かかる安全確保装置では、例えば、検出感度などに対応する設定値を、実際のシステムに合わせて最適な値に調整する、いわゆる、実機調整が必要な場合がある。
従来では、上述のように、同一の項目を設定するための設定スイッチが、2個設けられて冗長化されているために、1回の調整の度に、2個の設定スイッチに対して、同一の設定操作を行なわねばならず、更に、通電中には、設定内容を変更ができないので、電源を遮断して設定内容を変更した後、再度、電源を投入しなければならず、実機調整における設定作業が面倒である。
また、2個の設定スイッチは、不用意な設定変更を防止するために、一方の設定スイッチが、装置の背面側などの操作が困難な位置に設けられる場合があり、かかる場合には、設定作業が一層面倒である。
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、複数の設定部を有する冗長化された装置における設定作業の効率化を図ることを目的とする。
(1)本発明の安全確保装置は、外部からの入力が与えられる入力部と、互いに同一の項目を設定するための複数の設定部からなる設定部の組と、通常運転用の動作モードと設定用の設定モードとを切り替えるモード切替部と、前記動作モードにおいて、前記設定部の組の設定内容および前記入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で安全信号を出力する一方、前記設定モードにおいて、前記設定部の組の内の特定の設定部の設定内容および前記入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で補助信号を出力する動作制御部とを備えている。
本発明の安全確保装置は、通常運転用の動作モードでは、外部からの入力および設定部の組の設定に基づいて、危険でないと判定される状態で安全信号を出力するものであって、安全機器、セーフティユニット、セーフティコンポーネント、セーフティコントローラといった称呼の如何は問わないものである。
入力部には、例えば、非常停止スイッチ、セーフティドアスイッチ、セーフティリミットスイッチ、セーフティライトカーテンなどからの安全側または危険側に対応する入力、モータの端子電圧、あるいは、各種センサからの入力などが与えられるのが好ましい。
設定部の組によって設定される項目は、実機での調整が必要な項目、例えば、感度調整などに必要な項目であるのが好ましい。
設定部の組は、互いに同一の項目を設定する複数の設定部から構成されて冗長化されており、複数の設定部には、通常運転の動作モードにおいては、同一内容の設定がなされる。
設定部における設定は、ロータリスイッチやボリウムなどの操作によって行ってもよいし、通信によって行ってもよい。
また、モード切替部における切り替えは、ディップスイッチなどの操作や配線の接続によって行ってもよいし、通信によって行ってもよい。
モード切替部は、設定モードまた動作モードに切り替えることができればよく、他のモードが存在してもよい。
設定部の組の内の特定の設定部は、予め定められている設定部であるのが好ましく、設定操作が容易な位置に設けられている設定部とするのが好ましい。
危険でないと判定される状態とは、動作を許可してもよいと判定される状態をいい、例えば、各種の工作機械、機器あるいは産業用ロボットなどの機械設備やプラント設備の動作を許可してもよいと判定される安全な状態、あるいは、作業者の動作、例えば、作業者の作業領域内への進入動作などを許可してもよいと判定される安全な状態をいう。したがって、機械設備やプラント設備の動作を禁止すべき危険と判定される状態では、安全信号は出力されない。
通常運転用の動作モードにおける安全信号を、当該安全確保装置の後段の機器の安全入力として用いるのが好ましく、後段の機器を、例えば、マグネットコンタクタ、モータコントローラ、可変モータ、PLC、あるいは、他の安全確保装置としてもよい。
設定部の組の複数の設定部は、通常運転用の動作モードにおいては、同一内容の設定が重複してされるので、設定部の組の同一の設定内容および入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で安全信号を出力する。また、設定モードにおいては、設定部の組の内の特定の設定部の設定内容および入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で補助信号を出力する。
したがって、同じ入力に対しては、設定モードにおいて出力される補助信号は、設定モードにおいて設定部の組の内の特定の設定部に設定されているのと同一の設定内容を、設定部の組の全ての設定部に重複して設定したとしたときに通常運転用の動作モードにおいて出力される安全信号と同様の信号となる。
例えば、通常運転用の動作モードにおいて、入力部の入力が、設定部の組の複数の設定部に設定した同一の閾値に達したときに、安全信号が出力されるのであれば、設定用の設定モードにおいて、入力部の入力が、設定部の組の内の特定の設定部に設定した前記閾値に達したときに、補助信号が出力されることになる。
