図2は以下に説明する第1ないし第3態様の各インクカートリッジを利用するインクジェット式記録装置の基本構成を斜視図によって示したものである。図中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
また、キャリッジ1の記録用紙6に対向する面(下側面)には、後述する記録ヘッドが搭載され、またその上部には記録ヘッドにインクを供給するブラックインクカートリッジ7、およびカラーインクカートリッジ8が着脱可能に装填されている。
図中符号9は、非印刷領域(ホームポジション)に配置されたキャッピング手段であって、このキャッピング手段9は、記録ヘッドが直上に移動した時に上昇して、記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるように構成されている。そして、キャッピング手段9の下方には、キャッピング手段9の内部空間に対して、負圧を与えるための負圧発生手段としての吸引ポンプ10が配置されている。
前記キャッピング手段9は、記録装置の休止期間中における記録ヘッドのノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を空吐出させるフラッシング動作時のインク受けとして機能し、さらに前記吸引ポンプ10からの負圧を記録ヘッドに作用させて、記録ヘッドの各ノズル開口よりインクを吸引排出させるクリーニング手段としての機能も兼ね備えている。
また、前記キャッピング手段9の印字領域側に隣接して、ゴムなどの弾性板からなるワイピング部材11が水平方向に移動できるように配置されており、必要に応じて記録ヘッドの移動経路に進出して、例えばキャッピング手段10によってインクを吸引した後の記録ヘッドのノズル形成面をワイピングすることができるように構成されている。
図3は、第1態様のインクカートリッジを用いる記録装置におけるカートリッジホルダの構成を示したものである。このカートリッジホルダ13は、前記したキャリッジ1内に構成されており、一端が記録ヘッド20に連通するインク導入路14の他端には、後述する第1態様のインクカートリッジにおけるインク供給口に挿入されるインク導入部としてのインク供給針21が植設されている。またインク供給針21に対向させず、かつその軸線上に交差するようにソレノイド15により駆動される作動杵16が配置されている。
図4は、図3に示したカートリッジホルダに装着される第1態様のインクカートリッジを断面図で示したものであって、例えば前記したブラックインクカートリッジ7の形態を示している。
内部にインク貯留室を形成する容器20の下部には、前記したインク供給針21と係合するインク供給口18が形成されている。インク供給口18は、少なくとも前記作動杵16と対向する領域を弾性変形可能なようにゴムなどの材料でインク流路19を備えた筒状体として構成されている。
インク供給口18は、インク流路19の一端をインク排出口23に連通させて容器20に固定され、また下端にインク供給針21が貫通可能な封止フィルム24が貼着されている。そして、この実施の形態においては作動杵16と対向する領域に、作動杵16のガイドと変形領域の確保を兼ねて凹部25が形成されている。
一方、容器20は、その内部にインクを含浸した多孔質体26を収容し、開口部をインク注入口27、大気連通口28を備えた蓋体29により封止されている。多孔質体26は、リブ30によりインクを供給口から内部に突出した凸部31に弾接されていて、多孔質体26のインク供給口近傍の毛細管力を高めてインクをインク供給口18に排出しやすく構成されている。
この実施の形態において、カートリッジ7を図3に示すカートリッジホルダ8に装填すると、図5に示したようにインク供給針21が、封止フィルム24を貫通してインク供給口18に気密的に係合し、また作動杵16がインク供給口18の変形し易い領域、つまり凹部25に対向する。
この状態でキャリッジ1をキャッピング手段9の位置に移動させ、記録ヘッド20のノズル形成面をキャッピング手段9で封止して、吸引ポンプ10を作動させると、インクカートリッジのインクが記録ヘッド20から作用する負圧に引かれてインク供給口18を経由して記録ヘッド20に流れ込む。
これにより記録ヘッド20や、その他の流路に停滞していた気泡がインクの流れに乗ってキャッピング手段9に排出され、記録ヘッド20が印刷可能な状態となる。
一方、印刷中に印字不良が生じてインク滴の吐出能力を回復させる必要が生じた場合には、前述と同様にキャリッジ1をキャッピング手段9の位置に移動させ、記録ヘッド20をキャッピング手段で封止する。
ついで、図示しない制御手段から信号を出力してソレノイド15を付勢すると、図6に示したように作動杵16が図中矢印Bで示したようにインク供給口側に突出してインク供給口18を弾圧してインク供給路19を閉塞する。
この状態で、吸引ポンプ10を作動させると、上流側、つまりインクカートリッジ側が閉塞されているため、キャッピング手段9に負圧を蓄圧しつつ記録ヘッド20に強い負圧が作用する。所定の時間が経過した時点で、ソレノイド15を消勢すると、作動杵16が後退してインク流路19が開放する。
これによりインクカートリッジに強い負圧が瞬間的に対応して記録ヘッド20に強いインクの流れが生じ、停滞していた気泡が移動し、引き続き作用する吸引ポンプからの負圧によるインクの流れに乗ってキャッピング手段9に排出される。
この実施の形態によれば、インク供給針21とカートリッジのインク供給口との間を閉塞しているため、インク量の消費を抑え、かつ短時間に負圧を高めることができる。また、弁機構を構成するインク供給口が、消耗品としてのカートリッジに設けられているため、カートリッジを交換する毎に弁機構を構成するインク供給口が交換されることとなり、高い信頼性を確保することができる。
また、弁機構を構成するインク供給口が、消耗品としてのカートリッジに設けられているため、カートリッジを交換する毎に弁機構を構成するインク供給口が交換されることとなり、高い信頼性を確保することができる。
なお、前記した実施の形態においては、ソレノイドにより閉塞させるようにしているが、モータにより回動される変位部材で閉塞させるようにしても同様の作用を奏する。また、前記した実施の形態においては、インクを多孔質材に含浸させて容器に収容しているが、容器を液室として構成してインクを直接収容する形式のものに適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
以上のようにこの発明にかかる第1態様のインクカートリッジおよび記録装置においては、記録装置側にインクを供給するインク供給口に、外部からの圧力により流路を閉塞することができる領域が形成されているので、インク供給口を閉塞して吸引ポンプを作動させると、キャッピング手段に負圧が蓄圧でき、ついでインク供給口を開放することにより記録ヘッドに強いインクの流れを生じさせて停滞していた気泡を簡単に排除することができる。また、弁機構を構成するインク供給口が、消耗品としてのカートリッジに設けられているため、カートリッジを交換する毎に弁機構を構成するインク供給口が交換されることとなり、負圧を蓄積させる前記したクリーニング動作の実行において、高い信頼性を確保することができる。
また、弁機構を構成するインク供給口が消耗品としてのカートリッジに設けられているため、カートリッジを交換する毎に弁機構を構成するインク供給口が交換されることとなり、負圧を蓄積させる前記したクリーニング動作の実行において、高い信頼性を確保することができる。
次に図7は、この発明にかかる第2態様のインクカートリッジと、これが装填される記録装置側の一部構成を断面状態で示したものである。図7に示すように、記録ヘッド20を構成するヘッドケース20aの下側面には、記録ヘッド20のノズル形成面を構成するノズルプレート20bが配置されており、このノズルプレート20bには複数のノズル開口20cが形成されている。
また、各ノズル開口20cに対応して圧力室が形成されており、その上部に配設された圧電振動子によるアクチュエータ20dが、ヘッドケース20a内に配置されている。そして、ノズル開口20cと圧力室部分から上部に向かってインク連絡流路20eがヘッドケース20a内に形成されている。
前記ヘッドケース20aの上面には、インク導入部を構成する4本の中空状のインク供給針21が直立状態に配置されており、前記ヘッドケース20a内に形成された各インク連絡流路20eは、それぞれ各供給針21内のインク流路に連通されている。なお各供給針21の頂部付近には、インク導入穴21aが形成されており、インクカートリッジからのインクは、このインク導入穴を介して供給針21内に導入され、前記インク連絡流路20eを介して記録ヘッドの圧力室部分に供給されるように構成されている。
