JP4557570B2 - 水素分離用薄膜の製造方法 - Google Patents

水素分離用薄膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば改質型燃料電池に使用する水素分離膜の製造に好適で、水素分離膜を薄膜化し、水素を高純度に分離でき、燃料改質器の小形軽量化と改質反応の高効率化と経済性を図れ、しかもピンホ−ルがなく緻密かつ均一な薄膜を安価に得られる、水素分離用薄膜の製造方法に関する。
近時、環境問題やエネルギ−・セキュリティ等の観点から、燃料電池の開発と実用化並びにその普及が強く期待されている。
前記燃料電池のなかに、種々の炭化水素やアルコ−ル燃料を改質する固体高分子形燃料電池があり、該電池は作動温度が低く、電極として白金または白金合金を用いているため、一酸化炭素等の電極被毒物質を含まない高純度水素を必要としている。
このような高純度水素を得る際の水素分離・精製手段として、相転移を伴なわず省エネルギ−技術で、連続操作および小型化が可能な膜分離法が注目され、該分離法の高純度水素製造への適用が検討されている。
特に、パラジウム等の水素分離用金属膜は、金属内での水素の拡散が最も速く、しかも優れた耐熱性を備え、高温反応場で使用可能であるため、分離膜を燃料改質器に組み込んだ、いわゆるメンブレンリホ−マ−への適用が試みられている。
とりわけ、非多孔質金属膜であるパラジウム合金膜は、ガスの分離能力が極めて高く水素純度を高められるため、分離した水素をそのまま固体高分子形燃料電池に使用できる利点がある(例えば、特許文献1)。
しかしながら、パラジウムは高価な金属で、燃料電池の実用化や普及に障害になるため、パラジウム合金膜を燃料電池に使用する場合は、これを薄膜化して金属使用量を削減する必要がある。
したがって、パラジウムの薄膜化にはパラジウムの機械的な強度を考慮し、多孔膜質セラミックスや多孔質ステンレス等を支持体とし、該支持体にパラジウム薄膜を被覆していた。
前記パラジウムの薄膜化法として、圧延法や真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相蒸着法、電解めっき法や無電解めっき(化学めっき)法等が知られている。
このうち、圧延法は金属片を機械的に薄膜化するため、薄膜化に一定の限界があり、また前記蒸着法やめっき法ではピンホ−ルの発生を避けられず、該ピンホ−ルによって水素分離選択性が低下するとともに、作動時の熱サイクルによって徐々にピンホ−ルが拡大し、水素分離選択性の低下を助長するという問題がある。
このうち、前記めっき法の問題を解決するものとして、浴中にめっき液と被処理物と界面活性剤を収容し、これに超臨界二酸化炭素を導入して浴中を乳濁し、このエマルジョン状態の下で電気めっきし、つきまわりが良く、均一で薄膜の金属皮膜を析出でき、しかもめっき液の使用量と廃液量を減量し得るようにした超臨界めっき法がある(例えば、特許文献2)。
しかし、前記電気めっき法は、一般的に被処理物の形状が複雑な場合、めっき皮膜の厚さに一様性を期し難く、薄膜化や均質性を得難い。
ところで、前記超臨界めっき法には無電解めっきへの適用を示唆しているが、被めっき物の浸漬を条件にしており、その場合はめっき液の使用量が増大するとともに、置換めっきの惧れがあり、更に超臨界二酸化炭素がめっき液に溶解して酸性を呈し、めっき液のpHが変動するため、アルカリ性のめっき液では均質なめっき皮膜を得られない、等の問題があって直ちに採用し難い。
一方、無電解パラジウムのめっき液として、パラジウムイオン源に塩化パラジウム、パラジウムイオンの錯化剤にアンモニウムイオンやエチレンジアミン、還元剤に次亜燐酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、または蟻酸ナトリウムを用い、pH調整剤に燐酸塩、四ホウ酸塩、フタル酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等を用いたものがある。
上記めっき液のうち、還元剤に蟻酸ナトリウムを用いるとめっき析出速度が遅くなるため、めっき析出速度に優れた還元剤に蟻酸塩を用い、パラジウムイオン源にテトラアンミンパラジウム化合物を用いたものがある(例えば、特許文献3)。
しかし、前記めっき液は、めっき析出速度の遅れを解消できる一方、無電解めっき時に必然的に発生する水素ガスの発生を抑えるため、めっきの生産性低下を招き、しかも発生した水素ガスがめっき液中に浮遊し、これが被めっき物表面に付着して、めっきムラやピンホ−ルの原因になり、緻密かつ均一なめっき皮膜を得られない等の問題があった。
特開2003−308869号公報 特開2003−321791号公報 特開2000−129454号公報