したがって、安全信号の出力タイミングを、閾値の設定によって調整するような場合には、設定部の組の複数の設定部の全てに同じ閾値を設定して安全信号を出力させる必要はなく、設定部の組の内の特定の設定部に前記閾値を設定して補助信号を出力させ、この補助信号の出力タイミングに基づいて、閾値を調整すればよい。
通常運転用の動作モードで出力される安全信号は、該安全信号が与えられる後段の機器で、正規の信号であるか否かを診断できるように、予め定められたパターンのパルス信号、例えば、予め決められたハイレベルおよびローレベルの組み合わせの矩形波パルスや予め決められた周期やデューティ比の矩形波パルスとしてもよい。
補助信号は、設定用の設定モードで出力される信号、すなわち、設定のための信号であり、正規の信号であるか否かを診断できる必要はなく、したがって、予め定められたパターンのパルス信号などである必要はない。
なお、補助信号は、設定用の設定モードに限らず、通常運転用の動作モードにおいても出力するようにしてもよい。
補助信号をオシロスコープなどのモニタに表示したり、補助信号によって表示灯を点灯駆動したり、あるいは、補助信号を通信出力とすることによって、安全信号の出力のタイミングあるいは出力停止のタイミングなどを確認して、最適なタイミングとなるように、設定内容を変更調整することができる。
補助信号は、必ずしも当該安全確保装置の外部に出力する必要はなく、内部の表示回路などに出力し、当該安全確保装置の表示部で出力タイミングなどを表示するようにしてもよい。
本発明の安全確保装置によれば、設定用の設定モードを選択したときには、設定部の組の内の特定の設定部のみに対して設定を行なえば、その設定内容および入力部の入力に基づいて、通常運転用の動作モードで出力される安全信号と同様の補助信号が出力されるので、この補助信号を用いて、設定内容が適切であるか否かを確認して、設定を調整することができ、これによって、従来のように、同一項目を設定するために、複数の設定部に対して、同一の設定操作を行なう必要がなく、設定に要する工数が削減される。
(2)本発明の安全確保装置の好ましい実施形態では、前記動作制御部は、前記動作モードにおいて、前記設定部の組の設定内容および前記入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で動作許可信号を生成し、前記設定モードにおいて、前記設定部の組の内の特定の設定部の設定内容および前記入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で動作許可信号を生成する出力制御部と、前記動作モードにおいて、前記動作許可信号に基づいて安全信号を出力する安全出力部と、前記設定モードにおいて、前記動作許可信号に基づいて補助信号を出力する補助出力部とを備えている。
動作許可信号が生成されている状態を安全側とし、動作許可信号が生成されていない状態を危険側として、通常運転用の動作モードにおける動作許可信号に基づく安全信号を、当該安全確保装置の後段の機器の安全入力として用いるのが好ましい。
この実施形態によると、設定用の設定モードを選択したときには、設定部の組の内の特定の設定部のみに対して設定を行なえば、その設定内容および入力部の入力によって生成される動作許可信号に基づいて、通常運転用の動作モードで出力される安全信号と同様の補助信号が出力されるので、この補助信号を用いて、設定内容が適切であるか否かを確認して、設定を調整することができる。
(3)本発明の安全確保装置の好ましい実施形態では、前記安全出力部は、前記設定モードにおいて、前記安全信号を出力しないようにしてもよい。
この実施形態によると、設定用の設定モードでは、通常運転用の動作モードで出力される安全信号は出力されないので、安全信号を安全入力とする後段の機械設備等の動作が禁止されて、安全が確保されることになる。
(4)本発明の安全確保装置の一つの実施形態では、前記動作制御部は、前記設定部の組の設定内容が同一であるか否かを判定する設定判定部を備え、前記出力制御部は、前記動作モードにおいて、前記設定判定部の判定結果に基づいて、前記設定部の組の設定内容が同一でないときには、危険であると判定して前記動作許可信号を生成しない。
この実施形態によると、通常運転用の動作モードでは、設定部の組の複数の設定部の全てについて、同一の設定がされていないときには、正常な設定ではないとして、動作許可信号が生成されず、それに基づく安全信号が出力されないので、安全信号を安全入力とする後段の機械設備等の動作が禁止されて、安全が確保される。
(5)本発明の安全確保装置の他の実施形態では、前記動作制御部は、前記設定部の組の設定内容が同一であるか否かを判定する設定判定部を備え、前記出力制御部は、前記動作モードにおいて、前記設定判定部の判定結果に基づいて、前記設定部の組の内のいずれかの設定部の設定が変更されたときに、危険であると判定して前記動作許可信号を生成しない一方、前記設定モードにおいて、前記設定部の組の内の前記特定の設定部の設定が変更されたときに、変更された設定内容および前記入力部の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で前記動作許可信号を生成してもよい。
