しかしながら、特許文献1に開示されているような弾性表面波装置では、蓋状のカバーをウェハ上に形成された素子の数だけ用意してそれらをウェハ上で整列させたり隙間が開かないように密着させたりすること等が、困難であったり非常に手間がかかったりして、ウェハレベルで素子を封止するにはあまり現実的でないという問題点があった。
また、特許文献5に開示されているような弾性表面波装置では、環状部材である保持枠上に蓋体である絶縁性上板を載置固定するといったことをウェハレベルで各素子に対して行なうには非常に手間がかかってしまい、あまり現実的でないという問題点があった。
また、特許文献4に開示されているような弾性表面波装置では、環状部材上に蓋体としての基板をウェハ上のそれぞれの素子ごとに載置する場合には、そのような工程をウェハレベルで各素子に対して行なうには非常に手間がかかってしまい、あまり現実的でないという問題点があった。また、環状部材上に蓋体としての基板をウェハ状態で載置し、ウェハ上の全ての素子に対してウェハ状態の蓋体としての基板で一括して封止する場合には、全ての素子において環状部材の高さを均一にすることが難しかったり、蓋体としての基板の反りを抑えて環状部材側の面を平たくすることが難しかったりするために、ウェハ状態の蓋体としての基板を各素子の環状部材それぞれに均一に密着させて全ての素子を良好に封止することが難しいという問題点があった。
また、特許文献2および特許文献3に開示されているような弾性表面波装置では、中空である収容空間を形成する犠牲層としての層を除去する際に、収容空間においてエッチング用の薬液が十分に行きわたらなくて犠牲層としての層が残留したり、エッチング用の薬液の抜けが悪くて収容空間にその薬液が残留したりする傾向があり、良好な収容空間を形成することが難しいという問題点があった。また、収容空間に形成される犠牲層としての層を外側に取り出す穴からその層を取り出す際に、その穴の径が小さくて犠牲層としての層を完全に除去することができなかったり、完全に除去するまでに非常に時間がかかったりすることがあるか、またはその穴の径を大きくしたためにその穴を密閉しにくくなったり収容空間を覆う層の剛性が低くなって、工程の途中で収容空間が破壊されやすくなったりすることがあるという問題点もあった。
また、特許文献6および特許文献7に開示されているような弾性表面波装置では、複数の弾性表面波素子が形成された圧電基板ウェハとそれら弾性表面波素子のそれぞれに収容空間を設けて封止するカバーウェハとをウェハ状態で対向させて密着する際に、全ての弾性表面波素子において環状部材としてのシールリングや接合領域の高さを均一にすることが難しかったり、圧電基板ウェハおよびカバーウェハの反りを抑えてそれらのウェハが対向する面を平たくすることが難しかったりするために、圧電基板ウェハとカバーウェハとを均一に密着させて全ての弾性表面波素子を良好に封止することが難しいという問題点があった。また、通常、カバーウェハ側には外部と電気的に接続する電極端子を取り出す必要があるが、カバーウェハは通常、ドライエッチング等には適さない程の厚さであるため、電極端子の取り出し部を形成するためにカバーウェハにエッチングする等の加工を施すことが困難であったり、非常に手間がかかったりするという問題点もあった。
また、特許文献8に開示されているような弾性表面波装置では、収容空間を形成する犠牲層としてのレジストを除去する際に、収容空間においてレジスト除去用の溶剤が十分に行きわたらなくて犠牲層としてのレジストが残留したり、レジスト除去用の溶剤の抜けが悪くて収容空間にその溶剤が残留したりする傾向があり、良好な収容空間を形成することが難しいという問題点があった。また、収容空間に形成される犠牲層としてのレジストを外側に取り出す穴からそのレジストを取り出す際に、その穴の径が小さくて犠牲層としての層を完全に除去することができなかったり、完全に除去するまでに非常に時間がかかったりすることがあるか、またはその穴の径を大きくしたためにその穴を密閉しにくくなったり、収容空間を覆う導電性の電極保護部の剛性が低くなって工程の途中で収容空間が破壊されやすくなったりすることがあるという問題点もあった。
なお、本発明の完成時点において、弾性表面波素子がウェハから切り出された後、個々に弾性表面波を発生する電極が封止される構成であるチップスケールパッケージ(CSP)型の弾性表面波装置が、実用的な信頼性や製造方法が確立している点で主流であり、このCSP型と比べて格段に小型化することができるWLP型の弾性表面波装置は、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができてこそ実用的な弾性表面波装置として提供することができるといった状況にある。
本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置およびその製造方法を提供すること、ならびにその小型な弾性表面波装置を具備する小型な通信装置を提供することにある。
