JP4553533B2 - 射出成形品の射出成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の中空部を有する射出成形品、及び、かかる射出成形品の射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、キャビティ内の熱可塑性樹脂内に中空部を形成する射出成形方法が広く用いられている。このような射出成形方法を採用することによって、射出成形品の寸法精度(例えば反り)が向上し、また、ヒケの発生を抑制することができるし、射出成形品の軽量化を図ることができる。
【0003】
スリットと、このスリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品の樹脂部に中空部を形成する要請がある。このような射出成形品として、スキャナーミラーキャリッジやレンズホルダー、ミラーホルダーを挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような射出成形品を、上述の従来の射出成形方法にて成形しようとした場合、1つのゲート部から金型に設けられたキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に、ゲート部内に配置された加圧流体導入部から加圧流体を導入する。然るに、このような方法では、図10の(A)に射出成形品の模式的な断面図を示すように、射出成形品の一部分にしか中空部が形成されなかったり、図10の(B)に示すように、所望の中空部が形成できないといった問題が生じる。特に、図10の(B)に示す現象は、スリット全体を樹脂部が取り囲んでおり、射出成形品にスリットの他端に対向した部分(図10の(B)では「X」で示す)が存在し、中空部がこの部分Xを越えて延びてしまうが故に、発生する。
【0005】
これらの現象を解決するためには、2つのゲート部から金型に設けられたキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を射出し、各ゲート部内に配置された加圧流体導入部から加圧流体を導入すれば、図10の(A)や(B)に示した現象の発生を防止することは可能であろう。しかしながら、各ゲート部内に加圧流体導入部を配置することは、金型の製造コストの増加を招く。更には、射出成形品の大きさが小さい場合、各ゲート部内に加圧流体導入部を配置することは困難となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、スリットと、スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、樹脂部に所望の中空部が確実に形成された射出成形品、及び、かかる射出成形品を成形するための射出成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の射出成形品は、
スリットと、該スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、
樹脂部は、スリットの一端に沿って位置する第1の樹脂部と、スリットの延びる方向にスリットに沿って第1の樹脂部から延びる複数の第2の樹脂部と、第2の樹脂部に挟まれ、且つ、スリットの他端に沿って位置する第3の樹脂部から構成され、
第1の樹脂部には加圧流体導入痕が形成され、
第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部には、加圧流体導入痕から延在した中空部が形成されており、
第3の樹脂部には中空部が形成されていないことを特徴とする。
【0008】
本発明の射出成形品にあっては、スリットの延びる方向に垂直な平面で第2の樹脂部を切断したときの第2の樹脂部のそれぞれの断面積が互いに異なっている構成とすることができる。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法は、
スリットと、該スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、
樹脂部は、スリットの一端に沿って位置する第1の樹脂部と、スリットの延びる方向にスリットに沿って第1の樹脂部から延びる複数の第2の樹脂部と、第2の樹脂部に挟まれ、且つ、スリットの他端に沿って位置する第3の樹脂部から構成され、
第1の樹脂部には加圧流体導入痕が形成され、
第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部には、加圧流体導入痕から延在した中空部が形成されており、
第3の樹脂部には中空部が形成されていない射出成形品の射出成形方法であって、
スリットの一端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には第2の樹脂部の数と同じ数のゲート部が設けられており、
該複数のゲート部は1つの溶融熱可塑性樹脂流路に連通しており、
加圧流体導入部が溶融熱可塑性樹脂流路内に配置されており、
スリットを成形する金型の部分の延びる方向に金型の該部分に沿って延びる、各第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分を、スリットを成形する金型の該部分の延びる方向と垂直な平面で切断したときのキャビティの該部分の断面積に応じて、キャビティの該部分に対応したゲート部の開口面積が規定されている金型を使用し、
キャビティ内に複数のゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後(射出完了と同時を含む)、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、キャビティ内の熱可塑性樹脂内に中空部を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法において、各ゲート部は、サイドゲート構造を有することが好ましい。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法は、
スリットと、該スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、
