JP4545648B2 - ポリイソシアネート組成物 - Google Patents
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Description
このような問題を解決するために、ポリウレタン組成物、特にポリイソシアネート組成物中に、一般にシリケート化合物と呼ばれる、テトラアルコキシシランやその縮合物、あるいはそれらの誘導体を混合して用いることによって、形成されるポリウレタン塗膜の表面を親水化する方法が用いられてきた。特許文献6では、二液型ポリウレタン塗料中に、テトラアルコキシシランを含有する塗料組成物が提案されている。また、特許文献7では、低極性有機溶剤に溶解可能なポリオールと、ポリイソシアネート化合物、長鎖のアルキル基を有するテトラアルコキシシランを含有した二液型ポリウレタン塗料が提案されている。これらの先行文献では、ポリイソシアネートの構造に関する詳細な記述はなく、シリケート化合物及び低極性有機溶剤と混合した場合に、相溶性不足のため白濁や相分離が生じる場合があった。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)(A)ヘキサメチレンジイソシアネート、及び炭素数が1〜20のモノアルコールから得られ、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が90/10〜70/30であり、50〜500mPa・sの粘度であるポリイソシアネート化合物、及び(B)アニリン点10℃〜70℃の低極性有機溶剤、を含有するポリイソシアネート組成物。
(2)(A)ヘキサメチレンジイソシアネート、及び炭素数が1〜20のモノアルコールから得られ、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が90/10〜70/30であり、50〜500mPa・sの粘度であるポリイソシアネート化合物、及び(C)下記の構造で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導物から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物、を含有するポリイソシアネート組成物。
つまり、塗り替え作業の際、旧塗膜の除去やシーリング剤の塗布なしに、直接本発明のポリイソシアネート組成物を用いた塗料を塗布した場合、リフティングが起こりにくくなる。また、補修作業、重ね塗り作業を行う場合も、下地塗膜を侵すことなく、上塗りが可能となる。
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、シリケート化合物を含有しているが、低温時にも分離、白濁し難いという特徴を有している。このため、主剤ポリオールと組み合わせたコーティング組成物は、良好な塗膜外観を有すると共に、塗布乾燥後、塗膜表面が親水性となり、耐雨筋汚染性が優れた塗膜を形成することができる。
更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、非常に低粘度という特徴も有しており、コーティング組成物とした場合、VOC(揮発性有機化合物)成分である有機溶剤の量を減らすことが可能となる。
本発明では、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物を用いる。
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に脂肪族基のみを有する化合物である。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると得られるポリイソシアネート化合物が低粘度となるのでより好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIは耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。以下、脂肪族ジイソシアネートと脂環式ジイソシアネートを総称してジイソシアネートという。
この中でイソブタノール、n−ブタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノールは低極性有機溶剤への溶解性が特に優れているため、より好ましい。
1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールは、低極性有機溶剤への溶解性、シリケート化合物との相溶性、共に非常に優れており、最も好ましい。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物は、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が90/10〜70/30である。アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比の上限は、より好ましくは87/13、一層好ましくは85/15である。下限は、より好ましくは74/26、一層好ましくは77/23、更に一層好ましくは80/20である。アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が、90/10〜70/30の場合に、硬化性と、低極性有機溶剤への溶解性、シリケート化合物との相溶性が十分となる。
1H−NMRの測定方法例:ポリイソシアネート化合物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート化合物に対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。1H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。
アロファネート基/イソシアヌレート基=(8.5ppm付近のシグナル面積)/(3.85ppm付近のシグナル面積/6)
