JP4562302B2 - 軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法に関し、更に詳しくは、大きな加工減面率で加工しても座屈が起こらず、また、座屈を起こすことなく加工を開始できる直線案内装置用の軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図15は、工作機械等に組み込まれて工作物担持用のテーブル等を案内する直線案内装置の一例を示すものである。この直線案内装置は、長手方向に沿って転動体転走面121aが形成された軌道レール121と、多数の転動体122を介してこの軌道レール121に装着すると共に内部に転動体122の無限循環路を備えたスライド部材123とから構成されている。
【0003】
こうした軌道レール121は、通常、所定の穴形状を有する加工ダイスを通して加工ダイス前方に引き抜きする引き抜き加工によって製造されている。軌道レールの素材は、通常、高強度の鋼線であるので、引き抜き加工による軌道レールの製造は、軌道レールの形状を徐々に変化させるように、焼鈍と引き抜き加工を繰り返すことによって行われている。このとき使用される加工ダイスは、引き抜き時の加工性と断線頻度を考慮して、10〜20%程度の加工減面率のものが使用されている。
【0004】
このような従来からの製造方法においては、複数回の引き抜き加工が必要とされるので、一度断線が起こると著しく生産性が低下するという問題、また、工程が多くしかも複雑であるのでその製造には熟練が要求されるという問題、さらに、複雑な形状を出しにくいという問題があった。
【0005】
ところで、こうした引き抜き加工における問題を解決することができるものとして、加工ダイス4の前後に引き抜き装置2と押出し装置3を配した押出し引き抜き方法および装置が知られている(図12を参照。)。この押出し引き抜き装置は、引き抜き加工のみによっては加工し難い高強度の素材を加工する場合、塑性加工性の乏しい難加工性の素材を加工する場合、複雑な形状の製品を製造する場合または複合材料を使用した製品を製造する場合に好ましく用いられている。具体的には、鋼線の連続製造、アルミニウム合金等の非鉄金属の異形製品の製造、またはチタン合金等の難加工性材料を用いた製品の製造、等々に使用されている。こうした押出し引き抜き装置を鋼線の加工に使用した例が特開平3−275213号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上述の押出し引き抜き装置を使用し、被加工素材6として円形断面の丸鋼材を使用し、大きな加工減面率での一回の塑性加工を施すことにより、図10に示すような複雑な形状と高い寸法精度が要求される軌道レール7の製造を試みた。
【0007】
しかしながら、従来型の押出し引き抜き装置を使用して軌道レール7を製造しようとすると、図14(c)に示すように、製造途中において、押出し装置2と加工ダイス4との間で被加工素材6の座屈が起こり、その生産がしばしば中断してしまうという第1の問題があった。
【0008】
本発明者らは、こうした第1の問題を解決すべく鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。すなわち、製造途中で発生する座屈の主な要因は、(イ)押出し装置3から押し出される被加工素材6の芯と加工ダイス孔の芯がずれていること、(ロ)加工ダイス4の傾斜により被加工素材6が加工ダイス4に真っ直ぐ押し付けられていないこと、(ハ)ティース(被加工素材6をつかむ爪のこと。)が被加工素材6をつかんで押し出す押出し装置3を使用する場合に、そのティースが被加工素材6に僅かな変形を与えていること、(ニ)被加工素材6に僅かなくせがついていること、等であることを見いだした。そして、そうした要因が不可避的に生じることによって加工ダイス4と押出し装置3との間の空間で曲がりが発生し、製造途中で被加工素材6に座屈が起こることを知見した。特に、軌道レール7の製造には大きな加工応力を必要とする高強度の鋼材が使用されるので、大きな加工減面率での一回の塑性加工によって軌道レール7を製造しようとすると、そうした座屈が発生しやすくなるという実態があり、製造上極めて大きな課題となっていた。
【0009】
さらに、スタート時にあっては、被加工素材6から口付け部112に変化する口付け終端部113が加工ダイス4を通過できずに加工ダイス4の入口で座屈が発生して(図14(b)を参照。)、スムーズに生産を開始することができないという第2の問題があった。
【0010】
本発明者らは、こうした第2の問題を解決すべく鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。すなわち、図14(b)に示すような加工ダイス4の入口における口付け終端部113での座屈の発生は、その口付け終端部113が、図13に示す加工ダイス孔106の上下方向の幅の広い部位104、105に対する変形応力よりも、加工ダイス孔106の左右方向の凸部102、103に対する変形応力が大きいことに基づくものであることを知見した。こうした現象によって、被加工素材6は、より変形応力の小さい加工ダイス孔106の上下方向に逃げるように変形し、座屈が起こることを見いだした。
【0011】
本発明は、上記の各問題を解決するために前記知見に基づいてなされたものであって、大きな加工減面率で加工しても被加工素材の座屈が起こらず、また、座屈を起こすことなく加工を開始できる直線案内装置用の軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の軌道レールの製造装置の発明は、上記第1の問題を解決すべくなされたものである。すなわち、引き抜き装置と、押出し装置と、それらの間に設けられて被加工素材を所定の断面形状に加工する加工ダイスとを備えてなる押出し引き抜き装置を用いた軌道レールの製造装置であって、前記押出し装置と前記加工ダイスとの間に、当該押出し装置から押し出された被加工素材を当該加工ダイスに対して芯ずれなく保持する案内部材が設けられ且つ当該案内部材の内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状であり、前記案内部材は、フランジ部を有し、前記押出し装置側の外形の先端にテーパー部分を備え、内周面にR形状のベアリング部を備えることに特徴を有する。
