本発明は、非常用炉心冷却設備に係り、自然循環冷却式受動安全沸騰水型原子炉(The Economic Simplified Boiling Water Reactor:以下、ESBWRという)に適用するのに好適な非常用炉心冷却設備に関する。
ESBWRは、圧力抑制プール、及び非常用炉心冷却設備として重力落下式炉心注水設備(Gravity-Driven Cooling System:以下、GDCSと称する)を有している(特許文献1)。圧力抑制プール及びGDCSは原子炉格納容器内に設置される。GDCSは爆破弁を設けた配管によって原子炉に連絡される。
冷却材喪失事故(LOCA)後に炉心に注水して再び溢水させる短期サブシステム(GDCS−ST)、及びGDCS−STの排出後において長期の冷却水の供給を行う長期サブシステム(GDCS−LT)を有する非常用炉心冷却設備が、特許文献2に記載されている。GDCS−ST及びGDCS−LTの各プールは、それぞれ、逆止弁、スクイブ弁(爆破弁)及び手動隔離保守弁を介して原子炉に接続されている。この非常用炉心冷却設備は原子炉格納容器内に設けられている。また、原子炉格納容器内に設けられた圧力抑制プール内の冷却水をポンプによって残留熱除去用の熱交換器を介してGDCS−LTの各プールに導くことも説明している。
重力落下プールを備えた非常用炉心冷却設備が、特許文献3に記述されている。この非常用炉心冷却設備は、重力落下プールに逆止弁及び爆破弁を接続している。爆破弁は、特許文献3の図1に示すように弁を介して原子炉に接続されている。
特開2004−333357号公報
特開平7−253492号公報
特開平4−204197号公報
特許文献2記載の非常用炉心冷却設備は、LOCA後における炉心冷却を短期的なGDCS−ST及び長期的なGDCS−LTで行うことを記載している。このようなGDCS−ST及びGDCS−LTの機能を、ESBWRに持たせることが検討されている。
ESBWRにおいては、短期的なGDCS−STの機能を発揮するGDCSとして炉心注水システム、及び圧力抑制プール水供給システム(中期冷却システム)のそれぞれの設置、及び長期的なGDCS−LTの機能を発揮する原子炉残留熱除去システムの設置が考えられている。原子炉残留熱除去システムは、圧力抑制プールからの冷却水を、燃料・補助プール冷却系(以後、FAPCSという)の残留熱除去用熱交換器を用いて冷却し、原子炉内に供給する。GDCSでは、冷却水プールが逆止弁、爆破弁及び隔離弁を経て原子炉に連絡される。中期冷却システムである圧力抑制プール水供給システムは、圧力抑制プールが逆止弁、爆破弁及び隔離弁を経て原子炉に連絡される。
ESBWRでは、LOCA発生時において、GDCSによる炉心への注水から約72時間後に、上記原子炉残留熱除去システムを用いた原子炉の残留熱除去運転切換えられる。その際、GDCS及び中期冷却システムの注入ラインの隔離が不十分となり、原子炉内の冷却水が圧力抑制プール及びGDCSの冷却水プールに逆流する可能性があるという新たな課題が生じることを、発明者らは新たに見出した。この課題の発生によって、原子炉内への注水量の確保が困難となり、長期的な冷却において原子炉の残留熱除去が困難になる可能性が考えられる。
その新たな課題は、炉心注水システム及び圧力抑制プール水供給システムの冷却水供給用の配管に、原子炉からの冷却水の逆流を防止するためにそれぞれ設けられた逆止弁に起因して発生することを、発明者らが見出したのである。すなわち、発明者らは、ESBWRで検討されている上記の非常用炉心冷却設備に設けられた逆止弁のディスクが、LOCA時においてFAPCSを起動した後、GDCSの各配管が隔離された状態で原子炉の圧力が十分低下したときに完全に閉まらない可能性があることを見出した。この現象により、冷却水を重力の作用で原子炉に供給する冷却水プールへの原子炉からの冷却水の逆流を完全に防止することはできず、原子炉の炉水位の回復が遅くなる。したがって、LOCA後において原子炉内の冷却水量が不足し、炉心の冷却が十分行われなくなる可能性がある。
本発明は、発明者らが見出した上記の新たな課題を改善するために成されたものである。
本発明の目的は、冷却材喪失事故発生後における原子炉内の冷却材液位の回復をより早くすることができる原子炉の非常用炉心冷却設備を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、冷却材を重力の作用により冷却材プールから原子炉に供給する冷却材管路と、冷却材管路に設けられた隔離弁と、冷却材プールにおける冷却材の液位を計測する液位計測装置と、液位計測装置で計測された液位が設定液位未満になったとき、開状態にある隔離弁を全閉状態にする制御手段とを備えたことにある。
冷却材喪失事故発生後に冷却材プールから重力の作用により冷却材管路を通して原子炉内に冷却材が供給される。冷却材プールの液位が低下するが、液位計測装置で計測された液位が設定液位未満になったとき、開状態にある隔離弁を制御手段によって全閉状態にできる。したがって、原子炉内の冷却材が冷却材プールに逆流することを完全に防止することができ、冷却材喪失事故発生後における原子炉内の冷却材液位の回復をより早くすることができる。
上記した目的は、原子炉から、冷却材喪失事故発生後に前記原子炉格納容器内に放出される蒸気を凝縮する圧力抑制プールに接続され、圧力抑制プール内の冷却材を重力の作用により原子炉に供給する冷却材管路と、冷却材管路に設けられた隔離弁と、圧力抑制プールにおける冷却材の液位を計測する液位計測装置と、液位計測装置で計測された液位が設定液位未満のとき、開状態にある隔離弁を全閉状態にする制御手段とを備えることによっても、達成できる。圧力抑制プールは、冷却材プールの一種である。
冷却材喪失事故発生後に圧力抑制プールから重力の作用により冷却材管路を通して原子炉内に冷却材が供給される。圧力抑制プールの液位が低下するが、液位計測装置で計測された液位が設定液位未満になったとき、開状態にある隔離弁を制御手段によって全閉状態にできる。したがって、原子炉内の冷却材が圧力抑制プールに逆流することを完全に防止することができ、冷却材喪失事故発生後における原子炉内の冷却材液位の回復をより早くすることができる。
上記した目的は、冷却材プール内の冷却材を重力の作用により原子炉に供給する冷却材管路と、冷却材管路に設けられた隔離弁と、冷却材プールにおける冷却材の液位を計測する液位計測装置と、液位計測装置で計測された液位を入力し、この計測された液位が設定液位未満の第1液位であるときに第1情報を生成し、計測された液位が設定液位以上の第2液位であるときに第2情報を生成する液位監視装置と、第1情報及び第2情報を表示する表示手段と、隔離弁の開操作信号及び閉操作信号をそれぞれ出力する手動の弁操作選択装置と、入力する第1開操作信号に基づいて隔離弁を開状態にし、入力する第1閉操作信号に基づいて隔離弁を全閉状態にする制御手段とを備えることによっても達成できる。
