超薄膜に色素を用いる場合も、上記のように透明膜の厚み等を適切に選択することにより、反射率の変化を制御することが可能である。
複数の異なる光吸収特性を有する色素によって超薄膜を形成することも可能である。この場合には、色素同士を混合してもよいし、各色素の層を重ねることにより超薄膜を形成してもよい。多重記録層としての応用を考慮する場合には、後者のように、各色素層が独立して機能する層構造とするのが望ましい。一つの色素層の厚みを10nm程度とすると、三層を重ねても数十nm程度の厚みにしかならないため、超薄膜の透過性に問題はない。一例として図11に、基板(銀)、透明膜(反射率n=1.3、厚み80nm)の表面に、超薄膜として、各厚みが10nmである異なる三種類の色素を層して成る素子の反射率のシミュレーション結果のグラフを示す。図11より、この素子は、各色素に固有の光吸収波長における反射率の低下が重なった反射率特性を備えることがわかる。この技術を利用することにより、適切な色素系を選択することによって波長多重記録を容易に行うことが可能となる。
[超薄膜光吸収増強素子]
上で説明したように、本発明に係る反射率制御光学素子はその構成を適切に設計することにより、反射率を極めて低くすることができる。これは、換言すれば、超薄膜における光の吸収率を非常に高めることが出来るということにほかならない。
ところで、光センサや光電変換素子などの光機能デバイスの多くは、光励起層(光吸収層)を含む積層構造を有している。光吸収層で生じた非平衡状態のエネルギーや電荷担体(電子や正孔)が層界面を横切るエネルギー移動や物質移動が重要な役割を果たすため、光吸収層の厚みは出来る限り小さいことが望ましい。そうでなければ光吸収層の内部でこれらの担体が失活してしまい、目的とする機能が発現しないためである。光吸収層の厚みを単分子層レベルとしているデバイスも少なくない。このような、光吸収層の厚みが薄く形成される典型的なデバイスの例には、酸化チタン表面に吸着した色素の光吸収を利用する色素増感太陽電池がある。しかし、単分子層レベルの色素層による光捕捉(吸収)効率は、その薄さのせいで数%〜10%程度にまで低下してしまう。これを補償するための手段として、色素増感太陽電池においては、酸化チタンをナノ粒子の集合体としたり、あるいは多孔性とすることによって色素吸着のための実効的な表面積を大きくする手法が取られている。しかし、この手法は必ずしも一般的には拡張できず、系も自ずと複雑化するという問題がある。同時にまた、コストが掛かるという問題も存在する。
一方、単分子層レベルの薄層の光吸収率を10倍以上に高めることができれば、ほぼ100%に近い光の捕捉率が得られることになり、これまでのものと比較して遙かに単純な素子構造で光機能デバイスを実現することが出来るようになる。
このような問題を解決することが可能な、超薄膜における吸収効果を飛躍的に高める構成として、本発明者は、本発明に係る反射率制御光学素子において、基板の表面を光散乱性反射膜とする構成に想到した。即ち例えば、図12に示すように、基板1の表面に光散乱性反射膜1Sを設け、 更にその光散乱性反射膜1S上に透明膜2を設け、その透明膜上に超薄膜3を設けた構成とする。本構成において超薄膜は、光吸収能力の増強という観点からして、色素を利用するのがよい。もちろん、上記反射率制御光学素子において用いる白金系の金属を用いても構わない。以下、「超薄膜」を適宜「吸収層」と呼ぶ。