【0013】
この発明によれば、押出し装置と加工ダイスとの間に、被加工素材をその加工ダイスに対して芯ずれなく保持する案内部材が設けられ且つその案内部材の内面形状が押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と同一形状であるので、被加工素材の座屈の発生を防ぐ適切な位置に、線ぶれなくその被加工素材を保持することができる。そのため、被加工素材を加工ダイスに対して芯ずれなく保持することができるので、軌道レールを製造する際の座屈の発生を抑えることができる。この軌道レールの製造装置によれば、大きな加工減面率での一回の塑性加工を、製造途中での座屈を起こすことなく行うことができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【0014】
請求項2の軌道レールの製造装置の発明は、上記第2の問題を解決すべくなされたものである。すなわち、引き抜き装置と、押出し装置と、それらの間に設けられて被加工素材を所定の断面形状に加工する加工ダイスとを備えてなる押出し引き抜き装置を用いた軌道レールの製造装置であって、前記加工ダイスの入口側には、当該加工ダイスに隣接する案内ダイスが設けられ、当該案内ダイスの内面形状が、前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状であり、前記案内ダイスの内面形状は、前記被加工素材の形状と一致する領域と、前記被加工素材の形状よりも大きい領域とを備え、前記加工ダイスと前記案内ダイスとが、間座を介して一体的に固定されてなることに特徴を有する。
【0015】
この発明によれば、加工ダイス入口側に隣接して設けられた案内ダイスは、その内面形状が押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状であるので、特にスタート時において、被加工素材がより変形応力の小さい任意の方向に変形して逃げるのを妨げることができる。その結果、口付け終端部が加工ダイスを通過できずに加工ダイス入口で被加工素材が座屈するのを防ぐことができる。従って、この軌道レールの製造装置によれば、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【0017】
この発明によれば、加工ダイスと案内ダイスとが間座を介して一体的に固定されているので、それらを一つの座屈防止ダイスとして用いることができると共に、口付け終端部が長く形成された場合であっても、座屈の発生を抑制することができる。その結果、加工ダイスと案内ダイスとの位置ずれを考慮することなく、軌道レールを安定して生産することができる。
【0020】
請求項3の軌道レールの製造方法の発明は、上記第1の問題を解決すべくなされたものである。すなわち、加工ダイスの前後に設けられる押出し手段と引き抜き手段とによって、被加工素材を押出し引き抜き加工して所定の形状の軌道レールを製造する軌道レールの製造方法であって、前記押出し手段によって押し出された被加工素材は、当該押出し手段と前記加工ダイスとの間に設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内部材により、当該加工ダイスに対して芯ずれなく保持されながら押出し引き抜き加工され、前記案内部材は、フランジ部を有し、前記押出し装置側の外形の先端にテーパー部分を備え、内周面にR形状のベアリング部を備えることに特徴を有する。
【0021】
この発明によれば、被加工素材は、先ず、押出し手段と加工ダイスとの間に設けられた案内部材により、加工ダイスに対して芯ずれなく保持される。そして、被加工素材は、案内部材の作用によって、線ぶれや芯ずれなく加工ダイスに導かれて押出し引き抜き加工される。そのため、被加工素材は、座屈が生じない適切な位置に保たれながら押出し引き抜き加工されるので、製造途中の座屈を極力防止することができ、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【0022】
請求項4の軌道レールの製造方法の発明は、上記第2の問題を解決すべくなされたものである。すなわち、加工ダイスの前後に設けられる押出し手段と引き抜き手段とによって、被加工素材を押出し引き抜き加工して所定の形状の軌道レールを製造する軌道レールの製造方法であって、前記被加工素材の口付け部または被加工素材が、前記加工ダイスの入口側に隣接して設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内ダイスにより案内されながら押出し引き抜き加工され、前記案内ダイスの内面形状は、前記被加工素材の形状と一致する領域と、前記被加工素材の形状よりも大きい領域とを備え、前記加工ダイスと前記案内ダイスとが、間座を介して固定されてなり、前記押出し手段によって押し出された被加工素材は、当該押出し手段と前記案内ダイスとの間に設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内部材により、前記加工ダイスに対して芯ずれなく保持されながら押出し引き抜き加工されることに特徴を有する。
【0023】
この発明によれば、被加工素材は、先ず、加工ダイスの入口側に隣接して設けられ且つその内面形状が押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内ダイスにより案内されながら加工ダイスに導かれる。そして、加工ダイスに導かれた被加工素材は、その案内ダイスによって、より変形応力の小さい任意の方向に変形して逃げるのを妨げられながら押出し引き抜き加工される。そのため、被加工素材は、加工ダイス入口での座屈の発生が妨げられた状態に維持されつつ軌道レールの製造を開始させることができる。従って、この軌道レールの製造方法によれば、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができるので、極めて効率的に軌道レールを製造を開始することができる。
