JP2000226350A - 多価アルコールの製造法 - Google Patents

多価アルコールの製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアル
ドール縮合反応を行い、続いて交叉カニッツァロー反応
を行うことにより多価アルコールを製造するに際して、
脂肪族アルデヒドの理論モル量に対して僅かに過剰なホ
ルムアルデヒド量で、目的とする多価アルコールを高選
択率で得る方法を提供する。 【解決手段】アルドール縮合反応中に副生した2−置換
−2−アルケナールを分離し、水またはホルムアルデヒ
ド水溶液と反応させて2−置換アルカナール−1または
2−置換アルカナール−2として循環使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脂肪族アルデヒドと
ホルムアルデヒドとを反応させて、ポリエステル樹脂、
アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート
樹脂、可塑剤、潤滑油、界面活性剤、化粧品の基剤、反
応性モノマーなどの原料として有用な多価アルコールの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多価アルコールを製造する方法として、
塩基触媒存在下、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒド
とのアルドール縮合反応、引き続き交叉カニッツァロー
反応の二段反応で行う方法が、特開昭58−16253
8号、米国特許3975450号などに記載されてい
る。この二段反応で行う方法は多価アルコールとギ酸塩
の併産を前提としたプロセスである。この方法での塩基
触媒には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸
化物および炭酸化物、またはアルキルアミン類で、例え
ば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、
トリエチルアミンなどが用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】脂肪族アルデヒドとホ
ルムアルデヒドとの反応による多価アルコールの製造方
法において、一般的には水酸化ナトリウムや水酸化カル
シウムからなる塩基触媒が用いられている。しかしなが
ら水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムの存在下では、
目的とする多価アルコールを高選択率で得るために、脂
肪族アルデヒドに対して大過剰のホルムアルデヒドを用
いる必要がある。
【0004】また炭酸塩を触媒に用いてアルドール縮合
反応、引き続いて交叉カニッツァロー反応を行い多価ア
ルコールを製造する方法も知られているが、この方法で
は脂肪族アルデヒドに対して10モル%近くの付加価値
の低い2−置換−2−アルケナールが副生する。この副
生を抑えるためにもやはり大過剰のホルムアルデヒドを
用いる必要がある。このような大過剰のホルムアルデヒ
ドを用いる製造法においては、経済的観点および廃棄物
等の環境に及ぼす影響の観点より、余剰分のホルムアル
デヒドの回収が求められ、プロセスが複雑になる等の問
題がある。本発明の目的は、脂肪族アルデヒドとホルム
アルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き交
叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコール
を製造するに際して、脂肪族アルデヒドの理論モル量に
対して僅かに過剰なホルムアルデヒド量で、目的とする
多価アルコールを高選択率で得る方法を提供することで
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如
き課題を有する多価アルコールの製造方法について鋭意
検討した結果、炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に
脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール縮
合反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行う
ことにより多価アルコールを製造するに際して、アルド
ール縮合反応中に副生した2−置換−2−アルケナール
が脂肪族アルデヒドに対して反応性が劣ることから、こ
れを水またはホルムアルデヒド水溶液と反応させた後、
循環使用することにより、ホルムアルデヒドの使用量を
低減することができ、また目的とする多価アルコールが
高選択率で得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】即ち本発明は、炭酸塩を主成分とする塩基
