以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図1を用いて、本発明のIDチップなどの半導体装置の構成について説明する。図1(A)に、本発明のIDチップの一形態を斜視図で示す。また図1(B)に、図1(A)に示すIDチップの、A−A’における断面図を示す。100は集積回路、101はアンテナに相当し、アンテナ101は集積回路100に電気的に接続されている。102は基板、103はカバー材に相当し、集積回路100及びアンテナ101は、基板102とカバー材103の間に挟まれている。
なお図1(B)では、集積回路100に含まれる半導体素子の一例として、TFT(薄膜トランジスタ)104を示しているが、集積回路100に用いられる半導体素子はTFTに限定されない。例えば、TFTの他に、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタなどを用いることができる。TFTを覆っている層間絶縁膜111上に、アンテナ101が形成されている。
また本発明のIDチップは、アンテナ101を構成している導線105間に絶縁層106が形成されている。さらに本発明では図1(B)に示すように、導線105間のみならず、導線105を覆うように絶縁層106が形成されていても良い。
次に、図1(B)の破線107で囲んだ、IDチップの断面の拡大図を、図1(C)に示す。絶縁層106には、絶縁体110に軟磁性材料の微粒子108を分散させたものを用いる。絶縁体110には、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ポリアミド等の有機樹脂を用いることができる。また上記有機樹脂の他に、無機の樹脂、例えばシロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂(以下、シロキサン系樹脂と呼ぶ)等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していても良い。
また軟磁性材料を含ませることが可能であるならば、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁膜も、絶縁体110として用いることが可能である。
また微粒子108に用いられる軟磁性材料として、例えばFe、Co、Ni、または、これらのいずれか複数を用いた合金の他、3Y2O3・5Fe2O3(YIG)、Fe2O3、Fe−Si−Al合金、Fe−Cr合金、FeP系合金、NiまたはNi−Fe合金にMo、Cu、Cr、Nbのいずれかひとつまたは複数を加えたパーマロイ系合金を用いることができる。また軟磁性材料として、Mn−Znフェライトに代表されるソフトフェライトを用いることもできる。
また図1(C)に示すように、本発明のIDチップは、絶縁層106と導線105との間に、導線105どうしを電気的に分離するための絶縁膜(以下、分離用絶縁膜)109が形成されていても良い。絶縁層106内における軟磁性材料の含有率が高い場合、上記分離用絶縁膜109は、導線105どうしを電気的に分離するのに有効な手段である。
なお、図1ではカバー材103を用いてIDチップの機械的強度を高めている例を示しているが、本発明のIDチップは必ずしもカバー材103を用いる必要はない。例えば、集積回路100及びアンテナ101を樹脂等で覆うことで、IDチップの機械的強度を高めるようにしても良い。また、絶縁層106の厚さを制御することで、IDチップの機械的強度を高めるようにしても良い。
また、基板102の耐熱温度が、集積回路100の作製工程における熱処理に耐えうる程度であれば、基板102上に集積回路100及びアンテナ101を直接形成しても良い。ただし、基板102として、例えばプラスチック基板など耐熱性に劣る基板を用いる場合は、耐熱性を有する基板上に集積回路を形成した後、基板102に集積回路100及びアンテナ101を貼り合わせるようにしても良い。
また、アンテナ101に用いられている導線105は、例えばAg、Au、Cu、Pd、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Al、Fe、Co、Zn、Sn、Niなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることができる。そして導線105は、例えば印刷法、フォトリソグラフィ法、めっき法、蒸着法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出して所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。また印刷法にはスクリーン印刷法、オフセット印刷法などが含まれる。
また図1(C)では、導線105が単層の導電膜で形成されているが、複数の導電膜を用いて形成されていても良い。
図2(A)に、パターニングされた第1の導体201を形成した後に、第1の導体201を覆うように第2の導体202を形成し、第1の導体201及び第2の導体202を導線105として用いる場合の、導線105の断面図を示す。図2(A)では、フォトリソグラフィ法を用いてNiで第1の導体201を形成した後、第1の導体201を覆うように、無電解めっき法を用いてCuで第2の導体202を形成する。なお第1の導体201は、フォトリソグラフィ法の他、印刷法、蒸着法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。第2の導体202は、無電解めっき法の他、電気めっき法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。
なお、第1の導体201、第2の導体202に用いられる材料は、図2(A)に示した構成に限定されない。また、図2(A)では、第1の導体201を第2の導体202が覆っている構成を示しているが、第1の導体201を覆っている第2の導体202は単層であるとは限らない。複数の層が積層された第2の導体202が、第1の導体201を覆っていても良い。
図2(B)に、複数の導電膜を積層した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで、導線105を形成する場合の、導線105の断面図を示す。図2(B)では、Tiで形成された第1の導体203上に、Alで形成された第2の導体204が積層するように形成されている。
なお、第1の導体203、第2の導体204に用いられる材料は、図2(B)に示した構成に限定されない。また、図2(B)では、第1の導体203と第2の導体204が積層されている構成を示しているが、3層以上の導体が積層するように、導線105が形成されていても良い。