更に、ビウレット体、その他のジイソシアネート重合体も、低極性有機溶剤への溶解性、シリケート化合物との相溶性が低下するため、含有量が多くなるのは好ましくない。本発明のポリイソシアネート組成物にビウレット体、その他のジイソシアネート重合体が含まれる量の範囲としては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に一層好ましくは3質量%以下が適当である。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物の粘度は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で好ましくは50〜500mPa.sである。粘度の下限は、より好ましくは75mPa.s、より一層好ましくは100mPa.s、更に一層好ましくは120mPa.sである。粘度の上限は、より好ましくは450mPa.s、より一層好ましくは400mPa.s、一層好ましくは350mPa.s、最も好ましくは300mPa.sである。50以上であれば十分な架橋性を有するポリイソシアネート組成物を得ることができる。500mPa.s以下であればVOC成分を減らしたコーティング組成物を得ることが可能となる。
数平均官能基数は、以下の式で求めることができる。
数平均官能基数=数平均分子量×NCO含有量(%)/4200
数平均分子量は、GPCの測定で求めることができる。
このような有機溶剤の例としては、メチルシクロヘキサン(アニリン点40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点44℃)、ミネラルスピリット(ミネラルターペン)(アニリン点56℃)、テレビン油(アニリン点20℃)等の他に、一般に石油系炭化水素として市販されているHAWS(シェルジャパン製、アニリン点17℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル化学製、アニリン点43℃)、LAWS(シェルジャパン製、アニリン点44℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル化学製、アニリン点55℃)、Aソルベント(新日本石油化学株式会社、アニリン点45℃)、クレンゾル(新日本石油化学株式会社製、アニリン点64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油化学株式会社製、アニリン点43℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学株式会社製、アニリン点44℃)等、あるいはこれらの有機溶剤の少なくとも1種類と、必要に応じて芳香族炭化水素系溶剤やエステル系溶剤、エーテル系溶剤等を混合したものが挙げられる。
あるいは、アニリン点が70℃を超えるイソパラフィン系、ナフテン系、パラフィン系の溶剤とエーテル系、エステル系等の溶剤を混合して、アニリン点を10℃〜70℃に調整して用いることもできる。イソパラフィン系の溶剤としては、例えばシェルゾールS(シェルケミカルズジャパン株式会社製、アニリン点78℃)やアイソパーG(エクソンモービル有限会社製、アニリン点78℃)、日石アイソゾール300(新日本石油化学株式会社製、アニリン点80℃)が挙げられる。ナフテン系の溶剤としては、例えばエクソールD40(エクソンモービル有限会社製、アニリン点69℃)、ナフテゾール160(新日本石油化学株式会社製、アニリン点69℃)、IPソルベント1016、1620(出光石油化学株式会社製、アニリン点72℃、81℃)などが挙げられる。
低極性有機溶剤を含有している本発明のポリイソシアネート組成物において、ポリイソシアネート化合物と低極性有機溶剤の質量比は、5/95〜95/5が好ましい。ポリイソシアネート化合物と低極性有機溶剤の質量比の下限は、より好ましくは10/90、より一層好ましくは15/85である。質量比の上限は、より好ましくは90/10、より一層好ましくは85/15である。
本発明のポリイソシアネート組成物は、下記の構造で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランあるいはその縮合物の誘導体から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物を含有している。
式中のRは、同一、もしくは異なる炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。炭素数の上限は好ましくは8、より好ましくは6、より一層好ましくは4である。また、Rは、好ましくはアルキル基である。
Rがアルキル基の場合、直鎖、分岐いずれのタイプでも良いが、直鎖状である方がより好ましい。
Rがアリール基の場合、単環および多環のいずれのタイプでも良いが、単環のものがより好ましい。
シリケート化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、およびこれらの縮合物等があげられる。このなかで、テトラメトキシシランの縮合物、テトラエトキシシランの縮合物は、塗膜を作成した場合、塗膜表面が親水性になりやすいため、好ましい。
シリケート化合物を含有した本発明のポリイソシアネート組成物において、ポリイソシアネート化合物とシリケート化合物の質量比は、好ましくは5/95〜95/5である。ポリイソシアネート化合物とシリケート化合物の質量比の下限は、より好ましくは10/90、より一層好ましくは20/80、最も好ましくは30/70である。上限は、より好ましくは90/10、より一層好ましくは80/20、最も好ましくは70/30である。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物を製造する方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。
(イ)C1〜20のモノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応を行い、ポリイソシアネートを得る方法。
(ロ)C1〜20のモノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応を行い、得られたアロファネート基を有するポリイソシアネートと、ジイソシアネートをイソシアヌレート化反応して得たイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを混合して、ポリイソシアネート化合物を得る方法。