本発明によれば、冷却材喪失事故発生後において、重力の作用による冷却材の原子炉への供給によっても、原子炉内の冷却材液位の上昇をより早めることができる。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である、ESBWRに適用した非常用炉心冷却設備を、図1〜図5を用いて以下に説明する。ESBWRは、原子炉2、冷却水プール12及び圧力抑制プール13を原子炉格納容器1内に設置している。圧力抑制プール13は、LOCA時に原子炉2から原子炉格納容器1内のドライウェル(図示せず)に放出された高温高圧の蒸気を凝縮し、原子炉格納容器1内の圧力を低下させるために設けられている。炉心3が原子炉2内に配置される。原子炉2には、給水系配管41及び主蒸気配管42が接続されている。隔離弁20A,20Bが原子炉格納容器1の内外で給水配管41に設置される。隔離弁43A,43Bが原子炉格納容器1の内外で主蒸気配管42に設置される。
二種類のGDCS、すなわち、炉心注水システム44及び圧力抑制プール水供給システム(中期注水システム)45が、ESBWRに設けられる。炉心注水システム44は、冷却水プール12、注水配管4、逆止弁10、爆破弁8及び電動隔離弁17aを有する。注水配管4は、冷却水プール12と原子炉2を接続する。逆止弁10、爆破弁8及び電動隔離弁17aが、この順序で上流側より注水配管4に設置される。圧力抑制プール水供給システム45は、注水配管5、逆止弁11、爆破弁9及び電動隔離弁17bを有する。注水配管5は、圧力抑制プール13と原子炉2を接続する。逆止弁11、爆破弁9及び電動隔離弁17bが、この順序で上流側より注水配管5に設置される。冷却水プール12及び圧力抑制プール13は炉心3よりも上方に配置され、それぞれのプール内の冷却水が重力の作用により原子炉2に供給できるようになっている。
逆止弁10,11の具体的な構成を、図2を用いて説明する。逆止弁10,11は、ケーシング26内に、弁ディスク27を配置している。弁ディスク27は回転軸28により回転可能にケーシング26に設置されている。
FAPCS46は、両端部が使用済燃料集合体を貯蔵する燃料プール(図示せず)に接続される配管47を有し、ポンプ15及び残留熱除去用の熱交換器(冷却装置)16を配管47に設置している。一対のFAPCS用隔離弁(図示せず)が、ポンプ15の上流側及び熱交換器16の下流側において配管47にそれぞれ設置される。
長期的な炉心の冷却を行う残留熱除去装置(冷却材供給装置)48は、配管14,47,50、ポンプ15、冷却用の熱交換器16、電動弁18a,18b及び逆止弁19を含んでいる。残留熱除去装置48の配管14、ポンプ15及び熱交換器16は、FAPCS46の構成を兼用している。電動弁18aが設けられる配管14の冷却水取入口51は圧力抑制プール13内に配置される。配管14は、ポンプ15と上流側のFAPCS用隔離弁(図示せず)との間で配管47に接続される。給水配管41に接続される配管50は、熱交換器16と下流側のFAPCS用隔離弁(図示せず)との間で配管47に接続される。電動弁18b及び逆止弁19が配管50に設置される。
本実施例の非常用炉心冷却設備は、GDCSである、上記した炉心注水システム44及び圧力抑制プール水供給システム45、及び長期的な炉心冷却を行う残留熱除去装置48を有している。
冷却水プール12及び圧力抑制プール13の補給水系について説明する。冷却水プール12の補給水系は、補給水配管40、隔離弁35及び逆止弁36を有する。補給水配管40は、電動弁18bよりも上流で配管50に接続され、隔離弁35及び逆止弁36を設置している。圧力抑制プール13の補給水系は、補給水配管52、隔離弁37及び逆止弁38を有する。補給水配管52は、隔離弁35よりも上流で補給水配管40に接続され、隔離弁37及び逆止弁38を設置している。復水貯蔵タンク30に接続される補給水配管39が、補給水配管40に接続される。補給水ポンプ29、補給水元弁31及び逆止弁32が補給水配管39に設置される。補給水元弁33及び逆止弁34が設置された外部補給水配管53も、補給水配管40に接続される。
本実施例の非常用炉心冷却設備は、制御器23,24,25を含む制御系を有する。水位計21が冷却水プール12に設置され、水位計22が圧力抑制プール13に設置される。制御器23は、水位計21で計測した冷却水プール12の水位計測値に基づいて電動隔離弁17aの開閉を制御する。制御器24は、水位計22で計測した圧力抑制プール13の水位計測値に基づいて電動隔離弁17bの開閉を制御する。制御器25は、電動隔離弁17a,17bの開閉状態に基づいて、電動弁18a,18bの開閉を制御する。
ESBWRの運転時では、炉心注水システム44及び圧力抑制プール水供給システム45において、電動隔離弁17a、17bは開状態、爆破弁8、9及び逆止弁10、11は閉状態となっている。このため、冷却水プール12及び圧力抑制プール13内の冷却水が、原子炉2内に供給されない。
ESBWRにおいてLOCAが発生した場合、炉心3内に全ての制御棒(図示せず)が挿入され、ESBWRが緊急停止(スクラム)される。LOCA発生時においては、破断箇所から原子炉格納容器1内に放出される蒸気により原子炉格納容器1内の圧力(格納容器内圧という)が上昇し、原子炉2内の水位(炉水位という)が低下する。制御器54は、入力した炉水位計測値が第1炉水位設定値よりも低くなったとき、爆破弁開信号を爆破弁8に出力する。爆破弁8は、爆破弁開信号に基づいて爆破され、開状態になる。冷却水プール12は、開状態の爆破弁8を介して原子炉2に連通される。電動隔離弁17aは、後述するように、制御器23の作用により開状態になっている。冷却水プール12内の冷却水は、冷却水プール12内の冷却水の水位と炉水位との水頭差に起因する重力落下によって、注水配管4を通って炉心3内に注水される。炉心3内への注水により、冷却水プール12の水位が低下する。制御器23は、水位計21の計測値を入力して電動隔離弁17aの開制御または閉制御を行う。
この電動隔離弁17aの開閉制御を、図3を用いて具体的に説明する。制御器23は、オア回路62,64、開閉信号生成部68及びワイプアウト66,67を有する。制御器23は、入力した水位計21の計測値(第1水位計測値)と水位設定値(第1水位設定値)とを比較し、その計測値が第1水位設定値以上である場合に、冷却水プール水位高信号61(以下、水位高信号61という)を生成する。制御器23は水位高信号61に基づいて電動隔離弁17aを開状態にする。ESBWRの運転時は、冷却水プール12の水位が第1水位設定値以上あるので、制御器23は電動隔離弁17aを開状態にする。制御器23は、LOCAが発生しても第1水位計測値が第1水位設定値以上であるとき、水位高信号61を生成する。水位高信号61は、オア回路62を経て開閉信号生成部68に入力される。開閉信号生成部68は水位高信号61に基づいて開指令69を生成する。制御器23は開指令69により電動隔離弁17aを制御しこの弁を開く。
