JP4552084B2 - 転輪付き鞄 - Google Patents
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上述の自立させた状態で移動させる型式のものでは、ケースを自立させるために比較的大きな底面を有し、その底面に4個のキャスター車輪を装備して自由な方向に移動させられるようにしているので、矩形箱状のケースを曳行する操作者にケース重量が作用せず、スーツケースなどの大型の重いケースを運搬するのには適している。しかしながら、引き紐での引き操作では曳行方向が安定せず、後からの押しでは移動方向を安定させるために両手で方向を規制しながら押さなければならず、また重心も高いので転倒し易く、急いで歩きたい場合には移動させ難いという問題がある。
これとは別に、ケースを取っ手で前傾させた姿勢を保って搬送する型式のものでは、ケースを傾倒姿勢とすることで取っ手にある程度のケース重量が作用することになるが、取っ手を介して傾斜姿勢のケース自体を支持していることにより、曳行姿勢や曳行方向は安定し、比較的急ぎ足でも曳行し易く、小型および中型のケースの曳行に適している。本発明は、この傾倒させた姿勢を保って搬送する型式の転輪付き鞄の改良に関する。
[1]矩形箱状のケースを、その厚みが薄い方向、すなわち最も辺の長さが短い方向を前後方向に沿わせ、縦横の辺の長さが長い広幅の面を前後に位置させた姿勢で曳行するのが一般的であり、曳行用の取っ手は、広幅の前面に沿って上下方向に設けられている。また、転輪も、矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の前面を曳行方向に向けて曳行し易いように、矩形箱状のケースの前面に対して交差する前後方向に転動するように配設されていた(例えば、特許文献1参照)。
[2]ただし、曳行用の取っ手や転輪が、必ずしも矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の前面を曳行方向に向けるように配置されているとは限らず、ごく少数ではあるが矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の面が横に向く状態で曳行されるように、矩形箱状のケースの辺長さの短い方向に対して交差する方向に配置されたものもある(例えば図4参照)。
[3]また、一部の旅行鞄では、底面の4隅近くに転輪を備え、そのうちケースを傾倒させた姿勢で曳行する際に用いる取っ手が設けられた前向き面とは反対側の後向き面に近い側の底面に設けられる転輪を、ケースの厚みが薄い方向に沿う方向の固定車軸を有した固定輪とし、残りの3輪をキャスター輪として、取っ手を引きながら傾けて曳行する使用状態と、鞄を自立させたままの姿勢で押して歩くことができる使用状態との両状態を選択して用ることができるようにしたものもあるが、この場合にも、取っ手は広幅の前向き面に沿って上下方向に配設されている(例えば、特許文献2参照)。
まず、前記[1]に記載したように、矩形箱状のケースを、その厚みが薄い方向、すなわち最も辺の長さが短い方向を前後方向に沿わせて曳行するように、曳行用の取っ手を、縦横の辺の長さが長い広幅の前面に沿って上下方向に設け、また転輪も、矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の前面に対して交差する前後方向に転動するように配設されている構造のものでは次のような問題がある。
すなわち、このような転輪付き鞄を使用する際には、使用者が身体の後に手を回して取っ手を引っ張りながら曳行しているのであるが、このような使用形態では、矩形箱状のケースの辺長さの長い方向である広幅の面が前に向き横方向に幅広くなり、これが曳行する使用者から後方に離れて位置するので、前後方向でも左右方向でも専有面積が広くなって、人混みの中では他の通行者や他物に衝突し易く、通行の弊害となることがある。
しかしながら、この構造のケースを用いて上記のように取っ手3を曳行者の横側方に位置させた状態で曳行した場合、矩形箱状ケースの重心Gが転輪2の接地点Oの直上に位置する安定姿勢では、曳航者が自然に垂らした手の位置と接地点との間の距離は、曳航者が身体の後ろに手を回して曳航する前記[1]に記載の構造のものと大差のないものであるため、前後長さも大差のないものとなり、前後方向での占有面積を削減できるものではない。
この構造のケースを前後方向でも曳行者に近づけて前後方向の占有面積が少ない状態で曳行しようとすると、図4に二点鎖線で示すように、取っ手3をかなり起立させた急角度で曳行する姿勢となるが、このように起立させると矩形箱状のケース本体1の重心Gが転輪2の接地点Oよりも後方側に大きく移行した状態となる。このような曳行姿勢では、取っ手3でケース本体1の後方側への転倒を防ぐように押さえながら前方へ引くのであるが、転輪2の接地点Oが重心よりも前方であるため、後方から押しているのと同様に操舵し難く、曳行操作そのものが行い難くなる不都合がある。このような理由から明らかなように、この構造では、左右方向での占有面積を削減できるように工夫されているが、前後方向ではその占有面積を削減できるように起立させて用いようとするものではない。