(ハ)C1〜20のモノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後、あるいは同時にアロファネート化反応を行い、得られたアロファネート基を含有するポリイソシアネートと、C1〜20のモノアルコールとジイソシアネートを、ウレタン化反応し、その後あるいは同時にアロファネート化及びイソシアヌレート化反応を行い、得られたアロファネート基及びイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを混合してポリイソシアネート化合物を得る方法。
アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が90/10〜70/30の範囲になるように製造すれば、いずれの方法を用いても良い。
ウレタン化反応は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは40〜150℃、より一層好ましくは60〜120℃で、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜15時間、より一層好ましくは20分〜10時間行われる。20℃以上で反応が速く、200℃以下でウレトジオン化などの副反応が抑制され、また着色も抑制される。時間は、10分以上であれば反応を完結させることが可能となり、24時間以下であれば生産効率に問題が無く、また副反応も抑制される。ウレタン化反応は、無触媒で、またはスズ系、アミン系などの触媒の存在下で行う事ができる。
アロファネート化反応の反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜12時間、より一層好ましくは20分〜8時間、更に一層好ましくは20分〜6時間が良い。反応時間が10分以上であれば反応の制御が可能となり、24時間以内であれば生産効率が十分である。なお、反応温度が130℃を超える場合には、副反応としてウレトジオンが生成する場合があるため、反応時間は好ましくは8時間以内、より好ましくは6時間以内、より一層好ましくは4時間以内が良い。
イソシアヌレート化反応、あるいはアロファネート化及びイソシアヌレート化反応の反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは15分〜12時間、より一層好ましくは20分〜8時間、更に一層好ましくは20分〜6時間が良い。反応時間が10分以上であれば反応の制御が可能となり、24時間以内であれば生産効率が十分である。
(ロ)、あるいは(ハ)の方法を採用し、アロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する場合、アロファネート化反応は触媒を用いた方が好ましく、特にアロファネート基の選択率が高い触媒、より好ましくは生成するポリイソシアネートのアロファネート基/イソシアヌレート基の比が90/10〜100/0となる触媒を選択する方が好ましい。このような触媒として、例えば鉛、錫、ジルコニル、ジルコニウムのカルボン酸塩等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
(ハ)の方法を採用し、アロファネート基及びイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを製造する場合、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応は触媒を用いた方が好ましい。アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒として、例えばテトラアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウム、アルカリ金属塩のカルボン酸塩、ハイドロオキサイドや、アミノシリル基含有化合物等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。特に、アロファネート化の選択率が適度に高い方が、ウレタン基の残る可能性が低く好ましいため、より好ましくは生成するポリイソシアネートのアロファネート基/イソシアヌレート基の比が40/60〜70/30となる触媒が良い。このような触媒としては、テトラアルキルアンモニウム、ヒドロキシアルキルアンモニウムのカルボン酸塩、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
本発明において、アロファネート化触媒、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基を含有する化合物の製造の前、即ちジイソシアネートと水酸基を有する有機化合物のウレタン化反応に先だって添加しても良いし、ジイソシアネートと水酸基を有する有機化合物のウレタン化反応中に添加しても良く、ウレタン基含有化合物製造の後に添加しても良い。また、添加の方法として、所要量のアロファネート化触媒を一括して添加しても良いし、何回かに分割して添加しても良い。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
本発明におけるウレタン化反応、アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応の過程は、反応液のNCO含有率を測定するか、屈折率を測定する事により追跡できる。
また、シリカゲルや活性炭等の吸着剤を停止剤として用いることも可能である。この場合、反応で使用するジイソシアネートに対して、0.05〜10質量%の添加量が好ましい。
本発明のポリイソシアネート組成物は、主剤ポリオールと混合してコーティング組成物として用いることができる。主剤ポリオールとしては、例えば脂肪族炭化水素ポリオール類、含ケイ素系ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エポキシ樹脂類、アクリルポリオール類、及びアルキドポリオール類等の中の1種類またはその混合物などが挙げられる。その中でも低極性有機溶剤に溶解している主剤ポリオール、あるいは分散している、いわゆるNAD系の主剤ポリオールは、塗り替え作業の際に旧塗膜を侵しにくいので好ましい。
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート、ジブチルスズジアセテート等のジアルキルスズジカルボキシレートや、ジブチルスズオキサイド等のスズオキサイド化合物、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、及びN,N’−ジメチルピペラジンのような3級アミン類等があげられる。