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板上に弾性表面波を発生する電極が形成され、該電極を収容する収容空間とそこから張り出した前記収容空間より高さが低い張出空間とを有する第1封止部材が前記圧電基板上に接合されて前記収容空間内に前記電極が収容されているとともに、前記電極の両側に位置する前記第1封止部材の前記張出空間の部位に貫通孔が形成され、該貫通孔が前記圧電基板上に接する第2封止部材で塞がれていることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、前記貫通孔は、上側の開口よりも下側の開口が小さくなっていることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、前記収容空間は、中央部が上に凸となっていることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、前記第1封止部材および前記第2封止部材が樹脂で覆われており、前記電極が前記第1封止部材および前記樹脂を通して電気的に導出されていることを特徴とするものである。
本発明の弾性表面波装置の製造方法は、弾性表面波を発生する電極が形成された圧電基板上に、前記電極を収容する収容空間となる収容空間部およびそこから両側に張り出した前記収容空間部より高さが低い張出空間となる張出空間部を有する犠牲層を形成する工程と、該犠牲層を第1封止部材で覆う工程と、前記電極の両側に位置する前記第1封止部材の前記張出空間部上のそれぞれの部位に貫通孔を形成する工程と、前記犠牲層を前記貫通孔から除去して前記収容空間部に収容空間を、および前記張出空間部に張出空間を形成する工程と、しかる後、前記貫通孔を前記圧電基板上に接する第2封止部材で塞ぐ工程とを具備することを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法は、上記構成において、前記犠牲層をドライエッチングにより前記貫通孔から除去することを特徴とするものである。
本発明の通信装置は、上記各構成のいずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とするものである。
本発明の弾性表面波装置によれば、圧電基板上に弾性表面波を発生する電極が形成され、該電極を収容する収容空間とそこから張り出した前記収容空間より高さが低い張出空間とを有する第1封止部材が前記圧電基板上に接合されて前記収容空間内に前記電極が収容されているとともに、前記電極の両側に位置する前記第1封止部材の前記張出空間の部位に貫通孔が形成され、該貫通孔が前記圧電基板上に接する第2封止部材で塞がれていることから、収容空間に収容される電極の両側に張り出した張出空間において、貫通孔の開口幅を収容空間の大きさとは独立に制御して例えば広い開口幅を確保することができるため、貫通孔による収容空間の通気性を良くして、収容空間のガスを置換したり収容空間からガスを排気したりすることを円滑にする働きをするとともに、収容空間よりも高さが低い張出空間に形成される貫通孔が、開口幅が広くても膜厚の薄い第2封止部材で上側から塞がれることにより簡単かつ確実に収容空間を密閉する働きをするため、収容空間から電極を腐食させる等の悪影響をもたらす不要なガスや水分等を貫通孔から良好に排出してから貫通孔が確実に塞がれることにより収容空間のその良好な状態を維持することができるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置となる。また、収容空間に収容される電極の両側に張り出した張出空間のそれぞれに設けられる第2封止部材が、収容空間に設けられる電極側に弾性表面波を反射する働きをもするので、弾性表面波を収容空間に閉じ込めて弾性表面波の損失を小さくする効果もある。
また、本発明の弾性表面波装置によれば、前記貫通孔は、上側の開口よりも下側の開口が小さくなっているときには、上側の開口よりも下側の開口が小さくなっている貫通孔の上側から下側に続く面が、その貫通孔のさらに下側にあるガスが排出されることにより負圧となった張出空間側に引っ張られる第2封止部材をしっかりと受け止めて密着させる働きをするため、さらに収容空間の気密性を高めることができるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置となる。
また、本発明の弾性表面波装置によれば、前記収容空間は、中央部が上に凸となっているときには、収容空間がその外側に対して負圧となることにより収容空間を覆う第1の封止部材に収容空間の外側からかかる気圧による圧力に対して、第1の封止部材が、収容空間に沿って中央部が上に凸となることにより剛性を高めるため、取扱中等に収容空間が破壊されにくくなるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置となる。
