JP2677408B2 - 金属棒の連続加工機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、ダイス後方の挟み押込み機構とダイス前方
の挟み引抜き機構とにより金属棒を連続的に加工する装
置に関するものである。

［従来の技術］ 従来から、金属棒を連続的に細く加工するには、所定
径を有するダイスを通してダイス前方へ引抜きする方法
が一般的であるが、この手段では通常20〜30％ずつ減面
するので、素材をより細く加工するためには幾台ものダ
イスと引抜き機とを組合せて並べる必要があり、操業中
に断線を起こすと著しい生産性低下を余儀なくされると
共に、設備が複雑で大がかりとなるので作業の調整を行
なうには非常な熟練を必要とされる。

一方、上記手段より簡単な手段として、例えば、特公
昭61−28410号などにより知られているが、この手段は
ダイス前方で引抜き力を、後方で押込み力を与えること
によって破断なく高減面加工を可能とした鋼線の連続引
抜き機であるが、この手段の素材押付け機構は素材とホ
イール間の摩擦と、素材とセグメント間の摩擦、との差
によって発生する押込み力を主体とするものである。第
６図は上記の如き従来手段に用いられている装置の一態
様例を示す模式図であって、素材１はガイドロール23,2
3′を介してホイール21と、セグメント22との間に導入
される。セグメント22の終端部22′の接線方向に押出す
ために、回転駆動されるホイール21には素材１がはまる
溝を有しており、鋼線を該ホイール溝に押付けるセグメ
ント22は押付け機構24を有する複数個のセグメント22に
分離構成されている。また、セグメント終端部22′に隣
接してテーパ穴を有するダイス６を形成し、その前方に
巻取り機25を設置せしめて、ホイール21の回転とセグメ
ント22の押付け力によって発生する押込み力、および巻
取り機25の引抜き力によって、鋼線の連続加工が可能な
機構とした手段が採用されている。この結果、ホイール
21を回転駆動させることによって素材１は、ホイール21
の半径方向にダイス６を介して押出され、その前方で引
抜き力を与える巻取り機25に製品として巻取られる。

［発明が解決しようとする課題］ しかしながら、このような従来手段では、押込み力を
得るための手段としてホイールとセグメントとの溝を素
材の形状寸法等に合わせた加工や熱処理をしなければな
らず、特に素材が直線状をなしているものとなるとホイ
ールとセグメントとの間へ導入することがきわめて困難
となる。また、ホイールやセグメントの局部に摩耗や疵
を生じたりすると、全体ないしは、一部を交換しなけれ
ばならず交換が大がかりで煩雑となる。

また、鋼線に加工後引抜き力を与えるための巻取り機
に製品として巻取ると、後で直線状にして使用する際に
曲げ癖がそのまま残って矯直する必要性がでてくる。

さらに、上記のような従来手段によれば素材の加工中
に何等かの状況によって、引抜き力低下が生じると押出
し力優先となり異常な押出し力が素材に加わり、ダイス
手前で素材が座屈し、その結果、ダイスとセグメントの
間隙部に素材が入り込み部材の破損を免れず、降伏応力
の高い素材および、高減面率の加工が不可能となる。

［課題を解決するための手段］ そこで、本発明者らは、このような上記従来手段の欠
点を解消し、難加工金属棒や異形断面金属棒さらには直
線状金属棒においてもかかる手段の適用を可能とするこ
とについて種々検討の結果、加工ダイス穴型中心を同一
軸線において、ダイス後方の素材挟み押込み機構と、ダ
イス前方の加工金属棒挟み引抜き機構とを加工機に用い
て、製品形状および寸法の変化に応じて、前記挟み押込
み機構により金属棒押込み圧力を適宣変化させることに
よって、金属棒の破断や座屈の生じない高減面加工を可
能とするもので、特に難加工金属棒や異形断面金属棒に
押込み力を有効に与えることのできる加工機を提供する
ものである。