樹脂部は、スリットの一端に沿って位置する第1の樹脂部と、スリットの延びる方向にスリットに沿って第1の樹脂部から延びる複数の第2の樹脂部と、第2の樹脂部に挟まれ、且つ、スリットの他端に沿って位置する第3の樹脂部から構成され、
第1の樹脂部には加圧流体導入痕が形成され、
第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部には、加圧流体導入痕から延在した中空部が形成されており、
第3の樹脂部には中空部が形成されていない射出成形品の射出成形方法であって、
スリットの一端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面にはゲート部が設けられており、
該ゲート部内、又は、該ゲート部が連通した溶融熱可塑性樹脂流路内には、加圧流体導入部が配置されており、
スリットの他端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には、第2の樹脂部の数と同じ数のオーバーフロー部が設けられており、
各オーバーフロー部は、流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段を備えている金型を使用し、
キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後(射出完了と同時を含む)、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の一部を各オーバーフロー部に流出させ、且つ、キャビティ内の熱可塑性樹脂内に中空部を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法において、ゲート部は、フィルムゲート構造(スリットゲート構造とも呼ばれる)を有する1つのゲート部とすることが好ましいが、これに限定するものではなく、例えば、第2の樹脂部の数と同じ数のサイドゲート構造を有するゲート部とすることもできる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法にて得られる射出成形品においては、各第2の樹脂部に形成された中空部が、射出成形品の形状、寸法、構造、射出成形条件等に依存して、各オーバーフロー部にまで延びている場合もあるし、延びていない場合もある。
【0014】
このような構成を含む本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては、各オーバーフロー部は、スリットを成形する金型の部分の延びる方向に金型の該部分に沿って延びる、第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分の軸線上に概ね位置することが好ましい。また、オーバーフロー部に流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段を、オーバーフロー部とキャビティとを結ぶ連通流路とする構成、あるいは又、弁(バルブ)とする構成とすることができる。前者の場合、連通流路の断面積、長さを、種々の成形試験を行って最適化すればよい。後者の場合、射出成形のタイミングに合わせてそれぞれの弁の開閉を独立して制御すればよい。
【0015】
上記の構成を含む本発明の射出成形品にあっては、また、各種の構成を含む本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法によって得られる射出成形品にあっては、各第2の樹脂部に形成された中空部の長さは、最も長い中空部の長さをLMAX、最も短い中空部の長さをLMINとしたとき、0.75≦LMIN/LMAX≦1、好ましくは0.9≦LMIN/LMAX≦1を満足することが望ましい。
【0016】
更には、上記の構成を含む本発明の射出成形品にあっては、また、各種の構成を含む本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法によって得られる射出成形品にあっては、射出成形品の外形平面形状は、短辺と長辺を有する略矩形であり、スリットの延びる方向は長辺と平行である構成とすることができ、この場合、複数の第2の樹脂部の平行度が100μm以下、好ましくは50μm以下であることが望ましい。ここで、複数の第2の樹脂部の平行度とは、第2の樹脂部のスリットに面する部分と、スリットを挟んでこの部分に対向した第2の樹脂部のスリットに面する部分との間の平行度を意味する。スリットは、長さと幅と深さ(射出成形品の厚さに一致する)とによって規定される。射出成形品の外形平面形状とは、射出成形品の厚さ方向の射影像を意味する。
また、略矩形であるとは、厳密には矩形でなくともよいことを意味し、例えば、射出成形品に若干の突起部等が存在してもよい。
【0017】
本発明における射出成形品として、例えば、OA機器におけるスキャナーミラーキャリッジ、コピー機やファクシミリのミラーホルダーやレンズホルダーを挙げることができる。
【0018】
本発明において、スリットの数をNとしたとき、第1の樹脂部の数は1であり、第2の樹脂部の数は(N+1)であり、第3の樹脂部の数はNである。第1の樹脂部に形成される加圧流体導入痕の数は、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては(N+1)であり、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては、フィルムゲート構造を有するゲート部を使用する場合は1であり、第2の樹脂部の数と同じ数のサイドゲート構造を有するゲート部を使用する場合は(N+1)である。また、ゲート部の数は、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては(N+1)であり、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法においてサイドゲート構造を有するゲート部とする場合にも(N+1)であり、フィルムゲート構造を有するゲート部とする場合には1である。
【0019】
