JP4548566B2 - 脱酸素多層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は脱酸素機能を有するフィルムまたはシートに関する。より詳しくは、食品、医薬品や金属製品などの、酸素の影響を受けて変質し易い各種製品の酸化を防止する目的を持つ脱酸素体または脱酸素性容器を構成するために用いられる、脱酸素多層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品、金属製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種製品の酸化を防止する目的で、酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粒状または粉状の脱酸素組成物を小袋に詰めたものである。これを改良するものとして、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、脱酸素組成物を固定したフィルムまたはシート状のものが考えられている。
【0003】
フィルムまたはシートの形状とするためには、熱可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して、粒状または粉状の脱酸素組成物と複合化する方法が簡便である。
しかし、この複合化したフィルムまたはシートをそのまま用いると、この脱酸素体と内容物との接触、特に液体との接触により、脱酸素組成物による内容物の汚染を発生させる危険性がある。この対策として、他の遮蔽層または遮蔽用の包装体でこの単層の脱酸素層を覆えばよいことになるが、フィルム又はシートの特性を生かすためには、他の遮蔽層で脱酸素層を密着させて覆う構成が理想的である。このような構成例として特開平8−72941号公報等がある。
【0004】
このような脱酸素性のフィルムまたはシートは、樹脂に脱酸素組成物を練り込んでいるため、小袋状の脱酸素剤に比べ脱酸素速度が遅いという問題点がある。
これに対処するために、脱酸素層を延伸時に多孔化し、その上面を無孔質な遮蔽層で保護する多層構成とすると、酸素透過速度が大きく、脱酸素剤の露出または溶出のない脱酸素性のフィルムまたはシートを作製できることが、特開平9−234811号公報及び特開平10−264279号公報に示されている。
【0005】
しかし、脱酸素層を延伸しても遮蔽層が酸素透過性に優れていないと、良好な脱酸素速度を得ることには限界がある。このため、特開平9−234811号公報及び特開平10−264279号公報には、遮蔽層と脱酸素層との間に、多孔化した層を設け脱酸素速度を損なうことなく脱酸素剤の露出を防止する方法が開示されている。
【0006】
【解決するべき課題】
遮蔽層の酸素透過性を向上させるためには、遮蔽層をできるだけ薄くすることが好ましい。しかしながら、遮蔽層を薄くすると、脱酸素層中の脱酸素成分が遮蔽層を突き破り多層体表面に露出するおそれがある。また、多孔化により、空隙が連続的になって液体を含む内容物から浸みだした液体が脱酸素層にまで浸透してしまったり、多孔化した層と脱酸素層との層間強度が弱くなるという問題点がある。
本発明の解決すべき課題は、鉄粉等の脱酸素剤成分の多層体表面への突き出しを防止しつつ、耐液性が高く、脱酸素速度の大きな脱酸素多層体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱酸素多層体の酸素透過層に、(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び(C)無機物粉体を含み、かつ、(A)ポリオレフィン系樹脂の融点が(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より50℃以上低い組み合わせからなる樹脂組成物を延伸してなる層を用いることにより、脱酸素組成物が表面に突き出すことを防止しつつ、脱酸素速度を高くすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び(C)無機物粉体からなる樹脂組成物を延伸してなる延伸フィルムであって、(A)ポリオレフィン系樹脂と(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂の組み合わせが、基材となるポリオレフィン系樹脂の融点がこれに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より50℃以上低い組み合わせを用い、酸素透過性を向上させたことを特徴とする。
【0009】
本発明において、各粒子の平均粒径は、相当する層について粒子の直径を測定し、その平均値を求めることにより測定される。本発明の脱酸素多層体を包装容器として用いる場合は、脱酸素層の片面を酸素透過層と積層し、もう一方の面を酸素透過性の低いガスバリア層と積層し、かかる多層体の酸素透過層を容器内面に配置し、ガスバリア層を容器外面に配置する。酸素透過層は、隣接する他のガスバリア性材料の熱可塑性樹脂表面層または脱酸素多層体の酸素透過層を構成する熱可塑性樹脂と共にヒートシールされ、容器の密閉性を保持するヒートシール層となる。
【0010】
本発明の酸素透過層は、(A)ポリオレフィン系樹脂を基材とする樹脂組成物からなる。ポリオレフィン系樹脂は、気体透過性が高い方が好ましく、酸素透過度が100cm3/m2・24hr・atm(25℃、RH90%、20μm)以上のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。具体的なポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン類が挙げられる。さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン系共重合体を用いてもよい。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系共重合体もしくはプロピレン系共重合体である。