LOCA発生後の冷却水プール12の水位低下により第1水位計測値が第1水位設定値未満になったとき、制御器23は冷却水プール水位低信号63(以下、水位低信号63という)を生成する。水位低信号63はオア回路64を経て開閉信号生成部68に入力される。開閉信号生成部68は水位低信号63に基づいて閉指令70を生成する。制御器23は閉指令70により電動隔離弁17aを制御しこの弁を閉じる。電動隔離弁17aが閉じられたとき、冷却水プール12から炉心3内への冷却水の供給は停止される。
電動隔離弁17aの開閉は、図3に示すように、電動隔離弁スイッチ(弁操作選択装置)65を用いて手動により行うこともできる。すなわち、電動隔離弁スイッチ65を手動により「開」に操作すると、電動隔離弁スイッチ65から出力された開信号が開閉信号生成部68に入力される。開閉信号生成部68はその開信号に基づいて開指令69を生成する。電動隔離弁スイッチ65を手動により「閉」に操作すると、電動隔離弁スイッチ65から出力された閉信号が開閉信号生成部68に入力される。開閉信号生成部68はその閉信号に基づいて閉指令70を生成する。ただし、水位低信号63が生成されている間では、電動隔離弁スイッチ65を誤って「開」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ65から出力された開信号の、開閉信号生成部68への入力が、水位低信号63を入力するワイプアウト67によって阻止される。このため、開閉信号生成部68は開指令69を生成しない。また、水位高信号61が発生している間では、電動隔離弁スイッチ65を誤って「閉」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ65から出力された閉信号の、開閉信号生成部68への入力が、水位高信号61を入力するワイプアウト66によって阻止される。このため、開閉信号生成部68は閉指令70を生成しない。電動隔離弁17aの開制御または閉制御は、電動隔離弁スイッチ65を用いた手動操作によっても行えるが、水位計21の計測値に基づいた制御が優先される。
本実施例におけるワイプアウト66,67は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、制御器23で水位低信号63が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への開信号の入力を阻止し、制御器23で水位高信号61が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への閉信号の入力を阻止する。
炉水位の計測値を入力する制御器54は、冷却水プール12からの冷却水の注入により炉水位が第2炉水位設定値まで回復したと判定したとき、爆破弁開信号を爆破弁9に出力する。爆破弁9は、爆破弁開信号に基づいて爆破され、開状態になる。圧力抑制プール13は、開状態の爆破弁9を介して原子炉2に連通される。圧力抑制プール13内の冷却水は、重力落下によって、注水配管5を通って原子炉3内に供給される。注水配管5による炉心3内への注水によって、圧力抑制プール13の水位が低下する。制御器24は、水位計22の計測値を入力して電動隔離弁17bの開制御または閉制御を行う。制御器54は、炉水位の回復ではなく、爆破弁8への爆破弁開信号の出力から所定時間を経過したとき、爆破弁9への爆破弁開信号を出力することも可能である。
制御器24は、水位計22の計測値を入力して電動隔離弁17bの開制御または閉制御を行う。この電動隔離弁17bの開閉制御を、図4を用いて具体的に説明する。制御器24は、オア回路72,74、開閉信号生成部75及びワイプアウト79,80を有する。制御器24は、入力した水位計22の計測値(第2水位計測値)と水位設定値(第2水位設定値)とを比較し、その計測値がその設定値以上である場合に、圧力抑制プール水位高信号71(以下、水位高信号71という)を生成する。制御器24は水位高信号71に基づいて電動隔離弁17bを開状態にする。ESBWRの運転時は、圧力抑制プール13の水位が第2水位設定値以上あるので、制御器24は電動隔離弁17bを開状態にする。制御器24は、LOCAが発生しても第2水位計測値が第2水位設定値以上であるとき、水位高信号71を生成する。水位高信号71は、オア回路72を経て開閉信号生成部75に入力される。開閉信号生成部75は水位高信号71に基づいて開指令76を生成する。制御器24は開指令76により電動隔離弁17bを制御しこの弁を開く。
LOCA発生後の圧力抑制プール13の水位低下により第2水位計測値が第2水位設定値未満になったとき、制御器24は圧力抑制プール水位低信号73(以下、水位低信号73という)を生成する。水位低信号73はオア回路74を経て開閉信号生成部75に入力される。開閉信号生成部75は水位低信号73に基づいて閉指令77を生成する。制御器24は閉指令77により電動隔離弁17bを制御しこの弁を閉じる。電動隔離弁17bが閉じられたとき、圧力抑制プール13から炉心3内への冷却水の注水は停止される。
電動隔離弁17bの開閉も、図4に示すように、電動隔離弁スイッチ(弁操作選択装置)78を用いて手動により行うこともできる。すなわち、電動隔離弁スイッチ78を手動により「開」に操作した場合には、電動隔離弁スイッチ78から出力された開信号が開閉信号生成部75に入力される。開閉信号生成部75はその開信号に基づいて開指令76を生成する。電動隔離弁スイッチ78を手動により「閉」に操作すると、電動隔離弁スイッチ78から出力された閉信号が開閉信号生成部75に入力される。開閉信号生成部75はその閉信号に基づいて閉指令77を生成する。ただし、水位低信号73が生成されている間では、電動隔離弁スイッチ78を誤って「開」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ78から出力された開信号の、開閉信号生成部75への入力が、水位低信号73を入力するワイプアウト79によって阻止される。このため、開閉信号生成部75において開指令76が生成されない。また、水位高信号71が生成されている間では、電動隔離弁スイッチ78を誤って「閉」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ78から出力された閉信号の、開閉信号生成部75への入力が、水位高信号71を入力するワイプアウト80によって阻止される。このため、開閉信号生成部75において閉指令77が生成されない。電動隔離弁17bの開または閉制御は、電動隔離弁スイッチ78を用いた手動操作によっても行えるが、水位計22の計測値に基づいた制御が優先される。