図7における左端のインク供給針21は、ブラックインクを受けるものであり、このインク供給針21に向かって、その上部からブラックインクカートリッジ7が装着される。このブラックインクカートリッジ7は、その上部の大半がインク貯留室7aになされており、このインク貯留室7aには、多孔質部材(フォーム)7bが収納され、且つ多孔質部材7bにブラックインクが含浸された状態でインクが貯留されている。
また、インク貯留室7aの下側部にはインク供給口7cが形成され、このインク供給口7c内には円環状に形成されたゴム製のパッキング部材7dが嵌め込まれている。そして、インク供給口7cの下端部にはフィルム部材7eが貼着されており、カートリッジの保管中において内部のインク溶媒が揮散しないようにシールされている。
なお、図7に示す第2形態のインクカートリッジにおいては後で詳細に説明するように、前記したインク貯留室7aからインク供給口7cに向かって水平方向にインク流路7fが形成されており、このインク流路7fの途中に流路制御手段が配置されている。したがってインク貯留室7aからのインクは、インク流路7fを介してインク供給口7cにもたらされる。
前記したブラックインクカートリッジ7は、図7に示された姿勢のままインク供給針21に向かって押し込むことにより、インク供給口7cに貼着されたフィルム部材7eはインク供給針21によって貫通される。そして、インク供給口7c内に配置されたパッキング部材7dが、インク供給針21の周囲に接合されることで、カートリッジ7は装填状態とされ、ブラックインクが記録ヘッド側に供給できるように構成されている。
また、カラーインクカートリッジ8には、図7に示すように左から順にシアン、マゼンタ、イエローの各カラーインクを個別に収納するインク貯留室が形成されて、これらが一体に形成されており、それぞれの構成は前記したブラックインクカートリッジ7と同様の構成とされている。したがって、それぞれの構成の詳細な説明は省略する。なお、このカラーインクカートリッジ8においても、図7に示された姿勢のまま、記録ヘッド20のヘッドケース20a上に樹立された残りの3本のインク供給針21に向かって押し込むことにより、同様に装填状態とされ、3本のインク供給針21を介して、各カラーインクが記録ヘッド側に供給できるように構成されている。
図8は、第2態様のインクカートリッジにおける第1の実施の形態を示しており、前記したインクカートリッジにおけるインク貯留室のほぼ中央部において切断した状態の縦断面図で示されている。なお、図8に示したカートリッジは、代表してブラックインクカートリッジ7を示しているが、これは、カラーインクカートリッジにおいても同様の構成になされている。また、以下に示す各図においては、すでに説明した各部に相当する部分を同一符号で示している。
前記したインク貯留室7aの出口部分にはカートリッジフイルタ7gが配置されており、このフイルタ7gの直下には開口7hを形成した弁座部材7iが配置されている。さらに、弁座部材7iに形成された前記開口7hの直下には、流路制御手段を構成するシール部材7jが配置されている。このシール部材7jは、ゴム等の弾性素材により円盤状に形成されており、このシール部材7jの下方より上方に押し上げる駆動力を受けることにより、シール部材7jのほぼ中央部が変形して弁座部材7iに形成された前記開口7hを閉塞することができるように構成されている。
すなわち、図に示した実施の形態においては、前記シール部材7jは、後述するアクチュエータによる駆動力を受けない状態においては、インク流路を開放するように構成されている。そして、弁座部材7iに形成された前記開口7hを介してインク貯留室7aから導出されるインクは、インクカートリッジの下底部近傍に水平方向に形成された前記インク流路7fに導出され、インク流路7fを介して前記したインク供給口7cに向かって導出されるように構成されている。
次に図9は、第2態様のインクカートリッジにおける第2の実施の形態を示しており、同様にインクカートリッジにおけるインク貯留室のほぼ中央部において切断した状態の縦断面図で示されている。この図9に示されたインクカートリッジ7には、流路制御手段を構成するシール部材7jを、その下方より上方に押し上げる駆動力を与えるアクチュエータ32が配置されている。この実施の形態におけるアクチュエータ32には、電磁駆動機構33が備えられており、例えば電磁駆動機構33に通電されることにより、電磁駆動機構に配置された作動子34が前記シール部材7jを上方に押し上げる駆動力を与えるようになされる。
これにより、弁座部材7iに形成された前記開口7hを閉塞し、結果としてインク流路7fが閉塞されるようになされる。また、電磁駆動機構33への通電を解除することにより、電磁駆動機構33に配置された前記作動子34は、図示せぬバネ部材の付勢力によって図9に示すように復帰し、弁座部材7iに形成された前記開口7hを開放するように作用する。換言すれば、この図9に示す実施の形態においては、アクチュエータ32への通電または非通電により、インク流路を開閉することができる流路開閉手段、すなわち電磁弁を構成している。次に図10は、第2態様のインクカートリッジにおける第3の実施の形態を示しており、同様にインクカートリッジにおけるインク貯留室のほぼ中央部において切断した状態の縦断面図で示されている。
この図10に示されたインクカートリッジ7には、流路制御手段を構成するシール部材7jを、その下方より上方に押し上げる駆動力を与えるアクチュエータ32として、偏心カムを備えたカム機構35が採用されている。したがって、このカム機構35を軸35aを中心に回転させることにより、作動子34はシール部材7jを上方に押し上げるように作用する。
これにより、弁座部材7iに形成された前記開口7hを閉塞し、結果としてインク流路7fが閉塞されるようになされる。また、カム機構35を軸35aを中心にさらに同方向に180度回転させるか、元の方向に戻すことにより、作動子34は図示せぬバネ部材の付勢力によって図10に示すように復帰し、弁座部材7iに形成された前記開口7hを開放するように作用する。
したがって、カム機構35の回転位置に応じて、流路制御手段としてのシール部材7jと、弁座部材7iに形成された前記開口7hとの距離を調整することができる。これにより、インク流路の流路抵抗を変更することができる流路抵抗変更手段を構成している。
なお、図8ないし図10に示した第2態様にかかる各インクカートリッジ7は、それぞれブラックインクを貯留したインク貯留室が1のものについて説明したが、複数色のインクをそれぞれ個別に貯留することができる複数のインク貯留室を備えたカラーインクカートリッジ8においても、各インク貯留室から各インク供給口に向かって形成されたそれぞれのインク流路に、それぞれのアクチュエータによる駆動力を個別に受けてインク流路7fを閉塞または流路抵抗を増大させることができる流路制御手段が配置された構成とされる。
以上説明したこの発明にかかる第2態様のインクカートリッジにおいては、インク貯留室7aから流路制御手段を構成する弁座部材7iとシール部材7j、並びにカートリッジの下底部に水平方向に形成されたインク流路7fを介してインク供給口7cにインクを導く比較的複雑な構成になされている。したがって、インクカートリッジの前記した各構成部材の一部に形成されるよどみ部分等に気泡が残留し易いという問題を抱えることになる。
これに対処するためには、インクカートリッジ内に封入されるインクとしては、脱気度の高いものが望まれ、5ppm以下に脱気したインクを封入することで、カートリッジの各構成部材のよどみ部分等に発生し得る気泡を効果的にインク溶媒中に溶解できることが知見された。
また、前記インクカートリッジをメーカ側から出荷する場合、換言すれば、カートリッジの保存状態において、ガスバリア性を有する包装部材によって減圧包装することも効果的である。
図12は、ガスバリア性を有する包装部材39によって減圧包装した状態を模式的に示したものである。なお、図12においては包装部材39は原形構造を示しており、したがって、インクカートリッジ7と包装部材39との間には十分な隙間が形成された状態で描かれている。しかしながら、減圧包装した場合には、前記包装部材39は大気圧に押されて収縮し、インクカートリッジ7の表面に、密着された状態になされる。
また、図8に示したインクカートリッジのように、記録装置側に配置されたアクチュエータによって流路制御手段を構成するシール部材7jが駆動される構成においては、包装部材39によって減圧包装した場合には、脆弱なシール部材7jが包装部材39によって密着状態とされる。このために、カートリッジの取扱時等において、シール部材7jに外力が加わりシール部材7jを破損させるという問題が発生し得る
