JP2012132804A - 光増強素子 - Google Patents
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- G01N21/658—Raman scattering enhancement Raman, e.g. surface plasmons
Abstract
【課題】 十分に高い光増強効果の得られる光増強素子を提供すること。
【解決手段】 この光増強素子は、基板と、この基板上に形成された高反射層と、この高反射層上に形成された誘電体層と、この誘電体層上に形成された、多数の金属微粒子による増強電磁場形成層とよりなり、誘電体層の厚みが50nm以上とされている。高反射層は、銀、金、アルミニウム、銅のうちから選ばれた金属により構成されることが好ましく、さらに、高反射層における誘電体層側の表面が粗面とされていることが好ましい。また、増強電磁場形成層が、金属微粒子がランダムに配列されてなる構成とされていることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 この光増強素子は、基板と、この基板上に形成された高反射層と、この高反射層上に形成された誘電体層と、この誘電体層上に形成された、多数の金属微粒子による増強電磁場形成層とよりなり、誘電体層の厚みが50nm以上とされている。高反射層は、銀、金、アルミニウム、銅のうちから選ばれた金属により構成されることが好ましく、さらに、高反射層における誘電体層側の表面が粗面とされていることが好ましい。また、増強電磁場形成層が、金属微粒子がランダムに配列されてなる構成とされていることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、金属微粒子の局在型表面プラズモンを利用した光増強素子に関し、詳しくは、励起光照射により発光性化学種(蛍光物質)から発せられる発光(蛍光)の強度を増強すること、あるいは、励起光照射によりラマン活性化学種から得られるラマン散乱光の強度を増強することのできる光増強素子に関する。
例えば、分析対象物を励起光照射により励起させて蛍光を発生させ、その蛍光を分析することによって分析対象物の定性及び定量分析を行う蛍光分析法は、高感度分析法の一つであり、微量分析において重要な役割を果たしている。
例えば蛍光物質から発せられる蛍光は、その蛍光物質自身の特徴をよく反映するだけでなく蛍光物質周囲の環境からも影響を受けやすいため、蛍光物質を標識剤(バイオセンサ)として体内組織やDNAの鑑定に用いることも行われており、生医化学を含め、広範な分野において利用されている。
また、電界効果で励起される蛍光物質は、薄型の表示デバイスの一つとして著しい発展を続けている有機EL素子に応用されている。
このように幅広く利用されている蛍光であるが、蛍光強度は物質によって異なる。通常では蛍光強度が微弱な物質の蛍光を観測できるようになれば、その応用範囲は更に拡大することが期待される。そのため、物質の蛍光を増強することを目的とした研究が盛んに行われてきた。
蛍光増強法として、特許文献1には、サブミクロン領域の平均粒径と数十nmの高さをもつ平板型の銀超微粒子からなる島状スパッタ膜を利用する手法が開示されている。この蛍光増強法によると、銀微粒子表面と実質的に直接接触する位置におかれた化学種でも有意な発光増強が得られ、最大の増強が得られる表面からの距離は約1nmの至近距離となることから、金属による消光作用が著しく抑制され、従って、比較的光りやすい化学種の場合にも有意な発光増強が得られる、とされている。
他方、分析対象物に単波長の光(レーザー光)を照射して得られるラマン散乱光を分光してラマン散乱光のスペクトルを得るラマン分光法は、物質の同定等に利用されているが、通常、分析対象物から得られるラマン散乱光は信号が微弱であるため高感度で検出することが困難である。
近年においては、上記のような光増強素子(金属微粒子の局在型表面プラズモンを利用したもの)によって、ラマン散乱光の信号強度を大きくする表面増強ラマン散乱(SERS)の研究が進められている。
近年においては、上記のような光増強素子(金属微粒子の局在型表面プラズモンを利用したもの)によって、ラマン散乱光の信号強度を大きくする表面増強ラマン散乱(SERS)の研究が進められている。