本実施例におけるワイプアウト79,80は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、制御器24で水位低信号73が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への開信号の入力を阻止し、制御器24で水位高信号71が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への閉信号の入力を阻止する。
制御器25は、電動隔離弁17a,17bのそれぞれの開度に基づいて電動弁18a,18bの開制御または閉制御を行う。この制御器25の機能を、図5を用いて説明する。制御器25は、アンド回路83、オア回路92、開閉信号生成部84,87、ワイプアウト94,95,97,98を有する。制御器25は、電動隔離弁17a,17bのそれぞれの開度信号(開度情報)を入力する。各開度信号は電動隔離弁17a,17bのそれぞれから出力される。制御器25は、それぞれの開度信号を基に、電動隔離弁17a,17bの開閉状態を判定する。制御器25は、その判定の結果、電動隔離弁17aが全閉のときには全閉信号81を、電動隔離弁17bが全閉のときには全閉信号82を、電動隔離弁17aが全閉でないときには非全閉信号90を、電動隔離弁17bが全閉でないときには非全閉信号91をそれぞれ生成する。
ESBWRの運転時は、電動隔離弁17a,17bはそれぞれ開状態にあるため、制御器25は、非全閉信号90,91を生成する。LOCAが発生しても電動隔離弁17aが開状態にあるとき、具体的には第1水位計測値が第1水位設定値以上であるときには、非全閉信号90が生成される。また、LOCAが発生しても電動隔離弁17bが開状態にあるとき、具体的には第2水位計測値が第2水位設定値以上であるときには、非全閉信号91が生成される。生成された、いずれかの非全閉信号は、オア回路92を経て開閉信号生成部84,87に入力される。それぞれの開閉信号生成部は入力した非全閉信号に基づいて閉指令86,89をそれぞれ生成する。制御器25は、閉指令86により電動弁18aを閉じた状態に保持し、閉指令89により電動弁18bを閉じた状態に保持する。冷却水プール12及び圧力抑制プール13のいずれかから炉心3に冷却水が供給されているとき、開閉信号生成部84,86は閉指令86,89をそれぞれ生成する。
制御器25は、電動隔離弁17aの開度情報に基づいて電動隔離弁17aが全閉状態にあると判定したときに全閉信号81を出力し、電動隔離弁17bの開度情報に基づいて電動隔離弁17bが全閉状態にあると判定したときに全閉信号82を生成する。全閉信号81,82が共に生成されるのは、冷却水プール12及び圧力抑制プール13から炉心3への冷却水の供給が停止されたとき、すなわち、電動隔離弁17a,17bが共に閉状態にあると判定されたときである。アンド回路83は、全閉信号81,82の両方が生成されたとき、「1」を出力する。アンド回路83の出力が「1」であるとき、開閉信号生成部84は開指令85を、開閉信号生成部87は開指令88をそれぞれ生成する。制御器25、すなわち、開閉信号生成部84は開指令85に基づいて電動弁18aを制御しこの弁を開く。制御器25、すなわち、開閉信号生成部87は開指令88に基づいて電動弁18bを制御しこの弁を開く。また、制御器25はその開信号に基づいて前述の一対のFAPCS用隔離弁を閉じる。ポンプ15が駆動されるので、圧力抑制プール13内の冷却水は、冷却水取入口51から配管14,47を経て熱交換器16に導かれる。熱交換器16で冷却されたその冷却水は、配管50及び給水配管41を経て原子炉2に供給され、炉心3(具体的には、炉心3に装荷されている燃料集合体)を冷却する。このように、温度が低下した冷却水が、残留熱除去装置48から原子炉2に供給されるので、LOCA発生後の長期にわたって炉心3を冷却することができる。これにより、炉心3の残留熱が除去される。
電動弁18a,18bの開閉は、図5に示すように、第1電動弁スイッチ(弁操作選択装置)93及び第2電動弁スイッチ(弁操作選択装置)96を用いて手動により行うこともできる。すなわち、第1電動弁スイッチ93を手動により「閉」に操作すると、第1電動弁スイッチ93からの閉信号が開閉信号生成部84に入力される。開閉信号生成部84はその閉信号に基づいて閉指令86を生成する。第2電動弁スイッチ96を手動により「閉」に操作すると、第2電動弁スイッチ96からの閉信号が開閉信号生成部87に入力される。開閉信号生成部87はその閉信号に基づいて閉指令89を生成する。また、第1電動弁スイッチ93を手動により「開」に操作すると、第1電動弁スイッチ93からの開信号が開閉信号生成部84に入力される。開閉信号生成部84はその開信号に基づいて開指令85を生成する。第2電動弁スイッチ96を手動により「開」に操作すると、第2電動弁スイッチ96からの開信号が開閉信号生成部87に入力される。開閉信号生成部87はその開信号に基づいて開指令88を生成する。
ただし、非全閉信号90,91のいずれかが生成されている間では、電動隔離弁スイッチ93,96を誤って「開」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ93,96から出力された各開信号の、該当する開閉信号生成部84,87への入力が、その非全閉信号を入力するワイプアウト94,97によって阻止される。このため、開閉信号生成部84,87のそれぞれは開指令85,88を生成しない。また、アンド回路83から「1」が出力されている間では、電動隔離弁スイッチ93,96を誤って「閉」に操作したとしても、電動隔離弁スイッチ93,96から出力された閉信号の、該当する開閉信号生成部84,87への入力が、アンド回路83からの「1」を入力するワイプアウト95,98によって阻止される。このため、開閉信号生成部84,87のそれぞれは閉指令86,89を生成しない。
前述した電動弁スイッチ65,78、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96は、操作盤(図示せず)に設置され、オペレータが操作する。また、前述した水位高信号61,71、水位低信号63,73、全閉信号81,82及び非全閉信号90,91は、操作盤に設けられた表示装置に表示され、オペレータが知ることができる。
LOCA発生後の長期にわたって、圧力抑制プール13内の冷却水が不足した場合には、補給水元弁31、隔離弁37を開き、補給水ポンプ29を駆動することにより、復水貯蔵タンク30内の冷却水を、補給水配管39,40,52を介して圧力抑制プール13内に供給することができる。隔離弁35は全閉状態にある。冷却水プール12内への補給水の供給は、隔離弁37を閉じて補給水元弁31、隔離弁35を開き、補給水ポンプ29を駆動することにより補給水配管39,40を介して行われる。復水貯蔵タンク30からではなく、補給水元弁33を開くことによって外部水源から冷却水プール12及び圧力抑制プール13に補給水を供給することができる。
