JP3986817B2 - カプロラクタム製造工程で発生するアルカリ性廃液より炭素原子数4〜6のジカルボン酸のエステル類を製造する方法 - Google Patents

カプロラクタム製造工程で発生するアルカリ性廃液より炭素原子数4〜6のジカルボン酸のエステル類を製造する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カプロラクタム製造工程に発生するアルカリ性廃液より、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を回収・製造し、そのエステルを製造する、簡単で有効な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シクロヘキサンを原料に用い、液相空気酸化によりシクロヘキサノールとシクロヘキサノンを製造する方法は、ナイロン6、ナイロン66などの化繊工業の原料供給において非常に重要な地位を占めており、ナイロン6の原料であるカプロラクタムと、ナイロン66の原料に用いられるアジピン酸は、上記で製造されたシクロヘキサノールとシクロヘキサノンより製造されている。
【0003】
カプロラクタムの製造工程において、一般には、コバルト、クロムなどの触媒を用い、150〜160℃、784〜980kPa{8〜10kgf/cm2}の条件下に、空気を導入してシクロヘキサンを酸化することによりシクロヘキサノールとシクロヘキサノンを合成し、さらにオキシム化反応やベックマン転位反応のような各種の工程を経て、カプロラクタムを製造する方法がとられている。
【0004】
上記のシクロヘキサンの酸化反応において、一部分のシクロヘキサンに過剰酸化が起こり、中性物質と酸性物質が生じる。これらの酸性物質は、中性物質であるアルコール類と反応して、エステル類を生成する。そのために、酸化反応液中に、主生成物のシクロヘキサノールとシクロヘキサノンのほかに、多くの副生成物が存在する。たとえば、モノカルボン酸、ジカルボン酸(たとえば、主としてコハク酸、グルタル酸、アジピン酸)、オキシ酸、少量のアルコール類、アルデヒド類、低分子のエステル類とシクロヘキサノール基を含有するエステル類やケトン類などの化合物、その他構造未詳の複雑な有機化合物が副生する。これの副生物を分離するために、カプロラクタム製造工程中、通常、水酸化ナトリウム溶液を用いて上記副生物を鹸化した後、塩を形成させて有機酸ナトリウム塩水溶液にした後、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールから分離する。このようにして得られる水溶液が、いわゆるアルカリ性廃液と称されるものである。
【0005】
アルカリ性廃液中に含まれるコハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸の塩類は、酸性にすることで、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸にした後、メタノールやその他のアルコール類とエステル化反応を行うことにより、ジカルボン酸エステルを合成して、多くの工業用途に提供することができる。たとえば、炭素原子数4〜6のジカルボン酸とメタノールとのエステル化反応により得られるジカルボン酸メチルエステル混合物は、高効率、高い燃焼点、無毒で溶解度の高い、環境にやさしい有機溶媒として知られ、市場性を有する。さらに、上記のエステル化で得られるアジピン酸メチルエステルは、ついで水素化反応により、1,6−ヘキサンジオールに転換されて、ポリウレタン樹脂およびポリエステル樹脂の重要な原料となるので、経済的に非常に有用である。
【0006】
ところが、過去において一般に常用されている上記のアルカリ性廃液の処理方法は、焼却施設により燃焼させ、炭酸ナトリウムとして回収し、ナトリウム資源として用いる。これらの方法は最も直接的な方法であるが、焼却の際に非常に腐蝕性の強いアルカリ性物質が発生し、施設の安全性と寿命をおびやかす事態となり、さらに発生する二酸化炭素ガスは、地球温暖化問題を引き起こし、廃気ガス処理など、環境保全上問題となる。そのうえ、アルカリ性廃液中に存在する有用物資を回収・利用することができず、経済的に多大な不利となる。そこで、アルカリ性廃液中より有用物質を回収する方法として、下記の多くの特許が提案されている。
【0007】
たとえば、米国特許6,063,958号明細書には、カプロラクタム製造工程中に発生するアルカリ性廃液を、まず無機プロトン酸で酸性化し、そのpHを≦3に調節して、油層と水層に分離する工程を含む、有用物質の回収方法が開示されている。上記水層は、たとえば硫酸ナトリウムのような無機酸塩の水溶液である。油層を無機プロトン酸水溶液で抽出し、アジピン酸と6−ヒドロキシヘキサン酸を回収する。水層をさらに、アルコール類、ケトン類もしくはエステル類、または上記の任意の2種の混合物を用いて、アジピン酸と6−ヒドロキシヘキサン酸を抽出する。抽出液をさらに、前記の水相、たとえば硫酸ナトリウムのような無機酸塩の水溶液中に含まれるアジピン酸および6−ヒドキシヘキサン酸の抽出に用い、最後にアジピン酸と6−ヒドロキシヘキサン酸を多く含むアルコール類、ケトン類もしくはエステル類、またはそれらの2種以上からなる抽出液を得て、蒸留によりアジピン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸などの有用物質を回収する。回収率は50〜55%であることが記載されている。
【0008】