そこで、図11に示されたように流路制御手段を構成するシール部材7jを、カバー部材によって覆った状態で、図12に示すように減圧包装することが望ましい。すなわち、図11に示されたように粘着テープ36の一面に、剛性を有するカバー部材37が貼着されており、このカバー部材37がシール部材7jの露出部分を覆うようにして、前記粘着テープ36がカートリッジの外郭面に貼着されている。
そして、粘着テープ36の端部には、厚紙38が貼着されており、粘着テープ36の端部において、粘着テープ36がカートリッジの外郭面に貼着されるのを阻止するように構成されている。
この構成によって、ユーザが当該カートリッジを使用する際において、前記厚紙38を把持してカートリッジの外郭面から粘着テープ36と共にカバー部材37を容易に剥離することができ、インクカートリッジの交換操作を容易にすることができる。
一方、図13は図8に示した第1の実施の形態にかかるインクカートリッジを利用する場合において組み合わされる記録装置の構成を示しており、記録装置においてクリーニング動作が実行される状態を示したものである。図8に示したインクカートリッジを利用する場合においては、記録装置側のキャリッジ上に、カートリッジに配置されたシール部材7jを駆動するためのアクチュエータ32が具備される。この図13に示すアクチュエータ32は、図9に示した例と同様に電磁駆動機構33により、電磁弁を構成している。なお、キャリッジ上に搭載されるアクチュエータ32は、図10に示したように偏心カムを備えたカム機構35を採用することもできる。
ここで、インクカートリッジが記録装置のキャリッジ上に装着された場合、インクカートリッジに形成された前記インク流路7fの流路方向が、キャリッジの移動方向とほぼ直交する関係になされる。
このような関係とすることで、カートリッジ側のインク流路7fに存在するインクが、キャリッジの往復移動に伴う慣性を受ける度合いを低減できるようになされている。
換言すれば、カートリッジに形成された前記インク流路7fの流路方向が、キャリッジの移動方向と同一方向の関係になされた場合には、キャリッジの移動に伴う流路7f内におけるインクの慣性により、記録ヘッドからのインクの吐出安定性を損なうことになる。
図13における符号9は、前記したキャッピング手段を示している。このキャッピング手段9は、上面が開放されてほぼ方形状に形成されたキャップケース9aと、このキャップケース9a内に収納され、ゴムなどの弾性素材により形成されたキャップ部材9bとが具備され、キャップ部材9bはその上側縁がキャップケース9aよりも若干突出した状態に形成されて、記録ヘッドのノズルプレート20bのシール面を構成している。
そして、キャップ部材9bの内底部には多孔質材料により形成されたインク吸収材9cが収納されている。
前記キャップケース9aはスライダ9d上に保持されており、このスライダ9dは、キャリッジ1がホームポジション側へ移動することに伴って、上昇できるように構成されている。これにより、図13および図14に示されたように記録ヘッドのノズル形成面を構成するノズルプレート20bは、キャップ部材9bによって封止されるようになされる。
また、キャリッジがホームポジションから印字領域側に移動した場合には、図示せぬバネ部材の作用によって、前記した動作とは逆にキャッピング手段9は記録ヘッドの封止を解いて降下するように作用する。
また、前記キャップケース9aを貫通するようにして、キャッピング手段の内底部には吸引口が形成されており、この吸引口には負圧発生手段として作用するチューブポンプ10を構成するチューブ10aの一端が接続されている。
ここで、前記したアクチュエータ32を構成する電磁駆動機構33に通電した場合、作動子34が押し上げられてカートリッジ側のシール部材7jは、弁座部材に形成された開口7hを閉塞する。
この状態で前記チューブポンプ10が駆動されると、キャッピング手段9の内部空間に負圧が蓄積される。この負圧はインクカートリッジ側の前記シール部材7jまで作用し、この経路が負圧状態になされる。そして、負圧が十分に蓄積されるとインク供給針21内にとどまる気泡A1は図13に示すように負圧により膨張する。
この状態で、アクチュエータ32を構成する電磁駆動機構33への通電が遮断されると、図14に示されたようにカートリッジ側のシール部材7jは、弁座部材に形成された開口7hを解放し、これによって瞬間的にインクの早い流れが発生する。したがって、インク供給針21内の気泡A1は、図14に示すようにフィルタ部材22を通過し、この際に微小な泡となってキャッピング手段9側に排出される。
次に図15および図16は、クリーニング動作の実行により、記録ヘッド20に形成されたインク流路におけるよどみ部分にとどまる気泡をも排出させる様子を示したものであり、図15および図16において図13および図14と同一部分は同一符号で示している。
記録ヘッド20におけるヘッドケースには、図7に基づいて説明したように、各色のインクをインク連絡流路20eを介して、圧電振動子によるアクチュエータ20dが配置された圧力室に導入するように構成されている。したがって、これらの構成要素を配置する関係でインクの流れは相当に複雑となる。そして、各所によどみ部分が発生することは免れず、このよどみ部分には、図15に模式的に示されたように気泡A2がとどまることになる。
このような、よどみ部分にとどまる気泡A2においても、図15に示すように負圧を加えた場合に、気泡A2を膨張させてよどみ部分から動きやすい状態を与えることができる。そして、図16に示したようにカートリッジ側のシール部材7jの閉弁状態を開放すると、インクの瞬間的な早い流れによって、前記気泡A2をキャッピング手段9側に排出させることができる。
図17は、前記したクリーニング制御を実行するための制御回路の一例を示したブロック図である。なお、図17においては、すでに説明した各部に相当する部分を同一符号で示している。図17に示すように負圧発生手段としての前記チューブポンプ10を構成するチューブ10aの一端は、前記したようにキャッピング手段9に接続されており、その他端は廃液タンク12に接続されている。これにより前記したクリーニング動作によって、キャッピング手段9の内部空間に排出されたインク廃液は、チューブポンプ10を介して廃液タンク12に廃棄することができる。
図17に示す符号40はホストコンピュータであり、このホストコンピュータ40にはプリンタドライバ41が搭載されている。そして、プリンタドライバ41のユーティリティ上で、入力装置42およびディスプレイ43を利用して、周知の用紙サイズ、モノクロ/カラー印刷の選択、記録モードの選択、フォント等のデータおよび印刷指令等が入力されるように構成されている。
さらに、この実施の形態においては、入力装置42およびディスプレイ43を利用して、後述するようにインクカートリッジに配置されたシール部材7jを駆動するための各アクチュエータ32の動作タイミングが指定できるようにも構成されている。
前記入力装置42における印刷指令の入力により、プリンタドライバ41からは、記録装置に搭載された印刷制御手段44に対して印刷データが送出されるように構成されている。この印刷制御手段44は、前記したホストコンピュータ40から転送される印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、このビットマップデータに基づいてヘッド駆動手段45により駆動信号を発生させて、記録ヘッド20からインクを吐出させる機能を備えている。
前記ヘッド駆動手段45は、印刷データに基づく駆動信号の他に、フラッシング制御手段46からのフラッシング指令信号を受けてフラッシング操作のための駆動信号を記録ヘッド20に出力するようにも構成されている。
符号47はクリーニング制御手段であり、このクリーニング制御手段47からの指令によりポンプ駆動手段48が動作して、吸引ポンプ10を駆動制御するように構成されている。また、クリーニング制御手段47には、印刷制御手段44、クリーニングシーケンス制御手段49、およびクリーニング指令検知手段50よりクリーニング指令信号が供給されるように構成されている。
なお、クリーニング指令検知手段50には操作スイッチ51が接続されており、このスイッチ51をユーザが例えばプッシュ操作することにより、前記検知手段50を介してクリーニング制御手段47が起動し、マニュアルによるクリーニング操作が実行されるように構成されている。
また、前記したホストコンピュータ40における入力装置42の操作によっても、印刷制御手段44を介してクリーニング制御手段47が起動し、マニュアルによるクリーニング操作が実行されるように構成されている。