本実施例は、LOCAが発生したとき、爆破弁8,9が所定の時間間隔で開くので、LOCA発生後の初期において、まず冷却水プール12から、次に圧力抑制プール13から、所定量の冷却水が原子炉2内に順次供給される。これらの冷却水の供給によって、LOCA発生後においても、炉心3の冷却を十分に行うことができる。本実施例は、後述するように、制御器23,24の作用により、原子炉2内の冷却水が冷却水プール12及び圧力抑制プール13に逆流することを防止できる。したがって、本実施例は、LOCA発生後の初期において、炉心3の冷却不足を回避することができる。
本実施例の非常用炉心冷却設備は、水位計21で計測した、冷却水プール12の水位が第1水位設定値よりも小さくなったとき、制御器23が電動隔離弁17aを全閉状態にする。このため、圧力抑制プール13から原子炉2への冷却水の供給によって原子炉2内の水位が上昇しても、原子炉2内の冷却水が注水配管4を経て冷却水プール12に逆流することを防止できる。したがって、原子炉2内の水位の回復が妨げられず、炉心3内の燃料集合体で発生する熱を効率よく除去することができる。また、本実施例は、水位計22で計測した、圧力抑制プール13の水位が第2水位設定値よりも小さくなったとき、制御器24が電動隔離弁17bを全閉状態にする。このため、残留熱除去装置48が冷却された冷たい冷却水を原子炉2に供給する際において、原子炉2内の冷却水が、注水配管5を経て圧力抑制プール13に逆流することを防止できる。したがって、その冷たい冷却水で炉心3内の燃料集合体で発生する熱を効率よく除去することができる。電動隔離弁17aも全閉状態にあるので、残留熱除去装置48から供給された冷却水も、冷却水プール12に逆流することはない。
本実施例は、上記したように、制御器23により電動隔離弁17aを閉じ、制御器24により電動隔離弁17bを閉じている。このため、冷却水プール12及び圧力抑制プール13内の各水位がそれぞれの該当する水位設定値よりも小さい場合における原子炉2内の冷却水の圧力バウンダリを、電動隔離弁17a、17bにより形成できる。
本実施例は、電動隔離弁17a,17bが共に全閉状態になったとき、制御器25が残留熱除去装置48に設けられた電動弁18a,18bを開くので、圧力抑制プール13の冷却水を、熱交換器16で冷却した状態で長期にわたって原子炉2内に供給することができる。このため、LOCA発生後において、原子炉2内の残留熱を長期にわたって除去することができ、ESBWRの安全性が向上する。残留熱除去装置48の使用中に圧力抑制プール13内の冷却水が不足した場合には、前述したように、復水貯蔵タンク30から圧力抑制プール13に補給水を供給すればよい。これにより、残留熱除去装置48による炉心3の冷却を、より長期にわたって継続させることができる。
本実施例は、残留熱除去装置48のポンプ15及び熱交換器16として、FAPCS46のポンプ15及び熱交換器16を用いているので、ESBWRプラント、すなわち原子炉プラントの構成を単純化することができる。
本実施例は、電動隔離弁スイッチ65,78、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96を用いた手動操作で前述したように電動隔離弁17a,17b及び電動弁18a,18bのそれぞれの開閉制御を行うことができる。このような手動操作を行う際に、電動隔離弁スイッチ65,78、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96のうちの少なくとも1つで、オペレータによる「開」操作(または「閉」操作)が間違って(または誤って)行われた場合には、後述の実施例2と同様に、該当するスイッチから出力された誤信号による該当する弁の誤操作を防止することができる。本実施例の非常用炉心冷却設備の信頼性が著しく向上し、原子炉の安全性が格段に向上する。
ESBWRに適用した本発明の他の実施例である非常用炉心冷却設備を、図6〜図9を用いて以下に説明する。本実施例の非常用炉心冷却設備は、実施例1の非常用炉心冷却設備の制御器23,24,25を制御器102,104,106、水位監視装置101,103及び弁開度監視装置105に替えた構成を有する。本実施例における制御器102,104,106、水位監視装置101,103及び弁開度監視装置105以外の構成は、実施例1と同じである。
制御器102は図7に示すように開閉信号生成部68及びワイプアウト66,67を有する。制御器104は図8に示すように開閉信号生成部75及びワイプアウト79,80を有する。制御器106は図9に示すように開閉信号生成部84,87及びワイプアウト94,95,97,98を有する。本実施例においても、前述した電動弁スイッチ65,78、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96は、操作盤(図示せず)に設置され、オペレータが操作できる。また、前述した水位高信号61,71、水位低信号63,73、全閉信号81,82及び非全閉信号90,91も、操作盤に設けられた表示装置に表示され、オペレータが知ることができる。
水位監視装置101は、水位計21からの第1水位計測値に基づいて冷却水プール12の水位を監視し、その第1水位計測値に基づいて、実施例1の制御器23と同様に、水位高信号61または水位低信号63を生成する(図7参照)。水位監視装置101は、ESBWRの通常運転時、及びLOCA発生後で第1水位計測値が第1水位設定値以上になっているときに、水位高信号61を生成している。
電動隔離弁スイッチ65は、ESBWRの起動前に、オペレータによって「開」に操作されて開信号を出力する。この開信号は開閉信号生成部68に伝えられ、開閉信号生成部68はその開信号に基づいて開指令69を生成する。制御器102、具体的には開閉信号生成部68が開指令69に基づいて電動隔離弁17aを制御して電動隔離弁17aを開く。ESBWRの運転時においては、電動隔離弁スイッチ65は「開」操作の状態になっているため、電動隔離弁17aは開状態になっている。もし、オペレータが電動隔離弁スイッチ65を「開」に操作すべきところを間違って「閉」に操作した場合、または「開」操作した後にオペレータが誤って電動隔離弁スイッチ65を「閉」に操作した場合には、水位高信号61を入力するワイプアウト66によって、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への閉信号の入力が阻止される。このとき、操作盤に設けられたインターロック装置(図示せず)は、電動隔離弁スイッチ65から出力された閉信号が水位監視装置101で生成された水位高信号61に対応しないので、電動隔離弁スイッチ65の操作の間違いを示す警報を発する。その後、オペレータは電動隔離弁スイッチ65を「開」に操作する。電動隔離弁スイッチ65が「開」操作されて開信号が出力された場合には、水位低信号63を入力していないワイプアウト67は、その開信号を、阻止せずに開閉信号生成部68に入力させる。