本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては、スリットの数をNとしたとき、スリットを成形する金型の部分の延びる方向に金型の該部分に沿って延びる、各第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分CVn(n=1,2,・・・,N)を、スリットを成形する金型の該部分の延びる方向と垂直な平面で切断したときのキャビティの該部分CVnの断面積SCVnに応じて、キャビティの該部分CVnに対応したゲート部の開口面積SGnが規定されているが、キャビティの部分CVnの断面積SCVnは、断面積SCVnが一定でない場合、スリットを成形する金型の部分の延びる方向に沿って最も長い領域の断面積とすればよい。また、SG1:SG2:SG3・・・=SCV1 -1:SCV2 -1:SCV3 -1・・・を概ね満足することを1つの指針とすることができるが、実際には、種々の試験を行い、各ゲート部の開口面積SG1,SG2,SG3・・・を決定することが望ましい。
【0020】
本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては、キャビティ内に射出する溶融熱可塑性樹脂の量を、キャビティを完全に充填する量とすることもできるし、キャビティを完全には充填しない量とすることもできる。一方、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法にあっては、キャビティ内に射出する溶融熱可塑性樹脂の量を、キャビティを完全にあるいはほぼ充填する量とすることが好ましい。
【0021】
本発明での使用に適した熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール,POM)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンエチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;変性PPE樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を例示することができる。
【0022】
更には、本発明においては、ポリマーアロイ材料から成る熱可塑性樹脂を用いることができる。ここで、ポリマーアロイ材料は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたもの、又は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を化学的に結合させたブロック共重合体若しくはグラフト共重合体から成る。ポリマーアロイ材料は、単独の熱可塑性樹脂のそれぞれが有する特有な性能を合わせ持つことができる高機能材料として広く使用されている。少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料を構成する熱可塑性樹脂として、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂といったスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;メタクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6等のポリアミド系樹脂;変性PPE樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂を挙げることができる。
2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイ材料を例示することができる。尚、このような樹脂の組合せを、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂と表記する。以下においても同様である。更に、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂をブレンドしたポリマーアロイ材料として、ポリカーボネート樹脂/PET樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/HIPS樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミド系樹脂、変性PPE樹脂/PBT樹脂/PET樹脂、変性PPE樹脂/ポリアミドMXD6樹脂、ポリオキシメチレン樹脂/ポリウレタン樹脂、PBT樹脂/PET樹脂を例示することができる。
【0023】
尚、以上に説明した各種の熱可塑性樹脂に、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料等を添加することができるし、ガラスビーズ、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム等の無機充填材、あるいは有機充填材を添加することもできる。
【0024】
本発明においては、繊維状の充填材、より具体的には、無機繊維を5重量%乃至50重量%含有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。射出成形品の強度を重視する場合には、無機繊維の平均長さを、5μm乃至5mm、好ましくは10μm乃至0.4mmとし、射出成形品の平滑性を重視する場合には、5μm乃至0.4mm、より好ましくは5μm乃至0.2mm、一層好ましくは5μm乃至0.1mmとすることが望ましい。また、これらの場合、無機繊維の平均直径を、0.01μm乃至15μm、より好ましくは0.1μm乃至13μm、一層好ましくは0.1μm乃至10μmとすることが望ましい。
【0025】
無機繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊維及び硫酸カルシウムウィスカー繊維から成る群から選択された少なくとも1種の材料から構成することが好ましい。尚、熱可塑性樹脂に含有される無機繊維は1種類に限定されず、2種類以上の無機繊維を熱可塑性樹脂に含有させてもよい。
【0026】
無機繊維の平均長さは、重量平均長さを意味する。無機繊維の長さの測定は、熱可塑性樹脂の樹脂成分を溶解する液体に無機繊維を含有する成形用ペレット若しくは成形品を浸漬して樹脂成分を溶解するか、ガラス繊維の場合、600゜C以上の高温で樹脂成分を燃焼させて、残留する無機繊維を顕微鏡等で観察して測定することができる。通常、無機繊維を写真撮影して人が測長するか、専用の繊維長測定装置を使用して無機繊維の長さを求める。数平均長さでは微小に破壊された繊維の影響が大き過ぎるので、重量平均長さを採用することが好ましい。重量平均長さの測定に際しては、あまりに小さく破砕された無機繊維の破片を除いて測定する。無機繊維の公称直径の2倍よりも長さが短くなると測定が難しくなるので、例えば公称直径の2倍以上の長さを有する無機繊維を測定の対象とする。
