JP4554035B2 - 樹脂容器及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性に優れ、且つ紫外線による内容物の劣化が長期に渡って防止される樹脂容器及びその製造方法に関する。本発明の樹脂容器は、化粧料、医薬品、紫外線硬化型の印刷インク、塗料等、紫外線による変質、劣化が特に問題となる各種の製品を収納するための容器として使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化粧料、医薬品等の収納に用いられる樹脂容器は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤が配合された樹脂組成物により形成され、紫外線による内容物の劣化が防止されている。また、樹脂容器の耐候性を向上させる作用に優れるヒンダードアミン系の光安定剤も使用されている。しかし、これら紫外線吸収剤及び光安定剤は、経時とともに容器から内容物へと溶出することがあり、内容物の品質が低下することがある。尚、ヒンダードアミン系の光安定剤は紫外線吸収剤との併用による相乗効果が大きく、近年、多用されているが、溶出の他、樹脂容器を黄変させる等の問題もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するものであり、透明性に優れ、且つ紫外線による内容物の劣化を防止するための配合物が経時とともに溶出することがなく、長期に渡って内容物の劣化が安定して防止される樹脂容器及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
第1発明の樹脂容器は、プロピレンブロック共重合体と、酸化亜鉛が配合された低密度ポリエチレンとを含有する樹脂組成物からなる樹脂容器であって、
上記低密度ポリエチレンに配合された上記酸化亜鉛の配合量は、上記低密度ポリエチレンと該低密度ポリエチレンに配合された酸化亜鉛との合計量を100質量%とした場合に、該酸化亜鉛が10〜30質量%であり、
本樹脂容器における酸化亜鉛の含有量は、上記プロピレンブロック共重合体を100質量部とした場合に、0.02〜0.2質量部であり本樹脂容器に含まれる酸化亜鉛の平均粒子径が0.02〜2μmであり、単層からなることを特徴とする。
第2発明の樹脂容器の製造方法は、
低密度ポリエチレンに平均粒子径が0.02〜2μmの酸化亜鉛を配合したマスターバッチと、プロピレンブロック共重合体とを調温されたペレット成形用押出機により混練して、樹脂組成物を調製し、
該樹脂組成物を射出成形して、第1発明に記載の樹脂容器を製造することを特徴とする。
【0005】
上記「プロピレンブロック共重合体」は、プロピレンと、その他のα−オレフィンとのブロック共重合体、即ち、ポリプロピレンブロックと、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合ブロックとを有する共重合体である。プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンが挙げられる。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0006】
このプロピレンブロック共重合体は、その全体を100質量%とした場合に、85〜97質量%、特に80〜90質量%のプロピレンブロックを有することが好ましい。また、α−オレフィンの量比の低い共重合ブロックを高い割合で有し、α−オレフィンの量比の高い共重合ブロックを低い割合で有する共重合体であることが好ましい。例えば、数質量%程度のエチレンを含む共重合ブロック80〜95質量%と、15〜30質量%のエチレン及び数質量%の炭素数4〜12のα−オレフィンを含む共重合ブロック5〜20質量%と、を有する共重合体が好ましい。このような共重合体を使用すれば、透明性に優れるとともに、十分な耐衝撃性を有する樹脂容器とすることができる。
【0007】
酸化亜鉛は低密度ポリエチレンに高い濃度で配合され、低密度ポリエチレンをベースとする、所謂、マスターバッチが調製される。このマスターバッチを使用することにより、酸化亜鉛が均一に分散され、含有された樹脂容器とすることができる。低密度ポリエチレンに配合される酸化亜鉛は、第発明のように、低密度ポリエチレンと、配合される酸化亜鉛との合計量を100質量%とした場合に、10〜30質量%であり、特に15〜25質量%とすることが好ましい。
尚、このマスターバッチは、プロピレンブロック共重合体をベースとして調製することもできるが、第1発明では、低密度ポリエチレンをベースとするマスターバッチを使用することによって、より優れた透明性を有する樹脂容器とすることができる。
【0008】
上記「低密度ポリエチレン」としては、高圧法低密度ポリエチレン、及びエチレンと1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンを使用することができる。これらのうちでは、プロピレンブロック共重合体との混練時の作業性に優れる直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。これらの低密度ポリエチレンの密度は0.890〜0.935g/cm3であり、0.895〜0.922g/cm3、特に0.900〜0.915g/cm3であることが好ましい。密度が高すぎる場合は、樹脂容器の透明性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0009】
酸化亜鉛が配合された低密度ポリエチレンの使用量は、プロピレンブロック共重合体を100質量部(以下、「部」と略記する。)とした場合に、0.5〜5部とすることができ、特に1〜3部とすることが好ましい。この使用量により、樹脂容器に含まれる酸化亜鉛を0.02〜0.2質量部の範囲に容易に調整することができる。酸化亜鉛の含有量が0.02質量%未満であると、紫外線による内容物の劣化を防止することができない。一方、0.2質量%を超えると、樹脂容器が白濁し始め、透明性が損なわれる。酸化亜鉛の含有量は0.02〜0.15質量%、特に0.03〜0.1質量%であることが好ましく、この範囲の含有量であれば、優れた透明性を有し、且つ内容物の劣化が長期に渡って十分に防止される樹脂容器とすることができる。
