JP4560965B2 - 補強用多軸ステッチ布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はFRPの補強繊維基材として使用する多軸ステッチ布帛およびその多軸ステッチ布帛を用いてなるプリフォームならびにFRPの成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続補強繊維からなる繊維強化プラスチックは、繊維軸方向の機械的特性には優れるが、繊維軸から離れるに従い、機械的特性は急激に低下する。この対策として、たとえば、機械的特性が疑似等方性基材となるようの繊維軸方向がFRP成形体の長さ(0゜)方向、幅(90゜)方向や斜め(±α゜)方向となるよう積層され、成形されている。
【0003】
しかしながら、通常の織物を使用すると、繊維の配列方向は織物の長さ(0゜)方向と幅(90゜)方向であるから、斜め(±α゜)方向の補強ができなくなる。この対策として、織物を斜め方向に裁断し、裁断された織物の端部が0゜方向と90゜方向に配列する織物と平行になるように積層し、斜め方向に裁断した繊維の配列方向が±45゜になるようにしている。しかしながら、このような方法では、とくに大型構造体を成形する場合、織物の裁断や積層に手間が掛かるし、材料ロスも大きい。また積層の際、(0゜/90゜)配列織物と(+45゜/−45゜)配列織物がずれ、正確な繊維配向が困難となる。
【0004】
一方、上記課題に対して、最近、よこ入れトリコット装置で、布帛の長さ方向に対して+α゜、−α゜やこれに0゜および/または90゜方向に、すなわち、2方向以上の多軸の各々の方向で層状に補強繊維が並行に配列し、これらが積層した状態で、ポリエステル繊維糸などのステッチで縫合一体化した、いわゆる多軸ステッチ布帛が注目を浴びている。この布帛は+α゜、−α゜、0゜や90゜配列繊維がステッチ糸で一体となっているから、わざわざ裁断によって、所定の方向に配列するような準備作業が必要なくなり、1枚の布帛で疑似等方性の特性が得られるので、かつ材料ロスもほとんど無く、積層作業が大幅に省力化され、大型構造体を安価に成形できるという利点はある。また、ステッチ糸のステッチ密度を最適化することによって、深絞り賦形が可能となり、成形のプリフォームを容易に作製することもできる利点がある。
【0005】
しかしながら、厚いFRP成形体を成形する場合、多数枚の布帛を積層する必要があるので、やはり積層や成形型をセットする際、布帛がずれる。また成形作業の合理化や省力化のため、前もって成形体の形状に布帛を賦形したプリフォームを作製することも行われるが、布帛を雄型と雌型の中に入れ深絞り賦形しても、脱型すると、強化繊維は剛性が大きいので布帛は元の平面状態に回復しようとし、正確な形状を保持できないという問題があった。
【0006】
この対策として、硬化剤を入れないエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの粘着性のある樹脂を有機溶剤に希釈したタッキファイヤーをスプレーで基材に吹き付けて基材同志を接着し、プリフォームの形態を安定させることも行われているが、毛細管現象で表面から強化繊維糸条の内部に浸透し、成形で樹脂の含浸を阻害するし、また付着量のコントロールが困難で、タッキファイヤーの付着量は場所により異なり、不均一であり、多量に付着した箇所ではマトリックス樹脂の硬化不良に繋がることもあった。
【0007】
また、ステッチ布帛は、ステッチ糸によって補強繊維を拘束する布帛構造となっているから、各層内では補強繊維の拘束部分と補強繊維がまったく存在しない部分が存在している。したがって、樹脂が含浸され、樹脂が硬化すると樹脂が硬化収縮するので、FRPの状態では補強繊維の拘束部部分の厚さ方向の収縮量は補強繊維が存在するので小さく、補強繊維がまったく存在しない部分の収縮量が大きくなって、FRPの表面の凹凸が大きくなり、表面が平滑なFRPが得られなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、プリフォームが簡単に作製でき、樹脂含浸性や均一性に優れ、しかも表面平滑で、しかも安価なFRPが得られる多軸ステッチ布帛およびその多軸ステッチ布帛を用いてなるプリフォームならびにFRPの成形方法を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。すなわち、
(1)多数本の強化繊維糸条が並行にシート状に配列して層構成をなし、前記層の少なくとも2層以上が交差積層されて積層体をなし、該積層体が融点の異なる、低融点Aポリマー糸と高融点Bポリマー糸のステッチ糸で一体化されていることを特徴とする補強用多軸ステッチ布帛。