また、本発明の弾性表面波装置によれば、前記第1封止部材および前記第2封止部材が樹脂で覆われており、前記電極が前記第1封止部材および前記樹脂を通して電気的に導出されているときには、樹脂がさらに封止部を機械的に保護するとともに、第1封止部材および樹脂を通して電気的に導出された電極が、実装基板等に弾性表面波装置を実装する際に弾性表面波装置が保護された状態で実装基板側との電気的接続を確実にとることができるようにする働きをするため、ウェハレベルで封止された弾性表面波装置を実装する際にも良好な封止状態が維持されるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置となる。
本発明の弾性表面波装置の製造方法によれば、弾性表面波を発生する電極が形成された圧電基板上に、前記電極を収容する収容空間となる収容空間部およびそこから両側に張り出した前記収容空間部より高さが低い張出空間となる張出空間部を有する犠牲層を形成する工程と、該犠牲層を第1封止部材で覆う工程と、前記電極の両側に位置する前記第1封止部材の前記張出空間部上のそれぞれの部位に貫通孔を形成する工程と、前記犠牲層を前記貫通孔から除去して前記収容空間部に収容空間を,および前記張出空間部に張出空間を形成する工程と、しかる後、前記貫通孔を前記圧電基板側に接する第2封止部材で塞ぐ工程とを具備することから、収容空間部の両側に張り出した張出空間部が、貫通孔の開口幅を収容空間部の大きさとは独立に制御して例えば収容空間部の両側にそれぞれ広い開口幅を確保することができるようにして、貫通孔から犠牲層を除去する際に犠牲層を除去するレートを格段に速くする働きをするとともに、収容空間部よりも高さが低い張出空間部に形成される貫通孔が、開口幅が広くても膜厚の薄い第2封止部材で上側から塞がれることにより簡単かつ確実に収容空間を密閉する働きをするため、収容空間から犠牲層や電極を腐食させる等の悪影響をもたらす不要なガスや水分等を貫通孔から残らず良好に排出してから貫通孔が確実に塞がれることにより、収容空間のその良好な状態を維持することができるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置の製造方法となる。また、膜厚が薄い第2封止部材でも貫通孔を塞ぐことができるため、第2封止部材はスパッタリングや真空蒸着のように雰囲気ガスを用いないか、または不活性ガスのみを用いる方法によって良好に形成することができるので、例えば化学気相成長(CVD)法のように電極を腐食させてしまうことがあるガスを収容空間に残留させてしまうことなく、収容空間を第1封止部材および第2封止部材で良好に封止することができるという利点もある。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法によれば、前記犠牲層をドライエッチングにより前記貫通孔から除去するときには、エッチャントが気体であるから流路の狭いところでも流体としての気体が流れる抵抗を小さくできるため、収容空間部の両側に張り出した張出空間部に設けられた両方の貫通孔からエッチャントの気体を導入して収容空間部の隅々まで容易に犠牲層をエッチングすることができるとともに、犠牲層のエッチングが終了した後にはエッチャントの気体を速やかに残らず収容空間の外側に排出することができるので、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置の製造方法となる。
本発明の通信装置によれば、上記各構成のいずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことから、通信装置の受信回路または送信回路に用いられる弾性表面波装置を、ウェハレベルで良好に封止することにより実用的な性能を備えつつ小型にすることができるので、小型にすることができる通信装置となる。
まずはじめに、本発明の弾性表面波装置およびその製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例を示す模式的な図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。また、図2は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の他の例を示す模式的な要部断面図である。また、図3は本発明の弾性表面波装置の実施の形態のさらに他の例を示す模式的な要部断面図である。また、図4は本発明の弾性表面波装置の製造方法の一例を示す模式的な図であり、(a)〜(e)は各工程毎の断面図である。
