本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉炉心冷却システムを、図1を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11は沸騰水型原子力発電プラントに適用される。
まず、本実施例の原子炉炉心冷却システム11が適用された沸騰水型原子力発電プラント1を、図1を用いて説明する。沸騰水型原子力発電プラント1は、原子炉圧力容器2、炉心3、原子炉格納容器4及び原子炉炉心冷却システム11を有する。
複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心3が原子炉圧力容器2内に配置される。水位計測用の差圧計32が原子炉圧力容器2に設けられ、主蒸気配管10が原子炉圧力容器2に接続される。原子炉格納容器4は、原子炉圧力容器2を取り囲み、内部に、互いに分離されたドライウェル5及び圧力抑制室6を形成している。原子炉圧力容器2は、ドライウェル5内に配置される。圧力抑制室2内には、冷却水が充填され、水面9が形成される。冷却水を充填した圧力抑制プール7が圧力抑制室6内に設けられる。ベント管8が圧力抑制室6内に配置され、ベント管8の一端部がドライウェル5に開放され、ベント管5の他端部が圧力抑制プール7の冷却水中に開口している。
原子炉炉心冷却システム11は、隔離時復水器プール12、隔離時復水器13、蒸気供給管15,27、凝縮水排出管17,蒸気排出管29、タービン20及びポンプ21を有する。
隔離時復水器プール12には冷却水14が充填されており、隔離時復水器13が隔離時復水器プール12内に設置されて隔離時復水器プール12内の冷却水14に浸漬されている。隔離時復水器13は、蒸気室13a、水室13b及び複数の伝熱管13cを有し、各伝熱管13cの上端部が蒸気室13aに接続され、さらに、各伝熱管13cの下端部が水室13bに接続される。隔離弁16を設けた蒸気供給管15が、原子炉格納容器4内で主蒸気配管10に接続され、さらに、蒸気室13aに接続される。制御弁18を設けた凝縮水排出管17の一端が水室13bに接続され、凝縮水排出管17の他端が原子炉圧力容器2に接続される。凝縮水排出管17と原子炉圧力容器2との接続位置は蒸気供給管15の主蒸気配管10との接続位置よりも下方に配置される。隔離時復水器13は、原子炉圧力容器2内に形成される水面9よりも上方に配置され、好ましくは、原子炉圧力容器2よりも上方に配置されることが望ましい。隔離時復水器プール12も、原子炉圧力容器2よりも上方に配置されることが望ましい。隔離時復水器プール水12内の冷却水14の水位を計測するために、圧力計19が隔離時復水器プール12の底部に設置される。
沸騰水型原子力発電プラント1の通常運転時では、隔離弁16が常時開いた状態で、制御弁18が常時閉じた状態で管理されている。
タービン20が、主蒸気配管10に接続された蒸気供給管27に接続され、蒸気加減弁(流量調節弁)28及び蒸気止め弁33が蒸気供給管27に設けられる。主蒸気配管10と蒸気供給管27の接続位置は原子炉格納容器4内に配置される。タービン20に接続された蒸気排出管29は原子炉格納容器4を貫通して圧力抑制室内に達し、蒸気排出管29の端部が圧力抑制プール7の冷却水中に配置される。一端部が水源である貯水槽30内の冷却水中に配置されたプール注水管22が隔離時復水器プール12に接続される。タービン20に連結されたポンプ21がプール注水管22に設けられ、さらに、注水制御弁23及び逆止弁24がポンプ21の下流でプール注水管22に設けられる。注水制御弁26を設けた冷却水注水管25の一端部がポンプ21の下流でプール注水管22に接続され、冷却水注水管25の他端部が原子炉圧力容器2に接続される。
沸騰水型原子力発電プラント1において、万が一、所内電源、外部電源及び非常用電源等の全交流電源が喪失することを想定する。この全交流電源喪失事故が発生した場合における原子炉炉心冷却システム11の動作について説明する。全交流電源喪失事故が発生すると、全制御棒が炉心に挿入されて原子炉がスクラムされ、かつ主蒸気隔離弁が閉止されて原子炉圧力容器2が主復水器から隔離される。
原子炉圧力容器2が隔離されると、原子炉圧力容器2内の炉心3に装荷されている燃料集合体に含まれている核燃料物質で発生する崩壊熱を除去するために、通常時は閉じている制御弁18がバッテリー(図示せず)から供給される電力で開けられる。制御弁18だけでなく原子炉炉心冷却システム11に設けられた他の弁の開閉も、バッテリーから供給される電力を用いて行われる。原子炉圧力容器2内の冷却水はその崩壊熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、主蒸気配管10及び蒸気供給管15を通って隔離時復水器13の水室13bに流入し、各伝熱管13cに導かれる。伝熱管13c内の蒸気は、隔離時復水器プール12内の冷却水14によって冷却されて凝縮され、水になる。伝熱管13c内で蒸気の凝縮により生成された凝縮水は、隔離時復水器13の水室13bに集められ、さらに、凝縮水排出管17を通って原子炉圧力容器2内に流入する。隔離時復水器13から原子炉圧力容器2内への凝縮水の供給は、隔離時復水器13内で凝縮水により形成される水面と原子炉圧力容器2内の液面9の水頭差を駆動力として行われる。このような、隔離時復水器13から原子炉圧力容器2に凝縮水を供給する駆動力は、原子炉炉心冷却システム11において自然に発生する力であり、原子炉圧力容器2から隔離時復水器13への蒸気の供給及び隔離時復水器13から原子炉圧力容器2内への凝縮水の供給に蒸気供給管15または凝縮水排出管17にポンプ等の流体を昇圧する動的機器を設ける必要がないため、原子炉炉心冷却システム11では、全交流電源喪失時においても、隔離時復水器13が崩壊熱により発生する蒸気を冷却することができ、さらに、この冷却により生成された凝縮水を原子炉圧力容器2に戻すことができる。