また図2(B)に示すように、積層された複数の導体を形成した後、図2(A)に示すように、別の導体で、該積層された複数の導体を覆うことで、導線105を形成するようにしても良い。
なお、絶縁層106は、必ずしも導線105を覆っている必要はなく、少なくとも導線105に接して形成されていれば良い。図2(C)に、導線105間に、選択的に絶縁層106を形成した場合の、導線105の断面図を示す。絶縁層106は、液滴吐出法または印刷法などを用いて形成することができる。図2(C)の場合、導線105及び絶縁層106を形成した後、導線105及び絶縁層106を覆うように、保護膜205を形成することが望ましい。保護膜205には、有機樹脂またはシロキサン系樹脂など無機の樹脂を用いた絶縁膜で形成することができる。
また、分離用絶縁膜109は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などを用いても形成することができるが、液滴吐出法または印刷法などを用いて選択的に形成することが可能である。
図3(A)に、液滴吐出法を用いて、導線105を覆うように分離用絶縁膜301を選択的に形成した例を示す。図3(A)の場合、分離用絶縁膜301として、有機樹脂またはシロキサン系樹脂など無機の樹脂を用いることができる。なお図3(A)の場合も、図3(B)に示すように、絶縁層302を導線105間に選択的に形成しても良い。
また、導線105と層間絶縁膜111との間に、バリア性の高い窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜などの絶縁膜を形成しても良い。図3(C)に、バリア性の高い窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜などの絶縁膜303が、導線105と層間絶縁膜111との間に形成された場合の、導線105の断面図を示す。バリア性の高い絶縁膜303を形成することで、例えば導線105にCuなどの半導体素子の特性に悪影響を及ぼすような金属が用いられていた場合、該金属が半導体素子の方に拡散するのを抑えることができる。
また、導線105に用いられている金属のみならず、絶縁層106内の微粒子に、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすような金属が用いられている場合でも、該金属が半導体素子の方に拡散するのを抑えることができる。特に、導線105及び層間絶縁膜111を覆うように形成されている分離用絶縁膜304を、バリア性の高い窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜などの絶縁膜で形成することで、絶縁層106内の微粒子に用いられている金属が、半導体素子の方に拡散するのをより抑えることが可能になる。
次に、本発明のIDチップの詳しい作製方法について説明する。なお本実施の形態では、絶縁分離されたTFTを半導体素子の一例として示すが、集積回路に用いられる半導体素子はこれに限定されず、あらゆる回路素子を用いることができる。
まず図4(A)に示すように、耐熱性を有する第1の基板500上に剥離層501を形成する。第1の基板500として、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレス基板を含む金属基板または半導体基板を用いても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。
剥離層501は、非晶質シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン、微結晶シリコン(セミアモルファスシリコンを含む)等、シリコンを主成分とする層を用いることができる。剥離層501は、スパッタ法、減圧CVD法、プラズマCVD法等を用いて形成することができる。本実施の形態では、膜厚50nm程度の非晶質シリコンを減圧CVD法で形成し、剥離層501として用いる。なお剥離層501はシリコンに限定されず、エッチングにより選択的に除去できる材料で形成すれば良い。剥離層501の膜厚は、10〜100nmとするのが望ましい。セミアモルファスシリコンに関しては、30〜50nmとしてもよい。
次に、剥離層501上に、下地膜502を形成する。下地膜502は第1の基板500中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散し、TFTなどの半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。また下地膜502は、後の半導体素子を剥離する工程において、半導体素子を保護する役目も有している。下地膜502は単層であっても複数の絶縁膜を積層したものであっても良い。よってアルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡散を抑えることができる酸化珪素や、窒化珪素、窒化酸化珪素などの絶縁膜を用いて形成する。
本実施の形態では、膜厚100nmのSiON膜、膜厚50nmのSiNO膜、膜厚100nmのSiON膜を順に積層して下地膜502を形成するが、各膜の材質、膜厚、積層数は、これに限定されるものではない。例えば、下層のSiON膜に代えて、膜厚0.5〜3μmのシロキサン系樹脂をスピンコート法、スリットコーター法、液滴吐出法、印刷法などによって形成しても良い。また、中層のSiNO膜に代えて、窒化珪素膜(SiNx、Si3N4等)を用いてもよい。また、上層のSiON膜に代えて、SiO2膜を用いていても良い。また、それぞれの膜厚は、0.05〜3μmとするのが望ましく、その範囲から自由に選択することができる。
或いは、下地膜502は、SiON膜またはSiO2膜、シロキサン系樹脂膜、及びSiO2膜を順次積層して形成しても良い。
ここで、酸化珪素膜は、SiH4とO2、TEOS(テトラエトキシシラン)とO2等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の方法によって形成することができる。また、窒化珪素膜は、代表的には、SiH4とNH3の混合ガスを用い、プラズマCVDによって形成することができる。また、酸化窒化珪素膜(SiOxNy:x>y)、窒化酸化珪素膜(SiNxOy:x>y)は、代表的には、SiH4とN2Oの混合ガスを用い、プラズマCVDによって形成することができる。
次に、下地膜502上に半導体膜503を形成する。半導体膜503は、下地膜502を形成した後、大気に曝さずに形成することが望ましい。半導体膜503の膜厚は20〜200nm(望ましくは40〜170nm、好ましくは50〜150nm)とする。なお半導体膜503は、非晶質半導体であっても良いし、セミアモルファス半導体であっても良いし、多結晶半導体であっても良い。また半導体は珪素だけではなくシリコンゲルマニウムも用いることができる。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