また、特公昭53-33567号公報には、シクロヘキサンの酸化反応液中に水酸化ナトリウムを加え、生じたアルカリ性有機溶液を硫酸で中和し、そのpHを調節することにより水層と油層に分離することを含む、1,6−ヘキサンジオールの回収方法が開示されている。上記水層は硫酸ナトリウム溶液であり、油層は有機酸化合物である。油層は、まず有機物を含まない、濃度15重量%以上の硫酸ナトリウム溶液で抽出し、抽出液を前記の水層に加え、さらに有機溶溶媒を用いて抽出し、抽取液から蒸留により溶媒を除去した後、エステル化/水素化反応により1,6−ヘキサンジオールを製造する。
【0009】
さらに、米国特許4,442,303号明細書には、アジピン酸の製造工程における廃液より、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を回収する方法が開示されている。すなわち、炭素原子数1〜3のアルキルアルコールと炭素原子数6〜20のアルキルアルコールの混合物を用い、廃液と混合してエステル化反応を行い、静置して分離した後、有機層を蒸留することにより、炭素原子数4〜6のジカルボン酸と炭素原子数6〜20のアルキルアルコールとのエステル類化合物を得て、ジカルボン酸を回収する。
【0010】
また、米国特許4,052,441号明細書には、シクロヘキサンの空気酸化反応によって得られた反応混合物に、アルカリ液を加え、モノカルボン酸、6−ヒドロキシへキサン酸、ジカルボン酸などを含むアルカリ性廃液を分離し、硫酸を加えて酸性にすることで、油層と水層に分離することを含む、アジピン酸および/またはその誘導体の製造方法が開示されている。水層は、硫酸ナトリウム水溶液であり、油層には有機酸が含まれている。この油層を減圧蒸留して、低沸点のモノカルボン酸と水分を除去した後、冷却によりアジピン酸の結晶を回収し、母液からさらに二段式蒸留により、モノカルボン酸、6−ヒドロキシへキサン酸とジカルボン酸などをそれぞれ回収し、さらにエステル化反応を行った後、分留塔することでエステル化合物を得る。結晶化によって得たアジピン酸の粗生成物は、再結晶またはエステル化反応により精製することができる。
【0011】
米国特許4,271,315号明細書と同4,316,775号明細書には、アジピン酸の製造工程における廃液の回収方法が開示されている。まず廃液を濃縮して、一部分の水と揮発性物質を除去し、得られる濃縮液にメタノールを加えてエステル化反応を行い、水に不溶性の有機溶媒を用いて、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステルを抽出し、静置し、分液した後、有機層を蒸留することにより有機溶媒を回収し、炭素原子数4〜6のジカルボン酸メチルエステルを得る。
【0012】
上記の特許には、多くの有益な処理方法が提案されているが、有用物質の回収方式としては、下記のような欠点が存在する。
【0013】
(1)前述の米国特許6,063,958号明細書に記載された発明では、水溶性や水不溶性の溶媒を用いる有用物質の抽出法が使用されているが、これらの抽出方法は繁雑で、かつ有用物質の回収率が低く(50〜55%)、しかも多くの有機物が残留し、さらに焼却または廃棄処理を必要とし、事実上、一部分の有用物質しか回収できない。
【0014】
(2)結晶法を用いて回収される有用物質のうち、主要なジカルボン酸は、アジピン酸であるが、回収率が低く、かつ純度も低く、再三の再結晶処理により、はじめて必要な純度のものが得られ、しかもその他の有用物質、たとえば、6−ヒドロキシヘキサン酸とその他のジカルボン酸を回収できない。
【0015】
(3)アルコール類を加えて廃液を直接エステル化する方法では、廃水溶液中にアルコール類を添加し、直接エステル反応を行う方法がとられているが、一部分のジカルボン酸しか回収できず、たとえば、6−ヒドロキシヘキサン酸は、水酸基を含有して一方のカルボキシル基のみがエステル化されているので、ジカルボン酸エステルと混在した形で市販することができない。また、アルカリ性廃液中には、アジピン酸と6−ヒドロキシヘキサン酸のほかに、さらに20〜40%の低分子エステル化合物類が含まれている。たとえば、完全に鹸化されていないシクロアルカノール類のエステル類およびケトン類、ならびに炭素原子数4〜6のラクトン類などの有機物質は、酸化により有用なジカルボン酸に転換されないと、有機残留物が増えて、相対的にはジカルボン酸の回収量が少なくなり、回収効率が低下する。
【0016】
それゆえ、アジピン酸製造工程における廃液の従来の回収方法は、カプロラクタム製造工程に発生するアルカリ性廃液中の有用物質の回収には、不適当であることが明らかである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
それゆえ、本発明の目的は、上記の欠点を解決して、カプロラクタムの製造工程で発生するアルカリ性廃液より炭素原子数4〜6のジカルボン酸の回収・製造と、そのエステルなどの有用物質の製造を、効率的に行う方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決する目的で、アルカリ性廃液中より有用物質を回収し、ジカルボン酸エステル類を製造する、簡単で有効な方法について種々検討した結果、好ましい方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、高い効率の酸化反応と改良された濃縮方法とを採用することにより、アルカリ性廃液中より大部分の有機物質をジカルボン酸として効率よく回収してジカルボン製エステルを合成し、その経済的価値を大幅に高めることに成功したものである。