本発明はこのような問題を解決し、例えば改質型燃料電池に使用する水素分離膜の製造に好適で、水素分離膜を薄膜化し、水素を高純度に分離でき、燃料改質器の小形軽量化と改質反応の高効率化と経済性を図れ、しかもピンホ−ルがなく緻密かつ均一な薄膜を得られる、水素分離用薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、反応浴に、パラジウムイオンを含有するめっき液と、還元剤と、めっき液中のパラジウムイオンを析出する被めっき物と、超臨界状態またはその形成物質と、界面活性剤とを収容し、前記反応浴に超臨界状態とエマルジョン状態を形成後、被めっき物にパラジウムイオンを析出させる無電解めっき法による水素分離用薄膜の製造方法において、前記反応浴に前記めっき液と界面活性剤とを被めっき物と非接触状態で収容後、前記反応浴に二酸化炭素を導入し、該反応浴に超臨界二酸化炭素とそのエマルジョン状態とを形成し、前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、該めっき液を所定の酸性濃度に調製するとともに、前記エマルジョン状態形成後、前記還元剤を反応浴に導入して酸化還元反応を開始し、かつ該酸化還元反応時に発生した水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解し、パラジウムイオンを被めっき物に析出させるようにして、置換めっきの発生を防止し、めっき皮膜の密着力を強固にするとともに、安価な素材でめっき可能な酸性濃度にめっき液を調製し、またエマルジョン状態の形成と酸化還元反応を分けて薄膜製造を合理的に行ない、しかも酸化還元反応時に発生する水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解して除去し、ピンホ−ルがなく緻密かつ均一なパラジウム薄膜を製造するようにしている。
請求項2の発明は、前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、めっき液をpH2〜4の酸性濃度に調製し、安価な素材で良好にめっき可能な酸性濃度にめっき液を調製し得るようにしている。
請求項3の発明は、前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用し、均一かつ緻密なパラジウム薄膜の製造に好適にしている。
請求項1の発明は、反応浴に前記めっき液と界面活性剤とを被めっき物と非接触状態で収容後、前記反応浴に二酸化炭素を導入し、該反応浴に超臨界二酸化炭素とそのエマルジョン状態とを形成し、前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、該めっき液を所定の酸性濃度に調製するとともに、前記エマルジョン状態形成後、前記還元剤を反応浴に導入して酸化還元反応を開始し、かつ該酸化還元反応時に発生した水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解し、パラジウムイオンを被めっき物に析出させるから、置換めっきの発生を防止し、めっき皮膜の密着力を強固にするとともに、安価な素材でめっき可能な酸性濃度にめっき液を調製し、またエマルジョン状態の形成と酸化還元反応を分けて薄膜製造を合理的に行ない、しかも酸化還元反応時に発生する水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解して除去し、ピンホ−ルがなく緻密かつ均一なパラジウム薄膜を製造することができる。
請求項2の発明は、超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、めっき液をpH2〜4の酸性濃度に調製するから、安価な素材で良好にめっき可能な酸性濃度にめっき液を調製することができる。
請求項3の発明は、前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用するから、均一かつ緻密なパラジウム薄膜の製造に好適な効果がある。
以下、本発明を改質型燃料電池に好適な水素分離用薄膜として、パラジウム薄膜を無電解めっき(化学めっき)法によって製造する場合に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図8において1は圧力容器からなる密閉可能な反応浴で、適所に開閉蓋(図示略)が設けられ、後述の被処理物である基板を出し入れ可能にしている。
前記反応浴1に第1乃至第3導管2〜4が配管され、このうち第1導管2の他端は超臨界形成物質、実施形態では二酸化炭素を充填した圧力容器5に連通可能にされている。
前記第1導管2に前記二酸化炭素を液化するコンデンサ6と、加圧ポンプ7および加熱器8と、開閉弁9が介挿され、これらで前記二酸化炭素を超臨界状態(7.3MPa、31.1℃)に形成し、これを前記反応浴1へ導入可能にしている。実施形態では反応浴1内を10MPa、50℃に形成している。
前記第2導管3の他端は、めっき液(還元剤を除く)10と所定の界面活性剤11とを収容する収納タンク12に連通可能にされ、前記めっき液10と界面活性剤11とを第2導管3に介挿した送液ポンプ13を介して、前記反応浴1へ導入可能にしている。
実施形態のめっき液10は、図2のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウム(PdCL)を0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミン0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/Lを調製して、pH11.7のアルカリ性に作製する。