【0011】
酸素透過層の基材となる熱可塑性樹脂樹脂は、単独のモノマー種から重合された高分子のみでなく、各種の共重合体、樹脂の混合体でもよく、非極性または低極性の高分子が好ましい。また、酸素透過層には脱酸素層のマトリックス成分となる熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、異なる樹脂を用いる場合には、両者の熱融着が可能な程度に相溶性を持っている熱可塑性樹脂が好ましい。
【0012】
酸素透過層に用いられる具体的な樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体および共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体とその水素添加物、各種シリコン樹脂などがあり、さらにこれらの変成物、グラフト体、混合物などであってもよい。酸素透過層をヒートシール層とする場合には、ヒートシール性の点からオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンやポリエチレンあるいはエチレン共重合体またはプロピレン共重合体を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の酸素透過層に用いる(B)非相溶性の熱可塑性樹脂は、酸素透過層の基材となるポリオレフィン系樹脂に対して実質的に相溶せずに基材樹脂中に分散する熱可塑性樹脂である。非相溶性の熱可塑性樹脂自体は、必ずしも良好な気体透過性を有する樹脂種に限定されないが、通気性延伸フィルム全体として少しでも気体透過性を高めることができるため、非相溶性樹脂は、基材となる樹脂と同様、気体透過性が良い樹脂種が好ましい。
【0014】
具体的な樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類とその水素添加物、ポリスチレンなどの芳香族樹脂、各種シリコン樹脂やフッ素樹脂、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、6ナイロン、MXD6ナイロン、66ナイロン等のナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が例示される。あるいは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等の共重合体、あるいは、ABS等のように、2種以上を組み合わせた樹脂組成物を用いてもよい。
【0015】
亀裂を生じさせることにより酸素透過性を向上させるため、非相溶性樹脂自体が必ずしも良好な酸素透過性を有する必要はないが、酸素透過層全体から見れば、非相溶性樹脂として酸素透過性が良い熱可塑性樹脂の使用が好ましい。また、添加する非相溶性樹脂が酸素透過層を構成する樹脂よりも硬度の大きい材料とすると脱酸素組成物の突き出しを抑制する効果が大きい。
【0016】
非相溶性樹脂の平均粒径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μmである。
非相溶性樹脂の平均粒径が0.1μm以下であると、延伸時に樹脂界面で生じさせる亀裂が細かくなり、効果が低い。100μm以上では、延伸時に樹脂界面に生じさせる亀裂が疎らになり、酸素透過層の強度が低下する。非相溶性樹脂の添加量としては、1〜50wt%が好ましく、3〜30wt%がより好ましい。
添加量が少ないと亀裂の効果が小さく、多いと適切な分散粒径を形成しないか、亀裂が連続的になり脱酸素組成物の成分が酸素透過層を通して内容物に移行するおそれが発生する。
【0017】
このような要件を満たす基材となるポリオレフィン系樹脂とこれに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂の組み合わせとして、(A)ポリオレフィン系樹脂の融点が(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より50℃以上低い組み合わせであることが必要である。
さらに、(A)基材となるポリオレフィン系樹脂の軟化点が(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂の軟化点より50℃以上低い組み合わせが好ましく、100℃以上低い組み合わせがより好ましい。
【0018】
具体的には、基材となるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体又はプロピレン共重合体、非相溶性熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート又はポリアセタールである組み合わせが好ましく;基材となるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン又はポリプロピレン、非相溶性熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1又はその共重合体である組み合わせがより好ましく;基材となるポリオレフィン系樹脂が低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒低密度ポリエチレン又はポリプロピレン、非相溶性熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1である組み合わせが最も好ましい。
【0019】
基材樹脂中に分散する非相溶性熱可塑性樹脂粒子の平均分散粒径は、0.1〜100μmであり、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜25μmである。延伸操作により、基材樹脂と非相溶性熱可塑性樹脂との樹脂界面で亀裂を生じ、基材樹脂中に分散する非相溶性熱可塑性樹脂粒子の周囲に空隙を生じさせることにより気体透過性を向上させる。非相溶性樹脂粒子の平均分散粒径が0.1μm以下であると、延伸時に、非相溶性熱可塑性樹脂粒子の周囲に生じる空隙が細かくなりすぎ、酸素透過効果が低くなる。非相溶性樹脂粒子の平均分散粒径が100μm以上では、延伸時に非相溶性熱可塑性樹脂粒子の周囲に生じる空隙が疎らになり、やはり酸素透過効果が低くなる。
