JP4561144B2 - 液滴吐出装置およびその吐出異常検出方法 - Google Patents
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このため、圧電式アクチュエータの駆動によりインクの吐出時に発生する振動は、インク室内の振動と圧電式アクチュエータの固有振動とが混在した波形となる。従って、その混在波形を検出し、これに基づいてノズルの吐出異常の判定を確実に行うことは難しいという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、上記の点に鑑み、積層型の圧電式アクチュエータを使用する場合に、比較的簡易な構成により、ノズルの吐出異常の判定を確実に行うことができる液滴吐出装置、およびそ吐出異常検出方法を提供することにある。
すなわち、第1の発明は、振動板と、前記振動板を変位させる積層型の圧電式アクチュエータと、内部に液体が充填され前記振動板の変位により内部の圧力が増減されるインク室と、前記インク室に連通し前記インク室内の圧力の増減により液体を液滴として吐出するノズルとを有する液滴吐出ヘッドと、前記圧電式アクチュエータを駆動する駆動信号を出力する駆動手段と、前記ノズルの吐出異常の検出時に、前記駆動手段からの駆動信号で前記圧電式アクチュエータが駆動されて前記ノズルからの液滴の吐出後に、前記圧電式アクチュエータが検出する前記液滴吐出ヘッドの残留振動に含まれる前記インク室の振動成分を多く含む波形を抽出する第1フィルタと、前記液滴吐出ヘッドの残留振動に含まれる前記圧電式アクチュエータの固有振動成分を多く含む波形を抽出する第2フィルタと、前記第1フィルタの出力と前記第2フィルタの出力との減算処理を少なくとも行う演算処理回路と、を備えている。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記演算処理回路は、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの各出力を異なる増幅率で処理するように構成され、前記第2フィルタの出力の増幅率は、前記第1フィルタの出力の増幅率よりも低く設定されている。
このような構成からなる本発明によれば、積層型の圧電式アクチュエータを使用する場合であっても、比較的簡易な構成により、ノズルの吐出異常の判定を確実に行うことができる。
図1は、本発明の実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の概略構成を示す平面図である。
このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、ヘッドユニット2およびインクカートリッジ3を搭載したキャリッジ4を備え、このキャリッジ4は1組のキャリッジ軸5に案内されて主走査方向に移動できるようになっている。また、キャリッジ4の一部は歯付きベルト9に固定され、かつ歯付きベルト9は、モータ6の回転軸に固定された駆動プーリ7と従動プーリ8との間に掛け渡されている。
なお、図1において、12はヘッドユニット2とシステムコントローラなどと電気的な接続を行うケーブルである。13は、後述のインクジェットヘッドの表面をクリーニングするワイパである。14は、そのインクジェットヘッドのノズル基板(図3参照)のキャッピングを行うキャップである。
このようなモータ6の動作に伴って、キャリッジ4が主走査方向に往復移動を繰り返し、一定速度の区間が印刷領域に相当するので、その一定速度の際にキャリッジ4に搭載されるヘッドユニット2のノズルから記録紙a上にインク滴が吐出される。この結果、記録紙aには、そのインク滴により所定の文字や画像が記録される。
このヘッドユニット2は、図2に示すようなインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)20を複数個備え、各インクジェットヘッド20は後述の圧電式アクチュエータを用いたものである。
インク室基板26は、図示のように所定形状に形成され、これにより、インク室23と、これに連通するリザーバ28とが形成されている。また、リザーバ28は、インク供給チューブ29を介してインクカートリッジ3に接続されている。
このような構成からなる圧電式アクチュエータ22では、電極31と電極32との間に印加される駆動信号により、図2に示すように上下方向に伸び縮みするモードを利用している。この圧電式アクチュエータ22は、ピエゾ素子などからなる圧電素子27が積層されているために、大きな駆動力が得られるのが特徴である。