この場合、前記めっき液10と界面活性剤11との容積比は、約4対1乃至3対2で、それらの総量は反応浴1の導入時に、図6(a)のように後述する基板の直下に非接触状態で収容可能に調量している。
前記第3導管4の他端は、還元剤14を収容する収納タンク15に連通可能にされ、該還元剤14を第3導管4に介挿した送液ポンプ16を介して、前記反応浴1へ導入可能にしている。図中、17は第3導管4に介挿した開閉弁である。
実施形態の還元剤14は、次亜リン酸ナトリウムNaHPO(ホスフィン酸)0.06mol/Lを用いており、前記めっき液10の容量の約1/5に調量している。
図中、18は前述の支持体を構成する被処理物である基板で、多孔質アルミナ平板に通孔24を形成しており、その表面に細孔を塞がない程度に導電性皮膜である超薄膜のパラジウムを被覆し、これをめっき時に反応浴1内に吊り下げ、その皮膜表面にパラジウム薄膜、実施形態ではパラジウム−リン合金を被覆可能にしている。
19は撹拌子で、実施形態では撹拌性の高い十字型撹拌子を用いており、20は大気に連通可能にした排気管で、該管20に背圧弁21と開閉弁22が介挿されている。23は反応浴1の外面に設けたヒ−タである。
この場合、ヒ−タ23を省略し、反応浴1を恒温槽(図示略)に設置することでも、所期の目的を達成できる。
このように構成した本発明は、その実施に当って密閉可能な圧力容器である反応浴1と、該浴1に導入する超臨界二酸化炭素の形成手段を要する。
これらの設備は従来の無電解めっき法にない固有の設備であるが、このうち反応浴1は、収容するめっき液量の低減分、従来の無電解めっき装置の浴槽に比べ小形軽量化を図れ、まためっき液のpH調整手段にしても、使用するめっき液量の低減分、簡素化を図れ、従来のような再生槽を省略し得る。
次に、前記設備を用いてパラジウム薄膜を得る場合は、基板18の表面に超薄膜のパラジウムを被覆し、かつその表面を活性処理して、反応浴1に吊り下げる。
前記基板18の性状、およびパラジウム超薄膜の被覆前後の表面と断面は、図3乃至図5のようである。なお、基板18を例えばヒ−タ23を介して約50℃に温め、この後のパラジウム皮膜の析出を促すようにする。
この後、還元剤14を除くめっき液10と、所定の界面活性剤11の所定量を、送液ポンプ13を介して収納タンク12から反応浴1へ送り込み、また撹拌子19を設置する。 この状況は図6(a)のようである。
前記めっき液10は実施形態の場合、図2のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウムを0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミンを0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/Lを調量して、pH11.7のアルカリ性に調製する。
その総量は約25mLで、それらは図6(a)のように反応浴1内において、基板18の直下に非接触状態で収容される。なお、還元剤を除く前記めっき液10と界面活性剤11との容積比は、約4対1乃至3対2にする。
この後、圧力容器5に充填した二酸化炭素を第1導管2に導き、これをコンデンサ6で液化し、加圧ポンプ7とヒ−タ8とで10MPa、50℃に加圧かつ加熱し、超臨界二酸化炭素を形成して、これを反応浴1へ導入する。
前記導入後、超臨界二酸化炭素は前記めっき液10に溶解して、該めっき液10をpH2〜4の酸性に調製するとともに、界面活性剤11と混合して乳濁し、図6(b)のようなエマルジョン状態を形成する。そして、前記エマルジョン状態をしばらく放置し、当該状態が安定したところで、撹拌子19を約650rpmで駆動し、エマルジョン状態を一様化する。
このような状況の下でホスフィン酸からなる還元剤14を所定量、実施形態では5mL、つまり0.06mol/Lを、送液ポンプ16を介して収納タンク15から反応浴1へ送り込む。
このようにすると、還元剤14がエマルジョン状態内に速やかに拡散し、前記基板18が還元剤14を含むめっき液10のエマルジョンに恰も浸漬された状況を呈して、無電解めっき反応が始まる。この状況は図6(b)のようである。
すなわち、前記無電解めっき反応は、基板18とめっき液10の主成分である金属塩の塩化パラジウムと、ホスフィンからなる還元剤14によって行なわれ、ホスフィンイオンが酸化し、パラジウムイオンが還元され、該イオンが基板18の表面に析出する。上記析出反応は塩化パラジウムの触媒作用によって継続され、実施形態では2時間めっき反応させた。
前記ホスフィン酸の還元剤による無電解めっき時は、反応浴1内で次の反応が行なわれる。
PO +3OH→HPO 2−+2HO+2e
Pden2++2e→Pd+en
このような無電解めっき時は、パラジウムイオンとホスフィンイオンが超臨界二酸化炭素によって、反応浴1内に高速かつ精密に拡散し、それらのイオンないし電子の授受が一様かつ旺盛に行なわれ、パラジウムイオンが基板18の表面に析出する。
したがって、従来の無電解めっき法に比べ、めっきのつき廻りが良く、複雑な形状の被めっき物に対し均一なめっき厚を得られ、かつその薄膜化を図れて、貴金属であるパラジウムめっきに好適になる。しかも、前記超臨界二酸化炭素の優れた拡散性によって、前記析出が断続的に行なわれ、析出皮膜の結晶が微細化し、めっき皮膜の緻密化を増進する。