なお半導体膜503は、公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、第1の基板500として石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法のうちいずれかと、950℃程度の高温アニールを組み合わせた結晶法を用いても良い。
例えばレーザ結晶化を用いる場合、レーザ結晶化の前に、レーザに対する半導体膜503の耐性を高めるために、500℃、1時間の熱アニールを該半導体膜503に対して行なう。そして連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波のレーザ光を照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、代表的には、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いるのが望ましい。具体的には、連続発振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザ光を得る。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、半導体膜503に照射する。このときのパワー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度とし、照射する。
また、パルス発振のレーザ光の発振周波数を10MHz以上とし、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を用いてレーザ結晶化を行なっても良い。パルス発振でレーザ光を半導体膜に照射してから半導体膜が完全に固化するまでの時間は数十nsec〜数百nsecと言われている。よって上記周波数を用いることで、半導体膜がレーザ光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザ光を照射できる。したがって、半導体膜中において固液界面を連続的に移動させることができるので、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を有する半導体膜が形成される。具体的には、含まれる結晶粒の走査方向における幅が10〜30μm、走査方向に対して垂直な方向における幅が1〜5μm程度の結晶粒の集合を形成することができる。該走査方向に沿って長く延びた単結晶の結晶粒を形成することで、少なくともTFTのチャネル方向には結晶粒界のほとんど存在しない半導体膜の形成が可能となる。
なおレーザ結晶化は、連続発振の基本波のレーザ光と連続発振の高調波のレーザ光とを並行して照射するようにしても良いし、連続発振の基本波のレーザ光とパルス発振の高調波のレーザ光とを並行して照射するようにしても良い。
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザ光を照射するようにしても良い。これにより、レーザ光照射による半導体表面の荒れを抑えることができ、界面準位密度のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
上述したレーザ光の照射により、結晶性がより高められた半導体膜503が形成される。なお、予め多結晶半導体を、スパッタ法、プラズマCVD法、熱CVD法などで形成するようにしても良い。
また本実施の形態では半導体膜503を結晶化しているが、結晶化せずに非晶質珪素膜または微結晶半導体膜のまま、後述のプロセスに進んでも良い。非晶質半導体、微結晶半導体を用いたTFTは、多結晶半導体を用いたTFTよりも作製工程が少ない分、コストを抑え、歩留まりを高くすることができるというメリットを有している。
非晶質半導体は、珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4、Si2H6が挙げられる。この珪化物気体を、水素、水素とヘリウムで希釈して用いても良い。
なおセミアモルファス半導体とは、非晶質半導体と結晶構造を有する半導体(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造の半導体を含む膜である。このセミアモルファス半導体は、自由エネルギーの観点から安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質なものであり、その粒径を0.5〜20nmとして非単結晶半導体中に分散させて存在せしめることが可能である。セミアモルファス半導体は、そのラマンスペクトルが520cm-1よりも低波数側にシフトしており、またX線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端させるために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。ここでは便宜上、このような半導体をセミアモルファス半導体(SAS)と呼ぶ。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで安定性が増し良好なセミアモルファス半導体が得られる。
またSASは珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4であり、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。また水素や、水素にヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素を加えたガスで、この珪化物気体を希釈して用いることで、SASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は2倍〜1000倍の範囲で珪化物気体を希釈することが好ましい。またさらに、珪化物気体中に、CH4、C2H6などの炭化物気体、GeH4、GeF4などのゲルマニウム化気体、F2などを混入させて、エネルギーバンド幅を1.5〜2.4eV、若しくは0.9〜1.1eVに調節しても良い。
例えば、SiH4にH2を添加したガスを用いる場合、或いはSiH4にF2を添加したガスを用いる場合、形成したセミアモルファス半導体を用いてTFTを作製すると、該TFTのサブスレッショルド係数(S値)を0.35V/dec以下、代表的には0.25〜0.09V/decとし、キャリア移動度を10cm2/Vsecとすることができる。そして上記セミアモルファス半導体を用いたTFTで、例えば19段リングオシレータを形成した場合、電源電圧3〜5Vにおいて、その発振周波数は1MH以上、好ましくは100MHz以上の特性を得ることができる。また電源電圧3〜5Vにおいて、インバータ1段あたりの遅延時間は26ns、好ましくは0.26ns以下とすることができる。