【0019】
本発明の、カプロラクタムの製造工程で発生するアルカリ性廃液中より炭素原子数4〜6のジカルボン酸類を回収・製造し、そのエステル類を製造する方法には、下記の工程が含まれる。
【0020】
(1)油層に含まれている有機物質の酸化と転化:
カプロラクタムの製造工程で、シクロヘキサンの酸化反応により生じるアルカリ性廃液を、まず硫酸で中和し、そのpHを調節することにより水層と油層に分離する。油層に酸化剤として硝酸を添加し、適当な反応段階数、反応温度および圧力の下で、油層中に含まれている有機物質の酸化反応を行うことで、大部分の有機物質をジカルボン酸に転換する。
【0021】
(2)酸化と転換後の反応液の二段濃縮:
上記の工程(1)において、硝酸酸化によって得られた反応液を、たとえば二段式濃縮装置に導入し、第一段階の濃縮装置により、低沸点のモノカルボン酸と大部分の硝酸を留去し、第二段階の濃縮において、残留するニトロ化合物を高温により分解するとともにそこに存在する硝酸を回収するという二段階の濃縮を行うことで、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を主とする粗製濃縮物を得る。
【0022】
(3)ジカルボン酸粗製濃縮物のエステル化:
上記の製造工程(2)によって得た炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含む粗製濃縮物を、エステル化反応装置に入れ、炭素原子数1〜4のアルキルアルコールを加え、触媒の存在下または非存在下でエステル化反応を行う。十分なエステル化の効果を挙げるために、このエステル化を、二段階に分けて反応させることが好ましい。すなわち第一段階のエステル化において、温度と圧力を比較的低く設定することにより、流動性が良好になり、カルボキシル基の半分がエステル化したセミエステル化の中間生成物が得られる。引き続き第二段階のエステル化において、温度と圧力を上げることにより、十分なエステル化が行われ、エステル化率の高いジカルボン酸エステル類の粗生成物を得る。
【0023】
(4)ジカルボン酸エステルの蒸留:
上記の製造工程(3)において得られたジカルボン酸エステル粗生成物を、少なくとも一組以上の分留塔または精留塔により、単一成分のジカルボン酸エステル、または2種以上の成分のジカルボン酸エステル混合物を得る。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における、カプロラクタムの製造工程より生じるアルカリ性廃液中より炭素原子数4〜6のジカルボン酸を回収・製造し、そのエステルを製造する方法の、各工程について、さらに詳しく説明する。
【0025】
カプロラクタムの製造工程において、シクロヘキサンを酸化して得られる粗生成物は、アルカリ液で鹸化されて塩を生じ、水で抽出した後、二層に分離する。有機層はシクロヘキサノールとシクロヘキサノンとの混合物であり、水層は有機酸のナトリウム塩、すなわちアルカリ性廃液と称されるものである。このアルカリ性廃液を、まず硫酸で中和し、そのpHを調節することにより、水層と油層に分離する。油層には、各種の有用物質が存在し、その成分は、おおむね下記のとおりである:ギ酸:1〜3%、酢酸:1〜3%、酪酸:2〜5%、吉草酸:0.1〜0.5%、カプロン酸:2〜6%、コハク酸:0.05〜0.3%、グルタル酸:0.5〜1.5%、アジピン酸:8〜15%、6−ヒドロキシヘキサン酸:10〜20%、水分:20〜30%、その他の低分子エステル化合物、たとえば完全に鹸化されていないシクロヘキサノールのエステル類やケトン類、ならびに炭素原子数4〜6のラクトン類および未詳の有機化合物など約20〜40%。油層中に存在するこれらの成分が、本発明の回収・製造方法の対象である。
【0026】
上記工程(1)では、カプロラクタムの製造工程において、シクロヘキサンの酸化過程で生じる上記のアルカリ性廃液を、まず硫酸を用いて中和し、そのpHを調節することにより油層と水層に分離する。水層には、主に硫酸ナトリウムを含有しているので、これを硫酸ナトリウム回収装置に送り、硫酸ナトリウムを回収する。
【0027】
油層中には、前述のように、アジピン酸および6−ヒドロキシヘキサン酸、ならびにその他の低分子のエステル化合物、たとえば完全に鹸化されていないシクロヘキシル基を含むエステル類やケトン類と、炭素原子数4〜6のラクトン類などの有機物質が存在する。この工程の主な作用は、油層中に含まれている約10〜20%の6−ヒドロキシヘキサン酸などの有機物質を、完全にアジピン酸に転換すること、同時に上記のその他の低分子のエステル化合物を、適切な酸化反応によってジカルボン酸に転換することにより、有機物質の酸化反応の後の反応液中に存在するジカルボン酸の含有量を大幅に向上させ、回収効率を高めることである。さらに多くのジカルボン酸を回収して、ジカルボン酸エステルを製造するために、本発明において、酸化剤として硝酸を使用するほか、さらに1種以上のその他の酸化剤、たとえば過酸化水素、過塩素酸、過マンガン酸カリウムなどを加え、適切な温度と圧力条件下で、油層に含まれる有用物質の酸化および転換反応を行うことができる。本発明において使用される硝酸の濃度は、通常10〜90%の範囲であり、20〜40%が最も好ましい。反応を完全に行う目的で、硝酸と油層の重量比は、0.5〜30:1の範囲が好ましく、5〜10:1が最も好ましい。酸化効率を高めるために加えられるその他の酸化剤の比率は、油層に対して、通常0〜5重量%、好ましくは0.01〜5重量%であり、0.01〜1重量%が最も好ましい。