図1〜図4において、1は圧電基板、2は弾性表面波を発生する電極、3は電極2を収容する収容空間、4a,4bは収容空間3より高さが低い張出空間、5は第1封止部材、6a,6bは第1封止部材5の張出空間4a,4bの部位に形成される貫通孔、7は第2封止部材である。また、12は電極2から電気的に導出された電極パッドである。また、13は犠牲層における電極2を収容する犠牲層の収容空間3となる収容空間部、14a,14bは犠牲層の収容空間部13より高さが低い犠牲層の張出空間4a,4bとなる張出空間部、15は第1封止部材、16は第1封止部材15の張出空間部14aの部位に形成される貫通孔、16a,16bは貫通孔16の上側の開口,下側の開口、16cは貫通孔16の上側の開口16aから下側の開口16bに続く面、17は第2封止部材である。また、23は収容空間、25は第1封止部材である。
なお、図2は張出空間4a側の要部断面図を示しており、図示していない張出空間4b側の貫通孔の様子もこの図に示すものと同様である。また、図3は収容空間23の近傍の要部断面図を示しており、図示していない他の部分は図1に示すものと同様である。
図1に示す本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例は、圧電基板1上に弾性表面波を発生する電極2が形成され、この電極2を収容する収容空間3とそこから張り出した収容空間3より高さが低い張出空間4a,4bとを有する第1封止部材5が圧電基板1上に接合されて収容空間3内に電極2が収容されているとともに、電極2の両側に位置する第1封止部材5の張出空間4a,4bの部位に貫通孔6a,6bが形成され、この貫通孔6a,6bが圧電基板1上に接する第2封止部材7で塞がれている構成である。
上記構成において、貫通孔6a,6bは、弾性表面波を発生する電極2を収容する収容空間3から電極2の動作や信頼性に悪影響を及ぼすようなガスや水分等を排出し、代わりに収容空間3に清浄な雰囲気を適当な圧力で導入するためのものであり、そのように収容空間3が清浄な状態になった後は第2封止部材7で塞がれるものである。その際、貫通孔6a,6bは、収容空間3から両側に張り出した張出空間4a,4bの部位における第1封止部材5の圧電基板2に対向する面に設けられることにより、収容空間3の形状や大きさとは独立に制御して張出空間4a,4bが張り出す側に第1封止部材5の張出空間4a,4bの部位の面積を広くとって貫通孔6a,6bの開口幅を広くすることができる。また、貫通孔6a,6bは、収容空間3よりも高さが低い張出空間4a,4bの部位に設けられるため、貫通孔6a,6bの開口幅を広くしても、圧電基板2に(ただし、圧電基板2上に誘電体層等が形成されている場合にはその誘電体層等に)接するように貫通孔6a,6bから第2封止部材7を設けて貫通孔6a,6bを第2封止部材7で塞ぐ際に、膜厚が薄い第2封止部材7で速く確実に貫通孔6a,6bを塞ぐことができる。張出空間4a,4bは収容空間3の高さよりも低くすればよくて、通常は、圧電基板2上において電極2に対しどのような配置としても構わないが、電極2によって発生する弾性表面波の延長上に電極2を挟むように配置すれば張出空間4a,4bの部位に形成される貫通孔6a,6bのそれぞれを塞ぐ第2封止部材7が両側からその弾性表面波を電極2側に反射して収容空間3に閉じ込めるようにすることができ、損失を小さくすることができる等の効果がある。この場合には、通常、インターディジタルトランスデューサ(IDT)電極で構成される電極2の電極指のピッチの整数倍の位置に第2封止部材7を設けるようにすると、より効果的である。
図1に示す本発明の弾性表面波装置によれば、上記構成とすることから、収容空間3に収容される電極2の両側に張り出した張出空間4a,4bが、貫通孔6a,6bの開口幅を収容空間3の大きさとは独立に制御して例えば広い開口幅を確保することができるため、貫通孔6a,6bによる収容空間3の通気性を良くして、収容空間3のガスを置換したり収容空間3からガスを排気したりすることを円滑にする働きをするとともに、収容空間3よりも高さが低い張出空間4a,4bに形成される貫通孔6a,6bが、開口幅が広くても膜厚の薄い第2封止部材7で上側から塞がれることにより簡単かつ確実に収容空間3を密閉する働きをするため、収容空間3から電極2を腐食させる等の悪影響をもたらす不要なガスや水分等を貫通孔6a,6bから良好に排出してから貫通孔6a,6bが確実に塞がれることにより収容空間3のその良好な状態を維持することができるので、弾性表面波を発生する電極2をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができる。また、収容空間3に収容される電極2の両側に張り出した張出空間4a,4bのそれぞれに設けられる第2封止部材7が収容空間3に設けられる電極2側に弾性表面波を反射する働きをもするので、弾性表面波を収容空間3に閉じ込めて弾性表面波の損失を小さくする効果もある。