LOCA発生後における制御器54の作用は実施例1と同じである。水位監視装置101は、LOCA発生後において第1水位計測値が第1水位設定値よりも小さくなったとき、水位低信号63を生成する。水位低信号63が生成された場合には、上記表示装置への表示と共に、オペレータに注意を喚起するために警報が発せられる。オペレータは電動隔離弁スイッチ65を手動で「閉」にする。この操作により、電動隔離弁スイッチ65から閉信号が出力される。この閉信号は水位高信号61を入力していないワイプアウト66で阻止されず開閉信号生成部68に伝えられる。開閉信号生成部68がその閉信号に基づいて閉指令70を生成する。制御器102、具体的には開閉信号生成部68が閉指令70に基づいて電動隔離弁17aを制御して電動隔離弁17aを全閉にする。このため、冷却水プール12から原子炉2への冷却水の供給が停止される。逆に、原子炉2から冷却水プール12への冷却水の逆流も防止できる。
もし、オペレータが電動隔離弁スイッチ65を「閉」に操作すべきところを間違って「開」に操作した場合には、水位低信号63を入力するワイプアウト67によって、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への開信号の入力が阻止される。このとき、上記のインターロック装置は、電動隔離弁スイッチ65から出力された開信号が水位監視装置101で生成された水位低信号63に対応しないので、電動隔離弁スイッチ65の操作の間違いを示す警報が発する。このため、オペレータは電動隔離弁スイッチ65を「閉」に操作する。水位高信号61を入力していないワイプアウト66は、その閉信号を阻止せず開閉信号生成部68に入力させる。
本実施例におけるワイプアウト66,67は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、水位監視装置101で水位低信号63が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への開信号の入力を阻止し、水位監視装置101で水位高信号61が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ65から開閉信号生成部68への閉信号の入力を阻止する。
水位監視装置103は、水位計22からの第2水位計測値に基づいて圧力抑制プール13の水位を監視し、その第2水位計測値に基づいて、実施例1の制御器24と同様に、水位高信号71または水位低信号73を生成する(図8参照)。水位監視装置103は、ESBWRの通常運転時、及びLOCA発生後で第2水位計測値が第2水位設定値以上になっているときに、水位高信号71を生成している。
電動隔離弁スイッチ78も、ESBWRの起動前に、オペレータによって「開」に操作されて開信号を出力する。開閉信号生成部75はその開信号に基づいて開指令76を生成する。制御器104、具体的には開閉信号生成部75が開指令76に基づいて電動隔離弁17bを制御して電動隔離弁17bを開く。ESBWRの運転時においては、電動隔離弁スイッチ78は「開」操作の状態になっているため、電動隔離弁17bは常に開いている。もし、オペレータが電動隔離弁スイッチ78を「開」に操作すべきところを間違って「閉」に操作した場合、または「開」操作した後にオペレータが誤って電動隔離弁スイッチ78を「閉」に操作した場合には、水位高信号71を入力するワイプアウト80によって、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への閉信号の入力が阻止される。インターロック装置は、電動隔離弁スイッチ78から出力された閉信号が水位監視装置103で生成された水位高信号71に対応しないので、電動隔離弁スイッチ78の操作の間違いを示す警報を発する。オペレータは電動隔離弁スイッチ78を「開」に操作する。電動隔離弁スイッチ78が「開」操作されて開信号が出力された場合には、水位低信号73を入力していないワイプアウト79は、その開信号を阻止せず開閉信号生成部75に入力させる。
水位監視装置103は、LOCA発生後において第2水位計測値が第2水位設定値よりも小さくなったとき、水位低信号73を生成する。水位低信号73が生成された場合には、上記表示装置への表示と共に、オペレータに注意を喚起するために警報が発せられる。オペレータは電動隔離弁スイッチ78を手動で「閉」にする。この操作により、電動隔離弁スイッチ78から閉信号が出力され、この閉信号は水位高信号71を入力していないワイプアウト80によって阻止されず開閉信号生成部75に入力される。開閉信号生成部75はその閉信号に基づいて閉指令77を生成する。制御器104、具体的には開閉信号生成部75が閉指令77に基づいて電動隔離弁17bを制御して電動隔離弁17bを全閉にする。圧力抑制プール13から原子炉2への冷却水の供給が停止される。逆に、原子炉2から圧力抑制プール13への冷却水の逆流も防止できる。
もし、オペレータが電動隔離弁スイッチ78を「閉」に操作すべきところを間違って「開」に操作した場合には、水位低信号73を入力するワイプアウト79によって、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への開信号の入力が阻止される。このとき、上記のインターロック装置は、電動隔離弁スイッチ78から出力された開信号が水位監視装置103で生成された水位低信号73に対応しないので、電動隔離弁スイッチ78の操作の間違いを示す警報が発する。オペレータは電動隔離弁スイッチ78を「閉」に操作する。
本実施例におけるワイプアウト79,80は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、水位監視装置103で水位低信号73が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への開信号の入力を阻止し、水位監視装置103で水位高信号71が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ78から開閉信号生成部75への閉信号の入力を阻止する。
弁開度監視装置105は、電動隔離弁17a,17bのそれぞれの開度情報に基づいて各電動隔離弁の開度を監視し、その開度情報に基づいて、実施例1の制御器25と同様に、全閉信号81,82または非全閉信号90,91を生成する(図9参照)。弁開度監視装置105は、ESBWRの運転時には非全閉信号90,91を、LOCA発生後においても、第1水位計測値が第1水位設定値以上になっているときに非全閉信号90を、第2水位計測値が第2水位設定値以上になっているときに非全閉信号91をそれぞれ生成している。
