JP4561939B2 - 多価アルコールの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させて、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、可塑剤、潤滑油、界面活性剤、化粧品の基剤、反応性モノマーなどの原料として有用な多価アルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多価アルコールを製造する方法として、塩基触媒存在下、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応、引き続き交叉カニッツァロー反応の二段反応で行う方法が、特開昭58−162538号、米国特許3975450号などに記載されている。
この二段反応で行う方法は多価アルコールとギ酸塩の併産を前提としたプロセスである。この方法での塩基触媒には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物および炭酸化物、またはアルキルアミン類で、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、トリエチルアミンなどが用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとの反応による多価アルコールの製造方法において、一般的には水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムからなる塩基触媒が用いられている。しかしながら水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムの存在下では、目的とする多価アルコールを高選択率で得るために、脂肪族アルデヒドに対して大過剰のホルムアルデヒドを用いる必要がある。
【0004】
また炭酸塩を触媒に用いてアルドール縮合反応、引き続いて交叉カニッツァロー反応を行い多価アルコールを製造する方法も知られているが、この方法では脂肪族アルデヒドに対して10モル%近くの付加価値の低い2−置換−2−アルケナールが副生する。この副生を抑えるためにもやはり大過剰のホルムアルデヒドを用いる必要がある。
このような大過剰のホルムアルデヒドを用いる製造法においては、経済的観点および廃棄物等の環境に及ぼす影響の観点より、余剰分のホルムアルデヒドの回収が求められ、プロセスが複雑になる等の問題がある。
本発明の目的は、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、脂肪族アルデヒドの理論モル量に対して僅かに過剰なホルムアルデヒド量で、目的とする多価アルコールを高選択率で得る方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き課題を有する多価アルコールの製造方法について鋭意検討した結果、炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、アルドール縮合反応中に副生した2−置換−2−アルケナールが脂肪族アルデヒドに対して反応性が劣ることから、これを水またはホルムアルデヒド水溶液と反応させた後、循環使用することにより、ホルムアルデヒドの使用量を低減することができ、また目的とする多価アルコールが高選択率で得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち本発明は、炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に (I)式で示される脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、無触媒あるいは触媒存在下に、副生した(II)式で示される2−置換−2−アルケナールと水を反応させて得られた (III)式で示される2−置換アルカナール−1含有液を、塩基触媒存在下にホルムアルデヒドと混合し、次いで (I)式で示される脂肪族アルデヒドを反応させることを特徴とする多価アルコールの製造法、
および、
炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に (I)式で示される脂肪族アルデヒドおよび(II)式で示される2−置換−2−アルケナールとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、無触媒あるいは触媒存在下に、副生した(II)式で示される2−置換−2−アルケナールとホルムアルデヒド水溶液を反応させて得られた (III)式で示される2−置換アルカナール−1および(IV)式で示される2−置換アルカナール−2含有液を、塩基触媒存在下で (I)式で示される脂肪族アルデヒドと反応させることを特徴とする多価アルコールの製造法である。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(以上、Rは水素基、或いは炭素数1〜22の直鎖または分岐鎖の脂肪族基)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における多価アルコールを製造するための脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドの反応は、アルドール縮合反応と交叉カニッツァロー反応の2段の反応であり、塩基触媒として炭酸水素塩および炭酸塩を用いる反応は主反応および副反応式を含めて次の反応式で示される。