一方、前記クリーニングシーケンス制御手段49は、ホストコンピュータ40およびクリーニング指令検知手段50より指令信号を受けて、アクチュエータ駆動手段52およびキャリッジ駆動手段53に対して制御信号を送出することができるように構成されている。
そして、アクチュエータ駆動手段52は、インクカートリッジ7におけるシール部材7jを駆動する前記したアクチュエータ32に制御信号を送出し、インクカートリッジ7のインク流路7fを閉塞または流路抵抗を増大させる、もしくはその逆の動作がなされるように機能する。
また、キャリッジ駆動手段53はクリーニングシーケンス制御手段49からの指令を受けてキャリッジモータ2を駆動し、記録ヘッド20をキャッピング手段9の直上に移動させて、キャッピング手段9によって記録ヘッドのノズル形成面が封止されるように制御する。
図18は、以上説明した記録装置の構成によってなされる記録ヘッドのクリーニング動作を示したフローチャートであり、以下、図17に示すブロック図と共にクリーニング動作のシーケンスを説明する。例えば、記録装置に配置された操作スイッチ51の操作により、またはホストコンピュータ40における入力装置42の操作によってクリーニング動作の指令を受けた場合には、これをクリーニングシーケンス制御手段49が受けて、クリーニングシーケンス制御手段49より各制御信号が出力されることによりクリーニング動作がスタートする。
そして、クリーニングシーケンス制御手段49よりキャリッジ駆動手段53に指令信号が送出され、これによりキャリッジモータ2が駆動され、キャリッジ1をその移動経路に進入したワイピング部材上を移動させることにより、ステップS11に示すように記録ヘッド20のノズル形成面は、ワイピング部材11によりワイピングされる。
続いて、ステップS12に示すようにキャリッジ1は、ホームポジション側に移動し、これに伴ってステップS13に示すように、記録ヘッド20のノズル形成面がキャッピング手段9によってキャッピングされる。
これと同時に、ステップS14に示すように流路制御手段が閉弁される。すなわち、クリーニングシーケンス制御手段49より、アクチュエータ駆動手段52に指令信号が送出され、これにより、前記したアクチュエータ32が駆動されてインクカートリッジ7における流路制御手段を構成するシール部材7jは、インク流路7fを閉塞させるように作用する。
続いて、ステップS15に示すように吸引ポンプ10の駆動が開始される。これは図17に示すシーケンス制御手段49よりクリーニング制御手段47に制御信号が送出され、クリーニング制御手段47よりポンプ駆動手段48に指令信号が送出されることによってなされる。これにより、吸引ポンプ10が駆動され、キャッピング手段10の内部空間に負圧が印加され、その負圧は序々に増大する。
この状態で、ステップS16に示すように吸引ポンプ10の駆動開始後の所定時間(1)の経過を待ち、キャッピング手段9に与えられる負圧が最大またはその近辺になった状態において、ステップS17に示すように流路制御手段、すなわちインクカートリッジ7におけるシール部材7jが開弁される。この場合、シーケンス制御手段49は前記した所定時間(1)の管理をなすと共に、アクチュエータ32に制御信号を送出することによって、インクカートリッジ7におけるシール部材7jの開弁動作を実行させる。
そして、シール部材7jの開弁後、ステップS18に示すように所定時間(2)の経過が待たれ、ステップS18において所定時間(2)が経過したと判定されるとステップS19に示すように吸引ポンプ10の駆動が停止される。
この場合、シーケンス制御手段49は前記した所定時間(2)の管理をなすと共に、クリーニング制御手段47に制御信号を送出することによって、吸引ポンプ10の駆動動作を停止させるように作用する。
前記ステップS15乃至ステップS19に示した制御シーケンスによってなされるキャッピング手段9に印加される負圧の変化状態が図19に示されている。すなわち、図19に示すように吸引ポンプ10の駆動が開始されると、キャッピング手段9の内部空間における負圧は図示のような軌跡をとって急激に上昇する。
そして、所定時間(1)が経過して負圧が最大またはその近辺となった状態において、カートリッジ7におけるシール部材7jが開弁される。これにより前記負圧は急激に開放されて大気圧に近づく。しかしながら吸引ポンプ10は継続して駆動されているので、負圧は大気圧までは降下せず、所定の負圧の状態に推移する。
そして、カートリッジ7におけるシール部材7jの開弁から所定時間(2)が経過した時に吸引ポンプの駆動が停止され、前記負圧は大気圧まで降下する。
図19に示した負圧特性で理解できるように、前記した所定時間(1)の経過時点においてシール部材7jが開弁されることにより、インクカートリッジから記録ヘッド7のノズル開口に至るインク流路に、インクの早い流れが発生する。このインクの早い流れによってインク流路内に滞留したり、張り付き状態でとどまる気泡を、膨張させたりインク流路から剥離させることができる。
そして、前記所定時間(2)の期間においても吸引ポンプ10の駆動が継続されインクの吸引が引き続いてなされるため、剥離された気泡をインクの流れにしたがって排出させることができる。
図18に戻り、ステップS20においては、キャッピング手段9による記録ヘッド20のキャッピングが解除される。そして、ステップS21に示すように吸引ポンプ10が一時的に駆動し停止される。これにより、キャッピング手段9内に排出されたインク廃液は、吸引ポンプ10を介して廃液タンク12に廃棄される。
これに続くステップS22においては、インクの吸引回数が所定回数実行されたか否かが判定され、所定回数に満たない場合には、前記したステップS13乃至ステップS21が繰り返し実行される。そして、ステップS22においてインクの吸引回数が所定回数実行されたと判定されると、ステップS23に示すようにワイピング動作が実行され、記録ヘッドのノズル形成面に付着しているインクがワイピング部材11によって払拭される。
そして、ステップS24に示すように、記録ヘッド20はキャッピング手段9によって封止され、印刷データの到来を待つ状態とされる。なお、前記したステップS22においては、インクの吸引回数が所定回数実行されたか否かを判定しているが、1回の吸引動作により十分に回復効果が得られるのであれば、このステップS22の判定ステップは不要である。
以上説明したクリーニング動作は、記録装置に配置された操作スイッチ51の操作により、またはホストコンピュータ40における入力装置42の操作によって実行されるマニュアルクリーニング動作について説明しているが、例えば記録装置に初めてインクを充填する初期充填動作において、前記したクリーニング動作が実行されるようにプログラミングされていることは効果的である。
このように、記録装置に初めてインクを充填する初期充填動作においては、前記したようにインク導入針内、および記録ヘッドのインク流路内に多くの気泡が残留し易い。
したがって、初めて記録ヘッドの流路内にインクを充填する場合には、これに用いられるインクの脱気度が高いことが望ましい。しかし、インクの脱気度を高めるには限界があると共に、初期充填後の流路内のインクは空気層と置き換えられながら充填されるため、脱気度が急激に低下する。
したがって、このような観点から初期充填動作時において気泡を確実に排出させることはきわめて重要であり、これにより安定した印字動作を保証することに寄与できる。
一方、ユーザによってなされるマニュアルクリーニングの指令が、所定の印字量の範囲内において再びなされた場合に、前記したクリーニング動作が実行されるようにプログラミングされていることも効果的である。
このように、所定の印字量の範囲内において再びマニュアルクリーニングの指令がなされるという場合は、ユーザが印字不良を認識して再度クリーニング動作を実行されるケースが多く、このような場合は、例えば記録ヘッドの流路内に比較的大きな気泡が流れ込み、インクの充填性に障害を与えている状態に陥っている可能性がある。
図20は、前記したようにマニュアルクリーニングの指令が、所定の印字量の範囲内において再びなされた場合に、前記したクリーニング動作が実行される制御シーケンスの一例を示している。
図20に示した動作シーケンスの特徴とするところは、前回のクリーニング動作の実行後の印字量に応じてステップS36において、どのモードのクリーニングを実行させるかを判断し管理するCL2カウンタ(KK)を備えており、3つのクリーニングモードのいずれかを選択するように制御される。
そして、CL2カウンタ(KK)の値を置き換えて、各クリーニングモードのパラメータをセットし、ステップS41において、それに応じたクリーニング動作が実行されるようになされる。