このように、隔離時復水器13を有する原子炉炉心冷却システム11を設けることによって、全交流電源喪失による原子炉圧力容器2の隔離時において、崩壊熱によって炉心3で発生した蒸気を、凝縮させ、凝縮水として原子炉圧力容器2に供給するため、原子炉圧力容器2内で炉心3を冠水状態に保つことができる。
崩壊熱により炉心3で発生した蒸気を隔離時復水器13の伝熱管13c内で凝縮させることにより、蒸気が保有していた熱エネルギーは、隔離時復水器プール12内の冷却水14に伝えられ、冷却水14が加熱される。この加熱により冷却水の温度が上昇し、冷却水14が沸騰する。冷却水14の沸騰により生成された蒸気は、隔離時復水器プール12から外部環境に放出されるため、前述したように、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水面が低下する。この冷却水14の水位は、圧力計(第1水位検出装置)19で計測された、隔離時復水器プール12内の冷却水14の圧力に基づいて求められる。圧力計19で計測する圧力は、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水頭によって生じるものである。
圧力計19で計測された圧力の計測値は、中央制御室(図示せず)の表示装置に表示される。圧力計19による圧力の計測及び表示装置への圧力計測値の表示のために、バッテリーの電力が使用される。その圧力計測値に基づいて求めた、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位が、冷却水14の沸騰により設定水位よりも低下したとき、中央制御室にいる運転員は、中央制御室内の操作盤からの操作により注水制御弁23、蒸気加減弁28及び蒸気止め弁33を開く。蒸気加減弁28及び蒸気止め弁33が開くことによって、崩壊熱により原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の一部が、主蒸気配管10及び蒸気供給管27を通ってタービン20に供給される。タービン20がこの蒸気によって回転され、タービン20に連結されたポンプ21も回転される。タービン20を回転させてタービン20から排出された蒸気は、蒸気排出管29を通って圧力抑制プール7の冷却水中に放出され、この冷却水によって凝縮される。
貯水槽30内の冷却水31は、ポンプ21の回転によって汲み上げられて昇圧され、プール注水管22を通して隔離時復水器プール12に供給される。隔離時復水器プール12への冷却水31の供給量の調節は、蒸気加減弁28の開度を上記の操作盤より制御することにより行うことができる。これにより、復水器プール12内の冷却水14の水位を設定水位範囲内に保持することができ、さらに、隔離時復水器プール12から冷却水14がオーバーフローすることを防止できる。注水制御弁23、蒸気加減弁28及び蒸気止め弁33の開操作及び蒸気加減弁28の開度制御には、バッテリーから供給される電力が用いられる。
差圧計(第2水位検出装置)32で計測された差圧に基づいて求められた、原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が、原子炉圧力容器内の最小水位設定値よりも低くなったときには、操作員による制御盤の操作により注水制御弁26が開けられて注水制御弁23が閉じられる。このため、蒸気止め弁33が開いている状態で、ポンプ21から吐出された冷却水31は、冷却水注水管25を通って原子炉圧力容器2に供給される。冷却水注水管25による冷却水31の供給により、原子炉圧力容器2内の水位が回復される。原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が、原子炉圧力容器内の最大水位設定値よりも高くなったときには、注水制御弁23及び蒸気止め弁33が閉じられて原子炉圧力容器2への冷却水31の供給が停止される。
また、プール注水管22に逆止弁24を設けているので、万が一、プール注水管22が破損したとしても、隔離時復水器プール12内の冷却水14のプール注水管22への逆流による流出を防止することができる。
本実施例によれば、沸騰水型原子力発電プラント1の全交流電源の喪失が発生しても、原子炉圧力容器2内で崩壊熱により発生した蒸気をタービン20に供給してポンプ21を回転させ、貯水槽30内の冷却水31をプール注水管22により隔離時復水器プール12に供給することができる。このため、崩壊熱により発生した蒸気の隔離時復水器13内での凝縮に伴う隔離時復水器プール6内の冷却水14の蒸発により、隔離時復水器プール6内の冷却水14が低下しても、プール注水管22による冷却水31の隔離時復水器プール12への供給により、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位を設定水位に保持することができる。このため、隔離時復水器プール12内で隔離時復水器13が冷却水14の水面上方に露出しないので、原子炉圧力容器2内で崩壊熱により発生した蒸気を隔離時復水器13により長期に亘って凝縮させることができ、この凝縮によって生成された凝縮水を、原子炉圧力容器2内に継続して供給することができる。沸騰水型原子力発電プラント1の全交流電源の喪失が発生しても、継続した凝縮水の原子炉圧力容器2への供給により、炉心3の冠水状態をより長期にわたって保持することができ、炉心3をより長期にわたって安定に冷却することができる。