［発明の構成・作用］ すなわち本発明は、加工ダイス穴型中心を同一軸線に
おいて、ダイス後方に回転駆動される送給ロールを複数
個内蔵した押込みコンテナーの対を１組以上設けた素材
挟み押込み機構と、ダイス前方に加工金属棒のチャッキ
ング機構を内蔵して相互に往復運動する２組の引抜きコ
ンテナーを設けた挟み引抜き機構とを組み合わせて、前
記挟み押込み機構の送給ロールのトルクと加圧機構の加
圧力とによって発生する素材への後方圧力、および挟み
引抜き機構の２組へ引抜きコンテナーの相互往復運動の
際チャッキング機構が加工金属棒に前方応力のみを作用
させることによって、金属棒の連続加工を可能としたこ
とを特徴とする加工機である。

また、前記発明の押込みコンテナーは、素材が通過さ
れる円弧溝を同一軸線に沿って形成し、送給ロールは素
材に後方圧力を与えるために素材の円周面と接触する円
弧溝を同一軸線に面して有し、該押込みコンテナーに内
蔵されていることを特徴とする、金属棒の連続加工機で
ある。

以下に本発明を詳述する。

第１図は本発明における金属棒1,1′の加工ダイスブ
ロック２の前方の挟み引抜き機構３と加工ダイスブロッ
ク２の後方の挟み押出し機構４の構成を示す模式図、ま
た第２図は本発明における加工ダイスブロック断面形状
の一態様例を示す模式図、第３図は本発明における引抜
きコンテナー断面形状の一態様例を示す模式図、第４図
は本発明における押込みコンテナーの一部断面形状の一
態様例を示す模式図、第５図は第４図矢視Ａ−Ａ′線に
沿う断面図である。

第１図において、金属棒素材１はガイドロール23,2
3′を介して一対の相互に向かい合った押込みコンテナ
ー16,16′のコンテナー溝18,18′との間に導入される。
この場合のコンテナー溝18,18′は第４図に示す如く加
工ダイスの穴型中心軸５に平行してしかも、送給ロール
17,17′の円弧溝とほぼ同一面で形成されている。また
この場合の、送給ロール17,17′はそれぞれ独立で回転
駆動されるので、素材１は、素材１と送給ロール17,1
7′との間に発生する摩擦力により、向かい合った押込
みコンテナー16,16′の溝18,18′の中心と加工ダイス６
の穴型中心との同一軸線５上において後方押出し圧力を
与えられ、該軸線５に沿って移動する。また、押込みコ
ンテナー16,16′に油圧等による加工機構19,19′より任
意の圧力を加圧することによって、素材１と送給ロール
16,16′との間に発生する摩擦力が変化し、後方押出し
圧力を適宣変えて与えることも可能である。

また、第２図において６はテーパ穴を有する加工ダイ
ス、８はダイス６の反力盤である。

また、第１図において11,11′はチャッキング機構を
それぞれ内蔵して各々交互に往復運動する機構を有する
引抜きコンテナーで、これの構造を示すのが第３図であ
る。即ち、加工ダイス６を通過してきた加工金属棒１′
に滑りを生じないような引抜き力を与えるために、油圧
等による加圧機構10′の加圧力によりチャッキング機構
10とチャック反力盤９との間で加工金属棒１′の加圧保
持する構成としてある。引抜きコンテナー11の往復運動
は駆動モーター12の回転力をタイミングベルト13を伝達
し、さらにボールネジ14を介して行われ、しかも、加工
金属棒１′への引抜き応力付与は、引抜きコンテナー1
1,11′とが交互に行うので、チャッキング機構10も引抜
き時のみ加工金属棒１′に加圧力を作用させる構成とし
てある。このような機構により連続的な加工において常
に加工金属棒１′に引抜き力を与えることが可能とな
る。

15は加工金属棒１′が引抜き力を安定して、チャッキ
ング機構10の中心と加工ダイス６の穴型中心との同一軸
線５上で行われるように案内するガイドレールである。

この場合、ダイス後方の一対の押込みコンテナー16,1
6′の中心５とダイス前方の引抜きコンテナー11,11′の
中心５が加工ダイス６の穴型中心５と同一軸線５上とし
たことによって、従来法第６図に示されている。素材１
とホイール21との接触面に摩擦力を発生させて押込み力
を得て素材１をセグメント22の内面に沿って移動させ、
且つ巻取り機25により加工鋼線１′に引抜き力を与える
従来手段と比較して、金属棒素材１および加工金属棒
１′が直線状をなしているものや、加工金属棒１′にお
いて曲げ癖をきらう製品、特に異形断面金属棒等では極
めて有効な手段となる。