次に、図2に示す本発明の弾性表面波装置の実施の形態の他の例は、図1に示す弾性表面波装置に対して、貫通孔16(図1に示す弾性表面波装置の貫通孔6aに対応する。)は、上側の開口16aよりも下側の開口16bが小さくなっている構成である。なお、図示していない側の貫通孔も貫通孔16と同様である。
このように構成することにより、貫通孔16は上側から下側に続く面16cが上側に広がる斜面を形成し、この斜面である面16cが負圧となる張出空間4a側に引っ張られる第2封止部材17(図1に示す弾性表面波装置の第2封止部材7に相当する。)をしっかりと受け止めて、圧電基板1上に密着させる働きをする。また、面16cは、斜面を形成することにより貫通孔16において第1封止部材15と第2封止部材17とが接合する面積が広くなり、圧力等によりそれらの接合面に隙間が開いて貫通孔16を通して収容空間3にガスが流入したりすることがないように、貫通孔16における封止を強固にすることができる。なお、貫通孔16の上側の開口16aおよび下側の開口16bの形状は特に限定されるものではないが、上側の開口16aおよび下側の開口16bのそれぞれの形状をなるべく相似形として、それら上側の開口16aおよび下側の開口16bのそれぞれの重心を一致させるようにするとよい。このようにすれば、面16の幅および傾斜が均一になるから、面16に対する第2封止部材17の圧力が均一になる傾向となるので好適である。また、面16cはなるべく平らな面とすることが、面16に対する第2封止部材17の圧力を均一にするという観点から望まれるが、平らな面から多少湾曲等していても構わない。
また、貫通孔16の形状は、四角形等としてもよいが、角は丸めてなるべく滑らかにした方がよい。貫通孔16は、角を丸めた長方形状とすれば、その角において外からの圧力等による応力の集中を抑制することができるとともに、長方形に近い長方形状であれば圧電基板の表面上で無駄な部分が少なくなって貫通孔16を大きくしやすくなるので好適である。また、貫通孔16は、張出空間4aが張り出す側の延長方向に長くすれば、収容空間3の大きさとは独立に貫通孔16を大きくすることができる。貫通孔16が大きくなれば貫通孔16による収容空間3の通気性を良くすることができる。また、貫通孔16は、張出空間4aのなるべく収容空間3側に配置するとよい。貫通孔16を張出空間4aが張り出す側の方によりすぎて配置すると、上記通気性が悪くなることから好ましくない。
図2に示す本発明の弾性表面波装置によれば、上記構成とすることから、図1に示す弾性表面波装置と同様の作用効果を有する上に、さらに次の作用効果を有するものとなる。すなわち、上側の開口16aよりも下側の開口16bが小さくなっている貫通孔16の上側から下側に続く面16cが、その貫通孔16のさらに下側にあるガスが排出されることにより負圧となった張出空間4a側に引っ張られる第2封止部材17をしっかりと受け止めて密着させる働きをするため、さらに収容空間3の気密性を高めることができるので、弾性表面波を発生する電極2をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる。
次に、図3に示す本発明の弾性表面波装置の実施の形態のさらに他の例は、図1に示す弾性表面波装置に対して、収容空間23(図1に示す弾性表面波装置の収容空間3に対応する。)は、中央部が上に凸となっている構成である。
図3に示す本発明の弾性表面波装置の実施の形態のさらに他の例は、上記構成とすることから、図1に示す弾性表面波装置と同様の作用効果を有する上に、さらに次の作用効果を有するものとなる。すなわち、収容空間23がその外側に対して負圧となることにより、収容空間23を覆う第1の封止部材25に収容空間23の外側からかかる気圧による圧力に対して、第1の封止部材25が、収容空間23に沿って中央部が上に凸となることにより剛性を高めるため、取扱中等に収容空間23が破壊されにくくなるので、弾性表面波を発生する電極2をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる。
次に、上記各構成の本発明の弾性表面波装置の実施の形態の例は、第1封止部材5,15,25および第2封止部材7,17が樹脂で覆われており、電極2が第1封止部材5,15,25およびその樹脂を通して電気的に導出されていることが好ましい。このようにすれば、樹脂がさらに封止部を機械的に保護するとともに、第1封止部材5,15,25および樹脂を通して電気的に導出された電極2が、実装基板等に弾性表面波装置を実装する際に弾性表面波装置が保護された状態で実装基板側との電気的接続を確実にとることができるようにする働きをするため、ウェハレベルで封止された弾性表面波装置を実装する際にも良好な封止状態が維持されるので、弾性表面波を発生する電極2をウェハレベルでさらに簡単かつ良好に封止することができる。