この実施形態では、通常運転用の動作モードでは、設定が変更されたときには、危険な状態に陥らないように、動作許可信号を生成せず、それに基づく安全信号が出力されないので、安全信号を安全入力とする後段の機械設備等の動作を禁止することにより、安全を確保することができる。また、設定用の設定モードでは、電源を切らなくても、設定部の組の内の特定の設定部の設定内容の変更を許容し、変更された設定内容に応じた補助信号を出力するので、補助信号を用いて、変更された設定内容が適切であるか否かを確認することが可能となり、従来のように、設定変更の際に、電源を遮断して設定内容を変更した後、再び電源を投入するといった必要がなく、設定工数が一層削減される。
(6)本発明の安全確保装置の他の実施形態では、前記モード切替部によって選択されているモードが、前記動作モードまたは前記設定モードのいずれのモードであるかを知らせる通知部を備えている。
通知部は、選択されているモードに応じた表示を行うようにしてもよいし、あるいは、選択されているモードに応じた出力信号を与えるようにしてもよい。
この実施形態によると、ユーザは、通知部によって、現在のモードが、設定モードであるか動作モードであるかを、容易に把握することができる。
(7)本発明の安全確保装置の更に他の実施形態では、前記設定部の組が、第1,第2の設定部からなり、前記特定の設定部としての前記第1の設定部は、当該安全確保装置が所要箇所に取り付けられた状態で、設定操作できる位置に設けられる一方、前記第2の設定部は、当該安全確保装置が前記所要箇所に取り付けられた状態では、設定操作できない位置に設けられる。
第1,第2の設定部は、例えば、ロータリスイッチやスライドスイッチなどの各種のスイッチやボリウムなどから構成されるのが好ましい。
所要箇所に取り付けられた状態とは、当該安全確保装置が、例えば、支持レールや制御パネルなどに取り付けられた状態をいう。
設定操作できない位置とは、例えば、所要箇所に取り付けられた状態では、目視できない位置、あるいは、制御パネルなどの所要箇所に取り付けられた状態では、制御パネルなどによって外部からの設定操作が妨げられる位置などをいう。
この実施形態によると、設定モードを選択して設定を行った後に、当該安全確保装置を、支持レールや制御パネルなどの所要箇所に取り付けた後には、第2の設定部の設定操作ができないので、不用意に設定内容が変更されたり、誤操作されることがない。
(8)本発明の安全確保装置の一つの実施形態では、前記入力部には、モータの逆起電力が入力され、前記設定部の組は、前記モータの停止判定用の設定時間を設定するものであり、前記安全信号が、前記モータによって駆動される機械が設置された作業領域内へ出入りするためのドアに設けられた電磁ロック式のドアスイッチへのロック解除信号であり、前記出力制御部は、前記動作モードにおいて、前記モータの逆起電力が、閾値以下になった時点から前記設定部の組に設定された前記設定時間が経過したときに、前記モータが停止したと判定して前記動作許可信号を生成する一方、前記設定モードにおいて、前記モータの逆起電力が、閾値以下になった時点から前記設定部の組の内の特定の設定部に設定された前記設定時間が経過したときに、前記モータが停止したと判定して前記動作許可信号を生成するものである。
この実施形態によると、設定モードを選択したときには、設定部の組の内の特定の設定部のみに対して、モータの停止判定用の設定時間の設定を行なえば、その設定時間および入力部の逆起電力に基づいて、安全信号であるロック解除信号と同様の補助信号が出力されるので、この補助信号を用いて、モータの停止判定用の設定時間が適切であるか否かを確認して、設定時間を調整することができるので、従来のように、複数の設定部に対して、同一の設定操作を行なう必要がなく、設定に要する工数が削減される。
また、設定用の設定モードにおいては、通常運転用の動作モードにおいて出力される安全信号であるロック解除信号を出力しないようにすることによって、設定モードにおいて、例えば、モータが十分に停止していない状態で、ドアスイッチのロックが解除されることがなく、安全が確保される。
本発明によれば、設定用の設定モードを選択したときには、設定部の組の内の特定の設定部のみに対して設定を行なえば、その設定内容および入力部の入力に基づいて、通常運転用の動作モードで出力される安全信号と同様の補助信号が出力されるので、この補助信号を用いて、設定内容が適切であるか否かを確認して、設定を調整することができ、これによって、従来のように、複数の設定部に対して、同一の設定操作を行なう必要がなく、設定に要する工数が削減される。
また、設定用の設定モードにおいては、通常運転用の動作モードにおいて出力される安全信号を出力しないようにすることによって、安全信号を安全入力とする後段の機械設備等の動作が禁止されて、安全が確保されることになる。