この図20に示した動作シーケンスは、記録装置に配置された操作スイッチ51の操作により、またはホストコンピュータ40における入力装置42の操作によって実行されるマニュアルによるクリーニング動作指令が発せられた時に起動される。
まず、ステップS31においては、例えば印刷制御手段44に格納されている印字履歴が参照され、記録装置の動作電源がオンされて以来、1パス以上の印字がなされたか否かが判定される。このステップにおいて、1パス以上の印字がなされていない(No)と判定されると、ステップS35に移行し、CL1モードのパラメータがセットされる。
このCL1モードは、クリーニングの種類を示すものであり、このCL1モードが最も吸引量が少ないモードである。また、後述するCL2モード、およびCL3モードになるにしたがって、吸引量が多くなされる。この場合、吸引量に変えて、吸引速度を変更するようにしてもよい。
このように吸引量を変更させるのは、例えば軽い印字障害の状態においても一律に大量のインクを消費させるのを避ける意味合いがあり、これにより無闇にインクを浪費するのが避けられる。
そして、ステップS41に移りクリーニング動作が実行される。すなわち、記録装置の動作電源がオンされた直後において、クリーニング動作の指示を受けた場合には、吸引量が最も少ないモードであるこのCL1モードのクリーニング動作が実行される。
前記ステップS31において、1パス以上の印字がなされている(Yes)と判定されると、ステップS32に移り、前回のクリーニング動作後から1パス以上の印字がなされたか否かが判定される。ここで、1パス以上の印字がなされていない(No)と判定されると、前記と同様にステップS35に進みCL1モードによるクリーニングが実行される。
また、ステップS32において前回のクリーニング動作後から1パス以上の印字がなされた(Yes)と判定された場合には、ステップS33において前回のクリーニング動作後からの印字量が5ページ以下であるか否かが判定される。
ここで、前回のクリーニング動作実行後における印字ページ数が5ページ以下ではない(No)と判定されると、ステップS34に移行し、CL2カウンタのKKを“1”にセットし、前記したステップS35に移行する。ここで、前記CL2カウンタのKKは、クリーニング選択動作においてクリーニングモードの選択順を次のとおりに実行させるカウンタである。
すなわち、先ずKK=1に定義し直した後、CL1モードをセットし、第1クリーニングモード(CL1)を実行するようにしたとする。続いてクリーニング動作に入る場合にはKK=1と定義されているので、KK=2に定義し直した後、CL2モードをセットし、第2クリーニングモード(CL2)を実行するようになされる。
同様に次にクリーニング動作に入る場合にはKK=2と定義されているので、KK=0に定義し直した後、CL3モードをセットし、第3クリーニングモード(CL3)を実行するようになされる。このように、CL1→CL2→CL3の繰り返しがなされ、CL1→CL2→CL3となるにしたがって吸引量が増大され、より強力なクリーニング動作を実行することになる。
換言すればクリーニング動作が続けて実行されるということは、印字状態がなかなか正常に復帰しないということとなり、より強力なクリーニング動作にシフトさせる必要が生じ、前記したような制御がなされるように設定されている。
前記したように、ステップS33において前回のクリーニング動作実行後における印字ページ数が5ページ以下ではない(No)と判定される場合において、再びユーザによりクリーニング指令が入力される場合は、先のクリーニング動作で、印字状態の回復が成し遂げたものの、新たな不具合の発生によりクリーニング動作が必要になったものと判断してCL2のカウンタKKを“1”にセットし、CL1に設定するようになされている。
一方、前記ステップS33において、前回のクリーニング動作実行後における印字ページ数が5ページ以下である(Yes)と判定された場合においては、ステップS36においてCL2カウンタの値が検証される。ここで、KK=3である場合には、前記したステップS34に移行し、KK=1である場合には、ステップS37に移行し、CL2カウンタのKKを“2”にセットし、次に続くステップS38において、CL2モードのパラメータをセットさせる。
したがって、ステップS38に続くステップS41におけるクリーニング動作は、ステップS38においてセットされた第2クリーニングモード(CL2)が実行される。そして、前記ステップS36においてKK=2であると判定されると、ステップS39に移行し、CL2カウンタのKKを“3”にセットし、次に続くステップS40において、CL3モードのパラメータをセットさせる。
したがって、ステップS40に続くステップS41におけるクリーニング動作は、ステップS40においてセットされた第3クリーニングモード(CL3)が実行される。
図20に示した動作シーケンスによると、マニュアルによるクリーニング動作の指令があった場合、前回のクリーニング動作後の印字量に応じてクリーニング動作が選択されるようになされる。これによって、状態に応じた最適なクリーニング動作がなされ、またインクの浪費を抑えることができる。
以上説明したクリーニング動作は、ブラックインクカートリッジにおける流路制御手段としてのシール部材、およびカラーインクカートリッジのそれぞれ3つのシール部材が同時に閉弁および開弁される場合を前提にしている。
すなわち、キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止し、インクカートリッジに備えられたシール部材を閉塞させた状態で吸引ポンプによる負圧をキャッピング手段内に加えて負圧を蓄積させる負圧蓄積ステップと、キャッピング手段内の負圧が蓄積された状態で、インクカートリッジに備えられたシール部材を開放させる負圧解除ステップとが、それぞれ同時になされる前提で説明している。
ところで、色材濃度が高いインク、例えばブラックインクは他の色のインクに比較してクリーニング動作による回復性が低いという問題を有している。したがって、前記したような制御がなされた場合、カラーインクが扱われるノズルが先行して回復し、カラーインクが益々キャッピング手段内に排出されて、ブラックインクを扱うノズルに対する負圧が作用しにくくなるという現象が発生する。
そこで、このような問題に対処するために、各アクチュエータ32によって流路制御手段としてのそれぞれのシール部材を、独立して制御する形態を採用する
ことが好ましい。
この場合、負圧蓄積ステップと前記負圧解除ステップとが、特定の流路におけるシール部材のみを駆動させるように制御することができ、また、負圧蓄積ステップは同時に、負圧解除ステップのみが特定の流路においてなされるように制御することもできる。これにより、特定のインクが貯留されたカートリッジのみに負圧を作用させてクリーニング動作を実行することができる。
例えば、前記したブラックインクカートリッジおよびカラーインクカートリッジのそれぞれのインク流路に備えられた各シール部材を、同時に閉弁制御して負圧を加えると共に、ブラックインクカートリッジにおけるシール部材を開弁制御することで、色材濃度が高いブラックインクのノズルに対してのみ、負圧によりインクを排出させることができる。これにより、ブラックインクを扱うノズルに対して集中的にクリーニング動作を実行させることができる。
前記した特定のインクを扱うノズルに対するクリーニング動作の実行は、記録装置に搭載された制御プログラムによって実行されるようになさていることが好ましい。さらにこの場合、記録装置における印字終了後の放置時間に応じて、特定のインクを扱うノズルに対するクリーニング動作が実行されるようにプログラムされていることが望ましい。
そして、前記した特定のインクに対応するクリーニング動作は、好ましくは、ホストコンピュータに搭載されたプリンタドライバのユーティリティ上において、または記録装置本体に配置された図示せぬ操作ボタン等で指定することができるように構成し、この指定情報に基づいて特定のインクに対応してクリーニング動作が実行されるように構成されていることが望ましい。
以上の説明は、インクカートリッジのインク流路にそれぞれ配置された流路制御手段を開閉弁制御することで、効率的なクリーニング動作を実行させる点に主体をおいて説明したが、前記流路制御手段を個別に開閉弁制御することができる構成を利用して、次に示すような制御も実現させることができる。
例えば、記録装置には、これに搭載されたインクカートリッジにおけるインクエンド状態を検出するインクエンド検出手段が具備されており、少なくとも、負圧発生手段による負圧をキャッピング手段に加える状態においては、インクエンド状態を検出したインク流路7fに備えられた前記流路制御手段、すなわち、シール部材7jを閉塞状態に保持するように制御すると、クリーニング動作によるインクの排出によって、インク室内のインクを完全に空状態にするのを防止することができる。