一方、前記無電解めっき反応時は、主に水素ガスが発生し、その気泡が基板18の表面に滞留し若しくは表面を移動して、めっきムラや欠けピンホ−ル等が発生する惧れがある
しかし、反応浴1内は超臨界状態の高圧下に置かれ、この高圧下では前記発生ガスの超臨界二酸化炭素ないしめっき液10に対する溶解が促され、また前記気泡が押し縮められて微細化し、更に微細化した気泡に界面活性剤が効率良く働いて、基板18表面に付着する気泡を速やかに剥離し、超臨界二酸化炭素およびめっき液10への溶解を促す。
したがって、前記めっきムラや欠けピンホ−ル等の発生を防止し、均一かつ緻密なめっき皮膜を得られる。
こうして得られた基板18上のパラジウム皮膜は図7のようで、これを図8に示す従来の無電解めっき法と比べると、次のようである。
すなわち、本発明による析出結晶は図7(a)ように、図8(a)の従来のめっき法で発生したクラックが消失し、微細で緻密な析出結晶を得られた。また、本発明による析出皮膜は図8(b)のように、従来の無電解めっき法に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は4.10μmで従来の3.50μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.38で従来の0.46よりも小さく、皮膜厚の均一性の向上が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
前記めっき時間終了後、加圧ポンプ7および撹拌子19の駆動を停止し、開閉弁22の開弁して反応浴1内の圧力を低下し、反応浴1から基板18を取り出す。
このようにすると、前記超臨界二酸化炭素が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、急激に気化若しくは液化して系内に流れが発生し、外部へ速やかに排出される。
その際、基板18に付着しためっき液が吹き飛ばされて、基板18の乾燥が促され、反応浴1内にはめっき液10と界面活性剤11とが二層をなして残留する。この状況は図6(c)のようである。
この後、反応浴1内に残留しためっき液10と界面活性剤11を利用する場合は、それらの不足分を補給し、かつpH調整する必要があるが、前述のように本発明は少量のめっき液10と界面活性剤11を使用しているため、その補給量ないしpH調整量は少量で足り、それぞれ適宜な滴下手段で対応できるから、従来のような大掛かりな設備や煩雑な作業を要しない。
また、めっき液10に超臨界二酸化炭素を溶解して、めっきに必要な所定の酸性濃度を得ているから、従来のような高価かつ有毒な酸性薬液を使用する場合に比べ、安価で安全に作業を行なえる。
図9乃至図14は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。なお、これらの実施形態における無電解めっき法は、前述の実施形態と実質的に同一であるから、その説明は省略し、相違するめっき液の構成と、得られためっき皮膜について説明する。
このうち、図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態では還元剤14としてホスフィン酸の代わりに、ホスホン酸を0.02mol/L用い、そのめっき液は図9のようにパラジウムイオン供給源として塩化パラジウムを0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミンを0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を30mg/L用いて、pH10.6に調製している。
前記ホスホン酸の還元剤による無電解めっき時は、反応浴1内で次の反応が行なわれる
HPO 2−+2OH→HPO 2−+HO+2e
HPO 2−+HO→HPO +H+2e
Pden2++2e→Pd+en
こうして得られた基板18上のパラジウム皮膜は図10のようで、これを図11に示す従来の無電解めっき法と比べると、次のようである。
すなわち、本発明による析出結晶は図10(a)ように、図8(a)の従来のめっき法よる析出結晶に比べて微細かつ緻密で、その膜厚は図10(b)のように、従来の無電解めっき法による図11(b)に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は7.03μmで従来の5.70μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.39で従来の0.46より小さく、皮膜厚の均一性の向上が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
図12乃至図14は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態では還元剤14としてホスフィン酸およびホスホン酸の代わりに、トリメチルアミンボランを0.06mol/L用い、そのめっき液は図12のように、パラジウムイオン供給源として塩化パラジウムを0.01mol/L、錯化剤としてエチレンジアミンを0.08mol/L、改良剤としてチオグリコ−ル酸を50mg/L用いて、pH10.6に調製している。
