JP4557570B2 - 水素分離用薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
前記燃料電池のなかに、種々の炭化水素やアルコ−ル燃料を改質する固体高分子形燃料電池があり、該電池は作動温度が低く、電極として白金または白金合金を用いているため、一酸化炭素等の電極被毒物質を含まない高純度水素を必要としている。
特に、パラジウム等の水素分離用金属膜は、金属内での水素の拡散が最も速く、しかも優れた耐熱性を備え、高温反応場で使用可能であるため、分離膜を燃料改質器に組み込んだ、いわゆるメンブレンリホ−マ−への適用が試みられている。
しかしながら、パラジウムは高価な金属で、燃料電池の実用化や普及に障害になるため、パラジウム合金膜を燃料電池に使用する場合は、これを薄膜化して金属使用量を削減する必要がある。
したがって、パラジウムの薄膜化にはパラジウムの機械的な強度を考慮し、多孔膜質セラミックスや多孔質ステンレス等を支持体とし、該支持体にパラジウム薄膜を被覆していた。
このうち、圧延法は金属片を機械的に薄膜化するため、薄膜化に一定の限界があり、また前記蒸着法やめっき法ではピンホ−ルの発生を避けられず、該ピンホ−ルによって水素分離選択性が低下するとともに、作動時の熱サイクルによって徐々にピンホ−ルが拡大し、水素分離選択性の低下を助長するという問題がある。
ところで、前記超臨界めっき法には無電解めっきへの適用を示唆しているが、被めっき物の浸漬を条件にしており、その場合はめっき液の使用量が増大するとともに、置換めっきの惧れがあり、更に超臨界二酸化炭素がめっき液に溶解して酸性を呈し、めっき液のpHが変動するため、アルカリ性のめっき液では均質なめっき皮膜を得られない、等の問題があって直ちに採用し難い。
上記めっき液のうち、還元剤に蟻酸ナトリウムを用いるとめっき析出速度が遅くなるため、めっき析出速度に優れた還元剤に蟻酸塩を用い、パラジウムイオン源にテトラアンミンパラジウム化合物を用いたものがある(例えば、特許文献3)。
請求項3の発明は、前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用し、均一かつ緻密なパラジウム薄膜の製造に好適にしている。
請求項3の発明は、前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用するから、均一かつ緻密なパラジウム薄膜の製造に好適な効果がある。
前記第1導管2に前記二酸化炭素を液化するコンデンサ6と、加圧ポンプ7および加熱器8と、開閉弁9が介挿され、これらで前記二酸化炭素を超臨界状態(7.3MPa、31.1℃)に形成し、これを前記反応浴1へ導入可能にしている。実施形態では反応浴1内を10MPa、50℃に形成している。
実施形態のめっき液10は、図2のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウム(PdCL2)を0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミン0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/Lを調製して、pH11.7のアルカリ性に作製する。
この場合、前記めっき液10と界面活性剤11との容積比は、約4対1乃至3対2で、それらの総量は反応浴1の導入時に、図6(a)のように後述する基板の直下に非接触状態で収容可能に調量している。
実施形態の還元剤14は、次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2(ホスフィン酸)0.06mol/Lを用いており、前記めっき液10の容量の約1/5に調量している。
この場合、ヒ−タ23を省略し、反応浴1を恒温槽(図示略)に設置することでも、所期の目的を達成できる。
これらの設備は従来の無電解めっき法にない固有の設備であるが、このうち反応浴1は、収容するめっき液量の低減分、従来の無電解めっき装置の浴槽に比べ小形軽量化を図れ、まためっき液のpH調整手段にしても、使用するめっき液量の低減分、簡素化を図れ、従来のような再生槽を省略し得る。
前記基板18の性状、およびパラジウム超薄膜の被覆前後の表面と断面は、図3乃至図5のようである。なお、基板18を例えばヒ−タ23を介して約50℃に温め、この後のパラジウム皮膜の析出を促すようにする。
前記めっき液10は実施形態の場合、図2のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウムを0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミンを0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/Lを調量して、pH11.7のアルカリ性に調製する。
その総量は約25mLで、それらは図6(a)のように反応浴1内において、基板18の直下に非接触状態で収容される。なお、還元剤を除く前記めっき液10と界面活性剤11との容積比は、約4対1乃至3対2にする。
前記導入後、超臨界二酸化炭素は前記めっき液10に溶解して、該めっき液10をpH2〜4の酸性に調製するとともに、界面活性剤11と混合して乳濁し、図6(b)のようなエマルジョン状態を形成する。そして、前記エマルジョン状態をしばらく放置し、当該状態が安定したところで、撹拌子19を約650rpmで駆動し、エマルジョン状態を一様化する。
このようにすると、還元剤14がエマルジョン状態内に速やかに拡散し、前記基板18が還元剤14を含むめっき液10のエマルジョンに恰も浸漬された状況を呈して、無電解めっき反応が始まる。この状況は図6(b)のようである。
H2PO2 −+3OH−→HPO3 2−+2H2O+2e−
Pden2++2e−→Pd+en
したがって、従来の無電解めっき法に比べ、めっきのつき廻りが良く、複雑な形状の被めっき物に対し均一なめっき厚を得られ、かつその薄膜化を図れて、貴金属であるパラジウムめっきに好適になる。しかも、前記超臨界二酸化炭素の優れた拡散性によって、前記析出が断続的に行なわれ、析出皮膜の結晶が微細化し、めっき皮膜の緻密化を増進する。