すなわち、実施の形態に示したように、各インク室7aに多孔質部材(フォーム)7bが収納され、この多孔質部材7bにインクが含浸された状態で貯留されている構成のカートリッジにおいては、インクが完全に空状態となった場合には、大気連通孔から大気が流入する結果、負圧を加えることは不可能となる。
また、流路内が空状態となることで、その後の気泡の排出性が損なわれることになる。したがって、インクエンド状態を検出した場合においては、それに対応するシール部材7jを個別に閉塞状態に保持するように制御することで、前記したような問題の発生を防止することができる。
前記したインクエンド検出手段としては、実施の形態のように多孔質部材7bにインクが含浸された状態で貯留されているカートリッジ(フォームカートリッジ)においては、ソフトインクエンド検出手段を利用することができる。
このソフトインクエンド検出手段は、印刷動作およびフラッシング動作において、記録ヘッドから吐出されたインク滴を計数することによるインクの使用量、また前記したクリーニング動作によって消費したインク量も演算して、これらを合算することで、インクエンド状態を認識するようになされる。
また、実施の形態として示していないが、可撓性素材により形成されたインクパック内にインクを封入して貯留する構成のインクカートリッジにおいては、前記インクパックの物理的な変化を機械的に検出することで、インクエンド状態と判定するハードインクエンド検出手段を用いることができる。このハードインクエンド検出手段によりインクエンドを検出した際に、前記した制御を実行させることで、インクパック形式のカートリッジを利用した記録装置においても、同様の作用効果を得ることができる。
さらに、実施の形態として示すフォームカートリッジにおいて、複数色を一体に形成した例えばカラーインクカートリッジにおいては、そのうちの一色でもインクエンド状態となると、他のインクは使用せずに当該カートリッジを交換させる運用がなされていたが、前記したように個別に流路制御手段、すなわち、シール部材7jを備えた構成とした場合、インクエンド状態に達していない他のインクを有効に利用するような運用も実行することができる。
すなわち、印刷動作を実行するに際しては、インクエンド状態を検出したインク流路に備えられた前記流路制御手段を閉塞状態に保持し、インクエンド状態以外のインクを用いることができる。
この場合、イエローインクのみにおいては、識別が困難であるため、インクエンド状態以外のインクのうち、イエローインクを除いた他のインクのうち、最もインク残量の多いインクによって印刷動作を実行するように構成することが好ましい。
さらに、前記したようにインクエンド状態以外のインクを用いて印刷動作を実行する場合においては、ホストコンピュータに搭載されたプリンタドライバのユーティリティ上において、インクエンド以外の他のインクで印刷することを報知するように構成することが望ましい。
また、インクエンド状態以外のインクを用いて印刷動作を実行するに際しては、ホストコンピュータに搭載されたプリンタドライバのユーティリティ上において、インクエンド以外の他のインクで印刷を実行するか否かの判断を要求する報知を行なうように構成した記録装置も好適に利用することができる。
例えば、ブラックインクカートリッジがインクエンド状態となった場合には、シアン、マゼンタ、およびイエローの各インクを用いてコンポジットブラックで印刷を行なうことも可能であり、ユーザは前記した判断要求を認識して、コンポジットブラックによる印刷を指令することも可能となる。
以上の説明で明らかなように、この発明にかかる第2態様のインクカートリッジによると、インク貯留室からインク供給口に向かって形成されたインク流路に、アクチュエータによる駆動力を受けてインク流路を閉塞または流路抵抗を増大させることができる流路制御手段を配置したので、記録装置側またはカートリッジ側に配置されたアクチュエータによって、インクカートリッジに配置された流路制御手段を開閉または流路抵抗を変更することができる。
したがって、キャッピング手段の内部空間に負圧を蓄積した状態で流路制御手段を開放することで、例えばインク供給針内のフィルタ部材上に滞留する気泡を効果的に排出させることができる。
また、この発明にかかるクリーニング制御方法を採用したインクジェット式記録装置によると、前記した第2態様のインクカートリッジを利用することで、効果的なクリーニング動作を実行させることができると共に、各色のインクに対応して個別に各流路制御手段が制御できるので、特定のインクに対応して効率的にクリーニング動作を実行させることができる。
次に、この発明にかかる第3態様のインクカートリッジおよびこれを利用する記録装置について説明する。図21はキャリッジに配置されたカートリッジホルダと、これに装填されたこの発明にかかる第3態様のインクカートリッジの構成を一部を破断した状態で示したものである。
まず、カートリッジホルダ61は、上部が開放されてインクカートリッジを着脱することができる開口を備えたホルダケース62と、このホルダケースの一端部にヒンジ機構62aを介して前記開口を開閉することができる蓋体63が具備されている。
この蓋体63の自由端側端部はU字状に形成されて、ホルダケース側に形成された係合部62bに係止されるフック部63aが形成され、両者の係合により蓋体63はカートリッジホルダを閉じた状態を維持できるように構成されている。そして、前記蓋体62の裏面には、ホルダ内に装填された後述するインクカートリッジを下底部の方向に付勢するリーフ状のバネ部材64が取り付けられている。またカートリッジホルダ61を構成する前記ホルダケース62の下側面には、記録ヘッド20が取り付けられている。
そして、前記蓋体62の裏面には、ホルダ内に装填された後述するインクカートリッジを下底部の方向に付勢するリーフ上のバネ部材64が取り付けられている。また、カートリッジホルダ61を構成する前記ホルダケース62の下側面には、記録ヘッド20が取り付けられている。
そして、装填されたインクカートリッジからこの記録ヘッド20に対してインクを供給することができるインク導入部としての中空状のインク供給針21がホルダケースの下底部から上方に向かって配置されている。
一方、前記カートリッジホルダ61内に装着されたインクカートリッジは、例えば前記したブラックインクカートリッジ7を示している。このインクカートリッジ7には前記した第2態様のインクカートリッジと同様に、インク貯留室7aが形成され、その内部に多孔質部材7bが収納されて、この多孔質部材7bにインクを含浸した状態で保持している。
なお、前記したカラーインクカートリッジ8においては、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクを貯留できる独立したインク貯留室が並列状態に備えられている点で、ブラックインクカートリッジ7と相違しているが、後述する各構成はほぼ同一になされている。
前記カートリッジ7の下底部には、インク供給口65が形成されている。そして、このインク供給口65に接合される、インク供給針21によって、カートリッジより引き出されたインクはフィルタ部材22を介して記録ヘッド20に供給されるように構成されている。また、インク供給口65内には、後で詳細に説明するようにインク供給針21による相対的な押圧力を受けて開弁され、インク貯留室からのインクの供給を可能にする流路制御手段67が収納されている。
前記インクカートリッジ7は、カートリッジホルダ62内に収納された図21に示す状態において、前記したバネ部材64の作用によって下底部の方向に付勢されており、一方、ホルダ62の下底部にはアクチェータとしての偏心カム機構32が配置されている。したがって、前記偏心カム機構32の回転駆動によって、カートリッジ7はホルダ62内を上下方向に移動することができるように構成されている。
図22ないし図24は、前記したカートリッジホルダの下底部の構成と、これに装填されたインクカートリッジの下底部の構成を拡大して示したものである。図22はインクカートリッジがカートリッジホルダに対して装着される直前の状態を示しており、図23はカートリッジがカートリッジホルダに対して装着され、記録ヘッド側にインクが供給できる状態を示しており、さらに図24はカートリッジがカートリッジホルダに装着された状態で、前記偏心カム機構32の回転駆動によって、インク貯留室からのインクの供給が停止された(流路制御手段67が閉弁された)状態を示している。