【0028】
反応条件としては、反応段階数が少なくとも1段階以上であり、2〜5段階が好ましい。反応温度と反応時間の制御は、反応の段階ごとに異なる。反応温度は、10〜150℃が好ましく、30〜120℃が特に好ましい。反応液は、第一段階から最終の反応段階数に至るまで、温度を徐々に上げる。各段階の反応温度の差は、5〜30K{℃}が好ましく、10〜20K{℃}が最も好ましい。各反応段階数ごとの反応時間は、通常5分間〜4時間であり、10分間〜2時間が好ましい。反応圧力は、通常、絶対圧力で49〜196kPa{0.5〜2kgf/cm2}であり、78.4〜118kPa{0.8〜1.2kgf/cm2}が最も好ましい。反応中に生じる一酸化窒素、二酸化窒素ガスなどは、硝酸回収システムに送って回収する。
【0029】
工程(2)では、工程(1)において硝酸酸化と転換によって得られた反応液を、たとえば二段式の濃縮装置において濃縮する。第一段階の濃縮工程において、濃縮温度は通常50〜120℃に調節され、80〜100℃が最も好ましい。圧力は、減圧または常圧でよく、通常、絶対圧力で19.6〜147kPa{0.2〜1.5kgf/cm2}であり、78.4〜118kPa{0.8〜1.2kgf/cm2}が最も好ましい。第一段階での濃縮処理は、スチームストリッピングにより、濃縮効果を高めることができる。第二段階の濃縮工程において、濃縮温度は通常120〜200℃に調節され、100〜120℃が特に好ましい。絶対圧力は通常{0.5〜2.0kgf/cm2}が好ましく、78.4〜147kPa{0.8〜1.5kgf/cm2}が特に好ましい。
【0030】
上記のように、濃縮工程を二段階に分けて行うことは、本発明の技術的な特徴である。それは、硝酸が有機化合物と反応すると、雑多なニトロ化合物を形成し、簡単な蒸留法やスチームストリッピングでは除去できず、そのうえ、蒸留後の残留物にニトロ化合物が存在すると、後続のエステル化反応にも影響を与えるので、二段階に分けて濃縮することにより、このニトロ化を回避する。第一段階で低沸点の化合物と大部分のモノカルボン酸を留出させ、第二段階においては、高温により残留するニトロ化合物を分解するとともに、そこに存在する硝酸を回収することにより、最後に、主として炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含有する濃縮粗生成物を得ることができる。
【0031】
工程(3)では、上記の工程(2)で得た炭素原子数4〜6のジカルボン酸を主体とする濃縮粗生成物を、エステル化反応装置に導入し、炭素原子数1〜4のアルキルアルコール、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどをこれに加える。アルキルアルコールとジカルボン酸の濃縮粗生成物の重量比は、通常1〜15:1が好ましく、1〜5:1が特に好ましい。同時にジカルボン酸に対して0〜5重量%の触媒を加えてもよい。触媒量は0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜1%が特に好ましい。一方、触媒の非存在下でも反応を行うことができる。上記に用いられる触媒としては、たとえば、硫酸、リン酸、硝酸、各種のアルキルスルホン酸やベンゼンスルホン酸など、またはカチオンイオン交換樹脂などが挙げられる。
【0032】
さらにエステル化反応の効率を高めるために、本発明におけるエステル化反応も二段階に分けて行う。反応液の流動性をよくし、しかもカルボキシル基の半分がエステル化したセミエステル化中間生成物を得るために、第一段階においては、反応温度および圧力をそれぞれ低く保つ必要がある。通常、反応温度は40〜120℃であり、50〜100℃が特に好ましい。反応圧力は、通常、絶対圧力で19.6〜118kPa{0.2〜1.2kgf/cm2}が好ましく、78.4〜98kPa{0.8〜1.0kgf/cm2}が特に好ましい。反応時間は、通常0.5〜8時間、1〜4時間が特に好ましい。次の第二段階におけるエステル化反応では、反応温度および圧力を高めて、エステル化反応を十分に進行させる。反応温度は、通常80〜200℃が好ましく、100〜150℃が特に好ましい。反応圧力は、通常、絶対圧力で78.4〜245kPa{0.8〜2.5kgf/cm2}が好ましく、98〜147 kPa {1.0〜1.5 kgf/cm 2 が特に好ましい。反応時間は、通常0.5〜8時間であり、1〜4時間が特に好ましい。第二段階によって、エステル化率の高いジカルボン酸エステル粗生成物が得られ、そのエステル化率は、85%以上に達する。
【0033】
工程(4)では、上記の工程(3)で得たジカルボン酸エステル粗生成物を、たとえば、少なくとも一組以上の分留塔や精留塔を有する蒸留装置に導入する。該蒸留塔の種類は、棚段式でも充填式でもよい。蒸留塔の理論段数、温度および圧力を調節することで、単一成分のジカルボン酸エステルか、または2種以上の成分が混合しているジカルボン酸エステル混合物を得ることができる。溶媒用のジカルボン酸エステル混合物を得るためには、理論段数が少なくとも10〜100段であることが好ましく、20〜50段が特に好ましい、圧力は通常、絶対圧力で1.96〜98kPa{0.02〜1.0kgf/cm2}であり、9.8〜49kPa{0.1〜0.5kgf/cm2}が特に好ましい。エステル化合物の回収温度は、通常70〜250℃であり、100〜150℃が特に好ましく用いられる。
【0034】