触媒存在下に (I)式で示される脂肪族アルデヒドとホル
ムアルデヒドとのアルドール縮合反応を行い、引き続き
交叉カニッツァロー反応を行うことにより多価アルコー
ルを製造するに際して、無触媒あるいは触媒存在下に、
副生した(II)式で示される2−置換−2−アルケナール
と水を反応させて得られた (III)式で示される2−置換
アルカナール−1含有液を、塩基触媒存在下にホルムア
ルデヒドと混合し、次いで (I)式で示される脂肪族アル
デヒドを反応させることを特徴とする多価アルコールの
製造法、および、炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下
に (I)式で示される脂肪族アルデヒドおよび(II)式で示
される2−置換−2−アルケナールとのアルドール縮合
反応を行い、引き続き交叉カニッツァロー反応を行うこ
とにより多価アルコールを製造するに際して、無触媒あ
るいは触媒存在下に、副生した(II)式で示される2−置
換−2−アルケナールとホルムアルデヒド水溶液を反応
させて得られた (III)式で示される2−置換アルカナー
ル−1および(IV)式で示される2−置換アルカナール−
2含有液を、塩基触媒存在下で (I)式で示される脂肪族
アルデヒドと反応させることを特徴とする多価アルコー
ルの製造法である。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】 (以上、Rは水素基、或いは炭素数1〜22の直鎖また
は分岐鎖の脂肪族基)
【0007】
【発明の実施の形態】本発明における多価アルコールを
製造するための脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドの
反応は、アルドール縮合反応と交叉カニッツァロー反応
の2段の反応であり、塩基触媒として炭酸水素塩および
炭酸塩を用いる反応は主反応および副反応式を含めて次
の反応式で示される。なお下記反応式は、本発明の代表
的反応例として、n−ブチルアルデヒド(以下、NBA
Lと称す)からトリメチロールプロパン(以下、TMP
と称す)を製造する場合である。
【0008】 (1) アルドール縮合反応 CH3 CH2 CH2 CHO + 2HCHO → CH3 CH2 C(CH2 OH )2 CHO (V) (2) 交叉カニッツァロー反応 CH3 CH2 C(CH2 OH )2 CHO + HCHO + Na2 CO3 + H2 O → CH3 CH2 C(CH2 OH)3 + HCOONa + NaHCO3 (VI) (3) 炭酸水素塩が炭酸塩となる反応 2NaHCO3 → Na2 CO3 + H2 O + CO2 (VII) なお、炭酸塩は交叉カニッツァロー反応の反応生成物質
であるので、該反応系でギ酸塩として消費される。
【0009】本発明において (I)式で示される脂肪族ア
ルデヒドはα位に2つ以上の水素を有する化合物で、例
えばプロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、ア
セトアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタ
ナール、デカナール、ドデカナール、イコサナール、ド
コサナールなどが挙げられる。これらの化合物は2種以
上の混合物として原料に使用することもできる。
【0010】本発明で使用されるホルムアルデヒドはホ
ルムアルデヒド水溶液でも固形のパラホルムアルデヒド
でも良く、目的とする多価アルコールによって適切なも
のが使用される。ホルムアルデヒドの使用量は、目的と
する多価アルコールによって理論モル量的にも異なる。
例えば (I)式のRがエチル基(CH3 CH2 )であるN
BALとホルムアルデヒドを反応させてTMPを製造す
る場合(理論モル比=3.0)には、NBALに対する
ホルムアルデヒドのモル量比は 3.0〜6.0 モル、好まし
くは3.05〜4.0である。また (I)式のRが水素(H)で
あるアセトアルデヒド(以下、AALと称す)とホルム
アルデヒドを反応させてペンタエリスリトール(以下、
PEと称す)を製造する場合(理論モル比=4.0)に
は、AALに対するホルムアルデヒドのモル量比は 4.0
〜6.0 モル、好ましくは 4.1〜5.0 である。
【0011】本発明においてアルドール縮合反応及び交
叉カニッツァロー反応における塩基触媒は炭酸塩を主成
分とするもので、前述の(VI)式で示す如く交叉カニッツ
ァロー反応で消費されるのは炭酸塩であり、(VII) 式に
より交叉カニッツァロー反応で生成した炭酸水素塩は炭
酸塩に変わる。この塩基触媒は、一般的に工業薬品とし
て出廻っている炭酸塩もしくは炭酸水素塩との混合物で
も良い。またギ酸塩を酸化または加水分解して生成され
た炭酸水素塩から出発したものでも良い。この塩は、ナ