しかしながら、従来の局在型表面プラズモンを利用した光増強素子による光増強技術は、実用的にはいまだ不十分であり、励起光として高出力かつ大型のレーザー光を照射しなければ、十分な強度の測定光(蛍光、ラマン散乱光)を得ることができないなどの問題がある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、十分に高い光増強効果の得られる光増強素子を提供することを目的とする。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、十分に高い光増強効果の得られる光増強素子を提供することを目的とする。
本発明の光増強素子は、基板と、この基板上に形成された高反射層と、この高反射層上に形成された誘電体層と、この誘電体層上に形成された、多数の金属微粒子による増強電磁場形成層とよりなり、前記誘電体層の厚みが50nm以上であることを特徴とする。
本発明の光増強素子においては、前記高反射層は、銀、金、アルミニウム、銅のうちから選ばれた金属により構成されることが好ましい。
また、本発明の光増強素子においては、前記高反射層における誘電体層側の表面が粗面とされていることが好ましい。
さらにまた、本発明の光増強素子においては、前記増強電磁場形成層は、金属微粒子がランダムに配列されてなる構成とされていることが好ましい。
本発明の光増強素子によれば、高反射層、誘電体層および増強電磁場形成層が基板上に形成されてなる多層構造とされると共に、誘電体層の厚さが特定の大きさとされていることにより、増強電磁場形成層を構成する各金属微粒子の近傍位置において、強い増強電磁場を形成することができるので、十分に高い光増強効果が得られる。
また、励起用光源として、例えばLD(半導体レーザー)やLED(発光ダイオード)といった、きわめて低出力かつ小型の光源を用いた場合であっても、所期の光増強効果を得ることができる。
さらにまた、増強電磁場形成層自体を局在型表面プラズモンによる光増強効果が支配的(優勢)となるような構造(ナノ構造)とする必要がないので、例えば、増強電磁場の形成手段として、金属微粒子の局在型表面プラズモンと、金属微粒子と高反射層との間の表面プラズモンポラリトンとの相互作用による機構を利用した従来の光増強素子のような構造的制約がなくなって構造自体が簡素化され、取り扱いも容易であり、コスト的にも有利に作製することができる。
また、励起用光源として、例えばLD(半導体レーザー)やLED(発光ダイオード)といった、きわめて低出力かつ小型の光源を用いた場合であっても、所期の光増強効果を得ることができる。
さらにまた、増強電磁場形成層自体を局在型表面プラズモンによる光増強効果が支配的(優勢)となるような構造(ナノ構造)とする必要がないので、例えば、増強電磁場の形成手段として、金属微粒子の局在型表面プラズモンと、金属微粒子と高反射層との間の表面プラズモンポラリトンとの相互作用による機構を利用した従来の光増強素子のような構造的制約がなくなって構造自体が簡素化され、取り扱いも容易であり、コスト的にも有利に作製することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光増強素子の一例における構成の概略を示す模式図である。
この実施の形態に係る光増強素子10は、例えば平板状の基板15と、この基板15の表面上に形成された高反射層20と、この高反射層20の表面上に形成された誘電体層30と、この誘電体層30の表面上に形成された、多数の金属微粒子41による増強電磁場形成層40とを含む多層構造を有する。この光増強素子10は、例えば、増強電磁場形成層40(金属微粒子41)の表面上に直接あるいはスペーサーを介して担持させた発光性化学種に対する励起光照射による発光(例えば蛍光)を増強させる、あるいは、金属微粒子41の表面上に直接あるいはスペーサーを介して担持させたラマン活性化学種に対する励起光照射によるラマン散乱光を増強させるものである。
図1は、本発明の光増強素子の一例における構成の概略を示す模式図である。
この実施の形態に係る光増強素子10は、例えば平板状の基板15と、この基板15の表面上に形成された高反射層20と、この高反射層20の表面上に形成された誘電体層30と、この誘電体層30の表面上に形成された、多数の金属微粒子41による増強電磁場形成層40とを含む多層構造を有する。この光増強素子10は、例えば、増強電磁場形成層40(金属微粒子41)の表面上に直接あるいはスペーサーを介して担持させた発光性化学種に対する励起光照射による発光(例えば蛍光)を増強させる、あるいは、金属微粒子41の表面上に直接あるいはスペーサーを介して担持させたラマン活性化学種に対する励起光照射によるラマン散乱光を増強させるものである。