【0020】
このような要件を満たす樹脂として、熱可塑性樹脂がポリエチレン又はポリプロピレン、非相溶性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート又はポリアセタールの組み合わせが好ましく、熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレン又はポリプロピレン、非相溶性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1の組み合わせがより好ましく、熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒低密度ポリエチレン、非相溶性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1の組み合わせが最も好ましい。
【0021】
本発明の通気性延伸フィルムにおける非相溶性熱可塑性樹脂粒子の平均分散粒径は、フィルム断面を電子顕微鏡にて1000〜50000倍に拡大して写真を撮り、粒子粒径を測定し、粒子10個以上について平均値をとることにより求められる。粒子が楕円状である場合には、その長径をもって粒径とする。
【0022】
(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の配合量としては、熱可塑性樹脂成分(A)及び(B)の総量に対して1〜50重量%が好ましく、3〜40重量%がより好ましい。非相溶性の熱可塑性樹脂の配合量がこの範囲より少ないと延伸時に樹脂界面で生じる空隙の効果が小さくて優れた酸素透過性が得られず、多いと適切な分散粒径を形成しないか、空隙が連続的になって液体を含む内容物から浸みだした液体が脱酸素層にまで浸透が起こることがある。
【0023】
本発明の通気性延伸フィルムにおいては、樹脂成分以外の成分として、基材となる樹脂にもこれに非相溶性の熱可塑性樹脂にも相溶性のない(C)無機物粉体を配合する。配合した無機物粉体の一部は、基材樹脂と非相溶性熱可塑性樹脂の界面に介在して基材となる樹脂とこれに非相溶な熱可塑性樹脂との摩擦力を低下せしめ、延伸した際に、非相溶性熱可塑性樹脂の周囲に空隙を有効に生じるのを促進する効果をもたらす。
【0024】
酸素透過層の第3成分として、添加する樹脂よりも平均粒径の細かい無機物粉体を加えることにより、界面での亀裂の生成が促進される。本発明で用いられる無機物粉体としては、酸素透過層を構成する樹脂にも酸素透過層に添加する樹脂にも相溶性のない物質が好ましい。平均粒径が0.01〜10μmの粉状無機物が好ましい。無機物粉体の平均粒径は、酸素透過層に分散された非相溶性樹脂の粒径よりも小さいことが好ましい。
【0025】
添加した無機物粉体の一部は、酸素透過層に添加する非相溶性樹脂と酸素透過層を構成する樹脂との界面付近に分布し、酸素透過層を構成する基材樹脂と酸素透過層に添加した非相溶性樹脂との親和性ないし密着性を阻害し、酸素透過層を延伸した際に、酸素透過層を構成する熱可塑性樹脂が非相溶性樹脂との界面において亀裂を有効に生じせしめる効果をもたらす。
【0026】
(C)無機物粉体の配合量としては、樹脂成分の総量に対して1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。非相溶性の熱可塑性樹脂の配合量に対する無機物粉体の配合量の重量比は、通常0.1〜1、好ましくは0.3〜0.7である。この範囲の通気性延伸フィルムは、酸素透過性が大きい。
【0027】
無機物粉体の平均粒子径は、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましく、0.1〜5μmが最も好ましい。無機物粉体の平均粒子径が非相溶性熱可塑性樹脂の分散平均粒径よりも小さい場合が、延伸による界面での空隙の発生がより促進されるので好ましい。無機物粉体の平均粒子径は、フィルム断面を電子顕微鏡にて1000〜50000倍に拡大して写真を撮り、粒子粒径を測定し、粒子10個以上について平均値をとることにより求められる。粒子が楕円状である場合には、その長径をもって粒径とする。
【0028】
このような粉状無機物としては、酸素透過層を構成する熱可塑性樹脂及び非相溶性樹脂と親和性がない無機物が好ましい。
【0029】
無機物粉体としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、石膏、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水和ケイ酸、無水ケイ酸、ソーダ灰、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム;タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカゲル、クレー、各種セメント、火山灰、シラス、酸化鉄、カーボンブラック、活性炭、珪藻土、各種粘土鉱物などがある。これらの内から2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、粒径が細かい点、安全衛生性、安価である点等から酸化チタンが最も好ましい。
【0030】