本実施例では、原子炉圧力容器2内で崩壊熱により発生した蒸気を隔離時復水器プール12内で隔離時復水器13により凝縮してその崩壊熱を隔離時復水器プール12内の冷却水に伝えられるので、全交流電源の喪失が発生しても、原子炉格納容器2内の圧力抑制プール7の冷却水に伝えられる崩壊熱の熱エネルギーが減少する。タービン20を駆動した蒸気が圧力抑制プール7内の冷却水中に放出されるが、この蒸気は崩壊熱により原子炉圧力容器2内で発生する蒸気の一部である。このように、圧力抑制プール7の冷却水に伝えられる崩壊熱の熱エネルギーが減少するため、圧力抑制プール7の冷却水の温度上昇が抑制され、圧力抑制プール7内で発生する蒸気の量が減少し、原子炉格納容器内の圧力上昇が抑制される。したがって、全交流電源の喪失が発生しても、原子炉格納容器内のガスを外部環境に放出するベント作業が不要になる。
また、本発実施例の原子炉炉心冷却システム1によれば、前述したように蒸気で駆動するタービン20によりポンプ21を駆動して貯水槽30内の冷却水14を隔離時復水器プール12に継続して注水することが可能になるため、隔離時復水器プール12の容積を小さくすることができ、沸騰水型原子力発電プラント1の耐震性が向上する。
本実施例の原子炉炉心冷却システム11によれば、原子炉圧力容器2内の冷却材の水面9よりも上方に設置する隔離時復水器プール12よりも下方に、貯水槽30を設置するため、貯水槽30へのアクセス性が良好である。このため、消防車等による貯水槽30内への冷却水の追加供給が比較的容易である。貯水槽30に冷却水を追加供給し続けることによって、貯水槽30内の冷却水31が枯渇する危険性がなくなり、原子炉圧力容器2内の炉心3の冷却を長期に亘って安定して行うことができる。
原子炉炉心冷却システム11では、隔離時復水器プール12に設置した隔離時復水器13の伝熱管13cが縦方向に配置された構成を有しているが、隔離時復水器13を、伝熱管13cが水平方向に配置された隔離時復水器にしてもよい。
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉炉心冷却システムを、図2及び図3を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Aが適用される原子力プラントは沸騰水型原子力発電プラント1Aである。
沸騰水型原子力発電プラント1Aは、実施例1における沸騰水型原子力発電プラント1において原子炉炉心冷却システム11を原子炉炉心冷却システム11Aに換えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Aの他の構成は沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。また、本実施例における原子炉炉心冷却システム11Aは、実施例1の原子炉炉心冷却システム11に水位制御装置(弁制御装置)34を追加した構成を有する。原子炉炉心冷却システム11Aの他の構成は原子炉炉心冷却システム11と同じである。
圧力計19が水位制御装置34に接続されている。水位制御装置34は、圧力計19で計測された圧力計測値に基づいて得られた、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位に基づいて注水制御弁23及び蒸気止め弁33を制御する。
実施例1の原子炉炉心冷却システム11では圧力計19の圧力計測値に基づいて操作員が手動で注水制御弁23及び蒸気止め弁33の制御を行っているが、本実施例の原子炉炉心冷却システム11Aでは、水位制御装置34が自動で注水制御弁23及び蒸気止め弁33の制御を行う。
沸騰水型原子力発電プラント1Aにおいて全交流電源の喪失が発生した場合、原子炉がスクラムされ、かつ主蒸気隔離弁が閉止されて原子炉圧力容器2が主復水器から隔離される。原子炉炉心冷却システム11Aでは、原子炉炉心冷却システム11と同様に、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気が隔離時復水器13で凝縮され、隔離時復水器13内で生成された凝縮水が原子炉圧力容器2に供給される。また、その蒸気の一部でタービン20が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が、タービン20で回転されるポンプ21によって昇圧されて、隔離時復水器13が設置された隔離時復水器プール12に供給される。
全交流電源喪失時に行われる、本実施例で用いられる水位制御装置34による注水制御弁23及び蒸気止め弁33の制御を、図3を用いて説明する。全交流電源喪失時には、バッテリーから水位制御装置34に電力が供給されて水位制御装置34が動作する。水位制御装置34には、隔離時復水器プール12の底部に設置した圧力計19で計測した圧力計測値を入力する。
最初に、隔離時復水器プール12の水位を求める(ステップ35)。圧力計19で計測した圧力計測値に基づいて、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位を演算する。水位の演算には、隔離時復水器プール12内の冷却水14の密度が必要となる。隔離時復水器プール12内は大気圧環境であり、大気圧環境下における水の密度は20℃から飽和水の範囲において5%程度しか密度が変化しないので、冷却水14の密度が1000kg/m3であるとして、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位を計算する。
