以下、図1~図18を用いて、本発明の実施形態を説明する。以下では、画像形成装置として、プリンター100を例に挙げて説明する。プリンター100は、インクを用いて印刷するインクジェット式の印刷装置である。なお。本実施形態の説明に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
(プリンター100の概要)
まず、図1を用いて、実施形態に係るプリンター100の概要を説明する。図1は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
プリンター100は制御部1を含む。制御部1はプリンター100の各部を制御する。制御部1は制御回路11と画像処理回路12を含む。例えば、制御回路11はCPUである。制御回路11は記憶部2に記憶される制御プログラムや制御データに基づき演算、処理を行う。記憶部2はROM、HDD、フラッシュROMのような不揮発性の記憶装置と、RAMのような揮発性の記憶装置を含む。画像処理回路12は画像データの画像処理を行う。画像処理回路12は、印刷に用いる画像データ(インク吐出用画像データ)を生成する。インク吐出用画像データは、ノズル51(画素)ごとのインクの吐出、不吐出を指示するデータである。
プリンター100は操作パネル3を含む。操作パネル3は、表示パネル31、タッチパネル32を含む。表示パネル31は設定画面や情報を表示する。表示パネル31は、ソフトキー、ボタン、タブのような操作用画像を表示する。タッチパネル32は表示パネル31へのタッチ操作を検知する。タッチパネル32の出力に基づき、制御部1は、操作された操作用画像を認識する。制御部1は、使用者が行った設定操作を認識する。
プリンター100は給紙部4a、用紙搬送部4b及び画像形成部4cを含む。給紙部4aは用紙束を収容する。印刷ジョブのとき、制御部1は給紙部4aに用紙を供給させる。制御部1は用紙搬送部4bに用紙を搬送させる。用紙搬送部4bは搬送モーター41と用紙を搬送する回転体を含む。制御部1は搬送モーター41を回転させる。搬送モーター41は回転体を回転させる。これにより、給紙部4aから供給された用紙は排出トレイ(不図示)に向けて搬送される。
用紙搬送部4bはベルト搬送ユニット42と吸着部43を含む。ベルト搬送ユニット42は、用紙を搬送する回転体のうちの1つである。ベルト搬送ユニット42は搬送ベルトを含む。搬送ベルトは周回する。用紙は搬送ベルト上で搬送される。吸着部43はベルト搬送ユニット42に設けられる。ベルト搬送ユニット42の上に画像形成部4cが設けられる。画像形成部4cは搬送ベルトにのせられた用紙の上側に設けられる。吸着部43はベルト搬送ユニット42に設けられる。吸着部43は搬送ベルトに用紙を吸着させる。吸着により、インクが吐出される用紙の位置がずれない。また、制御部1は、記録済(印刷済)の用紙の排出トレイへの排出を用紙搬送部4bに行わせる。
画像形成部4cは搬送用紙にインクを吐出して画像を記録する(印刷する)。図1に示すように、プリンター100は、複数のラインヘッド5(5Bk、5C、5M、5Y)を含む。各ラインヘッド5は固定される(動かない)。搬送ベルト及び搬送用紙の上側に各ラインヘッド5が配される。ラインヘッド5Bkはブラックのインクを吐出する。ラインヘッド5Cはシアンのインクを吐出する。ラインヘッド5Mはマゼンタのインクを吐出する。ラインヘッド5Yはイエローのインクを吐出する。
ラインヘッド5ごとに、インクを供給(補給)するインク補給部6(6Bk、6C、6M、6Y)が設けられる。インク補給部6Bkはブラックのラインヘッド5にブラックのインクを供給する。インク補給部6Cはシアンのラインヘッド5にシアンのインクを供給する。インク補給部6Mはマゼンタのラインヘッド5に、マゼンタのインクを供給する。インク補給部6Yはイエローのラインヘッド5に、イエローのインクを供給する。
プリンター100は通信部13を含む。通信部13は通信用のハードウェア(コネクタ、通信用回路)とソフトウェアを含む。通信部13はコンピューター200と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。制御部1は、コンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは印刷設定や印刷内容を含む。例えば、印刷用データはページ記述言語で記述されたデータを含む。制御部1(画像処理回路12)は、受信した印刷用データを解析する。受信した印刷用データに基づき、制御部1は、画像形成部4cでの画像形成に用いる画像データ(ラスターデータ)を生成する。画像処理回路12はラスターデータを処理して、インク吐出用画像データを生成する。
(インクの吐出制御)
次に、図2を用いて、実施形態に係るプリンター100でのインクの吐出制御の一例を説明する。図2は実施形態に係るプリンター100のインク吐出の制御の一例を示す図である。
1色のラインヘッド5は2以上の(複数の)ヘッド50を含む。言い換えると、ラインヘッド5は複数のヘッド50を組み合わせたものである。1色のラインヘッド5を形成するため、各ヘッド50は例えば、千鳥状に並べられる。各ヘッド50は複数のノズル51を含む。各ノズル51は主走査方向に並ぶ。用紙搬送方向と垂直な方向にノズル51が並ぶように各ヘッド50は固定される。
図2に示すように、各ヘッド50は複数のノズル51を含む。例えば、エッチングや金属板への穿孔により各ノズル51が形成される。各ノズル51は主走査方向の間隔が均等になるように形成される。主走査方向でのノズル51の間隔が1画素のピッチとなる。各ノズル51の開口は搬送用紙と向かい合う。1つのノズル51に対して1つの駆動素子52が設けられる。駆動素子52は圧電素子(ピエゾ素子)である。駆動素子52はノズル51からインクを吐出させる。このように、各ヘッド50は、ノズル51と駆動素子52を複数備える。
1又は複数のヘッド50に対し、1又は複数のドライバー回路53が設けられる。図2は、1つのヘッド50に1つのドライバー回路53を設ける例を示す。1つのドライバー回路53が複数のヘッド50を制御してもよい。ドライバー回路53は、インクを吐出させるノズル51に対応する駆動素子52に吐出信号S0を入力する。吐出信号S0は、例えば、パルスである。ドライバー回路53は、吐出信号S0を印加してノズル51からのインク吐出を制御する。駆動素子52は電圧印加により形状が変形する。その結果、形状変化の圧力がノズル51及びノズル51にインクを供給する流路に加わる。この圧力により、ノズル51からインクが吐出される。インクは搬送用紙に着弾する。これにより、画像が形成(記録)される。
制御部1(画像処理回路12)は、ラインヘッド5ごとに(色ごとに)、インク吐出用画像データを生成する。制御部1は生成したインク吐出用画像データを各ヘッド50に送信する。インク吐出用画像データは、画素ごと、ラインごとにインクの吐出、不吐出を指示するデータ(2値的なデータ)である。制御部1(画像処理回路12)は主走査方向の1ライン単位で画像データを各ドライバー回路53に送信する。