基板15の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属などを例示することができる。後述するように、光増強素子10の作製工程において加熱処理(例えば200℃以上の加熱)が行われる場合には、例えばガラス、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有するものであることが好ましい。
また、基板15の高反射層20側の表面は、平面である必要はなく、例えば曲面、小球面などとされていてもよい。
また、基板15の高反射層20側の表面は、平面である必要はなく、例えば曲面、小球面などとされていてもよい。
高反射層20は、例えば、可視領域全域、または少なくとも500nm以上の波長領域、具体的には、発光性化学種およびラマン活性化学種などの分析対象物を励起させる励起光の波長域で高い反射率を有する材質であることが好ましく、具体的には例えば、銀、金、アルミニウムあるいは銅を例示することができる。
高反射層20の厚みは、可視領域全域または500nm以上の波長領域で90%以上の反射率が得られる大きさであることが好ましい。
また、高反射層20における誘電体層30側の表面は、光学的に平滑な面であってもよいが、粗面とされていることが好ましい。具体的には例えば、表面粗さRaが10〜30nm程度である荒れた面であることが好ましい。これにより、後述する実験例の結果に示されているように、一層高い光増強効果が得られる。
高反射層20の厚みは、可視領域全域または500nm以上の波長領域で90%以上の反射率が得られる大きさであることが好ましい。
また、高反射層20における誘電体層30側の表面は、光学的に平滑な面であってもよいが、粗面とされていることが好ましい。具体的には例えば、表面粗さRaが10〜30nm程度である荒れた面であることが好ましい。これにより、後述する実験例の結果に示されているように、一層高い光増強効果が得られる。
誘電体層30は、励起光に対して透光性を有する材料により構成されており、後述するように、光増強素子10の作製工程において加熱処理(例えば200℃以上の加熱)が行われる場合には、耐熱性を有する材料により構成されていることが好ましい。具体的には例えば、酸化珪素を主成分としたSOG(スピンオングラス)材料、テトラエトキシシラン(TEOS)およびジメチルシロキサンなどのシロキサン系材料などを例示することができる。また、誘電体層30がSOG材料を焼成して得られる焼成体(SOG膜)により構成されている場合には、SOG膜の表面は比較的強い疎水性を有するため、必要に応じてアルカリ処理もしくはプラズマ処理による親水化処理がなされたものであることが好ましい。
誘電体層30の厚みは、50nm以上とされ、より好ましくは60〜90nmとされる。誘電体層30の厚みが過小である場合には、後述する実験例の結果に示されるように、十分な光増強効果を得ることができない。
誘電体層30の厚みは、50nm以上とされ、より好ましくは60〜90nmとされる。誘電体層30の厚みが過小である場合には、後述する実験例の結果に示されるように、十分な光増強効果を得ることができない。
増強電磁場形成層40は、多数の金属微粒子41による単層膜により構成されていることが好ましい。
増強電磁場形成層40を構成する金属微粒子41としては、例えば銀超微粒子を好適に用いることができるが、励起光の照射により励起されて表面プラズモンを励起しうるものであればよく、例えば金、銅などが用いられてもよい。
金属微粒子41は、励起光の波長以下の大きさ、例えば断面粒径(図1における左右方向の寸法)dが30〜400nm、厚さtが5〜70nmである、例えば扁平な球形状、平板状の形状など、形状異方性を有するものを好適に用いることができる。ここに、金属微粒子41は、いずれも均一の大きさ及び形状を備えていることが望ましいが、大きさや形状に多少のばらつきがあってもよい。
増強電磁場形成層40を構成する金属微粒子41としては、例えば銀超微粒子を好適に用いることができるが、励起光の照射により励起されて表面プラズモンを励起しうるものであればよく、例えば金、銅などが用いられてもよい。
金属微粒子41は、励起光の波長以下の大きさ、例えば断面粒径(図1における左右方向の寸法)dが30〜400nm、厚さtが5〜70nmである、例えば扁平な球形状、平板状の形状など、形状異方性を有するものを好適に用いることができる。ここに、金属微粒子41は、いずれも均一の大きさ及び形状を備えていることが望ましいが、大きさや形状に多少のばらつきがあってもよい。
増強電磁場形成層40は、上記の大きさ(断面粒径,厚さ)を有する金属微粒子41が例えば2次元的にランダムに、具体的には例えば、108 〜1010個/cm2 の密度で分布し、互いに接触することなく独立した状態で配列されていることが好ましい。