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る安全確保装置を備えるシステムの概略構成図である。
この安全確保システムは、三相交流の電源1と、該電源1に接続されて図示しない研削盤などの工作機械を駆動する三相のモータ2と、該モータ2の停止を検知して、安全信号としてロック解除信号を出力する本発明に係る安全確保装置としての停止検知ユニット3と、後述のようにモータ2および前記工作機械が配置された作業領域の出入口のドアに設置されて、停止検知ユニット3からのロック解除信号が与えられる電磁ロック式のドアスイッチ5と、該ドアスイッチ5および非常停止スイッチ6の出力に基づいて、電源の投入遮断を行うためのマグネットコンタクタ7のオンオフを制御するセーフティユニット18とを備えている。
開閉器としてのマグネットコンタクタ7の主接点(NO接点)は、モータ2の巻線の端子U,V,Wと電源1の各端子U,V,Wとの間に接続される。
モータ2および工作機械(図示せず)が設置された作業領域は、図2に示すように、安全柵で囲まれて区画されており、この安全柵には、作業領域への出入り口となるドア4が設置され、このドア4に、上述の電磁ロック式のドアスイッチ5が取付けられている。このドアスイッチ5は、例えば、スイッチ本体が、ドア4の固定枠側に取り付けられ、前記スイッチ本体の開口部に挿抜される操作キーが、ドア4の可動部側に取り付けられ、ドア4を閉止して、操作キーがスイッチ本体の開口部に挿入されると、機械的にロックがかかり、ドア4の開放を禁止する。また、停止検知ユニット3から、モータ2の停止を検知して安全信号であるロック解除信号がドアスイッチ5に与えられると、ソレノイドが動作することにより、ロックが解除されてドア4の開放が可能となって、作業者の作業領域への進入動作が許可される。
このドアスイッチ5は、図1のセーフティユニット18に対して、ドア4が閉止されている状態では、工作機械の駆動を許容する安全側の安全入力を与える一方、ドア4が開放されている状態では、工作機械の駆動を禁止する危険側の安全入力を与える。
図1の非常停止スイッチ6は、セーフティユニット18に対して、緊急時の作業者等の操作によって、工作機械の駆動を禁止する危険側の安全入力を与え、また、通常時は、工作機械の駆動を許容する安全側の安全入力を与える。
この実施形態のセーフティユニット18は、マイコンを搭載しており、非常停止スイッチ6およびドアスイッチ5からの安全入力に基づいて、プログラムに従って、マグネットコンタクタ7の主接点のオンオフを制御するものであり、非常停止スイッチ6およびドアスイッチ5からの安全入力が、いずれも安全側であることを条件に、マグネットコンタクタ7の主接点をオンしてモータ2に電源を供給する一方、非常停止スイッチ6またはドアスイッチ5からの安全入力のいずれか一方が、危険側であるときには、マグネットコンタクタ7の主接点をオフしてモータ2への電源を遮断する。
この実施形態の停止検知ユニット3は、モータ2の逆起電力(BEMF:Back ElectroMotive Force)およびマグネットコンタクタ7の接点状態に基づいて、モータ2の停止を検知するものである。
この停止検知ユニット3は、図3の正面図に示されるように、上下に複数の入出力用の端子21を備えるとともに、電源(PWR)、エラー状態(ERR)、出力状態(ES)、モータ2からの第1,第2の逆起電力の入力状態(CH1、CH2)、接点入力状態(EDM)などの各状態を、LEDでそれぞれ表示する表示部22を備えるとともに、後述のモータ2の停止判定のための設定時間を設定するための第1の設定部としての第1のロータリディップスイッチ23−1を備えている。また、表示部22は、設定モードであることを点滅表示する通知部としての設定モード表示部22aを備えている。
また、この停止検知ユニット3は、図4の背面図に示されるように、ケースの背面には、当該停止検知ユニット3を、支持レールとしてのDINレール24に取り付けるためのレール溝25を有しており、このレール溝25の上下両側の係合部を、DINレール24の上下の係合用端辺に係合させて図5の斜視図に示されるように、DINレール24に取り付けられる。
この停止検知ユニット3では、レール溝25の部分には、図4に示されるように、設定用の設定モード(SET)と通常運転用の動作モード(LOCK)とを切り替えるモード切替部としてのディップスイッチ26およびモータ2の停止判定のための設定時間を設定するための第2の設定部としての第2のロータリディップスイッチ23−2が設けられている。
正面(前面)側の第1のロータリディップスイッチ23−1および背面側の第2のロータリディップスイッチ23−2は、いずれもモータ2の停止判定用の設定時間を設定するものである。
このように、同一の項目であるモータの停止判定のための設定時間を設定する設定部として、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2が重複して2個設けられており、これらロータリディップスイッチ23−1,23−2によって、同一の項目を設定する設定部の組が構成される。
