JP4560223B2 - 落石吸収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、岩石などの落下のエネルギーを吸収する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
斜面からの落石のエネルギーを吸収してその後の被害を防ぐために各種の装置が開発されている。
例えば図8に示すように、斜面に設置した2本の支柱cの間を支持ロープaで連結し、衝撃を吸収する面状吸収体bは、支持ロープaによって支持して支柱c間に直接取り付ける構造が知られている。支柱cと地表面とはブレーキ装置d付きの控えワイヤeで連結してある。
この構造は、面状吸収体bの端部は支柱cに直接取り付けてある。
そのために、落石が発生して面状吸収体bに衝突した場合に、該当する吸収体bだけが大きく谷側に後退する。
その後に該当する吸収体bを固定した支柱cが傾斜し、この支柱cの傾斜が控えワイヤeを谷側へ引き出し、控えワイヤeに設けたブレーキ装置dの拘束力で支柱cの傾斜を拘束する構造である。
すなわち、落下のエネルギーは、支柱cの傾斜を介して吸収するメカニズムを採用している。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
前記したような従来の落石吸収装置にあっては、次のような問題点がある。
<イ>面状吸収体bの両端は、両側の支柱cに固定してあり、隣接するスパンの面状吸収体bもまた、その両端を両側の支柱cに固定した、相互に独立した構造である。
<ロ>そのために岩石の落下時には、まず岩石を受け止めた面状吸収体bのみが、隣接する面状吸収体bとは独立して後退する。そのために面状吸収体bの上下の間隔、すなわち上下の幅が縮小する。
<ハ>その結果、図8に示すように、面状吸収体bの下縁と、地面との距離が大きく離れることになる。
<ニ>岩石などが落下した場合には1個だけに限らず、その後続いて大小の岩石が落下してくる場合が多い。
その場合に、図8に示すように、面状吸収体bの下縁と地面との距離が離れていると、後続する岩石fなどがその間隔を潜って通過してしまい、斜面の下の道路や民家などに被害を与える可能性がある。
<ホ>落石のエネルギーによって支柱cが谷側に倒れる。この支柱cの倒れを、控えワイヤeによって抑えることでエネルギーを吸収する方法である。
したがって支柱cの基礎は、確実な支点として作用させる必要があり、強固な構造が要求されるが、足場の悪い斜面での基礎の工事はきわめて能率が悪く、危険でもある。
<ヘ>落下のエネルギーによって支柱cが谷側へ倒れるから、支柱cの上部へ当たった落石は回転運動によって支柱を駆け上ってしまい、谷側へ落下しやすい。
【0004】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、落石が発生しても面状吸収体の下縁と地表面との距離の変化が少なく、後続する落石を正確に捕獲してエネルギーを吸収することができる、落石吸収装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の落石吸収装置は、落石の衝撃を吸収するための面状の吸収体と、長尺材の上端と下端付近に、中心軸の横断方向に貫通したガイド孔を開口したガイド支柱と、面状吸収体の上縁と下縁に取り付けた吸収体支持ワイヤと、一端を、一定の引張り力でスライドする制動装置を介して地上に固定し、他端を、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた複数のスライドワイヤとで構成し、一連の面状吸収体は、少なくとも3本以上の支柱の間隔よりも長い幅のものとして一体に形成し、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた一対のスライドワイヤの一端を制動装置に固定し、吸収体支持ワイヤを複数本の支柱で支持するに際し、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた一対のスライドワイヤの他端を、一連の連続した面状吸収体の上縁と下縁の各吸収体支持ワイヤに連結し、一連の連続した面状吸収体の中間点を、前記面状吸収体の上縁と下縁の吸収体支持ワイヤを介して、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させたスライドワイヤによって支持して構成し、
受撃時に前記一連の連続した面状吸収体の全体がスライドワイヤのスライド抵抗を受けながら谷側に後退する、落石吸収装置を特徴としたものである。