なお、図2に示すノズル基板26に形成されるインクジェットヘッド20ごとのノズル24は、例えば図3に示すように配列されている。この図3の例では、4色のインク(Y,M,C,K)に適用した場合のノズル24の配列パターンを示している。
ここで、紙粉とは、木材パルプを原料とする記録紙が紙送りローラなどと摩擦接触した際に発生しやすく、記録紙の一部からなり繊維状またはその集合体のものを意味する。
図4に示すように、静電式アクチュエータ22は、そのアクチュエータのコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化)Caと、そのアクチュエータのイナータンス(質量)Maとで表すことができる。また、インク室23は、インク室のコンプライアンスCcで表すことができ、そのコンプライアンスCcは、インクの圧縮性によるコンプライアンスCiと振動板21のコンプライアンスCvとからなる。
ここで、コンプライアンスCは、次の(1)式で表される。
(1)式において、ΔPは媒体に加えた圧力、ΔVは圧力ΔPが作用したときの容積変化である。
また、図5に示すような断面積S、長さLの管路中の媒質のイナータンスMは、次の(2)式で表される。
(2)式において、ρは管路内の媒質の密度である。
図6に、図2に示すインクジェットヘッド20の概略断面図を示す。
(1)式より、コンプライアンスは、圧力を作用させたときの圧力変化量である。積層型の圧電式アクチュエータ22の場合には、図2に示すように圧電素子27として薄いピエゾ素子を積層し、縦型振動モードで使用する。このため、圧電式アクチュエータ22のコンプライアンスCaは、振動板21のコンプライアンスCvに比べて小さな値となる。また、圧電式アクチュエータ22は図6に示すように振動方向の長さLが長く、イナータンスMaを無視することができない。
ここで、圧電式アクチュエータ22の固有振動モードは、図7(A)に示すように、圧電式アクチュエータ22のコンプライアンスCaとイナータンスMaとによる固有振動である。また、インク室の振動モードは、図7(B)に示すように、インク室22のコンプライアンスCcと、ノズル供給路およびインク供給路の両イナータンスMn,Msが並列合成されたイナータンスとによる振動である。
図2に示す圧電式アクチュエータ22に後述の駆動回路から駆動信号が供給されると、振動板21が撓み、インク室23内の容積が拡大し収縮する。このとき、インク室23内に発生する圧力により、インク室23内を満たすインクの一部が、インク室23に連通しているノズル24からインク滴として吐出される。
一方、インク室23の振動モードの場合は、概略してノズル24、インク供給口やインク粘度などによる音響抵抗r、流路内のインク重量によるイナータンスm、インク室23のコンプライアンスは、Cv>Ciであることから、主に振動板21のコンプライアンスをCvとすると、これらの音響インピーダンスで決定される周波数で振動板21が自由振動を起こすと考えられる。
しかし、インクの吐出が不良でドット抜けが発生する場合には、各音響インピーダンスが変化し、正常の吐出時とは異なる振動になる。図9に、この計算結果の一例を示す。この計算結果によれば、以下のことがわかった。
(1)気泡がインクの流路や、ノズルの先端に詰まった場合には、気泡が混入した分のインク重量が減ってイナータンスmが減少し、気泡によりノズル径が大きくなった状態と等価となり音響抵抗rが減少し、周波数が高くなるという特徴的な残留振動波形として検出できる(図9の「気泡混入」参照)。
(2)ノズル部のインクが乾燥して吐出しなくなった場合には、その乾燥によりノズル付近のインクの粘性が増加し、音響抵抗rが増大し、過減衰になるという特徴的な残留振動波形として検出できる(図9の「乾燥」参照)。
(3)紙粉やゴミがノズル面に付着した場合には、紙粉によりノズルからインクが染み出すことによって、振動板から見たインク重量が増加してイナータンスmが増加する。また、ノズルに付着した紙粉の繊維によって音響抵抗rが増大し、正常吐出の周期と比べて周期が大きくなる(周波数が低くなる)という特徴的な残留振動波形として検出することができる(図9の「紙粉付着」参照)。
本発明は、このようなインク室23の残留振動を検出することにより、インクジェットヘッド20のインク滴の吐出異常(ノズルの吐出異常)を検出するものである。