本発明の酸素透過層においては、前記ポリオレフィン系樹脂成分及び非相溶性の熱可塑性樹脂粒子成分以外の成分として、その性質を変化させない範囲で、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類もしくはその水素添加物、ポリスチレンなどの芳香族樹脂、各種シリコーン樹脂やフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、6ナイロン、MXD6ナイロン、66ナイロン等のナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂、または、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂等の共重合体もしくは樹脂組成物を添加しても良い。
【0031】
本発明の酸素透過層を構成する、基材となるポリオレフィン系樹脂、非相溶性樹脂と無機物粉体の組み合わせの他に、必要に応じて、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、ヒートシール性向上剤、難燃剤、消臭剤などを、通気性延伸フィルムの機能を損なわない範囲で加えることができる。
【0032】
また、脱酸素層と酸素透過層との間に、ポリオレフィン等からなる接着層又はその他の層を設けても良い。
【0033】
酸素透過層に添加する非相溶性樹脂や粉状無機物(及び場合によりその他の成分)を添加する方法には、特に制限はない。これらを混練してマスターバッチを作製する方法でも良いし、酸素透過層を作製する際に熱溶融させた酸素透過層を構成する熱可塑性樹脂に添加混合する方法でも良い。いずれの方法においても、酸素透過層を構成する樹脂が溶融し、かつ、酸素透過層に分散させる非相溶性樹脂も溶融する温度で混合することが好ましい。
【0034】
酸素透過層は、酸素透過層を含むフィルムの温度が、(A)基材となるポリオレフィン樹脂の軟化点より30℃低い温度から該軟化点より10℃高い温度までの範囲で、かつ、(B)分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度で延伸することにより製造される。好ましくは、(A)基材となるポリオレフィン樹脂の軟化点より20℃低い温度から該軟化点温度までの範囲で、かつ、(B)分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度で延伸することにより製造される。
【0035】
例えば、基材となるポリオレフィン系樹脂、これに非相溶性の熱可塑性樹脂及び無機物粉体を混練して得られたマスターバッチを用いてフィルムを製膜後、所望により脱酸素層を積層し、延伸する方法が使用できる。混練操作は、基材となるポリオレフィン系樹脂の融点及びこれに混合する非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より高い温度で行うことが好ましい。フィルムを製膜後、さらに他のフィルムを積層し、延伸することもできる。
【0036】
また、基材となるポリオレフィン系樹脂からなる熱溶融状態のフィルムに非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び無機物粉体を添加し、所望により他のフィルムを積層して延伸する方法でも良いし、基材となるポリオレフィン系樹脂からなる熱溶融状態のフィルムに非相溶性の熱可塑性樹脂粒子(又は無機物粉体)を添加して得られたマスターバッチからなる熱溶融状態のフィルムに無機物粉体(又は非相溶性の熱可塑性樹脂粒子)を添加し、所望により他のフィルムを積層して延伸する方法でも良い。
【0037】
本発明の酸素透過層の延伸方法には、公知の延伸方法を使用でき、一軸延伸、二軸同時延伸、二軸逐次延伸のいずれの手法を用いてもよい。延伸倍率は、面積倍率(延伸前フィルム面積に対する延伸後フィルム面積)として1.2〜20倍とするのが好ましく、1.5〜10倍とするのがより好ましく、1.7〜8倍とするのが最も好ましい。延伸倍率がこの範囲より低いと、空隙の発生及び成長が不十分であり、延伸倍率がこの範囲より高いと、フィルムとしての機械的強度が低下する。
【0038】
延伸時のフィルムの酸素透過層の温度は、(A)基材となるポリオレフィン樹脂の軟化点より30℃低い温度から該軟化点より10℃高い温度までの範囲で、かつ、(B)分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度が好ましい。好ましくは、該軟化点より20℃低い温度から該軟化点温度までの範囲で、かつ、分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度が好ましい。
【0039】
本発明の酸素透過層は、ポリオレフィン系樹脂とこれに非相溶性の熱可塑性樹脂の粒子との界面には、1〜200μm、好ましくは10〜100μmの平均長さの空隙を有する。なお、ここでの平均空隙は、フィルム断面を電子顕微鏡にて1000〜50000倍に拡大して写真を撮り、延伸方向に生じた空隙の長さを測定し、粒子10個以上について平均値をとることにより求められる。隣り合う非相溶性の熱可塑性樹脂粒子まで空隙が到達している場合には、粒子間の距離をもって空隙の長さとすることができる。
この空隙により、本発明の酸素透過層は、JISK7126の差圧法に準じて測定される酸素透過度が20000cm3/m2・24hr・atm(25℃、RH50%、50μm)以上の高い通気性を有する。
【0040】
酸素透過層の厚さは、酸素透過率で表される脱酸素対象物の要求性能と樹脂の酸素透過係数とにより決定されるが、5〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましく、20〜60μmが最も好ましい。
【0041】
本発明の酸素透過層の厚さは、通常、5〜200μmが好ましく、10〜100μmがより好ましく、20〜80μmが最も好ましい。
本発明の通気性延伸フィルムは、本通気性延伸フィルム同士、又は、ポリオレフィン等のヒートシール層を有する他の通気性もしくは非通気性の材料のヒートシール層と熱融着することができる。
【0042】