このような回転モーメントによる転倒を生じ難くするには、前記取っ手3から離れる方向の距離を短くして重心Gを取っ手3に近づけるようにすればよいが、これでは、ケース内容量が縮減されることになるので、ケース本来の機能が損なわれてしまう。
このスーツケースは、図中実線で記載されているように、4輪を接地させた自立姿勢でスーツケースを移動させる状態と、点線で記載されているようにキャスター車輪側を浮かせた斜め姿勢で曳行する状態とで用いられるものであるが、4輪を接地させた自立姿勢でスーツケースを移動させる際にはケース全体を両手で押して移動させ、図中点線で記載されているようにキャスター車輪側を浮かせた斜め姿勢で曳航する際に取っ手で前側を引き上げて用いるものである。
しかしながら、このキャスター車輪側を浮かせた曳行姿勢では、スーツケースの重量が取っ手側にかなり大きく作用する傾向があり、これを軽減するためにスーツケース自体の傾斜をより急角度に(立ち上がり方向に)角度変更すると、取っ手の位置が高くなりすぎてしまう。つまり、ケース前側を浮かせるように引き上げる操作では、前述のようにケース重量が取っ手に大きく作用するという問題があり、ケースの傾斜を急角度にして重量を軽減しようとすると、高い取っ手位置で持ち上げながら曳行するという、きわめて不自然な操作を余儀なくされる不具合がある。
このように、このスーツケースに設けられている前記取っ手は、登りや下りの坂道で後ろからの押しでは移動させにくい場合や、段差部や溝などの障害物を越えるときに一時的に持ち上げるために役立つ程度のものであり、長い距離の曳行には不向きなものである。
上記目的を達成するための解決手段の1つは、縦辺の長さと横辺の長さが奥行き辺の長さよりも長い矩形箱状のケース本体に、手提げ用の提げ手と曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄において、
前記ケース本体の縦辺と横辺とで構成される矩形の一つの隅角部とその対角に位置する隅角部とに、曳行用の取っ手の握り部と転輪とを振り分け配置し、その振り分け配置された前記握り部と転輪との間の距離を調節可能な長さ調節手段を、前記ケース本体の矩形の対角線方向に沿って設けたことである。
上記目的を達成するための第2の解決手段は、曳行用の取っ手の握り部は、ケース本体の縦辺と横辺とで構成される矩形の外周縁に沿う格納姿勢と、ケース本体の重心と転輪の接地点とを結ぶ線分に対して、ケース本体の前記外周縁から離れて、その外周縁よりも大きな交差角度で交差する曳行姿勢とに姿勢切換可能に構成されていることである。
このような構成を採用したことによる作用効果は次のとおりである。
すなわち、ケース本体の縦辺と横辺とで構成される矩形の一つの隅角部とその対角位置の隅角部とに、曳行用の取っ手の握り部と転輪とを振り分け配置して、ケース本体の幅の狭い方向を左右方向にした前傾姿勢で、前後及び左右の占有面積が少ない状態で、しかもケース本体の重心を転輪の接地点の直上近くに位置させて安定よく曳行することができる。
そして、その振り分け配置された前記握り部と転輪との間の距離を調節可能な長さ調節手段を、前記ケース本体の矩形の対角方向に沿って設けたものであるから、長さ調節手段による長さ調節代を、ケース本体の最大寸法部分を利用して十分に長く設定し易い。
また、長さ調節手段の配設箇所がケース本体の対角方向に沿うものであり、最も荷重が作用し易いところの、転輪と、ケース本体重心と、取っ手の取り付け位置とを結ぶ線分に沿うことになるので、ケース本体の補強にも有効に作用し得る利点もある。
解決手段2にかかる構成を採用したことにより、曳行用の取っ手の握り部は、ケース本体の矩形の外周縁に沿う格納姿勢と、ケース本体の重心と転輪の接地点とを結ぶ線分に対して、ケース本体の外周縁よりも大きな交差角度で交差する曳行姿勢とに姿勢切換可能であり、したがって、格納姿勢ではケース本体外周縁に沿って無用な突出部分のないコンパクトな状態に格納でき、曳行姿勢では、握り部を操作し易い水平姿勢に近づけた状態で曳行することが可能となる。
本発明の転輪付き鞄は、矩形箱状のケース本体1と、ケース本体1の下部に設けた転輪2と、ケース本体1の上部側でケース本体を曳行するための取っ手3とで構成されている。
ケース本体1は、図1に示すように、縦辺aと横辺bとで構成される矩形の横側面1Aに対して、前記縦辺a及び横辺bよりも短い奥行き辺cを備えて、矩形箱状に構成されている。