【0025】
この発明によれば、被加工素材は、押出し手段と案内ダイスとの間に設けられ且つその内面形状が押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と同一形状からなる案内部材により、加工ダイスに対して芯ずれなく保持される。そして、被加工素材は、案内部材の作用によって、線ぶれや芯ずれなく加工ダイスに導かれて押出し引き抜き加工される。その結果、被加工素材は、座屈が生じない適切な位置に保たれながら押出し引き抜き加工されるので、製造途中の座屈を極力防止することができる。従って、この軌道レールの製造方法によれば、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができると共に、座屈を起こすことなくその製造を維持することができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
本発明の軌道レール7の製造装置1、1’は、図1及び図2に示すように、引き抜き装置2と、押出し装置3と、それらの間に設けられて被加工素材6を所定の断面形状に加工する加工ダイス4と、を少なくとも有する押出し引き抜き装置である。こうした本発明の軌道レールの製造装置1、1’において、上記第1の問題を解決すべくなされた第1態様の軌道レールの製造装置1(図1を参照。)にあっては、押出し装置3と加工ダイス4との間に設けられた案内部材16を有することに特徴があり、上記第2の問題を解決すべくなされた第2態様の軌道レールの製造装置1’(図2を参照。)にあっては、加工ダイス4の入口側に隣接して設けられた案内ダイス5を有することに特徴がある。
【0028】
先ず、本発明の軌道レールの製造装置1、1’の主要部を構成する押出し引き抜き装置について説明する。
【0029】
押出し引き抜き装置は、被加工素材6を加工ダイス4に押し付けつつ引き抜きを行う装置であり、図10に示すような複雑な断面形状の軌道レール7を好ましく製造することができる。この装置は、押出し装置3の大きな押出し圧力によって、被加工素材6を加工ダイス4に押し付けることができる。そのため、引き抜き装置2の引き抜き張力のみでは断線が発生して製造が困難であった大きな加工減面率での加工を行うことができる。また、大きな押出し圧力が加えられるので、複雑な加工ダイス形状であっても、被加工素材6を加工ダイス4の隅々にまで流動させることができ、複雑な形状を出すことができる。
【0030】
引き抜き装置2は、加工ダイス4の前方に配置される。この装置により、加工ダイス4を通過して所定の形状に加工された軌道レール7を引き抜くことができる。なお、連続引き抜き可能な引き抜き装置2であることが好ましい。
【0031】
図1及び図2に示す引き抜き装置2は、連続引き抜き可能な引き抜き装置である。この引き抜き装置2は、無限軌道を用いた無限軌道型であり、軌道レール7をつかんで引き抜くティース9(爪のこと。)が無限軌道の外周に設けられている。この引き抜き装置2によれば、その無限軌道がスプロケット10によって無限軌道運転し、連続的に軌道レール7を引き抜くことができる。引き抜き張力は、軌道レール7を挟むティース9を油圧調節等された任意の圧力で加圧保持しつつ所定の速度で引き抜くことによって加えられる。軌道レール7をつかむティース9の形状や材質は、軌道レール7に変形やキズを付けずに加圧保持できる形状と材質であることが好ましい。
【0032】
また、ドローベンチ式の引き抜き装置としてもよい。一般的なドローベンチは、チャックでつかんで限られた長さを引き抜くだけで連続加工することができないことから、連続引き抜き加工を可能にさせるチャッキング機構を採用することが好ましい。
【0033】
こうした引き抜き装置2は、所定の形状に加工された軌道レール7を所定の速度で引き抜くように制御される。引き抜き速度は、軌道レール7の生産量と連動するものであり、加工減面率、引き抜き張力、押出し圧力、加工ダイス形状等によって任意に設定することができる。
【0034】
押出し装置3は、加工ダイス4の後方に配置され、被加工素材6を加工ダイス4に押し付けるための装置である。この押出し装置3を引き抜き装置2と協働して使用することによって、大きな加工減面率での塑性加工を可能とすることができる。さらに、引き抜き加工のみでは起こりやすかった大きな引き抜き張力に基づいた断線をなくすことができる。
【0035】
この押出し装置3も、上述の引き抜き装置2と同様に、連続押出し可能な装置であることが好ましく、例えば、図1及び図2に示すような無限軌道を用いた無限軌道型にすることができる。
【0036】
無限軌道を用いた無限軌道型の押出し装置3は、被加工素材6をつかんで押し出すティース9(爪のこと。)が無限軌道の外周に設けられている。この押出し装置3によれば、その無限軌道がスプロケット10によって無限軌道運転されて連続的に被加工素材6を押し出すことができる。押出し応力は、被加工素材6を挟むティース9を油圧調節等された任意の圧力で加圧保持しつつ予め設定された所定の圧力となるように加えられる。被加工素材6をつかむティース9の形状や材質は、被加工素材6に変形やキズを付けずに加圧保持できる形状と材質であることが好ましい。被加工素材6は、通常、丸鋼が使用されるので、円弧溝、V字溝、台形溝その他の形状の溝を有するティース9とすることができる。
【0037】
押出し装置3は、所定の値に制御された引き抜き速度に追従させて所定の加工減面率で押出し引き抜き加工を行うことができるように、被加工素材6を、所定の押出し応力で加工ダイス4に押し付けるように制御される。
【0038】