【0010】
(2)前記ステッチ糸は、前記Aポリマー糸と前記Bポリマー糸の引き揃え糸であることを特徴とする前記(1)に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0011】
(3)前記ステッチ糸が、前記Aポリマー糸と前記Bポリマー糸の合撚糸であることを特徴とする前記(1)に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0012】
(4)前記ステッチ糸が、前記Bポリマー糸の周りに前記Aポリマー糸が捲回されてなる捲回糸であることを特徴とする前記(1)請求項1に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0013】
(5)前記交差角度が布帛の長さ方向に対して+α゜、−α゜の角度の少なくとも2方向を含むものであることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0014】
(6)前記角度α゜が45゜であることを特徴とする前記(5)に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0015】
(7)前記強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛。
【0016】
(8)前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛の少なくとも1枚が積層され、前記低融点Aポリマーで接着されてなることを特徴とするプリフォーム。
【0017】
(9)前記(8)に記載のプリフォームに樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸の融点以上の温度に加熱成形することを特徴とするFRPの成形方法。
【0018】
(10)前記(8)に記載のプリフォームに樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸の融点以下の温度に加熱成形することを特徴とするFRPの成形方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る多軸ステッチ布帛の一実施例を示す一部切り欠き概略斜視図である。図1に示すように、布帛1の下面から、まず第一層が長さ方向イに対して斜め方向に多数本の強化繊維糸条2が並行に配列して+α゜層6を構成し、次いで第二層が布帛の幅方向に多数本の強化繊維糸条3が並行に配列して90゜層7を構成し、次いで第三層が斜め方向に多数本の強化繊維糸条4が並行に配列して−α゜層8を構成し、次いで第四層が布帛の長さ方向に多数本の強化繊維糸条5が並行に配列して0゜層9を構成し、互いに配列方向が異なる第一層〜第四層の4層が積層された状態で、ステッチ糸10でこれら4層が縫合一体化されている。縫合一体化にあたってのステッチ糸10が形成する縫い組織としては、単環縫い、1/1のトリコット編みなどが挙げられる。
【0021】
図2は、図1に示した多軸ステッチ布帛のA−A´断面の拡大概略図である。
−α゜層6、90゜層7、+α゜層8、0゜層9の4層にステッチ糸10が形成するトリコット編み組織で一体化されている。なお、各層の糸条は層内において並行に配列し、これら糸条に対してランダムにニードルが突き刺さりステッチ糸が縫い組織を形成する。この時、ステッチ糸の張力によりのステッチ糸とステッチ糸の間には、強化繊維11が存在せず、大きな空隙部Bが形成される。
【0022】
図3に従来の図2に示した多軸ステッチ布帛を使用したFRP成形体の断面概略図を示したが、ステッチ糸10とステッチ糸10の間の空隙部Bには強化繊維が存在しないので、多軸ステッチ布帛に含浸された樹脂が硬化する際、体積収縮し、その箇所の表面は凹む。また、ステッチ糸10は強化繊維層の外側に位置する部分があるから、成形型に布帛が充填されて成形されても、ステッチ糸10の部分はステッチ糸10の存在しない箇所に比べて凸状態となり、FRPの表面が凸凹する。
【0023】
本発明の多軸ステッチ布帛の布帛構造は、従来の多軸ステッチ布帛となんら変わりはないが、本発明ではステッチ糸として、融点の異なる、低融点Aポリマー糸と高融点Bポリマー糸からなるステッチ糸で一体化することを特徴とする。
【0024】
図4は、図1に示した多軸ステッチ布帛を正面から見た1/1トリコット編み縫い組織のパターンモデル図を示したものである。
【0025】