また、増強電磁場形成層40は、金属微粒子41が規則的に配列されてなる構成とされていてもよい。
また、増強電磁場形成層40は、金属微粒子41が規則的に配列されてなる構成とされていてもよい。
このような増強電磁場形成層40の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属微粒子が適宜の溶媒に分散された分散液をスピンコート法により塗布して加熱する方法、ディッピングして加熱する方法、真空蒸着する方法などを好適に用いることができる。
この光増強素子10を使用するに際しては、上述したように、分析対象物が、増強電磁場形成層40上、具体的には金属微粒子41の表面上に直接あるいはスペーサーを介して担持される。ここに、分析対象物が例えば蛍光物質である場合には、蛍光物質の濃度が大きくなると、蛍光物質間で励起エネルギーが移動して非放射過程の確率が増し、蛍光の強さが減少してしまう(自己消光効果)。従って、自己消光効果をなるべく小さくするために、蛍光物質は可能な限り低濃度で(薄く)担持されることが望ましい。そして、励起光照射により分析対象物から発せられる蛍光を適宜の分光器により検出することにより分光分析が行われる。
スペーサーは、金属微粒子41の表面と分析対象物との間の距離を調整するためのものであり、例えばSOG膜などの誘電体により構成することができる。
スペーサーの厚みは、例えば10nm以下であることが好ましく、特に1nm程度、あるいはそれ以下である場合に、光増強効果が最大となる。
スペーサーの厚みは、例えば10nm以下であることが好ましく、特に1nm程度、あるいはそれ以下である場合に、光増強効果が最大となる。
而して、上記の光増強素子10によれば、高反射層20、誘電体層30および増強電磁場形成層40が基板15上に形成されてなる多層構造とされると共に、誘電体層30の厚さが50nm以上とされていることにより、増強電磁場形成層40を構成する各金属微粒子41の近傍位置において、強い増強電磁場を形成することができるので、後述する実験例の結果から明らかなように、十分に高い光増強効果が得られる。この理由としては、図2に示すように、増強電磁場形成層40を構成する各金属微粒子41の近傍位置において励起光と高反射層20による当該励起光の反射光との正の干渉が生ずる干渉場が形成され、当該干渉場の作用によって、金属微粒子41の局在型表面プラズモンによる増強電磁場(図2において破線で囲まれた領域)が一層強められるものと考えられるが、この種の、すでによく知られた干渉効果のみでは、特に実験例で示す大きな光増強率を十分に説明することはできず、金属微粒子41の局在型表面プラズモンが放射する二次的な電磁場そのものが高反射層20の存在により自己増幅的な高次の増強を受け、これによりこれまでの常識からは想像できない大きな増強電磁場が発生するものと推定される。
また、励起用光源として、例えばLD(半導体レーザー)やLED(発光ダイオード)といった、きわめて低出力かつ小型の光源を用いた場合であっても、例えば発光性化学種の蛍光、ラマン活性化学種のラマン散乱光について、十分に大きい光増強効果を得ることができる。例えば、ラマン散乱光の測定においては、エネルギー密度が10mW/cm2 以下である低出力のレーザー光を励起光として用いた場合であっても、ラマン活性化学種のラマンスペクトルを測定することができ、従って、後述する実験例において用いた測定システムのような極めて簡単な構造で、所望のラマン分光分析を高い信頼性で行うことができる。
さらにまた、増強電磁場形成層40自体を局在型表面プラズモンによる光増強効果が支配的(優勢)となるような構造(ナノ構造)とする必要がないので、例えば、増強電磁場の形成手段として、金属微粒子の局在型表面プラズモンと、金属微粒子と高反射層との間の表面プラズモンポラリトンとの相互作用による機構を利用した従来の光増強素子のような構造的制約がなくなって構造自体が簡素化され、取り扱いも容易であり、コスト的にも有利に作製することができる。
また、励起用光源として、例えばLD(半導体レーザー)やLED(発光ダイオード)といった、きわめて低出力かつ小型の光源を用いた場合であっても、例えば発光性化学種の蛍光、ラマン活性化学種のラマン散乱光について、十分に大きい光増強効果を得ることができる。例えば、ラマン散乱光の測定においては、エネルギー密度が10mW/cm2 以下である低出力のレーザー光を励起光として用いた場合であっても、ラマン活性化学種のラマンスペクトルを測定することができ、従って、後述する実験例において用いた測定システムのような極めて簡単な構造で、所望のラマン分光分析を高い信頼性で行うことができる。