加工ダイス4は、図1及び図2に示すように、引き抜き装置2と押出し装置3の間に設けられる。加工ダイス4は、第1態様の製造装置1においては後述する案内部材16と一体的に組み合わされて座屈防止装置20を構成し(図1、図4及び図7を参照。)、第2態様の製造装置1’においては後述する案内ダイス5と一体的に固定されて座屈防止ダイス15を構成する(図2、図4及び図8を参照。)。被加工素材6は、この加工ダイス4のアプローチ部17とベアリング部18(加工ダイス孔部)を通過することによって、所定の断面形状からなる軌道レール7に加工される。
【0039】
加工ダイス4は、鋼材の引き抜き加工等に一般的に使用されているWC−Co系の超硬合金で作製される。加工ダイス4の形状は、製品となる軌道レール7の寸法と同じであることが好ましいが、加工時の寸法変化を見越して調整することもできる。本発明においては、図10に示すような複雑な断面形状からなる軌道レール7を製造するので、設計上の寸法と加工後の寸法とを測定して加工ダイス4の孔寸法を調整することが好ましい。
【0040】
加工ダイス4で被加工素材6を加工する際には、潤滑剤が使用される。潤滑剤は、被加工素材6と加工ダイス4との潤滑を高めて、焼き付きや大きな摩擦抵抗の発生を抑制させることができる。潤滑剤としては、従来から使用されている市販の潤滑剤を好ましく使用することができ特に限定されない。潤滑剤は、加工ダイス4の入口側に投入され、具体的には図4に示す一体化した座屈防止装置20の丸穴23から投入することができる。
【0041】
次に、案内部材16について詳細に説明する。
【0042】
案内部材16は、第1の問題を解決するための特徴的な構成であり、第1態様の製造装置1および第2態様の製造装置1’において、押出し装置3と加工ダイス4との間に設けられる。特に、第2態様の製造装置1’においては、押出し装置3と、加工ダイス4及び案内ダイス5から主に構成される座屈防止ダイス15との間に設けられる。
【0043】
この案内部材16は、押出し装置3から押し出された被加工素材6を加工ダイス4に対して芯ずれなく保持する機能を有するものである。案内部材16は、被加工素材6の軸芯と加工ダイス孔の軸芯とを一致させるように設けられ、被加工素材6を、座屈が起こらない適切な位置に保持する。このように設けられた案内部材16は、連続的に加工される被加工素材6を、加工ダイス孔の軸芯と合致させつつ線ぶれや芯ぶれを防いで加工ダイス4に供給することができる。こうした案内部材16は、押出し装置3から押し出された被加工素材6を加工ダイス4に対して芯ずれなく保持する機能を有するものであれば、その形状や態様は特に限定されない。
【0044】
ここでいう軸芯(芯と同じ意味である。)とは、被加工素材6の中心または重心のことであり、また、加工ダイス孔部の中心または重心のことである。例えば、被加工素材6が円形断面からなる丸鋼材である場合には、通常、その円形断面の中心(重心と同じ。)となる。また、加工ダイス孔部の形状が後述の図10に示すような形状である場合には、通常、その重心となる。なお、その加工ダイス孔部の形状によっては、被加工素材6及び又は加工ダイス孔部の重心または中心と、座屈が起こらない被加工素材6及び又は加工ダイス孔部の軸芯とが必ずしも一致しない場合もある。そのような場合には、座屈が起こらない実験値をもって軸芯とし、被加工素材6の軸芯と加工ダイス孔部の軸芯とを一致させる。
【0045】
案内部材16は、被加工素材6の進行方向から見た内面形状を、押出し装置3から押し出された被加工素材6の断面形状と同一形状とすることが好ましい。押出し装置3から押し出された被加工素材6は、そうした内面形状を有する案内部材16によってしっかりと保持されるので、案内部材16を通過した後の被加工素材6に線ぶれや芯ぶれを起こすことがない。そのため、被加工素材6は芯ずれなく加工ダイス4に導かれ、座屈を起こすことなく押出し引き抜き加工される。なお、通常の被加工素材6は丸鋼であるので、被加工素材6の進行方向から見た案内部材16の内面形状は、その丸鋼と同じ径の円形にすることが好ましい。
【0046】
図3は、被加工素材6として丸鋼を使用した場合の案内部材16の一例を示す断面図である。図3(a)に示す案内部材16は、押出し装置3から押し出された丸鋼の断面形状と同じ径の孔形状を有する超硬加工ダイスである。このときの加工ダイス径は、丸鋼の径に対して、+2%〜−3%の範囲であることが好ましい。孔径をこの範囲内にすることによって、被加工素材6である丸鋼を、加工ダイス4に対してより一層芯ずれなく保持することができる。また、案内部材16を、ネジ止め可能なフランジ部分を有した図3(b)に示す形状にすることもできる。
【0047】
このような案内部材16は、上述した加工ダイス4と同様に、WC−Co系の超硬合金で作製することが好ましい。また、案内部材16は、そのベアリング部18の長さLを例えば5mm程度にして、被加工素材6に接触する面積を小さくし、さらに、ベアリング部18の形状をR形状とすることが好ましい。このような形状のベアリング部18を有する案内部材16は、接触する被加工素材6との間の抵抗が小さくなるので、より好ましく被加工素材6を加工ダイス4に案内することができる。
【0048】
また、その案内部材16を、図9に示すように、複数のローラー加工ダイスによって構成することもできる。ローラー加工ダイスは、通常使用されている各種のローラー加工ダイスや、カセットローラー加工ダイス19等を組み合わせることによって使用することができる。この場合においては、被加工素材6の進行方向から見た各ローラ加工ダイスで構成される内面形状を、押出し装置3から押し出された被加工素材6の断面形状と同一形状となるようにする。
【0049】
さらに、案内部材16として、上述の加工ダイスやローラー加工ダイスの他に、スリップガイドを使用することもできる。スリップガイドは、特に限定されるものではないが、摩耗しにくい材質からなるものであり、被加工素材6を芯ぶれなく保持して加工ダイス4に導くことができるものであればよい。
【0050】