ドライバー回路53はインク吐出用画像データに基づき、インクを吐出させるノズル51に対応する駆動素子52に、吐出信号S0を入力する。一方、制御部1は、インクを吐出させない画素に対応する駆動素子52へのパルス(電圧)印加をドライバー回路53に行わせない。なお、図2では、便宜上、複数のラインヘッド5のうち、1つのラインヘッド5Bkのみ内部の一部を図示している。ラインヘッド5の構成は各色同様である。
制御部1は各ドライバー回路53にクロック信号を供給してもよい。クロック信号に基づき、インクの吐出周期(周波数)が定まる。印刷ジョブのとき、各ドライバー回路53が各駆動素子52に入力する吐出信号S0の周期(電圧印加周期)は一定である。用紙搬送速度は、1吐出周期の間に用紙が1ドット(1ライン)分移動する速度とされる。制御部1は所定の用紙搬送速度で用紙搬送部4bに用紙を搬送させる。画像データに基づき、ドライバー回路53は、インクを吐出すべき画素(ノズル51)の駆動素子52に電圧を印加する。この処理をページの最初から最後まで、用紙搬送方向(副走査方向)で繰り返すことで、1ページが印刷される。
(インク補給部6)
次に、図3~図6を用いて、実施形態に係るインク補給部6の一例を説明する。図3、4は実施形態に係るインク補給部6の一例を示す図である。図5は、実施形態に係る各開閉部の一例を示す図である。図6は、実施形態に係るシリンジ8の一例を示す図である。
インク補給部6は、ラインヘッド5ごとに設けられる。図3は、4色のラインヘッド5のうち、1色を選んだものである。各色でインク補給部6は、同様の構成である。各インク補給部6は同様に説明できる。そこで、以下では、色を示すBk、C、M、Yの符号を用いないで説明する。
インク補給部6は、インクコンテナー60、タンク7、シリンジ8、ダンパー9、補給管6a、第1導管61、第2導管62、第3導管63、第4導管64、液面センサー71、ポンプ65を含む。
インクコンテナー60は、ラインヘッド5に補給するインクを収容する。ブラックのインクコンテナー60は、ブラックのインクを収容する。シアンのインクコンテナー60は、シアンのインクを収容する。マゼンタのインクコンテナー60は、マゼンタのインクを収容する。イエローのインクコンテナー60は、イエローのインクを収容する。
インクコンテナー60はタンク7と補給管6aで接続される。補給管6aはインクコンテナー60からタンク7へのインク流路として機能する。補給管6aを介して、インクコンテナー60のインクは、タンク7に送られる。タンク7はインクを蓄える。タンク7のインクの最大収容量は、インクコンテナー60の最大収容量よりも少ない。
タンク7内には、液面センサー71が設けられる。液面センサー71は、タンク7内のインクの液面の位置(高さ)が規定位置H1未満であるか(規定位置H1以上であるか)を検知するためのセンサーである。規定位置H1は、タンク7で維持すべきインクの液面の高さである。例えば、タンク7の全高の3/4程度の高さが規定位置H1とされる。
液面の位置が規定位置H1以上のとき、液面センサー71は、第1レベルの電圧を出力する。液面の位置が規定位置H1未満のとき、液面センサー71は、第2レベルの電圧を出力する。第1レベルがHighレベルのとき、第2レベルはLowレベルである。第1レベルがLowレベルのとき、第2レベルはHighレベルである。
液面センサー71の出力は、制御部1に入力される。液面センサー71の出力レベルに基づき、制御部1は、液面の位置(高さ)が規定位置H1未満か否かを認識できる。タンク7内の液面が規定位置H1未満になったとき(第2レベルになったとき)、制御部1は、ポンプ65を動作させる。動作中、ポンプ65は、インクコンテナー60のインクをタンク7に送り込む。液面センサー71の出力レベルが第1レベルに変化するまで、制御部1は、ポンプ65を動作させる。液面センサー71の出力レベルが第1レベルに変化すると、制御部1は、ポンプ65を停止させる。タンク7の液面の位置は、規定位置H1で維持される。
シリンジ8は、インクの注入又は吸引を行う。例えば、シリンジ8は、タンク7のインクを吸引する(吸い上げる)。また、シリンジ8は、インクをダンパー9に注入する(押し出す)。ダンパー9は、シリンジ8から送られたインクを受ける。ダンパー9のインクは、ラインヘッド5(各ヘッド50)に供給される。言い換えると、ダンパー9のインクは、ノズル51や、ラインヘッド5の内部に設けられたノズル51へのインクの流路に供給される。ダンパー9は、インクにかかる圧力変動を緩和する。駆動素子52を動作させたときに吐出されるインクの量のばらつきを減らすことができる。
導管が複数設けられる。各導管はインクの流路として機能する。まず、第1導管61はタンク7とシリンジ8を接続する。タンク7からシリンジ8に向けて、又は、シリンジ8からタンク7に向けてのインクは、第1導管61を通る。第2導管62は、シリンジ8とダンパー9を接続する。シリンジ8からダンパー9に向けて、又は、ダンパー9からシリンジ8に向けてのインクは、第2導管62を通る。第3導管63は、ダンパー9とタンク7を接続する。ダンパー9からタンク7に向けてのインクは、第3導管63を通る。
さらに、第4導管64の一端がシリンジ8に接続される。第4導管64はシリンジ8内の空気を抜くための管である。第4導管64の他端は、タンク7に接続される。シリンジ8から抜かれた空気は、タンク7内に吹き出る。タンク7内に吹き出された空気は、気泡となって浮き上がる。抜かれた空気は液面上の空気と混ざる。
プリンター100(インク補給部6)は、第1開閉部91、第2開閉部92、第3開閉部93、第4開閉部94を含む。第1開閉部91は、第1導管61の開閉(インク流路の導通と遮断)を行う。第2開閉部92は、第2導管62の開閉(インク流路の導通と遮断)を行う。第3開閉部93は、第3導管63の開閉(インク流路の導通と遮断)を行う。第4開閉部94は、第4導管64の開閉(空気の通路の導通と遮断)を行う。
図4に示すように、第1導管61の導通、遮断を行うため、第1開閉部91は、第1開閉用モーター91aと、第1開閉用カム91bを含む。第2導管62の導通、遮断を行うため、第2開閉部92は、第2開閉用モーター92aと、第2開閉用カム92bを含む。第3導管63の導通、遮断を行うため、第3開閉部93は、第3開閉用モーター93aと、第3開閉用カム93bを含む。第4導管64の導通、遮断を行うため、第4開閉部94は、第4開閉用モーター94aと、第4開閉用カム94bを含む。
第1導管61、第2導管62、第3導管63、第4導管64は、例えば、ゴム製のチューブである。曲げたり、撓ませたりすることができる。また、押しつぶす(上から押さえる)ことにより、管内のもの(インクや空気)の流れを遮断することができる。
図5に示すように、第1導管61を開ける(インクを導通させる)とき、制御部1は、第1開閉用モーター91aを回転させる(制御する)。制御部1は、第1開閉用カム91bの回転角度を、第1導管61を潰さない(押さえない、接触しない)角度とする。第1導管61を閉じる(インクの流れを遮断する)とき、制御部1は、第1開閉用モーター91aを回転させる(制御する)。制御部1は、第1開閉用カム91bの回転角度を、第1導管61を押し潰す(押さえる)角度とする。