また、例えば図1(b)に平面図で示すように、電極2から第1封止部材5,15,25およびその樹脂を通して電気的に導出し、その導出した部分に電極パッド12a,12bを設けてもよい。その際、電極パッド12a,12bは、収容空間3に対して張出空間4a,4bが張り出す方向とは別の方向の延長上に配置すればよい。このようにすれば、電極2から電極パッド12a,12bまでの配線長を短くすることができる。また、電極パッド12a,12b上にはそれぞれ円柱状等の柱状導体を設けて、それら柱状導体の上側を露出させて他の部分を耐熱性のある樹脂等で覆うようにしてもよい。このようにすれば、柱状導体の露出した部分以下が、耐熱性のある樹脂等で保護された状態でその柱状導体の露出部にバンプ電極等の電極端子を設けてその電極端子を介して弾性表面波装置を実装する実装基板側の電極に電気的に接続するとともに、その実装基板に弾性表面波装置を安定に固定することができる。また、電極パッド12a,12b上に樹脂が付着しない部分を設けて一部分を露出させ、その電極パッド12a,12bの露出部にワイヤボンドする等で電気的な接続を行なっても構わない。
また、圧電基板1上に電極2の他に弾性表面波を発生する電極があり、圧電基板1上に複数組の弾性表面波を発生する電極があるような場合には、それら複数組の弾性表面波を発生する電極のそれぞれに独立した収容空間および張出空間を設けて、それぞれの収容空間に収容された電極から電極パッドに電気的に導出するようにしてもよい。このようにすれば、それぞれの収容空間の大きさが小さくなることによって第1封止部材5,15,25の押圧に対する強度が高まるため、樹脂封止の際に第1封止部材5,15,25にクラックが入りにくくすることができる等の利点がある。
次に、本発明の弾性表面波装置は、さらに具体的には次のように構成すればよい。本発明の弾性表面波装置において、圧電基板1の材質は、タンタル酸リチウム(LiTaO3,LiTaOx;x<3),ニオブ酸リチウム(LiNbO3,LiNbOy;y<3),四ホウ酸リチウム(Li2B7O4,Li2B7OZ;z<4),酸化亜鉛(ZnO),ランガサイト,水晶等の圧電性誘電体の中から選択することができる。
また、電極2の材質としては、アルミニウム(Al),アルミニウム・銅合金(Al−Cu),アルミニウム・銅・マグネシウム合金(Al−Cu−Mg)等が好適である。また、これらの下地層としてチタン(Ti)またはクロム(Cr)を用いてもよい。
また、第1封止部材5,15,25および第2封止部材7,17の材質は、二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx),ガラス材料等が、耐湿性が高いことから好適である。また、第1封止部材5,15,25の厚さは、連続膜として機能する5μm程度の厚さから:形成が可能な数百μm程度が好適である。また、第2封止部材7,17の厚さは、数μm程度が好ましい。また、収容空間3および張出空間4a,4bの高さは、それぞれ十〜数十μmおよび数μm程度が好適である。
また、電極パッド12a,12b上に設ける柱状導体は、金(Au),銅(Cu),ニッケル(Ni)等から成り、径が50〜100μm,高さが20〜400μm程度であるメッキが好適である。また、第1封止部材5,15,25および第2封止部材7,17ならびに柱状導体の周囲を覆う樹脂としては、ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,シロキサン樹脂,アクリル樹脂,ポリメチルメタクリート(PMMA)樹脂,ポリカーボネート(PC)樹脂,ベンゾシクロブテン(BCB)樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料を用いれば圧電基板1に対して100〜300℃程度の低温で樹脂封止することができる。
次に、図4に示す本発明の弾性表面波装置の製造方法の実施の形態の一例は、弾性表面波を発生する電極2が形成された圧電基板1上に、電極2を収容する収容空間3,23となる収容空間部13aおよびそこから両側に張り出した収容空間部13aより高さが低い張出空間部14a,14bを有する犠牲層13を形成する工程(a)と、この犠牲層13を第1封止部材5で覆う工程(b)と、電極2の両側に位置する第1封止部材5の張出空間部14a,14b上の部位のそれぞれに貫通孔6a,6bを形成する工程(c)と、犠牲層13を貫通孔6a,6bから除去して収容空間部13aに収容空間3と張出空間部14a,14bに張出空間4a,4bとを形成する工程(d)と、貫通孔6a,6bを圧電基板1側に接する第2封止部材7で塞ぐ工程(e)とを具備する構成である。なお、図4(a)〜(e)の断面図は、それぞれ弾性表面波装置の製造工程における工程(a)〜(e)の各段階を示している。