上記の本発明におけるカプロラクタムの製造工程において発生するアルカリ性廃液より、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のエステルを製造するための処理工程の一例を、図1に示すフローチャートに基づき、下記のように説明する。
【0035】
まず、カプロラクタムの製造工程において、コバルト塩触媒の下、150〜165℃、810〜1,013kPa{8〜10気圧}の反応条件により、シクロヘキサンの液相酸化を行う。得られた反応液を水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、アジピン酸および6−ヒドロキシヘキサン酸などの有機物質を含むアルカリ性廃液1を得る。酸化槽R1において、硫酸2を用いてアルカリ性廃液1を中和し、酸化槽中の反応液3を沈殿槽R2に注入して、分離するまで静置する。分離して生ずる下層は、水相、すなわち硫酸ナトリウム水溶液4であり、上層は油相、すなわち有機酸溶液5である。この油相5が、本発明の回収・製造方法の出発原料として用いられ、これより有用物質が回収される。
【0036】
上記の油相の有機酸溶液5を硝酸酸化システムS1に導入し、新しい硝酸7と回収された硝酸8とを必要に応じて混合して必要な硝酸濃度に調節した後、触媒6などと共に前記の硝酸酸化システムS1に加えて、油相の有機酸溶液5の酸化と転換反応を行う。反応中に生じるモノカルボン酸ガスと一酸化窒素、二酸化窒素およびその他のガス10を、硝酸・モノカルボン酸回収システムT1に送って回収する。
【0037】
硝酸酸化システムS1より得る酸化反応液12を、次に濃縮システムS2に導入する。該濃縮システムS2は、二段階の濃縮装置を含む。濃縮システムS2より、主として炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含むジカルボン酸の濃縮粗生成物13が得られる。
【0038】
上記の主として炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含む濃縮粗生成物を、エステル化システムS3に送る。炭素原子数1〜4のアルキルアルコール17と、アルコール回収システムT2より回収されてきたアルコール15とを必要に応じて混合した後、上記のエステル化システムS3に加える。さらに、必要に応じて触媒14を加えて、エステル化反応を行う。上記のエステル化システムS3も、二段階に分かれている。エステル化率の高いジカルボン酸エステルの粗生成物18が得られる。粗生成物18を蒸留システムS4によって精製して、未反応のアルコール19、精製ジカルボン酸エステル21および蒸留残渣20を得る。エステル化反応によって生じる水と、過剰の未反応のアルコール16、および蒸留によって得られるアルコール19から、回収システムT2によってアルコールを回収する。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。また、本発明の請求の範囲内において、本発明の技術に関する熟練者が行う調整と改良は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0040】
実施例1
カプロラクタム製造工程中に生じるアルカリ性廃液を硫酸で中和し、そのpHを調節することにより、水層と油層に分離した。油層には、有機酸などの有用物質が含まれていた。該油層120gをとり、本実施例の出発原料として用いた。その成分を分析した結果を、下記の表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003986817
【0042】
酸化および転換反応を三段式工程によって行った。反応を、常圧下、回分式によって進めた。2,000ml容量の反応容器に、濃度30%の硝酸溶液600gをあらかじめ仕込み、これを撹拌しながら上記組成の原料を添加した。油層と硝酸溶液の重量比率は、1/5であった。第一段階の反応温度を30℃に保ち、原料を約20分間で供給して、さらに反応を1時間続けた後、溶液温度を50℃に上昇させて第二段階の反応に移行して、反応をさらに1時間続け、ついで液温を70℃に上昇させて第三段階の反応に入り、さらに反応を1時間行った後、濃縮工程に移行した。
【0043】
濃縮工程においては、二段式濃縮法を採用した。第一段階における濃縮を、温度が120℃になるまで続け、水蒸気を通して溶液中の遊離の硝酸を追出した後、水蒸気の導入を止め、濃縮温度をさらに140℃まで上昇させて、溶液中のニトロ化合物を完全に分解するとともに、そこに存在する硝酸を回収し、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を主体とする濃縮粗生成物61.5gを得た。その成分を分析した結果を、下記の表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0003986817
【0045】
比較例1
米国特許6,063,958号明細書に記載された方法により、実施例1で使用したのと同様の原料を用い、そのカプロラクタムの製造工程において生じたアルカリ性廃液を硫酸で中和し、pHを調整することにより、水層と油層に分離した。油層には有用物質として有機酸が含まれ、水層は硫酸ナトリウム水溶液であった。油層120gと水層370gを、本比較例の出発原料として用いた。
【0046】
上記の有用物質を含む油層120gを、まず18%の硫酸水溶液600gを用いて、温度70〜80℃で抽出した後、静置して二層に分離させた。これにより、60gの上層液と、660gの下層液(溶液Aと称す)を得た。この下層液が、有用物質を含む有機酸水溶液である。