しかし、上記のように、インクの吐出時に発生するインクジェットヘッド20の残留振動には、ノズルの吐出異常の検出に必要なインク室23の振動の他に、その検出には不用な圧電式アクチュエータ22の固有振動が混在する。しかも、その両振動の周波数は比較的接近している。
この実施形態は、図10に示すように、駆動手段である駆動回路41と、積層型の圧電式アクチュエータ22と、切り替えスイッチ42と、残留振動検出手段である残留振動検出回路43と、を少なくとも備えている。
圧電式アクチュエータ22は、図2に示すように構成され、その電極31、32間に駆動回路41から駆動信号が印加されると変位し、この変位が振動板21に変位を生じさせてインク室内23内の圧力が変化し、これによりノズル24からインク滴が吐出されるようになっている。また、圧電式アクチュエータ22は、ノズル24の吐出異常の検出時には、インクジェットヘッド20の残留振動を検出し、この検出される残留振動を残留振動検出回路43に対して供給するようになっている。
次に、図10に示す残留振動検出回路43の具体的な構成例について、図11を参照して説明する。
第1ハイパスフィルタ431は、ノズル24の吐出異常の検出時に、圧電式アクチュエータ22が検出するインクジェットヘッド20の残留振動に基づき、その残留振動中からインク室23の振動成分を多く含んだ波形を抽出するものである。このため、第1ハイパスフィルタ431の周波数特性は、例えば図12に示すように、低域の遮断周波数がfz1、高域の遮断周波数がfp1になるように設定されている。
このような構成からなる第1ハイパスフィルタ431および第2ハイパスフィルタ432は、その遮断周波数fz1,fz2,fp1,fp2は、次のような関係にある(図12参照)。
このため、第1ハイパスフィルタ431と第2ハイパスフィルタ432の両周波数特性は、図12に示すようにその一部で重なり、第2ハイパスフィルタ432は、第1ハイパスフィルタ431の出力する高周波成分を同時に出力することになる。
演算処理回路434は、第1ハイパスフィルタ431の出力Aと、第2ハイパスフィルタ432の出力Bとの間で、次式のような演算処理を行い、その演算結果Cを出力する回路である。
ここで、Gは増幅率(利得)であり、この増幅率Gは、1以下の値であり、好ましくは0.2以上から0.8以下の範囲、より好ましくは0.3以上から0.7以下の範囲の任意の値に設定されるようになっている。
(6)式によれば、演算処理回路434は、第1ハイパスフィルタ431の出力Aと、第2ハイパスフィルタ432の出力Bとに対して異なる増幅率で増幅処理し、その後に、その両者の減算処理を行い、目的とするインク室23の残留振動を求めることになる。
まず、この実施形態がインクジェットヘッド20のノズル24からのインク滴の吐出により記録紙に画像形成を行う場合の動作について説明する。
このときには、図10に示すように、図示しないシステムコントローラから出力されるスイッチ切り替え信号は「Lレベル」のままである。このため、切り替えスイッチ42の接点は図10の位置のままとなり、駆動回路41と圧電式アクチュエータ22とが接続されたままとなる。そして、この状態で、駆動回路41からは駆動信号が出力されるので、この駆動信号によって圧電式アクチュエータ22が駆動され、インクジェットヘッド20のノズル24から記録紙にインク滴が吐出されて画像形成が行われる。
このときには、システムコンロトーラから出力されるスイッチ切り替え信号は、例えば「Lレベル」になる。このため、切り替えスイッチ42はその接点が図10に示す状態になり、駆動回路41と圧電式アクチュエータ22とが接続された状態になる。。
このとき、インクジェットヘッド20は残留振動を発生し、圧電式アクチュエータ21にその残留振動に応じた電圧が発生する。すなわち、圧電式アクチュエータ21は、インクジェットヘッド20の残留振動を検出することになる(ステップS1)。このインクジェットヘッド20の残留振動の一例を、図14に示す。
ここで、インクジェットヘッド20のノズル24の吐出異常の検出に必要なものは、上記のようにインク室23の残留振動である。
まず、圧電式アクチェエータ21が検出したインクジェットヘッド20の残留振動は、第1ハイパスフィルタ431に入力され、ここで直流成分がカットされるとともに(ステップS2)、インク室23の振動成分を多く含んだ波形が抽出され(ステップS3)、この抽出された出力Aが演算処理回路434に入力される。この抽出された、インク室23の振動成分を多く含んだ波形の一例を、図15に示す。