多数本の低融点Aポリマー糸からなるステッチ糸10A と高融点Bポリマー糸からなるステッチ糸10B が一本交互にジグザグ状に布帛の長さ方向イに配列し、各ステッチ糸は、ジグザグ形状の頂点部で厚さ方向に延びて強化繊維層を一体化している。なお、ステッチ糸10A とステッチ糸10B の配列方法は、とくに限定するものではないが、ステッチ糸10B の間隔Cがあまり大きくなると、プリフォームを作製するためにステッチ糸10A を溶融させると、賦形形状にもよるが、ステッチ糸10B の間隔Cで強化繊維が大きく蛇行し、FRPにしたとき、その蛇行部で破壊が始まるので、間隔Cが20mm以下となるようにステッチ糸の配列を決めることが好ましい。
【0026】
なお、必ずしも低融点Aポリマー糸からなるステッチ糸10A と高融点Bポリマー糸からなるステッチ糸10B を別々に使用することが必要ではなく、図5に示すように低融点Aポリマー糸10A と高融点Bポリマー糸10B を引き添えた引き揃え糸をステッチ糸として使用してもよい。また、図6に示すように低融点Aポリマー糸10A と高融点Bポリマー糸10B を合撚した合撚糸を用いてもよい。同様に高融点Bポリマー糸に低融点Aポリマー糸を捲回した捲回糸を用いてもよいし、また高融点Bポリマーを芯とし低融点Aポリマーを鞘とした芯鞘複合繊維からなるポリマー糸をステッチ糸として使用することもできる。引き揃え法、合撚法、捲回法または芯鞘繊維法はプリフォームを作製するために低融点Aポリマー成分を溶融さても間隔Cが変わらないので、強化繊維が蛇行してFRPの強度を低下させるようなことはない。
【0027】
本発明に使用する低融点Aポリマーは、融点が80〜200℃のポリマーが好ましい。融点が80℃未満であると、繊維強化プラスチック(以下FRPと呼称)に成形した時に、低融点ポリマー部はわずかな面積、体積ではあるがFRP成形体が屋外暴露などによる昇温で低融点ポリマーの部箇所が溶融状態となるので好ましくない。また、200℃を越えると、低融点Aポリマーを溶融させ、布帛と布帛を接着させる際、高温にすることが必要となり、昇温、降温に要する所用時間が大きくなり、プリフォーム作製の効率が低下する。
【0028】
また、本発明に使用する高融点Bポリマーは、融点が150〜280℃のポリマーが好ましい。
【0029】
なお、高融点Bポリマーを低融点Aポリマーより融点が20℃以上高く、かつ高融点Bポリマーの融点が180℃以下であると、低融点Aポリマーにより布帛同士の接着を行うことによって、プリフォームを作製し、このプリフォームに樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸の融点以上に加熱成形すると、成形後ステッチ糸が形成しているステッチ糸の組織が消滅してポリマーの状態となる。
【0030】
図7に、本発明の成形法によって得られるFRP成形体の断面概略図を示したが、型の加熱と同時に多軸ステッチ布帛も低融点Aポリマー糸の融点以上の温度に加熱されるから、低融点Aポリマー糸が溶融し、FRP中にポリマー糸が存在していた箇所に低融点ポリマー12が点在するようになる。また、低融点ポリマーからなるステッチ糸が形成していた縫い組織は、ステッチ糸の溶融によって消滅するので、ステッチ糸による強化繊維の拘束は解かれ、空隙部Bの箇所にも強化繊維が分散し、得られるFRPの表面は平滑となる。
【0031】
低融点Aポリマーは溶融しても粘度が高いので、強化繊維糸条の表面に付着する程度で、毛細管現象で強化繊維糸条の内部に浸透し、成形での樹脂含浸を阻害するようなことはなく、また部分的に多くの接着剤が付着して、マトリックス樹脂の硬化を阻害するようなことはない。
【0032】
また、本発明においては必ずしもBポリマー糸を溶融させる必要はなく、プリフォームに樹脂を含浸し、Bポリマー糸の融点以下に加熱成形するFRPを成形し、FRPの中にステッチ糸をポリマー状態にすることなく、糸の状態で残してもよい。
【0033】
本発明に用いる低融点Aポリマーは、通常、ナイロン、共重合ナイロン、ポリエステル、変成ポリエステル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどから選ばれたものである。なかでも低温でポリマーを溶融でき、かつFRPのマトリックス樹脂との接着性が良好な共重合ナイロンが好ましい。
【0034】
また、低温でポリマーを溶融でき、マトリックス樹脂との接着性が良好で、吸水率の小さな変成ポリエステルが好ましい。
【0035】
なお、Aポリマー糸とBポリマー糸は、必ずしも異なるポリマーである必要はなく、同一ポリマーで融点の異なるポリマーを選択することもできる。
【0036】