上記構成において、犠牲層13は、図4(a)に示すように、後に電極2を収容する収容空間3となる収容空間部13aと、収容空間部13aの両側に張り出した収容空間部13aよりも高さが低い、張出空間4a,4bとなる張出空間部14a,14bとから成るものである。このように、犠牲層13において、収容空間部13aの両側に張出空間部14a,14bを張り出させて、後に犠牲層13上に形成される第1封止部材5の張出空間部14a,14bの部位に貫通孔6a,6bを形成するようにしたことから、貫通孔6a,6bの開口幅を収容空間部13aの大きさとは独立に制御して例えば収容空間部13aの両側にそれぞれ広い開口幅を確保することができ、貫通孔6a,6bから犠牲層13を除去する際に犠牲層13を除去するレートを格段に速くすることができる。また、収容空間部13aの高さよりも張出空間部14a,14bの高さを低くしたことから、第1封止部材5において収容空間部13aよりも高さが低い張出空間部14a,14bの部位に形成される貫通孔6a,6bが、開口幅が広くても、膜厚の薄い第2封止部材7で上側から塞がれることにより、簡単かつ確実に収容空間3を密閉することができる。
また、犠牲層13は、図4(b)に示すように、犠牲層13上に第1封止部材5を形成した後、図4(c)に示すように、第1封止部材5の張出空間部14b,14cの部位に貫通孔6a,6bを設け、図4(d)に示すように、それら貫通孔6a,6bからエッチングにより除去されて、収容空間部13aの部分に収容空間3および張出空間部14a,14bの部分に張出空間4a,4bを形成するためのものである。犠牲層13に、このような働きをさせるには、第1封止部材5にダメージを与えることなく犠牲層13のみを選択的にエッチングすることができるような第1封止部材5、犠牲層13およびエッチャントの材質の組合せを適切に選定すればよい。例えば、第1封止部材5および犠牲層13の一方が二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx)またはガラス材料であれば他方は硅素(Si)が好適である。エッチャントとしては、例えば希釈したフッ化水素(HF)は二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx)またはガラス材料に対してはエッチングレートが高く、硅素(Si)に対してはエッチングレートが低いので、二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx)またはガラス材料を選択的にエッチングする場合に好適に用いることができる。その際、フッ化水素(HF)によるエッチングは、水溶液によるウェットエッチングか、またはフッ化水素(HF)蒸気によるドライエッチングを用いることができる。また、エッチャントとしてフッ化キセノン(XeF2)は、逆に二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx)またはガラス材料に対してはエッチングレートが低く、硅素(Si)に対してはエッチングレートが高いので硅素(Si)を選択的にエッチングする場合に好適に用いることができる。
また、犠牲層13の除去には、上記のようにウェットエッチングを用いても構わないが、好ましくは、ドライエッチングにより貫通孔6a,6bから除去するとよい。具体的には、犠牲層13としては例えば非晶質硅素(a−Si)を好適に使用することができ、この非晶質硅素(a−Si)から成る犠牲層13をフッ化キセノン(XeF2)ガスでドライエッチングして貫通孔6a,6bから除去すればよい。このようにすれば、そのドライエッチング用のフッ化キセノン(XeF2)ガスは、例えば二酸化硅素(SiO2),窒化硅素(SiNx)またはガラス材料から成る第1封止部材5にはほとんどダメージを与えずに、ほとんど非晶質硅素(a−Si)から成る犠牲層13のみをエッチングするから、犠牲層13をきれいに残さず除去することができる。また、犠牲層13を硅素(Si)から成るものとして、フッ化キセノン(XeF2)ガスでドライエッチングされるようにすると、収容空間3に収容されているアルミニウム(Al)等から成る電極2にもほとんどダメージを与えないことからも好適である。また、ドライエッチング用のフッ化キセノン(XeF2)ガスは気体であるから、ドライエッチングの終了後には流体としてのフッ化キセノン(XeF2)ガスを収容空間3から、狭い流路があっても貫通孔6a,6bから速やかに排出することができ、また、収容空間3においてフッ化キセノン(XeF2)ガスを排出した後、さらに収容空間3に残留するフッ化キセノン(XeF2)ガスを窒素(N2)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスで希釈する場合においても、希釈したガスを貫通孔6a,6bから速やかに排出することができるので、収容空間3を容易に清浄な状態にすることができる。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法は、さらに具体的には次のように構成すればよい。本発明の弾性表面波装置の製造方法において、弾性表面波を発生する電極2は、圧電基板1上に例えば真空蒸着,スパッタリングまたは化学気相成長(CVD)等の方法によって形成することができる。