なお下記反応式は、本発明の代表的反応例として、n−ブチルアルデヒド(以下、NBALと称す)からトリメチロールプロパン(以下、TMPと称す)を製造する場合である。
【0008】
なお、炭酸塩は交叉カニッツァロー反応の反応生成物質であるので、該反応系でギ酸塩として消費される。
【0009】
本発明において (I)式で示される脂肪族アルデヒドはα位に2つ以上の水素を有する化合物で、例えばプロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、アセトアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ドデカナール、イコサナール、ドコサナールなどが挙げられる。これらの化合物は2種以上の混合物として原料に使用することもできる。
【0010】
本発明で使用されるホルムアルデヒドはホルムアルデヒド水溶液でも固形のパラホルムアルデヒドでも良く、目的とする多価アルコールによって適切なものが使用される。
ホルムアルデヒドの使用量は、目的とする多価アルコールによって理論モル量的にも異なる。
例えば (I)式のRがエチル基(CH3 CH2 )であるNBALとホルムアルデヒドを反応させてTMPを製造する場合(理論モル比=3.0)には、NBALに対するホルムアルデヒドのモル量比は 3.0〜6.0 モル、好ましくは3.05〜4.0 である。
また (I)式のRが水素(H)であるアセトアルデヒド(以下、AALと称す)とホルムアルデヒドを反応させてペンタエリスリトール(以下、PEと称す)を製造する場合(理論モル比=4.0)には、AALに対するホルムアルデヒドのモル量比は 4.0〜6.0 モル、好ましくは 4.1〜5.0 である。
【0011】
本発明においてアルドール縮合反応及び交叉カニッツァロー反応における塩基触媒は炭酸塩を主成分とするもので、前述の(VI)式で示す如く交叉カニッツァロー反応で消費されるのは炭酸塩であり、(VII) 式により交叉カニッツァロー反応で生成した炭酸水素塩は炭酸塩に変わる。
この塩基触媒は、一般的に工業薬品として出廻っている炭酸塩もしくは炭酸水素塩との混合物でも良い。またギ酸塩を酸化または加水分解して生成された炭酸水素塩から出発したものでも良い。
この塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム塩の何れでも良いが、工業的に実施するにはナトリウム塩が一般的である。
【0012】
塩基触媒の使用量は、(I) 式で示される脂肪族アルデヒドに対するモル比で、炭酸水素塩換算量で 1〜2 倍モル量である。副生物を抑えて高選択率に目的の多価アルコールを得るためには、脂肪族アルデヒドの種類に合わせて調整する必要がある。
例えば、脂肪族アルデヒドがNBALの場合、炭酸水素塩換算量で 1.0〜1.2 倍モルであり、また脂肪族アルデヒドがAALの場合、炭酸水素塩換算量で 1.0〜1.3 倍モルである。
【0013】
本発明で脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドの反応温度は45〜120℃、好ましくは60〜110℃であり、脂肪族アルデヒドの種類によってその最適温度は異なる。
例えば、NBALからTMPを製造する場合は、65〜110℃である。またAALからPEを製造する場合は、50〜105℃である。
またこの場合、系内を所定の反応温度に保つため、系内を窒素ガス等の不活性ガスで加圧することもできる。
【0014】
(II) 式で示される2−置換−2−アルケナールは (V)式のアルドール縮合段階で脂肪族アルデヒドに1モル量のホルムアルデヒドが付加したアルカナール−1からの脱水反応により生成する。従って、副生する(II)式で示される2−置換−2−アルケナールは、原料脂肪族アルデヒドにより決定され、アクロレイン、メチルアクロレイン、エチルアクロレイン、プロピルアクロレインなどが挙げられる。このような2−置換−2−アルケナールは製品の多価アルコールの精製工程で分離することもできるが、交叉カニッツァロー反応の工程で分離することが好ましく、これを循環使用することにより多価アルコールの収率が向上する。
【0015】
本発明の多価アルコールの製造法は、触媒として炭酸塩を主成分とする塩基触媒を用い、反応途中に主反応と並行させながら又は単独に反応系外に、副生した2−置換−2−アルケナールを分離回収した後、交叉カニッツァロー反応を完結させることが好ましい。