ステッチ糸の太さは、細いとステッチ操作の際糸切れし、また太いとFRPにした時ステッチ糸が溶融して形成される低融点ポリマー部分が大きくなり、塗装の際に色斑などになるので50〜400デシテックスが好ましい。より好ましくは70〜300デシテックスである。なお、引き揃え法、合撚法、捲回法または芯鞘繊維法でAポリマーとBポリマーを併用する場合は、Aポリマー糸とBポリマー糸を合わせた太さである。
【0037】
本発明に用いるAポリマー糸の重量は5〜30g/m2 が好ましい。5g/m2 未満であるとプリフォーム作製の際の接着が不完全となり、また30g/m2 を越えると、FRPにしたとき布帛と布帛、または布帛とその他の基材間に低融点のポリマー層が形成されるので、高温雰囲気でポリマー層が破壊の起点となり成形体の機械的特性が低下するし、また樹脂の含浸が不織布で阻害されるので好ましくない。
【0038】
本発明に使用する強化繊維としては、ガラス繊維、ポリアラミド繊維や炭素繊維が挙げられるが、なかでも炭素繊維はマトリックス樹脂との接着性が良く、引張強度や引張弾性率も高いのでFRP成形体の軽量化が図られるので好ましく用いられる。
【0039】
本発明に使用する強化繊維の太さは、3,000〜50,000デシテックス程度である。とくに、太い強化繊維糸条を用いると、強化繊維が安くなるので安価な布帛が得られ好ましい。しかし、一層当たりの強化繊維の目付が小さいと、層内の糸条と糸条の間に隙間ができ、ステッチ糸で一体化すると繊維密度が部分的に不均一となり、成形すると繊維密度が大きなところはFRPが厚くなり、また繊維密度が小さなところはFRPが薄くなり、表面が凸凹したFRPとなる。
このように7,000〜50,000デシテックスの太い強化繊維糸条を用いる場合は、ステッチ糸による一体化加工前に強化繊維糸条をローラの揺動操作やエアー・ジェット噴射で薄く拡げると、布帛の全面にわたり強化繊維の密度が均一となり、表面が平滑なFRPが得られるので好ましい。
【0040】
もともとステッチ糸の役割は、布帛になった状態で繊維配向が乱れないように、また並行に配列した多数本の強化繊維糸条がほつれないようにするものであり、布帛の層方向にステッチ糸が配列しているとはいえ、層方向に対する補強効果はさほど大きくはない。
【0041】
なお、図1に示した布帛の強化繊維の構成は+α゜層/90゜層/−α゜層/0゜層の4層構成について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも、布帛の長さ方向に対して−α゜層と+α゜層のバイアス(±α゜)の方向に層構成をなしておればよい。また、層構成の順番も−α゜/90゜/+α゜/0゜の順番に限定するものではなく、0゜/−α゜/90゜/+α゜や0゜/−α゜/+α゜/90゜など適宜設計することができる。また、−α゜層と+α゜層のバイアス方向のみに強化繊維が配列した布帛にすると、布帛の長さ方向に引っ張ると簡単に強化繊維の方向がずれ、布帛の幅方向が狭くなるなど、形態が不安定である。このような時には、たとえば0゜方向やまたは90゜方向に細いガラス繊維、炭素繊維やポリアラミド繊維などの補助糸を20〜100g/m2程度配列し、−α゜層、+α゜層とステッチ糸で一体化すると形態を安定させることができる。
【0042】
なお、バイアス角α゜は、多軸ステッチ布帛をFRP成形体の長さ方向に積層し、強化繊維による剪断補強を効果的に行う観点から45゜が好ましい。
【0043】
本発明のプリフォームは、本発明の多軸ステッチ布帛の積層体を低融点ポリマーで接着させてもよいし、必ずしもこれに限定するのものではなく、他の基材との併用であってもよい。他の基材としては、二方向の補強繊維織物、一方向の織物や、補強繊維を基材の長さ方向に並行に配列し、これを二軸メッシュや不織布で接着させた、いわゆるドライ・トウシートやチョップド・ストランド・マットやコンティニュアス・スワール・マットであってもよい。
【0044】
これら布帛は低融点ポリマーで賦形させた状態で接着しているから、脱型しても元の平面状態に回復するようなことはなく、正確に所定の形状ならびに繊維配向を保ち、成形型に容易にセットすることができる。
【0045】
本発明の多軸ステッチ布帛を使用したFRPは、たとえば次のように成形することができる。
【0046】
成形型の雌型に、本発明のプリフォームを所定の方向に積層し、この上に雄型を乗せ、型の周囲をパテでシーリングする。次いで、真空ポンプで型内を真空状態となるよう吸引し、その後樹脂を注入する。次いで、成形型を高融点Bポリマー糸の融点以上になるよう十分に加熱して、注入した樹脂を硬化させる。成形型を冷却し、脱型する。
【0047】