次に、図4(B)に示すように、半導体膜503をパターニングし、島状の半導体膜504〜506を形成する。そして、島状の半導体膜504〜506を覆うように、ゲート絶縁膜507を形成する。ゲート絶縁膜507は、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素又は酸化窒化珪素を含む膜を、単層で、又は積層させて形成することができる。積層する場合には、例えば、基板側から酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の3層構造とするのが好ましい。
次に図4(C)に示すように、ゲート電極510〜512を形成する。本実施の形態では、n型を付与する不純物がドーピングされたSi、WN、Wをスパッタ法で順に積層するように形成した後、レジスト513をマスクとしてエッチングを行なうことにより、ゲート電極510〜512を形成する。勿論、ゲート電極510〜512の材料、構造、作製方法は、これに限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとNiSi(ニッケルシリサイド)との積層構造、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとWSixとの積層構造、TaN(窒化タンタル)とW(タングステン)の積層構造としてもよい。また、種々の導電材料を用いて単層で形成しても良い。
また、レジストマスクの代わりに、SiOx等のマスクを用いてもよい。この場合、パターニングしてSiOx、SiON等のマスク(ハードマスクと呼ばれる。)を形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅のゲート電極510〜512を形成することができる。また、レジスト513を用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極510〜512を形成しても良い。
導電材料としては、導電膜の機能に応じて種々の材料を選択することができる。また、ゲート電極とアンテナとを同時に形成する場合には、それらの機能を考慮して材料を選択すればよい。
なお、ゲート電極をエッチング形成する際のエッチングガスとしては、CF4、Cl2、O2の混合ガスやCl2ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
次に図4(D)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜505をレジスト514で覆い、ゲート電極510、512をマスクとして、島状の半導体膜504、506に、n型を付与する不純物元素(代表的にはP(リン)又はAs(砒素))を低濃度にドープする(第1のドーピング工程)。第1のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1013〜6×1013/cm2、加速電圧:50〜70keVとしたが、これに限定されるものではない。この第1のドーピング工程によって、ゲート絶縁膜507を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜504、506に、一対の低濃度不純物領域516、517が形成される。なお、第1のドーピング工程は、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜505をレジストで覆わずに行っても良い。
次に図4(E)に示すように、レジスト514をアッシング等により除去した後、nチャネル型TFTとなる島状の半導体膜504、506を覆うように、レジスト518を新たに形成し、ゲート電極511をマスクとして、島状の半導体膜505に、p型を付与する不純物元素(代表的にはB(ホウ素))を高濃度にドープする(第2のドーピング工程)。第2のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1016〜3×1016/cm2、加速電圧:20〜40keVとして行なう。この第2のドーピング工程によって、ゲート絶縁膜507を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜505に、一対のp型の高濃度不純物領域519が形成される。
次に図5(A)に示すように、レジスト518をアッシング等により除去した後、ゲート絶縁膜507及びゲート電極510〜512を覆うように、絶縁膜520を形成する。本実施の形態では、膜厚100nmのSiO2膜をプラズマCVD法によって形成する。その後、エッチバック法により、絶縁膜520、ゲート絶縁膜507を部分的にエッチングし、図5(B)に示すように、ゲート電極510〜512の側壁に接するように、サイドウォール522〜524を自己整合的(セルフアライン)に形成する。エッチングガスとしては、CHF3とHeの混合ガスを用いる。なお、サイドウォールを形成する工程は、これらに限定されるものではない。
なお、絶縁膜520を形成した時に、第1の基板500の裏面にも絶縁膜が形成された場合には、レジストを用い、裏面に形成された絶縁膜を選択的にエッチングし、除去するようにしても良い。この場合、裏面に形成された絶縁膜は、サイドウォール522〜524をエッチバック法で形成する際に、絶縁膜520、ゲート絶縁膜507と共にエッチングして、除去するようにしても良い。
次に図5(C)に示すように、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜505を覆うように、レジスト525を新たに形成し、ゲート電極510、512及びサイドウォール522、524をマスクとして、n型を付与する不純物元素(代表的にはP又はAs)を高濃度にドープする(第3のドーピング工程)。第3のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1013〜5×1015/cm2、加速電圧:60〜100keVとして行なう。この第3のドーピング工程によって、島状の半導体膜504、506に、一対のn型の高濃度不純物領域527、528が形成される。
