JPH08112615A - 金属棒押込み引抜き加工装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 難加工金属棒、異形断面金属棒、直線状金属
棒においても、断面減少や所望の形状に加工できる装置
を提供する。 【構成】 回転駆動する一対の連結シューにより素材を
加圧保持してダイスに挟み押込み力を加工前素材の降伏
荷重の０．２〜１倍の所定の値に制御して押込む機構を
有すると共に、該シューの平行部の終端に隣接してダイ
スを形成し、これを通過した素材をダイス前方で保持し
引抜き力を加工後素材の降伏荷重の０．２〜１倍の所定
の値に制御して引っ張るドローベンチを有して一定距離
移動した後、素材を離して元の位置に戻り、再び同じこ
とを繰返し作用することを特徴とする金属棒押込み引抜
き加工装置。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、難加工材、複合材等の
金属棒、線、型、管（以下金属棒と言う）を、ダイス後
方で挟み押込みする力を素材金属棒に負荷する機構と、
ダイス前方で挟み引抜きする力を加工金属棒に付与する
ドローベンチ機構とを組み合わせて断面減少および所望
の形状に加工する装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から、金属棒を連続的に細くあるい
は形状に加工するには、所定径を有するダイスを通して
ダイス前方へ引抜きするドラム巻取り方法が一般的であ
る。しかし、この手段では、通常２０〜３０％ずつ減面
するので、素材をより細くあるいは形状に加工する為に
は幾台ものダイスと引抜きする巻取り機とを組合せて並
べる必要がある。そのため、操業中に断線を起こすと著
しい生産性低下を余儀なくされる。また、設備が複雑で
大がかりとなるので作業の調整を行なうには非常な熟練
を必要とする。さらに、延性の低い材料では引抜きと焼
鈍を交互に施さなければならないなど、この手段には、
多くの問題を含んでいた。

【０００３】上記手段の問題を改善した簡単な手段とし
て、例えば、特開昭５９−４２１１５号公報には、鋼線
においてもかかる手段の適用を可能とした引抜き機が示
されている。即ち、この発明は、回転駆動されるホイー
ルの外周部に加工鋼線がはまる溝底角が４０度から９０
度となっているＶ型あるいは台形型のホイール溝を有
し、鋼線を該ホイール溝に押し付けるシューは押し付け
機構を有する複数個のセグメントに分離構成されている
と共に、シューの終端に隣接してダイスを形成し、その
前方に巻取り機を設置せしめてホイールの回転とシュー
の押し付けによって発生する押し込み力および巻取り機
の引抜き力によって鋼線の連続加工が可能な機構とした
ことを特徴とする鋼線の連続引抜き機である。

【０００４】この場合の難点は、鋼線に加工後引抜き力
を与えるために巻取り機で巻取ると、後で直線状にして
使用する際に曲げ癖がそのまま残って矯直する必要性が
でてくることである。また、これは、高強度材の大減面
加工に有利な技術であるが、単純な形状ならともかく、
フィンなどの複雑な異形形状では強い押し付けあいによ
る疵が出やすいという難点もある。

【０００５】さらに、特開平２−２２９６１５号公報に
は前述の巻き取り機に替えて、素材を交互に挟みつけて
一定距離移動する二台の引抜き装置を設置したものが示
されている。しかしながら、この方式では前述の方式と
ともに、素材に押し付け疵を発生し易いこと、および固
定シューとの摺動があるためエネルギーの損失ととも
に、摩擦発熱による摩耗などの問題が避けられない。

【０００６】これらに対し、特開平３−２５４３１１号
公報は、押込み機構と引抜き機構に一対の無限軌道の連
結回転シューを用い、素材を挟む両側の接触摩擦が利用
できることによる圧力低減により、素材疵や固定シュー
の摩擦の問題を解決し、さらには摩擦によるエネルギー
損失を回避した。

【０００７】しかしながら、この方式においては前方張
力を与える無限軌道の素材把握部が長いため、加工開始
時において素材先端部にダイス孔径にほぼ等しい径の先
付け部をこれに合わせて非常に高精度の寸法に予め加工
しておかなくてはならないため、準備作業に多大の時間
と労力を必要とする。