トリウム、カリウム、リチウム、カルシウム塩の何れで
も良いが、工業的に実施するにはナトリウム塩が一般的
である。
【0012】塩基触媒の使用量は、(I) 式で示される脂
肪族アルデヒドに対するモル比で、炭酸水素塩換算量で
1〜2 倍モル量である。副生物を抑えて高選択率に目的
の多価アルコールを得るためには、脂肪族アルデヒドの
種類に合わせて調整する必要がある。例えば、脂肪族ア
ルデヒドがNBALの場合、炭酸水素塩換算量で 1.0〜
1.2倍モルであり、また脂肪族アルデヒドがAALの場
合、炭酸水素塩換算量で 1.0〜1.3 倍モルである。
【0013】本発明で脂肪族アルデヒドとホルムアルデ
ヒドの反応温度は45〜120℃、好ましくは60〜1
10℃であり、脂肪族アルデヒドの種類によってその最
適温度は異なる。例えば、NBALからTMPを製造す
る場合は、65〜110℃である。またAALからPE
を製造する場合は、50〜105℃である。またこの場
合、系内を所定の反応温度に保つため、系内を窒素ガス
等の不活性ガスで加圧することもできる。
【0014】(II) 式で示される2−置換−2−アルケ
ナールは (V)式のアルドール縮合段階で脂肪族アルデヒ
ドに1モル量のホルムアルデヒドが付加したアルカナー
ル−1からの脱水反応により生成する。従って、副生す
る(II)式で示される2−置換−2−アルケナールは、原
料脂肪族アルデヒドにより決定され、アクロレイン、メ
チルアクロレイン、エチルアクロレイン、プロピルアク
ロレインなどが挙げられる。このような2−置換−2−
アルケナールは製品の多価アルコールの精製工程で分離
することもできるが、交叉カニッツァロー反応の工程で
分離することが好ましく、これを循環使用することによ
り多価アルコールの収率が向上する。
【0015】本発明の多価アルコールの製造法は、触媒
として炭酸塩を主成分とする塩基触媒を用い、反応途中
に主反応と並行させながら又は単独に反応系外に、副生
した2−置換−2−アルケナールを分離回収した後、交
叉カニッツァロー反応を完結させることが好ましい。こ
の2−置換−2−アルケナールの分離は、特に脂肪族ア
ルデヒドに対する塩基触媒の消費モル比が0.50から
0.95の間に行うことが好ましく、このように2−置
換−2−アルケナールの分離を交叉カニッツァロー反応
を完結させ前に行うことにより2−置換−2−アルケナ
ールの副反応による損失が避けられ、多価アルコールを
高選択率で得ることができる。
【0016】2−置換−2−アルケナールの分離回収は
交叉カニッツァロー反応が完了しない段階に行うが、減
圧、常圧または加圧条件での蒸留により容易に行える。
このような条件で副生した2−置換−2−アルケナール
を反応系外に除去することにより2−置換−2−アルケ
ナールの副反応による損失を防ぐことができる。本発明
において、反応第1段階のアルドール縮合反応と第2段
階の交叉カニッツァロー反応を区分した反応条件で行な
ってもよい。回収した2−置換−2−アルケナールは、
反応形式が多段連続反応では2〜3段目反応缶から回収
した後1段目反応缶へ循環し、また回分式の場合は次回
の反応系へ循環させることができる。なお炭酸塩を主成
分とする塩基触媒は交叉カニッツァロー反応においてギ
酸塩となるので、塩基触媒の消費モル比はギ酸塩の生成
モル比に相当し、これより2−置換−2−アルケナール
の分離時期を決定することができる。
【0017】本発明において使用する塩基触媒が炭酸塩
を主成分とする触媒であり、(VII)式の炭酸水素塩が炭
酸塩となる反応が同時に起こるため、反応第2段階の交
叉カニッツァロー反応時に炭酸ガスの発生を伴う。従っ
て低沸点物である(II)式で示される2−置換−2−アル
ケナールおよび水を炭酸ガスと系外に放出させながら非
連続的または連続的に行うことが好ましい。
【0018】本発明は、上記の如き方法により回収され
た2−置換−2−アルケナールを、水またはホルムアル
デヒド水溶液と反応させた後、循環使用するものであ
る。これにより反応性の劣る2−置換−2−アルケナー
ルが、反応性の高い2−置換アルカナール−1や2−置
換アルカナール−2となるので、多価アルコール製造プ
ロセスのホルムアルデヒドの使用量を低減することがで
き、また目的とする多価アルコールが高選択率で得られ
るようになる。また、2−置換−2−アルケナールを、
原料の脂肪族アルデヒドを添加する前に水やホルムアル
デヒド水溶液と反応させてアルドール縮合反応系に循環
使用することによって、2−置換−2−アルケナールの
副反応による損失が避けられ、多価アルコールを高選択
率で得ることができる。
【0019】2−置換−2−アルケナールと水の反応は
触媒を用いずに行うこともできる。従って一つの手段と
して例えば交叉カニッツァロー反応が完結する前に共沸
回収した2−置換−2−アルケナールと水との混合液そ
のものを沸騰温度以下に加熱攪拌し反応させることによ
って2−置換アルカナール−1含有液が得られる。これ
