JP4550961B2 - 通電焼結用焼結型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通電焼結用の焼結型に関し、詳細には、焼結材料の厚さ方向に沿って段階的に組成及び物性が異なっていくセラミックス−ステンレス系の傾斜機能性材料を通電焼結方法で焼結するのに適した通電焼結用の焼結型に関する。
【0002】
近年通電焼結にも改良が加えられ、例えば本出願人により提案された放電プラズマ焼結、放電焼結或いはプラズマ活性化焼結を含む、パルス電流を利用して焼結を行うパルス通電加圧焼結法によれば、本来接合が困難な異なる材質の材料、例えばステンレス鋼と銅、セラミックスと各種金属等の材料を焼結により一体的に接合させることが可能になってきた。この場合、100%純粋の材料から成る二つの材料層を重ねて焼結して一体化するよりも、その二つの材料層の間に二つの材料の混合比を変えた層を複数設けることによって、更には同一の材料の焼結体を作る場合でもその材料の粉体の粒度を順次変化させることによって、焼結品に傾斜機能(焼結品の一方の表面側から他方の表面側にその焼結品の特性が徐々に変化している状態)を与えてその特性を一段と向上させることが可能である。このような傾斜機能を有する材料(以下傾斜機能性材料と呼ぶ。)を焼結するためには、一つの焼結型内に材質、混合比及び粒度の少なくとも一つが異なる複数種類の粉体を所望の厚さで精密に充填し、焼結しなければならない。
【0003】
ところで、通電焼結のうち粉末材料に所定の圧力を加えながらパルス電流を流して焼結を行う放電プラズマ焼結法(以下SPS焼結法)では、大きなパルス電流を流して焼結される材料内部からの発熱作用を利用しており、傾斜機能性材料を焼結する場合にその大きさに伴うパルス電流の特性上、寸法効果及び形状効果の影響を受け易い。これは、SPS焼結法の特徴として、良好な焼結体を得るための必要条件として、パルス電流を適切に制御することと、焼結終了段階におけるジュール熱による保温の状態を適切に制御することが挙げられるが、パルス電流は被焼結材料の中心部に流れる電流値と表皮効果による被焼結材料の外周部に流れる電流値が他の場所に比較して高くなる傾向があるため、被焼結材料、したがって焼結体の直径が増大するにしたがって中心部を流れるパルス電流による粉体の自己発熱効果と焼結型に流れるパルス電流によるジュール発熱効果が、焼結体中心部と外周部との間で熱的平衡状態に至らず、不均一部を発生し易いためと考えられる。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、SPS焼結法で使用される焼結型は、その材料の種類或いは被焼結材料の材質等により決定する必要がある。このため、本出願人による特願平7−300375号に教示されるように、種々の外周形状を有する全体として円筒型の焼結型が提案された。本発明者等はかかる種々の外周形状、寸法を有する焼結型を使用して種々の傾斜機能性材料について焼結試験を行って来た。その結果、同じ材料を同じ焼結条件(焼結電流、焼結圧力、通電時間等)下で焼結しても、焼結された製品(焼結品)断面組織、物理的特性等が焼結型の形状及び寸法によって変わることを見出した。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、特定の傾斜機能性材料の焼結に適した通電焼結用の焼結型を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、セラミックス−ステンレス鋼系の傾斜機能性材料の焼結に適した形状及び寸法を有する通電焼結用の焼結型を提供することである。
本発明が解決しようとする別の課題は、ジルコニア及びステンレス鋼を主たる母材とする傾斜機能性材料の焼結に適した形状及び寸法を有する通電焼結用の焼結型を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願の一つの発明は、セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO 2 (3Y)で、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、D2が20mmより大で150mm以下のとき前記面積比が1.52ないし2.40であるように構成されている。
本願の他の発明は、セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO 2 (3Y)で、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、前記D2が20mm以下のとき小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比が2.08ないし3.12であり、かつD2が20mmより大で150mm以下のとき前記面積比が1.52ないし2.40である
上記二つの発明において、小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比を上記のように限定したのは、上部にジルコニアに必要な1,200℃ないし1,400℃、下部にステンレス鋼に必要な830℃ないし1,050℃の焼結温度を生じせしめ、小径部と大径部との間に100℃ないし350℃の温度勾配を付与できるからである。
