JP4552077B2 - クレーン用ストッパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランウェイガーダに設けたクレーン用ストッパに関するもので、現地取付けの際の作業性を大幅に改善したものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、天井クレーン等が走行するランウェイ(走行路)端の四隅には、クレーンの脱落を防止するためのクレーン用ストッパが設けられている。従来のクレーン用ストッパは、H形鋼等で形成されるランウェイガーダ上にストッパ部材を直接溶接するか、または、ボルト止めするのが一般であった。
【0003】
この場合、クレーン用ストッパの取付位置を建屋の柱から寸法決めすると、建屋やクレーンの製作精度誤差によって、クレーンのサドル(車輪を備えた桁)端がランウェイ端に設けたストッパに当たった際に、クレーンのサドル端と、クレーン用ストッパとの当たり面に左右の食い違い差を生じることがある。この食い違い差が生じると、クレーンガーダ(桁)やクレーンのサドルに不要なねじれ荷重が発生したり、走行車輪に過荷重が作用したりする等クレーンにとっては好ましいものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことからクレーン用ストッパの取付けは、クレーンを上架した後、クレーンを走行させて、左右のクレーンのサドル端がストッパに同時に当たるよう、現地で現物合わせを行うことが多い。このとき、現地で行われるクレーン用ストッパの溶接作業や、クレーン用ストッパをボルト止めする際のランウェイガーダへの穴明け加工作業は、高所作業であり、しかも作業姿勢が悪く、危険なものであった。特に、溶接作業においては、工場の四隅まで溶接機を搬入しなければならない煩わしさがあった。
【0005】
さらに、ランウェイガーダの塗装が完了した時点で溶接をすると、溶接後の補修塗装の色合わせ等が難しく、アーク溶接の際に発生するスパッタ(溶けた被覆材や鉄の火花)の飛散防止、取付けについての現地打合せ等クレーン用ストッパの現場取付工事に非常に手間のかかる問題があった。また将来、クレーンの荷役レイアウトに変更が発生した場合には、クレーン用ストッパの取付位置を変更しなければならず、この場合にも、新設時と同様の手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、この点に鑑みてなされたものであり、断面コ字状の一対のフレーム材をランウェイガーダのフランジ部に組付けて、クレーンガーダやクレーンのサドルに発生する不要なねじれ荷重及び、走行車輪に作用する過荷重をなくし、さらに、ストッパ取付作業の煩雑さを回避すると共に、作業の手間を簡略化したクレーン用ストッパを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のクレーン用ストッパは、断面コ字状の一対のフレーム材の各側板部に、挿入側から奥側へ向けて斜め上に延びてランウェイガーダのフランジ部が嵌合される嵌合溝を形成すると共に、前記ランウェイガーダの前記フランジ部の最外縁下部と接する前記嵌合溝の奥側部を、テーパ形状または丸み形状に形成し、前記一対のフレーム材を、その背面部同士を対向させ、前記嵌合溝をランウェイガーダのフランジ部に該フランジ部の両側方から挟み込むように挿入すると共に、該一対のフレーム材を固定する締結手段を設け、前記一対のフレーム材の側板部にクレーンサドルが当接するバッファプレートを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクレーン用ストッパにおいて、前記バッファプレートの、クレーンサドルに対向する部位にバッファを取り付けたことを特徴とするものである。
【0009】