【0027】
本発明の射出成形品においては、第3の樹脂部には中空部が形成されていないが故に、複数の第2の樹脂部に所望の中空部が確実に形成される。
【0028】
また、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法においては、加圧流体導入部が溶融熱可塑性樹脂流路内に配置されているので、射出成形品の大小に拘わらず、加圧流体導入部を容易に配置することができる。更には、スリットの一端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には第2の樹脂部の数と同じ数のゲート部が設けられており、しかも、第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分の断面積に応じて、キャビティの該部分に対応したゲート部の開口面積が規定されているので、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の移動する最前端は、複数の第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分内に亙って概ね揃っている。それ故、各第2の樹脂部に確実に所望の中空部を形成することができる。
【0029】
更には、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法においては、スリットの他端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には、第2の樹脂部の数と同じ数のオーバーフロー部が設けられており、しかも、各オーバーフロー部は、流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段を備えているので、各第2の樹脂部に確実に所望の中空部を形成することができる。
【0030】
【実施例】
以下、図面を参照して、好ましい実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
実施例1は、本発明の射出成形品、及び、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法に関する。
【0032】
実施例1の射出成形品の模式的な平面図を図1の(A)に示し、模式的な正面図を図1の(B)に示し、模式的な左側面図を図1の(C)に示し、模式的な右側面図を図1の(D)に示し、図1の(B)の矢印E−Eに沿った模式的な断面図を図1の(E)に示す。
【0033】
この射出成形品は、N個(実施例1においては、N=1)のスリット20と、スリット20の全体を取り囲む樹脂部10とから構成されている。樹脂部10は、スリット20の一端21に沿って位置する第1の樹脂部11と、スリット20の延びる方向にスリット20に沿って第1の樹脂部11から延びる複数(実施例1においては、2つ)の第2の樹脂部12A,12Bと、第2の樹脂部12A,12Bに挟まれ、且つ、スリット20の他端22に沿って位置する第3の樹脂部13から構成されている。尚、図1の(A)において、これらの樹脂部を明示するために、斜線を付した。そして、第1の樹脂部11の側面には2カ所の加圧流体導入痕14A,14Bが形成され、第1の樹脂部11及び複数の第2の樹脂部12A,12Bには、加圧流体導入痕14A,14Bから延在した中空部15,15A,15Bが形成されている。一方、第3の樹脂部13には中空部が形成されていない。射出成形品の外形平面形状は、短辺と長辺を有する矩形であり、スリット20の延びる方向は長辺と平行である。
【0034】
実施例1の射出成形方法の実施に適した金型の模式図を図2及び図3の(A)に示す。尚、図3の(A)は図2とは別の角度から眺めた模式図であり、可動金型部32のパーティング面を含む平面を図示している。ここで、パーティング面を明示するために、パーティング面に斜線を付した。
【0035】
この金型30は、固定金型部31と、可動金型部32と、これらの金型部の型締め時に形成されるキャビティ33と、ゲート部34A,34Bと、加圧流体導入部35から構成されている。そして、第2の樹脂部12A,12Bの数と同じ数(2つ)のゲート部34A,34Bが、スリットの一端を成形する金型の部分36Aに対向した金型のキャビティ面に設けられている。ゲート部34A,34Bは、サイドゲート構造を有する。これらのゲート部34A,34Bは1つの溶融熱可塑性樹脂流路37に連通している。加圧流体導入部35は溶融熱可塑性樹脂流路37内に配置されている。具体的には、加圧流体導入部35は、溶融熱可塑性樹脂流路37内に先端部が位置する加圧流体導入ノズルである。加圧流体導入ノズルは、配管39Aを介して加圧流体源39Bに接続されている。溶融熱可塑性樹脂流路37は、射出成形装置の射出用シリンダー38に連通している。
【0036】
スリットを成形する金型の部分36の延びる方向に金型の部分36に沿って延びる、各第2の樹脂部12A,12Bを形成すべきキャビティの部分CV1,CV2を、スリットを成形する金型の部分36の延びる方向と垂直な平面で切断したときのキャビティの該部分CV1,CV2の断面積SCV1,SCV2に応じて、キャビティの該部分CV1,CV2に対応したゲート部34A,34Bの開口面積SG1,SG2が規定されている。具体的には、SCV1:SCV2=2:1であり、SG1:SG2=1:2.3とした。尚、キャビティの部分CV1,CV2の断面形状は矩形であり、ゲート部34A,34Bの開口部分の断面形状も矩形である。
【0037】
射出成形品を、ポリカーボネート樹脂(平均長さ220μm、平均直径13μmのガラス繊維を50重量%添加)を用い、表1に例示する射出成形条件にて成形した。即ち、固定金型部31と可動金型部32を型締めした状態で、射出成形装置の射出用シリンダー38において、ポリカーボネート樹脂を溶融・可塑化、計量し、射出用シリンダー38から溶融熱可塑性樹脂流路37を経由して、ゲート部34A,34Bからキャビティ33に溶融ポリカーボネート樹脂を射出した。
【0038】
溶融ポリカーボネート樹脂の射出中の状態を、模式的に図3の(B)に示す。