まず、隔離時復水器プール12内の水位が最小水位設定値より小さいかが判定される(ステップ36)。算出された冷却水14の水位が最小水位設定値より小さいと判定されたとき、すなわち、ステップ36の判定がYesであるとき、注水制御弁23及び蒸気止め弁33が開けられる。注水制御弁23及び蒸気止め弁33が開いたとき、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の一部がタービン20を回転させてポンプ21を回転させ、貯水槽30内の冷却水31がポンプ21によって昇圧されてプール注水管22を通って隔離時復水器プール12に供給される。これにより、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位が回復される。
次に、算出された水位が最大水位設定値よりも大きいかが判定される(ステップ37)。ステップ36において、算出された冷却水14の水位が最小水位設定値よりも大きいと判定されたとき、すなわち、ステップ36の判定がNoであるとき、算出された冷却水14の水位が最大水位設定値よりも大きいかが判定される。冷却水14の水位が最大水位設定値よりも大きいとき、すなわち、ステップ36の判定がYesであるとき、蒸気止め弁33が閉じられる。これにより、タービン20への蒸気の供給が停止され、ポンプ21の回転が停止される。このため、隔離時復水器プール12への冷却水の供給が停止される。
ステップ37の判定がNoであるとき、すなわち、算出された水位が最大水位設定値と等しいかもしくは小さいときは、注水制御弁23及び蒸気止め弁33のそれぞれは現状の状態を保持する。
水位制御装置34は、ステップ35の処理を実行する水位演算装置、ステップ36の判定を行う第1判定装置、及びステップ37の判定を行う第2判定装置を有している。
なお、ステップ36の処理とステップ37の処理の実行順序を逆にしてもよい
本実施例は実施例1で生じた各効果を得ることができる。本実施例では、水位制御装置34により注水制御弁23及び蒸気止め弁33の制御を行って隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位を制御するため、運転員の負担を軽減することができる。
本発明の他の実施例である実施例3の原子炉炉心冷却システムを、図4及び図5を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Bが適用される原子力プラントは沸騰水型原子力発電プラント1Bである。
沸騰水型原子力発電プラント1Bは、実施例1における沸騰水型原子力発電プラント1において原子炉炉心冷却システム11を原子炉炉心冷却システム11Bに換えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Bの他の構成は沸騰水型原子力発電プラント1と同じである。また、本実施例における原子炉炉心冷却システム11Bは、実施例1の原子炉炉心冷却システム11に水位制御装置(弁制御装置)37及び圧力計38(第1圧力検出装置)を追加した構成を有する。原子炉炉心冷却システム11Bの他の構成は原子炉炉心冷却システム11と同じである。
圧力計19,38及び差圧計32が水位制御装置37に接続される。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Bでは、水位制御装置37が自動で注水制御弁23、蒸気止め弁33及び注水制御弁26の制御を行う。
沸騰水型原子力発電プラント1Bにおいて全交流電源の喪失が発生した場合、原子炉がスクラムされ、かつ主蒸気隔離弁が閉止されて原子炉圧力容器2が主復水器から隔離される。原子炉炉心冷却システム11Bでは、原子炉炉心冷却システム11と同様に、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気が隔離時復水器13で凝縮され、隔離時復水器13内で生成された凝縮水が原子炉圧力容器2に供給される。また、その蒸気の一部でタービン20が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が、タービン20で回転されるポンプ21によって昇圧されて、隔離時復水器13が設置された隔離時復水器プール12に供給される。
全交流電源喪失時に行われる、本実施例で用いられる水位制御装置37による注水制御弁23、蒸気止め弁33及び注水制御弁26の制御を、図5を用いて説明する。全交流電源喪失時には、バッテリーから電力が供給されて水位制御装置37が動作する。水位制御装置37は、隔離時復水器プール12の底部に設置した圧力計19で計測された圧力計測値、原子炉圧力容器2の頂部に設置された圧力計38で計測された、原子炉圧力容器2内のドームの圧力計測値、及び差圧計32で計測された、原子炉圧力容器2内の水面9上方のドームの圧力と原子炉圧力容器2内の水面9より下方の圧力の差圧の計測値をそれぞれ入力する。原子炉圧力容器2内のドームは、原子炉圧力容器2内において冷却水の水面9よりも上方に形成された空間である。