また、第2導管62を開ける(インクを導通させる)とき、制御部1は、第2開閉用モーター92aを回転させる(制御する)。制御部1は、第2開閉用カム92bの回転角度を、第2導管62を潰さない(押さえない、接触しない)角度とする。第2導管62を閉じる(インクの流れを遮断する)とき、制御部1は、第2開閉用モーター92aを回転させる(制御する)。制御部1は、第2開閉用カム92bの回転角度を、第2導管62を押し潰す(押さえる)角度とする。
また、第3導管63を開ける(インクを導通させる)とき、制御部1は、第3開閉用モーター93aを回転させる(制御する)。制御部1は、第3開閉用カム93bの回転角度を、第3導管63を潰さない(押さえない、接触しない)角度とする。第3導管63を閉じる(インクの流れを遮断する)とき、制御部1は、第3開閉用モーター93aを回転させる(制御する)。制御部1は、第3開閉用カム93bの回転角度を、第3導管63を押し潰す(押さえる)角度とする。
また、第4導管64を開ける(空気を通す)とき、制御部1は、第4開閉用モーター94aを回転させる(制御する)。制御部1は、第4開閉用カム94bの回転角度を、第4導管64を潰さない(押さえない、接触しない)角度とする。第4導管64を閉じる(インクの流れを遮断する)とき、制御部1は、第4開閉用モーター94aを回転させる(制御する)。制御部1は、第4開閉用カム94bの回転角度を、第4導管64を押し潰す(押さえる)角度とする。
次に、図3、図6を用いて、シリンジ8について説明する。シリンジ8は、例えば、インク筒81と移動部材82(プランジャ)を含む。インク筒81は円筒状である。インク筒81の上側は開いている。インク筒81の下側には、第1導管61と第2導管62が接続される。
図6に示すように、インク筒81の上から、インク筒81の内側に、移動部材82が差し込まれる。移動部材82は、垂直方向での断面が逆T字状である。移動部材82は、注射器の押子と同様の形状である。移動部材82の先頭部(下側の部分)は、気密保持部82aとなっている。気密保持部82a(移動部材82)の底面積の形状は、インク筒81の内側の底面積とほぼ同じとなっている。気密保持部82aは、気密性を持つ。気密保持部82aによって、インク筒81内のインクが気密保持部82a(移動部材82)の上側に漏れ出さない。
移動部材82の内側(中心)には、第4導管64が挿し通される。第4導管64は、移動部材82の最上部から底面に抜けている。移動部材82が下方に下がったとき、インク筒81内かつ移動部材82の下側の空気は、第4導管64を介して抜ける。インク筒81内のインクの最上面と気密保持部82aの下面が接する。移動部材82の上下方向(垂直方向)の側面には、歯面83が設けられる。歯面83には上下方向に沿って歯が設けられる。これらの歯と噛み合うように、ギア84が設けられる。シリンジモーター85はギア84を回転させる。シリンジモーター85は正逆回転自在である。シリンジモーター85を回転させることにより、移動部材82を上下動させることができる。
シリンジ8からインクをタンク7又はダンパー9に注入するとき(押し出すとき)、制御部1は、移動部材82が下がる方向にシリンジモーター85を回転させる。シリンジ8内のインクを増やすとき(吸引するとき)、制御部1は、移動部材82が上がる方向にシリンジモーター85を回転させる。なお、注入、又は、吸引時、制御部1は、第4導管64を閉じる(遮断する)。注入、又は、吸引前に、制御部1は、第4導管64を開け、移動部材82を開け、インク筒81内の空気を抜く。
また、インク筒81の底面積(水平方向の断面積)は決まっている。底面積に移動部材82の上下方向の移動量(高さ)を乗ずることで、制御部1は、注入又は吸引したインクの量を認識できる。例えば、シリンジモーター85には、ステッピングモーターを使用することができる。制御部1は、注入開始から終了までのシリンジモーター85の回転数(回転角度)に基づき、移動部材82の下降量を認識する。下降量に底面積を乗ずることにより、制御部1は、注入したインク量を認識する。
同様に、底面積に移動部材82の移動量(高さ)を乗ずることで、制御部1は、吸引したインクの量を認識できる。制御部1は、吸引開始から終了までのシリンジモーター85の回転数(回転角度)に基づき、移動部材82の上昇量を認識する。上昇量に底面積を乗ずることにより、制御部1は、吸引したインク量を認識する。
(ダンパー9の変形)
次に、図7を用いて、実施形態に係るダンパー9の変形の一例を説明する。図7は、実施形態に係るダンパー9の変形の一例を示す図である。
プリンター100では、インクの強制排出を行うことができる。強制排出は、インクに圧力をかける処理である。圧力をかけるため、シリンジ8がダンパー9にインクを注入する。これにより、ラインヘッド5の各ノズル51からインクが流れ出る。強制排出によって、ノズル51近傍に溜まった高濃度、高粘性のインクを吐き出させることができる。また、ノズル51に付着したゴミを取り除ける場合がある。
なお、ベルト搬送ユニット42(用紙搬送部4b)は昇降可能である。強制排出のとき、制御部1は、ベルト搬送ユニット42を移動(下降)させる。制御部1は、ラインヘッド5(ノズル51)とベルト搬送ユニット42の間隔を広げる。制御部1は、作り出した空間にインク受けトレイを差し込む。インク受けトレイは排出されるインクを受ける。例えば、インク受けトレイには、インクを吸収するためのスポンジが設けられる。また、制御部1は、ブレードを作り出した空間に差し込んでもよい。この場合、ブレードを主走査方向で移動させる移動機構が設けられる。制御部1は、移動機構にブレードを往復移動させる。往復移動のとき、ブレードがノズル51を擦る。ブレードは、余分なインクや、ゴミをノズル51から取り除く。なお、ブレードによるクリーニングは、強制排出ごとに行わなくてもよい。強制排出やブレードでのクリーニング後、制御部1は、インク受けトレイを退避させる。また、制御部1はベルト搬送ユニット42を元に戻す(上昇させる)。
操作パネル3が強制排出の実行指示を受け付けたとき、制御部1は、強制排出を行ってもよい。また、プリンター100が所定枚数印刷するごとに、制御部1は、強制排出を行ってもよい。また、制御部1は、予め設定された時刻に強制排出を行ってもよい。
強制排出を行うとき、制御部1は、ラインヘッド5に注入されるインクに圧力をかける。通常の吐出時よりもノズル51に圧力をかける。圧力をかけるため、制御部1は、第1導管61(第1開閉部91)と第3導管63(第3開閉部93)を遮断状態とする(閉じる)(図7参照)。また、制御部1は、第4導管64(第4開閉部94)も遮断状態とする(閉じる)。一方、ラインヘッド5にインクを送り込むため、制御部1は、第2導管62(第2開閉部92)を導通状態とする(開ける)。