第2の樹脂部12A,13Bの数と同じ数のゲート部34A,34Bが設けられており、しかも、第2の樹脂部12A,12Bを形成すべきキャビティの部分CV1,CV2の断面積SCV1,SCV2に応じて、これらのキャビティの部分CV1,CV2に対応したゲート部34A,34Bの開口面積SG1,SG2が規定されているので、キャビティ33内に射出された溶融ポリカーボネート樹脂の移動する最前端は、複数の第2の樹脂部12A,12Bを形成すべきキャビティの部分CV1,CV2内に亙って概ね揃っている。尚、図3の(B)において、参照番号50は、溶融ポリカーボネート樹脂である。
【0039】
溶融ポリカーボネート樹脂の射出量(体積)をキャビティ33の全体積の80%とした。溶融ポリカーボネート樹脂の射出完了の0.5秒前に、加圧流体である圧縮窒素ガスを、加圧流体導入部35から溶融熱可塑性樹脂流路37、ゲート部34A,34Bを経由して、キャビティ33内の溶融ポリカーボネート樹脂中に導入した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から50秒経過後、中空部15,15A,15B内の加圧流体を、ゲート部34A,34B、溶融熱可塑性樹脂流路37、加圧流体導入部35を経由して大気中に解放した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から60秒経過後、金型の型開きを行い、金型から射出成形品を取り出した。
【0040】
[表1]
溶融熱可塑性樹脂温度:320゜C
金型温度 :100゜C
射出時間 :2.5秒
加圧流体最終圧力 :1.2×107Pa
【0041】
得られた射出成形品の反り量を測定した結果を、以下の表3に示す。尚、表3中、「A面」、「B」面、「Y面」は、図1の(A)及び(B)に示すとおりであり、反り量の単位はmmである。反り量の値にマイナスが付いたものは、反りの方向が逆であることを意味する。また、各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.92であった。更には、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、18μmであった。尚、平行度は、第2の樹脂部12Aのスリットに面する部分(図1の(A)にC面で表す)と、スリット20を挟んでこの部分に対向した第2の樹脂部12Bのスリットに面する部分(図1の(A)にD面で表す)との間の平行度であり、具体的には、C面とD面との間の距離を測定し、最大距離と最小距離の差である。
【0042】
(実施例2)
射出成形品を、ポリカーボネート樹脂(平均長さ220μm、平均直径13μmのガラス繊維を20重量%添加)を用いて成形した点を除き、実施例1と同じ金型を使用し、実施例1と同じ射出成形条件にて成形した。得られた射出成形品の反り量を測定した結果を、以下の表3に示す。また、各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.97であった。更には、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、32μmであった。
【0043】
(比較例1)
実施例1と同じ熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同じ金型を使用して、射出成形品を成形した。但し、実施例1と異なり、溶融ポリカーボネート樹脂をキャビティ33内に射出した後、1×108Paの保圧を50秒間加えただけで、加圧流体の導入は行わなかった。得られた射出成形品の反り量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。また、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、120μmであった。しかも、Y面の反りが、スリットの幅を狭くする方向に生じた。
【0044】
(比較例2)
実施例1と同じ熱可塑性樹脂を使用し、実施例1と同じ金型を使用して、射出成形品を成形した。但し、実施例1と異なり、ゲート部34A,34Bの開口面積SG1,SG2が、SG1:SG2=1:1となる金型を使用した。そして、実施例1と同じ射出成形条件にて射出成形品の成形を行った。
【0045】
その結果、図9の(A)に模式的な断面図を示すように、第2の樹脂部12Bに所望の中空部15Bが形成されなかった。各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.33であった。また、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、250μmであった。
【0046】
(実施例3)
実施例3は、本発明の射出成形品、及び、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法に関する。
【0047】
実施例3の射出成形品の模式的な平面図を図4の(A)に示し、模式的な正面図を図4の(B)に示し、模式的な左側面図を図4の(C)に示し、模式的な右側面図を図4の(D)に示し、図4の(B)の矢印E−Eに沿った模式的な断面図を図4の(E)に示す。また、型開き直後の射出成形品の模式的な平面図を図5の(A)に示し、図4の(E)と同様の模式的な断面図を図5の(B)に示す。
【0048】
この射出成形品は、N個(実施例3においては、N=1)のスリット20と、スリット20の全体を取り囲む樹脂部10とから構成されている。樹脂部10は、スリット20の一端21に沿って位置する第1の樹脂部11と、スリット20の延びる方向にスリット20に沿って第1の樹脂部11から延びる複数(実施例3においては、2つ)の第2の樹脂部12A,12Bと、第2の樹脂部12A,12Bに挟まれ、且つ、スリット20の他端22に沿って位置する第3の樹脂部13から構成されている。尚、図4の(A)において、これらの樹脂部を明示するために、斜線を付した。そして、第1の樹脂部には1カ所の加圧流体導入痕14が形成され、第1の樹脂部11及び複数の第2の樹脂部12A,12Bには、加圧流体導入痕14から延在した中空部15,15A,15Bが形成されている。一方、第3の樹脂部13には中空部が形成されていない。射出成形品の外形平面形状は、短辺と長辺を有する矩形であり、スリット20の延びる方向は長辺と平行である。
【0049】