【０００８】さらに、無限軌道把握部の接触状態が部位
によって強く当たったり弱く当たったりして張力発生が
不安定となりやすいので、機械全体の製作精度、制御精
度の非常に高いものが要求されることになる。しかも、
該把握部は非常に長くなるために、連結回転シューの摩
耗による交換が大変な作業となる。これらに加えて、前
方張力を付与するための装置は大型で、設備の製造維持
に要する費用は無視できない。

【０００９】また、特開平３−２５４３１１号公報に
は、回転ホイールで押し込むとともに無限軌道によって
引き抜く方式が示されているが、前述の特開平２−２２
９６１号公報と同様先付けの問題とホイールによる素材
疵、シューの摩擦の問題などを内在している。

【００１０】そして、特公平５−０３０５２６号公報で
は、プッシャーで押し込むとともにドローベンチによっ
て引き抜く方式が示されているが、ダイス後方圧力が高
くなるとローラーガイド間で素材の太り現象が生じた
り、座屈が発生するなどの問題がある。また、プッシャ
ーで押し込むことが出来る範囲の素材長さに限定される
ので、生産性が低く歩留まりも落ちるという問題もあ
る。

【００１１】そこで、本発明は、このような問題を解消
すべく案出されたものであり、難加工金属棒や異形断面
金属棒さらには直線状金属棒においても、断面減少およ
び所望の形状に加工する装置を提供することを目的とし
てなされたものである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明の金属棒押込み引
抜き加工装置は、その目的を達成するために、

【００１３】（１）ダイス半角６０度以下の解放された
ダイス穴型中心軸線の後方に、該軸線と一部平行移動す
る箇所を設けて回転駆動する一対の連結シューにより素
材を加圧保持してダイスに挟み、押込み力を加工前素材
の降伏荷重の０．２〜１．０倍の所定の値に制御して、
押込む機構を有するとともに、該シューの平行部の終端
に隣接してダイスを形成し、これを通過した素材をダイ
ス前方で保持し、引抜き力を加工後素材の降伏荷重の
０．２〜１．０倍の所定の値に制御して引張るドローベ
ンチを有して一定の距離移動した後、素材を離して元の
位置に戻り、再び同じことを繰返し作用することを特徴
とする、金属棒押込み引抜き加工装置、

【００１４】（２）素材をチャックで保持して一定の距
離移動した後、素材を離して元の位置に戻り、再び同じ
ことを繰返し作用する引抜き機構を単体または複数台を
有するとともに、引抜き機構が素材を離して元の位置に
戻る際に、加工した素材を必要な長さに切断する装置を
備えたことを特徴とする、(1) 記載の金属棒押込み引抜
き加工装置、

【００１５】（３）ダイスを水冷する配管がなされてい
ることを特徴とする、(1)または(2)記載の金属棒押込み
引抜き加工装置、であることを特徴とする。

【００１６】

【作用】以下に本発明を詳細に説明する。図１は本発明
に係わる金属棒加工設備の一態様を示すものである。素
材１はダイス２の軸線３上にあり、押込み機構６に設け
られた一対の連結シュー７ａ、７ｂで加圧保持され、し
かも、該連結シューが回転駆動することによってダイス
ガイド５を通して、ダイスブロック４に支えられたダイ
ス２に対して予め定められた一定荷重で押し込まれる。

【００１７】さらに、素材１はダイス前方でドローベン
チ１４により付加的な前方張力が与えられる。ドローベ
ンチ１４は素材１の先端をチャック１９で保持し、その
チャック１９は鎖車１６によって駆動されるチェーン１
７にフック１８を介して連結されることによって、引張
り力を与える構造となっている。

【００１８】ダイス前方で素材１を保持し一定の距離移
動したチャック１９は、素材を離して元の位置に戻り、
再び同じことを繰返し作用する引抜き稼働体１５を有す
る。該チャック１９が繰返し往復稼働するために、チャ
ック１９及び往復稼働体１５は素材貫通孔を軸中心に設
けて該貫通孔の内面に加工素材１を十分挟み付ける構造
を有している。