さらに、制御部1は、シリンジ8にインクを注入させる。制御部1は、シリンジモーター85を回転させ、移動部材82を下降させる。これにより、ラインヘッド5のノズル51からインクが押し出されるように、インクに圧力がかかる。
ここで、ダンパー9は、例えば、金属の板を用いて形成される。強制排出でインクに圧力をかけたとき、ダンパー9が変形(膨らむ)することがある。この変形によって、ダンパー9の内部の容積が増える。
例えば、強制排出において、シリンジ8からMmLのインクをダンパー9に注入するとする。ダンパー9が変形して、ダンパー9の収容するインクがNmL増えたとする。そうすると、強制排出で排出されるインクは、(M-N)mLとなる。強制排出によるクリーニング効果を十分に挙げられない可能性がある。また、強制排出で排出されるインクが減り、インクの残量を適切に管理できないおそれがある。
そこで、プリンター100は変化量測定モードを有する。変化量測定モードは、変形によるダンパー9のインク収容量の変化量21(増加量、変形量)を測るモードである。この測定により、制御部1は当該変化量21を検知(認識)する。なお、変化量測定モードでは、ノズル51からインクが垂れる可能性がある。そのため、制御部1は、ラインヘッド5の下方にインク受けトレイを配置してもよい。
(変化量測定モードでの処理)
次に、図8~図12を用いて、実施形態に係る変化量測定モードでの処理の流れの一例を説明する。図8~図10は、実施形態に係る変化量測定モードでの圧力印加処理と圧力解除処理の一例を示す図である。図11、図12は、実施形態に係る変化量測定モードでの液面下降処理の一例を示す図である。
変化量測定モードでは、大きくわけて3つの処理が実行される。1つめが圧力印加処理である。2つ目が圧力解除処理である。3つ目が液面下降処理である。最後の圧力解除処理がなされた後、液面下降処理が行われる。ラインヘッド5(インク補給部6)ごとに、測定がなされる。
まず、図8~図10を用いて、圧力印加処理と圧力解除処理の一例を説明する。図8のスタートは、変化量測定モードを開始した時点である。変形によるダンパー9のインク収容量の変化量21の測定を制御部1が開始した時点である。操作パネル3は変化量測定モードの開始を受け付ける。変化量21の測定を開始するとき、使用者は所定の操作を操作パネル3に行う。操作パネル3が変化量測定モードの開始を受け付けたとき、制御部1は、図8のフローチャートの処理を開始する。
まず、制御部1は、第1導管61、第3導管63、第4導管64を閉じる(ステップ♯11)。言い換えると、制御部1は、第1開閉部91、第3開閉部93、第4開閉部94を動作させ、第1導管61、第3導管63、第4導管64の流路を遮断させる(図9参照)。また、制御部1は、第2導管62を開ける(ステップ♯12)。言い換えると、制御部1は、第2開閉部92を動作させ、第2導管62を導通状態とする(図9参照)。
次に、制御部1は、基準注入量22のインクの注入をシリンジ8に行わせる(ステップ♯13)。制御部1は、インクを注入する方向(下方向)に移動部材82を移動させる。第2導管62が開いているので、インクはダンパー9に注入される(図9の白抜矢印参照)。制御部1は、インクを注入する方向に移動部材82が移動するように、シリンジモーター85を回転させる。図9の白抜矢印はシリンジ8によるインクの流れを示す。図9の実線矢印は、移動部材82の移動方向を示す。
強制排出でシリンジ8がダンパー9に注入するインク量の基準値を基準注入量22とすることができる。基準注入量22は予め定められる。例えば、実験により、十分にクリーニングできる各ノズル51からのインクの排出量の合計を定める。定めた合計値を基準注入量22とすることができる。記憶部2は、基準注入量22を不揮発的に記憶する(図1参照)。
シリンジ8によるインクの注入(押し出し)後、制御部1は、圧力解除処理を開始する。まず、制御部1は、シリンジ8のインクの注入を停止させる(ステップ♯14)。また、制御部1は、第3導管63を開ける(ステップ♯15)。制御部1は、第3開閉部93を動作させ、第3導管63の流路を導通させる(図10参照)。なお、制御部1は、第1導管61、第2導管62、第4導管64を閉じてもよいし、開けてもよい。図10は閉じた状態を示す。変形したダンパー9から、変化量21分のインクがタンク7に流れ込む(戻る)ようになっていればよい。ステップ♯14、ステップ♯15により、インクへの圧力が解除される。ダンパー9の歪み(変形)が元に戻る。その結果、変形による変化量21分のインクがタンク7に戻される(白抜矢印参照)。タンク7の液面は上昇する。液面の高さ(位置)は規定位置H1を超える。
そして、制御部1は、圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを予め定められた実行回数を行ったか否かを確認する(ステップ♯16)。実行回数は予め定められる。圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを行った回数が実行回数に到達したとき(ステップ♯16のYes)、本フローは終了する(エンド)。圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを行った回数が実行回数に到達していないとき(ステップ♯16のNo)、フローはステップ♯11に戻る。
圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせの実行回数は、1回でもよいし、複数回でもよい。操作パネル3は組み合わせの実行回数の設定を受け付ける。制御部1は、設定された実行回数だけ、圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを実行する。実行回数=1のとき、圧力印加処理と圧力解除処理を1回ずつ行うと、本フローは終了する。実行回数が複数のとき、圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを複数回繰り返してから、本フローは終了する。
次に、図11、図12を用いて、液面下降処理の一例を説明する。図11のフローチャートのスタートは、図8のフローチャートが終わった時点である。
まず、制御部1は、第2導管62、第3導管63、第4導管64を閉じる(ステップ♯21)。制御部1は、第2開閉部92を動作させ、第2導管62の流路を遮断する。これにより、シリンジ8とダンパー9間でインクのやりとりができなくなる。また、制御部1は、第3開閉部93を動作させ、第3導管63の流路を遮断する。これにより、ダンパー9とタンク7間でインクのやりとりができなくなる。また、制御部1は、空気抜きを動作させ、第4導管64での空気の流れを遮断する。
次に、制御部1は、第1導管61を開ける(ステップ♯22)。制御部1は、第1開閉部91を動作させ、第1導管61を導通させる。これにより、タンク7とシリンジ8間でインクのやりとりが可能となる。図12は、液面下降処理での各管の開閉の状態を示す。