さらにまた、増強電磁場形成層40自体を局在型表面プラズモンによる光増強効果が支配的(優勢)となるような構造(ナノ構造)とする必要がないので、例えば、増強電磁場の形成手段として、金属微粒子の局在型表面プラズモンと、金属微粒子と高反射層との間の表面プラズモンポラリトンとの相互作用による機構を利用した従来の光増強素子のような構造的制約がなくなって構造自体が簡素化され、取り扱いも容易であり、コスト的にも有利に作製することができる。
以下、本発明に係る光増強素子の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
〔光増強素子(10)の作製〕
図1に示す構成に従って、誘電体層の厚みが下記表1に従って調整された6つの光増強素子を次のようにして作製した。
基板(15)として1cm角の大きさのスライドガラスを用い、このスライドガラスの表面上に、標準的な抵抗加熱型真空蒸着法により高反射層(20)としての銀膜を形成した。得られた銀膜の厚さは0.2μm以上で透過率は可視領域で実質的にゼロであった。また実測反射率は、可視領域のほぼ全域で98%以上の、バルク銀の光学定数を用いて理論的に計算した値と一致する、高い反射率を示すことがわかった。
次いで、市販のジメチルシロキサン溶液をエタノールで適宜希釈した溶液を、銀膜の粗面化された表面上に3000回転でスピンコートし、その後200〜250℃のホットプレート上で数分間加熱処理することにより誘電体層(30)としての誘電体膜(屈折率1.3〜1.4)を形成した。誘電体膜の厚みは、AFMによる段差測定により実測した、スピンコートに用いた溶液濃度と形成する透明誘電体膜の厚さの関係(検量線)に基づいて適宜調整した。ここに、市販のジメチルシロキサン溶液の原液をそのままスピンコートした場合に得られる最大膜厚は180nmであり、大きな膜厚の誘電体膜を形成する際には、上記の処理を複数回繰り返し行った。そして、得られた誘電体膜の表面(上面)に対して、プラズマ処理による親水化処理を行った。
そして、保護膜フリー銀ナノ粒子(体積平均粒径約15nm)のアセトン分散液(濃度約0.4wt%)を透明誘電体膜の親水化処理した表面上に3000回転でスピンコートし、その後約250℃のホットプレート上で数分間加熱することにより、増強電磁場形成層(40)としての銀超微粒子単層膜を形成した。得られた銀超微粒子単層膜における銀超微粒子の断面粒径(d)は平均で約150nm、厚さ(t)は平均で約30nmであり、108 〜1010個/cm2 の密度で分布した状態で二次元的にランダムに配列されてなる。また、各銀超微粒子は、XRD(X線回折)測定によりバルク銀なみの高い結晶性を有することが確認された。
〔光増強素子(10)の作製〕
図1に示す構成に従って、誘電体層の厚みが下記表1に従って調整された6つの光増強素子を次のようにして作製した。
基板(15)として1cm角の大きさのスライドガラスを用い、このスライドガラスの表面上に、標準的な抵抗加熱型真空蒸着法により高反射層(20)としての銀膜を形成した。得られた銀膜の厚さは0.2μm以上で透過率は可視領域で実質的にゼロであった。また実測反射率は、可視領域のほぼ全域で98%以上の、バルク銀の光学定数を用いて理論的に計算した値と一致する、高い反射率を示すことがわかった。
次いで、市販のジメチルシロキサン溶液をエタノールで適宜希釈した溶液を、銀膜の粗面化された表面上に3000回転でスピンコートし、その後200〜250℃のホットプレート上で数分間加熱処理することにより誘電体層(30)としての誘電体膜(屈折率1.3〜1.4)を形成した。誘電体膜の厚みは、AFMによる段差測定により実測した、スピンコートに用いた溶液濃度と形成する透明誘電体膜の厚さの関係(検量線)に基づいて適宜調整した。ここに、市販のジメチルシロキサン溶液の原液をそのままスピンコートした場合に得られる最大膜厚は180nmであり、大きな膜厚の誘電体膜を形成する際には、上記の処理を複数回繰り返し行った。そして、得られた誘電体膜の表面(上面)に対して、プラズマ処理による親水化処理を行った。
そして、保護膜フリー銀ナノ粒子(体積平均粒径約15nm)のアセトン分散液(濃度約0.4wt%)を透明誘電体膜の親水化処理した表面上に3000回転でスピンコートし、その後約250℃のホットプレート上で数分間加熱することにより、増強電磁場形成層(40)としての銀超微粒子単層膜を形成した。得られた銀超微粒子単層膜における銀超微粒子の断面粒径(d)は平均で約150nm、厚さ(t)は平均で約30nmであり、108 〜1010個/cm2 の密度で分布した状態で二次元的にランダムに配列されてなる。また、各銀超微粒子は、XRD(X線回折)測定によりバルク銀なみの高い結晶性を有することが確認された。