第1電動弁スイッチ93は、ESBWRの起動前にオペレータによって「閉」に操作されて閉信号を出力する。この閉信号は、アンド回路83から「0」が出力されているためワイプアウト90によって阻止されず開閉信号生成部84に入力される。開閉信号生成部84はその閉信号に基づいて閉指令86を生成する。また、第2電動弁スイッチ96も、ESBWRの起動前にオペレータによって「閉」に操作されて閉信号を出力する。この閉信号は、アンド回路83から「0」を入力しているワイプアウト98によって阻止されず開閉信号生成部87に入力される。開閉信号生成部87はその閉信号に基づいて閉指令89を生成する。制御器106、具体的には開閉信号生成部84が閉指令86に基づいて電動弁18aを制御して電動弁18aを閉じる。また、制御器106、具体的には開閉信号生成部87が閉指令88に基づいて電動弁18bを制御して電動弁18bを閉じる。ESBWRの運転時においては、第1及び第2電動弁スイッチ93,96は「閉」操作の状態になっているため、電動弁18a,18bは共に閉じている。
もし、オペレータが第1電動弁スイッチ93を「閉」に操作すべきところを間違って「開」に操作した場合、または「閉」操作した後にオペレータが誤って第1電動弁スイッチ93を「開」に操作した場合には、非全閉信号90(または非全閉信号91)を入力しているワイプアウト94によって、第1電動弁スイッチ93から開閉信号生成部84への開信号の入力が阻止される。インターロック装置(図示せず)は、第1電動弁スイッチ93から出力された開信号が弁開度監視装置105で生成された非全閉信号90(または非全閉信号91)に対応しないので、第1電動弁スイッチ93の操作の間違いを示す警報を発する。オペレータは第1電動弁スイッチ93を「閉」に操作する。
もし、オペレータが、上記した第1電動弁スイッチ93と同様に、第2電動弁スイッチ96を間違って(または誤って)「開」に操作した場合には、非全閉信号90(または非全閉信号91)を入力しているワイプアウト97によって、第2電動弁スイッチ96から開閉信号生成部87への開信号の入力が阻止される。インターロック装置(図示せず)は、同様に、第2電動弁スイッチ96の操作の間違いを示す警報を発する。オペレータは第2電動弁スイッチ96を「閉」に操作する。
弁開度監視装置105は、LOCA発生後において、第1水位計測値が第1水位設定値よりも小さくなって電動隔離弁17aが全閉状態になったときに全閉信号81を、第2水位計測値が第2水位設定値よりも小さくなって電動隔離弁17bが全閉状態になったときに全閉信号82をそれぞれ生成する。全閉信号81,82の両方が生成されるとき、アンド回路83は「1」を出力する。
全閉信号81,82の両方が生成されたとき、上記表示装置への表示と共に、オペレータに注意を喚起するためにインターロック装置が警報を発する。その後、オペレータは第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96のそれぞれを手動で「開」に操作する。開操作された第1電動弁スイッチ93から開信号が出力される。この開信号は非全閉信号90(または非全閉信号91)を入力していないワイプアウト94で阻止されず開閉信号生成部84に入力される。開閉信号生成部84がその開信号に基づいて開指令85を生成する。制御器106、具体的には開閉信号生成部84が開指令85に基づいて電動弁18aを制御して電動弁18aを開く。
また、開操作された第2電動弁スイッチ96から開信号が出力される。この開信号は非全閉信号90(または非全閉信号91)を入力していないワイプアウト97で阻止されず開閉信号生成部87に入力される。開閉信号生成部87がその開信号に基づいて開指令88を生成する。制御器106、具体的には開閉信号生成部87が開指令88に基づいて電動弁18bを制御して電動隔離弁18bを開く。
もし、オペレータが第1電動弁スイッチ93を「開」に操作すべきところを間違って「閉」に操作した場合、または「開」操作した後にオペレータが誤って第1電動弁スイッチ93を「閉」に操作した場合には、アンド回路83から「1」を入力しているワイプアウト95によって、第1電動弁スイッチ93から開閉信号生成部84への閉信号の入力が阻止される。インターロック装置(図示せず)は、第1電動弁スイッチ93から出力された閉信号がアンド回路83から出力された「1」に対応しないので、第1電動弁スイッチ93の操作の間違いを示す警報を発する。オペレータは第1電動弁スイッチ93を「開」に操作する。
また、もし、オペレータが、上記した第1電動弁スイッチ93と同様に、第2電動弁スイッチ96を間違って(または誤って)「閉」に操作した場合には、アンド回路83から「1」を入力しているワイプアウト98によって、第2電動弁スイッチ96から開閉信号生成部87への閉信号の入力が阻止される。インターロック装置(図示せず)は、同様に、第2電動弁スイッチ96の操作の間違いを示す警報を発する。オペレータは第2電動弁スイッチ96を「開」に操作する。
本実施例におけるワイプアウト94,95は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、弁開度監視装置105で非全閉信号90(または非全閉信号91)が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ93から開閉信号生成部84への開信号の入力を阻止し、弁開度監視装置105で全閉信号81及び全閉信号82が共に生成されたとき(アンド回路83から「1」が出力されるとき)、電動隔離弁スイッチ93から開閉信号生成部84への閉信号の入力を阻止する。また、本実施例におけるワイプアウト97,98は操作信号阻止装置を構成する。この操作信号阻止装置は、弁開度監視装置105で非全閉信号90(または非全閉信号91)が生成されたとき、電動隔離弁スイッチ96から開閉信号生成部87への開信号の入力を阻止し、弁開度監視装置105で全閉信号81及び全閉信号82が共に生成されたとき(アンド回路83から「1」が出力されるとき)、電動隔離弁スイッチ96から開閉信号生成部87への閉信号の入力を阻止する。
本実施例は、LOCA発生後に、第1水位計測値が第1水位設定値未満になったとき、電動隔離弁スイッチ65からの閉信号を入力する制御器102が電動隔離弁17aを全閉状態にする。第2水位計測値が第2水位設定値未満になったとき、電動隔離弁スイッチ78からの閉信号を入力する制御器104が電動隔離弁17bを全閉状態にする。このため、本実施例は、実施例1において電動隔離弁17a,17bを閉じることによって生じる効果を得ることができる。
本実施例は、電動隔離弁17a,17bが共に全閉状態になったとき、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96のそれぞれから開信号を入力する制御器106が、電動弁18a,18bの両方を開く制御を行う。このような本実施例は、実施例1において電動弁18a,18bを共に開くことによって生じる効果を得ることができる。