次に、制御部1は、シリンジ8にインクの吸引を開始させる(ステップ♯23)。制御部1は、インクを吸引する方向(上方向)に移動部材82を移動させる。制御部1は、インクを吸引する方向に移動部材82が移動するように、シリンジモーター85を回転させる。図12の白抜矢印はシリンジ8によるインクの流れを示す。図12の実線矢印は、移動部材82の移動方向を示す。
インクの吸引と同時に、制御部1は、吸引量の計測を開始する(ステップ♯24)。例えば、制御部1は、シリンジモーター85の回転数をカウントする。シリンジモーター85の1回転あたりのインクの吸引量は決まっている。制御部1は、吸引開始から測ったシリンジモーター85の回転数や回転角度に基づき、インクの吸引量を測り得る。
制御部1は、液面センサー71の出力が第2レベルになったか否かの確認を続ける(ステップ♯25、ステップ♯25のNo→ステップ♯25)。言い換えると、制御部1は、シリンジ8がタンク7内の液面の位置が規定位置H1未満となるまでインクを吸引したか否かを確認する。制御部1は、タンク7内の液面の位置が規定位置H1未満になるまで、シリンジ8にインクの吸引を続けさせる。なお、変化量測定モードでは、液面センサー71の出力が第2レベルになっても、制御部1は、直ちにタンク7へのインクの補給を開始しない(ポンプ65を動作させない)。
液面センサー71の出力が第2レベルになったとき(ステップ♯25のYes)、制御部1は、シリンジ8の吸引を停止させる(ステップ♯26)。つまり、制御部1は、シリンジモーター85の回転を停止させる。
制御部1は、シリンジ8のインクの吸引開始から液面センサー71の出力が第2レベルに変化するまでのシリンジ8のインクの吸引量を認識する(ステップ♯27)。これにより、制御部1は、変化量測定モードの開始後、圧力印加処理と圧力解除処理でタンク7に送り込まれたインクの量を認識する。例えば、シリンジモーター85の1回転あたりのインク吸引量がPmL、吸引開始から液面センサー71の出力が第2レベルに変化するまでのシリンジモーター85の回転数が7.5回転のとき、制御部1は、7.5×PmLが吸引量であると認識する。
認識した吸引量に基づき、制御部1は、変形によるダンパー9の容積の変化量21(増加量)を求める(ステップ♯28)。制御部1は、求めた変化量21を不揮発的に記憶部2に記憶させる(ステップ♯29、図1参照)。そして本フローは終了する(エンド)。
圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせの実行回数が1回のとき、制御部1は、液面下降処理で認識した吸引量を変化量21として認識する。
圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを複数回繰り返したとき(実行回数が複数回のとき)、制御部1は、液面下降処理で認識した吸引量を、組み合わせを繰り返した回数(設定された実行回数)で除して得られる値を変化量21として認識する。例えば、組み合わせを5回繰り返したとき、制御部1は認識した吸引量を5で除す。
(認識した変化量21による補正)
次に、図1を用いて、実施形態に係るプリンター100での認識した変化量21を用いた補正の一例を説明する。
(1)強制排出
強制排出では、シリンジ8はダンパー9にインクを注入する。圧力がかかってダンパー9が変形すると(膨らむと)、ダンパー9の容積(インク収容量)が増える。ダンパー9の変形により、ノズル51から排出されるインクの合計量は、基準注入量22よりも少なくなる。そこで、制御部1は、変化量21に基づき、強制排出でシリンジ8が注入するインクの量を増やす。
強制排出のとき、制御部1は、第1導管61と第3導管63を閉じる。制御部1は、第1開閉部91に第1導管61の流路を遮断させる。また、制御部1は、第3開閉部93に第3導管63の流路を遮断させる。そして、制御部1は、ダンパー9に向けて、基準注入量22と変化量21を加算した量のインクをシリンジ8に注入させてもよい。これにより、ダンパー9の変形があっても、各ノズル51から排出されるインクの合計量が基準注入量22となる。
(2)インク使用量の管理
記憶部2は、累計使用量23を不揮発的に記憶する(図1参照)。累計使用量23は、例えば、新たなインクコンテナー60を装着してから現時点までに使用されたインクの量を管理するためのデータである。例えば、インクコンテナー60の満杯時のインク収容量から累計使用量23を減じた値が所定値以下になったとき、制御部1は、インクコンテナー60の残量が少なくなったことを表示パネル31に表示させる。インクコンテナー60の交換時期が近づいていることを使用者に知らせることができる。
強制排出では、インクが消費される。インク使用量に、強制排出で消費されたインクの量を加算する必要がある。強制排出を行った場合、制御部1は、記憶部2に累計使用量23を更新させる。基準注入量22と変化量21を加算した量(加算量)のインクのダンパー9への注入を行ったとき、制御部1は、更新前の累計使用量23と、加算量(基準注入量22と変化量21の合計)と、を足しあわせた値を新たな累計使用量23として記憶部2に記憶させる。
基準注入量22のみのインク注入をシリンジ8に行わせたとき、制御部1は、更新前の累計使用量23に減算値を足しあわせた値を新たな累計使用量23として記憶部2に記憶させる。減算値は、基準注入量22から変化量21を減じた値である。
(時間計測モードでの処理)
次に、図13~図18を用いて、実施形態に係る時間計測モードでの処理の流れの一例を説明する。図13は、実施形態に係る時間計測モードでの処理の流れの一例を示す図である。図14は、実施形態に係る変形処理の一例を示す図である。図15は、実施形態に係るシリンジ充填処理の一例を示す図である。図16は、実施形態に係る時間計測処理の一例を示す図である。
上述したように、インクに圧力をかけたとき、ダンパー9は膨らむ。圧力解除により、ダンパー9の形状は元に戻る(復元する)。復元中、インクへの圧力は、通常時よりも高い状態である。また、復元中、例えば、インクは、タンク7に向けて流れる。そのため、復元中、印刷のために適切にインクを吐出できない場合がある。従って、ダンパー9の形状が復元してからインクを吐出する必要がある。
そこで、プリンター100は時間計測モードを有する。時間計測モードは、変形した(膨らんだ)ダンパー9が元に戻る(復元する)のに必要な時間(変形復元時間24)を定めるモードである。このモードの実行により、制御部1は変形復元時間24を測定する。なお、時間計測モードでは、ノズル51からインクが垂れる可能性がある。そのため、制御部1は、ラインヘッド5の下方にインク受けトレイを配置してもよい。
時間計測モードでは、大きくわけて3つの処理が実行される。1つめが変形処理である。2つ目がシリンジ充填処理である。3つ目が時間計測処理である。制御部1は、変形処理、シリンジ充填処理、時間計測処理の順で行う。これらの処理と既に求めた変化量21とに基づき、制御部1は変形復元時間24を定める(求める)。ラインヘッド5(インク補給部6)ごとに、変形復元時間24の測定がなされる。