本発明の(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び(C)無機物粉体からなり、延伸により、前記ポリオレフィン系樹脂と前記非相溶性の熱可塑性樹脂粒子との界面に空隙を有する、耐液性に優れた通気性延伸フィルムの片面又は両面には、通気性を有するフィルム又は補強材を積層し、積層フィルムとして使用することもできる。積層されるフィルムとしては、有孔プラスチックフィルム、微多孔プラスチックフィルム、不織布もしくは紙等の通気性を有するフィルム、又は、これらの2種以上を積層してなる通気性を有する積層フィルムが使用できる。
【0043】
脱酸素層に配合する脱酸素組成物としては、公知の脱酸素性組成物が使用できる。例えば、固体状の脱酸素組成物、または、液状の脱酸素組成物を適当な顆粒状物質に担持させた脱酸素組成物が使用できる。また、脱酸素層に水に難溶又は不溶の無機フィラーを多孔化補助剤として加えてもよい。
【0044】
中でも脱酸素層に用いる脱酸素組成物としては、鉄粉、アルミニウム粉、ケイ素粉などの金属粉、第一鉄塩などの無機塩類、アスコルビン酸とその塩類、カテコール、没食子酸、グリセリンなどのアルコールまたはフェノール類、ブタジエン、イソブチレンなどの不飽和炭化水素やトール油、大豆油などの不飽和脂肪酸など、不飽和結合を有する有機物を主剤とする脱酸素性組成物が好ましい。特に、鉄粉とハロゲン化金属塩類からなる組成物が好ましい。
【0045】
脱酸素組成物の粒径としては、最大粒径が脱酸素層の厚さ未満であることが好ましく、酸化速度を大きくし、他の層を傷つけない(貫通などのない)ためにはより細かいものが望ましい。通常、最大粒径として200μm以下、より好ましくは100μm以下のものから選ばれる。酸化速度を大きくしつつ、脱酸素層の機械特性を維持するためには、脱酸素組成物の脱酸素層に占める量は、10〜60wt%であることが好ましく、30〜55wt%がより好ましい。脱酸素層は延伸により多孔化してもよい。
【0046】
脱酸素層に用いる樹脂としては、鉄粉などの脱酸素組成物や難水溶性の無機フィラーを容易に混合、分散させられるものであれば、特に制限はなく、酸素透過層との相溶性、脱酸素多層フィルム又はシートの使用温度範囲などを考慮して選択される。
脱酸素層に用いられる具体的な樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体および共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体とその水素添加物、各種シリコン樹脂などがあり、さらにこれらの変成物、グラフト体、混合物などであってもよい。
【0047】
脱酸素層に用いる樹脂は、隣接層との相溶性を有することが好ましく、酸素透過層と同種の樹脂を用いて直接積層することが最も好ましい。
脱酸素層の厚さは、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜100μmが最も好ましい。
【0048】
脱酸素多層体の脱酸素層の酸素透過層を設けた面と反対の面には酸素透過性の低いガスバリア層を設けた積層フィルムとすることが好ましい。すなわち、本発明の一つは、前記した脱酸素多層体の脱酸素層の酸素透過層を設けた側と反対の側にガスバリア層が積層された脱酸素積層フィルムである。
ガスバリア層は、ガスバリア性材料からなり、容器外部から酸素が侵入するのを防ぐ働きをする。ガスバリア層を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロンMXD6などのポリアミド類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの低酸素透過性の樹脂、それらのコート品;アルミニウムなどの金属箔または金属蒸着樹脂;ケイ素酸化物などの無機化合物蒸着樹脂などが例示される。
【0049】
本発明の脱酸素多層体は、容器包装に用いる場合には、内容物に接する側に酸素透過層を配し、容器外空気と接する面にはガスバリア層を配する。酸素透過層はヒートシール層を兼ねることができる。酸素透過層の表面には、さらにポリオレフィン樹脂のみからなるヒートシール層を設けてシール強度を高めることも可能である。
【0050】
各層を構成する材料には、脱酸素性のフィルムおよびシートの脱酸素速度と脱酸素組成物の溶出の防止とが維持でき、さらに新たな溶出などの問題がなければ、前述の材料以外に種々の物質を加えることが可能である。この添加物としては、例えば、着色または隠蔽のための顔料や染料、酸化防止や分解防止などのための安定化成分、帯電防止成分、吸湿成分、脱臭成分、可塑化成分、難燃化成分などが挙げられる。また、同様に脱酸素性のフィルムおよびシートとしての性能に悪影響を与えない限り、印刷層や易開封層、易剥離層などの層を付加することが可能である。
【0051】
本発明を構成する各層の積層においては、通常の共押出や押出コーティング、押出ラミネートなどの公知の積層方法を用いることが可能である。
延伸においては、通常知られているように、1軸延伸、2軸同時延伸、2軸逐次延伸のいずれの手法を用いてもよい。延伸倍率は2〜20倍とするのが好ましい。
【0052】
また、酸素透過層を延伸した後に脱酸素層を接着、融着あるいは蒸着などにより積層しても良いし、あるいは酸素透過層と脱酸素層を別々に延伸した後に脱酸素層を接着、融着あるいは蒸着などにより積層しても良い。二枚の酸素透過層を延伸した後に、これを脱酸素層の両面に接着、融着あるいは蒸着などにより積層して、あるいは、二枚の酸素透過層を延伸した後に、これを別に延伸した脱酸素層の両面に接着、融着あるいは蒸着などにより積層して、脱酸素層の両面がともに酸素透過性の脱酸素多層体を得ることもできる。
【0053】
バリア層に樹脂を使用する場合は、酸素透過性樹脂層、脱酸素層及びバリア層を積層した後に延伸しても良い。バリア層に金属箔又は金属蒸着フィルム等の非延伸性材料を使用する場合には、バリア層を熱ラミネート、ドライラミネート、押出コーティングなどの通常の方法により接着または融着して、最終的な多層構造とすることができる。
【0054】