〔試料(分析対象物)の担時〕
ローダミン6G(Rh6G)色素の希薄エタノール溶液を、光増強素子における銀超微粒子単層膜の表面上に3000回転でスピンコートすることにより、色素分子を光増強素子における銀超微粒子の表面上に担持させた。ここに、光増強素子の表面に担持される色素分子の密度とスピンコートに用いた溶液の色素濃度との関係は、ローダミン6Gの濃度が0.3mMである場合に、色素分子の密度は7×1013個/cm2 である。
ローダミン6G(Rh6G)色素の希薄エタノール溶液を、光増強素子における銀超微粒子単層膜の表面上に3000回転でスピンコートすることにより、色素分子を光増強素子における銀超微粒子の表面上に担持させた。ここに、光増強素子の表面に担持される色素分子の密度とスピンコートに用いた溶液の色素濃度との関係は、ローダミン6Gの濃度が0.3mMである場合に、色素分子の密度は7×1013個/cm2 である。
〔蛍光およびラマン散乱光の測定〕
上記のようにして作製した各光増強素子について、励起光照射により試料から発せられる蛍光を図3に示す構成の測定システムにより測定し、ガラス上に同色素を直接スピン担持した場合に測定される蛍光強度を基準とする増強度を算出すると共に、試料からのラマン散乱強度を測定した。結果を下記表1に示す。
図3において、符号50は、蛍光の測定における励起用光源として用いた出力150Wのキセノンランプであり、当該キセノンランプ50から放射される光を分光器「SPG−120S」(島津製作所製)52により分光して、波長530nmの光を励起光として光増強素子10に照射する。53A,53Bは集光レンズ、54Aはフィルタである。また、51は、ラマン散乱光の測定における励起用光源として用いた、出力1mW未満のHe−Neレーザー(波長632.8nm)であり、フィルタ54Bを介して非集光(エネルギー密度約300mW/cm2 )もしくは反集光(デフォーカスされた,エネルギー密度約10mW/cm2 以下)励起光として光増強素子10に照射する。この測定システムにおいて、光増強素子10は回転自在に設けており、励起光の入射角度を設定可能に構成した。蛍光の測定では、励起光を光増強素子10に対して垂直に入射させ、光増強素子10に担持された色素から45°の角度(極角)方向に放射された蛍光を、光増強素子10の表面から約13cm離れた位置に配置した集光レンズ(口径35mm)53Cによって、電子冷却型ダイオードアレイ検出器(浜松ホトニクス製)55の受光ヘッド56にフィルタ54Cを介して集光した。また、ラマン散乱光の測定においては、励起光を光増強素子10に対して45°の入射角度で入射させ、光増強素子10に担持された色素による90°の角度方向に散乱されるラマン散乱光を、集光レンズ53Cによって、電子冷却型ダイオードアレイ検出器55の受光ヘッド56にフィルタ54Cを介して集光した。
上記のようにして作製した各光増強素子について、励起光照射により試料から発せられる蛍光を図3に示す構成の測定システムにより測定し、ガラス上に同色素を直接スピン担持した場合に測定される蛍光強度を基準とする増強度を算出すると共に、試料からのラマン散乱強度を測定した。結果を下記表1に示す。
図3において、符号50は、蛍光の測定における励起用光源として用いた出力150Wのキセノンランプであり、当該キセノンランプ50から放射される光を分光器「SPG−120S」(島津製作所製)52により分光して、波長530nmの光を励起光として光増強素子10に照射する。53A,53Bは集光レンズ、54Aはフィルタである。また、51は、ラマン散乱光の測定における励起用光源として用いた、出力1mW未満のHe−Neレーザー(波長632.8nm)であり、フィルタ54Bを介して非集光(エネルギー密度約300mW/cm2 )もしくは反集光(デフォーカスされた,エネルギー密度約10mW/cm2 以下)励起光として光増強素子10に照射する。この測定システムにおいて、光増強素子10は回転自在に設けており、励起光の入射角度を設定可能に構成した。蛍光の測定では、励起光を光増強素子10に対して垂直に入射させ、光増強素子10に担持された色素から45°の角度(極角)方向に放射された蛍光を、光増強素子10の表面から約13cm離れた位置に配置した集光レンズ(口径35mm)53Cによって、電子冷却型ダイオードアレイ検出器(浜松ホトニクス製)55の受光ヘッド56にフィルタ54Cを介して集光した。また、ラマン散乱光の測定においては、励起光を光増強素子10に対して45°の入射角度で入射させ、光増強素子10に担持された色素による90°の角度方向に散乱されるラマン散乱光を、集光レンズ53Cによって、電子冷却型ダイオードアレイ検出器55の受光ヘッド56にフィルタ54Cを介して集光した。