【0006】
さらに本発明の落石吸収装置は、面状の吸収体が、多数の環状部材を相互にからめて形成した、落石吸収装置を特徴としたものである。
【0007】
【本発明の実施の態様】
以下図面を参照しながら本発明の落石吸収装置と吸収方法の実施例について説明する。
【0008】
<イ>面状吸収体。
落石の落下のエネルギーを吸収するために、面状の吸収体1を使用する。
この面状吸収体1の幅は、2本の支柱の間の幅に等しく構成する。
あるいは、2本の支柱2間の幅ではなく、少なくとも3本以上の支柱2の間隔よりも長い幅に設定する。
面状の吸収体1としては、一般には金網が知られている。
その他、図7に示すような、多数の環状部材11を相互にからめて面状吸収体1を形成することもできる。
その場合には多数の環状部材11は相互に密着することなく、一定の間隔を介してからまっているから、落石を吸収する機能が高い。
【0009】
<ロ>ガイド支柱2。
ガイド支柱2は、角パイプ、円形パイプなどのような、長尺材で構成する。
ただし本発明の装置に使用するガイド支柱2は、その上端と下端付近に、中心軸の横断方向に貫通したガイド孔21を開口する。
この貫通ガイド孔21に後述するスライドワイヤ3を貫通させ、落下のエネルギーを吸収する際には、スライドワイヤ3をスライドさせる構造である。
【0010】
<ハ>吸収体支持ワイヤ4。
一連の面状吸収体1の上縁、および下縁は、水平方向張り渡す、吸収体支持ワイヤ4に取り付けて支持させる。
面状吸収体1の幅を、少なくとも3本のガイド支柱2の間隔よりも長い幅に設定した場合には、吸収体支持ワイヤ4の長さも、少なくとも3本のガイド支柱2の間隔よりも長く形成する。
ワイヤ4は、接続継手で連続すればいくらでも延長することができる。
【0011】
<ニ>スライドワイヤ3。
地上と、面状吸収体1の支持ワイヤ4とは、スライドワイヤ3で連結する。
このスライドワイヤ3は、後述するように、面状吸収体1に落石のエネルギーが作用した場合に、そのエネルギーによって谷側へスライドする機能を果たす。
したがって、従来の構造のような、単に支柱2を支持するための控えのワイヤとはその機能をまったく異にする。
【0012】
<ホ>制動装置5。
このスライドワイヤ3の一端は、地上に固定した制動装置5に取り付ける。
この制動装置5は、2枚の鋼板51の間にワイヤを挟持し、2枚の鋼板51に相互に接近する力を与えて構成する。
例えばバネ機能を備えたような薄く弾性の大きいバネ鋼板51と基盤52とをボルト53で接合し、その2枚の鋼板51、52の間にスライドワイヤ3と挟んでおけば、スライドワイヤ3に一定以上の引張り力が作用した場合のみスライドワイヤ3がスライドする機構を達成することができる。
この制動装置5自体は地上に固定してあり、移動することがない。
スライドワイヤ3を直接に制動装置5で拘束することもできるが、図4の実施例に示すようにスライドワイヤ3の端にリングを形成し、このリングを貫通してU字状に折り返した拘束ワイヤ53の両端を制動装置5の基盤52の裏表両面で拘束することも可能である。
【0013】
<ヘ>吸収体のスライドワイヤ3による支持。
一連の面状吸収体1を3本以上の支柱2で支持するには、まずスライドワイヤ3の他端を支柱2のガイド孔を貫通させる。
そして、支柱2のガイド孔を貫通させたこのスライドワイヤ3の端と、吸収体支持ワイヤ4の中間とを固定する。
このように、本発明の装置では、面状吸収体1は支柱2間で独立しているものでなく、かつ支柱2で支持するのではない。
複数の支柱2間に渡る一連の連続した面状吸収体1の中間を、吸収体支持ワイヤ4を介してスライドワイヤ3によって支持するものである。
なお実際には施工中、その後の支柱2の転倒を防止するための控えのワイヤを配置するが、図では発明の要旨を明確にするために省略している。
【0014】
<ト>エネルギーを吸収するメカニズム。
落石が発生すると、ある支柱2間の面状吸収体1に飛び込む。
面状吸収体1は前記したように複数の支柱2にわたる一連の幅を備えており、かつ支柱2に固定していない。そのために1スパンの面状吸収体1に落石が飛び込んでも、隣接するスパン、その次のスパンの連続する吸収体1が谷側に押し出そうとする。
そのエネルギーによって、それまで弛んでいたスライドワイヤ3は、直線になるまで谷側へスライドする。
その後、スライドワイヤ3は制動装置5の抵抗に抗して一定の距離までスライドするので、この際の制動抵抗が落下のエネルギーを吸収する。
すなわち本発明の装置は、長い幅の面状吸収体1が、スライドワイヤ3のスライドの抵抗を受けながら、全体で谷側に後退することによって、全体でエネルギーを吸収する機能を果たすものである。