本発明の脱酸素多層体は、片面がガスバリア性で、他の片面が酸素を吸収することができる場合には、脱酸素包装材料として、その特性に応じ、例えば、包装袋や包装容器の一部や全部に種々の形で使用される。例えば、包装用容器のトップシールフィルムや、包装袋に使用することができる。また、内容物は固体だけでなく、液体、または固体と液体の混合物も可能である。両面がともに酸素透過性の脱酸素多層体は、通気性包装材料により包装して又は包装しないで、脱酸素剤として使用することができる。
【0055】
本発明の脱酸素多層体の脱酸素層側(酸素透過層の反対側)にガスバリア層を積層してなる脱酸素積層フィルムを用いた容器は、内容物から浸みだした液体が脱酸素層への浸透を起こすことがなく、脱酸素性能が高く、容器内雰囲気を脱酸素するのに要する時間が短くてすむので、内容物の保存性能が高い。
【0056】
【実施例】
以下、実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、樹脂組成物中の各粒子の平均粒径は、樹脂組成物断面を電子顕微鏡にて1000〜5000倍に拡大して写真をとり、10個以上の粒子映像について粒径を測定し、その平均値をとることにより決めた。粒子映像が楕円状である場合には、その長径を粒径とした。
【0057】
実施例1
最大粒径約50μmの鉄粉100重量部に対して塩化カルシウム2重量部を含む水溶液を噴霧し加熱乾燥させて得られた脱酸素組成物、生石灰及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製、商品名SP2040、メルトフローレート4.0g/10min、融点116℃)をドライブレンド後、30mm径2軸押出機にて混練、ストランドダイより押し出し、冷却、ペレタイザーで切断して、脱酸素性樹脂組成物のペレットを得た。該脱酸素性樹脂組成物の組成は、脱酸素組成物50wt%、生石灰2wt%、直鎖状低密度ポリエチレン48wt%である。
【0058】
前記脱酸素性樹脂組成物に使用したのと同じ直鎖状低密度ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂(三井化学(株)製、商品名DX845、メルトフローレート7〜11g/10min、融点236℃)、及び、無機物粉体として粉状酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名SR-1、平均粒径0.25μm)を、重量比で70:20:10となるように混合し、脱酸素性樹脂組成物と同様にして白色ペレットを作製した。この白色ペレットと前記脱酸素性樹脂組成物ペレットを用いて共押出により積層し、酸素透過層(120μm)と脱酸素層(150μm)の2層からなる中間積層体を得た。
【0059】
この中間積層体を一軸延伸機にて5倍(面積倍率4.5倍)に延伸して脱酸素性の積層体を得た。延伸後の積層体の各層の厚さは、酸素透過層40μm、脱酸素層50μmであった。次いで、この脱酸素層にバリア層としてアルミ箔をウレタン系接着剤(武田薬品工業(株)製商品名A−515と硬化剤A−50の混合比10:1組成物)を用いてドライラミネートにより接着し、脱酸素積層フィルムを得た。得られた脱酸素積層フィルム脱酸素層の鉄粉は、脱酸素積層フィルムの酸素透過層表面から十分に隠蔽され、多層フィルム表面への突き出しも認められなかった。
また、脱酸素積層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、酸素透過層において分散しているポリメチルペンテンの平均粒径は10μm、酸化チタンの平均粒径は0.25μm、直鎖状低密度ポリエチレンとポリ−4−メチルペンテン−1樹脂との界面にある空隙の平均長さは20μmであった。
【0060】
脱酸素積層フィルムを両面に用いた10cm×10cmの4方シール袋に、加湿用に水を含ませた脱脂綿及び200ccの空気を入れて、酸素透過層表面でヒートシールして密封した。25℃における4方シール袋内の酸素濃度の経時変化をガスクロマトグラフ((株)島津製作所、GC-14B)で追跡した。酸素濃度0.1vol%に達するまでの所要時間(以下、「脱酸素時間」と称する)を求め、脱酸素速度を評価した。
脱酸素時間は20時間であった。
【0061】
実施例2
酸素透過層の構成比を直鎖状低密度ポリエチレン:ポリメチルペンテン:酸化チタン=70:10:20(重量比)とした以外は実施例1と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積層フィルムの脱酸素層の鉄粉は、同フィルム表面から十分に隠蔽され、フィルム表面への突き出しも認められなかった。また、脱酸素多層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、酸素透過層において分散しているポリメチルペンテンの平均粒径は10μm、酸化チタンの平均粒径は0.25μm、直鎖状低密度ポリエチレンとポリ−4−メチルペンテン−1樹脂との界面にある空隙の平均長さは20μmであった。脱酸素積層フィルムの脱酸素時間は20時間であった。
【0062】
実施例3
粉状無機物として酸化チタンに替えて粉状炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名P−30、平均粒径4.3μm)を使用し、酸素透過層の組成を直鎖状低密度ポリエチレン:ポリメチルペンテン:炭酸カルシウム=70:20:10(重量比)とした他は、実施例1と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積層フィルムの脱酸素層の鉄粉は、フィルム表面から十分に隠蔽され、フィルム表面への突き出しも認められなかった。また、脱酸素積層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、酸素透過層において分散しているポリメチルペンテンの平均粒径は10μm、炭酸カルシウムの平均粒径は4.3μm、直鎖状低密度ポリエチレンとポリ−4−メチルペンテン−1樹脂との界面にある空隙の平均長さは40μmであった。脱酸素積層フィルムの脱酸素時間は50時間であった。