【0010】
酸化亜鉛は六方晶系であり、樹脂容器に含まれる上記「酸化亜鉛」の平均粒子径は「0.02〜2μm」である。この平均粒子径が0.02μm未満となるほどに微細な酸化亜鉛を用いた場合は、低密度ポリエチレンに配合する際に凝集し易く、均一に分散させることができない。一方、2μmを超える場合は、樹脂容器の透明性が低下するばかりでなく、紫外線を十分に遮蔽することができず、内容物が劣化する。酸化亜鉛の平均粒子径は0.05〜1.5μm、特に0.07〜1μmであることが好ましく、この範囲の平均粒子径であれば、十分な透明性を有し、且つ紫外線による内容物の劣化が長期に渡って防止される樹脂容器とすることができる。
【0011】
上記「樹脂容器」は、上記「樹脂組成物」を使用し、ブロー成形法、射出成形法等、各種の成形方法により作製することができ、その形状、寸法等も所要のものとすることができる。また、樹脂組成物には、透明性及び耐紫外線劣化性が損なわれない限り、老化防止剤等、通常、この種の樹脂に用いられる他の添加剤を配合することができる。更に、この樹脂容器は、無色透明であってもよく、着色剤を配合することにより、着色透明にしてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
実施例1(0.1質量%の酸化亜鉛を含む樹脂容器)
プロピレンブロック共重合体(チッソ株式会社製、商品名「K4028」)100部と、低密度ポリエチレンに20質量%の酸化亜鉛が配合されてなるマスターバッチ0.5部とを、190℃に調温されたペレット成形用押出機により混練し、樹脂組成物を調製した。その後、この樹脂組成物を用いて、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、型式「S480/150」)により、厚さ;3mm、外径;80mm、内径;70mm、深さ;90mmの円筒形容器を作製した。この容器には0.1質量%の酸化亜鉛が含まれていることになる。
【0013】
この容器から試片を切り出し、るつぼに投入し、これを電気炉に入れ、800℃まで昇温し、加熱して灰化させた。得られた灰をエタノールに分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型式「LA−700」)によって酸化亜鉛の平均粒子径を測定したところ、0.2μmであった。また、容器の外側面より試片を切り出し、紫外分光光度計(株式会社島津製作所製、型式「UV−240」)により紫外線吸収率を測定したところ、波長380nm以下の紫外線は完全に吸収されており、波長600nmの紫外線でも吸収率は僅かに6%であった。また、目視により容器を観察したところ、白濁はまったく認められず、十分な透明性を有していた。
【0014】
実施例2〜5及び比較例1〜4(酸化亜鉛の含有量を変化させた、或いは酸化亜鉛を含まない樹脂容器)
酸化亜鉛の含有量を表1のように変化させた低密度ポリエチレン、或いは酸化亜鉛を含有しない低密度ポリエチレン(比較例1)を使用した他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、同様にして円筒容器を作製した。その後、実施例1と同様にして紫外線吸収率及び透明性を評価した。結果を表1に併記する。
尚、実施例1、2、4及び5並びに比較例1及び3については、紫外線の波長と吸収率との相関を図1に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0004554035
【0016】
表1及び図1によれば、実施例1〜5では、UV吸収率は十分に小さく、且つ透明性に優れた樹脂容器であることが分かる。特に、実施例3及び4では、UV吸収率はより小さく、濁りもまったくなく、これらのバランスのよい樹脂容器であることが分かる。一方、酸化亜鉛を含んでいない比較例1(図1における「ナチュラル」)及び酸化亜鉛が過少である比較例2、3では、透明性には優れるものの、UV吸収率が大きくなる。また、酸化亜鉛が過剰である比較例4では、UV吸収率は十分に小さいものの、かなり濁りっており、透明性が大きく低下している。
【0017】
【発明の効果】
第1発明によれば、透明性に優れ、紫外線による内容物の劣化が長期に渡って十分に防止される樹脂容器とすることができる。また、第発明のように、酸化亜鉛を、低密度ポリエチレンをベースとするマスターバッチによって配合することにより、更に優れた透明性を有する樹脂容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化亜鉛の含有量の異なる樹脂容器における、紫外線の波長と吸収率との相関を表すグラフである。

Claims (2)

  1. プロピレンブロック共重合体と、酸化亜鉛が配合された低密度ポリエチレンとを含有する樹脂組成物からなる樹脂容器であって、
    上記低密度ポリエチレンに配合された上記酸化亜鉛の配合量は、上記低密度ポリエチレンと該低密度ポリエチレンに配合された酸化亜鉛との合計量を100質量%とした場合に、該酸化亜鉛が10〜30質量%であり、
    本樹脂容器における酸化亜鉛の含有量は、上記プロピレンブロック共重合体を100質量部とした場合に、0.02〜0.2質量部であり本樹脂容器に含まれる酸化亜鉛の平均粒子径が0.02〜2μmであり、単層からなることを特徴とする樹脂容器。
  2. 低密度ポリエチレンに平均粒子径が0.02〜2μmの酸化亜鉛を配合したマスターバッチと、プロピレンブロック共重合体とを調温されたペレット成形用押出機により混練して、樹脂組成物を調製し、
    該樹脂組成物を射出成形して、請求項1に記載の樹脂容器を製造することを特徴とする樹脂容器の製造方法。
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