なおサイドウォール522、524は、後に高濃度のn型を付与する不純物をドーピングし、サイドウォール522、524の下部に低濃度不純物領域又はノンドープのオフセット領域を形成する際のマスクとして機能するものである。よって、低濃度不純物領域又はオフセット領域の幅を制御するには、サイドウォール522、524を形成する際のエッチバック法の条件または絶縁膜520の膜厚を適宜変更し、サイドウォール522、524のサイズを調整すればよい。
次に、レジスト525をアッシング等により除去した後、不純物領域の熱活性化を行っても良い。例えば、50nmのSiON膜を成膜した後、550℃、4時間、窒素雰囲気下において、加熱処理を行なえばよい。
また、水素を含むSiNx膜を、100nmの膜厚に形成した後、410℃、1時間、窒素雰囲気下において、加熱処理を行ない、島状の半導体膜504〜506を水素化する工程を行なっても良い。或いは、水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行ない、島状の半導体膜504〜506を水素化する工程を行なっても良い。また、水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。この水素化の工程により、熱的に励起された水素によりダングリングボンドを終端することができる。また、後の工程において可撓性を有する第2の基板548上に半導体素子を貼り合わせた後、第2の基板548を曲げることにより半導体膜中に欠陥が形成されたとしても、水素化により半導体膜中の水素の濃度を、1×1019〜1×1022atoms/cm3好ましくは1×1019〜5×1020atoms/cm3とすることで、半導体膜に含まれている水素によって該欠陥を終端させることができる。また該欠陥を終端させるために、半導体膜中にハロゲンを含ませておいても良い。
上述した一連の工程により、nチャネル型TFT529、pチャネル型TFT530、nチャネル型TFT531が形成される。上記作製工程において、エッチバック法の条件または絶縁膜520の膜厚を適宜変更し、サイドウォールのサイズを調整することで、チャネル長0.2μm〜2μmのTFTを形成することができる。なお、本実施の形態では、TFT529〜531をトップゲート構造としたが、ボトムゲート構造(逆スタガ構造)としてもよい。
さらに、この後、TFT529〜531を保護するためのパッシベーション膜を形成しても良い。パッシベーション膜は、アルカリ金属やアルカリ土類金属のTFT529〜531への侵入を防ぐことができる、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いるのが望ましい。具体的には、例えば膜厚600nm程度のSiON膜を、パッシベーション膜として用いることができる。この場合、水素化処理工程は、該SiON膜形成後に行っても良い。このように、TFT529〜531上には、SiONとSiNxとSiONの3層の絶縁膜が形成されることになるが、その構造や材料はこれらに限定されるものではない。上記構成を用いることで、TFT529〜531が下地膜502とパッシベーション膜とで覆われるため、Naなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体素子に用いられている半導体膜中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのをより防ぐことができる。
次に図5(D)に示すように、TFT529〜531を覆うように、第1の層間絶縁膜533を形成する。第1の層間絶縁膜533は、ポリイミド、アクリル、ポリアミド等の、耐熱性を有する有機樹脂を用いることができる。また上記有機樹脂の他に、低誘電率材料(low−k材料)、Si−O−Si結合を含む樹脂(以下、シロキサン系樹脂ともいう)等を用いることができる。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)の結合で骨格構造が形成される。これらの置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えば、アルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。また、フルオロ基を置換基として用いてもよい。または、置換基として少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。第1の層間絶縁膜533の形成には、その材料に応じて、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を採用することができる。また、無機材料を用いてもよく、その際には、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、PSG(リンガラス)、PBSG(リンボロンガラス)、BPSG(ボロンリンガラス)、アルミナ膜等を用いることができる。なお、これらの絶縁膜を積層させて、第1の層間絶縁膜533を形成しても良い。
さらに本実施の形態では、第1の層間絶縁膜533上に、第2の層間絶縁膜534を形成する。第2の層間絶縁膜534としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)或いは窒化炭素(CN)等の炭素を有する膜、又は、酸化珪素膜、窒化珪素膜或いは窒化酸化珪素膜等を用いることができる。形成方法としては、プラズマCVD法や、大気圧プラズマ等を用いることができる。あるいは、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン等の感光性又は非感光性の有機材料や、シロキサン系樹脂等を用いてもよい。
なお、第1の層間絶縁膜533又は第2の層間絶縁膜534と、後に形成される配線を構成する導電材料等との熱膨張率の差から生じる応力によって、第1の層間絶縁膜533又は第2の層間絶縁膜534の膜剥がれや割れが生じるのを防ぐために、第1の層間絶縁膜533又は第2の層間絶縁膜534中にフィラーを混入させておいても良い。
次に図5(D)に示すように、第1の層間絶縁膜533及び第2の層間絶縁膜534にコンタクトホールを形成し、TFT529〜531に接続する配線535〜539を形成する。コンタクトホール開孔時のエッチングに用いられるガスは、CHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。本実施の形態では、配線535〜539を、Alで形成する。なお配線535〜539をTi、TiN、Al−Si、Ti、及びTiNの5層構造とし、スパッタ法を用いて形成しても良い。