図5に示すように、型開き直後の射出成形品にあっては、金型30Aに設けられたオーバーフロー部40A,40Bを充填した樹脂部16A,16Bが残されている。この樹脂部16A,16Bは後の工程で切断され、図4に示した射出成形品を得ることができる。樹脂部16Aは第2の樹脂部12Aから延び、樹脂部16Bは第2の樹脂部12Bから延びている。第2の樹脂部12Aに形成された中空部15Aは、樹脂部16Aの内部にまで延びている。尚、この中空部の部分を、参照番号15Cで示す。
【0050】
実施例3の射出成形方法の実施に適した金型の模式図を図6及び図7に示す。
尚、図7は図6とは別の角度から眺めた模式図であり、可動金型部32のパーティング面を含む平面を図示している。ここで、パーティング面を明示するために、パーティング面に斜線を付した。
【0051】
この金型30Aは、固定金型部31と、可動金型部32と、これらの金型部の型締め時に形成されるキャビティ33と、ゲート部34と、加圧流体導入部35から構成されている。そして、1つのゲート部34が、スリットの一端を成形する金型の部分36Aに対向した金型のキャビティ面に設けられている。ゲート部34は、フィルムゲート構造(スリットゲート構造とも呼ばれる)を有する。このゲート部34は溶融熱可塑性樹脂流路37に連通している。加圧流体導入部35は溶融熱可塑性樹脂流路37内に配置されている。具体的には、加圧流体導入部35は、溶融熱可塑性樹脂流路37内に先端部が位置する加圧流体導入ノズルである。加圧流体導入ノズルは、配管39Aを介して加圧流体源39Bに接続されている。溶融熱可塑性樹脂流路37は、射出成形装置の射出用シリンダー38に連通している。
【0052】
スリットを成形する金型の部分36の延びる方向に金型の部分36に沿って延びる、各第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分CV1,CV2を、スリットを成形する金型の部分36の延びる方向と垂直な平面で切断したときのキャビティの該部分CV1,CV2の断面積SCV1,SCV2は、具体的には、SCV1:SCV2=2:1であり、キャビティの部分CV1,CV2の断面形状は矩形である。
【0053】
また、スリットの他端を成形する金型の部分36Bに対向した金型のキャビティ面には、第2の樹脂部の数と同じ数(実施例3においては、2つ)のオーバーフロー部40A,40Bが設けられている。各オーバーフロー部40A、40Bは、流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段を備えている。ここで、制御手段は、オーバーフロー部40A,40Bとキャビティ33とを結ぶ連通流路41A,41Bである。尚、連通流路41A,41Bの断面積、長さは、種々の成形試験を行って最適化されている。具体的には、連通流路41A,41Bの長さを同じとし、連通流路41A,41Bの断面積S41A、S41Bを、S41A=0.043SCV1、S41B=0.26SCV2とした。即ち、S41A:S41B=1:3とした。
【0054】
射出成形品を、実施例1と同じポリカーボネート樹脂を用い、表2に例示する射出成形条件にて成形した。即ち、固定金型部31と可動金型部32を型締めした状態で、射出成形装置の射出用シリンダー38において、ポリカーボネート樹脂を溶融・可塑化、計量し、射出用シリンダー38から溶融熱可塑性樹脂流路37を経由して、ゲート部34からキャビティ33に溶融ポリカーボネート樹脂を射出した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出量(体積)はキャビティ33の全体積を充填する量とした。溶融ポリカーボネート樹脂の射出完了と同時に、加圧流体である圧縮窒素ガスを、加圧流体導入部35から溶融熱可塑性樹脂流路37、ゲート部34を経由して、キャビティ33内の溶融ポリカーボネート樹脂中に導入した。これによって、キャビティ33内の溶融ポリカーボネート樹脂がオーバーフロー部40A,40Bに押し出され、中空部15,15A,15B,15Cが形成される。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から50秒経過後、中空部15,15A,15B,15C内の加圧流体を、ゲート部34、溶融熱可塑性樹脂流路37、加圧流体導入部35を経由して大気中に解放した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から60秒経過後、金型の型開きを行い、金型から射出成形品を取り出した。
【0055】
[表2]
溶融熱可塑性樹脂温度:320゜C
金型温度 :100゜C
射出時間 :2.7秒
加圧流体最終圧力 :1.2×107Pa
【0056】
得られた射出成形品の反り量を測定した結果を、以下の表3に示す。また、各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.90であった。更には、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、30μmであった。
【0057】
(比較例3)
比較例3においては、実施例3と異なり、連通流路41A,41Bの長さを同じとし、連通流路41A,41Bの断面積S41A、S42Aを、S41A=S42A=0.13SCV1とした。即ち、連通流路41Bの断面積は最適化されていない。その結果、射出成形完了直後の図9の(B)に模式的な断面図を示すように、第2の樹脂部12Bに所望の中空部15Bが形成されなかった。各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.5であった。また、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、280μmであった。
【0058】
(実施例4)
実施例4は実施例3の変形である。実施例4においては、制御手段を、オーバーフロー部40A,40Bとキャビティ33とを結ぶ連通流路41A,41B(図7参照)に配設された弁(バルブ)とした。尚、図6及び図7には、弁は図示されていない。連通流路41A,41Bの断面積、長さは、比較例3と同じである。
【0059】