原子炉圧力容器2内の冷却水の飽和水密度を求める(ステップ39)。炉心3で発生する崩壊熱によって常に加熱されている原子炉圧力容器2内の冷却水は飽和状態にあるため、差圧計32で計測された差圧に基づいて原子炉圧力容器2内の水位を求めるためには、原子炉圧力容器2内の冷却水の飽和水密度及び原子炉圧力容器2内の蒸気の飽和蒸気密度が必要となる。飽和水密度及び飽和蒸気密度は圧力に大きく依存し、原子炉圧力容器2内の圧力は約10〜80気圧と大きく変化する可能性があるため、水位を求める前に飽和水密度及び飽和蒸気密度を求める必要がある。ステップ39では、圧力計38による圧力計測値を用いて原子炉圧力容器2内の冷却水の飽和水密度を求める。
原子炉圧力容器2内の蒸気の飽和蒸気密度を求める(ステップ40)。圧力計38による圧力計測値を用いて原子炉圧力容器2内の蒸気の飽和蒸気密度を求める。
原子炉圧力容器2内の水位を求める(ステップ41)。差圧計32で計測された差圧、ステップ39で求めた飽和水密度及びステップ40で求めた飽和蒸気密度を用いて、原子炉圧力容器2内の水位を算出する。
原子炉圧力容器2内の水位が原子炉圧力容器内の最小水位設定値より小さいかが判定される(ステップ42)。算出された原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が原子炉圧力容器内の最小水位設定値より小さいと判定されたとき、すなわち、ステップ36の判定がYesであるとき、注水制御弁26及び蒸気止め弁33が開けられ、注水制御弁23が閉じられる。注水制御弁23が既に閉じられた状態であるときには、その状態が保持される。注水制御弁26及び蒸気止め弁33が開いたとき、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の一部がタービン20を回転させてポンプ21を回転させ、貯水槽30内の冷却水31がポンプ21によって昇圧されて冷却水注水管25を通して原子炉圧力容器2に供給される。これにより、原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が回復される。
ステップ35において、隔離時復水器プール12の水位が実施例2と同様に求められる。算出された原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が原子炉圧力容器内の最小水位設定値より大きいと判定されたとき、すなわち、ステップ42の判定がNoであるとき、実施例2で実施されるステップ36の判定が行われる。ステップ36の判定がYesであるとき、注水制御弁23及び蒸気止め弁33が開けられ、注水制御弁26が閉じられる。注水制御弁23及び蒸気止め弁33が開いたとき、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の一部がタービン20を回転させてポンプ21を回転させ、貯水槽30内の冷却水31がポンプ21によって昇圧されてプール注水管22を通って隔離時復水器プール12に供給される。これにより、隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位が回復される。
ステップ36の判定がNoであるとき、すなわち、原子炉圧力容器2内の冷却水の水位及び隔離時復水器プール12内の冷却水14の水位がどちらもが最小水位設定値以上になっている場合は、オーバーフローを防止する目的から、水位制御装置37において以下の処理が実行される。
原子炉圧力容器2内の水位が原子炉圧力容器内の最大水位設定値より大きいかが判定される(ステップ44)。ステップ41で算出された原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が原子炉圧力容器内の最大水位設定値より大きいと判定されたとき、すなわち、ステップ44の判定がYesであるとき、注水制御弁26が開いているかが判定される(ステップ45)。ステップ45において注水制御弁26が開いていると判定されたとき、すなわち、ステップ45の判定がYesであるとき、注水制御弁26及び蒸気止め弁33が閉じられる。タービン20への蒸気の供給が停止されるため、ポンプ21も停止され、冷却水注水管25による原子炉圧力容器2への冷却水31の供給が停止される。これにより、原子炉圧力容器2内の冷却水のオーバーフローを防止することができる。
ステップ41で算出された原子炉圧力容器2内の冷却水の水位が原子炉圧力容器内最大水位設定値であってステップ44の判定がNoであるとき、または、ステップ45の判定がNoである(注水制御弁26が閉じている)とき、実施例2と同様に、ステップ37の判定が行われる。ステップ37の判定がYesであるとき、注水制御弁23が開いているかが判定される(ステップ47)。ステップ47の判定がYesであるとき、注水制御弁23及び蒸気止め弁33が閉じられる。タービン20への蒸気の供給が停止されるため、ポンプ21も停止され、冷却水注水管25による隔離時復水器プール12への冷却水31の供給が停止される。これにより、隔離時復水器プール12内の冷却水14のオーバーフローを防止することができる。
ステップ37の判定がNoであるとき、または、ステップ47の判定がNoであるとき、注水制御弁23,26及び蒸気止め弁33のそれぞれは現状の状態を保持する。