曳行時における取っ手3の延出方向が後方に向けられているのは、前方へ向けた場合のように、曳行状態でケース本体1の重心Gが転輪の接地点Oよりも後方に位置して曳行し難くなることを避けるためである。この例では、握り部32の中央箇所Mが重心G位置の鉛直線よりもやや後方に位置しているが、接地点Oよりは前方なので曳行時のフラツキはほとんど生じない。
この構造では、図1(イ)及び(ロ)に示すように、ケース本体1の対角線方向で、ケース本体1の横側面1Aに沿うように支脚5のガイド体50が設けられ、これに支脚5のスライド杆51が出退自在に構成されている。
重心Gの位置は、現実の使用状態では内容物の詰め方などで変化し、必ずしも矩形の中心とは一致しない場合があるが、これを考慮するとケース本体1としてはその重心Gの位置が特定できないので、便宜上、ケース本体1の側面視における矩形の中心を重心相当位置として考える。
つまり、これらの三点がすべて鉛直線y上に揃うのが重量バランス的には有利であるが、曳行に際しては、多少握り部32の中央箇所Mが鉛直線yよりも前にある方がふらつきを生じ難くて操作し易い。
尚、実際の曳行時に移動している状態では、ケース本体1の重心Gが転輪2の接地点Oよりもやや前方に位置する傾向がある。このときのケース本体1の縦辺aと横辺bとによる矩形の中心(重心相当部分)と前記接地点Oとを結ぶ線分y2が、接地点Oを通る鉛直線yに対して傾斜する角度は、曳行中絶えず変化しているので正確には測定し難いが、平均的な角度は、約0度〜10度前後、好ましくは3〜5度程度前傾している場合が多い。
前記スライド杆51には操作突片53がスライド杆51の出退方向に沿う揺動軸心x1周りで揺動自在、かつ、係合溝54への係合方向へ付勢して設けてあり、操作突片53を起立させた姿勢でガイド溝52内を移動させることによってスライド杆51の姿勢を切り替えるようにしてある。
図2中の係合溝54は、スライド杆51の出退方向で複数箇所に形成されており、曳行用突出姿勢を複数段に切り替え可能に構成されている。
すなわち、この支脚5によって、そのガイド体50とスライド杆51の間における出退量の調節により、取っ手3の握り部32と転輪2との間の距離変化を調節可能な長さ調節手段を構成している。
この起伏操作杆36は、前後2箇所の横支軸37,38を備え、前方の横支軸37がケース本体1の上部角部に備えられた取り付けブラケット39の外周部に形成した凹入溝40に嵌入し、後方の横支軸38が取り付けブラケット39の中央箇所に形成したガイド孔41を貫通している。
起伏操作杆36が図中実線で示す格納姿勢にあるとき、前の横支軸37は凹入溝40の下端部にあり、後ろの横支軸38はガイド孔41の上端部に位置して、この状態が維持されるようにガイド孔41内に装備された板バネ42により後ろ横支軸38が上部側へ付勢されている。起伏操作杆36を図中二点鎖線で示す曳行姿勢に引き起こすと、後ろ横支軸38が板バネ42の付勢力に抗して下方側へ移動し、前の横支軸37は凹入溝40の上端部に移動し、この状態が後ろの横支軸38をバネ板42の付勢力によってガイド孔41の下端部に付勢することによって維持するように構成されている。
[1]支脚5の位置変更および固定のための構造、及び取っ手3の構造は任意に構成すればよい。
[2]伸縮構造の支脚5において、スライド杆51を収縮方向もしくは突出方向へ付勢するスプリングなどの付勢手段を設けて、係合溝54に対する操作突片53の解除によってスライド杆51が自動的に収縮もしくは突出するように構成してもよい。
[3]手提げ用の提げ手4と取っ手3とは、別々に設けたものに限らず、互いに近接した位置に設けて、あるいは形状や大きさを変更するなどして兼用できるように構成してもよい。
2 転輪
3 取っ手
4 提げ手
5 支脚
32 握り部
a 縦辺
b 横辺
c 奥行き辺
G 重心
O 接地点
M 握り部の中央箇所
y 接地点を通る鉛直線
y1 接地点と握り部の中央箇所を結ぶ線分
y2 接地点と重心相当個所を結ぶ線分
Claims (2)
- 縦辺の長さと横辺の長さが奥行き辺の長さよりも長い矩形箱状のケース本体に、手提げ用の提げ手と曳行用の取っ手と転輪とを備えた転輪付き鞄であって、
前記ケース本体の縦辺と横辺とで構成される矩形の一つの隅角部とその対角に位置する隅角部とに、曳行用の取っ手の握り部と転輪とを振り分け配置し、
その振り分け配置された前記握り部と転輪との間の距離を調節可能な長さ調節手段を、前記ケース本体の矩形の対角線方向に沿って設けてある転輪付き鞄。 - 曳行用の取っ手の握り部は、ケース本体の縦辺と横辺とで構成される矩形の外周縁に沿う格納姿勢と、ケース本体の重心と転輪の接地点とを結ぶ線分に対して、ケース本体の前記外周縁から離れて、その外周縁よりも大きな交差角度で交差する曳行姿勢とに姿勢切換可能に構成されている請求項1記載の転輪付き鞄。
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