なお、Alにおいて、Siを混入させることにより、配線パターニング時のレジストベークにおけるヒロックの発生を防止することができる。また、Siの代わりに、0.5%程度のCuを混入させても良い。また、TiやTiNでAl−Si層をサンドイッチすることにより、耐ヒロック性がさらに向上する。なお、パターニング時には、SiON等からなる上記ハードマスクを用いるのが望ましい。なお、配線の材料や、形成方法はこれらに限定されるものではなく、前述したゲート電極に用いられる材料を採用しても良い。
なお、配線535、536はnチャネル型TFT529の高濃度不純物領域527に、配線536、537はpチャネル型TFT530の高濃度不純物領域519に、配線538、539はnチャネル型TFT531の高濃度不純物領域528に、それぞれ接続されている。
次に図5(E)に示すように、配線535〜539を覆うように、第2の層間絶縁膜534上に第3の層間絶縁膜540を形成する。第3の層間絶縁膜540は、配線535の一部が露出するような開口部を有する。また第3の層間絶縁膜540は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン系絶縁膜を用いて形成することができる。有機樹脂膜ならば、例えばアクリル、ポリイミド、ポリアミドなど、無機絶縁膜ならば酸化珪素、窒化酸化珪素などを用いることができる。なお開口部を形成するのに用いるマスクを、液滴吐出法または印刷法で形成することができる。また第3の層間絶縁膜540自体を、液滴吐出法または印刷法で形成することもできる。
次に、アンテナ541を第3の層間絶縁膜540上に形成する。アンテナ541は、Ag、Au、Cu、Pd、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Al、Fe、Co、Zn、Sn、Niなどの金属、金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることができる。そしてアンテナ541は、配線535と接続されている。なお図5(E)では、アンテナ541が配線535と直接接続されているが、本発明のIDチップはこの構成に限定されない。例えば別途形成した配線を用いて、アンテナ541と配線535とを電気的に接続するようにしても良い。
アンテナ541は印刷法、フォトリソグラフィ法、めっき法、蒸着法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。本実施の形態では、アンテナ541が単層の導電膜で形成されているが、複数の導電膜が積層されたアンテナ541を形成することも可能である。
印刷法、液滴吐出法を用いることで、露光用のマスクを用いずとも、アンテナ541を形成することが可能になる。また、液滴吐出法、印刷法だと、フォトリソグラフィ法と異なり、エッチングにより除去されてしまうような材料の無駄がない。また高価な露光用のマスクを用いなくとも良いので、IDチップの作製に費やされるコストを抑えることができる。
液滴吐出法または各種印刷法を用いる場合、例えば、CuをAgでコートした導電粒子なども用いることが可能である。なお液滴吐出法を用いてアンテナ541を形成する場合、該アンテナ541の密着性が高まるような処理を、第3の層間絶縁膜540の表面に施すことが望ましい。
密着性を高めるための処理として、具体的には、例えば触媒作用により導電膜または絶縁膜の密着性を高めることができる金属または金属化合物を第3の層間絶縁膜540の表面に付着させる方法、形成される導電膜または絶縁膜との密着性が高い有機系の絶縁膜、金属、金属化合物を第3の層間絶縁膜540の表面に付着させる方法、第3の層間絶縁膜540の表面に大気圧下または減圧下においてプラズマ処理を施し、表面改質を行なう方法などが挙げられる。また、上記導電膜または絶縁膜との密着性が高い金属として、チタン、チタン酸化物の他、3d遷移元素であるSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどが挙げられる。また金属化合物として、上述した金属の酸化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられる。上記有機系の絶縁膜として、例えばポリイミド、シロキサン系樹脂等が挙げられる。
第3の層間絶縁膜540に付着させる金属または金属化合物が導電性を有する場合、アンテナの正常な動作が妨げられないように、そのシート抵抗を制御する。具体的には、導電性を有する金属または金属化合物の平均の厚さを、例えば1〜10nmとなるように制御したり、該金属または金属化合物を酸化により部分的に、または全体的に絶縁化したりすれば良い。或いは、密着性を高めたい領域以外は、付着した金属または金属化合物をエッチングにより選択的に除去しても良い。また金属または金属化合物を、予め基板の全面に付着させるのではなく、液滴吐出法、印刷法、ゾル−ゲル法などを用いて特定の領域にのみ選択的に付着させても良い。なお金属または金属化合物は、第3の層間絶縁膜540の表面において完全に連続した膜状である必要はなく、ある程度分散した状態であっても良い。
なおアンテナ541を形成したら、図6(A)に示すように、アンテナ541を覆うように、分離用絶縁膜542を形成する。分離用絶縁膜542には、有機樹脂、無機絶縁膜、シロキサン系樹脂などを用いることができる。無機絶縁膜として、具体的には、例えばDLC膜、窒化炭素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化珪素膜、AlNX膜またはAlNXOY膜等を用いることができる。また、例えば窒化炭素膜と窒化珪素を積層した膜、ポリスチレンを積層した膜などを、分離用絶縁膜542として用いても良い。本実施の形態では、分離用絶縁膜542として窒化珪素膜を用いる。
次に図7(C)に示すように、分離用絶縁膜542を覆うように、保護層543を形成する。保護層543は、後に剥離層501をエッチングにより除去する際に、TFT529〜531及び配線535〜539を保護することができる材料を用いる。例えば、水またはアルコール類に可溶なエポキシ系、アクリレート系、シリコン系の樹脂を全面に塗布することで保護層543を形成することができる。
本実施の形態では、スピンコート法で水溶性樹脂(東亜合成製:VL−WSHL10)を膜厚30μmとなるように塗布し、仮硬化させるために2分間の露光を行ったあと、紫外線を裏面から2.5分、表面から10分、合計12.5分の露光を行って本硬化させて、保護層543を形成する。なお、複数の有機樹脂を積層する場合、有機樹脂同士では使用している溶媒によって塗布または焼成時に一部溶解したり、密着性が高くなりすぎたりする恐れがある。従って、分離用絶縁膜542と保護層543を共に同じ溶媒に可溶な有機樹脂を用いる場合、後の工程において保護層543の除去がスムーズに行なわれるように、分離用絶縁膜542を覆うように、無機絶縁膜(SiNX膜、SiNXOY膜、AlNX膜、またはAlNXOY膜)を形成しておくことが好ましい。