【0047】
上記の硫酸ナトリウムを含む水溶液370gを、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンとの混合溶媒370gを用い、常温で抽出し、静置して二層に分離させた。これにより、上層液420g(溶液Bと称す)と下層液320gを得た。この上層液が、有用物質の有機酸と溶媒を含有する油層液である。
【0048】
次に、溶液Bで溶液Aを再抽出し、得られた抽取油層液を蒸留して、溶媒を除去することにより、アジピン酸7.3gと6−ヒドロキシヘキサン酸9.8gを得た。両者の合計収量は17.1gであった。
【0049】
実施例1の結果を比較例1と比較した場合、同様に120gの油層を用いながら、実施例1において最終的に得たアジピン酸は20.93gあり、6−ヒドロキシヘキサン酸0.33gとの合計収量は21.26gであって、比較例1の17.1gに比べて多く、特にアジピン酸の占める比率が、比較例に比べて非常に多いことが明らかである。
【0050】
実施例2
実施例1で得た濃縮粗生成物50gを用い、下記のように、エステル化反応と蒸留を行った。すなわち、還流冷却管を備えた、容量500mlのガラス製反応フラスコに、メタノール100gと濃縮粗生成物50gを加え、さらにp−トルエンスルホン酸一水和物0.5gを触媒として加え、第一段階のエステル化反応を行った。エステル化反応の温度を80℃に保ちながら、反応を2時間続けた後、還流冷却管を外し、さらに加熱して未反応の残留メタノールと、反応により生じた水を留出させた。続いてエステル化温度を110℃に上昇し、徐々にメタノール200gを加え、エステル化温度を110℃に保ちながら、メタノールを4時間かけて添加することにより、第二段階のエステル化反応を行った。反応終了後、さらに加熱して、未反応の残留メタノールと反応によった生じた水分を、蒸留によって除去し、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステルの粗生成物53.5gを得た。ガスクロマトグラフィーでその組成分を分析し、エステル化率を計算した。その結果を、下記の表3に示す。
【0051】
【表3】
Figure 0003986817
【0052】
エステル化率の計算:
コハク酸メチルエステルのエステル化率(%)=〔(53.5g×14.13%)/146.14〕/〔(50g×14.27%)/118.09〕×100%=85.6%
グルタル酸メチルエステルのエステル化率(%)=〔(53.5g×27.68%)/160.17〕/〔(50g×27.36%)/132.11〕×100=89.3%
アジピン酸メチルエステルのエステル化率(%)=〔(53.5g×32.64%)/174.19〕/〔(50g×34.03%)/146.14〕×100=86.1%
【0053】
ジカルボン酸メチルエステル粗生成物50gを、容量250mlの蒸留フラスコに仕込み、真空度4kPa{30Torr}で蒸留し、110〜190℃の間の留出物を回収して、透明な、純度の高い、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステル混合物を、蒸留生成物35.1gとして得た。ガスクロマトグラフィーによりそれぞれのジカルボン酸のメチルエステルの含有量を分析し、収率を計算した。その結果を、下記の表4に示す。
【0054】
【表4】
Figure 0003986817
【0055】
実施例3
実施例1で用いたのと同じ油層を、本実施例の原料として用い、二段階の酸化および転換反応を行った。本反応は、常圧下で回分方式によって行った。容量2,000mlの反応フラスコに、まず濃度50%の硝酸溶液360gと、濃度35%の過酸化水素溶液10gを仕込み、撹拌しながら上記の油層120gを徐々に加えて反応を行った。この時、油層と硝酸溶液の重量比率は、1/3であった。第一段階の反応温度を50℃に保ち、約30分間かけて原料を加えた後、さらに反応を2時間続けた。続いて第二段階の反応に移り、溶液温度を70℃に上げて2時間反応させた。
【0056】
反応終了後、下記の濃縮操作を行った。すなわち、濃縮処理も二段式濃縮により行い、第一段階では、濃縮温度が約120℃に達したとき、水蒸気を通じて溶液内の遊離状の硝酸を追い出した後、水蒸気を止め、濃縮温度をさらに140℃に上げて、溶液内のニトロ化合物を完全に分解した。ついで濃縮を止め、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を主体とする濃縮粗生成物62.49gを得た。その成分を分析した。その結果を、下記の表5に示す。
【0057】
【表5】
Figure 0003986817
【0058】
上記の結果より、原料油層中に元来含まれていたジカルボン酸(6−ヒドロキシヘキサン酸を含む)の重量が、表1に示されるように合計31.38gであったのに対して、本発明の方法により、濃縮粗生成物中に含まれるジカルボン酸(6−ヒドロキシヘキサン酸を含む)の総重量は、45.78gであった。すなわち、その増加量は14.4gであり、増加率は45.89%であった。しかも生成物中の6−ヒドロキシヘキサン酸の量が明らかに減少し、濃縮粗生成物の主成分は、炭素原子数4〜6のジカルボン酸となった。
【0059】
実施例4
