JP4559571B2 - 電池の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電池の製造方法に関し、特に極板の端面と集電板とを接合する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池の構造として、正極板、負極板及びセパレータを積層した角型の構造が主に水溶液系の蓄電池を中心として用いられている。この構造は、限られた空間の中でできるだけ電極面積を大きくとるための構造であり、電極面積を大きくすることにより極板の反応効率があがる他、大電流を取り外すことができるなど電池の特性と大きな関係がある。
【0003】
複数枚の極板を積層した蓄電池において、各極板から電流を取りだす構造として、1枚1枚の極板にリード状の導体を取付け又は引き出して束ねた後、電槽の外部に電流を引き出す極柱に接合した構造が知られている。しかし、このような構造を用いて各極板から電流を取り出した場合、リード状の導体部が大きな容積を占有することにより、電池全体の小型化に大きな制約となっていた。
【0004】
そこで、積層した各極板の端面を直接集電板に溶接する方法が考えられている。すなわち、各極板をそれぞれ集電板の表面に対して直立するような姿勢で突き合わせて接合する方法であり、このとき集電板と極板はT型継手を構成する。その接合法として、特許第2616197号公報に開示された電子ビーム溶接法などを適用することが考えられる。
【0005】
電子ビームによる接合方法としては、図5(a)に示すように、極板群21に対して集電板22を当接配置し、集電板22の外面側に対して極板の積層方向に沿う幅方向に電子ビーム23を繰り返し走査して照射し、集電板22の電子ビーム照射部24を加熱溶融して各極板の端縁に接合する方法がある。電子ビーム23の走査波形は、走査速度を一定にして走査方向に均一に加熱するために、三角波が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電子ビーム23を集電板22の幅方向に走査して照射し、極板群21と接合する場合、集電板22の両側縁部では、その外側で電子ビーム23による入熱がなくかつ放熱し易いために中間部に比して加熱量が少なく、集電板22が溶融せずに未接合状態になるという問題がある。これに対して電子ビーム23の出力又は照射時間を増加して全体の入熱量を増大させることが考えられるが、その場合には逆に集電板22の幅方向の中央部分での加熱量が過大となって、極板群21の極板間に介装されているセパレータが熱により損傷して極板間で短絡を生じるなどの問題が発生する。
【0007】
そこで、図5(a)、(b)に示すように、集電板22の幅方向に全幅にわたる走査25の他に、両側縁部に対してそれぞれ1又は複数回、点状ないし狭い幅の走査26、27を行うことによって、両側縁部に対して別途に入熱し、両側縁部を含めて全幅で確実に溶融する方法が考えられる。
【0008】
しかし、この方法では、例えば図5(b)に示すように、集電板22の全幅にわたる走査25を90ms行うとともに、両側縁部での走査26、27をそれぞれ30msと25msの2回づつ行う必要があるため、1ライン接合するために要する走査時間が210msとなり、集電板22と極板群21を5ラインで接合すると、1050ms要することになり、接合工程に大きな時間を要して生産性が低いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、集電板と極板群の電子ビーム照射による接合において集電板の全幅にわたって確実にしかも短時間で接合することができる電池の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電池の製造方法は、正極板と負極板とセパレータとからなる極板群を用い、正極板及び負極板の端面にそれぞれ集電板を接合してなる電池の製造方法であって、集電板に対して電子ビームを極板の積層方向に沿う幅方向に繰り返し走査して照射し、集電板の電子ビーム照射部を加熱溶融して極板の端面に接合する際、電子ビームの走査を、三角波と正弦波を複合した走査波形を用いて行うものであり、両端部での電子ビームの照射時間が中間部に比して長くなることにより、両端部での入熱量が適当に増加して集電板の全幅にわたって均一に接合でき、しかも両端部で別途に照射を行うことなく一度の照射工程で接合できるので、短時間で接合でき、高い生産性を確保することができる。
【0011】
また、走査波形三角波と正弦波の複合比を1〜4:1とすることにより両端部と中間部の加熱バランスを最適にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電池の製造方法の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0013】
図1において、複数の正極板及び負極板をセパレータを介して積層して構成された極板群1の両側に、正極板と負極板の互いに反対側の側縁部をリード部2としてそれぞれ突出させ、その突出したリード部2に対して直立姿勢で突き合わせた状態に集電板3を配置し、集電板3と各極板のリード部2を接合している。なお、集電板3のリード部2の端面と対向する面にはこれらよりも融点の低い材料からなるロウ材が配されている。
【0014】
集電板3と極板群1の接合に際しては、集電板3に対して極板群1とは反対側から電子ビーム4を照射し、集電板3の電子ビーム照射部5の一部及びロウ材を加熱溶融させることによって接合される。電子ビーム4の照射は、集電板3の長手方向に適当間隔置きの複数箇所において、極板群1の積層方向、即ち集電板3の幅方向に複数回繰り返し走査して行っている。また、電子ビーム照射部5においては、集電板3の内部が一部溶融して溶融ビードが形成され、その熱によって溶融した低融点材料からなるロウ材がリード部2の各板面に対して隅肉となって接合部が形成される。この場合、単純なT型継手に比べて接合部の面積が著しく増大するだけでなく、溶接よりも小さな入熱量で接合部が形成されるため、電子ビーム4の貫通などにより他部材を損傷させることなく、接合の安定性を向上することができる。