通常運転用の動作モードにおいては、設定部の組の第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の両方に設定されている同一の設定時間が有効であるのに対して、設定用の設定モードにおいては、設定部の組の内の特定の設定部としての第1のロータリディップスイッチ23−1に設定されている設定時間が有効となる。
この停止検知ユニット3は、図6に示すように、第1,第2の逆起電力入力部11,12を備えており、逆起電力として、三相の相間電圧がそれぞれ入力される。また、停止検知ユニット3は、マグネットコンタクタ7の接点状態を示すモニタ用の補助接点(NC接点)の入力が与えられる接点入力部13および処理を二重化するための二つのCPU8,9を備えている。
モータ2が停止しているか否かを判定する各CPU8,9は、マグネットコンタクタ7の主接点(NO接点)がオフしている状態、すなわち、マグネットコンタクタ7の補助接点(NC接点)がオンしている状態であって、かつ、第1,第2の逆起電力入力部11,12の逆起電力が、停止判定用の設定時間を用いた後述の判定基準を満たしたときに、モータ2が停止して危険でない状態であるとそれぞれ判定する。
そして、通常運転用の動作モードにおいては、設定部の組の第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の両方に設定されている同一の設定時間に基づいて、両CPU8,9のいずれもがモータ2が停止したと判定したときに、最終的にモータ2の停止、すなわち、危険でない状態と判定してモータ2の停止検知出力を、ドアスイッチ5に安全信号であるロック解除信号として与える。
また、設定用の設定モードにおいては、設定部の組の内の特定の設定部としての第1のロータリディップスイッチ23−1に設定されている設定時間に基づいて、両CPU8,9のいずれもがモータ2が停止して危険でない状態と判定したときに、ロック解除信号に代えて、補助信号を出力する。
通常運転用の動作モードで出力されるロック解除信号は、後段の機器への安全入力として用いることも可能であり、後段の機器において、正規の信号であるか否かを診断できるように、予め定められたパターンのパルス信号、例えば、予め決められたハイレベルおよびローレベルの組み合わせの矩形波パルスや予め決められた周期やデューティ比の矩形波パルスであるのが好ましい。
一方、補助信号は、設定用の設定モードでロック解除信号に代えて出力されるものであり、この補助信号の出力のタイミングによって、モータ2が停止と判定されるタイミングを把握することができる。
図7は、この実施形態の停止検知ユニット3のブロック図であり、図6に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
この停止検知ユニット3は、モータ2の逆起電力がそれぞれ入力される上述の第1,第2の逆起電力入力部11,12と、マグネットコンタクタ7の接点状態に対応した補助接点の接点入力が与えられる上述の接点入力部13と、設定モードと動作モードとを切替えるモード切替部としてのディップスイッチ26と、同一の項目であるモータの停止判定用の設定時間を設定する設定部の組を構成する第1,第2の設定部としての第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2と、通常運転用の動作モードにおいて、設定部の組の第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容および各入力部11,12,13の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で安全信号を出力する一方、設定用の設定モードにおいて、設定部の組の内の特定の設定部としての第1のロータリディップスイッチ23−1の設定内容および各入力部11,12,13の入力に基づいて、危険でないと判定される状態で補助信号を出力する動作制御部40とを備えている。
この実施形態では、動作制御部40は、第1,第2の逆起電力入力部11,12の逆起電力および接点入力部13に基づいて入力状態を判定する入力判定部27と、モード切替部26によるモードおよび第1,第2の設定部23−1,23−2の設定に基づいて設定状態を判定する設定判定部28と、入力判定部27からの入力状態および設定判定部28からの設定状態に基づいて、モータが停止しているか否かの停止判定を行うとともに、出力状態を決定する出力制御部29と、動作モードにおいて、安全信号としてロック解除信号を出力する安全出力部30と、設定モードにおいて、ロック解除信号と同様な補助信号を出力する補助出力部31とを備えている。
入力判定部27は、接点入力部13の入力に基づいて、マグネットコンタクタ7の主接点のオンオフ状態を判定するとともに、第1,第2の逆起電力入力部11,12の入力に基づいて、モータ2の逆起電力を判定して出力制御部29に与える。