を塩基触媒存在下にホルムアルデヒド水溶液と混合し
て、次いで脂肪族アルデヒドを反応させることにより多
価アルコールが製造される。
【0020】また、2−置換−2−アルケナールとホル
ムアルデヒド水溶液を反応させる方法として、先ず2−
置換−2−アルケナールおよびホルムアルデヒド水溶液
と炭酸塩を主成分とする塩基触媒の水溶液とを混合し、
この中に続いて脂肪族アルデヒドを一定の速度で添加す
る方法や、あらかじめ無触媒あるいは触媒存在下に2−
置換−2−アルケナールと水を反応させ、得られた2−
置換アルカナール−1含有液にホルムアルデヒド水溶液
と塩基触媒を添加し、脂肪族アルデヒドと反応させるこ
とにより多価アルコールが製造される。
【0021】2−置換−2−アルケナールを水やホルム
アルデヒド水溶液と反応させる際の反応温度は45〜120
℃とすることが好ましく、但し当該2−置換−2−アル
ケナールの共沸温度以下にすることが必要であり、その
ために系内を窒素ガス等の不活性ガスで加圧することも
できる。反応時間は当該2−置換−2−アルケナールに
よって異なるが、例えば5分から120分の間で適宜選
択することが多い。2−置換−2−アルケナールを水や
ホルムアルデヒド水溶液を反応させるには無触媒でも良
い。触媒を使用する場合は、例えば、ギ酸、硫酸、燐酸
等の酸類、またはアルドール縮合反応、交叉カニツアロ
ー反応に用いる塩基触媒が用いられる。
【0022】2−置換−2−アルケナールは不飽和基を
持つので重合して不純物を生じ易いが、このように予め
水やホルムアルデヒド水溶液と反応させることにより2
−置換−2−アルケナール同士の重合が回避され、多価
アルコールが高選択率で得られるようになる。多価アル
コールの選択率を高めるために、2−置換−2−アルケ
ナールと水やホルムアルデヒド水溶液との反応率をでき
るだけ高めた状態で脂肪族アルデヒドを導入することが
望ましい。従って脂肪族アルデヒドの導入前の状態で、
原料の脂肪族アルデヒドに対する残留2−置換−2−ア
ルケナールの比率を0.01未満、好ましくは0.00
1未満とする。
【0023】得られた反応生成液から目的の多価アルコ
ールを得るには幾つかの方法があるが、先ず反応液中に
残存する過剰のアルカリをギ酸を用いて中和し、次に残
存するホルムアルデヒドを0.05〜0.40MPa(g)の加圧下で
蒸留して留去した後、一般的には溶媒で抽出する方法ま
たは再結晶法で多価アルコールを得る。但しこの多価ア
ルコールを得る方法は、目的の多価アルコールの物理的
性質、とりわけ水に対する溶解度の差などによって、そ
の処理法が異なる。
【0024】例えば、TMPを製造する場合には、溶媒
抽出によって目的のTMPとギ酸塩とが分離される。こ
こで使用する溶媒は、反応原料でもあるNBALでもよ
く、または、異種、例えば、メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトンなどのケトン類、イソブチルアルコ
ール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、更
には酢酸ブチルエステルなどのエステル類の単品、また
はこれらの混合物を用いるのが有効である。またAAL
からPEを製造する場合では、反応生成液を濃縮、冷却
し、晶析、分離を繰り返してPEと水溶液中のギ酸塩と
を固液分離する。ケーキとして分離したPEは、水洗し
た後、乾燥して製品とする。
【0025】一方、水相中に分離したギ酸塩は、そのま
ま又は前処理として活性炭処理して、ギ酸塩以外の有機
不純物を除去した後、濃縮し常法によってギ酸塩を副製
品として回収するか、または酸素分子存在下または不存
在下に貴金属触媒またはニッケル触媒下で、このギ酸塩
を炭酸水素塩を主成分とした塩基化合物に転換した後に
回収する。
【0026】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。なお以下の実施例および比較例において、目的
とする多価アルコールの選択率(消費アルデヒド基準)
は、脂肪族アルデヒドおよび2−置換−2−アルケナー
ルの消費量に対する目的とする多価アルコール生成量の
モル比率である。
【0027】実施例1〔NBALとホルムアルデヒドか
らTMPを製造) (初回反応)容量積30L反応槽に40重量%ホルムア
ルデヒド水溶液8200g(109.2モル)と炭酸水
素ナトリウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭
酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比2/98)
9548g(37.5モル)を混合し、窒素ガスで0.10
MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温
した。この中にNBAL2464g(34.1モル)を