この構成によれば、図12の下段に示すように、入射光が光散乱性反射膜1Sにおいて反射され、その多くが超薄膜(吸収層)3の下面において全反射される。このとき、吸収層においてエバネッセント波が生じる。このエバネッセント波は通常の光よりも、吸収層を構成する材料と強い相互作用を持つため、結果的に吸収層の吸収率が大きく増加する。また、光散乱性反射膜1S上での散乱反射と吸収層での全反射は、光を透明膜2の内部に閉じこめる効果を併せ持つため、吸収はより効率的に増強される。さらに、100nm程度の透明膜を有する三層構造で得られる数倍程度の標準的な吸収増強は、このように光散乱が生じる系においても保持される。これらの効果を総合した増強効果は著しいものであり、通常では数%程度の光吸収率しか有さない超薄膜でも、本構成によって光吸収率を10倍以上に向上させることができる。
本構成において、光散乱性反射膜1Sの最適な粗さは、透明膜の厚みに依存する。先に述べたように、本発明に係る反射率制御光学素子において反射率をなるべく低下させるため、すなわち高い吸収率を得るためには、透明膜2の屈折率はなるべく低い方が望ましく、そのときに最適な透明膜2の厚みは100nm程度である(後述する)。このことから、光散乱性反射膜1Sの粗さの上限は、十点平均粗さ(Rz)値で表記すると100nm程度である。より好適には、光散乱性反射膜1Sの粗さは、透明膜2の厚みの20%程度とするとよい。また、光散乱が有効に生じるために、光散乱性反射膜1Sにおいて高低が形成される周期は、入射光の波長と同程度であることが望ましい。このような粗さを有する反射膜は、例えばDCスパッタリング法を用いることによって比較的簡単に作製することが出来る。
また、透明膜2の内部で光散乱をより有効に生じさせ、吸収率を増加させるためには、図13に示すように、透明膜2の表面も光散乱反射膜基板と同程度の粗さを有していることが望ましい。これは、スピンオングラス(以下SOGと略記する)によって透明膜2を形成することで、自ずとこのような好適なる粗さを有する透明膜2を得ることが可能である。
続いて、上に述べた構成の反射率制御光学素子の光吸収増強効果を確認するために本発明者が実施した実験について説明する。ここでは、超薄膜(吸収層)として蛍光性有機色素を用い、その厚みを数nm程度に薄く形成した。このとき、超薄膜それ自身の光吸収率は数%以下しかない。
具体的には、蛍光性有機色素であるローダミンB(RhB)を0.1%のポリビニルアルコール水溶液に0.05mMの濃度で溶解させ、この溶液を毎分3000回転で透明膜上にスピンコートした。こうして得られた超薄膜の膜厚は約3nm程度であり、そこに含まれるRhB色素の担持量は、単位投影面積あたりの分子数として1.3〜2.0×1013/cm2であった。なお、この担持量は透明膜の表面が平滑な場合でも、荒れている場合でも前記範囲に収まった。この超薄膜それ自身の光吸収率は、最大吸収波長において1%程度である。実験では、この吸収率の増強効果をみるために、吸収率を直接測定する代わりに、同一条件で光励起したときの蛍光強度を測定した。
<比較例>
下記a〜cの構成のサンプル(図14)を作成した。
a.基板:無し、透明膜:スライドガラス(厚み:略1mm)、超薄膜:RhB
b.基板:高反射膜(Ag)、透明膜:スライドガラス、超薄膜:RhB
c.基板:高反射膜(Ag)、透明膜:SOG(厚み:約100nm)、超薄膜:RhB
上記各サンプルa〜cに対して、励起光を基板に垂直に入射させ、蛍光を超薄膜側で垂直から約40度の方向で測定した。測定結果を図15に示す。
反射膜を設けることにより、蛍光強度は4倍に増強された(a→b)。これは、超薄膜で生じた蛍光のうち、反射膜方向に向かったものが反射膜で反射すること、及び超薄膜に吸収されずに透過した入射光が反射膜で反射し、超薄膜で吸収されることで約4倍の増強がみられるという予想と合致するものである。
さらに、透明膜を厚み約100nmの超薄膜とすることによって、蛍光強度は約3倍に増強された(b→c)。これは、本発明に係る反射率制御光学素子の基本的構成が、反射率の制御とともに、吸収率増強に有効であることを実証している。