【0015】
<チ>上下のスライドワイヤのスライド。
落下のエネルギーによって上のスライドワイヤ3が延びると同時に下のスライドワイヤ3が弛む。そのために、面状吸収体1に衝突した落石は、下方へ誘導されることになり、落石の回転によって面状吸収体1を乗り越えて谷側へ飛び出すことを防止できる。
【0016】
<リ>面状吸収体1の変形。
上記のように、本発明の装置の面状吸収体1は、落石を受け止めた1スパンだけが独立して変形するのではなく、長い一連の吸収体の全体でエネルギーを吸収する構造である。
そのために従来の構造のように、1スパンの面状吸収体1だけが大きく変形することがないから、面状吸収体1の下縁と、地表面との間隔が大きく開くことがない。
したがって、後続する落石を取り逃がすことがなく、確実に捕獲することができ、斜面の下方の道路や民家に落石が転がり出る心配がまったくない。
【0017】
【本発明の効果】
本発明の落石吸収装置と吸収方法は以上説明したように面状吸収体を支持するスライドワイヤの谷側へのスライドによって、吸収体が受けるエネルギーを吸収する構造である。
<イ>そのために従来の構造のように、1スパンの面状吸収体1だけが大きく変形することがなく、面状吸収体1の下縁と、地表面との間隔が大きく開くことがない。
したがって、後続する落石を取り逃がすことがなく、確実に捕獲して、斜面の下方の道路や民家に落石が転がり出る心配がまったくない。
<ロ>支柱2はスライドワイヤ3のスライド状態を支持するだけで、落石のエネルギーを直接に受ける構造ではないから、簡易な構造の物を利用することができる。
<ハ>面状吸収体は、落石を受け入れるスパンの隣接するスパンのみならず、さらにその外側のスパンも谷側に押し出される。その上、スライドワイヤの長さ次第で押し出し量に制限がない。
そのためにきわめて大きいエネルギーを有する落石も、確実に捕獲して停止させることができる。
<ニ>従来の類似の装置のように落石のエネルギーを支柱を介して吸収するメカニズムではない。
そのためにたとえ落石が直接支柱に衝突して支柱が破損しても、面状吸収体の押し出し量が増加するだけで、エネルギー吸収能力の低下は生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の落石吸収装置と吸収方法に落石が生じた場合の実施例の説明図。
【図2】落石が生じる前の状態の説明図。
【図3】支柱とスライドワイヤと支持ワイヤの取り付け状態の説明図。
【図4】スライドワイヤの端部に取り付ける制動装置の実施例の説明図。
【図5】落石発生前の状態の説明図。
【図6】落石発生後の状態の説明図。
【図7】面状吸収体の実施例の説明図。
【図8】従来の落石吸収装置と吸収方法の問題点の説明図。
Claims (3)
- 落石の衝撃を吸収するための面状の吸収体と、
長尺材の上端と下端付近に、中心軸の横断方向に貫通したガイド孔を開口したガイド支柱と、
面状吸収体の上縁と下縁に取り付けた吸収体支持ワイヤと、
一端を、一定の引張り力でスライドする制動装置を介して地上に固定し、他端を、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた複数のスライドワイヤとで構成し、
一連の面状吸収体は、少なくとも3本以上の支柱の間隔よりも長い幅のものとして一体に形成し、
前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた一対のスライドワイヤの一端を制動装置に固定し、
吸収体支持ワイヤを複数本の支柱で支持するに際し、
前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させた一対のスライドワイヤの他端を、一連の連続した面状吸収体の上縁と下縁の各吸収体支持ワイヤに連結し、
一連の連続した面状吸収体の中間点を、前記面状吸収体の上縁と下縁の吸収体支持ワイヤを介して、前記支柱の上端と下端付近のガイド孔に挿通させたスライドワイヤによって支持して構成し、
受撃時に前記一連の連続した面状吸収体の全体がスライドワイヤのスライド抵抗を受けながら谷側に後退する、
落石吸収装置。 - 面状の吸収体は、多数の環状部材を相互にからめて形成した、請求項1記載の、落石吸収装置。
- 制動装置は、2枚の鋼板の間にワイヤを挟持し、2枚の鋼板に相互に接近する力を与えて構成した、請求項1記載の、落石吸収装置。
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