したがって、本発明のクレーン用ストッパでは、ランウェイガーダのフランジ部に配設したクレーン用ストッパの一対のフレーム材を締結手段で堅固に固定させ、この固定したフレーム材に取付けたバッファプレートにクレーンのサドル端を当接させて停止させる。クレーン用ストッパは締結手段によって着脱が自由に行われる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、要部を概略的に示した図1乃至図3に基づいて説明する。図1乃至図3に示すものは通常、ランウェイガーダ1として使用されるH形鋼のフランジ部2に本発明のクレーン用ストッパ3を取り付けたものである。クレーン用ストッパ3は一対のコ字形のフレーム材4,4と、バッファ(緩衝材)5を装着したバッファプレート6と、締結手段であるセットボルト7とから概略構成されている。これらの構成部材について詳述する。上記コ字形のフレーム材4の部分名称は、正面(凹みのある)側から見て両側の突出部分を側板部8と呼び、奥側背面の板部分を背面部9と呼ぶ。なお、一対のフレーム材4,4は両部材とも同じ構造なので片方にのみ符号を付す。
【0011】
フレーム材4の両側板部8の長手方向(側板部8から背面部9に向かう線と直交する線方向)の一側端部8a近傍には、ランウェイガーダ1のフランジ部2に嵌合させる嵌合溝10が形成されている。嵌合溝10は背面部9側から側板部8の短手方向の略中央部までを切欠いて形成している。さらに、両側板部8の長手方向の他側端部8b近傍と、略中央部とには、前記バッファプレート6を取り付けるボルト11を挿通させる孔12が直列に二個形成されている。孔12をこのように複数設けることにより、バッファプレート6を側板部8に取付けた際、バッファプレート6の高さを調整することが可能になる(図1参照)。
【0012】
また、上記嵌合溝10は、図4の符号Aに示すように、挿入口より奥側に進むにつれて、側板部8に設けた孔12の方向に向いて若干斜めに(図1及び図4においては若干斜め上方に略4.6度程度)形成されている。この嵌合溝10の奥側部分、すなわち、図5に示すように、ランウェイガーダ1のフランジ部2の最外縁下部2aが接する奥側部分は、若干のテーパ形状10Aに形成されている。この奥側部分を、図6に示すように、丸み形状10Bに形成してもよい。
【0013】
そして、図4に示すように、嵌合溝10の挿入口の上下方向の幅T(図4参照)は、通常ランウェイガーダ1として使用されるH形鋼のフランジ部2の厚さ(略8〜16mm)に対応出来るよう、略17mm程度が好ましい(幅Tは全部材とも共通にしてある)。しかしながら、ランウェイガーダ1のフランジ幅が図9に示すように小さいものにおいては、当然ながらフランジ部2の厚さも薄くなり、この場合には、ランウェイガーダ1と嵌合溝10との間に空隙が出来るため、図7及び図8に示すような調整ライナー13を前記空隙に介装する。
【0014】
調整ライナー13は、厚さtの異なるものを数種用意し、その組み合わせによって、フレーム材4がフランジ部2に対して直角に(図5及び図6の符号D参照)取り付けられるように調整を行う。図7において、符号13aは、セットボルト7の逃し溝を示す(図9参照)。
【0015】
また、図1及び図3に示すように、背面部9の長手方向の他側端部9b(図1及び図3においては上方部)の近傍には前記セットボルト7が挿通する孔14が二個並設されている。さらに、背面部9の長手方向の略中央部にもセットボルト7が挿通する孔14が一個設けられている。
【0016】
そして、クレーン用ストッパ3をランウェイガーダ1に組付けた際、フレーム材4の嵌合溝10の挿入口側(すなわち、背面部9の一側端部9a及び両側板部8,8の一部)がフランジ部2の上面に当接するように形成されているので(図1参照)、背面部9は側板部8よりも短かく形成されている。すなわち、図1に示すように、側板部8の嵌合溝10よりも下側部分には背面部9は設けられていない。図1乃至図3において、符号15で示すものはセットボルト7に螺合するナットであり、図2及び図3において、符号16で示すものはバッファプレート6を固定するボルト11に螺合するナットである。
【0017】
また、一対のフレーム材4の両側板部8,8のクレーンサドルに対向する部位には、クレーンサドルの端部が当接する長方形のバッファプレート6が横架されている。バッファプレート6の略中央には方形(正方形)のバッファ(緩衝材)5が接着材等により取り付けられている。このバッファ5は必ずしもバッファプレート6に取付けなくても、クレーンサドルの端部に取り付けてもよい。
【0018】