図13のスタートは、時間計測モードを開始した時点である。変形復元時間24を定めるための測定を制御部1が開始した時点である。操作パネル3は時間計測モードの開始を受け付ける。変形復元時間24を定めるとき、使用者は所定の操作を操作パネル3に行う。操作パネル3が時間計測モードの開始を受け付けたとき、制御部1は、図13のフローチャートの処理を開始する。
まず、制御部1は、変形処理として、第1導管61、第3導管63、第4導管64を閉じる(ステップ♯31)。言い換えると、制御部1は、第1開閉部91、第3開閉部93、第4開閉部94を動作させ、第1導管61、第3導管63、第4導管64の流路を遮断させる(図14参照)。なお、ステップ♯31の前の段階で、制御部1は、タンク7の液面の位置を規定位置H1とする調整を行う。この調整では、制御部1は、ポンプ65とシリンジ8を用いて、液面の位置を規定位置H1にあわせる。
次に、制御部1は、第2導管62を開ける(ステップ♯32)。言い換えると、制御部1は、第2開閉部92を動作させ、第2導管62を導通状態とする(図14参照)。そして、制御部1は、変形処理として、第1インク量のインクの注入をシリンジ8に行わせる(ステップ♯33)。これにより、ダンパー9が変形する。制御部1は、インクを注入する方向(下方向)に移動部材82を移動させる。第1インク量のインクが注入されるように、制御部1は、シリンジモーター85を回転させる。第2導管62が開いているので、インクはダンパー9に注入される(図14の白抜矢印参照)。図14の白抜矢印はシリンジ8によるインクの流れを示す。図14の実線矢印は、移動部材82の移動方向を示す。制御部1は、インクを注入する方向に移動部材82が移動するように、シリンジモーター85を回転させる。
第1インク量は、変化量21を基準に定めることができる。ダンパー9を十分に変形させるため、第1インク量は、変化量21よりも多くする。制御部1は、変化量21に、予め定められた第1調整量25のインクを加えたインク量を第1インク量とできる。例えば、記憶部2は、第1調整量25を不揮発的に記憶する(図1参照)。ノズル51からのインクの漏れを少なくするため、第1調整量25は変化量21よりも少なくされる。
第1調整量25は、変化量21の半分以下としてもよい。また、第1調整量25は、変化量21の20~40%程度の量としてもよい。例えば、変化量21が5mLの場合、第1調整量25を1~2mL程度にすることができる。
実験により、複数の画像形成装置の変化量21を調べてもよい。そして、得られた変化量21のうち、最小値よりも小さい値を第1調整量25と定めてもよい。つまり、第1調整量25は、固定の値でもよい。一方、画像形成装置により、変化量21にばらつきがある。そこで、変化量21を定めた(求めた)とき、制御部1が変化量21に所定の比率(1以下)を乗じ、得られた値を第1調整量25として記憶部2に記憶させてもよい。
シリンジ8が第1インク量のインクをダンパー9に注入すると、制御部1は、シリンジ8のインクの注入を停止させる(ステップ♯34)。これにより、変形処理が完了する。次に、制御部1は、第2導管62を閉じる(ステップ♯35)。制御部1は、第2開閉部92を動作させ、第2導管62の流路を遮断する(図15参照)。これにより、シリンジ8とダンパー9間でインクのやりとりができなくなる。
続いて、制御部1は、シリンジ充填処理として、第1導管61を開ける(ステップ♯36)。制御部1は、第1開閉部91を動作させ、第1導管61の流路を導通させる(図15参照)。なお、制御部1は、第2導管62、第3導管63、第4導管64を閉じたままとする。次に、制御部1は、シリンジ充填処理として、タンク7から第2インク量のインクをシリンジ8に吸引させる(ステップ♯37)。制御部1は、インクを吸引する方向(上方向)に移動部材82を移動させる。第2インク量のインクが吸引されるように、制御部1は、シリンジモーター85を回転させる。
これにより、タンク7の液面の位置(高さ)は、規定位置H1よりも下となる(規定位置H1未満となる)。その結果、液面センサー71の出力は第2レベル(不足を示すレベル)となる。制御部1は、液面センサー71の出力が第2レベルになったことを認識する(ステップ♯38)。図15の白抜矢印はシリンジ8によるインクの流れを示す。図15の実線矢印は、移動部材82の移動方向を示す。また、図15の白抜矢印は、タンク7の液面の下降を示す。
なお、時間計測モードでは、液面センサー71の出力が第2レベルになっても、制御部1は、ポンプ65を動作させない。言い換えると、制御部1は、インクコンテナー60からインクをタンク7に補給しない。
第2インク量も変化量21を基準に定めることができる。タンク7の液面の位置が規定位置H1未満となり、かつ、後の処理で液面が規定位置H1以上となるように、第2インク量は、変化量21よりも少なくすることができる。制御部1は、変化量21から、予め定められた第2調整量26のインクを減らしたインク量を第2インク量とできる。例えば、記憶部2は、第2調整量26を不揮発的に記憶する(図1参照)。
第2インク量を変化量21よりも少なくするため、第2調整量26は、変化量21の半分以下としてもよい。また、第2調整量26は、変化量21の20~40%程度の量としてもよい。例えば、変化量21が5mLの場合、第2調整量26を1~2mL程度にすることができる。
実験により、複数の画像形成装置の変化量21を調べてもよい。そして、得られた変化量21のうち、最小値よりも小さい値を第2調整量26と定めてもよい。つまり、第2調整量26は、固定の値でもよい。一方、画像形成装置により、変化量21にばらつきがある。そこで、変化量21を定めた(求めた)とき、制御部1が変化量21に所定の比率(1以下)を乗じ、得られた値を第2調整量26として記憶部2に記憶させてもよい。
なお、第1調整量25と第2調整量26は同じでもよい。第1調整量25を定めれば、第2調整量26が決まる。第1調整量25と第2調整量26を別々に定めなくてもよい。
シリンジ8がタンク7から第2インク量のインクを吸引すると、制御部1は、シリンジ8のインクの吸引を停止させる(ステップ♯39)。これにより、シリンジ充填処理が完了する。次に、制御部1は、時間計測処理として、第3導管63を開ける(ステップ♯310)。制御部1は、第3開閉部93を動作させ、第3導管63の流路を導通させる(図16参照)。なお、制御部1は、第1導管61、第2導管62、第4導管64を閉じてもよいし、開けてもよい。図16は全ての導管を開いた状態を示す(全開放)。
第3導管63を開けることにより、変形したダンパー9から、変化量21分のインクがタンク7に流れ込む(戻る)。インクへの圧力解除により、ダンパー9の歪み(変形)が元に戻ってゆく。この過程で、タンク7の液面が上昇してゆく。上昇の過程で、液面の高さ(位置)は規定位置H1以上となる。なお、図16の白抜矢印は、インクのタンク7への流入を示す。また、図16の白抜矢印は、タンク7の液面上昇を示す。