【0063】
実施例4
酸素透過層に添加する非相溶性樹脂をポリメチルペンテンに替えてMXナイロン(三菱ガス化学(株)製、商品名6007、メルトフローレート2.0g/10min、融点243℃)を使用し、実施例1と同様に直鎖状低密度ポリエチレン:MXナイロン:酸化チタン=70:20:10(重量比)とした。あらかじめ脱酸素層からなるシートを厚さ150μmで作製した後、前記樹脂組成物からなる酸素透過層を押出ラミネートにて厚さ150μmで積層した。その後、実施例1と同様の手順で延伸倍率4.5倍に延伸を行い、脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。
脱酸素積層フィルムの脱酸素層の鉄粉は、フィルム表面から十分に隠蔽され、フィルム表面への突き出しも認められなかった。また、脱酸素積層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、酸素透過層において分散しているMXナイロンの平均粒径は10μm、酸化チタンの平均粒径は0.25μm、直鎖状低密度ポリエチレンとMXナイロンとの界面にある空隙の平均長さは10μmであった。脱酸素積層フィルムの脱酸素時間は45時間であった。
【0064】
実施例5
最大粒径約50μmの鉄粉100重量部に対して塩化ナトリウム2重量部を含む水溶液を噴霧し加熱乾燥させて得られた脱酸素組成物、生石灰、活性炭、前記直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、商品名KC570S、メルトフローレート11.0g/10min、融点116℃)をドライブレンド後、実施例1と同様にして脱酸素性樹脂組成物のペレットを得た。該脱酸素性樹脂組成物の組成は、脱酸素組成物40wt%、生石灰2wt%、活性炭3wt%、直鎖状低密度ポリエチレン35wt%及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン20wt%である。
【0065】
酸素透過層に添加する非相溶性樹脂をポリメチルペンテンとMXナイロンの等量混合物を使用し、直鎖状低密度ポリエチレン:ポリメチルペンテン:MXナイロン:酸化チタン=55:15:20:10(重量比)とした。その他は実施例4と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積層フィルムの脱酸素層の鉄粉は、フィルム表面から十分に隠蔽され、フィルム表面への突き出しも認められなかった。また、脱酸素積層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、酸素透過層において分散しているポリメチルペンテンの平均粒径は10μm、MXナイロンの平均粒径は10μm、酸化チタンの平均粒径は0.25μm、直鎖状低密度ポリエチレンとポリ−4−メチルペンテン−1樹脂又はMXナイロンとの界面にある空隙の平均長さは20μmであった。脱酸素積層フィルムの脱酸素時間は50時間であった。
【0066】
実施例6
実施例1で用いた酸素透過層の樹脂を厚さ150μm単層のフィルムを押出した後、一軸延伸にて6倍(面積倍率5倍)に延伸し、厚さ45μmとした後、酸素透過層の上に実施例1で作製した脱酸素性樹脂組成物ペレットを厚さ30μmで押出ラミネートし、酸素吸収層を積層、酸素吸収層面をコロナ放電処理した以外は実施例1と同様にして延伸された多層フィルムを作製した。酸素透過層/酸素吸収層の2層フィルムを得た。さらに酸素吸収層面に印刷を施したナイロン、及びアルミナ蒸着PETをドライラミネートにて積層し、脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを得た。
脱酸素積層フィルムの構成は、酸素透過層(45μm)/酸素吸収層(30μm)/ナイロン/印刷(15μm)/アルミナ蒸着PET(12μm)である。
この脱酸素積層フィルムを10cm×8cmに切り取り、片面にLLDPE40μm/ナイロン15μm/アルミナ蒸着PET12μmの10cm×8cmのフィルムと貼り合わせ、3方ヒートシール袋を作製し、切り餅(80g)を1個充填し、密封した。
23℃下に保存し、1日目の袋内酸素濃度を測定したところ、0.1%以下であった。さらに、23℃・3ヶ月保存し、切り餅の外観を検査し、カビの発生がなく、臭気にも問題がなかった。
【0067】
実施例7
脱酸素層の熱可塑性樹脂をメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製SP2040)とし、脱酸素性樹脂組成物の組成を、脱酸素組成物45wt%、熱可塑性樹脂53wt%、生石灰2wt%とした。酸素透過層は、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製SP0540、MFR4.0g/10min、密度0.905g/cm3、融点93℃)70wt%、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製DX845、MFR9.0g/10min、密度0.833g/cm3、融点236℃)20wt%、実施例1で用いた粉状酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名SR-1、平均粒径0.25μm)10wt%とし、共押出にて両層を積層し、酸素透過層と脱酸素層との積層体を延伸倍率6〜6.5倍(面積倍率5.5〜6倍)で延伸した以外は実施例1と同様にして延伸された脱酸素多層フィルムを作製した。脱酸素多層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、酸素透過層において分散している直鎖状低密度ポリエチレンとポリ−4−メチルペンテン−1樹脂との界面にある空隙の平均長さは40μmであった。脱酸素多層フィルムにアルミ箔を貼りつけた脱酸素積層フィルムの脱酸素時間は23時間であった。