図1に示すように、バッファプレート6の長手方向の両端部には、前記固定用のボルト11が挿通する長孔17が長手方向に沿って設けられている。この長孔17によってバッファプレート6はランウエイガーダ1の、どのような断面幅を持ったフランジ部2にも取付けることが可能になる。図9に示すものは、ランウェイガーダ1の幅狭のフランジ部2に本発明のクレーン用ストッパ3を取り付けたものであり、図10に示すものは、ランウェイガーダ1の幅広のフランジ部2に本発明のクレーン用ストッパ3を取り付けたものである。
【0019】
以上のように構成されたクレーン用ストッパ3のランウェイガーダ1への取り付けについて説明する。図1に示すように、一対のフレーム材4を嵌合溝10が下方になるように、かつ、背面部9同士が対向するようにして立設させ、この状態で嵌合溝10をランウェイガーダ1のフランジ部2に両側方から挟み込むように挿入させると共に、一対のフレーム材4の夫々の背面部9の略中央部に設けた一個の孔14にセットボルト7を挿通させ、手でナット15を螺合させて仮止めを行い、この状態で、左右のフレーム材4の位置を確認する。その後、トルクレンチでセットボルト7を設定のトルク値(400Kgf・cm)迄締め付ける。
【0020】
これにより、図5及び図6に示すように、ランウェイガーダ1のフランジ部2の上面と、これに接する嵌合溝10の挿入側端面とが面接触し、さらに、嵌合溝10の奥側部分に、若干のテーパ形状10Aまたは丸み形状10Bが形成されているので、嵌合溝10の奥側部分と、ランウェイガーダ1のフランジ部2の最外縁下部2aとの間にはクサビ効果が生じる。このように、中央部のセットボルト7は、ランウェイガーダ1に対する一対のフレーム材4の相互の位置決め及びその引き寄せを行う。
【0021】
次いで、一対のフレーム材4の夫々の背面部9の他側端部9bに設けた二個の孔14に夫々二本のセットボルト7を挿通させ、ナット15を螺合して仮止めし、その後、左右の二本のセットボルト7及びナット15をトルクレンチで交互に締め付けることにより、一対のフレーム材4が相互に引き寄せられる。これによって、ランウエイガーダ1のフランジ部2の上面と、これに接する嵌合溝10の挿入側端面との面接触した部分を支点にして、テコの原理により、嵌合溝10とランウェイガーダ1とは堅固に締結固定される。これにより、クレーン用ストッパ3は、ランウエイガーダ1に一体に固定されることとなる。
【0022】
左右二本のセットボルト7をトルクレンチで交互に締付ける点について詳述する。二本のセットボルト7の内、一方を締め付けると他方が緩くなり、緩くなった方を締め付けると、反対側が緩くなる。このように交互に締め付けていくと、緩みが交互に発生し、何度かその状態を繰返すと両方のセットボルトが設定のトルク値まで締め付けられる。二本のセットボルト7が所定のトルク値まで締め付けられると、下側のボルトが緩むので、下の緩んだセットボルト7を更に設定のトルク値まで締め付ける。このようにして、各セットボルト7は堅固に締め付けられる。
【0023】
そして、フレーム材4の側板部8,8の、クレーンサドルの端部に対向する部位にはクレーンサドルが当接するバッファ5を装着したバッファプレート6をボルト11及びナット16により取付ける。クレーンサドルの端部にバッファ(共に図示なし)を取り付けた場合は、バッファプレート6のみをボルト11及びナット16により取付ける。このようにバッファプレート6には、必要に応じて、バッファ5を取り付けるようにする。これによって、本クレーン用ストッパ3は、バッファ5を取付けていないクレーンサドルに対しても利用することが出来る。
【0024】
本実施の形態のフレーム材4は、鋼板をプレス成形して断面コ字状に形成したものを開示したが、溝形鋼を用いて形成してもよい。また、本発明のクレーン用ストッパ3の天地を反対にすれば、すなわち、ランウェイガーダ1として使用されるH形鋼の下側のフランジ部2にこのクレーン用ストッパ3を取付ければ、サスペンション形クレーンの走行レール(走行はり)のストッパとしても利用することが出来る。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されたクレーン用ストッパであるから、次のような効果を奏する。すなわち、ボルト等の締結手段で組立てることの出来るクレーン用ストッパであるので、H形鋼やI形鋼で形成されるランウエイガーダに直接取り付けることが出来、煩わしい現地での溶接作業等を一切省略することが出来る。これによって、従来、後付けしていて発生した溶接作業に係る問題、例えば、補修塗装の色合わせ等の問題を解消することが出来る。しかも、トルクレンチだけで簡単に固定出来るので、高所でも安全に取り付けることが出来る。