次に図6(B)に示すように、IDチップどうしを分離するために溝546を形成する。溝546は、剥離層501が露出する程度の深さを有していれば良い。溝546の形成は、ダイシング、スクライビング、フォトリソグラフィ法などを用いることができる。なお、第1の基板500上に形成されているIDチップを分離する必要がない場合、必ずしも溝546を形成する必要はない。
次に図6(C)に示すように、剥離層501をエッチングにより除去する。本実施の形態では、エッチングガスとしてハロゲン化フッ素を用い、該ガスを溝546から導入する。本実施の形態では、例えばClF3(三フッ化塩素)を用い、温度:350℃、流量:300sccm、気圧:8×102Pa(6Torr)、時間:3時間の条件で行なう。また、ClF3ガスに窒素を混ぜたガスを用いても良い。ClF3等のフッ化ハロゲンを用いることで、剥離層501が選択的にエッチングされ、第1の基板500をTFT529〜531から剥離することができる。なおフッ化ハロゲンは、気体であっても液体であってもどちらでも良い。
次に図7(A)に示すように、剥離されたTFT529〜531を、接着剤547を用いて第2の基板548に貼り合わせる。接着剤547は、第2の基板548と下地膜502とを貼り合わせることができる材料を用いる。接着剤547は、例えば反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
第2の基板548として、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、可撓性を有する紙またはプラスチックなどの有機材料を用いることができる。または第2の基板548として、フレキシブルな無機材料を用いていても良い。プラスチック基板は、極性基のついたポリノルボルネンからなるARTON(JSR製)を用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。第2の基板548は集積回路において発生した熱を拡散させるために、2〜30W/mK程度の高い熱伝導率を有する方が望ましい。
次に図7(A)に示すように、分離用絶縁膜542を覆うように、絶縁層549を形成する。絶縁層549は、軟磁性材料で形成された微粒子551が分散された、絶縁体550を用いている。絶縁体550には、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ポリアミド等の有機樹脂を用いることができる。また上記有機樹脂の他に、無機の樹脂、例えばシロキサン系材料等を用いることができる。シロキサン系樹脂の置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えば、アルキル基、芳香族炭化水素等)が用いられる。または、置換基としてフルオロ基を用いてもよい。または、置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。
また微粒子551に用いられる軟磁性材料として、例えばFe、Co、Ni、または、これらのいずれか複数を用いた合金の他、3Y2O3・5Fe2O3(YIG)、Fe2O3、Fe−Si−Al合金、Fe−Cr合金、FeP系合金、NiまたはNi−Fe合金にMo、Cu、Cr、Nbのいずれかひとつまたは複数を加えたパーマロイ系合金を用いることができる。また軟磁性材料として、Mn−Znフェライトに代表されるソフトフェライトを用いることもできる。
微粒子551の濃度、比表面積は、用いる軟磁性材料によって適宜調整することが望ましい。軟磁性材料の濃度が高すぎると、絶縁層549の抵抗が下がることで渦電流による磁束の損失が生じてしまい、インダクタンスを高めにくい。逆に、軟磁性材料の濃度が低すぎても、絶縁層549全体の透磁率が低すぎて、アンテナ541のインダクタンスを高めにくい。また微粒子551の比表面積は、小さすぎると微粒子551の径が大きくなりすぎるため、アンテナ541を構成している導線間に微粒子551を均一に分散させることが難しくなる。逆に微粒子551の比表面積が大きすぎると、微粒子551が凝集しやすくなり、これもまた、導線間に微粒子551を均一に分散させることが難しくなる。軟磁性材料としてFe2O3を用いる場合、例えば微粒子551の比表面積が50〜300m2/g、濃度が40〜50mol%となるように、絶縁層549を形成することができる。
次に、接着剤552を絶縁層549上に塗布し、カバー材553を貼り合わせる。カバー材553は第2の基板548と同様の材料を用いることができる。接着剤552の厚さは、例えば10〜200μmとすれば良い。
また接着剤552は、カバー材553と絶縁層549とを貼り合わせることができる材料を用いる。接着剤552は、例えば反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
なお本実施の形態では、接着剤552を用いて、カバー材553を絶縁層549に貼り合わせているが、本発明はこの構成に限定されない。絶縁層549が有する絶縁体550に、接着剤としての機能を有する樹脂を用いることで、絶縁層549とカバー材553とを直接貼り合わせることも可能である。
また本実施の形態では、図7(B)に示すように、カバー材553を用いる例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば図7(A)に示した工程までで終了としても良い。
上述した各工程を経て、IDチップが完成する。上記作製方法によって、トータルの膜厚0.3μm以上3μm以下、代表的には2μm程度の飛躍的に薄い集積回路を第2の基板548とカバー材553との間に形成することができる。なお集積回路の厚さは、半導体素子自体の厚さのみならず、接着剤547と接着剤552間に形成された各種絶縁膜及び層間絶縁膜の厚さを含め、アンテナは含まないものとする。またIDチップが有する集積回路の占める面積を、5mm四方(25mm2)以下、より望ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)程度とすることができる。
なお集積回路を、第2の基板548とカバー材553の間のより中央に位置させることで、IDチップの機械的強度を高めることができる。具体的には、第2の基板548とカバー材553の間の距離をdとすると、集積回路の厚さ方向における中心と第2の基板548との間の距離xが、以下の数1に示す式を満たすように、接着剤547、接着剤552の厚さを制御することが望ましい。
また好ましくは、以下の数2に示す式を満たすように、接着剤547、接着剤552の厚さを制御する。