水位制御装置34は、ステップ35の処理を実行する第1水位演算装置、ステップ36の判定を行う第1判定装置、ステップ37の判定を行う第2判定装置、ステップ39の処理を行う飽和水密度演算装置、ステップ40の処理を行う飽和蒸気密度演算装置、ステップ41の処理を行う第2水位演算装置、ステップ42の処理を行う第3判定装置、ステップ44の処理を行う第4判定装置、ステップ45の処理を行う第5判定装置及びステップ47の処理を行う第6判定装置を有している。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例によれば、水位制御装置37により注水制御弁23,26及び蒸気止め弁33の制御を行って隔離時復水器プール12及び原子炉圧力容器2内のそれぞれの冷却水14の水位を自動的に制御するため、運転員の負担を軽減することができる。
また、原子炉圧力容器2からドライウェル5に蒸気もしくは冷却水が流出することで原子炉圧力容器2内の水位の低下速度が大きい状況(例えば、原子炉圧力容器2に接続された配管(例えば、原子炉格納容器4内での主蒸気配管10)が破断して原子炉圧力容器2内の高温高圧の冷却水が蒸気となってドライウェル5に流出する冷却材喪失事故(LOCA)が発生しているような仮想的な状況)においては、原子炉圧力容器2への冷却水の注水を優先する必要があるため、水位制御装置37を有する原子炉炉心冷却システム11Bでは、LOCA時において、原子炉圧力容器2への優先的な冷却水31の注水を自動的に実現できる。これにより、本実施例は、より幅広い事故に対して、柔軟に対応することが可能となる。
本発明の他の実施例である実施例4の原子炉炉心冷却システムを、図6及び図7を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Cが適用される原子力プラントは沸騰水型原子力発電プラント1Cである。
沸騰水型原子力発電プラント1Cは、実施例3における沸騰水型原子力発電プラント1Bにおいて原子炉炉心冷却システム11Bを原子炉炉心冷却システム11Cに換えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Cの他の構成は沸騰水型原子力発電プラント1Bと同じである。また、本実施例における原子炉炉心冷却システム11Cは、実施例3の原子炉炉心冷却システム11Bに圧力計48を追加し、水位制御装置37を弁制御装置49に替えた構成を有する。原子炉炉心冷却システム11Cの他の構成は原子炉炉心冷却システム11Bと同じである。圧力計48は、原子炉格納容器4に設けられ、圧力抑制室6内の、圧力抑制プール7に充填された冷却水の水面よりも上方に形成される空間の圧力を計測する。圧力計48は弁制御装置49に接続される。
沸騰水型原子力発電プラント1Cにおいて全交流電源の喪失が発生した場合、原子炉がスクラムされ、かつ主蒸気隔離弁が閉止されて原子炉圧力容器2が主復水器から隔離される。原子炉炉心冷却システム11Cでは、原子炉炉心冷却システム11Bと同様に、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気が隔離時復水器13で凝縮され、隔離時復水器13内で生成された凝縮水が原子炉圧力容器2に供給される。また、その蒸気の一部でタービン20が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が、タービン20で回転されるポンプ21によって昇圧されて、隔離時復水器13が設置された隔離時復水器プール12または原子炉圧力容器2に供給される。
弁制御装置49は、ステップ50の処理、及び実施例3の原子炉炉心冷却システム11Bに用いられる水位制御装置37で実行される各処理を実行する。
全交流電源喪失時に行われる、本実施例で用いられる弁制御装置49による注水制御弁23,26、及び蒸気止め弁33の制御を、図7を用いて説明する。全交流電源喪失時には、バッテリーから弁制御装置49に電力が供給されて弁制御装置49が動作する。弁制御装置49は、隔離時復水器プール12の底部に設置した圧力計19で計測された圧力計測値、原子炉圧力容器2の頂部に設置された圧力計38で計測された、原子炉圧力容器2内のドームの圧力計測値、差圧計32で計測された、原子炉圧力容器2内の水面9上方のドームの圧力と原子炉圧力容器2内の水面9より下方の圧力の差圧の計測値、及び圧力計48で計測された、圧力抑制プール7に充填された冷却水の水面よりも上方に形成される圧力抑制室6内の空間の圧力をそれぞれ入力する。
弁制御装置49は、蒸気止め弁33を強制閉止する強制閉止処理部、及び水位制御装置37を有する。強制閉止処理部では、ステップ60及び50の処理を実行する。圧力計38で計測された圧力と圧力計48で計測された圧力の差圧を求める(ステップ60)。圧力計38で計測された圧力から圧力計48で計測された圧力を引いて、前者の圧力と後者の圧力の差圧を求める。原子炉圧力容器2内のドーム圧力と圧力抑制室6内の空間の圧力の差圧がポンプ21を駆動するタービン20の最小駆動圧よりも大きいかが判定される(ステップ50)。ポンプ21を駆動するタービン20を回転させる駆動力は、原子炉圧力容器2内のドーム圧力と圧力抑制室6内の、圧力抑制プール7の冷却水の水面よりも上方に形成される空間の圧力の圧力差であり、ポンプ21を駆動するタービン20はタービン20の最小駆動圧以下では駆動しない。このため、タービン20が駆動しない条件下でタービン20への無駄な蒸気の流入を防止するために、蒸気止め弁33を強制的に閉止する必要がある。ステップ50では、ステップ60で算出した差圧がタービン20の最小駆動圧よりも大きいかを判定する。その差圧がタービン20の最小駆動圧よりも小さいとき、すなわち、ステップ50の判定がNoであるとき、蒸気止め弁33が閉じられ、原子炉圧力容器2から蒸気供給管27を通してのタービン20への蒸気の供給が停止される。ステップ60で算出した差圧がタービン20の最小駆動圧よりも大きいとき、すなわち、ステップ50の判定がYesであるとき、実施例3と同様に、水位制御装置37におけるステップ35〜37,39〜42,44,45及び47の各処理が実行される。