【0068】
比較例1
酸素透過層の組成を直鎖状低密度ポリエチレンのみとしてポリメチルペンテン及び酸化チタンを添加しなかった他は、実施例1と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積層フィルムには、鉄粉の突き出しは認められなかったが、脱酸素時間は500時間であった。
【0069】
比較例2
酸素透過層の組成を直鎖状低密度ポリエチレン:酸化チタン=90:10(重量比)としてポリメチルペンテンを添加しなかった他は、実施例1と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積フィルムには、鉄粉の突き出しは認められなかったが、その脱酸素時間は300時間であった。
【0070】
比較例3
粉状無機物として粒状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、商品名 R重炭、平均粒径20μm)を使用した他は、実施例3と同様にして延伸された脱酸素多層フィルム及び脱酸素積層フィルムを作製した。得られた脱酸素積層フィルムには、鉄粉の突き出しは認められなかったが、その脱酸素時間は300時間であった。
また、脱酸素積層フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、分散しているポリメチルペンテンの平均粒径は10μm、炭酸カルシウムの平均粒径は20μmであった。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、脱酸素層中の鉄粉等の脱酸素組成物が多層体の酸素透過層表面に露出することを防止しつつ、脱酸素速度の大きな脱酸素多層体または脱酸素積層フィルムを得ることができる。また、内容物から浸みだした液体の脱酸素層への浸透や多孔化した層と脱酸素層との層間強度の低下も起こさない。
本発明の脱酸素多層体または脱酸素積層フィルムを用いた容器は、脱酸素性能が高く、容器内雰囲気を脱酸素するのに要する時間が短くてすむので、内容物の保存作用が向上する。
Claims (11)
- 脱酸素組成物が配合された熱可塑性樹脂からなる脱酸素層、及び、脱酸素層の少なくとも一方の側に配した、熱可塑性樹脂からなる酸素透過層からなる脱酸素多層体であって、
酸素透過層が(A)基材となるポリオレフィン系樹脂、(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び(C)無機物粉体からなる樹脂組成物を延伸してなる延伸層であって、かつ、
該(A)ポリオレフィン系樹脂と(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の組み合わせが、(A)ポリオレフィン系樹脂の融点が(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より50℃以上低い組み合わせであって、さらに(C)無機物粉体の平均粒子径が(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の粒子の平均粒子径より小さいことを特徴とする脱酸素多層体。 - (C)無機物粉体の平均粒子径が0.001〜10μmである請求項1に記載の脱酸素多層体。
- (C)無機物粉体の配合量が樹脂成分の総量100重量部に対して1〜50重量部である請求項1に記載の脱酸素多層体。
- (C)無機物粉体が酸化チタン粉末である請求項1記載の脱酸素多層体。
- (B)非相溶性の熱可塑性樹脂粒子が0.1〜100μmの平均粒径を有して(A)ポリオレフィン系樹脂中に分散していることを特徴とする請求項1に記載の脱酸素多層体。
- (B)非相溶性の熱可塑性樹脂の配合量が酸素透過層の樹脂成分の総量に対して1〜50重量%である請求項1に記載の脱酸素多層体。
- (B)非相溶性の熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1である請求項1に記載の脱酸素多層体。
- 酸素透過層において、(A)ポリオレフィン系樹脂と(B)非相溶性の熱可塑性樹脂粒子との界面に1〜200μmの平均長さの空隙を有する請求項1に記載の脱酸素多層体。
- 酸素透過層が、(A)基材となるポリオレフィン樹脂の軟化点より30℃低い温度から該軟化点より10℃高い温度までの範囲で、かつ、(B)分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度で延伸されたものである請求項1に記載の脱酸素多層体。
- 請求項1に記載の脱酸素多層体の脱酸素層側にさらにガスバリア層が積層されてなる脱酸素積層フィルム。
- 脱酸素組成物が配合された熱可塑性樹脂からなる脱酸素層、及び、脱酸素層の少なくとも一方の側に配した、熱可塑性樹脂からなる酸素透過層からなる脱酸素多層体であって、酸素透過層が(A)基材となるポリオレフィン系樹脂、(B)これに分散する非相溶性の熱可塑性樹脂粒子及び(C)無機物粉体からなる樹脂組成物を延伸してなる延伸層であって、かつ、該(A)ポリオレフィン系樹脂と(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の組み合わせが、(A)ポリオレフィン系樹脂の融点が(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の融点より50℃以上低い組み合わせであって、さらに(C)無機物粉体の平均粒子径が(B)非相溶性の熱可塑性樹脂の粒子の平均粒子径より小さい脱酸素多層体を製造する方法であって、
酸素透過層を、(A)基材となるポリオレフィン樹脂の軟化点より30℃低い温度から該軟化点より10℃高い温度までの範囲で、かつ、(B)分散させる非相溶性樹脂の軟化点以下の温度で延伸したことを特徴とする脱酸素多層体の製造方法。
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