ここで、本発明者は蛍光強度と透明膜(材料:SOG、屈折率:〜1.4)の厚みとの関係を調べた。図16に示す通り、透明膜の厚みが約100nmの時に蛍光強度は最大となり、100nmを極大として厚みが増加しても減少しても蛍光強度は減少した。
<実験例>
次に、本発明に係る超薄膜の吸収増強素子として、次の構成を有するサンプルを作成し、比較例と同様に蛍光の測定を行った。
d.基板:光散乱反射膜基板、透明膜:SOG(厚み:約100nm)、超薄膜:RhB
光散乱反射膜は、DCスパッタリング法を用い、基板であるガラス上に堆積途上の銀薄膜が強くプラズマ照射される条件で作製した。基板は意図的に加熱を行わなくても、成膜中のプラズマ照射により50〜100℃に自然加熱される。なお、このときに余分な加熱を行うと、表面粗さが過剰になるので注意が必要である。
<基板表面の粗さの影響>
上記のようにして作製した粗さが有意に異なる2種類の光散乱反射膜の特性について説明する。以下、表面粗さが大きい方のサンプルをAg-SS、小さい方のサンプルをAg-Sと呼ぶ。図17に、Ag-SSについて光散乱反射膜の表面粗さ、及び100nmの厚みを有するSOG膜(透明膜)表面の表面粗さを触針式の粗さ計によって測定した結果を示す。また、図18にはAg-Sに関する同様の測定結果を示す。
この粗さ測定の結果から、次のことがわかる。
・Ag-SSのサンプルでは、光散乱反射膜の高低差は透明膜の厚みと同程度である。
・Ag-Sのサンプルでは、光散乱反射膜の高低差は透明膜の厚みの20%程度である。
・Ag-SS、Ag-Sのいずれでも、透明膜の表面粗さは、光散乱反射膜の表面粗さと比べてあまり変わらず、むしろ増加傾向すら観察される。
図19、図20にAg-SS及びAg-Sに関して、透明膜の有無時の正反射スペクトル(左)と散乱スペクトル(右)とを示す。これらのグラフより、透明膜の存在が反射特性を顕著に変化させることが理解できる。Ag-SS(図19)では、透明膜の存在によって正反射率が10〜30%低下しているのに対し、散乱反射率は殆ど変化していない。これは、正反射率が低下した分の光が透明膜内部に閉じこめられたことを意味している。
Ag-S(図20)では、透明膜が無いときの正反射率は、長波長域で80%近くに達している。それだけ粗さが小さく、故に散乱が少ないということである。しかし、透明膜が存在している場合は、正反射率はAg-SSの場合よりも顕著に減少している。これは、光の閉じ込めがより強く起こった証拠である。
以上のことから、Ag-Sの方が、AG-SSよりも強い蛍光強度を示すと言える。図21に、サンプルd(Ag-S)の蛍光強度を、サンプルa〜cの蛍光強度と共に示す。本発明に係る反射率制御光学素子の基本的構成(サンプルc)で得られる蛍光強度の約4倍もの増強が観測された。これは、単にガラス表面に超薄膜が設けられた構成(サンプルa)に比して、10倍以上もの増強効果である。
なお、Ag-SSの蛍光強度は最大で〜700程度であり、予想通り、Ag-Sと比較して増強効果は低下した。
本発明に係る反射率制御光学素子は、超薄膜の存在の有無により、反射率が大きく変化するため、高密度ROM記録にすぐさま応用することができる。また、反射率が大きく変化することは、再生光の強度を低くすることが可能であることを意味する。さらに、この反射率は、入射光の角度が40°程度にまで傾いたとしても、さほど変化しない。すなわち、記録媒体が入射光に対して多少傾いたとしても反射率にはほとんど影響がないため、再生器機における媒体の傾き制御機構を大幅に簡略化することが可能となる。