なお、図22ないし図24においては、すでに説明した各部に相当する部分は同一符号で示している。
図22ないし図24に示されたように、インクカートリッジ7におけるインク供給口65は円筒状の容積が形成されており、その出口開口部分には円筒状に形成された第1パッキング部材71が嵌め込まれている。また、インク供給口65の最奥部にも円筒状に形成された第2パッキング部材72が嵌め込まれている。
前記した流路制御手段67は、円盤状部材67aと、この円盤状部材の移動をガイドする軸部材67bとにより構成されており、この軸部材67bを受ける軸受体73が、前記第2パッキング部材72の内部空間に突出するように形成されている。これにより、流路制御手段67を構成する前記円盤状部材67aが、前記軸部材67bの軸方向に移動できるように配置されている。
また、前記円盤状部材67aとインク供給口65における最奥部との間には、前記軸部材67bを捲装するようにしてコイル状のバネ部材74が配置されており、このバネ部材74の付勢力により、前記円盤状部材67aはインク供給口65の出口方向に付勢されている。
この構成によって図22に示すように、カートリッジがカートリッジホルダ61に装着される以前においては、円盤状部材67aの一面が前記第1パッキング部材71に接合し、閉弁状態を保持することができるように構成されている。
前記した作用によって、インクカートリッジは、記録装置への非装填状態においては、インク供給口65に配置された前記円盤状部材67aによって、インク供給口は閉弁状態とされる。したがって、例えばカートリッジの使用途中で記録装置から取り外した場合であっても、カートリッジからインクが漏出したり、またはインクカートリッジ内に空気が侵入するという問題を回避することができる。それ故、当該カートリッジを再び記録装置に装填して利用することが可能となる。
一方、インクカートリッジがカートリッジホルダ61内に装着された場合には、図23に示されたようにインクカートリッジに形成された前記インク供給口65には、カートリッジホルダに配置された前記インク供給針21が相対的に進入する。
このためにインク供給口65に配置された円盤状部材67aはインク供給針21の先端部によって押し上げられ、前記円盤状部材67aと第1パッキング部材71との接合が解かれて開弁状態とされる。
これと同時に、インク供給針21は円筒状に形成された第1パッキング部材71の内周面に接合して、カートリッジのインク供給口65との間で液密状態が保持される。
図23に示した状態は、アクチェータとしての偏心カム機構32は、軸芯32aに対して遠い位置にあるカム面が、上部に向かった状態とされており、したがってインクカートリッジは、このカム面に当接されて図23に示した状態に保持される。
この状態においては、円盤状部材67aが第1パッキング部材71と第2パッキング部材72との中間点に位置している。したがって、当該カートリッジのインク貯留室より、前記軸受体73に形成されたインク流通穴73aを介してインク供給針21側にインクが導出され、インク供給針21を介して記録ヘッド20側にインクが供給される。したがって、この状態において記録装置の印字動作を実行することができる。
図23に示した状態で、アクチェータとしての前記偏心カム機構32がほぼ90度回転駆動されると、図24に示されたようにインクカートリッジ7は、カートリッジホルダ61の蓋体63に配置された前記バネ部材64の付勢力により、さらにカートリッジホルダの下底部の方向に移動する。
このために、第1パッキング部材71の内周面に接合している前記インク供給針21は、さらにインク供給口65の奥側に相対的に進入する。したがって、円盤状部材67aはインク供給針21の先端部によってさらに押し上げられ、前記円盤状部材67aの裏面が第2パッキング部材72に接合し閉弁状態とする。これにより、インク貯留室からのインクの供給は停止される。
したがって、以上の構成によると、カートリッジホルダの下底部に配置された前記偏心カム機構32を、90度の範囲で往復回転駆動させることで、図23に示す開弁状態および図24に示す閉弁状態に制御することができる。
以下の説明は、前記した作用によってもたらされる開閉弁機能を利用して、効果的にクリーニング動作を実行するようにした形態を示している。
すなわち、クリーニング動作は、図24に示したように円盤状部材67aの裏面が第2パッキング部材72に接合して閉弁状態とされた状態において実行される。そして、図1に示すキャリッジ1はホームポジションに移動され、これにより記録ヘッドのノズル形成面は前記キャッピング手段9によって封止される。
この状態で前記吸引ポンプ10が駆動されると、キャッピング手段9の内部空間に負圧が蓄積される。このように、負圧が十分に蓄積されるとインク供給針21内にとどまる気泡は負圧により膨張する。
この状態で、前記偏心カム機構32を90度回転駆動させると、図23に示されたように開弁状態となり、これによって瞬間的にインクの早い流れが発生する。したがって、インク供給針21内の気泡は、フィルタ部材22側に一気に引き寄せられ、フィルタ部材22を通過してキャッピング手段9側に排出される。
なお、この作用によって、例えば記録ヘッド20におけるヘッドケースに形成されたインク流路におけるよどみ部分にとどまる気泡をも効果的に排出させることができる。
前記した負圧の蓄積によるクリーニング動作の実行は、前記した図17による制御回路によって、同様に実現させることができる。すなわち、図17に示したアクチェータ駆動手段52は、前記したアクチェータとしての偏心カム機構32を回転駆動させて、カートリッジ内の流路制御手段を構成する前記円盤状部材67aを相対移動させるようになされ、これにより、開弁または閉弁状態が設定できるように作用する。
そして、この図17による制御回路によってなされる記録ヘッドのクリーニング動作についても、図18に示した動作シーケンスにしたがって実行される。
例えば、記録装置に配置された操作スイッチ51の操作により、またはホストコンピュータ40における入力装置42の操作によるクリーニング動作の指令を受けた場合には、これをクリーニングシーケンス制御手段49が受けて、クリーニングシーケンス制御手段49より各制御信号が出力されることによりクリーニング動作がスタートする。
そして、クリーニングシーケンス制御手段49よりキャリッジ駆動手段53に指令信号が送出されることによりキャリッジモータ2が駆動され、キャリッジ1はその移動経路に進入したワイピング部材上を通過させることにより、ステップS11に示すように記録ヘッド20のノズル形成面は、ワイピング部材11によりワイピングされる。
続いて、ステップS12に示すようにキャリッジ1は、なおもホームポジション側に移動し、これに伴ってステップS13に示すように、記録ヘッド20のノズル形成面がキャッピング手段9によってキャッピングされる。
これと同時に、ステップS14に示すように流路制御手段が閉弁される。すなわち、クリーニングシーケンス制御手段49より、アクチェータ駆動手段52に指令信号が送出され、前記したアクチェータとしての偏心カム32が駆動される。その結果、インクカートリッジ7における流路制御手段を構成する円盤状部材67aは、第2パッキング部材72を封止し閉弁状態とする。
続いて、ステップS15に示すように吸引ポンプ10の駆動が開始される。これは図17に示すシーケンス制御手段49よりクリーニング制御手段47に制御信号が送出され、クリーニング制御手段47よりポンプ駆動手段48に指令信号が送出されることによってなされる。これにより、吸引ポンプ10が駆動され、キャッピング手段9の内部空間に負圧が印加され、その負圧は蓄積されて増大する。
この状態で、ステップS16に示すように吸引ポンプ10の駆動開始後の所定時間(1)の経過を待ち、キャッピング手段9に与えられる負圧が最大またはその近辺に蓄積された状態において、ステップS17に示すように流路制御手段、すなわちインクカートリッジ7における円盤状部材67aが開弁される。
この場合、シーケンス制御手段49は前記した所定時間(1)の管理をなすと共に、アクチェータ32に制御信号を送出することによって、インクカートリッジ7における円盤状部材67aの開弁動作を実行させる。
そして、円盤状部材67aの開弁後、ステップS18に示すように所定時間(2)の経過が待たれ、ステップS18において所定時間(2)が経過したと判定されるとステップS19に示すように吸引ポンプ10の駆動が停止される。この場合、シーケンス制御手段49は前記した所定時間(2)の管理をなすと共に、クリーニング制御手段47に制御信号を送出することによって、吸引ポンプ10の駆動動作を停止させるように作用する。