一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80
℃から徐々に上昇させ最高温度90℃に制御した。その
後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃に昇温して15分間反
応を継続した。反応によって発生するCO2 は随時系外
に放出させた。次に温度、圧力を徐々に昇温、降圧さ
せ、反応槽上部から発生するCO2 ガスと共に低沸留分
である2−エチルアクロレイン(以下、ECRと称す)
と一部共沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収
のタイミングは、NBALに対する塩基触媒の消費モル
比で0.5から0.95の間である。その間反応を10
分間継続した。その回収量は620gで、この内ECR
は水中の溶解分を含めて495.6g(5.90モル)
であった。ECR回収後98〜100℃で30分間反応
を継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量
は770g(17.5モル)であった。残存した反応生
成液18822gを分析した結果、TMPを17.82
重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒド基
準)は88.8モル%であった。
【0028】〔2回目反応・無触媒でECRと水を反応
させた場合)実施例1の初回反応で回収したECR相と
水相の全量620g(ECR:5.90モル)を水80
00gと混合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した
後、撹拌下に温度を80℃まで昇温した。この温度で1
0分間反応を継続した。該反応液中のECR残量は2g
(原料NBALに対するモル比=0.0007) であった。こ
の中に40重量%ホルムアルデヒド水溶液8200g
(109.2モル)と炭酸水素ナトリウム換算濃度で3
3重量%の塩基性水溶液(炭酸水素ナトリウム/炭酸ナ
トリウムのモル比:2/98)9548g(37.5モ
ル)を添加した後、NBAL2464g(34.1モ
ル)を一定速度45分間かけて添加した。この間の温度
は80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させ
た。NBAL添加後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃を保
ちながら10分間反応を継続した。この間、反応によっ
て発生するCO2 ガスは随時系外に放出した。次に圧力
を徐々に降圧させながら反応槽上部から発生するCO2
ガスと共にECRおよび共沸する水を回収した。この回
収タイミングは前記初回反応と同様に行い、10分間反
応を継続した。この留出量は650gで、この内ECR
は水中に溶解した分を含めて499g(5.95モル)
であった。ECR回収後、更に98〜100℃で30分
間反応を継続した。残存した反応液27421gを分析
した結果、TMPを15.18重量%含んでおり、TM
P選択率(消費アルデヒド基準)は91.1モル%であ
った。
【0029】比較例1(ECRの回収を行わない場合) 実施例1の初回反応と同様に40重量%ホルムアルデヒ
ド水溶液8200g(109.2モル)と炭酸水素ナト
リウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素
ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比:2/98)95
48g(37.5モル)を混合し、窒素ガスで0.10MPa
(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温し
た。この中にNBAL2464g(34.1モル)を一
定速度45分間かけて添加した。この間の温度は80℃
から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させた。NB
AL添加後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃の条件下で1
0分間反応を継続した。次に圧力を徐々に降圧させ、常
圧下温度98℃で30分間反応を継続した。この間、副
生したECRの回収は行わなかった。なお反応によって
発生するCO2 は随時系外に放出させた。反応を通して
放出されたCO2 ガス量は775gであった。残存した
反応生成後19437gを分析した結果、TMPを1
7.7重量%含んでおり、TMP選択率(消費アルデヒ
ド基準)は76.5モル%であった。
【0030】実施例2(触媒の存在下にECRとホルム
アルデヒド水溶液を反応させた場合) 40重量%ホルムアルデヒド水溶液6775g(90.