超薄膜の有無ではなく、透明膜の厚みの変化に伴い反射率が変化することを利用したデジタル情報媒体を作製することも考えられる。例えば、図22に示すように、本発明に係る反射率制御光学素子の透明膜に凹凸(ピット)を適切に形成すれば、凹部と凸部の反射率が大きく変化するため、その反射率の差を用いてデジタルデータを読み出すことが可能となる。例として、波長が532nmのレーザ光を入射する場合には、図22下段の表に示すように、透明膜の厚みが180±20nmの範囲であれば反射率が80%となり、透明膜の厚みが100±20nmの範囲であれば反射率が10%以下となる。このことは、±20nm程度の誤差のある荒い精度で凹凸が作成されていても十分に実用的であることを意味する。加えて、超薄膜の厚みもそれほど厳密である必要はなく、5〜10nm程度であればよい。もちろん、入射光の波長に合わせて透明膜の厚み等を適宜調節すればよい。
反射率が比較的狭い波長の範囲内で大きく変化する素子(図5の素子等)は、エネルギーロスの小さい反射型のマルチバンドパス光学フィルタとしての利用が可能である。また、目的に応じて他の光学フィルタと併用してもよい。
また、本発明に係る反射率制御光学素子を用いることにより、分解能に優れ、鮮明度が高い干渉縞を得ることができるため、多重デジタルホログラムに適したホログラフィック記録媒体を得ることができる。
とりわけ、分解能が高い干渉縞を得るためには、本発明に係る反射率制御光学素子において超薄膜の厚みは20nm以下とし、好適には10nm以下とするのが良い。図23に二つの分離したパルスレーザを厚み約5nmのPt超薄膜が存在する位置で干渉させて作製した干渉パターンの走査型電子顕微鏡像を示す。凝集粒状化した箇所と未変化の箇所が交互に繰り返されるストライプパターンが観察される。両箇所の境界は充分にシャープであり、最高で0.1μmレベルの空間分解能を持ちうることがわかる。このような高い空間分解能は材料として白金系の金属を用いているが故に得ることができるものである。材料として金や銀を用いた場合には、熱伝導性が高いため、どうしても空間分解能が劣ってしまう。
また、超薄膜の厚みが増すと、膜内での熱拡散が増加するため、良好な干渉パターンを得ることができなくなる。図24に膜厚20nmのPt超薄膜に対して同様のパルスレーザ照射を行った際の光学顕微鏡写真を示す。至る所でパターンが寸断されていることがわかる。
基板(銀蒸着膜)、透明膜(屈折率n=〜1.4、厚み約90nm)、白金超薄膜から成る本発明に係る素子において、白金超薄膜に532nmのパルスレーザを照射することによって約1000本/mmの干渉パターンを記録し、その一次回折効率を求めた。超薄膜の厚みを徐々に変化させた複数の素子(超薄膜の厚みは約2nm〜20nmで変化させた)に関し、干渉パターンを記録する前の反射率(横軸)及び干渉パターンを記録した後の一次回折効率(縦軸)の関係を表すグラフを図25に示す。結果として、超薄膜の厚みが増加するにつれて一次回折効率が上昇した。一次回折効率は、反射率が最小となる素子で約8%まで増加し、反射率が逆に増加して反射阻止効果が失われる領域で更に上昇を続け、最大で21%を越える一次回折効率が得られた。
この一次回折効率の増強は、超薄膜が存在している箇所(Aとする)からの反射回折光の位相と、超薄膜が実質的に除去された箇所(Bとする)の増強電場からの回折光の位相が、一次回折方向で互いに強め合うことによって生じているものと考えられる。このような関係になるためには、Aの箇所の複素反射係数の位相がBのそれと180度程度異なるのがよい。
従って、本発明に係る反射率制御光学素子において超薄膜の厚さを適宜に設定すれば、干渉パターンの記録時における高い空間分解能を維持しつつ、10%程度の高い回折効率を得ることができる。通常の構成であれば回折効率は高々2%程度であるため、この回折効率の上昇が非常に顕著であることがわかる。超薄膜の厚みを増加させるに伴い、干渉パターンの空間分解能を維持することは次第に困難となるが、回折効率はさらに上昇する。ディスプレイ、個人向けIDカード、回折格子、分光のような目的での利用では、それほど高い分解能が要求されるわけではないため、20%といった非常に高い回折効率を有するホログラフィック記録媒体を得ることもできる。