射出成形品を、実施例1と同じポリカーボネート樹脂を用い、表2に示した射出成形条件にて成形した。即ち、固定金型部31と可動金型部32を型締めした状態で、射出成形装置の射出用シリンダー38において、ポリカーボネート樹脂を溶融・可塑化、計量し、射出用シリンダー38から溶融熱可塑性樹脂流路37を経由して、ゲート部34からキャビティ33に溶融ポリカーボネート樹脂を射出した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出量(体積)はキャビティ33の全体積を充填する量とした。溶融ポリカーボネート樹脂の射出完了と同時に、加圧流体である圧縮窒素ガスを、加圧流体導入部35から溶融熱可塑性樹脂流路37、ゲート部34を経由して、キャビティ33内の溶融ポリカーボネート樹脂中に導入した。また、溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から3.5秒経過後に連通流路41Aに配設された弁を開き、溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から2.7秒経過後に連通流路41Bに配設された弁を開いた。これによって、キャビティ33内の溶融ポリカーボネート樹脂がオーバーフロー部40A,40Bに押し出され、中空部15,15A,15B,15Cが形成された。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から50秒経過後、中空部15,15A,15B,15C内の加圧流体を、ゲート部34、溶融熱可塑性樹脂流路37、加圧流体導入部35を経由して大気中に解放した。溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から60秒経過後、金型の型開きを行い、金型から射出成形品を取り出した。
【0060】
得られた射出成形品の反り量を測定した結果を、以下の表3に示す。また、各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.98であった。更には、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、32μmであった。
【0061】
(比較例4)
比較例4においては、実施例4と異なり、溶融ポリカーボネート樹脂の射出開始から、2.7秒経過後に連通流路41A,41Bに配設された2つの弁を同時に開いた。その結果、図9の(B)に模式的な断面図を示したと同様に、第2の樹脂部12Bに所望の中空部15Bが形成されなかった。各第2の樹脂部12A,12Bに形成された中空部15A,15Bの長さは、最も長い中空部(中空部15A)の長さをLMAX、最も短い中空部(中空部15B)の長さをLMINとしたとき、LMIN/LMAX≒0.6であった。また、第2の樹脂部12A,12Bの平行度を測定したところ、210μmであった。
【0062】
【0063】
表3からも明らかなように、比較例1と比べて、実施例1〜実施例4にて得られた射出成形品の反り量は少なくなっている。また、各比較例と比べて、各実施例においては、第2の樹脂部に所望の中空部が確実に形成されており、平行度も向上している。
【0064】
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した射出成形品の形状、各部位の相対的な寸法、射出成形に用いた材料、金型、射出成形条件等は例示であり、適宜変更することができる。実施例においては、スリットの数を1としたが、スリットの数は1に限定されない。図8の(A)及び(B)に、2本のスリットを有する射出成形品の模式的な平面図及び模式的な断面図を示す。尚、参照番号12Cは第2の樹脂部であり、参照番号15Dは中空部である。尚、図8に示した射出成形品を、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法に基づき成形した例としたが、本発明の第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法に基づき成形することもできる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の射出成形品においては、第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部に所望の中空部が確実に形成され、射出成形品の寸法精度(例えば反りや平行度)が向上し、また、ヒケの発生を抑制することができるし、射出成形品の軽量化を図ることができる。また、本発明の第1の態様に係る射出成形品の射出成形方法においては、射出成形品の大小に拘わらず、加圧流体導入部を容易に配置することができる。更には、本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る射出成形品の射出成形方法においては、各第2の樹脂部に確実に所望の中空部を形成することができ、射出成形品の寸法精度(例えば反りや平行度)が向上し、また、ヒケの発生を抑制することができるし、射出成形品の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の射出成形品の模式的な平面図、模式的な正面図、模式的な左側面図、模式的な右側面図、及び、模式的な断面図である。
【図2】実施例1の射出成形方法の実施に適した金型の模式図である。
【図3】実施例1の射出成形方法の実施に適した金型の図2とは別の角度から眺めた模式図、及び、溶融熱可塑性樹脂を射出中の可動金型部等の模式図である。
【図4】実施例3の射出成形品の模式的な平面図、模式的な正面図、模式的な左側面図、模式的な右側面図、及び、模式的な断面図である。
【図5】型開き直後の実施例3の射出成形品の模式的な平面図及び模式的な断面図である。
【図6】実施例3の射出成形方法の実施に適した金型の模式図である。
【図7】実施例3の射出成形方法の実施に適した金型の図6とは別の角度から眺めた模式図である。
【図8】2本のスリットを有する射出成形品の模式的な平面図、及び、模式的な断面図である。
【図9】比較例2、比較例3及び比較例4にて得られた射出成形品の模式的な模式的な断面図である。