実施例3で得た濃縮粗生成物50gをとり、下記のエステル化反応と蒸留とを行った。まず、メタノール150gと濃縮粗生成物50gとを、容量500mlの高圧反応容器に仕込み、反応器を密閉して、第一段階のエステル化反応を行った。すなわち、反応温度を90℃に保ち、反応を2時間行った後、容器の留出口を開けて加熱を続け、未反応の残余のメタノールと、反応により生じた水分を留出させた。続いて第二段階のエステル化反応に移り、反応温度を120℃に上げ、メタノール200gを徐々に加えながら、120℃の反応温度を保ち、圧力を約118kPa{1.2kgf/cm2}付近に維持し、4時間かけてメタノールを加え終えた後、さらに加熱して、未反応の残余のメタノールと、反応により生じた水分を留出させることにより、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステルを含む粗生成物54.1gを得た。ガスクロマトグラフィーを用いて、各ジカルボン酸メチルエステルの含有量を分析し、そのエステル化率を計算した。その結果を、下記の表6に示す。
【0060】
【表6】
Figure 0003986817
【0061】
上記で得たジカルボン酸メチルエステル粗生成物50gを、容量250mlの蒸留フラスコに仕込み、真空度4kPa{30Torr}で蒸留し、110〜190℃の間に留出した成分を回収することにより、透明で純度の高い、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステルの混合蒸留物34.0gを得た。ガスクロマトグラフィーにより、その各ジカルボン酸メチルエステルの含有量を分析し、その収率を計算した。その結果を、下記の表7に示す。
【0062】
【表7】
Figure 0003986817
【0063】
実施例5
本実施例は、常圧下で連続式反応によって行った例である。実施例1で用いたのと同じ油層を、本実施例の原料として用いた。濃度40%の硝酸溶液を調製した。二段式の連続酸化と転換反応装置に、油層と硝酸溶液を定量ポンプで連続的に送りこみ、油層と硝酸溶液の導入量を重量比で1/7に制御した。第一段階の反応温度を50℃に維持し、1時間反応させた。ついで、第二段階の反応温度を70℃に保ち、1時間反応させた。第二段階の反応液を集めて濃縮した。この濃縮操作は、実施例1と同様に回分式で行い、炭素原子数4〜6のジカルボン酸を主として含む濃縮粗生成物62.89gを得た。その組成を分析した結果、濃縮後の試料中に含まれるジカルボン酸(6−ヒドロキシヘキサン酸を含む)の総重量は48.73gであり、原料油層中に元来含まれていたジカルボン酸(6−ヒドロキシヘキサン酸を含む)の重量31.38gに比べて、17.35g増加して、その増加率は55.29%であった。
【0064】
実施例6
実施例5で得た濃縮粗生成物50gをとり、下記のエステル化反応と蒸留を行った。本エステル化反応は、原料を連続式で供給した。第一段階のエステル反応容器に、まずメタノール100gを仕込み、定量ポンプでメタノールと濃縮粗生成物を重量比で2/1に制御しながら供給し、エステル化反応温度を80℃に保ち、1時間反応させた。ついで反応生成物を第二段階のエステル化反応容器に移し、エステル化温度を130℃に上げて、定量ポンプでメタノールを供給した。その際、メタノールの供給量を、第一段階の濃縮粗生成物の供給量に対して、重量比で3/1に制御して、反応を1時間行った。さらに加熱することにより、未反応の残余のメタノールと、反応により生じた水分を留出させて、炭素原子数4〜6のジカルボン酸のメチルエステルを含む粗生成物55.1gを得た。ガスクロマトグラフィーでその組成を分析し、エステル化率を計算した。その結果を、下記の表8に示す。
【0065】
【表8】
Figure 0003986817

【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、本発明におけるカプロラクタムの製造工程で発生するアルカリ性廃液より炭素原子数4〜6のジカルボン酸を回収・製造し、そのエステルを製造するプロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
R1:酸化槽
R2:沈殿槽
S1:硝酸酸化システム
S2:濃縮システム
S3:エステル化システム
S4:蒸留システム
T1:硝酸、モノカルボン酸回収システム
T2:アルコール回収システム
1:アルカリ性廃液
2:硫酸
3:酸化槽反応液
4:硫酸ナトリウム溶液(水相)
5:有機酸溶液(油相)
6:触媒
7:新しい硝酸溶液
8:回収された硝酸溶液
9:回収されたモノカルボン酸
10:NOxなどのガス
11:NOxなどのガスおよび硝酸
12:酸化後の反応液
13:ジカルボン酸濃縮粗生成物
14:触媒
15:回収されたアルコール
16:水と未反応のアルコール
17:アルコール
18:ジカルボン酸エステル粗生成物
19:未反応のアルコール
20:蒸留残渣
21:ジカルボン酸エステル生成物

Claims (16)

  1. カプロラクタムの製造工程で発生するアルカリ性廃液より炭素原子数4〜6のジカルボン酸を回収・製造し、そのエステル類を製造する方法であって、下記の工程からなることを特徴とする方法:
    (1)カプロラクタムの製造工程で生じるアルカリ性廃液を、硫酸で中和し、pHを調節することにより水層と油層に分離した後、該油層に硝酸を加え、酸化反応により有機物質をジカルボン酸に転換して、ジカルボン酸を含む酸化反応生成液を得る工程;
    (2)工程(1)で得たジカルボン酸を含む酸化反応生成液を、第一段階で、低沸点のモノカルボン酸と硝酸を留出させ、第二段階で、残留するニトロ化合物を分解するとともに、そこに存在する硝酸を回収する、二段階の濃縮を行うことにより、主に炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含む濃縮粗生成物を得る工程;