この2−置換−2−アルケナールの分離は、特に脂肪族アルデヒドに対する塩基触媒の消費モル比が0.50から0.95の間に行うことが好ましく、このように2−置換−2−アルケナールの分離を交叉カニッツァロー反応を完結させ前に行うことにより2−置換−2−アルケナールの副反応による損失が避けられ、多価アルコールを高選択率で得ることができる。
【0016】
2−置換−2−アルケナールの分離回収は交叉カニッツァロー反応が完了しない段階に行うが、減圧、常圧または加圧条件での蒸留により容易に行える。このような条件で副生した2−置換−2−アルケナールを反応系外に除去することにより2−置換−2−アルケナールの副反応による損失を防ぐことができる。
本発明において、反応第1段階のアルドール縮合反応と第2段階の交叉カニッツァロー反応を区分した反応条件で行なってもよい。
回収した2−置換−2−アルケナールは、反応形式が多段連続反応では2〜3段目反応缶から回収した後1段目反応缶へ循環し、また回分式の場合は次回の反応系へ循環させることができる。
なお炭酸塩を主成分とする塩基触媒は交叉カニッツァロー反応においてギ酸塩となるので、塩基触媒の消費モル比はギ酸塩の生成モル比に相当し、これより2−置換−2−アルケナールの分離時期を決定することができる。
【0017】
本発明において使用する塩基触媒が炭酸塩を主成分とする触媒であり、(VII) 式の炭酸水素塩が炭酸塩となる反応が同時に起こるため、反応第2段階の交叉カニッツァロー反応時に炭酸ガスの発生を伴う。従って低沸点物である(II)式で示される2−置換−2−アルケナールおよび水を炭酸ガスと系外に放出させながら非連続的または連続的に行うことが好ましい。
【0018】
本発明は、上記の如き方法により回収された2−置換−2−アルケナールを、水またはホルムアルデヒド水溶液と反応させた後、循環使用するものである。これにより反応性の劣る2−置換−2−アルケナールが、反応性の高い2−置換アルカナール−1や2−置換アルカナール−2となるので、多価アルコール製造プロセスのホルムアルデヒドの使用量を低減することができ、また目的とする多価アルコールが高選択率で得られるようになる。
また、2−置換−2−アルケナールを、原料の脂肪族アルデヒドを添加する前に水やホルムアルデヒド水溶液と反応させてアルドール縮合反応系に循環使用することによって、2−置換−2−アルケナールの副反応による損失が避けられ、多価アルコールを高選択率で得ることができる。
【0019】
2−置換−2−アルケナールと水の反応は触媒を用いずに行うこともできる。
従って一つの手段として例えば交叉カニッツァロー反応が完結する前に共沸回収した2−置換−2−アルケナールと水との混合液そのものを沸騰温度以下に加熱攪拌し反応させることによって2−置換アルカナール−1含有液が得られる。
これを塩基触媒存在下にホルムアルデヒド水溶液と混合して、次いで脂肪族アルデヒドを反応させることにより多価アルコールが製造される。
【0020】
また、2−置換−2−アルケナールとホルムアルデヒド水溶液を反応させる方法として、先ず2−置換−2−アルケナールおよびホルムアルデヒド水溶液と炭酸塩を主成分とする塩基触媒の水溶液とを混合し、この中に続いて脂肪族アルデヒドを一定の速度で添加する方法や、あらかじめ無触媒あるいは触媒存在下に2−置換−2−アルケナールと水を反応させ、得られた2−置換アルカナール−1含有液にホルムアルデヒド水溶液と塩基触媒を添加し、脂肪族アルデヒドと反応させることにより多価アルコールが製造される。
【0021】
2−置換−2−アルケナールを水やホルムアルデヒド水溶液と反応させる際の反応温度は45〜120 ℃とすることが好ましく、但し当該2−置換−2−アルケナールの共沸温度以下にすることが必要であり、そのために系内を窒素ガス等の不活性ガスで加圧することもできる。反応時間は当該2−置換−2−アルケナールによって異なるが、例えば5分から120分の間で適宜選択することが多い。
2−置換−2−アルケナールを水やホルムアルデヒド水溶液を反応させるには無触媒でも良い。触媒を使用する場合は、例えば、ギ酸、硫酸、燐酸等の酸類、またはアルドール縮合反応、交叉カニツアロー反応に用いる塩基触媒が用いられる。
【0022】
2−置換−2−アルケナールは不飽和基を持つので重合して不純物を生じ易いが、このように予め水やホルムアルデヒド水溶液と反応させることにより2−置換−2−アルケナール同士の重合が回避され、多価アルコールが高選択率で得られるようになる。
多価アルコールの選択率を高めるために、2−置換−2−アルケナールと水やホルムアルデヒド水溶液との反応率をできるだけ高めた状態で脂肪族アルデヒドを導入することが望ましい。従って脂肪族アルデヒドの導入前の状態で、原料の脂肪族アルデヒドに対する残留2−置換−2−アルケナールの比率を0.01未満、好ましくは0.001未満とする。
【0023】
得られた反応生成液から目的の多価アルコールを得るには幾つかの方法があるが、先ず反応液中に残存する過剰のアルカリをギ酸を用いて中和し、次に残存するホルムアルデヒドを0.05〜0.40MPa(g)の加圧下で蒸留して留去した後、一般的には溶媒で抽出する方法または再結晶法で多価アルコールを得る。但しこの多価アルコールを得る方法は、目的の多価アルコールの物理的性質、とりわけ水に対する溶解度の差などによって、その処理法が異なる。