スライドガラス(基板)上に上記と同様の方法により銀超微粒子単層膜を形成することにより、比較用の光増強素子を作製して、上記実験例1と同様に、蛍光強度およびラマン散乱強度の測定を行ったところ、蛍光増強度は最大20倍程度であり、ラマン散乱強度は測定不能であった。
以上の結果から明らかなように、銀膜(高反射層)、誘電体膜(誘電体層)および銀超微粒子単層膜(増強電磁場形成層)がスライドガラス(基板)上に形成されてなる多層構造とされると共に、誘電体膜の厚みが50nm以上の大きさとされていることにより、高い蛍光増強効果およびラマン散乱光増強効果が得られることが確認された。
<実験例2>
実験例1における光増強素子の作製工程において、銀膜(高反射層)における誘電体膜側の表面に対して加熱処理による粗面化処理を行い当該表面を光学的に粗面としたことの他は、上記と同様の方法により、実験例1に係る光増強素子と同一の構成を有する光増強素子を作製した。ここに、銀膜の表面の表面粗さRaは、AFM測定により、10〜30nm程度であった。
そして、実験例1と同様の方法により、蛍光強度およびラマン散乱強度の測定を行った。結果を図4に示す。図4において、(A)は蛍光スペクトル、(B)はラマンスペクトルであり、曲線(イ)が銀膜における誘電体膜側の表面が粗面とされた光増強素子によるものであり、曲線(ロ)が同表面が光学的に平滑な面とされた光増強素子(実験例1において作製されたもの)によるものである。
実験例1における光増強素子の作製工程において、銀膜(高反射層)における誘電体膜側の表面に対して加熱処理による粗面化処理を行い当該表面を光学的に粗面としたことの他は、上記と同様の方法により、実験例1に係る光増強素子と同一の構成を有する光増強素子を作製した。ここに、銀膜の表面の表面粗さRaは、AFM測定により、10〜30nm程度であった。
そして、実験例1と同様の方法により、蛍光強度およびラマン散乱強度の測定を行った。結果を図4に示す。図4において、(A)は蛍光スペクトル、(B)はラマンスペクトルであり、曲線(イ)が銀膜における誘電体膜側の表面が粗面とされた光増強素子によるものであり、曲線(ロ)が同表面が光学的に平滑な面とされた光増強素子(実験例1において作製されたもの)によるものである。
以上の結果から明らかなように、銀膜(高反射層)における誘電体膜側の表面を粗面とすることにより、銀膜における同表面が光学的に平滑な面とされた構造の光増強素子よりも、蛍光強度およびラマン散乱強度(ラマン信号)がともに高くなり、一層高い光増強効果が得られることが確認された。
10 光増強素子
15 基板
20 高反射層
30 誘電体層
40 増強電磁場形成層
41 金属微粒子
50 キセノンランプ
51 He−Neレーザー
52 分光器
53A,53B,53C 集光レンズ
54A,54B,54C フィルタ
55 電子冷却型ダイオードアレイ検出器
56 受光ヘッド
15 基板
20 高反射層
30 誘電体層
40 増強電磁場形成層
41 金属微粒子
50 キセノンランプ
51 He−Neレーザー
52 分光器
53A,53B,53C 集光レンズ
54A,54B,54C フィルタ
55 電子冷却型ダイオードアレイ検出器
56 受光ヘッド
Claims (4)
- 基板と、この基板上に形成された高反射層と、この高反射層上に形成された誘電体層と、この誘電体層上に形成された、多数の金属微粒子による増強電磁場形成層とよりなり、 前記誘電体層の厚みが50nm以上であることを特徴とする光増強素子。
- 前記高反射層は、銀、金、アルミニウム、銅のうちから選ばれた金属により構成されることを特徴とする請求項1に記載の光増強素子。
- 前記高反射層の誘電体層側の表面が粗面とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光増強素子。
- 前記増強電磁場形成層は、金属微粒子がランダムに配列されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光増強素子。
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