また別の発明は、セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO 2 (3Y)及び20重量%のアルミナを含み、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、D2が20mmより大で150mm以下のとき前記面積比が1.24ないし2.70であるように構成されている。
本願の更に別の発明は、セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO 2 (3Y)及び20重量%のアルミナを含み、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、前記D2が20mm以下のとき小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比が1.69ないし3.51であり、かつD2が20mmより大で150mm以下のとき前記面積比が1.24ないし2.70であるように構成されている。
上記二つの発明において、小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比上記のように限定したのは、ZrO2(3Y)ジルコニアに20重量%のアルミナが分散された複合セラミックスの場合、緻密かのためのSPS焼結温度が150℃ほどZrO2(3Y)単体の場合よりも高くする必要があるからである。
【0007】
上記通電焼結用焼結型において、前記テーパー部分の軸方向長さが被焼結材料の厚さと同じ又はそれ以上であってもよく、また、前記焼結型がグラファイトでつくられていても良い。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
まず、図1及び図2を参照してセラミックスとして部分安定化ジルコニアZrO2(3Y)(ジルコニアZrO2にY2O3を3mol%含む)を使用しかつステンレス鋼としてSUS410Lを使用したセラミックス−ステンレス系傾斜機能性材料のSPS焼結について説明する。
【0009】
実施例1
前述のSPS焼結法によれば、互いに性質の異なるセラミックスと金属とを焼結して一体化できるとは言え、全てのセラミックスと全ての金属とをランダムに組み合わせて実用的に焼結させることができるわけではなく、特定のセラミックスに対してはそれに合う性質を有する金属を選ぶ必要がある。本実施例においては、まず、セラミックスとして工業的に利用可能性が高い部分安定化ジルコニアZrO2(3Y)を選んだ。このZrO2(3Y)はジルコニアZrO2にY2O3を3mol%含む酸化物系のセラミックスであり、外部応力に対して強い性質を有し、工業的に利用可能性が高い。次に金属材料としては前記ステンレス鋼としてZrO2(3Y)との熱膨張率差、同時焼結の可否、焼結体の強度等を考慮してCr系でフェライト系のステンレス鋼のSUS410Lを選んだ。
【0010】
まず、図1に示されるように、貫通する穴2と、下部の外径が大きい大径部3と、大径部3から軸方向(図1で上方向)に隔てられていて外径が小さい小径部4と、大径部3と小径部4との間にあって大径部から小径部に直線的に外径が変化するテーパー部5とを有する焼結型1を用意した。焼結型1は、SPS焼結に適するようにグラファイトでつくった。そして、その焼結型1の穴2の下部に下プレスコア6を挿入しておいた。一方、SUS410L100%の粉末(平均粒子径9μm)材料と、平均粒径サブミクロンを有するZrO2(3Y)100%の粉末材料とを用意し、次に、これらの2種類の材料を混合比を変えた複数種類の混合粉末材料を用意した。この実施例では、体積分率でSUS410L90%でZrO2(3Y)10%からSUS410L10%でZrO2(3Y)90%まで10%刻みで混合比を変えた9種類の混合粉末材料をつくった。これらの粉末材料を焼結型1内に、SUS410L100%の粉末材料を最下層にしてその上にSUS410Lの混合比の高い混合粉末材料から上記混合比の異なる9種類の混合粉末材料を、更に最上部にZrO2(3Y)100%の粉末材料を順に層状に充填した。したがって層の数は全体で11層になった。各層の厚さは、SUS410L100%及びZrO2(3Y)100%の粉末材料を層厚3mmとしその他の混合粉末材料を層厚1mmとした。なお、1層の充填毎に充填された粉末材料に圧力を加えて予備加圧しておいた。焼結型1内への粉末材料の充填が完了した後焼結型1の穴2内には上部から上プレスコア7を挿入した。これら下及び上プレスコアの材料としてグラファイトを使用した。
【0011】
上記のように充填が完了した焼結型1を、図2に示されるように、SPS焼結機10の下部電極11と上部電極12との間に設置し、下部電極11で焼結型1及び下プレスコア6を支えかつ上部電極12で上プレスコアを所定の圧力で加圧すると同時に所定の値のパルス電流を流して焼結を行った。焼結型の各部の寸法を、図3に示されるようにした場合に、穴2の内径をD2が20mm、30mm、50mm、80mm、100mm及び150mmの焼結型について、大径部3の外径をD3、小径部の外径をD4、焼結型全体の高さすなわち軸方向長さH1、大径部3の高さすなわち軸方向長さH3、小径部4の高さすなわち軸方向長さH4そしてテーパー部5の高さすなわち軸方向長さH5をそれぞれ変えた多数の焼結型を使用して焼結試験を行った。そして焼結によって得られた製品すなわち焼結体の断面微構造組織、硬度分布及び強度等に付いて検査した。