【００１９】また、押込み機構６においては一方の連結
シュー７ａがローラーコンベアー（図示せず）などの摩
擦低減要素を介して油圧シリンダー９によって押し付け
られ、他の連結シュー７ｂもやはりローラーコンベアー
を介して反力板１０で支えられる構造になっており、素
材１を加圧保持することによって、加工ダイス２の後方
から挟み押し込みする力を付与する機構としてある。

【００２０】この場合の駆動力は、モーター１３のエネ
ルギーが減速機１２、スプロケット８ａ、８ｂを介して
一対の連結シュー７ａ、７ｂを回転駆動することによっ
て素材１に与えられる。従って、素材１と一対の連結シ
ュー７ａ、７ｂとの間に発生する摩擦力により、加工ダ
イス２の後方で押込み力が該素材１に与えられる。

【００２１】なお、油圧シリンダー９などによる圧力を
制御する機構を保有すれば、素材１と連結シュー７ａ、
７ｂとの間に押込みに必要且つ十分な摩擦力を与えるこ
とが可能である。押込み機構６は、素材に対して駆動モ
ーター１３自身の電流を計測したり、加工に必要なトル
クを計測しつつモーターの動きを制御することによって
一定の押込み力を与えることができる。なお、図中１１
は動力伝達部、１２は減速機である。

【００２２】ここに、押込み力を加工前素材の降伏荷重
の０．２倍以上とするのは、それ未満では大減面加工を
施したり異形ダイスの型充満性を高めることができない
からであり、該降伏荷重の１．０倍以下とするのは、こ
れより大きいときに起こるダイス後方の素材座屈などの
問題を避けるためである。なお、ドローベンチ１４の方
は必要な速度で作動していれば、上述のように素材加工
に必要な仕事のうち、押込み側が常に一定の仕事を分担
する場合、残りのほぼ一定の仕事を分担することにな
り、安定した操業が可能となる。

【００２３】一方、逆にドローベンチ１４の引抜き力を
一定に制御する機構を有すれば、残りの仕事を押込み側
が分担することになり、ほぼ同様の安定操業が可能であ
る。引抜き側を制御するには、例えばドローベンチ１４
のチャック１９は鎖車１６の回転駆動力をサーボモータ
で制御してチェーン１７からフック１８を介して、引張
り力を与える構造としている。

【００２４】また、ダイス前方で引抜き往復するチャッ
ク１９の駆動力を油圧で与える場合は油圧を制御すれば
良いし、回転力を水平力に置換する方式を採用するなら
ば、回転力を制御するか、あるいは水平力をロードセル
で検出して回転力にフィードバックするかなど、種々の
方策を選択して用いれば良い。

【００２５】この時、引抜き力を加工後素材降伏荷重の
０．２倍以上とするのは、それ未満では押し込みとの組
み合わせで大きな減面加工ができないからであり、１．
０倍以下とするのは、それを超えると加工中の断線の危
険性が高くなったり、引き細りの現象により所要の形状
や寸法をえることが難しいためである。

【００２６】なお、引抜き往復稼働体１５は素材貫通孔
を軸中心に設け該貫通孔の内面には加工素材１を十分挟
み付けるチャック１９を有して、加工素材の寸法変動に
追従しやすいＶ字型の溝や素材の形状に応じて円弧や台
形などのほか任意のチャック形状を選択し得る。

【００２７】このように、引抜き側において繰り返し引
抜き力を素材に容易に作用させる機構としたことによっ
て、素材の先付け長さは無限軌道で引き抜く場合より遥
かに簡単な機構となり、また、加工素材の一部分を挟む
だけなので全体を挟む無限軌道に比べて、金属棒の線径
変動の影響を受けにくく安定した引抜き力の付与が可能
となる。こうした装置によって、押込み力と引抜き力の
組み合わせで大減面加工が可能となるので、加工された
金属棒はほとんど直線状になっているが、より高精度の
直線性を必要とされる場合は矯正機を通し、さらに、あ
る限られた長さにフライングシャーなどを備えて切断す
れば、極めて効率が良い。

【００２８】また、大減面加工時には、素材の変形によ
る発熱や素材とダイス間の摩擦による発熱が無視できな
くなる。このような場合には、ダイス内に水冷用の配管
をするか、ダイス全体を冷やすことによってダイスの耐
久性を大幅に向上させることができる。本発明は、素材
に大きな断面減少加工を容易に施せるだけでなく、複雑
な断面形状を要求される場合に有効な手段となる。