【0026】
このクレーン用ストッパは、現物合わせでランウエイガーダの任意の位置に取り付けることが出来るので、クレーンの左右のサドルの端部がクレーン用ストッパに同時に当接出来るように簡単に調整することが出来、しかも、走行のクレーン寄り寸法を出来るだけ小さく設定することが出来る。
【0027】
また、本発明のクレーン用ストッパの構造は、軽量、シンプルであって、工場での量産が可能であるので、安価に製作することが出来る。また、後から荷役レイアウトの変更が発生した場合においても、クレーン用ストッパの移設作業を容易に行うことが出来る。さらに、本発明のクレーン用ストッパの天地を反対にすれば、サスペンション形クレーンの走行レール(走行はり)のストッパとしても利用することが出来る。また、調整ライナーと締結手段の長さによって、各種のサイズのランウエイガーダに容易に対応することが出来る。
【0028】
また、本発明のクレーン用ストッパは、嵌合溝の形状を若干斜め上に向けて形成したので、嵌合溝の挿入側端面と、ランウエイガーダの上面とが面接触し、この部位が支点となりフレーム材を締結手段によって締付けた際、テコの応用によってクレーン用ストッパとランウェイガーダとを堅固に締結固定させることが出来る。これによって、クレーンがストッパに衝突した際の衝撃によるずれを完全に回避することが出来る。さらに、嵌合溝の奥側部分に、テーパ形状または丸み形状を形成したので、嵌合溝の奥側部分と、ランウェイガーダのフランジ部の最外縁下部との間にクサビ効果が生じてより堅固な固定が出来る。
【0029】
また、本発明のクレーン用ストッパは、バッファプレートにバッファを取り付けたので、バッファが装備されていないクレーンサドルに対しても、このクレーン用ストッパを対応することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の要部を概略的に示した一部断面図である。
【図2】図1のものの上面図である。
【図3】図1のものの右側面図である。
【図4】図1に示す片側のフレーム材の正面図である。
【図5】図1のもののランウェイガーダのフランジ部と、フレーム材の嵌合溝との嵌合を拡大して示した模式図である。
【図6】図1のもののランウェイガーダのフランジ部と、フレーム材の嵌合溝との嵌合を拡大して示した模式図である。
【図7】本発明に係る調整ライナーの正面図である。
【図8】図7に示すものの左側面図である。
【図9】本発明のクレーン用ストッパを幅狭のフランジ部に装着したところを示す正面図である。
【図10】本発明のクレーン用ストッパを幅広のフランジ部に装着したところを示す正面図である。
【符号の説明】
1 ランウェイガーダ、2 フランジ部、2a 最外縁下部、3 クレーン用ストッパ、4 フレーム材、5 バッファ、6 バッファプレート、7 セットボルト、8 側板部、9 背面部、10 嵌合溝、10A テーパ形状、10B 丸み形状、15 ナット
Claims (2)
- 断面コ字状の一対のフレーム材の各側板部に、挿入側から奥側へ向けて斜め上に延びてランウェイガーダのフランジ部が嵌合される嵌合溝を形成すると共に、前記ランウェイガーダの前記フランジ部の最外縁下部と接する前記嵌合溝の奥側部を、テーパ形状または丸み形状に形成し、前記一対のフレーム材を、その背面部同士を対向させ、前記嵌合溝をランウェイガーダのフランジ部に該フランジ部の両側方から挟み込むように挿入すると共に、該一対のフレーム材を固定する締結手段を設け、前記一対のフレーム材の側板部にクレーンサドルが当接するバッファプレートを設けたことを特徴とするクレーン用ストッパ。
- 前記バッファプレートの、クレーンサドルに対向する部位にバッファを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のクレーン用ストッパ。
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