そして、また第５図に示す如く送給ロール17,17′と
コンテナー溝18,18′との溝断面形状が同一円弧溝の場
合において、金属棒素材１と送給ロール17,17′の溝と
の接触面に摩擦力を有効に発生させることができ、しか
もダイス後方押込み圧力を製品形状および寸法の変化に
応じて適宣変化させることのできる送給ロール17,17′
のトルク制御機構20,20′を設けておけは、引抜き力を
断線が起こらない範囲にとどめることが可能となり本発
明の効果は大きくなる。

また、特に前方応力が過大になると断線する難加工金
属棒の加工、あるいは異形断面金属棒のように加工ダイ
スへの型充満を要求される場合などには、押出し力を主
とした加工にするように加圧機構19,19′によって押込
みコンテナー16,16′に大きな圧縮力を与えると素材１
と送給ロール17,17′との間に大きな摩擦力が発生し素
材１に大きな後方押出し圧力が付与される。

一方、押出し圧力の代わりに引抜き力を制御してもこ
の場合加工金属棒の断線は防止できる。

また、本発明において、ダイス後方の押込みコンテナ
ー16と16′とが同一軸線で合った状態において、送給ロ
ール溝とコンテナー溝の断面形状18,18′が加工ダイス
６の穴型とをほぼ相似形状とし、さらに押込みコンテナ
ー16,16′の終端面と加工ダイス６の前端面とを密着状
態とすることが可能となったため、回転駆動するホイー
ル21の外周面とシュー端部22′において接線方向に間隙
部が存在している従来構造と比較して、難加工鋼線のよ
うにダイス後方圧力が素材１の降伏応力を越えてダイス
後方圧力を主体とした加工法をするような場合でも素材
１が座屈しなくなると共に、押込みコンテナー16,16′
の端部を破損させることがなくなる。その結果、高減面
率加工が可能となる。

なお、第４図における回転駆動する送給ロール17,1
7′とコンテナー溝18,18′との溝断面形状を同一円弧溝
として素材１の座屈を完全に防止することができるが、
ダイス後方圧力を大きくとるような場合を考えて、素材
１とコンテナー溝18,18′との摩擦抵抗を小さくするこ
とが望ましい。また、座屈が生じにくい小減面率加工の
ような場合にはコンテナー溝断面形状を、素材１とコン
テナー溝18,18′とが全く接触しない任意の状態にする
ことでも良い。

また、第１図における押込みコンテナー16,16′を一
組以上としたのは、特に難加工鋼線の高減面率加工時に
おいては押込み圧力を大きくすることが必要となるの
で、その場合に多くの送給ロールを設置することができ
るようにするためである。

また、第４図における送給ロール17,17′を複数個と
するのは、大きい押込み力を与えるために圧縮力を分散
するためであり、しかも素材１の軸圧縮力による座屈を
一層防止するためには、連続して送給ロールを配置する
構造でもよい。また、送給ロール17,17′を密に配置す
るときは、お互いの距離が接近するので送給ロール軸方
向が相互に直角なロールを交互に配置するのが望まし
い。

さらには、第１図において挟み引抜き機構３の前方
に、異形断面鋼線のように直線状でしかも規定の長さと
して製品とする場合には切断機を配置し、また通常のコ
イル形状で製品とする場合には巻取り機を配置すること
が望ましい。