前記トリメチルアミンボランの還元剤による無電解めっき時は、反応浴1内で次の反応が行なわれる。
(CHBH+7OH→(CH+BO+5HO+6e
Pden2++2e→Pd+en
こうして得られた基板18上のパラジウム皮膜は図13のようで、これを図14に示す従来の無電解めっき法と比べると、次のようである。
すなわち、本発明による析出結晶は図13(a)ように、図14(a)の従来のめっき法よる析出結晶に比べて微細かつ緻密で、その膜厚は図13(b)のように、従来の無電解めっき法による図14(b)に比べ皮膜厚が均一で、その平均膜厚は5.03μmで従来の3.85μmより若干厚くなるが、その標準偏差は0.39で従来の0.30より若干大きいが、皮膜厚の均一性が確認された。
これらの結果は何れも前述した理由によるもので、めっき時に発生したガスが超臨界二酸化炭素に溶解して、その発生が抑制ないし阻止され、また超臨界二酸化炭素の優れた拡散性に基づくことが確認された。
このように本発明の水素分離用薄膜の製造方法は、水素分離膜を薄膜化し、水素を高純度に分離でき、燃料改質器の小形軽量化と改質反応の高効率化と経済性を図れ、しかもピンホ−ルがなく緻密かつ均一な薄膜を得られるとともに、めっきの生産性を向上でき、例えば改質型燃料電池に使用する水素分離膜の製造に好適である。
本発明の薄膜製造に適用した無電解めっき(化学めっき)法による薄膜製造の状況を示す概要図である。 本発明の薄膜製造に適用したホスフィン酸を還元剤とするめっき液の組成を示す表である。 本発明の薄膜製造に適用した基板の形状を示す表である。 本発明の薄膜製造に適用した基板の作製過程における被覆前の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 本発明の薄膜製造に適用した基板の作製過程における被覆後の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。
本発明の薄膜製造に適用した無電解めっき法による薄膜製造過程を順に示す説明図で、(a)はめっき前、(b)はめっき時、(c)はめっき後の状況を示している。 本発明の薄膜製造に適用した超臨界無電解めっき法において、ホスフィン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 薄膜製造に適用した従来の無電解めっき法において、ホスフィン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 本発明の第2の実施形態の薄膜製造に適用したホスホン酸を還元剤とするめっき液の組成を示す表である。
前記第2の実施形態の薄膜製造に適用した超臨界無電解めっき法において、ホスホン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 薄膜製造に適用した従来の無電解めっき法において、ホスホン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 本発明の第3の実施形態の薄膜製造に適用したトリメチルアミンボランを還元剤とするめっき液の組成を示す表である。
前記第2の実施形態の薄膜製造に適用した超臨界無電解めっき法において、ホスホン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。 薄膜製造に適用した従来の無電解めっき法において、ホスホン酸を還元剤とするめっき液を使用して、基板表面に析出した薄膜の表面状況(a)と断面状況(b)を示す写真図である。
符号の説明
1 反応浴
10 めっき液
11 界面活性剤
14 還元剤
18 被めっき物(基板)

Claims (3)

  1. 反応浴に、パラジウムイオンを含有するめっき液と、還元剤と、めっき液中のパラジウムイオンを析出する被めっき物と、超臨界状態またはその形成物質と、界面活性剤とを収容し、前記反応浴に超臨界状態とエマルジョン状態を形成後、被めっき物にパラジウムイオンを析出させる無電解めっき法による水素分離用薄膜の製造方法において、前記反応浴に前記めっき液と界面活性剤とを被めっき物と非接触状態で収容後、前記反応浴に二酸化炭素を導入し、該反応浴に超臨界二酸化炭素とそのエマルジョン状態とを形成し、前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、該めっき液を所定の酸性濃度に調製するとともに、前記エマルジョン状態形成後、前記還元剤を反応浴に導入して酸化還元反応を開始し、かつ該酸化還元反応時に発生した水素ガスを超臨界二酸化炭素と前記めっき液に溶解し、パラジウムイオンを被めっき物に析出させることを特徴とする水素分離用薄膜の製造方法。
  2. 前記超臨界二酸化炭素を前記めっき液に溶解し、めっき液をpH2〜4の酸性濃度に調製する請求項1記載の水素分離用薄膜の製造方法。
  3. 前記還元剤としてホスフィン酸またはホスホン酸若しくはトリメチルアミンボランを使用する請求項1記載の水素分離用薄膜の製造方法。
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