【0024】
例えば、TMPを製造する場合には、溶媒抽出によって目的のTMPとギ酸塩とが分離される。ここで使用する溶媒は、反応原料でもあるNBALでもよく、または、異種、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、更には酢酸ブチルエステルなどのエステル類の単品、またはこれらの混合物を用いるのが有効である。
またAALからPEを製造する場合では、反応生成液を濃縮、冷却し、晶析、分離を繰り返してPEと水溶液中のギ酸塩とを固液分離する。ケーキとして分離したPEは、水洗した後、乾燥して製品とする。
【0025】
一方、水相中に分離したギ酸塩は、そのまま又は前処理として活性炭処理して、ギ酸塩以外の有機不純物を除去した後、濃縮し常法によってギ酸塩を副製品として回収するか、または酸素分子存在下または不存在下に貴金属触媒またはニッケル触媒下で、このギ酸塩を炭酸水素塩を主成分とした塩基化合物に転換した後に回収する。
【0026】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお以下の実施例および比較例において、目的とする多価アルコールの選択率 (消費アルデヒド基準) は、脂肪族アルデヒドおよび2−置換−2−アルケナールの消費量に対する目的とする多価アルコール生成量のモル比率である。
【0027】
実施例1〔NBALとホルムアルデヒドからTMPを製造)
(初回反応)
容量積30L反応槽に40重量%ホルムアルデヒド水溶液8200g(109.2モル)と炭酸水素ナトリウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比2/98)9548g(37.5モル)を混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温した。この中にNBAL2464g(34.1モル)を一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇させ最高温度90℃に制御した。その後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃に昇温して15分間反応を継続した。
反応によって発生するCO2 は随時系外に放出させた。
次に温度、圧力を徐々に昇温、降圧させ、反応槽上部から発生するCO2 ガスと共に低沸留分である2−エチルアクロレイン(以下、ECRと称す)と一部共沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収のタイミングは、NBALに対する塩基触媒の消費モル比で0.5から0.95の間である。その間反応を10分間継続した。その回収量は620gで、この内ECRは水中の溶解分を含めて495.6g(5.90モル)であった。ECR回収後98〜100℃で30分間反応を継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量は770g(17.5モル)であった。残存した反応生成液18822gを分析した結果、TMPを17.82重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は88.8モル%であった。
【0028】
〔2回目反応・無触媒でECRと水を反応させた場合)
実施例1の初回反応で回収したECR相と水相の全量620g(ECR:5.90モル)を水8000gと混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温した。この温度で10分間反応を継続した。該反応液中のECR残量は2g(原料NBALに対するモル比=0.0007) であった。この中に40重量%ホルムアルデヒド水溶液8200g(109.2モル)と炭酸水素ナトリウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比:2/98)9548g(37.5モル)を添加した後、NBAL2464g(34.1モル)を一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させた。NBAL添加後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃を保ちながら10分間反応を継続した。この間、反応によって発生するCO2 ガスは随時系外に放出した。次に圧力を徐々に降圧させながら反応槽上部から発生するCO2 ガスと共にECRおよび共沸する水を回収した。この回収タイミングは前記初回反応と同様に行い、10分間反応を継続した。この留出量は650gで、この内ECRは水中に溶解した分を含めて499g(5.95モル)であった。ECR回収後、更に98〜100℃で30分間反応を継続した。残存した反応液27421gを分析した結果、TMPを15.18重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は91.1モル%であった。