こうした案内部材16は、高い剛性が要求され、たわんだり、傾いたり、がたついたりしないように、しっかりと固定されていることが好ましい。これが不十分だと、加工ダイス孔の軸芯と被加工素材6との軸芯とを一致させることができないので、座屈の発生を十分に抑制することができないことがある。案内部材16を剛性よく固定する方法としては、図3に示すように、案内部材16に多くのボルト穴25を設けておき、図4に示した固定フランジ22に直接固定することが好ましい。
【0051】
加工ダイス4と被加工素材6との芯ずれを防いで座屈を防止するために、図4に示すように、加工ダイス4と案内部材16とを一体的に組み合わせた座屈防止装置20を採用したり、加工ダイス4及び後述する案内ダイス5を有する座屈防止ダイス15と、案内部材16とを一体的に組み合わせた座屈防止装置20を採用することが好ましい。こうした座屈防止装置20は、加工ダイス4又は座屈防止ダイス15と、加工ダイス4又は座屈防止ダイス15を装着するダイスホルダー21と、加工ダイス4又は座屈防止ダイス15を固定する固定フランジ22と、固定フランジ22に固定される案内部材16とによって一体的に組み立てられてなるものである。この座屈防止装置20によれば、加工ダイス4又は座屈防止ダイス15と案内部材16とが、ボルト締め等の固定手段によって固定される。そして、加工ダイス孔の軸芯と案内部材16で案内される被加工素材6の軸芯とが一致するように作製されている。そのため、案内部材16を通った被加工素材6の軸芯は、常に加工ダイス孔の軸芯と一致するので、座屈が起こることがない。また、多くのボルトによって剛性良く強固に固定されているので、連続して加工した場合でも座屈を起こすことなく安定して軌道レール7を製造することができる。こうしたボルト締めによる強固な固定方法は、従来のキー結合の場合のようなガタの発生が起こらないので、座屈の発生をより一層抑制することができる。
【0052】
なお、図3(a)(b)及び図4に示すように、案内部材16は、その押出し装置3側の先端にテーパー部分24を備えていることが好ましい。こうしたテーパー部分24は、図1及び図2に示す無限軌道との接触を避けながら、押出し装置3との距離をできるだけ狭めることができる。その結果、押出し装置3の出口部分と案内部材16との間で被加工素材6の軸芯のずれや線ぶれをなくすことができるので、座屈の発生をより一層抑制することができる。
【0053】
こうした案内部材16の作用によって、軌道レール7を製造する際に起こる被加工素材6の座屈の発生を抑えることができる。こうした座屈の抑制は、従来よりも大きな引き抜き速度又は及び大きな押出し応力に基づいた押出し引き抜き加工を可能にさせる。そして、より大きな押出し応力で連続加工を行っても、被加工素材6に座屈が起こらない。すなわち、座屈が発生するまでの荷重(座屈荷重)を向上させることができるので、より大きな加工減面率で加工することができる。その結果、40〜70%という高い加工減面率で被加工素材6を連続的に効率よく加工することができる。
【0054】
次に、案内ダイス5について詳細に説明する。
【0055】
案内ダイス5は、第2の問題を解決するための特徴的な構成であり、第2態様の製造装置1’において、加工ダイス4の入口側にその加工ダイス4と隣接するように設けられる。
【0056】
この案内ダイス5は、軌道レール7の製造開始時において、口付け終端部113が加工ダイス4に到達して変形抵抗が増大した場合に、被加工素材6がより変形応力の小さい任意の方向(図13においては上下方向。)に変形して逃げるのを妨げるように作用する。こうした作用によって、口付け終端部113が加工ダイス4を通過できずに加工ダイス入口で被加工素材6が座屈するのを防ぐことができる。なお、この案内ダイス5は、上述のように、加工ダイス4の入口側にその加工ダイス4と隣接するように設けられて上述の作用効果を発揮するものであれば、その形状や設置形態については特に限定されるものではない。
【0057】
このような案内ダイス5は、上述した加工ダイス4及び案内部材16と同様に、WC−Co系の超硬合金で作製することが好ましい。また、案内ダイス5は、そのベアリング部18の長さLを例えば5mm程度にして、被加工素材6に接触する面積を小さくすることが好ましい。さらに、ベアリング部18の形状をR形状とすることが好ましい。このような形状のベアリング部18を有する案内ダイス5は、接触する被加工素材6との間の抵抗が小さくなるので、より好ましく被加工素材6を加工ダイス4に案内することができる。
【0058】
案内ダイス5の内面形状については、押出し装置3から押し出された被加工素材6の断面形状と略同一形状であることが好ましい。こうした内面形状を有する案内ダイス5は、より変形応力の小さい任意の方向に、被加工素材6が変形して逃げるのを妨げるように作用する。そして、口付け終端部113が加工ダイス4を通過できずに加工ダイス入口で被加工素材6が座屈するのを防止することができる。
【0059】
このとき、略同一形状とは、案内ダイス5の形状と被加工素材6の形状とが一致する形状、案内ダイス5の形状よりも被加工素材6の形状が僅かに大きい形状、または、案内ダイス5の形状の一部が被加工素材6の形状と一致し、その他の部分は被加工素材6の形状の方が僅かに大きい形状である場合をいう。なお、被加工素材6の形状が僅かに大きい場合とは、通常、案内ダイス5に対して0〜+3%の範囲に相当する場合をいうが、その程度は加工ダイス4の形状にも関係するので、特にこの値に限定されるわけではない。
【0060】
なお、案内ダイス5の形状と被加工素材6の形状とが一致する場合は、被加工素材6は案内ダイス5に接触するので、若干接触抵抗が生じるが、ぐらついたりがたついたりすることがない。
【0061】
図6は、使用した加工ダイス4および案内ダイス5の一例を示すそれぞれの正面図である。図6に示した案内ダイス5の内面形状は、領域Aと領域Bにおいては丸鋼材からなる被加工素材6と一致する形状としているが、領域Cと領域Dにおいては左右に膨らむようにその内面形状をわずかに大きくしている。