なお、以上の説明は、図11に示す第1ハイパスフィルタ431と第2ハイパスフィルタ432は同じ増幅度に設定され、演算処理回路434の増幅度Gが「1」以下に設定される場合について説明した。
以上説明したように、本発明の実施形態では、ノズルの吐出異常の検出時に、積層型の圧電式アクチュエータが検出するインクジェットヘッドの残留振動中から、ノズルの吐出異常の検出に必要なインク室の残留振動を、2つのフィルタ431、432と演算処理回路434とを用いて検出するようにした。
さらに、実施形態によれば、インクジェットヘッド20の残留振動には、圧電式アクチュエータ22の固有振動とインク室23の振動とが混在し、その両振動の周波数は比較的接近しているが、目的とするインク室23の残留振動を容易に検出できる。
Claims (5)
- 振動板と、前記振動板を変位させる積層型の圧電式アクチュエータと、内部に液体が充填され前記振動板の変位により内部の圧力が増減されるインク室と、前記インク室に連通し前記インク室内の圧力の増減により液体を液滴として吐出するノズルとを有する液滴吐出ヘッドと、
前記圧電式アクチュエータを駆動する駆動信号を出力する駆動手段と、
前記ノズルの吐出異常の検出時に、前記駆動手段からの駆動信号で前記圧電式アクチュエータが駆動されて前記ノズルからの液滴の吐出後に、前記圧電式アクチュエータが検出する前記液滴吐出ヘッドの残留振動に含まれる前記インク室の振動成分を多く含む波形を抽出する第1フィルタと、
前記液滴吐出ヘッドの残留振動に含まれる前記圧電式アクチュエータの固有振動成分を多く含む波形を抽出する第2フィルタと、
前記第1フィルタの出力と前記第2フィルタの出力との減算処理を少なくとも行う演算処理回路と、
を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。 - 前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、低域の遮断周波数にそれぞれ差異を設けるようにし、前記第1フィルタの低域の遮断周波数は、抽出すべき残留振動周波数よりも低く設定するようにし、かつ、前記第2フィルタの低域の遮断周波数は、抽出すべき残留振動周波数よりも高く設定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
- 前記演算処理回路は、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの各出力を異なる増幅率で処理するように構成され、前記第2フィルタの出力の増幅率は、前記第1フィルタの出力の増幅率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液滴吐出装置。
- 振動板と、前記振動板を変位させる積層型の圧電式アクチュエータと、内部に液体が充填され前記振動板の変位により内部の圧力が増減されるインク室と、前記インク室に連通し前記インク室内の圧力の増減により液体を液滴として吐出するノズルとを有する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置において、
前記ノズルの吐出異常を検出するときには、
前記圧電式アクチュエータを駆動信号で駆動させて前記ノズルから液滴を吐出させ、その液滴の吐出後に、前記圧電式アクチュエータで前記液滴吐出ヘッドの残留振動を検出する第1ステップと、
前記液滴吐出ヘッドの残留振動中に含まれる前記インク室の振動成分を多く含む波形を抽出して第1波形を取得するとともに、その残留振動中に含まれる前記圧電式アクチュエータの固有振動成分を多く含む波形を抽出して第2波形を取得する第2ステップと、
前記第2ステップで取得した第1波形と第2波形との減算処理を少なくとも行う第3ステップと、
前記第3ステップの処理結果に基づいて、前記ノズルの吐出異常を判定する第4ステップと、
からなる各処理を行うことを特徴とする液滴吐出装置の吐出異常検出方法。 - 前記第3ステップは、
前記減算処理に先立って、前記第1波形と前記第2波形を異なる増幅率で処理する前処理を含み、
前記第2波形の増幅率は、前記第1波形の増幅率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置の吐出異常検出方法。
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