設定判定部28は、モード切替部26によって設定されているモードを判定し、更に、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容を判定するとともに、両ロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容が一致しているか否かを判定して出力制御部29に与える。
入力判定部27、設定判定部28および出力制御部29などは、上述のCPU8,9によって構成される。
出力制御部29は、通常運転用の動作モードでは、設定部の組の第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の両方に設定されている同一の設定時間および接点入力部13、第1,第2の逆起電力入力部11,12の入力に基づいて、モータ2が停止して危険でない状態であると判定したときには、動作許可信号を生成し、安全出力部30は、この動作許可信号に応答して、安全信号であるロック解除信号を出力する。
また、出力制御部29は、設定用の設定モードでは、設定部の組の内の特定の設定部である第1のロータリディップスイッチ23−1で設定されている設定時間および接点入力部13、第1,第2の逆起電力入力部11,12の入力に基づいて、モータ2が停止して危険でない状態であると判定したときには、動作許可信号を生成し、補助出力部31は、この動作許可信号に応答して、補助信号を出力する。
したがって、設定モードで生成される補助信号は、第1のロータリディップスイッチ23−1に設定されている設定時間と同一の設定時間を、第2のロータリディップスイッチ23−2にも設定したとしたときに、同じ入力に対して動作モードで生成される動作許可信号と同じ信号となる。
この動作許可信号に応答して安全出力部30から出力される安全信号と、動作許可信号に応答して補助出力部31から出力される補助信号も同様の信号となる。すなわち、補助信号は、第1のロータリディップスイッチ23−1に設定されている設定時間と同一の設定時間を、第2のロータリディップスイッチ23−2にも設定したとしたときに、通常運転用の動作モードで出力される安全信号と同様の信号となる。
これによって、モータの停止判定用の設定時間を調整する場合に、設定部の組の第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の両方に同一の設定時間を設定して、動作モードで安全信号を出力させて停止判定のタイミングを確認する必要がなく、設定モードで設定部の組の内の特定の設定部である第1のロータリディップスイッチ23−1のみに設定時間を設定し、補助信号を出力させて停止判定のタイミングを確認することができる。すなわち、安全信号の出力のタイミングに代えて、補助信号の出力のタイミングを用いて、モータ2が停止と判定されるタイミングを確認することができる。
更に、この実施形態では、設定判定部28は、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容が同一であるか否かを判定し、出力制御部29は、通常運転用の動作モードにおいて、設定判定部28の判定結果に基づいて、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容が同一でないときには、危険であると判定して動作許可信号を生成しないようにしている。
また、出力制御部29は、通常運転用の動作モードにおいて、設定判定部28の判定結果に基づいて、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2のいずれかの設定が変更されたときに、危険であると判定して動作許可信号を生成しない一方、設定用の設定モードにおいて、特定の設定部である第1のロータリディップスイッチ23−1の設定が変更されたときに、変更された設定内容および入力判定部27の入力状態に基づいて、危険でないと判定される状態で動作許可信号を生成する。
次に、この実施形態の逆起電力に基づくモータ2の停止判定処理および各モードにおける各信号について更に詳細に説明する。ここで、マグネットコンタクタ7からの接点入力は、主接点がオフの状態、すなわち、電源が遮断された状態として説明する。
図8は、モータの停止判定処理および各モードにおける各信号の出力タイミングを説明するための図であり、同図(a)は逆起電力(BEMF)の変化を、同図(b)は停止判定出力をそれぞれ示している。また、同図(A−1)および(A−2)は、動作モードにおける安全信号および補助信号を示し、同図(B−1)および(B−2)は、設定モードにおける安全信号および補助信号を示している。
この実施形態の判定処理では、マグネットコンタクタ7の主接点がオフしてモータ2への電源の供給が遮断されて、図8(a)に示すように逆起電力が低下し、閾値L以下になった時点t1から図8(b)に示すユーザによる設定時間Tが経過したとき(t2)に、モータ2が停止したと判定するものである。
この図8(b)の設定時間Tを、上述の設定部の組である第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2で設定する。