前記ステップS15乃至ステップS19に示した制御シーケンスによってなされるキャッピング手段9に印加される負圧の変化状態も、前記した図19と同様に表すことができる。すなわち、図19に示すように吸引ポンプ10の駆動が開始されると、キャッピング手段9の内部空間における負圧は比較的急峻に上昇する。そして所定時間(1)が経過して負圧が最大またはその近辺となった状態において、カートリッジ7における円盤状部材67aが開弁される。
これにより前記負圧は急激に開放されて大気圧に近ずく。しかしながら吸引ポンプ10は継続して駆動されているので、負圧は大気圧までは上昇せず、所定の負圧の状態に推移する。そして、カートリッジ7における円盤状部材67aの開弁から所定時間(2)が経過した時に吸引ポンプの駆動が停止され、前記負圧は大気圧まで上昇する。
図19に示した負圧特性で理解できるように、前記した所定時間(1)の経過時点において円盤状部材67aが開弁されることにより、インクカートリッジから記録ヘッド7のノズル開口に至るインク流路に、インクの早い流れが発生する。このインクの早い流れによってインク流路内に滞留している気泡を効果的に動かすことができる。
そして、前記所定時間(2)の期間においても吸引ポンプ10の駆動が継続されインクの吸引が引き続いてなされるため、前記気泡をインクの流れにしたがって排出させることができる。
図18に戻り、ステップS20においては、キャッピング手段9による記録ヘッド20のキャッピングが解除される。そして、ステップS21に示すように吸引ポンプ10が一時的に駆動し停止される。これにより、キャッピング手段9内に排出されたインク廃液は、吸引ポンプ10を介して廃液タンク12に廃棄される。
これに続くステップS22においては、インクの吸引回数が所定回数実行されたか否かが判定され、所定回数に満たない場合には、前記したステップS13乃至ステップS21が繰り返し実行される。そして、ステップS22においてインクの吸引回数が所定回数実行されたと判定されると、ステップS23に示すようにワイピング動作が実行され、記録ヘッドのノズル形成面に付着しているインクがワイピング部材11によって払拭される。そして、ステップS24に示すように、記録ヘッド20はキャッピング手段9によって封止され、印刷データの到来を待つ状態とされる。
以上説明した第3態様のカートリッジを利用したクリーニング動作は、記録装置に配置された操作スイッチ51の操作により、またはホストコンピュータ40における入力装置42の操作によって実行されるマニュアルクリーニング動作について説明しているが、例えば記録装置に初めてインクを充填する初期充填動作において、前記したクリーニング動作が実行されるようにプログラミングされていることは効果的である。
このように、記録装置に初めてインクを充填する初期充填動作においては、インク供給針内、および記録ヘッドのインク流路内に多くの気泡が残留し易い。したがって、初めて記録ヘッドの流路内にインクを充填するには、インクの脱気度が高いことが望ましい。しかしながら、インクの脱気度をある程度以上に高めるには限界があると共に、初期充填後の流路内のインクは空気層と置き換えられながら充填されるため、脱気度が急激に低下する。
このような観点から初期充填動作時において気泡を確実に排出させることはきわめて重要であり、これにより安定した印字動作を保証することに寄与できる。
一方、第2態様のカートリッジを利用した場合と同様に、ユーザによってなされるマニュアルクリーニングの指令が、所定の印字量の範囲内において再びなされた場合に、前記したクリーニング動作が実行されるようにプログラミングされていることも効果的である。
このように、所定の印字量の範囲内において再びマニュアルクリーニングの指令がなされるという場合は、ユーザが印字不良を認識して再度クリーニング動作を実行されるケースが多く、このような場合は、例えば記録ヘッドの流路内に比較的大きな気泡が流れ込み、インクの充填性に障害を与えている状態に陥っている可能性がある。
そこで、前記したようにマニュアルクリーニングの指令が、所定の印字量の範囲内において再びなされた場合に、前記したクリーニング動作が実行される制御シーケンスとして図20に示した場合と同様の制御ルーチンを実行させるのも効果的である。なお、図20に示した制御ルーチンは、第2態様のインクカートリッジを利用した場合の採用例として既に説明しており、したがって重複する説明は割愛する。
以上説明したクリーニング動作は、例えばブラックインクカートリッジおよびカラーインクカートリッジにおけるそれぞれの流路制御手段としての円盤状部材67aが同時に閉弁および開弁される場合を前提にしている。
すなわち、キャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止し、各インクカートリッジに備えられた円盤状部材67aを閉弁させた状態で吸引ポンプによる負圧をキャッピング手段内に加えて負圧を蓄積させる負圧蓄積ステップと、キャッピング手段内の負圧が蓄積された状態で、各インクカートリッジに備えられた円盤状部材67aを開弁させる負圧解除ステップとが、それぞれ同時になされる前提で説明している。
ところで、色材濃度が高いインク、例えばブラックインクは他の色のインクに比較してクリーニング動作による回復性が低いという問題を有している。したがって、前記したような制御がなされた場合、カラーインクが扱われるノズルが先行して回復し、カラーインクが益々キャッピング手段内に排出されて、ブラックインクを扱うノズルに対する負圧が作用しにくくなるという現象が発生する。
そこで、このような問題に対処するために、各アクチェータ32によって流路制御手段としてのそれぞれの円盤状部材67aをインクカートリッジ毎に独立して制御する形態を採用することが好ましい。
この場合、負圧蓄積ステップと前記負圧解除ステップとが、特定のインクカートリッジにおける円盤状部材67aのみを駆動させるように制御することができ、また、負圧蓄積ステップは同時に、または負圧解除ステップのみが特定の流路においてなされるように制御することもできる。
これにより、特定のインクが貯留されたインクカートリッジのみに負圧を作用させてクリーニング動作を実行することができる。
例えば、前記したブラックインクカートリッジおよびカラーインクカートリッジのそれぞれのインク供給口に備えられた各円盤状部材67aを、同時に閉弁制御して負圧を加えると共に、ブラックインクカートリッジにおける円盤状部材67aを開弁制御することで、色材濃度が高いブラックインクのノズルに対してのみ、負圧によりインクを排出させることができ、これによりブラックインクを扱うノズルに対して集中的にクリーニング動作を実行させることができる。
前記した特定のインクを扱うノズルに対するクリーニング動作の実行は、記録装置に搭載された制御プログラムによって実行されるようになさていることが好ましい。さらにこの場合、記録装置における印字終了後の放置時間に応じて、特定のインクを扱うノズルに対するクリーニング動作が実行されるようにプログラムされていることが望ましい。
そして、前記した特定のインクに対応するクリーニング動作は、好ましくは、ホストコンピュータに搭載されたプリンタドライバ上のユーティリティにおいて、または記録装置本体に配置された図示せぬ操作ボタン等で指定することができるように構成し、この指定情報に基づいて特定のインクカートリッジに対応してクリーニング動作が実行されるように構成されていることが望ましい。
なお、前記した実施の形態においては、カートリッジホルダに配置されたアクチェータとしての偏心カム機構32を電気的に制御して回転駆動させることを前提にして説明しているが、この偏心カム機構32は、例えば手動で駆動させることもできる。また、前記アクチェータを電気的に制御する場合においては、実施の形態のように偏心カム機構を用いずに、例えば電磁プランジャーなどを用いることもできる。
以上の説明で明らかなように、この発明にかかる第3態様のインクカートリッジによると、記録装置に装填された状態において記録装置側のインク導入部の押圧力を受けて開弁され、記録装置側のインク導入部のさらなる押圧力を受けて閉弁される流路制御手段を備えたので、インク導入部の押圧力に応じて流路制御手段を開閉させることができる。したがって、キャッピング手段の内部空間に負圧を蓄積した状態で流路制御手段を開放することで、例えばインク供給針内にとどまる気泡を効果的に排出させることができる。
また、この発明にかかるクリーニング制御方法を採用したインクジェット式記録装置によると、前記した第3態様のインクカートリッジを利用することで、効果的なクリーニング動作を実行させることができると共に、各カートリッジ毎に個別に各流路制御手段が制御することができるので、特定のインクに対応して効率的にクリーニング動作を実行させることができる。