【0015】
電子ビーム照射装置の概略構成を図2を参照して説明すると、11は電子銃、12はシャッタ、13は収束コイル、14は偏向コイルであり、電子銃11から放射され、シャッタ12を通過した電子ビーム4を、収束コイル13にて収束し、偏向コイル14にて偏向させて照射面15上の任意位置に照射するように構成されている。
【0016】
本実施形態では、図3に示すように、極板群1の端面が内面に密着配置された集電板3の外面が、その幅方向中央位置を偏向コイル14の軸芯上に位置させた状態で照射面15上に配置される。そして、偏向コイル14に任意波形走査波出力装置16からの走査電圧が印加されて、電子ビーム4が集電板3の幅方向にライン状に繰り返し走査される。任意波形走査波出力装置16は、走査速度が一定になる三角波と両端部で走査速度が遅くなる正弦波を任意に設定された比で複合した走査波を出力できるように構成されている。なお、任意波形走査波出力装置16における三角波と正弦波の複合は、三角波と正弦波を時系列的に順次切り替えることによって行っている。
【0017】
次に、集電板3と極板群1を電子ビーム4の照射により接合する工程を説明すると、図1、図3に示すように、集電板3の外面に対して電子ビーム4を極板群1の積層方向に沿う幅方向に繰り返し走査して照射することにより、集電板3の電子ビーム照射部5が加熱溶融されて極板群1の各極板の端面に接合される。
【0018】
上記電子ビーム4の走査波形は、三角波と正弦波を適当な比率で複合した波形を用いることにより、両端部での電子ビームの照射時間が中間部に比して長くでき、等速走査となる三角波の走査波形では入熱量が少なくなる走査両端部での入熱量を適当に増加することができる。
【0019】
上記三角波と正弦波の適当な複合比について、図4を参照して説明すると、走査波が三角波の場合の入熱量は集電板3の幅方向に一定であり、その入熱量を100%とすると、三角波が4に対して正弦波を1複合した場合、中央部での入熱量が100%になるように出力を設定すると両端部では125%程度となる。同様に三角波が1に対して正弦波を1複合した場合には両端部で155%程度となる。かくして、両端部での入熱量が適度に増大して両端部での接合が適正に行われる。一方、正弦波が3に対して三角波を1複合した場合や、正弦波の場合には、両端部の入熱量が中央部に比べて2〜3倍以上となり、中央部が適正に接合される状態で両端では過大な入熱量によって溶損したり、熱による障害が発生することになる。従って、三角波と正弦波の複合比を1〜4:1とするのが適当である。
【0020】
このように走査波形として三角波と正弦波を適当な比率で複合した波形を用いたことにより、集電板3の全幅にわたって均一に接合できる。しかも両端部で別途に照射を行うことなく一度の照射工程で接合できるので、短時間で接合でき、高い生産性を確保することができる。
【0021】
具体例を示すと、電子ビーム4を4KHzで繰り返し走査し、走査波形としては三角波が3に対して正弦波が1となる比で複合させた波形を用い、1ラインで90ms、即ち360回走査することによって適正な接合状態が得られた。このように、本実施形態によれば1ライン90msで適正な接合が完了し、上記従来例では両端部でそれぞれ2回づつ余分に照射するために1ライン210ms必要としていたのに対して大幅に生産性が向上する。
【0022】
【発明の効果】
本発明の電池の製造方法によれば、以上の説明から明らかなように、集電板に対して電子ビームを極板の積層方向に沿う幅方向に繰り返し走査して照射し、電板の電子ビーム照射部を加熱溶融して極板の端面に接合する際、電子ビームの走査を、三角波と正弦波を複合した走査波形を用いて行うので、両端部での電子ビームの照射時間が中間部に比して長くなることにより、両端部での入熱量が適当に増加して集電板の全幅にわたって均一に接合でき、しかも両端部で別途に照射を行うことなく一度の照射工程で接合できるので、短時間で接合でき、高い生産性を確保することができる。
【0023】
また、走査波形の三角波と正弦波の複合比を1〜4:1とすることにより両端部と中間部の加熱バランスを最適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池の製造方法の一実施形態における極板群と集電板の接合方法を示し、(a)は電子ビームの照射状態を示す斜視図、(b)は電子ビームの照射工程の説明図である。
【図2】同実施形態における電子ビーム照射装置の概略構成図である。
【図3】同実施形態における電子ビーム照射装置の要部の構成図である。
【図4】走査波形と集電体の幅方向の入熱量の関係を示すグラフである。
【図5】従来例における極板群と集電板の接合方法を示し、(a)は電子ビームの照射状態を示す斜視図、(b)は電子ビームの照射工程の説明図である。
【符号の説明】
1 極板群
3 集電板
4 電子ビーム
5 電子ビーム照射部
16 任意波形走査波出力装置

Claims (2)

  1. 正極板と負極板とセパレータとからなる極板群を用い、正極板及び負極板の端面にそれぞれ集電板を接合してなる電池の製造方法であって、集電板に対して電子ビームを極板の積層方向に沿う幅方向に繰り返し走査して照射し、集電板の電子ビーム照射部を加熱溶融して極板の端面に接合する際、電子ビームの走査を、三角波と正弦波を複合した走査波形を用いて行うことを特徴とする電池の製造方法。
  2. 走査波形の三角波と正弦波の複合比を1〜4:1とすることを特徴とする請求項記載の電池の製造方法。
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