【0062】
このとき、案内ダイス5の形状と被加工素材6の形状が一致する上下方向の領域Aと領域Bにおいては、被加工素材6と案内ダイス5との間に接触抵抗が生じてぐらついたりがたついたりすることがない。そのため、図6(a)に示す加工ダイス4で加工される場合において、被加工素材6が、より変形応力が小さい上下方向に変形して逃げるのを妨げることができる。一方、被加工素材6の形状よりも案内ダイス5の形状の方がわずかに大きい左右方向の領域Cと領域Dにおいては、被加工素材6と案内ダイス5との間に大きな接触抵抗が生じないので、問題のない範囲で若干ぐらついたりがたついたりすることがある。しかし、図6(a)に示す加工ダイス4で加工される場合において、被加工素材6は、変形応力が大きい左右方向に変形して逃げることはないので、接触抵抗の小さいこうした領域(C、D)を設けることによって、案内ダイス5と被加工素材6と接触抵抗の増大を防ぐことができる。
【0063】
従って、案内ダイス5の内面形状は、こうした点を考慮しつつ、被加工素材6の断面形状に応じて任意に設計することが好ましい。
【0064】
案内ダイス5は、加工ダイス4とは別個のダイスとして作製することができるが、加工ダイス4と一体的に作製することが好ましい。従って、加工ダイス4と案内ダイス5とを別個に作製して使用する場合には、それらを隣接させて配置することが好ましい。また、加工ダイス4と案内ダイス5とに位置ずれが生じないように固定することが好ましい。そうした固定は、ねじ止め等で行うことができるが、嵌合、焼きばめ等の方法であってもよい。
【0065】
特に本発明においては、図5に示すように、加工ダイス4と案内ダイス5とを間座13を介して一体的に作製することが好ましい。間座を設けることによって、被加工素材6の口付け終端部113が長く形成された場合においても、被加工素材6を確実に案内ダイス6に接触させることができるので、座屈の発生を極力抑制することができる。その結果、加工ダイス4と案内ダイス5との位置ずれを考慮することなく、軌道レール7を安定して生産することができる。
【0066】
また、間座13を介するか否かを問わず案内ダイス5と加工ダイス4とを一体的に固定した場合には、それらを一つの座屈防止ダイス15として用いることができるので、加工ダイス4と案内ダイス5との位置ずれを考慮することなく、軌道レール7を安定して生産することができる。このとき、座屈防止ダイス15を構成する加工ダイス4、案内ダイス5、間座13等は、ねじ止めや焼きばめ等の固定方法で接合される。
【0067】
上述の案内ダイス5を備えた座屈防止ダイス15を用いて軌道レール7の製造を開始する際には、先ず、丸鋼材からなる被加工素材6を図14(a)に示す形態と同様の形態に口付け加工する。口付け加工は、被加工素材6が加工ダイス4の孔を容易に通過できるようにその先端を細くさせる加工である。本発明においては、引き抜き装置2の長さの半分程度の長さとなるように口付け加工することが好ましい。口付け加工には、通常、スェージングマシン等が利用され、略円形に加工される。次いで、引き抜き装置2による口付け部112の引き抜きが開始され、被加工素材6の押出し引き抜き加工が始まって、軌道レール7が製造される。このとき、口付け終端部113が加工ダイス4に到達すると、被加工素材6の変形応力が一気に増大する。しかしながら、本発明においては、案内ダイス5の作用によって、被加工素材6が座屈を起こすことなく軌道レール7の製造が開始される。なお、上述のように、間座13を介して加工ダイス4と案内ダイス5が一体化している場合には、長い口付け終端部113を有する場合であっても、被加工素材6の座屈を極力抑制することができる。
【0068】
なお、第2態様の製造装置1’においては、押出し装置3と、加工ダイス4および案内ダイス5から主に構成される座屈防止ダイス15との間に、案内部材16をさらに設けることが好ましい。この案内部材16の作用は、既に上述した通りである。
【0069】
次に、座屈防止装置を装着したダイス角度可変装置について説明する。
【0070】
図7及び図8は、第1態様及び第2態様の製造装置1、1’に好ましく適用されるダイス角度可変装置8である。本発明においては、ダイス角度可変装置8内に座屈防止装置20を装着し、加工ダイス4の角度を調整できるように構成してもよい。このダイス角度可変装置8は、引き抜き装置2によって引き抜かれる軌道レール7の軸心と加工ダイス孔の軸心とを任意に調整して、加工ダイス出口で発生する軌道レール7の曲がりを防止するための装置である。なお、ここでいう軸芯の意味も上述と同じである。また、第2態様の製造装置1’においては、加工ダイス4と案内ダイス5は通常一体化して座屈防止ダイス15を構成しているので、ダイス角度可変装置8によって座屈防止ダイス15の角度が調整されることとなる。
【0071】
ダイス角度可変装置8の具体的な構成については特に限定されるものではなく、引き抜き加工において一般的に採用されているダイス角度可変装置と同様の構成にすることができる。図7及び図8に示すダイス角度可変装置8は、加工ダイス4又は座屈防止ダイス15を備える座屈防止装置20と、その加工ダイス4の角度を変化させるために座屈防止装置20全体の角度を調整するための4本の調整ねじ12と、座屈防止装置20の角度を可変できるようにそれらを保持する装着部材11とから構成されてなるものである。引き抜き加工時の軌道レール7の曲がりは、軌道レール7の断面形状、加工減面率、引き抜き速度、押出し応力等々を考慮しつつ、調整ねじ12で加工ダイス角度を任意に調整して防ぐことができる。
【0072】
軌道レール7の製造装置に供される被加工素材6としては、例えばS55C等のような、従来から直線案内装置の軌道レール用の素材として好ましく用いられていた材質からなる丸鋼材を使用することができる。使用される丸鋼材は、加工される軌道レール7の形状に応じた直径のものが任意に選定される。比較的細い丸鋼材が使用される場合には、通常、コイルとして供給され、繰り出し装置に掛けられて押出し装置3に供される。このとき、図11に示すような直線矯正装置31を通して押出し装置3に供することが好ましい。矯正された丸鋼材を使用すると、より一層座屈の発生を防止することができる。