本実施例は、前述したように、電動隔離弁スイッチ65,78、第1電動弁スイッチ93及び第2電動弁スイッチ96のうちの少なくとも1つで、オペレータによる「開」操作(または「閉」操作)が間違って(または誤って)行われた場合には、該当するスイッチから出力された開信号(または閉信号)の該当する制御器への入力が、該当するワイプアウトによって阻止される。これにより、電動隔離弁17a,17b及び電動弁18a,18bのうち少なくとも1つの弁が誤操作されることを防止することができる。本実施例の非常用炉心冷却設備の信頼性が著しく向上し、原子炉の安全性が格段に向上する。
以上において説明した各実施例の非常用炉心冷却設備は、冷却水プール12及び圧力抑制プール13を有している。冷却水プールとして、冷却水プール12及び圧力抑制プール13のいずれか一方を用いた場合でも、冷却材喪失事故発生後における原子炉2内の水位の回復をより早くさせることができる。これらの実施例を以下に具体的説明する。
実施例1の非常用炉心冷却設備から炉心注水システム44及び制御器23を除去した非常用炉心冷却設備の実施例を、以下に説明する。本実施例の非常用炉心冷却設備は、GDCSとしての圧力抑制プール水供給システム45、及び制御器24,25を備える。圧力抑制プール水供給システム45は、LOCA発生時に爆破弁9が爆破され、圧力抑制プール13内の冷却水が重力落下により注入配管5を経て原子炉2内に供給される。圧力抑制プール13内の冷却水の水位は、水位計22で計測される。制御器24は、水位計22で計測した水位が水位設定値未満になったとき電動隔離弁17bを全閉状態にする。このため、原子炉2内の冷却水が圧力抑制プール13に逆流することを完全に防止できる。制御器24は、実施例1で述べた図4に示す制御を実施する。本実施例も、電動弁スイッチ78を備えている。
本実施例における制御器25は、図5に示す制御ロジックのうち、全閉信号81及び非全閉信号90を生成しなく、アンド回路83及びオア回路92を有していない。この制御器25は、上記したように電動隔離弁17bが全閉状態になったとき、全閉信号82を生成する。この全閉信号82は開閉信号生成部84,87に入力される。開閉信号生成部84は、全閉信号82に基づいて開指令85生成し、開指令85に基づいて電動弁18aを制御してこの弁を開状態にする。開閉信号生成部87は、全閉信号82に基づいて開指令88生成し、開指令88に基づいて電動弁18bを制御してこの弁を開状態にする。圧力抑制プール13内の冷却水が、配管14,47,50及び給水配管41を介して原子炉2に供給される。全閉信号82はワイプアウト95,98に入力される。
電動隔離弁17bが開いているときには、制御器25は、非全閉信号91が開閉信号生成部84,87に入力される。開閉信号生成部84は、非全閉信号91に基づいて閉指令86生成し、閉指令86に基づいて電動弁18aを制御してこの弁を全閉状態にする。開閉信号生成部87は、非全閉信号91に基づいて閉指令89生成し、閉指令89に基づいて電動弁18bを制御してこの弁を全閉状態にする。非全閉信号91はワイプアウト94,97に入力される。
この実施例の非常用炉心冷却設備は、実施例1において生じる効果のうち、炉心注水システム44で生じる効果以外の効果を得ることができる。
次に、実施例1の非常用炉心冷却設備から圧力抑制プール水供給システム45及び制御器24を除去した非常用炉心冷却設備の実施例を、以下に説明する。本実施例の非常用炉心冷却設備は、GDCSとしての炉心注水システム44、及び制御器23,25を備える。炉心注水システム44は、LOCA発生時に爆破弁8が爆破され、冷却水プール12内の冷却水が重力落下により注入配管4を経て原子炉2内に供給される。冷却水プール12内の冷却水の水位は、水位計21で計測される。制御器23は、水位計21で計測した水位が水位設定値未満になったとき電動隔離弁17aを全閉状態にする。このため、原子炉2内の冷却水が冷却水プール12に逆流することを完全に防止できる。制御器23は、実施例1で述べた図3に示す制御を実施する。本実施例も、電動弁スイッチ65を備えている。
本実施例における制御器25は、図5に示す制御ロジックのうち、全閉信号82及び非全閉信号91を生成しなく、アンド回路83及びオア回路92を有していない。この制御器25は、上記したように電動隔離弁17aが全閉状態になったとき、全閉信号81を生成する。開閉信号生成部84は、全閉信号81に基づいて生成した開指令85を用いて電動弁18aを制御してこの弁を開状態にする。開閉信号生成部87は、全閉信号81に基づいて生成した開指令88を用いて電動弁18bを制御してこの弁を開状態にする。圧力抑制プール13内の冷却水が、配管14,47,50及び給水配管41を介して原子炉2に供給される。全閉信号81はワイプアウト95,98に入力される。
電動隔離弁17aが開いているときには、制御器25において、非全閉信号90が開閉信号生成部84,87に入力される。開閉信号生成部84は、非全閉信号90に基づいて生成した閉指令を用いて電動弁18aを制御してこの弁を全閉状態にする。開閉信号生成部87は、非全閉信号90に基づいて生成した閉指令89を用いて電動弁18bを制御してこの弁を全閉状態にする。非全閉信号90はワイプアウト94,97に入力される。
この実施例の非常用炉心冷却設備は、実施例1において生じる効果のうち、圧力抑制プール水供給システム45で生じる効果以外の効果を得ることができる。
本発明の好適な一実施例である非常用炉心冷却設備の構成図である。
図1に示す炉心注水システム及び圧力抑制プール水供給システムに用いられる逆止弁の構成を示し、(a)はその逆止弁の縦断面図で、(b)は(a)のA−A断面図である。
図1に示す電動隔離弁17aの開閉制御を行う制御器23における制御ロジックの説明図である。
図1に示す電動隔離弁17bの開閉制御を行う制御器24における制御ロジックの説明図である。
図1に示す電動弁18a,18bの開閉制御を行う制御器25における制御ロジックの説明図である。
本発明の他の実施例である非常用炉心冷却設備の構成図である。
図6に示す水位監視装置101及び制御器102の詳細構成図である。
図6に示す水位監視装置103及び制御器104の詳細構成図である。
図6に示す弁開度監視装置105及び制御器106の詳細構成図である。
符号の説明
1…原子炉格納容器、2…原子炉、3…炉心、4,5…注水配管、8,9…爆破弁、10,11…逆止弁、12…冷却水プール、13…圧力抑制プール、14,50…配管、15…ポンプ、16…熱交換器、17a,17b…電動隔離弁、18a,18b…電動弁、21,22…水位計、23,24,25,54,102,104,105…制御器、39,40,52…補給水配管、44…炉心注水システム、45…圧力抑制プール水供給システム、46…燃料・補助プール冷却系、48…残留熱除去装置、65,78…電動隔離弁スイッチ(弁操作選択装置)、66,67,79,80,94,95,97,98…ワイプアウト、68,75,84,87…開閉信号生成部、93…第1電動弁スイッチ(弁操作選択装置)、96…第2電動弁スイッチ(弁操作選択装置)、101,103…水位監視装置、105…弁開度監視装置。