そして、制御部1は、時間計測処理として、液面回復時間を測る(ステップ♯311)。液面回復時間は、第3導管63を開けてからタンク7の液面が規定位置H1以上となるまでの時間である。言い換えると、液面回復時間は、第3導管63を開けてから液面センサー71の出力が第1レベルに変化するまでの時間である。制御部1は、第3導管63を開けるのと同時に、液面回復時間を測り始める。液面センサー71の出力が第2レベルから第1レベルに変化したとき、制御部1は、液面回復時間の計測を終わる。
続いて、制御部1は、測った液面回復時間に基づき、変形復元時間24を定める(ステップ♯312)。そして、制御部1は、本フローを終了する(エンド)。なお、制御部1は、求めた変形復元時間24を記憶部2に不揮発的に記憶させる(図1参照)。
制御部1は、以下の式に基づき、変形復元時間24を定める(求める)。
(式) s=t×X/(X-B))
但し、sは、変形復元時間24である。
tは、液面回復時間である。
Xは、ダンパー9の変形によってダンパー9が収容するインクの変化量21である(図10、図11に基づき求めた変化量21)。
(X-B)は、第2インク量である(Bは第2調整量26)。
変化量21と第2インク量の比率と、液面回復時間とに基づき、正確な変形復元時間24が求められる。
(定めた変形復元時間24による基づく動作)
次に、図17を用いて、実施形態に係る変形復元時間24に基づく動作の一例を説明する。図17は、実施形態に係る変形復元時間24に基づく動作の一例を示す図である。
インクの強制排出の終了後、直ちに印刷(インク吐出)を再開したい場合がある。例えば、印刷ジョブの途中でインクの強制排出が始まった場合である。また、インクの強制吐出中に印刷用データを通信部13が受信することもあり得る。
図17のフローチャートは、インクの強制排出後、直ぐに印刷を開始(再開)する場合に実行される。そして、図17のスタートはインクの強制排出(クリーニング)のため、インクへの圧力印加を終了した時点である。言い換えると、図17のスタートは、制御部1がシリンジ8の下降、つまり、ダンパー9及びラインヘッド5へのインク注入を停止した時点である。
なお、インクの強制排出時、圧力をかけるため、制御部1は、第1導管61、第3導管63、第4導管64を閉じている。一方、制御部1は、第2導管62は開けている。
まず、制御部1は、少なくとも第3導管63を開ける(ステップ♯41)。制御部1は、第1導管61、第2導管62、第4導管64を閉じてもよいし、開けてもよい。これにより、インクの強制排出により変形したダンパー9の形状復元が開始される。
そして、制御部1は、第3導管63を開けてから待ち時間の経過を待つ(ステップ♯42)。ここで、制御部1は、変形復元時間24を待ち時間として用いる。待ち時間が経過すると、制御部1は、印刷のためのインク吐出をヘッド50に開始させる(ステップ♯43)。以後、制御部1は、最後まで印刷ジョブを行う(エンド)。待ち時間として変形復元時間24を用いることにより、ダンパー9の変形の復元が完了してから印刷を開始することができる。しかも、印刷を待たせる時間は、必要最小限となる。
(精密時間計測モード)
図18を用いて、実施形態に係る精密時間計測モードの処理の流れの一例を説明する。図18は、実施形態に係る精密時間計測モードでの処理の流れの一例を示す図である。
上述の時間計測モードは、1回、液面回復時間を測り、1回の液面回復時間に基づき変形復元時間24を定める。変形復元時間24を定める別のモードとして、プリンター100は、精密時間計測モードを有する。精密時間計測モードは、複数回、液面回復時間を測る。複数個の液面回復時間に基づき、変形復元時間24を定める。精密時間計測モードは、複数回、液面回復時間を測るので、時間計測モードよりも時間がかかる。
図18のスタートは、精密時間計測モードを開始した時点である。操作パネル3が精密時間計測モードの開始を受け付けた時点である。プリンター100では、変形復元時間24を定めるとき、時間計測モードを用いるか、精密時間計測モードを用いるかを選択することができる。
まず、制御部1は、液面回復時間を複数回測る(ステップ♯51)。具体的に、制御部1は、図13のフローチャートのうち、ステップ♯31~ステップ♯311を複数回繰り返す。繰り返す回数は、予め定められていてもよい(例えば、5回)。また、操作パネル3は、繰り返す回数の設定を受け付けてもよい。この場合、制御部1は、設定された回数を繰り返す。
次に、制御部1は、複数回測った液面回復時間の平均値又は最長値を求める(ステップ♯52)。操作パネル3は、平均値と最長値の選択を受け付けてもよい。操作パネル3が平均値の選択を受け付けたとき、制御部1は、平均値を求める。操作パネル3が最長値の選択を受け付けたとき、制御部1は、測った液面回復時間のうち、最も長い時間を選ぶ。
制御部1は、平均値又は最長値に基づき、変形復元時間24を定める(ステップ♯53→エンド)。制御部1は、以下の式に基づき、変形復元時間24を定める(求める)。
(式) s=t×X/(X-B))
sは、変形復元時間24である。
tは、液面回復時間の平均値又は最長値である。
Xは、ダンパー9の変形によってダンパー9が収容するインクの変化量21である(図10、図11に基づき求めた変化量21)。
(X-B)は、第2インク量である(Bは第2調整量26)。
複数回測定した液面回復時間に基づき、より正確な変形復元時間24が求められる。制御部1は、求めた変形復元時間24を記憶部2に不揮発的に記憶させる(図1参照)。
このようにして、実施形態に係る画像形成装置(プリンター100)は、ヘッド50、タンク7、シリンジ8、ダンパー9、第1導管61、第2導管62、第3導管63、液面センサー71、制御部1を含む。ヘッド50は、インクを吐出して印刷する。タンク7はインクを蓄える。シリンジ8はインクの注入又は吸引を行う。ダンパー9は、ヘッド50にインクを供給し、シリンジ8によりインクが注入される。第1導管61は、タンク7とシリンジ8を接続し、インクをやりとりするための流路である。第2導管62は、シリンジ8とダンパー9を接続し、インクをやりとりするための流路である。第3導管63は、ダンパー9とタンク7を接続し、インクをやりとりするための流路である。液面センサー71は、タンク7内のインクの液面の位置が規定位置H1以上であるかを検知する。制御部1は、液面センサー71の出力が入力される。ダンパー9の変形によってダンパー9が収容するインクの変化量21を測る変化量測定モードの場合、制御部1は、圧力印加処理と、圧力解除処理と、液面下降処理を行う。制御部1は、圧力印加処理後、圧力解除処理を行う。圧力印加処理では、制御部1は、第1導管61と第3導管63を閉じる。その後、制御部1は、ダンパー9へのインク注入をシリンジ8に行わせてダンパー9を変形させる。ダンパー9の変形後、圧力解除処理では、制御部1は、シリンジ8にダンパー9へのインク注入を停止させる。制御部1は、第3導管63を開ける。圧力解除処理後、制御部1は、液面下降処理を行う。液面下降処理では、制御部1は、第2導管62と第3導管63を閉じる。制御部1は、第1導管61を開けた状態でタンク7のインクをシリンジ8に吸引させる。制御部1は、吸引開始から液面センサー71の出力が変化するまでのシリンジ8のインクの吸引量を認識する。認識した吸引量に基づき、制御部1は変化量21を定める。