なお、上記成形で、高融点Bポリマー糸の融点以下で硬化する樹脂またはポリマーを選択し、ステッチ糸が成形品の中に残存するようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
本発明の補強用多軸ステッチ布帛は低融点Aポリマー糸と高融点Bポリマー糸でステッチ一体化されているから、Aポリマー糸を溶融して布帛同士を接着することによって、形態の安定したプリフォームを簡単に製作することができるし、成形してもBポリマー糸による強化繊維に対する拘束があるから強化繊維が蛇行することなく機械的特性に優れたFRP成形体が得られる。また、樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸、及び、低融点ポリマー糸の融点以上に加熱成形することによって更に表面が平滑なFRP成形体も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多軸ステッチ布帛の一実施例を示す一部切り欠き概略斜視図である。
【図2】図1の多軸ステッチ布帛のA−A´断面拡大概略図である。
【図3】従来の多軸ステッチ布帛のFRP成形体の断面概略図である。
【図4】1/1トリコット組織の正面図である。
【図5】本発明の多軸ステッチ布帛の他の実施例を示す断面概略図である。
【図6】本発明の多軸ステッチ布帛のさらに他の実施例を示す断面概略図である。
【図7】本発明の多軸ステッチ布帛のFRP成形体の一例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
1:多軸ステッチ布帛
2:+α゜層の強化繊維糸条
3:90゜層の強化繊維糸条
4:−α゜層の強化繊維糸条
5:0゜層の強化繊維糸条
6:布帛を形成する+α゜の強化繊維層
7:布帛を形成する90゜の強化繊維層
8:布帛を形成する−α゜の強化繊維層
9:布帛を形成する0゜の強化繊維層
10:ステッチ糸
10A :低融点Aポリマー糸
10B :高融点Bポリマー糸
11:強化繊維
12:低融点ポリマー
イ:布帛の長手方向
A−A´:断面の基準線
B:空隙部
C:高融点Bポリマー糸の間隔
Claims (10)
- 多数本の強化繊維糸条が並行にシート状に配列して層構成をなし、前記層の少なくとも2層以上が交差積層されて積層体をなし、該積層体が融点の異なる、低融点Aポリマー糸と高融点Bポリマー糸のステッチ糸で一体化されていることを特徴とする補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記ステッチ糸は、前記Aポリマー糸と前記Bポリマー糸の引き揃え糸であることを特徴とする請求項1に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記ステッチ糸が、前記Aポリマー糸と前記Bポリマー糸の合撚糸であることを特徴とする請求項1に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記ステッチ糸が、前記Bポリマー糸の周りに前記Aポリマー糸が捲回されてなる捲回糸であることを特徴とする請求項1に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記交差角度が布帛の長さ方向に対して+α゜、−α゜の角度の少なくとも2方向を含むものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記角度α゜が45゜であることを特徴とする請求項5に記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 前記強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の補強用多軸ステッチ布帛の少なくとも1枚が積層され、前記低融点Aポリマーで接着されてなることを特徴とするプリフォーム。
- 請求項8に記載のプリフォームに樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸の融点以上の温度に加熱成形することを特徴とするFRPの成形方法。
- 請求項8に記載のプリフォームに樹脂を含浸し、高融点Bポリマー糸の融点以下の温度に加熱成形することを特徴とするFRPの成形方法。
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- 2001-01-29 JP JP2001020032A patent/JP4560965B2/ja not_active Expired - Fee Related
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