【0029】
比較例1(ECRの回収を行わない場合)
実施例1の初回反応と同様に40重量%ホルムアルデヒド水溶液8200g(109.2モル)と炭酸水素ナトリウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比:2/98)9548g(37.5モル)を混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温した。この中にNBAL2464g(34.1モル)を一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させた。NBAL添加後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃の条件下で10分間反応を継続した。次に圧力を徐々に降圧させ、常圧下温度98℃で30分間反応を継続した。この間、副生したECRの回収は行わなかった。なお反応によって発生するCO2 は随時系外に放出させた。
反応を通して放出されたCO2 ガス量は775gであった。残存した反応生成後19437gを分析した結果、TMPを17.7重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は76.5モル%であった。
【0030】
実施例2(触媒の存在下にECRとホルムアルデヒド水溶液を反応させた場合)40重量%ホルムアルデヒド水溶液6775g(90.24モル)と33重量%(炭酸水素ナトリウム換算濃度)の塩基性水溶液7896g(31.02モル)を混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に80℃に昇温し、実施例1の2回目反応で回収したECR相と水相の全量650gを添加し、10分間反応を継続した。該反応液中のECRの残量は2g(原料NBALに対するモル比=0.0008)であった。
該反応液に、NBAL2035g(28.2モル)を一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させた。NBAL添加後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃を保ちながら10分間反応を継続した。この間、反応によって発生するCO2 ガスは随時系外に放出した。次に圧力を徐々に降圧させながら反応槽上部から発生するCO2 ガスと共にECRおよび共沸する水を回収した。この回収タイミングは前記の初回反応と同様に行った。この留出量は654gでこの内ECRは水中に溶解した分を含めて498.8g(5.94モル)であった。ECR回収後更に98〜100℃で30分間反応を継続した。残存した反応生成液16052gを分析した結果、TMPを21.18重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は90.0モル%であった。
【0031】
比較例2(ECRをNBALと共に添加した場合)
実施例1の初回反応と同様に40重量%ホルムアルデヒド水溶液6775g(90.24モル)と炭酸水素ナトリウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比:2/98)7896g(31.02モル)を混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温した。これに実施例1の初回反応で回収した水相の全量を添加し、ECR相の全量(ECR:5.94モル)とNBAL2035g(28.2モル)を均一混合したものを、一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させた。この後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃を保ちながら10分間反応を継続した。この間、反応によって発生するCO2 ガスは随時系外に放出した。次に圧力を徐々に降圧させながら反応槽上部から発生するCO2 ガスと共にECRおよび共沸する水を回収した。この回収タイミングは前記初回反応と同様に行い、10分間反応を継続した。この留出量は654gで、この内ECRは水中に溶解した分を含めて500.6g(5.96モル)であった。ECR回収後、更に98〜100℃で30分間反応を継続した。残存した反応液16030gを分析した結果、TMPを19.33重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は82.0モル%であった。
【0032】
実施例3〔アセトアルデヒドとホルムアルデヒドからPEを製造)
(初回反応)