本実施例は実施例3で得られる各効果を得ることができる。本実施例は、タービン20への無駄な蒸気流入を防止することができ、タービン20から圧力抑制プール7に放出される蒸気の量を低減することができる。このため、圧力抑制プール7の冷却水の温度上昇が抑制される。
また、原子炉圧力容器2から蒸気もしくは冷却水が大量に流出している状況(例えば、原子炉圧力容器2に接続された配管(例えば原子炉格納容器4内での主蒸気配管10)がギロチン破断して原子炉圧力容器2内の高温高圧の冷却水が蒸気となってドライウェル5に大量に流出しているような仮想的な状況)においては、原子炉圧力容器2と圧力抑制室6の圧力差がほぼ0になる。しかしながら、本実施例では、弁制御装置49を用いることによって、ポンプ21を回転させるタービン20への無駄な蒸気流入を防止することができ、より幅広い事故の状況に対して、柔軟に対応することが可能となる。
本発明の他の実施例である実施例5の原子炉炉心冷却システムを、図8及び図9を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Dが適用される原子力プラントは沸騰水型原子力発電プラント1Dである。
沸騰水型原子力発電プラント1Dは、実施例4における沸騰水型原子力発電プラント1Cにおいて原子炉炉心冷却システム11Cを原子炉炉心冷却システム11Dに替えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Dの他の構成は沸騰水型原子力発電プラント1Cと同じである。また、本実施例における原子炉炉心冷却システム11Dは、実施例4の原子炉炉心冷却システム11Cに蒸気流量調整装置51及び蒸気加減弁(流量調節弁)54を追加した構成を有する。原子炉炉心冷却システム11Dの他の構成は原子炉炉心冷却システム11Cと同じである。蒸気加減弁54は蒸気供給管15に設けられ、圧力計38が蒸気流量調整装置51に接続される。
沸騰水型原子力発電プラント1Dにおいて全交流電源の喪失が発生した場合、原子炉がスクラムされ、原子炉圧力容器2が隔離される。原子炉炉心冷却システム11Dでは、原子炉炉心冷却システム11Cと同様に、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気が隔離時復水器13で凝縮され、隔離時復水器13内で生成された凝縮水が原子炉圧力容器2に供給される。また、その蒸気の一部でタービン20が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が、タービン20で回転されるポンプ21によって昇圧されて、隔離時復水器13が設置された隔離時復水器プール12に供給される。
実施例4で述べたように、原子炉圧力容器2内のドーム圧力と圧力抑制室6内の空間の圧力の差圧がタービン20の最小駆動圧以下では、タービン20は作動しない。このため、原子炉圧力容器2の圧力を所定の圧力以上に維持する必要がある。しかし、原子炉圧力容器2から隔離時復水器13に蒸気を供給し隔離時復水器13から原子炉圧力容器2に凝縮水を排出させる駆動力は、隔離時復水器13と原子炉圧力容器19内の冷却水の水面との水頭差であり、ポンプ等の動的機器を必要としない。その代り、隔離時復水器1における蒸気の除熱量を制御することができない。スクラム発生から時間が経過して炉心3で発生する崩壊熱量が減少すると、隔離時復水器13の除熱量が崩壊熱量を大幅に上回り、原子炉圧力容器2内の圧力が低下して隔離時復水器13に蒸気を供給することができなくなる虞がある。このような状態に陥ることを防ぐために、本実施例では、蒸気流量調整装置51が設けられている。蒸気流量調整装置51は、原子炉圧力容器2内の圧力の過度な低下を防止するために、圧力計38で計測した原子炉圧力容器2のドーム圧力の計測値を入力し、この計測値に基づいて蒸気加減弁54の開度を制御する。
全交流電源喪失時において、弁制御装置49は、実施例4と同様に、注水制御弁23,26及び蒸気止め弁33の制御を行う。さらに、蒸気流量調整装置51は、以下のように蒸気加減弁54の制御を実行する。蒸気流量調整装置51による蒸気加減弁54の制御を、図9を用いて説明する。圧力計38で計測された原子炉圧力容器2内のドームの圧力が、蒸気流量調整装置51に入力される。全交流電源喪失時には、バッテリーから蒸気流量調整装置51に電力が供給されて蒸気流量調整装置51が作動する。
圧力計38で計測された原子炉圧力容器2内の圧力と原子炉圧力容器最小圧力設定値との差を求める(ステップ52)。蒸気流量調整装置51に予め設定されている原子炉圧力容器最小圧力設定値から、圧力計38で計測された原子炉圧力容器2内のドームの圧力を差し引き、原子炉圧力容器最小圧力設定値とドームの圧力の差を求める。