【００２９】

【実施例】素材は直径９.８ ｍｍの円形断面を有する中
実Ｓ４８Ｃ圧延線材材のコイルを用い、潤滑には燐酸塩
被膜に金属石鹸を上乗せした。押し込み機機の連結シュ
ーの素材把握部長さは１０１２ｍｍで、油圧シリンダー
によって素材を１０.２ tonfの荷重で挟んだ。そこでま
ず、押込み力を制御する場合にはスプロケットのトルク
を制御して３.０ tonfの一定の押込み力がダイス後方の
素材に付与されるようにした。一方、引抜き力を制御す
る場合は、引抜き駆動力を付与する油圧を制御して１.
１ tonfの一定の引抜き力を付与した。

【００３０】押込み機構の連結シューの周速度は１０m
／minとした。ダイスは超硬を用い、素材は５.７ ｍｍ
に加工した。その結果、両方の条件で素材の減面率６
６.２ ％に達する加工が問題なく実施できた。これに対
し、従来の引抜き工程では３回繰り返さなければ同等の
加工ができなかったし、３回目の引抜きでカッピークラ
ックを発生して製品を作ることができなかった。しか
も、従来の引抜き側に無限軌道を用いる場合に比べて、
設備費がおよそ３分の２で導入でき、また新たな加工の
段取りに要する時間は従来の３分の１となった。

【００３１】

【発明の効果】以上述べた如く、本発明は従来手段のダ
イス前方の巻取り機あるいは無限軌道による引抜き方式
に比べて、素材把握部が短くて済み素材交換の時間が大
幅に短縮され、また素材貫通孔を設けたことによりその
まま繰り返し把握を可能としたため連続加工が可能とな
った。直棒状をなしている鋼線を連続加工する際の欠点
を克服して、金属棒特に、難加工材や異形断面材の高減
面加工を連続的に行うことを可能としたものであるが、
加工素材は中実材に限らず中空材は勿論、管内部に非金
属物質あるいは、異種金属を充填したものでも適用可能
であり工業的に価値が大きいことは明らかである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の構成を示す一態様例である。

【符号の説明】

１ 素材金属棒 ２ 加工ダイス ３ ダイス軸線 ４ ダイスブロック ５ ダイスガイド ６ 挟押込み機構 ７ａ 連結シュー ７ｂ 連結シュー ８ａ スプロケット ８ｂ スプロケット ９ 油圧シリンダー １０ 反力板 １１ 動力伝達歯車 １２ 減速機 １３ 駆動モーター １４ ドローベンチ １５ 引抜き往復稼働体 １６ スプロケット １７ チェーン １８ フック １９ チャック

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ダイス半角６０度以下の解放されたダイ
   ス穴型中心軸線の後方に、該軸線と一部平行移動する箇
   所を設けて回転駆動する一対の連結シューにより素材を
   加圧保持してダイスに挟み、押込み力を加工前素材の降
   伏荷重の０．２〜１．０倍の所定の値に制御して、押込
   む機構を有するとともに、該シューの平行部の終端に隣
   接してダイスを形成し、これを通過した素材をダイス前
   方で保持し、引抜き力を加工後素材の降伏荷重の０．２
   〜１．０倍の所定の値に制御して引張るドローベンチを
   有して一定の距離移動した後、素材を離して元の位置に
   戻り、再び同じことを繰返し作用することを特徴とす
   る、金属棒押込み引抜き加工装置。
2. 【請求項２】 素材をチャックで保持して一定の距離移
   動した後、素材を離して元の位置に戻り、再び同じこと
   を繰返し作用する引抜き機構を単体または複数台を有す
   るとともに、引抜き機構が素材を離して元の位置に戻る
   際に、加工した素材を必要な長さに切断する装置を備え
   たことを特徴とする、請求項１記載の金属棒押込み引抜
   き加工装置。
3. 【請求項３】 ダイスを水冷する配管がなされているこ
   とを特徴とする、請求項１または請求項２記載の金属棒
   押込み引抜き加工装置。