40重量%ホルムアルデヒド水溶液6870g(91.5モル)と炭酸ナトリウム1314g(12.4モル)と水3066gを混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を60℃まで昇温した。この中にアセトアルデヒド893.2g(20.3モル)を一定速度30分間かけて添加した。この間の温度は60℃から徐々に上昇させ最高温度75℃に制御した。その後、圧力0.10MPa(g)、温度80℃に昇温して15分間反応を継続した。反応によって発生するCO2 は随時系外に放出させた。
次に温度、圧力を徐々に降温、降圧させ、反応槽上部から発生するCO2 ガスと共に低沸留分であるアクロレイン(以下、ACRと称す)と一部共沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収タイミングは、NBALに対する塩基触媒の消費モル比で0.5から0.95の間である。その間反応を10分間継続した。
その回収量は320gで、この内ACRは水中の溶解分を含めて147.8g(2.64モル)であった。ACR回収後98〜100℃で30分間反応を継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量は536.8g(12.2モル)であった。残存した反応生成液11286gを分析した結果、PEを16.94重量%含んでおり、PE選択率(消費アルデヒド基準)は90.2モル%であった。
【0033】
〔2回目反応・触媒の存在下にアクロレイン(ACR)とホルムアルデヒド水溶液を反応させた場合〕
40重量%ホルムアルデヒド水溶液6870g(91.5モル)と炭酸ナトリウム1183g(11.2モル)と水3197gを混合し、窒素ガスで0.10MPa(G)まで昇圧した後、撹拌下に60℃に昇温した。この中に初回反応で回収したACR相と水相の全量320gを添加し、10分間反応を継続した。該反応液中のACRの残量は0.8g(原料アセトアルデヒドに対するモル比=0.0009)であった。
該反応液に、アセトアルデヒド893.2g(20.3モル)を一定速度30分間かけて添加した。この間の温度は60℃から徐々に上昇させ最高温度75℃に制御させた。その後、圧力0.10MPa(g)、温度80℃に昇温して15分間反応を継続した。この間、反応によって発生するCO2 ガスは随時系外に放出した。
次に温度、圧力を徐々に昇温、降圧させ、反応槽上部から発生するCO2 ガスと共にACRと一部共沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収タイミングは前記の初回反応と同様に行った。その間反応を10分間継続した。その回収量は322gで、この内ACRは水中の溶解分を含めて148.2g(2.65モル)であった。ACR回収後98〜100℃で30分間反応を継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量は540g(12.3モル)であった。残存した反応生成液11436gを分析した結果、PEを19.49重量%含んでおり、PE選択率(消費アルデヒド基準)は91.5モル%であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、炭酸塩を主成分とする塩基触媒を用いた脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとの反応による多価アルコールの製造方法において、付加価値の低い副生2−置換−2−アルケナールを水またはホルムアルデヒド水溶液と反応させた後に循環使用することにより新たに2−置換−2−アルケナールが実質上副生することなく、目的とする多価アルコールを、高選択率で効率良く、容易に製造することができる。
従って本発明の方法は、炭酸塩を主成分とする塩基触媒を用いて、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドから多価アルコールが、容易に高収率、且つ高品質で得られるので、工業的に極めて有利である。
Claims (1)
- 炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に (I)式で示される脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、アルドール縮合反応中に副生した(II)式で示される2−置換−2−アルケナールを交叉カニッツァロー反応が完結する前に分離し第1回目の多価アルコール製造を行い、第2回目の多価アルコール製造において、無触媒あるいは触媒存在下に、第1回目の多価アルコール製造で分離した2−置換−2−アルケナールと水を反応させて(III)式で示される2−置換アルカナール−1含有液を得た後、塩基触媒存在下にホルムアルデヒドと(I)式で示される脂肪族アルデヒドを反応させてアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツアロー反応を行うことを特徴とする多価アルコールの製造法。
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