次に、蒸気加減弁54に対する閉止トルク信号を生成する(ステップ53)。圧力計38で計測された原子炉圧力容器2内のドームの圧力が原子炉圧力容器最小圧力設定値よりも小さいときには、ステップ53で算出した圧力差が正の値になり、蒸気加減弁54に対する閉止トルクの信号が生成される。蒸気流量調整装置51は、この閉止トルク信号に応じて蒸気加減弁54の開度を減少させる。蒸気加減弁54の開度の減少は、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の、隔離時復水器13への供給量が減少し、隔離時復水器13で凝縮される蒸気量が減少する。このため、原子炉圧力容器2内の圧力が増加し、原子炉圧力容器最小圧力設定値と圧力計38で計測された原子炉圧力容器2のドームの圧力との差が負になって、閉止トルク信号が0となって蒸気加減弁54の閉止が停止され、蒸気加減弁54の開度が自動的に決定される。
隔離時復水器13の定格除熱量は、一般的に、原子炉スクラムからこのスクラム終了後の数秒〜数分経過時点までの期間に炉心3で発生する崩壊熱量と釣り合うように設計される。このため、本実施例では、蒸気流量調整装置51による蒸気加減弁54を開く制御は除外した。しかしながら、万が一、隔離時復水器13による除熱不足によって原子炉圧力容器2内の圧力が増加し過ぎる場合には、運転員が手動で蒸気加減弁54を開くことにより対応が可能である。
本実施例は実施例4で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、さらに、原子炉圧力容器19圧力の過度な減少を防止することで、原子炉隔離時冷却系による注水機能を長期間に亘って安定的に維持することが可能となる。
本発明の他の実施例である実施例6の原子炉炉心冷却システムを、図10を用いて説明する。本実施例の原子炉炉心冷却システム11Eが適用される原子力プラントは沸騰水型原子力発電プラント1Eである。
沸騰水型原子力発電プラント1Eは、実施例5における沸騰水型原子力発電プラント1Dにおいて原子炉炉心冷却システム11Dを原子炉炉心冷却システム11Eに替えた構成を有する。沸騰水型原子力発電プラント1Eの他の構成は沸騰水型原子力発電プラント1Dと同じである。また、本実施例における原子炉炉心冷却システム11Eは、実施例5の原子炉炉心冷却システム11Dに発電機55、バッテリー56及びクラッチ57,58を追加した構成を有する。原子炉炉心冷却システム11Eの他の構成は原子炉炉心冷却システム11Dと同じである。発電機55は、クラッチ58を介してタービン20に連結され、配線によりバッテリー56に接続される。タービン20とポンプ21はクラッチ57により連結される。
沸騰水型原子力発電プラント1Eにおいて全交流電源の喪失が発生した場合、原子炉がスクラムされ、原子炉圧力容器2が隔離される。原子炉炉心冷却システム11Eでは、原子炉炉心冷却システム11Dと同様に、バッテリー56から供給される電力により、弁制御装置49、蒸気流量調整装置51、注水制御弁23,26及び蒸気止め弁33が作動する。さらに、実施例5と同様に、崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気が隔離時復水器13で凝縮され、隔離時復水器13内で生成された凝縮水が原子炉圧力容器2に供給される。また、その蒸気の一部でタービン20が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が、タービン20で回転されるポンプ21によって昇圧されて、隔離時復水器13が設置された隔離時復水器プール12または原子炉圧力容器2に供給される。
バッテリー56は予め充電されているので、全交流電源が喪失して原子炉がスクラムされた状態においても、弁制御装置49、蒸気流量調整装置51、注水制御弁23,26及び蒸気止め弁33の作動をバッテリー56からの電力供給により行えるときには、タービン20とポンプ21はクラッチ57によって連結状態になっており、タービン20と発電機55はクラッチ58によって非連結状態になっている。炉心3での崩壊熱によって原子炉圧力容器2内で発生した蒸気の一部がタービン20に供給されてポンプ21が駆動され、貯水槽30内の冷却水31が隔離時復水器プール12または原子炉圧力容器2内に供給される。このときは、発電機55は、タービン20との連結が解除されているので、発電機55による発電が行われない。
しかしながら、バッテリー56の電圧が設定電圧まで低下したとき、蒸気止め弁33が閉止している状態を見計らって、運転員が、タービン20をポンプ駆動モードからバッテリー充電モードに変更する。このモード変更は、運転員が中央制御室の操作盤からクラッチ57の解除操作、及びクラッチ58の連結操作を行うことによって行われる。モード変更により、タービン20とポンプ21の連結が解除され、タービン20と発電機55がクラッチ58により連結される。タービン20と発電機55の連結後に蒸気止め弁33を開くことにより、タービン20に蒸気が供給されてタービン20が回転し、発電機55が回転される。発電機55で発電された電力はバッテリー56に充電される。このように、タービン20をバッテリー充電モードに変更することにより、全交流電源喪失時においてバッテリー56への充電が可能になる。
本実施例は実施例5で生じる各効果を得ることができる。さらに、タービン20がクラッチ57を介してポンプ21に連結されてクラッチ58を介して発電機55に連結されるので、本実施例は全交流電源喪失時において発電機55で発生した電力をバッテリー56に充電することができる。このため、原子炉炉心冷却システム11Eを長期に亘って運転する場合であってもバッテリー56の電圧低下を防ぐことができ、炉心3を長期に亘って安定して冷却することができる。
発電機55、バッテリー56及びクラッチ57,58は、原子炉炉心冷却システム11,11A,11B,11C及び11Dの何れにおいても適用しても良い。