【0012】
その結果、D2が上記6種類の大きさの焼結型について、焼結条件(焼結圧力、焼結電流、通電時間等)が同じでも上記小径部の有効断面積S4=π(D42−D22)/4と大径部3の有効断面積S3=π(D32−D22)/4との比ρ1(ρ1=S3/S4)が表1に示される値の範囲内にあるときが焼結体になり、剥離、マイクロクラックなどのない緻密でバラツキの少ない均質状態の最適な焼結結果を得ることができた。
表 1
D2(mm) S3(cm2) S4(cm2) 比率ρ1
20 50.2 19.6 2.08〜3.12
30 78.5 38.5 1.60〜2.40
50 95.0 50.2 1.52〜2.28
80 176.6 95.0 1.52〜2.28
100 254.3 132.7 1.52〜2.28
150 1.60〜2.40
セラミックスとしてZrO2(3Y)を使用しかつステンレス鋼としてSUS410Lを使用した場合、前記面積比ρ1が上記範囲から外れると焼結型外壁部を測温点とするSPS焼結温度において、温度傾斜が100℃以下又は300℃以上となり過小、或いは過大となるため、SPS焼結用の温度傾斜焼結型としては適さない。
【0013】
上記において、テーパー部分5の高さすなわち軸方向長さH5は、全層の数が例えば1層或いは2層のように極端に少なくなければ、層の数には影響されず焼結される粉体の層全体の合計厚さHj以上であることが望ましい。その理由は小径部と大径部との温度勾配を利用するSPS温度傾斜焼結法において適当な温度差を適切に発現させるためである。また、上記のように焼結型の下部の外径が大きくなっている場合、最下部にステンレス鋼100%の粉末材料の層を充填し、その上にステンレス鋼の含有量の多い混合粉末材料の層から順に充填するのは、大径部(下部)の方が上部に対しより低温部となり上部に向けて徐々に高温部となるため緻密焼結体を得る上でステンレス鋼成分の多い組成層を下部に配置するためである。
【0014】
実施例2
セラミックスとして部分安定化ジルコニアZrO2(3Y)に20重量%のアルミナ(Al2O3)を含ませた粉末材料をかつステンレスとしてSUS410Lの粉末を用いて上記と同様に種々の寸法を有する焼結型を使用して焼結実験を行った。その結果最適な面積比ρ2は以下の表2示される値の範囲内にあるときが最適な焼結結果を得ることができた。
表 2
D2(mm) S3(cm2) S4(cm2) 比率ρ2
20 50.2 19.6 1.69〜3.51
30 78.5 38.5 1.30〜2.70
50 95.0 50.2 1.24〜2.57
80 176.6 95.0 1.24〜2.57
100 254.3 132.7 1.24〜2.57
150 1.30〜2.70
この実施例2の場合上記範囲を外れると焼結型外壁部を測温点とするSPS焼結温度において、温度傾斜が100℃以下又は300℃以上となり過小、或いは過大となるため、SPS焼結法の焼結型としては適しない。
【0015】
【効果】
本発明によれば、セラミックス及びステンレス鋼を母材とする傾斜機能性材料の焼結に最適の焼結型が得られ、それによって最適の焼結体を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】SPS焼結法で使用される焼結型の断面をその中に充填された被焼結材料と共に示す断面図である。
【図2】図1に示された焼結型を使用したSPS焼結の原理を示す断面図である。
【図3】本発明による焼結型の各部の寸法を示す図である。
【符号の説明】
1 焼結型 2 穴
3 大径部 4 小径部
5 テーパー部
Claims (2)
- セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO2(3Y)で、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、D2が30mm以上で150mm以下のとき小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比が1.60ないし2.28であり、前記小径部分に前記セラミックスを、前記大径部分に前記ステンレス鋼を配置して焼結し、
前記テーパー部分の軸方向長さが被焼結材料の厚さと同じ又はそれ以上であり、
前記焼結型がグラファイトでつくられている通電焼結用焼結型。 - セラミックス及びステンレス鋼の2種類の母材から成る傾斜機能性材料を通電焼結するための焼結型において、
前記セラミックスがZrO2(3Y)及び20重量%のアルミナを含み、前記ステンレス鋼がSUS410Lであり、
前記焼結型は、略均一の直径D2の貫通穴と、互いに軸方向に隔てられていて外周の直径が小さい小径部分と外周の直径が大きい大径部分と、前記小径部分と大径部分との間のテーパー部分とを有し、D2が20mm以上で150mm以下のとき小径部分の有効断面積S4と大径部分の有効断面積S3との面積比が1.69ないし2.57であり、前記小径部分に前記セラミックスを、前記大径部分に前記ステンレス鋼を配置して焼結し、
前記テーパー部分の軸方向長さが被焼結材料の厚さと同じ又はそれ以上であり、
前記焼結型がグラファイトでつくられている通電焼結用焼結型。
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