更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、非常に低粘度という特徴も有しており、コーティング組成物とした場合、VOC成分である有機溶剤を減らすことが可能となる。
従って、本発明のポリイソシアネート組成物を用いたコーティング組成物は、塗料、インキ、接着剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができる。特に、塗り替え用途の建築外装塗料、重防食用塗料に適している。
アロファネート基とイソシアヌレート基の比は、1H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積比から求めた。
NCO含有率は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃で測定した。
標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100r.p.m. (128mPa.s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa.s〜256mPa.sの場合)
20r.p.m. (256mPa.s〜640mPa.sの場合)
10r.p.m. (640mPa.s〜1280mPa.sの場合)
5r.p.m. (1280mPa.s〜2560mPa.sの場合)
低極性有機溶剤溶解性(%)=((濁り始めた時点の低極性有機溶剤の質量(g)×100%)/(ポリイソシアネート化合物の質量(g))
シリケート相溶性は、20℃の条件で、有姿でのNCO含有率が10%となるように低極性有機溶剤「HAWS」(商品名、アニリン点17℃、シェルジャパン製)あるいは「A−ソルベント」(商品名、アニリン点45℃、新日本石油化学株式会社製)で希釈したサンプルに対して、シリケート化合物を加えていき、濁り始めた時点の質量を測定し、以下の式で求めた。
シリケート相溶性(%)=((濁り始めた時点のシリケート化合物の質量(g)×100%)/サンプルの質量(g))
ゲル分率は、塗膜約0.1gをアセトン中に20℃で24時間浸漬し、塗膜取り出し後、80℃1時間乾燥した塗膜の質量から求めた。
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI 1000gと2−エチルヘキサノール100gを仕込み、攪拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。90℃で、アロファネート化/イソシアヌレート化触媒としての2−エチルヘキサン酸ビスマスの固形分20%ミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスビスマス25%」をミネラルスピリットで希釈したもの)を10g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.01となった時点でリン酸2−エチルヘキシルエステル(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508」)を4.5g(触媒に対して8.0倍モル)を加え反応を停止した。
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)で未反応のHDIを除去した。
P−1の低極性有機溶剤溶解性を試験した。HAWS(シェルケミカルズジャパン製、アニリン点15℃)溶解性は、2000%を超えていた(以下、>2000%と表記)であった。Aソルベント(新日本石油化学株式会社製、アニリン点45℃)溶解性は、>2000%、ペガソール3040(エクソンモービル有限会社製、アニリン点55℃)溶解性は、>2000%であった。
P−1のシリケート相溶性を試験した。MKCシリケート MS58B15(商品名、一部ブトキシ基で置換したメチルシリケートの縮合物、三菱化学株式会社製)への相溶性は、>500%、MKCシリケート MS58B30(商品名、一部ブトキシ基で置換したメチルシリケートの縮合物、三菱化学株式会社製)への相溶性は、>500%であった。
合成例1と同様の装置に、HDI 2700gとイソブタノール132gを仕込み、攪拌化130℃で1時間ウレタン化反応を行った。アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスジルコニウム12%」をミネラルスピリットで希釈したもの)を0.55g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.0055となった時点で、リン酸2−エチルヘキシルエステル0.32g(触媒に対して、4.1倍モル)を加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネートは透明の液体であり、収量737g、粘度110mPa.s、NCO含有率19.4%であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネートをM−1とする。
合成例1と同様の装置に、HDI 2700gと2−エチルヘキサノール210gを仕込み、攪拌化130℃で1時間ウレタン化反応を行った。アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液を0.54g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.0055となった時点で、リン酸ドデシルエステルの50%イソブタノール溶液(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−512」をイソブタノールで希釈したもの)0.81g(触媒に対して、4.0倍モル)を加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネートは透明の液体であり、収量770g、粘度110mPa.s、NCO含有率17.2%であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネートをM−2とする。