【0073】
第1態様及び第2態様に係る本発明の軌道レールの製造装置1、1’および軌道レールの製造方法によれば、図10に示すような複雑な形状を有する軌道レール7を、製造開始時ないし製造途中において、座屈なく、大きな加工減面率で効率的に製造することができる。また、引き抜き加工と押出し加工とからなる加工方法を採用するので、所望の形状を容易に出すことができる。
【0074】
また、引き抜き装置2の出口以降には、軌道レール7の精度をさらに向上させるための直線矯正装置や、所定の形状の軌道レール7に曲げ加工する曲げ加工装置を設けることもできる。さらに、軌道レール7を所定の寸法に切断する切断装置を設けることもできる。
【0075】
また、押出し装置3の入り口以前には、コイル状の被加工素材6を繰り出すサプライスタンドや、直線矯正装置31を設けることができる。また、ピンチローラーによる繰り出し装置を設けることもできる。特に、直線矯正装置31は、押出し装置3の手前で被加工素材6のたわみやうねりを取り除くことができるので、被加工素材6の座屈の発生防止に効果的である(図11を参照。)。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0077】
(実施例1)
被加工素材6として、直径21mmのS55C丸鋼材のコイルを用いた。軌道レールの製造装置1としては、図1に示すような第1態様の押出し引き抜き加工装置を使用した。引き抜き力を9ton、押出し力を12tonとし、加工速度を20m/分に設定した。案内部材16は、被加工素材6と同一径の超硬加工ダイスを用い、加工ダイス4と共に座屈防止装置20内に剛性よく強固に固定した。座屈防止装置20に投入する潤滑剤としては、市販の乾式潤滑剤を使用した。加工減面率を55%とし、図10に示す形状の軌道レール7を製造した。得られた軌道レール7には、焼き付き、割れ、断線が起こらず、その製造中に座屈は発生しなかった。
【0078】
一方、上記の案内部材16を取り外して同様に軌道レールを製造した。座屈がしばしば発生したので、加工速度と加工減面率を小さくしていった。座屈を発生させずに軌道レールを製造することができた条件は、引き抜き力12ton、押出し力8tonとし、加工速度5m/分、さらに、加工減面率は40%であった。
【0079】
(実施例2)
被加工素材6として、直径13.5mmのS55C丸鋼材のコイルを用いた。軌道レールの製造装置1としては、図2に示すような第2態様の押出し引き抜き加工装置を使用した。何れも超硬製で、加工ダイス4と案内ダイス5とが間座13を介して一体化された図5および図6に示す形状からなる座屈防止ダイス15を使用した。投入する潤滑剤としては、市販の乾式潤滑剤を使用した。加工減面率を55%とし、図10に示す形状の軌道レール7を製造した。
【0080】
先ず、S55C丸鋼材をスェージングマシンで所定の長さ口付け加工し、直径6.9mmの口付け部112を形成した。次いで、引き抜き装置2による口付け部112の引き抜きを開始し、丸鋼材の押出し引き抜き加工を開始して軌道レールの製造を開始した。なお、製造条件としては、引き抜き力を4.5ton、押出し力を4tonとし、加工速度を20m/分に設定した。
【0081】
この実施例によれば、口付け終端部113が加工ダイス4に到達した軌道レール7の製造開始時において、座屈を起こさず軌道レール7を製造することができた。
【0082】
(実施例3)
上述の実施例2において、案内部材16をさらに取り付けて軌道レール7を製造した。案内部材16は、その押出し装置3側の先端にテーパー部分24を備えてなるものを使用して押出し装置3との距離を縮めると共に、座屈防止ダイス15と押出し装置3の中間位置に設けた。案内部材16は、被加工素材6と同一径の超硬ダイスを用い、座屈防止ダイス15共に座屈防止装置20内に剛性よく強固に固定した。
【0083】
得られた軌道レール7には、焼き付き、割れ、断線が起こらず、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができると共に、座屈を起こすことなくその製造を継続させることができた。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、第1態様に係る本発明の軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法によれば、座屈の発生を防ぐ適切な位置に被加工素材を保持できるので、軌道レールを製造する際の座屈の発生を抑えることができる。この軌道レールの製造装置は、大きな加工減面率での一回の塑性加工を、座屈を起こすことなく行うことができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。特に、本発明においては、案内部材の芯と加工ダイスの芯を一致させてそれらを一体的に組み合わせるので、製造中での芯ずれを起こすことなく、安定して生産することができる。
【0085】
また、第2態様に係る本発明の軌道レールの製造装置および軌道レールの製造方法によれば、製造開始時において、被加工素材が、より変形応力の小さい任意の方向に変形して逃げるのを妨げることができるので、口付け終端部が加工ダイスを通過できずに加工ダイスの入口で座屈するのを防ぐことができる。従って、この軌道レールの製造装置および製造方法によれば、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【0086】
また、被加工素材をその加工ダイスに対して芯ずれなく保持する案内部材を設けることによって、被加工素材の座屈の発生を防ぐ適切な位置にその被加工素材を保持をすることができるので、製造途中における被加工素材の座屈の発生を抑えることができ、第1の問題と第2の問題を同時に解決することができる。