【図10】従来の技術における問題点を説明するための射出成形品の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10・・・樹脂部、11・・・第1の樹脂部、12A,12B,12C・・・第2の樹脂部、13・・・第3の樹脂部、14,14A,14B・・・加圧流体導入痕、15,15A,15B,15C,15D・・・中空部、16A,16B・・・オーバーフロー部を充填した樹脂部、20・・・スリット、21・・・スリットの一端、22・・・スリットの他端、30,30A・・・金型、31・・・固定金型部、32・・・可動金型部、33・・・キャビティ、34,34A,34B・・・ゲート部、35・・・加圧流体導入部、36・・・スリットを成形する金型の部分、36A・・・スリットの一端を成形する金型の部分、36B・・・スリットの他端を成形する金型の部分、37・・・溶融熱可塑性樹脂流路、38・・・射出用シリンダー、39A・・・配管、39B・・・加圧流体源、40A,40B・・・オーバーフロー部、41A,41B・・・連通流路
Claims (11)
- スリットと、該スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、
樹脂部は、スリットの一端に沿って位置する第1の樹脂部と、スリットの延びる方向にスリットに沿って第1の樹脂部から延びる複数の第2の樹脂部と、第2の樹脂部に挟まれ、且つ、スリットの他端に沿って位置する第3の樹脂部から構成され、
第1の樹脂部には加圧流体導入痕が形成され、
第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部には、加圧流体導入痕から延在した中空部が形成されており、
第3の樹脂部には中空部が形成されていない射出成形品の射出成形方法であって、
スリットの一端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には第2の樹脂部の数と同じ数のゲート部が設けられており、
該複数のゲート部は1つの溶融熱可塑性樹脂流路に連通しており、
加圧流体導入部が溶融熱可塑性樹脂流路内に配置されており、
スリットを成形する金型の部分の延びる方向に金型の該部分に沿って延びる、各第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分を、スリットを成形する金型の該部分の延びる方向と垂直な平面で切断したときのキャビティの該部分の断面積に応じて、キャビティの該部分に対応したゲート部の開口面積が規定されている金型を使用し、
キャビティ内に複数のゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、キャビティ内の熱可塑性樹脂内に中空部を形成することを特徴とする射出成形品の射出成形方法。 - 各ゲート部は、サイドゲート構造を有することを特徴とする請求項1に記載の射出成形品の射出成形方法。
- 各第2の樹脂部に形成された中空部の長さは、最も長い中空部の長さをLMAX、最も短い中空部の長さをLMINとしたとき、0.75≦LMIN/LMAX≦1を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形品の射出成形方法。
- 射出成形品の外形平面形状は、短辺と長辺を有する略矩形であり、
スリットの延びる方向は長辺と平行であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の射出成形品の射出成形方法。 - スリットと、該スリット全体を取り囲む樹脂部とから構成された射出成形品であって、
樹脂部は、スリットの一端に沿って位置する第1の樹脂部と、スリットの延びる方向にスリットに沿って第1の樹脂部から延びる複数の第2の樹脂部と、第2の樹脂部に挟まれ、且つ、スリットの他端に沿って位置する第3の樹脂部から構成され、
第1の樹脂部には加圧流体導入痕が形成され、
第1の樹脂部及び複数の第2の樹脂部には、加圧流体導入痕から延在した中空部が形成されており、
第3の樹脂部には中空部が形成されていない射出成形品の射出成形方法であって、
スリットの一端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面にはゲート部が設けられており、
該ゲート部内、又は、該ゲート部が連通した溶融熱可塑性樹脂流路内には、加圧流体導入部が配置されており、
スリットの他端を成形する金型の部分に対向した金型のキャビティ面には、第2の樹脂部の数と同じ数のオーバーフロー部が設けられており、
各オーバーフロー部は、流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段を備えている金型を使用し、
キャビティ内にゲート部から溶融熱可塑性樹脂を射出し、溶融熱可塑性樹脂の射出中、あるいは、射出完了後、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の一部を各オーバーフロー部に流出させ、且つ、キャビティ内の熱可塑性樹脂内に中空部を形成することを特徴とする射出成形品の射出成形方法。 - ゲート部は、フィルムゲート構造を有することを特徴とする請求項5に記載の射出成形品の射出成形方法。
- 各オーバーフロー部は、スリットを成形する金型の部分の延びる方向に金型の該部分に沿って延びる、第2の樹脂部を形成すべきキャビティの部分の軸線上に概ね位置することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の射出成形品の射出成形方法。
- オーバーフロー部に流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段は、オーバーフロー部とキャビティとを結ぶ連通流路であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の射出成形品の射出成形方法。
- オーバーフロー部に流入する溶融熱可塑性樹脂の量を制御する制御手段は弁であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の射出成形品の射出成形方法。
- 各第2の樹脂部に形成された中空部の長さは、最も長い中空部の長さをLMAX、最も短い中空部の長さをLMINとしたとき、0.75≦LMIN/LMAX≦1を満足することを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載の射出成形品の射出成形方法。
- 射出成形品の外形平面形状は、短辺と長辺を有する略矩形であり、
スリットの延びる方向は長辺と平行であることを特徴とする請求項5乃至請求項10のいずれか1項に記載の射出成形品の射出成形方法。
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