合成例1と同様の装置に、HDI 1000gとイソブタノール50gを仕込み、攪拌化90℃で1時間ウレタン化反応を行った。アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒としてカプリン酸テトラメチルアンモニウムの固形分10%n−ブタノール溶液を0.53加えた。反応液の屈折率の上昇が0.015となった時点で、リン酸の固形分85%水溶液0.10g(触媒に対して4.0倍モル)を加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量440g、粘度450mPa.s、NCO含有率19.6%であった。NMRを測定した所、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は60/40であった。得られたポリイソシアネートをM−3とする。
合成例1と同様の装置に、HDI 1000gと2−エチルヘキサノール30gを仕込み、攪拌化80℃で1時間ウレタン化反応を行った。アロファネート化及びイソシアヌレート化触媒としてカプリン酸テトラメチルアンモニウムの固形分10%n−ブタノール溶液を0.36加えた。反応液の屈折率のNCO含有率が41.7%となった時点で、リン酸の固形分85%水溶液0.58g(触媒に対して4.0倍モル)を加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量300g、粘度450mPa.s、NCO含有率20.6%であった。NMRを測定した所、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は35/65であった。得られたポリイソシアネートをM−4とする。
上記で得られたM−1〜M−4、およびイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートM−5(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「デュラネートTPA−100」、粘度1300mPa.s、NCO含有率=23.2%)を混合し、ポリイソシアネート化合物P−2〜P−7を合成した。P−2〜P−7およびM−1、M−3を用いて、低極性有機溶剤溶解性(HAWS、Aソルベント、ペガソール3040)およびシリケート相溶性(MKCシリケート MS58B15、MS58B30)の試験を行った。合成方法(各成分の混合比)および粘度、NCO含有率、低極性有機溶剤溶解性、シリケート相溶性の試験結果を表1に記す。なお、低極性有機溶剤溶解性は、1000%以上を◎、500%以上1000%未満を○、300%以上500%未満を○’、100%以上300%未満を△、100%未満を×と表記した。また、シリケート相溶性は、400%以上を◎、300%以上400%未満を○、200%以上300%未満を○’、150%以上200%未満を△、100%以上150%未満を×、100%未満を××と表記した。
ポリイソシアネート化合物P−1〜P−10、M−2、M−3、及び低極性有機溶剤を用いて、実施例1〜11及び比較例3〜4のポリイソシアネート組成物を得た。
各成分の混合比と、これらのポリイソシアネート組成物を5℃に冷却した場合のポリイソシアネート組成物の状態を目視で観察した結果を表2に記す。なお、ポリイソシアネート組成物の状態は、良好なものを○、白濁あるいは分離した者を×と表記した。
ポリイソシアネート化合物P−1〜P−10、M−2、M−3、低極性有機溶剤、シリケート化合物を用いて、実施例12〜30及び比較例5〜8のポリイソシアネート組成物を得た。
各成分の混合比と、これらのポリイソシアネート組成物を5℃に冷却した場合のポリイソシアネート組成物の状態を目視で観察した結果を表3に記す。なお、ポリイソシアネート組成物の状態は、良好なものを○、白濁あるいは分離したものを×と表記した。比較例以外の実施例は発明の効果欄に記載の効果を示した。
参考例として、実施例12、実施例15、実施例19、実施例28、比較例6を用いて、塗膜性能の試験を実施した。ただし、比較例6の組成では低温時(5℃)で白濁するため、低温時でも白濁しない組成として、ポリイソシアネート:M−4 40部、低極性有機溶剤:HAWS(商品名、シェルケミカルズジャパン製) 40部、シリケート化合物:MKCシリケート MS58B30(商品名、三菱化学株式会社製) 20部という組成に変更した(この組成を比較例7とする)。更に、追加の比較例として、ポリイソシアネート M−1を用いたポリイソシアネート組成物を作成した(この組成を比較例8とする)。これらのポリイソシアネート組成物の組成を表4に示す。
更にこれらのアクリルポリオールと酸化チタンを主剤とする成分を調整し、前記ポリイソシアネート組成物と、NCO/OH比=1.0で混合してポリウレタン塗料を作成した。
ヒタロイド6500 170部
ヒタロイド6500B 19部
酸化チタン 100部
Aソルベント 20部
これを100mm×225mmのアルマイト板上に、アプリケーターで乾燥膜厚100ミクロンとなるように塗布し、20℃65%RH条件下で1週間乾燥させた後、長辺の1/3のところで、内角135℃となるように折り曲げ、面積の広い面を垂直にして、神奈川県川崎市にて北方向になるように固定し、実曝開始後3ヶ月目について、雨筋汚染を目視判定した。この結果を表5に記す。なお、表5では、雨筋汚染の判定は以下の通りである。
◎:雨筋が全く見られず、全体も汚れていない。
○:全体に汚れているが雨筋は見られない。
×:全体にやや汚れが見られ、雨筋も認められる。
更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、非常に低粘度という特徴も有しており、コーティング組成物とした場合、VOC成分を減らすことが可能となる。
従って、本発明のポリイソシアネート組成物を用いたコーティング組成物は、塗料、インキ、接着剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができる。特に、塗り替え用途の建築外装塗料、重防食用塗料に適している。
Claims (3)
- (A)ヘキサメチレンジイソシアネート、及び炭素数が1〜20のモノアルコールから得られ、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が90/10〜70/30であり、50〜500mPa・sの粘度であるポリイソシアネート化合物、及び(B)アニリン点10℃〜70℃の低極性有機溶剤、を含有するポリイソシアネート組成物。
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