また、本発明に係る超薄膜光吸収増強素子は、上に述べたように、厚みが極めて薄く、且つ高い光吸収性を有する超薄膜を備えるものであるから、太陽電池をはじめとする効率的な光機能デバイスとして即座に応用することができる。
以上、本発明に係る反射率制御光学素子及びその応用について例を挙げつつ説明したが、その利用は上述したものに限定されないことは言うまでもなく、反射率の変化を制御可能な素子という精神内で自由に改良、変更が可能である。

Claims (9)

  1. 波長に応じて光の反射率が変化する反射率制御光学素子であって、
    高反射率を有する材料から成る基板と、
    該基板表面に形成される光透過性を有する材料から成る透明膜と、
    該透明膜表面に形成される所定の光吸収性を有する超薄膜と、
    を含んで成る反射率制御光学素子において、
    前記超薄膜が、平均粒径が10nm以下である金属ナノ粒子が近接している状態または接触している状態にある程度に密集することにより光学的には完全な連続膜と等価であり、熱的及び電気的には不連続である金属薄膜であり、該金属が白金元素単体、白金元素同士の合金、白金元素及びニッケルの合金のうちのいずれかから成ることを特徴とする反射率制御光学素子。
  2. 前記超薄膜の厚みが、所定の波長における光透過率が30〜60%となるような厚みであることを特徴とする請求項1に記載の反射率制御光学素子。
  3. 請求項1又は2に記載の反射率制御光学素子を用いた光記録媒体。
  4. 請求項1又は2に記載の反射率制御光学素子において前記透明膜の厚みを変化させることにより凹凸を形成したことを特徴とする光記録媒体。
  5. 請求項1又は2に記載の反射率制御光学素子に干渉縞を形成したことを特徴とする光記録媒体。
  6. 高反射率を有する材料から成る基板と、
    該基板表面に形成される光透過性を有する材料から成る透明膜と、
    該透明膜表面に形成される、白金元素単体、白金元素同士の合金、白金元素及びニッケルの合金のうちのいずれかから成る金属ナノ粒子が近接している状態または接触している状態にある程度に密集することにより光学的には完全な連続膜と等価であり、熱的及び電気的には不連続であって、所定の光吸収性を有する金属薄膜から成る超薄膜と、
    を含んで成る反射率制御光学素子を用いた光記録媒体において、
    前記超薄膜の所定の箇所にパルスレーザを照射して前記金属ナノ粒子を凝集させることによって光学的情報記録を行うことを特徴とする光記録媒体の情報記録方法。
  7. 表面が光散乱性反射膜である基板と、
    該基板表面に形成される光透過性を有する材料から成る透明膜と、
    該透明膜表面に形成される所定の光吸収性を有する超薄膜と、
    を含んで成り
    前記超薄膜が、白金族元素単体、白金族元素同士の合金、白金族元素及びニッケルの合金のうちのいずれかから成る金属ナノ粒子が近接している状態または接触している状態にある程度に密集した金属薄膜であり、該超薄膜において生じるエバネッセント波により該超薄膜の吸収率が増加する現象を利用することを特徴とする超薄膜光吸収増強素子。
  8. 前記透明膜の表面が、前記光散乱性反射膜と略同一の粗さを有していることを特徴とする請求項に記載の超薄膜光吸収増強素子。
  9. 前記光散乱性反射膜の粗さが前記透明膜の厚み以内であることを特徴とする請求項7又は8に記載の超薄膜光吸収増強素子。
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