しかし、反応浴1内は超臨界状態の高圧下に置かれ、この高圧下では前記発生ガスの超臨界二酸化炭素ないしめっき液10に対する溶解が促され、また前記気泡が押し縮められて微細化し、更に微細化した気泡に界面活性剤が効率良く働いて、基板18表面に付着する気泡を速やかに剥離し、超臨界二酸化炭素およびめっき液10への溶解を促す。
したがって、前記めっきムラや欠けピンホ−ル等の発生を防止し、均一かつ緻密なめっき皮膜を得られる。
すなわち、本発明による析出結晶は図7(a)ように、図8(a)の従来のめっき法で発生したクラックが消失し、微細で緻密な析出結晶を得られた。また、本発明による析出皮膜は図8(b)のように、従来の無電解めっき法に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は4.10μmで従来の3.50μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.38で従来の0.46よりも小さく、皮膜厚の均一性の向上が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
このようにすると、前記超臨界二酸化炭素が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、急激に気化若しくは液化して系内に流れが発生し、外部へ速やかに排出される。
その際、基板18に付着しためっき液が吹き飛ばされて、基板18の乾燥が促され、反応浴1内にはめっき液10と界面活性剤11とが二層をなして残留する。この状況は図6(c)のようである。
また、めっき液10に超臨界二酸化炭素を溶解して、めっきに必要な所定の酸性濃度を得ているから、従来のような高価かつ有毒な酸性薬液を使用する場合に比べ、安価で安全に作業を行なえる。
このうち、図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態では還元剤14としてホスフィン酸の代わりに、ホスホン酸を0.02mol/L用い、そのめっき液は図9のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウムを0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミンを0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/L用いて、pH10.6に調製している。
HPO3 2−+2OH−→HPO4 2−+H2O+2e−
HPO3 2−+H2O→H2PO4 −+H++2e−
Pden2++2e−→Pd+en
すなわち、本発明による析出結晶は図10(a)ように、図8(a)の従来のめっき法よる析出結晶に比べて微細かつ緻密で、その膜厚は図10(b)のように、従来の無電解めっき法による図11(b)に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は7.03μmで従来の5.70μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.39で従来の0.46より小さく、皮膜厚の均一性の向上が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
(CH3)3BH3+7OH−→(CH3)2+BO2+5H2O+6e−
Pden2++2e−→Pd+en
すなわち、本発明による析出結晶は図13(a)ように、図14(a)の従来のめっき法よる析出結晶に比べて微細かつ緻密で、その膜厚は図13(b)のように、従来の無電解めっき法による図14(b)に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は5.03μmで従来の3.85μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.39で従来の0.30より若干大きいが、皮膜厚の均一性が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
10 めっき液
11 界面活性剤
14 還元剤
18 被めっき物(基板)
Claims (3)
- 反応浴に、パラジウムイオンを含有するめっき液と、還元剤と、めっき液中のパラジウムイオンを析出する被めっき物と、超臨界状態またはその形成物質と、界面活性剤とを収容し、前記反応浴に超臨界状態とエマルジョン状態を形成後、被めっき物にパラジウムイオンを析出させる無電解めっき法による水素分離用薄膜の製造方法において、前記反応浴に前記めっき液と界面活性剤とを被めっき物と非接触状態で収容後、前記反応浴に二酸化炭素を導入し、該反応浴に超臨界二酸化炭素とそのエマルジョン状態とを形成し、前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、該めっき液を所定の酸性濃度に調製するとともに、前記エマルジョン状態形成後、前記還元剤を反応浴に導入して酸化還元反応を開始し、かつ該酸化還元反応時に発生した水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解し、パラジウムイオンを被めっき物に析出させることを特徴とする水素分離用薄膜の製造方法。
- 前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、めっき液をpH2〜4の酸性濃度に調製する請求項1記載の水素分離用薄膜の製造方法。
- 前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用する請求項1記載の水素分離用薄膜の製造方法。
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