【0087】
従って、この軌道レールの製造装置および製造方法によれば、大きな加工減面率での塑性加工を、座屈を起こすことなく開始することができると共に、座屈を起こすことなくその製造を維持することができるので、極めて効率的に軌道レールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軌道レールの製造装置の第1の態様の一例を示す概略正面図である。
【図2】本発明の軌道レールの製造装置の第2の態様の一例を示す概略正面図である。
【図3】案内部材の一例を示す断面図である。
【図4】加工ダイス又は座屈防止ダイスと案内部材とを一体化した座屈防止装置の一例を示す側面図である。
【図5】加工ダイスと案内ダイスとを一体的に固定した座屈防止ダイスの一例を示す横断面図である。
【図6】加工ダイスおよび案内ダイスの一例を示すそれぞれの正面図である。
【図7】加工ダイスと案内部材とを有する座屈防止装置を装着したダイス角度可変装置の一例を示す斜視断面図である。
【図8】加工ダイス及び案内ダイスを一体化させた座屈防止ダイスと案内部材とを有する座屈防止装置を装着したダイス角度可変装置の一例を示す斜視断面図である。
【図9】カセットローラー加工ダイスを案内部材として使用した場合の一例を示す概略斜視断面図である。
【図10】軌道レールの断面形状の一例を示す断面図である。
【図11】矯正装置の一例を示す概略斜視図である。
【図12】従来の軌道レールの製造装置の一例を示す概略斜視図である。
【図13】被加工素材が加工ダイス孔の左右方向の凸部に強く押し当てられる形態を示す説明図である。
【図14】従来型の押出し引き抜き装置を使用して軌道レールを製造した際の座屈の発生の態様を示す説明図である。
【図15】工作機械等に組み込まれて工作物担持用のテーブル等を案内する直線案内装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、1’ 軌道レールの製造装置
2 引き抜き装置
3 押出し装置
4 加工ダイス
5 案内ダイス
6 被加工素材
7、121 軌道レール
8 ダイス角度可変装置
9 ティース
10 スプロケット
11 装着部材
12 調整ねじ
13 間座
15 座屈防止ダイス
16 案内部材
17、107 アプローチ部
18、108 ベアリング部
19 カセットローラー加工ダイス
20 座屈防止装置
21 ダイスホルダー
22 固定フランジ
23 丸穴
24 テーパー部分
25 ボルト穴
31 直線矯正装置
102、103 左右方向の凸部
104、105 上下方向の部位
106 ダイス孔
121a 転動体転走面
122 転動体
123 スライド部材
L ベアリング部の長さ
Claims (4)
- 引き抜き装置と、押出し装置と、それらの間に設けられて被加工素材を所定の断面形状に加工する加工ダイスとを備えてなる押出し引き抜き装置を用いた軌道レールの製造装置であって、
前記押出し装置と前記加工ダイスとの間に、当該押出し装置から押し出された被加工素材を当該加工ダイスに対して芯ずれなく保持する案内部材が設けられ且つ当該案内部材の内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状であり、
前記案内部材は、フランジ部を有し、前記押出し装置側の外形の先端にテーパー部分を備え、内周面にR形状のベアリング部を備えることを特徴とする軌道レールの製造装置。 - 引き抜き装置と、押出し装置と、それらの間に設けられて被加工素材を所定の断面形状に加工する加工ダイスとを備えてなる押出し引き抜き装置を用いた軌道レールの製造装置であって、
前記加工ダイスの入口側には、当該加工ダイスに隣接する案内ダイスが設けられ、当該案内ダイスの内面形状が、前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状であり、
前記案内ダイスの内面形状は、前記被加工素材の形状と一致する領域と、前記被加工素材の形状よりも大きい領域とを備え、
前記加工ダイスと前記案内ダイスとが、間座を介して一体的に固定されてなることを特徴とする軌道レールの製造装置。 - 加工ダイスの前後に設けられる押出し手段と引き抜き手段とによって、被加工素材を押出し引き抜き加工して所定の形状の軌道レールを製造する軌道レールの製造方法であって、
前記押出し手段によって押し出された被加工素材は、当該押出し手段と前記加工ダイスとの間に設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内部材により、当該加工ダイスに対して芯ずれなく保持されながら押出し引き抜き加工され、前記案内部材は、フランジ部を有し、前記押出し装置側の外形の先端にテーパー部分を備え、内周面にR形状のベアリング部を備えることを特徴とする軌道レールの製造方法。 - 加工ダイスの前後に設けられる押出し手段と引き抜き手段とによって、被加工素材を押出し引き抜き加工して所定の形状の軌道レールを製造する軌道レールの製造方法であって、
前記被加工素材の口付け部または被加工素材が、前記加工ダイスの入口側に隣接して設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内ダイスにより案内されながら押出し引き抜き加工され、前記案内ダイスの内面形状は、前記被加工素材の形状と一致する領域と、前記被加工素材の形状よりも大きい領域とを備え、前記加工ダイスと前記案内ダイスとが、間座を介して固定されてなり、
前記押出し手段によって押し出された被加工素材は、当該押出し手段と前記案内ダイスとの間に設けられ且つその内面形状が前記押出し装置から押し出された被加工素材の断面形状と略同一形状からなる案内部材により、前記加工ダイスに対して芯ずれなく保持されながら押出し引き抜き加工されることを特徴とする軌道レールの製造方法。
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