この設定時間Tを長くすることにより、モータ2の回転が十分に低下したときに、モータ2の停止と判定するので、例えば、研削盤やフライス盤などを駆動するようなアプリケーションでは、モータ2の回転が、略完全に停止して研削盤等が略完全に停止したときに、モータ2の停止と判定することになり、十分な安全が確保できることになる。
一方、アプリケーションによっては、モータの動力を、ギヤ等の減速機構を介して工作機械に伝達するような場合があり、かかる場合には、モータの回転が略完全に停止するまで待たなくても前記工作機械が略停止しており、安全な状態となっている。したがって、かかる場合に、上述の設定時間Tを、安全を確保しつつ、不必要な待ち時間がなくなるように設定すればよい。
このように、モータの停止判定に用いる設定時間は、アプリケーションに応じて、ユーザが実機に合わせて調整する必要がある。
この実施形態では、実機における設定時間の調整において、設定工数を削減できるように、次のように構成している。
すなわち、この実施形態では、上述のように、設定時間を調整する設定時と通常の運転時とでモードを切り替えることができるように、設定用の設定モードと通常運転用の動作モードとの二つのモードを有しており、モード切替部としてのディップスイッチ26によってモードを切り替え選択できるように構成されている。
通常運転用の動作モードは、従来と同様の動作を行なうものであり、冗長化されている第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2の設定内容が同一でないとき、すなわち、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2で、異なる設定がされた状態で起動されるとロックアウトし、ロック解除信号が出力されることはない。また、通電中に、第1,第2のロータリディップスイッチの設定が変更されたときにも、ロックアウトする。ロックアウトしたときには、その原因が取り除かれない限りは、機械設備の再起動を行うことはできない。
したがって、この動作モードにおいて、実機に合わせて設定時間を調整しようとすると、電源を遮断して通電していない状態で、第1,第2のロータリディップスイッチに対して、同一内容の設定操作を行ない、再度、電源を投入してモータの停止のタイミングを確認するという作業を行わねばならず、上述の従来と同様に、設定作業が面倒である。
そこで、この実施形態では、動作モードとは別に、設定用の設定モードを設けており、この設定モードを選択することにより、次のようにして、設定時間を容易に調整できるようにしている。
すなわち、設定モードでは、通電中であっても、停止検知ユニット3の正面に配置されている設定部の組の内の特定の設定部である第1のロータリディップスイッチ23−1の設定のみを有効とし、安全信号であるロック解除信号の出力は行わず、第1のロータリディップスイッチ23−1の設定時間、第1,第2の逆起電力入力部11,12および接点入力部13の入力に基づいて、停止判定を行って、補助信号を出力するようにしている。
図8(B−1)および(B−2)は、設定モードにおいて、停止検知ユニット3の正面に配置されている第1のロータリディップスイッチ23−1によって、設定時間Tを設定した場合のモータ停止の際の安全信号および補助信号を示している。
モータ2への電源の供給が遮断されて、図8(a)に示すように逆起電力が低下し、閾値L以下になった時点t1から図8(b)に示す第1のロータリディップスイッチ23−1による設定時間Tが経過したとき(t2)にモータ2が停止したと判定し、図8(B−1)に示すように、安全信号は出力されることなく、図8(B−2)に示すように、補助信号が出力される。
このように設定モードでは、第1のロータリディップスイッチ23−1のみの操作によって停止判定用の設定時間を設定できるとともに、通電中に設定を変更することが可能であり、従来のように、電源を遮断して2個の設定スイッチに対して、同一の設定操作を行い、再度電源を投入するといった必要がなく、設定工数が大幅に削減される。
しかも、設定モードでは、安全信号であるのロック解除信号は、図8(B−1)に示すように出力されず、危険側の状態に維持されるので、ドアスイッチ5のロックが解除されることがない一方、第1のロータリディップスイッチ23−1の設定内容に応じた補助信号を与えるので、安全を確保しながら、補助信号を用いて、モータの停止判定のタイミングを確認することができる。
設定モードにおいて、適切なモータの停止判定の設定時間Tが確定された後は、電源を一旦遮断して、背面の第2のロータリディップスイッチ23−2を、前面の第1のロータリディップスイッチ23−1の設定時間Tに一致させ、動作モードに移行する。
図8(A−1)および(A−2)は、動作モードに移行した後のモータ停止の際の安全信号および補助信号を示している。