    (3)工程(2)で得た炭素原子数4〜6のジカルボン酸濃縮粗生成物に、炭素原子数1〜4のアルキルアルコールを加え、第一段階でセミエステル化反応中間生成物を得て、第二段階でジカルボン酸エステル粗生成物を得る、二段階エステル化反応を行う工程;ならびに
    (4)工程(3)で得たジカルボン酸エステル粗生成物を蒸留して、単一または混合ジカルボン酸エステル化合物を得る工程。
  2. 工程(1)で、硝酸のほかに、さらに1種以上のその他の酸化剤を添加する、請求の範囲第1項に記載の方法。
  3. その他の酸化剤が、過酸化水素、過塩素酸および過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる、請求項2記載の方法。
  4. 硝酸の濃度が、10〜90%である、請求項1記載の方法。
  5. 工程(1)において、硝酸と油層との重量比が、0.5〜30:1である、請求項1記載の方法。
  6. その他の酸化剤を、油層に対して0.01〜5重量%で添加する、請求項2記載の方法。
  7. 工程(1)の酸化と転換反応の条件が、反応段階数が2以上、反応温度範囲が10〜150℃、第一段階から最終段階まで、徐々に反応液の温度を上げ、各段階の温度差が5〜30K{℃}、各段階の反応時間が5分間〜4時間、反応圧力が絶対圧力で49〜196kPa{0.5〜2kgf/cm2}である、請求の範囲第1項に記載の方法。
  8. 工程(2)の二段式濃縮装置において、第一段階の濃縮温度が50〜120℃、絶対圧力が19.6〜147kPa{0.2〜1.5kgf/cm2};第二段階の濃縮温度が120〜200℃、絶対圧力が49〜196kPa{0.5〜2kgf/cm2}である、請求項1記載の方法。
  9. 工程(3)の炭素原子数1〜4のアルキルアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
  10. 工程(3)の炭素原子数1〜4のアルキルアルコールとジカルボン酸濃縮粗生成物の重量比が、1〜15:1である、請求項1または請求項9のいずれか一項記載の方法。
  11. 工程(3)において、さらに硫酸、リン酸、硝酸、各種のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはカチオンイオン交換樹脂からなる群より選ばれる触媒を添加する、請求項1記載の方法。
  12. 触媒の添加量が、ジカルボン酸に対して0.1〜5重量%である、請求項11記載の方法。
  13. 工程(3)において、二段階エステル化反応の条件として、第一段階のエステル化反応の温度が40〜120℃、絶対圧力が19.6〜118kPa{0.2〜1.2kgf/cm2}、反応時間が0.5〜8時間であり;第二段階のエステル化反応の温度が80〜200℃、絶対圧力が78.4〜245kPa{0.8〜2.5kgf/cm2}、反応時間が0.5〜8時間である、請求項1記載の方法。
  14. 工程(4)において、用いられる蒸留装置が、棚段式または充填式である、請求項1記載の方法。
  15. 工程(4)において、蒸留条件が、理論段数が10〜100段、絶対圧力が1.96〜98kPa{0.02〜1.0kgf/cm2}、温度が70〜250℃である、請求項1または請求項14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 請求項1記載の方法であって、下記に示す処理工程を含む方法:
    (1)まず、カプロラクタムの製造工程で生じるアルカリ性廃液を、硫酸で中和し、pHを調節することにより水層と油層に分離した後、該油層に濃度10〜90%の硝酸を加え、硝酸と油層との重量比を0.5〜30:1にして、酸化の転換反応を行うことにより有用物質をジカルボン酸に転換して、ジカルボン酸を含む酸化反応液を得る工程;
    (2)工程(1)で得たジカルボン酸を含む酸化反応液を、第一段階の濃縮装置の濃縮温度を50〜120℃に保ち、絶対圧力を19.6〜147kPa{0.2〜1.5kgf/cm2}にし;第二段階の濃縮装置の濃縮温度を120〜200℃に保ち、絶対温度を49〜196kPa{0.5〜2.0kgf/cm2}にして、二段階の濃縮を行うことにより、主に炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含む濃縮粗生成物を得る工程;
    (3)工程(2)で得た炭素原子数4〜6のジカルボン酸を含む濃縮粗生成物に、炭素原子数1〜4のアルキルアルコールと触媒を加え、第一段階のエステル化反応の温度を40〜120℃に保ち、絶対圧力を49〜118kPa{0.5〜1.2kgf/cm2}にし、反応時間を0.5〜8時間、第二段階のエステル化反応の温度を80〜200℃に保ち、絶対圧力が78.4〜245kPa{0.8〜2.5kgf/cm2}、反応時間が0.5〜8時間にする二段階エステル化反応によって、ジカルボン酸エステル粗生成物を得る工程;
    (4)工程(3)において得たジカルボン酸エステル粗生成物を、棚段式または充填式の蒸留塔に導入し、理論段数が少なくとも10〜100、圧力を絶対圧力で1.96〜98kPa{0.02〜1.0kgf/cm2}、温度を70〜250℃にして、単独または混合したジカルボン酸エステル化合物を得る工程。
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