24モル)と33重量%(炭酸水素ナトリウム換算濃
度)の塩基性水溶液7896g(31.02モル)を混
合し、窒素ガスで0.10MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に
80℃に昇温し、実施例1の2回目反応で回収したEC
R相と水相の全量650gを添加し、10分間反応を継
続した。該反応液中のECRの残量は2g(原料NBA
Lに対するモル比=0.0008)であった。該反応液に、N
BAL2035g(28.2モル)を一定速度45分間
かけて添加した。この間の温度は80℃から徐々に上昇
させ最高温度98℃に制御させた。NBAL添加後、圧
力0.10MPa(g)、温度98℃を保ちながら10分間反応を
継続した。この間、反応によって発生するCO2 ガスは
随時系外に放出した。次に圧力を徐々に降圧させながら
反応槽上部から発生するCO2 ガスと共にECRおよび
共沸する水を回収した。この回収タイミングは前記の初
回反応と同様に行った。この留出量は654gでこの内
ECRは水中に溶解した分を含めて498.8g(5.
94モル)であった。ECR回収後更に98〜100℃
で30分間反応を継続した。残存した反応生成液160
52gを分析した結果、TMPを21.18重量%含ん
でおり、TMP選択率(消費アルデヒド基準)は90.
0モル%であった。
【0031】比較例2(ECRをNBALと共に添加し
た場合) 実施例1の初回反応と同様に40重量%ホルムアルデヒ
ド水溶液6775g(90.24モル)と炭酸水素ナト
リウム換算濃度で33重量%の塩基性水溶液(炭酸水素
ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比:2/98)78
96g(31.02モル)を混合し、窒素ガスで0.10MP
a(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を80℃まで昇温し
た。これに実施例1の初回反応で回収した水相の全量を
添加し、ECR相の全量(ECR:5.94モル)とN
BAL2035g(28.2モル)を均一混合したもの
を、一定速度45分間かけて添加した。この間の温度は
80℃から徐々に上昇させ最高温度98℃に制御させ
た。この後、圧力0.10MPa(g)、温度98℃を保ちながら
10分間反応を継続した。この間、反応によって発生す
るCO2 ガスは随時系外に放出した。次に圧力を徐々に
降圧させながら反応槽上部から発生するCO2 ガスと共
にECRおよび共沸する水を回収した。この回収タイミ
ングは前記初回反応と同様に行い、10分間反応を継続
した。この留出量は654gで、この内ECRは水中に
溶解した分を含めて500.6g(5.96モル)であ
った。ECR回収後、更に98〜100℃で30分間反
応を継続した。残存した反応液16030gを分析した
結果、TMPを19.33重量%含んでおり、TMP選
択率(消費アルデヒド基準)は82.0モル%であっ
た。
【0032】実施例3〔アセトアルデヒドとホルムアル
デヒドからPEを製造) (初回反応)40重量%ホルムアルデヒド水溶液687
0g(91.5モル)と炭酸ナトリウム1314g(1
2.4モル)と水3066gを混合し、窒素ガスで0.10
MPa(g)まで昇圧した後、撹拌下に温度を60℃まで昇温
した。この中にアセトアルデヒド893.2g(20.