また、第1封止部材5は、例えばテトラ・エトキシ・シラン(TEOS)ガスを用いたCVD法によって比較的厚い層を良好に形成することができる。このようにTEOSガスを用いたCVD法によって第1封止部材5を形成すれば、耐薬品性の高い緻密な層から成る第1封止部材5を形成することができることから、工程(d)以後において第1封止部材5が腐食されて脆くなったりしにくくなるので好適である。
また、第2封止部材7は真空蒸着またはスパッタリングにより形成するとよい。第2封止部材7は、張出空間4a,4bにおいて貫通孔6a,6bから真空蒸着またはスパッタリングにより圧電基板1上に薄膜となる材料を入射させて、第2封止部材7が貫通孔6a,6bの下側の開口を塞ぐまで圧電基板1上に薄膜が堆積されることによって形成される。その際、張出空間4a,4bは収容空間3に比べて高さが低くなっていることから、第2封止部材7の膜厚が比較的薄くても貫通孔6a,6bを塞ぐため、真空蒸着またはスパッタリングの方法を用いても簡単かつ確実に貫通孔6a,6bを塞ぐことができる。また、第2封止部材7を真空蒸着またはスパッタリングの方法を用いて形成すれば、これらの方法では窒素(N2)やアルゴン(Ar)等の不活性ガス以外のガスを使用しないから、CVD法のように成膜用に使用するガスが収容空間3に残留してしまうことがなく、電極2を腐食させてしまうことがないので好適である。
図4に示す本発明の弾性表面波装置の製造方法によれば、上記構成とすることから、収容空間部13aの両側に張り出した張出空間部14a,14bが、貫通孔6a,6bの開口幅を収容空間部13aの大きさとは独立に制御して例えば収容空間部13aの両側にそれぞれ広い開口幅を確保することができるようにして、貫通孔6a,6bから犠牲層13を除去する際に犠牲層13を除去するレートを格段に速くする働きをするとともに、第1封止部材5において収容空間部13aよりも高さが低い張出空間部14a,14bの部位に形成される貫通孔6a,6bが、開口幅が広くても膜厚の薄い第2封止部材7で上側から塞がれることにより簡単かつ確実に収容空間3を密閉する働きをするため、収容空間3から犠牲層13や電極2を腐食させる等の悪影響をもたらすことがある不要なガスや水分等を貫通孔から残らず良好に排出してから貫通孔6a,6bが確実に塞がれることにより収容空間3においてその良好な状態を維持することができるので、弾性表面波を発生する電極2をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができるものとなる。また、膜厚が薄い第2封止部材7でも貫通孔6a,6bを塞ぐことができるため、第2封止部材7はスパッタリングや真空蒸着のように雰囲気ガスを用いないか、または不活性ガスのみを用いる方法によって良好に形成することができるので、例えば化学気相成長(CVD)法のように電極2を腐食させてしまうことがあるガスを収容空間3に残留させてしまうことなく収容空間3を第1封止部材5および第2封止部材7で良好に封止することができるという利点もある。
次に、本発明の通信装置について説明する。
本発明の通信装置は、上記各構成のいずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えた構成である。
本発明の通信装置によれば、上記各構成のいずれかの本発明の弾性表面波装置を有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことから、通信装置の受信回路または送信回路に用いられる弾性表面波装置を、ウェハレベルで良好に封止することにより実用的な性能を備えつつ小型にすることができるので、通信装置を小型にすることができる。例えば、このように小型化された通信装置は、携帯電話,パーソナルハンディホン(PHS),アマチュア無線用ポータブルトランシーバ,ICカード等の携帯通信端末や、パームトップコンピュータ等の電子情報処理端末、または車載用のカーナビケーションシステムおよびETC(エレクトロニック・トール・コレクション・システム)車載端末等に好適に使用することができる。
かくして、本発明によれば、弾性表面波を発生する電極をウェハレベルで簡単かつ良好に封止することができる小型な弾性表面波装置およびその製造方法を提供することができ、ならびにその小型な弾性表面波装置を具備する小型な通信装置を提供することができる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更,改良を施すことは何等差し支えない。例えば、第2封止部材7は金属から成るものとして、この第2封止部材7により弾性表面波を発生する電極2を収容空間3の外側に電気的に導出してもよい。この場合には、貫通孔6a,6bと電極パッド12a,12bとを同じところに設けることができるため、小型化にさらに有利なものとなる。