また、図8に示すように、集積回路におけるTFTの島状の半導体膜から下部の下地膜までの距離(tunder)と、島状の半導体膜から上部の第3の層間絶縁膜540までの距離(tover)が、等しく又は概略等しくなるように、下地膜502、第1の層間絶縁膜533、第2の層間絶縁膜534または第3の層間絶縁膜540の厚さを調整しても良い。このようにして、島状の半導体膜を集積回路の中央に配置せしめることで、半導体層への応力を緩和することができ、クラックの発生を防止することができる。
また本実施の形態では、アンテナを覆うように絶縁層が形成されているのみであるが、本発明はこの構成に限定されない。アンテナと第2の基板との間に、軟磁性材料が分散された絶縁層が形成されていても良い。図17に、第2の層間絶縁膜1701上に第3の層間絶縁膜1704が形成されており、なおかつ該第3の層間絶縁膜1704は2層の絶縁膜1702、1703が順に積層されるように形成されている場合の、IDチップの断面図を示す。第3の層間絶縁膜1704上にはアンテナ1705が形成されている。そして、絶縁膜1702、1703のうち、最もアンテナ1705に近い絶縁膜1703には、軟磁性材料で形成された微粒子が分散されている。よって図17において、絶縁膜1703は本発明の絶縁層に相当する。さらに図17に示すIDチップでは、アンテナ1705が分離用絶縁膜1706に覆われており、アンテナ1705及び分離用絶縁膜1706を覆うように、軟磁性材料で形成された微粒子が分散されている絶縁層1707が形成されている。
なお分離用絶縁膜1706は、必ずしも設ける必要はない。また絶縁層1707は、アンテナ1705を構成している導線間のみに形成されていても良い。また、絶縁膜1703とアンテナ1705との間にも、分離用絶縁膜を形成するようにしても良い。
図17に示すように、絶縁層として機能する絶縁膜1703を形成することで、よりアンテナの利得を高めることができる。
なお本実施の形態では、耐熱性の高い第1の基板500と集積回路の間に剥離層を設け、エッチングにより該剥離層を除去することで基板と集積回路とを剥離する方法について示したが、本発明のIDチップの作製方法は、この構成に限定されない。例えば、耐熱性の高い基板と集積回路の間に金属酸化膜を設け、該金属酸化膜を結晶化により脆弱化して集積回路を剥離しても良い。或いは、耐熱性の高い基板と集積回路の間に、水素を含む非晶質半導体膜を用いた剥離層を設け、レーザ光の照射により該剥離層を除去することで基板と集積回路とを剥離しても良い。或いは、集積回路が形成された耐熱性の高い基板を機械的に削除または溶液やガスによるエッチングで除去することで集積回路を基板から切り離しても良い。
またIDチップの可撓性を確保するために、下地膜502に接する接着剤547に有機樹脂を用いる場合、下地膜502として窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜を用いることで、有機樹脂からNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が半導体膜中に拡散するのを防ぐことができる。
また対象物の表面が曲面を有しており、それにより該曲面貼り合わされたIDチップの第2の基板548が、錐面、柱面など母線の移動によって描かれる曲面を有するように曲がってしまう場合、該母線の方向とTFT529〜531のキャリアが移動する方向とを揃えておくことが望ましい。上記構成により、第2の基板548が曲がっても、それによってTFT529〜531の特性に影響が出るのを抑えることができる。また、島状の半導体膜が集積回路内において占める面積の割合を、1〜30%とすることで、第2の基板548が曲がっても、それによってTFT529〜531の特性に影響が出るのをより抑えることができる。
なお一般的にIDチップで用いられている電波の周波数は、13.56MHz、2.45GHzが多く、該周波数の電波を検波できるようにIDチップを形成することが、汎用性を高める上で非常に重要である。
また本実施の形態のIDチップでは、半導体基板を用いて形成されたIDチップよりも電波が遮蔽されにくく、電波の遮蔽により信号が減衰するのを防ぐことができるというメリットを有している。よって、半導体基板を用いずに済むので、IDチップのコストを大幅に低くすることができる。例えば、直径12インチのシリコン基板を用いた場合と、730×920mm2のガラス基板を用いた場合とを比較する。前者のシリコン基板の面積は約73000mm2であるが、後者のガラス基板の面積は約672000mm2であり、ガラス基板はシリコン基板の約9.2倍に相当する。後者のガラス基板の面積は約672000mm2では、基板の分断により消費される面積を無視すると、1mm四方のIDチップが約672000個形成できる計算になり、該個数はシリコン基板の約9.2倍の数に相当する。そしてIDチップの量産化を行なうための設備投資は、730×920mm2のガラス基板を用いた場合の方が直径12インチのシリコン基板を用いた場合よりも工程数が少なくて済むため、額を3分の1で済ませることができる。さらに本発明では、集積回路を剥離した後、ガラス基板を再び利用できる。よって、破損したガラス基板を補填したり、ガラス基板の表面を清浄化したりする費用を踏まえても、シリコン基板を用いる場合より大幅にコストを抑えることができる。またガラス基板を再利用せずに廃棄していったとしても、730×920mm2のガラス基板の値段は、直径12インチのシリコン基板の半分程度で済むので、IDチップのコストを大幅に低くすることができることがわかる。
従って、730×920mm2のガラス基板を用いた場合、直径12インチのシリコン基板を用いた場合よりも、IDチップの値段を約30分の1程度に抑えることができることがわかる。IDチップは、使い捨てを前提とした用途も期待されているので、コストを大幅に低くすることができる本発明のIDチップは上記用途に非常に有用である。
なお本実の形態では、集積回路を剥離して、可撓性を有する基板に貼り合わせる例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えばガラス基板のように、集積回路の作製工程における熱処理に耐えうるような、耐熱温度を有している基板を用いる場合、必ずしも集積回路を剥離する必要はない。図9(A)、図9(B)に、ガラス基板を用いて形成された、IDチップの一形態を、断面図で示す。
図9(A)に示すIDチップでは、基板570にガラス基板を用い、TFT571〜573が剥離されることなく、直接基板570上に形成されている。具体的には、TFT571〜573と基板570との間に、接着剤を間に挟んでおらず、基板570と下地膜574とが接するように形成されている。なお図9(B)は、図9(A)に示すIDチップに、カバー材575を貼り合わせたIDチップの断面図に相当する。