通常運転である動作モードでは、モータ2への電源の供給が遮断されて、図8(a)に示すように逆起電力が低下し、閾値L以下になった時点t1から図8(b)に示す第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2による設定時間Tが経過したとき(t2)にモータ2が停止したと判定し、図8(A−1)に示すように、安全信号が出力されるとともに、図8(A−2)に示すように、補助信号も安全信号と同じタイミングで出力される。
このように通常運転用の動作モードでは、従来と同様に、第1,第2のロータリディップスイッチ23−1,23−2による設定時間Tに基づいて、モータ2の停止が判定されて安全信号が出力されることになる。
なお、他の実施形態として、動作モードでは、補助信号を出力しないようにしてもよい。
図9は、以上の処理手順を説明するためのフローチャートである。
先ず、停止検知ユニット3の背面側のモード切替用のディップスイッチ26を操作して設定モードにし、停止検知ユニット3を、DINレールに取り付けて設定モードで起動する(ステップn1)。このとき、停止検知ユニット3の正面の設定モード表示部22aが点滅し、設定モードであることを表示する。
次に、停止検知ユニット3の正面の特定の設定部である第1のロータリディップスイッチ23−1を操作して、停止判定用の設定時間を設定し、実際にシステム全体を動作させて設定時間を調整する(ステップn2)。
すなわち、設定時間を第1のロータリディップスイッチ23−1を操作して設定した後、スタートボタン等を操作してモータ2を起動し、更に、ストップボタン等を操作してモータ2を停止させ、モータ2の停止する状態と、設定時間に基づく補助信号の出力タイミングとに基づいて、停止判定用の設定時間が適切であるか否かを判定する。補助信号の出力タイミングは、例えば、オシロスコープなどのモニタで確認する。
設定時間が適切であるか否か、すなわち、設定が確定したか否かを判断し(ステップn3)、確定していないときには、ステップn2に戻り、第1のロータリディップスイッチ23−1を操作して設定時間を再度調整し、モータ2を起動、停止させて、停止判定用の設定時間が適切であるか否かを再度判定する。
設定時間が適切であって、設定が確定したときには、電源を一旦遮断して、停止検知ユニット3を、DINレールから取り外し、背面の第2のロータリディップスイッチ23−2を、前面の第1のロータリディップスイッチ23−1の設定時間に一致させ(ステップn4)、モード切替スイッチ26を操作して、動作モードに切り替えて、停止検知ユニット3を、DINレールに取り付け、電源を投入して動作モードで起動し(ステップn5)、通常運転に移行して終了する。
このように、停止検知ユニット3の正面の第1のロータリディップスイッチ23−1のみを操作して、停止判定用の設定時間を設定し、補助信号を用いて、設定した停止判定用の設定時間が適切であるか否かを確認し、適切でないときには、再度、第1のロータリディップスイッチ23−1のみを操作して、停止判定用の設定時間を調製できるので、従来のように、調整の度に、電源を遮断して2個の設定スイッチに対して、同一の設定操作を行なって、再度電源を投入して設定内容を確認する必要がなく、設定工数が大幅に削減される。
また、設定モードでは、動作許可信号に基づいて安全信号が出力されないので、ドアスイッチ5のロックが解除されることはなく、設定中に、作業者が作業領域内に進入することができず、安全が確保される。
上述の実施形態では、モータの停止判定用の設定時間の調整に適用して説明したけれども、本発明は、設定時間に限らず、実機に合わせて調整の必要がある種々の設定に適用できるものであり、例えば、センサの感度調整などに適用することができる。
図10は、拡散反射型の光センサに適用した場合の概略構成図であり、同図において、32は光センサ33のセンサヘッドであり、34はセンサヘッド32に接続されたアンプユニットである。
かかる光センサ33は、反射光量によって検出対象35a,35bを検出するものであり、この検出出力を、安全信号として利用することにより、例えば、機械設備等の起動や停止を制御することができる。
かかる光センサ33を用いて、複数の検出対象の内の特定の検出対象を検出する必要がある場合には、投光量、受光量、あるいは、閾値といった設定項目を調整して最適な感度にする必要がある。
アンプユニット34には、例えば、同一の項目である投光量を設定する設定部の組を構成する第1,第2のボリウム36−1,36−2が設けられて冗長化されているとともに、上述の実施形態と同様に、設定モードと動作モードとを切り替えるモード切替用のスイッチ37が設けられている。投光量の設定を変更して感度を調整するときには、上述の実施形態と同様に、モード切替用のスイッチ37を操作して設定モードを選択し、設定部の組の内の特定の設定部である第1のボリウム36−1によって投光量を設定し、検出対象を検出し、検出出力と同様の補助出力を用いて、設定された投光量が適切であるか否かを判定し、最適な感度になるように投光量の設定を変更する。最適な感度となる投光量の設定が終了した後は、上述の実施形態と同様に、第2のボリウム36−2を、第1のボリウム36−1の設定に一致させ、モード切替用のスイッチ37を操作して動作モードに移行するものである。