3モル)を一定速度30分間かけて添加した。この間の
温度は60℃から徐々に上昇させ最高温度75℃に制御
した。その後、圧力0.10MPa(g)、温度80℃に昇温して
15分間反応を継続した。反応によって発生するCO2
は随時系外に放出させた。次に温度、圧力を徐々に降
温、降圧させ、反応槽上部から発生するCO2 ガスと共
に低沸留分であるアクロレイン(以下、ACRと称す)
と一部共沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収
タイミングは、NBALに対する塩基触媒の消費モル比
で0.5から0.95の間である。その間反応を10分
間継続した。その回収量は320gで、この内ACRは
水中の溶解分を含めて147.8g(2.64モル)で
あった。ACR回収後98〜100℃で30分間反応を
継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量は
536.8g(12.2モル)であった。残存した反応
生成液11286gを分析した結果、PEを16.94
重量%含んでおり、PE選択率(消費アルデヒド基準)
は90.2モル%であった。
【0033】〔2回目反応・触媒の存在下にアクロレイ
ン(ACR)とホルムアルデヒド水溶液を反応させた場
合〕40重量%ホルムアルデヒド水溶液6870g(9
1.5モル)と炭酸ナトリウム1183g(11.2モ
ル)と水3197gを混合し、窒素ガスで0.10MPa(G)ま
で昇圧した後、撹拌下に60℃に昇温した。この中に初
回反応で回収したACR相と水相の全量320gを添加
し、10分間反応を継続した。該反応液中のACRの残
量は0.8g(原料アセトアルデヒドに対するモル比=
0.0009)であった。該反応液に、アセトアルデヒ
ド893.2g(20.3モル)を一定速度30分間か
けて添加した。この間の温度は60℃から徐々に上昇さ
せ最高温度75℃に制御させた。その後、圧力0.10MPa
(g)、温度80℃に昇温して15分間反応を継続した。
この間、反応によって発生するCO2 ガスは随時系外に
放出した。次に温度、圧力を徐々に昇温、降圧させ、反
応槽上部から発生するCO2 ガスと共にACRと一部共
沸する水を蒸留法で回収留去させた。この回収タイミン
グは前記の初回反応と同様に行った。その間反応を10
分間継続した。その回収量は322gで、この内ACR
は水中の溶解分を含めて148.2g(2.65モル)
であった。ACR回収後98〜100℃で30分間反応
を継続した。また反応を通して放出されたCO2 ガス量
は540g(12.3モル)であった。残存した反応生
成液11436gを分析した結果、PEを19.49重
量%含んでおり、PE選択率(消費アルデヒド基準)は
91.5モル%であった。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、炭酸塩を主成分とする
塩基触媒を用いた脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒド
との反応による多価アルコールの製造方法において、付
加価値の低い副生2−置換−2−アルケナールを水また
はホルムアルデヒド水溶液と反応させた後に循環使用す
ることにより新たに2−置換−2−アルケナールが実質
上副生することなく、目的とする多価アルコールを、高
選択率で効率良く、容易に製造することができる。従っ
て本発明の方法は、炭酸塩を主成分とする塩基触媒を用
いて、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドから多価ア
ルコールが、容易に高収率、且つ高品質で得られるの
で、工業的に極めて有利である。
フロントページの続き (72)発明者 岩本 淳 岡山県倉敷市水島海岸通り3丁目10番地 三菱瓦斯化学株式会社水島工場内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 BA02 BA32 BA69 BD20 BD34 BD51 BD70 FE11 FG30 4H039 CA60 CJ30

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に
    (I)式で示される脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒド
    とのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツ
    ァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造する
    に際して、無触媒あるいは触媒存在下に、副生した(II)
    式で示される2−置換−2−アルケナールと水を反応さ
    せて得られた (III)式で示される2−置換アルカナール
    −1含有液を、塩基触媒存在下にホルムアルデヒドと混
    合し、次いで (I)式で示される脂肪族アルデヒドを反応
    させることを特徴とする多価アルコールの製造法。 【化1】 【化2】 【化3】 (以上、Rは水素基、或いは炭素数1〜22の直鎖また
    は分岐鎖の脂肪族基)
  2. 【請求項2】炭酸塩を主成分とする塩基触媒存在下に
    (I)式で示される脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒド
    とのアルドール縮合反応を行い、引き続き交叉カニッツ
    ァロー反応を行うことにより多価アルコールを製造する
    に際して、無触媒あるいは触媒存在下に、副生した(II)
    式で示される2−置換−2−アルケナールとホルムアル
    デヒド水溶液を反応させて得られた (III)式で示される
    2−置換アルカナール−1および(IV)式で示される2−
    置換アルカナール−2含有液を、塩基触媒存在下で (I)
    式で示される脂肪族アルデヒドと反応させることを特徴
    とする多価アルコールの製造法。 【化4】 【化5】 【化6】 (以上、Rは水素基、或いは炭素数1〜22の直鎖また
    は分岐鎖の脂肪族基)
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