圧力印加処理により、意図的にインクに圧力をかけてダンパー9を変形させることができる。圧力解除処理により、ダンパー9が収容するインクの変化量21分のインク(変形によるダンパー9の容積の変化量21に相当するインク)をタンク7に戻すことができる。インクがタンク7に戻されることにより上昇した液面が規定位置H1に戻るまでにシリンジ8が吸引したインク量に基づき、変化量21を測ることができる。正確に変化量21を知ることができる。
変化量測定モードでは、制御部1は圧力印加処理と圧力解除処理をそれぞれ1回行ってもよい。この場合、制御部1は、液面下降処理で認識した吸引量を変化量21として認識する。圧力印加処理、圧力解除処理、液面下降処理を1回ずつ行うだけで、変化量21を得る(測る)ことができる。最小限の時間で、速やかに変化量21を量ることができる。
また、変化量測定モードでは、制御部1は、圧力印加処理と圧力解除処理の組み合わせを複数回繰り返してもよい。この場合、制御部1は、最後の圧力解除処理が終了すると液面下降処理を開始する。制御部1は、液面下降処理で認識した吸引量を、組み合わせを行った回数で除して得られる値を変化量21として認識する。複数回の測定の平均の値を変化量21として得ることができる。圧力印加処理と圧力解除処理を複数回行い、タンク7に戻されたインクの平均値を変化量21として求めることができる。平均をとるので、正確な値を変化量21として求めることができる。
画像形成装置(プリンター100)は、第1導管61の開閉を切り替える第1開閉部91と、第2導管62の開閉を切り替える第2開閉部92と、第3導管63の開閉を切り替える第3開閉部93と、を含む。第1導管61と第2導管62と第3導管63の開閉(導通と遮断)をそれぞれ制御することができる。
ヘッド50からインクを強制排出する強制排出でのシリンジ8からダンパー9へのインクの基準注入量22が予め定められる。強制排出の場合、制御部1は、第1導管61と第3導管63を閉じる。ダンパー9にインクを注入するとき、制御部1は、基準注入量22と変化量21を加算した量のインクをシリンジ8に注入してもよい。強制排出時、ダンパー9が変形しても、一定量のインクを強制的に排出させることができる。ダンパー9の変形に個体差があっても、一定量(基準注入量22)のインクを強制的に排出させることができる。
画像形成装置は、累計使用量23を記憶する記憶部2を含む。強制排出を行った場合、制御部1は、第1導管61と第3導管63を閉じる。シリンジ8が基準注入量22と変化量21を加算した量のインクをダンパー9に注入したとき、制御部1は基準注入量22を加算して、累計使用量23を記憶部2に更新させる。シリンジ8が基準注入量22のインクをダンパー9に注入したとき、制御部1は、基準注入量22から変化量21を減じた値を加算して、累計使用量23を記憶部2に更新させる。画像形成装置で使用されたインク量を正確に管理することができる。累計使用量23の管理が適切なので、正確なインク残量を知らせることができる。また、インクの残量が少なくなったことを正確に知らせることができる。
また、実施形態に係る画像形成装置(プリンター100)は、膨らんだダンパー9が元に戻るまでの時間である変形復元時間24を定めるモードの場合、制御部1は、変形処理と、シリンジ充填処理と、時間計測処理の順で処理を行う。変形処理では、制御部1は、第1導管61と第3導管63を閉じ、その後、第1インク量のインクのダンパー9への注入をシリンジ8に行わせてダンパー9を変形させる。制御部1は、変形処理後、第2導管62を閉じる。シリンジ充填処理では、制御部1は、液面の位置を規定位置H1未満にするため、第1導管61を開け、第2インク量のインクをタンク7からシリンジ8に吸引させる。シリンジ充填処理後、時間計測処理では、制御部1は、第3導管63を開け、第3導管63を開けてから液面センサー71の出力が変化するまでの時間である液面回復時間を測る。制御部1は、液面回復時間に基づき、変形復元時間24を定める。
この構成によれば、液面センサー71の出力、変形処理、シリンジ充填処理、時間計測処理により、変形したダンパー9の復元に要する時間(変形復元時間24)を求めることができる。変形復元時間24は画像形成装置ごとにばらつきがある。画像形成装置ごとに、変形復元時間24を求めることができる。インクの強制排出後の待ち時間を必要最低限とするための時間を測ることができる。
制御部1は、s=t×X/(X-B)の式により、変形復元時間24を定める。sは、変形復元時間24である。tは、液面回復時間である。Xは、ダンパー9の変形によってダンパー9が収容するインクの変化量21である。X-Bは、第2インク量である。変化量21と第2インク量との比率、及び、ダンパー9の形状の復元開始後、液面センサー71の出力が変化するまでの時間に基づき、変形復元時間24を正確に求めることができる。
制御部1は、ダンパー9の変形によってダンパー9が収容するインクの変化量21に、予め定められた第1調整量25のインクを加えたインク量を第1インク量とする。制御部1は、変化量21から、予め定められた第2調整量26のインクを減らしたインク量を第2インク量とする。ダンパー9に注入するインクを調整するので、十分にダンパー9を膨らませる(変形させる)ことができる。また、タンク7から減らすインク量を調整するので、時間計測処理において、タンク7の液面を確実に規定位置H1まで回復させることができる。タンク7の液面が規定位置H1まで回復しないことによる計測ミスを無くすことができる。
第1調整量25と第2調整量26は、変化量21よりも少ない。液面回復時間を測れるように、第1調整量25と第2調整量26を定めることができる。
第1調整量25と第2調整量26は、同じとしてもよい。第1調整量25と第2調整量26を異なる量としなくてすむ。第1調整量25と第2調整量26を同じ量とすることができる。
制御部1は、変形処理と、シリンジ充填処理と、時間計測処理の組み合わせを複数回行って、複数回、液面回復時間を求める。制御部1は、求めた複数個の液面回復時間の平均値又は最長値を用いて、変形復元時間24を定める。複数回計測を行うので、より正確に変形復元時間24を定めることができる。
第3導管63を閉じ、ダンパー9へのインク注入をシリンジ8に行わせてインクの強制排出をしたとき、第3導管63を閉じ、ダンパー9へのインク注入をシリンジ8に行わせたとき、制御部1は、ダンパー9へのインク注入完了後、待ち時間が経過してから、印刷のためのインク吐出をヘッド50に行わせる。制御部1は、変形復元時間24を待ち時間として用いる。定めた変形復元時間24を待ち時間とすることができる。インクの強制排出後の待ち時間を必要最小限の時間とすることができる。使用者の待ち時間を最短とすることができる。画像形成装置の動作時間を減らすことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。