また、ガイドロール23,23′に替えて矯正ロールを配
置し、コイル状態の素材１にも対処可能にすることも可
能である。

以下実施例により本発明の効果をさらに具体的に示
す。

［実 施 例］ 次に実施例を示す。

第１表に示す諸元で、難加工鋼線と異形断面鋼線を加
工した。素材として外径10mm、長さ2mの高張力棒鋼で降
伏応力70kgf/mm²である。本発明例においては回転駆動
する送給ロールは直径80mmで素材に接触する面を半径5m
mの円弧溝として、一対の押込みコンテナーの一方に100
mm間隔で５個（第４図では２個）内蔵し、その中間と前
後のコンテナー溝形状は送給ロールと同形の半径5mmの
円弧溝を形成し、他方の押込みコンテナーも同様の構成
として、４組の押込みコンテナー（第４図では２組）を
設置した。押込みコンテナー１組の長さは500mmとし、
加工機構の押付け力は１組あたり最大で4.0tonfとし
た。

また、送給ロールの駆動用モーターは3.0kWとし、素
材の送り速度は初期加工時30m/minで、定常加工時には7
0m/minに制御することにした。

押込み機構には、上記条件の一部である素材の外径、
降伏応力と、素材の送り速度および加工ダイス内径を設
定することにより、素材に与える押込み圧力をモーター
トルクを制御して素材に降伏応力の150％まで負荷し
た。また、引抜き機構における引抜きコンテナーの引抜
き応力は、張力駆動モーター（7.5kW）より加工金属棒
に与え、一方チャッキング力を1.3tonfまで加工機構に
より負荷した。

この結果、加工金属棒を最小径4.0mmの丸棒と一辺が
3.6mmの角棒に加工でき、この減面率はほぼ85％に達し
た。これは、従来の引抜きのみの鋼線加工の減面率20
％、あるいは、最近鋼線に適用され始めている前記（特
公昭61−28410号）連続引抜き機の実施例中に述べられ
ている減面率80％を凌ぐ、高減面率加工を可能としたも
のである。

［発明の効果］ 以上述べた如く、本発明は従来手段のダイス前方の巻
取り機による引抜き力と、ダイス後方のホイールとシュ
ーとの摩擦による押込み力とを単に素材に与えることに
よって生じる座屈や断線等の問題と直棒状をなしている
鋼線を連続加工する際の欠点を克服して、金属棒特に、
難加工材や異形断面材の高減面加工を連続的に行うこと
を可能としたものであるが、加工素材は中実材に限らず
中空材は勿論、管内部に非金属物質あるいは、異種金属
を充填したものでも適用可能であり工業的に価値が大き
いことは明らかである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の構成を示す模式図、第２図は第１図に
おけるダイスブロック断面形状の態様を示す拡大断面
図、第３図は第１図における引抜きチャック断面形状の
態様を示す模式図、第４図は第１図における押出しコン
テナー部断面形状の態様を示す模式図、第５図は第４図
の矢視Ａ−Ａ′線に沿う断面図、第６図は最近鋼線等に
採用され始めている従来手段の態様例を示す模式図であ
る。 １……金属棒素材、１′……加工金属棒 ２……加工ダイスブロック ３……引抜き機構、４……押込み機構 ５……軸線、６……加工ダイス ８……反力盤、９……チャック反力盤 10……チャッキング機構 10′……加圧機構 11,11′……引抜きコンテナー 12……張力駆動モーター 13……タイミングベルト 14……ボールネジ、15……ガイドレール 16,16′……押込みコンテナー 17,17′……送給ロール 18,18′……コンテナー溝 19,19′……加圧機構 20,20′……送給ロールトルク制御機構 21……ホイール 22,22′……セグメント 23,23′……ガイドロール 24……押付け機構、25……巻取り機

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】加工ダイス穴型中心を同一軸線において、
   ダイス後方に回転駆動される送給ロールを複数個内蔵し
   た押込みコンテナーの対を１組以上設けて加圧機構によ
   り金属棒を対になっている押込みコンテナー間で加圧保
   持する挟み押込み機構と、ダイス前方のチャッキング機
   構を内蔵した相互に往復運動する２組の引抜きコンテナ
   ーから挟み引抜き機構とを組み合わせたことを特徴とす
   る、金属棒の連続加工機。
2. 【請求項２】押込みコンテナーは金属棒が通過される円
   弧溝を形成し、しかも金属棒の円周面と接触する円弧溝
   を有した送給ロールを該押込みコンテナーに内蔵して構
   成されていることを特徴とする、請求項１記載の金属棒
   の連続加工機。