JP4543591B2 - エンジン冷却水制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄熱器をそなえたエンジンにおけるエンジン冷却水の回路を、エンジン冷却水の温度に応じて切り換え制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン冷却水の回路に蓄熱器を設けて、エンジンの温態運転中常に蓄熱器へエンジン冷却水を流通させる従来装置においては、エンジンの運転を停止させた時点に蓄熱器内へ導かれていたエンジン冷却水の温度がエンジンの運転状況等に対応して必ずしも高いとは限らないので、蓄熱器によるエンジンの暖機性能が常時良好であるとはいえず、また、蓄熱器に対するエンジン冷却水の常時流通により、エンジン冷却水の流通抵抗が全体的に増大するという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エンジン冷却水の回路に蓄熱器を設けたエンジンにおいて、蓄熱器によるエンジンの暖機性能を容易に高めようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明にかかるエンジン冷却水制御装置は、エンジン冷却水の回路に設けられて上記回路と蓄熱器との間における上記エンジン冷却水の流通を断続させるバルブ機構と、上記バルブ機構の制御手段と、上記エンジン冷却水のエンジン出口側温度を検出する第1手段と、上記蓄熱器内における上記エンジン冷却水の温度を検出する第2手段とを有し、上記制御手段は、上記第1手段により検出された上記エンジン冷却水温度が上記第2手段により検出された上記エンジン冷却水温度より高い場合に限り、上記バルブ機構を制御して上記回路におけるエンジン冷却水を上記蓄熱器内へ導き、かつ、上記第2手段により検出された上記エンジン冷却水温度の所定時間毎の変化量が一定値よりも小さくなれば、上記バルブ機構を制御して上記回路におけるエンジン冷却水に上記蓄熱器をバイパスさせるように構成されている。
【0005】
すなわち、第1手段により検出されたエンジン冷却水のエンジン出口側温度が、第2手段により検出された蓄熱器内におけるエンジン冷却水の温度より高い場合に限り、制御手段がバルブ機構を制御して、回路中のエンジン冷却水を蓄熱器内へ導くように構成されているので、蓄熱器内には常に高い温度のエンジン冷却水が導かれることとなる結果、そのエンジン冷却水によって蓄熱器は常に多くの熱量を効率よく蓄積することができるようになり、また、第2手段により検出されたエンジン冷却水温度の所定時間毎の変化量が一定値よりも小さくなれば、制御手段がバルブ機構を制御して、回路におけるエンジン冷却水に蓄熱器をバイパスさせることにより、エンジン冷却水の流動抵抗をそれだけ低減させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す本発明の実施形態例について説明する。
図1において、車両用エンジン1に対するエンジン冷却水は、矢印で示されているように、ウオーターポンプ2からエンジン1のシリンダブロック3及びシリンダヘッド4を経てエンジン出口側回路5へ流れ、従来から周知のように、サーモスタット6の開閉制御に応じラジエータ7またはバイパス路8を経てウオーターポンプ2へ戻される一方、回路5からの分岐路10に設けられたバルブ11、空調装置のヒータコア12、及び、エンジン1の潤滑用オイルや変速機用オイル等とのオイル熱交換器13を順次経てウオーターポンプ2へ戻されている。
【0007】
バルブ11は、後記のように、分岐路10に流入したエンジン冷却水を制御装置20の指示に従って蓄熱器14内へ導いたり、蓄熱器14をバイパスさせたりするものであって、従来から知られているように、エンジン1の稼動時に蓄熱器14内へ導かれた比較的高温のエンジン冷却水により蓄熱器14が蓄熱作用を行い、エンジン1の冷態始動時等に蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給されて、エンジン1の暖気性能を高めることにより、エンジン1の始動性能、燃費、排気浄化性能等を向上させるようにしている。
【0008】
また、回路5の上流部分と、蓄熱器14内と、エンジン1に対するエンジン冷却水の入口部分であるウオーターポンプ2内との各エンジン冷却水温度をそれぞれ検出する温度センサ15、16、17が設けられていて、各温度センサ15、16、17の検出信号がそれぞれ制御装置20へ送られている。
【0009】
次に、図2に基づき上記装置の作用について説明すると、エンジン1始動後のステップS1において、回路5上流部分の温度センサ15が検出したエンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 が制御装置20に入力され、次のステップS2では、エンジン冷却水温度T1 が一定温度T0 を越えているかどうかが制御装置20によりチェックされ、エンジン冷却水温度T1 ≦T0 ならば、エンジン1が冷態始動状態にあると判定されてステップS3へ移行し、制御装置20がバルブ11を作動させて分岐路10のエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導くことにより、それまで蓄熱器14に内蔵されて蓄熱器14により加熱されたエンジン冷却水を蓄熱器14の下流側へ押し出し、蓄熱器14をいわゆる暖機モードとして、上記のように、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給され、エンジン1の暖機が促進される。
【0010】
ステップS2において、エンジン冷却水温度T1 >T0 ならばステップS4へ進み、温度センサ16が検出した蓄熱器14内のエンジン冷却水温度T2 が制御装置20に入力され、次のステップS5でエンジン冷却水温度T1 とエンジン冷却水温度T2 との差ΔT1 が計測される。
【0011】
ステップS6では、回路5から分岐路10を通って蓄熱器14内へエンジン冷却水が達するまでに生じるエンジン冷却水自体の温度降下を配慮して、温度差ΔT1 が所定値X(例えば、2〜5°C内の一定値)を越えるかどうかが制御装置20によりチェックされ、温度差ΔT1 ≦XならばステップS7へ移行し、制御装置20の指示によりバルブ11が作動して、分岐路10に流入したエンジン冷却水が蓄熱器14をバイパスするようにし、蓄熱器14をいわゆる保温モードとする。
【0012】
ステップS6において、温度差ΔT1 >XならばステップS8へ進み、制御装置20の指示によりバルブ11が作動し、分岐路10に流入したエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導いて、そのエンジン冷却水により蓄熱器14に蓄熱作用を行わせ、いわゆる蓄熱モードとする。
【0013】
すなわち、上記装置においては、エンジン1が冷態始動時でない場合に、エンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 が蓄熱器14内のエンジン冷却水温度T2 より所定値X以上高いときに限り、回路5から分岐路10に流入した高温のエンジン冷却水が蓄熱器14内へ導かれて、蓄熱器14が蓄熱モードとされるので、エンジン1の稼動中に蓄熱器14内には常に最も高温のエンジン冷却水が導かれることとなり、そのエンジン冷却水によって蓄熱器14は常に最も多くの熱量を効率よく蓄積することができるようになる。
【0014】
従って、その後エンジン1の稼動が停止されて、再度エンジン1が冷態始動するときには、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給されて、エンジン1の暖機を強力に促進させることができ、エンジン1の始動性能、燃費、排気浄化性能等を一層向上させることが可能となる。
【0015】
しかも、エンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 と蓄熱器14内のエンジン冷却水温度T2 との差ΔT1 が所定値Xより小さければ、すなわち、エンジン1出口側のエンジン冷却水によって蓄熱器14内を加熱することができず、あるいは、逆にエンジン1出口側のエンジン冷却水によって蓄熱器14内から熱が奪われるおそれがある場合には、バルブ11の作動により分岐路10を通るエンジン冷却水が蓄熱器14をバイパスして、蓄熱器14内へエンジン冷却水が導かれないため、分岐路10におけるエンジン冷却水の流動抵抗をそれだけ確実に低減させることができる。
【0016】
また、図3に示されているように、エンジン1始動後のステップS10において、温度センサ15が検出したエンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 が制御装置20に入力され、次のステップS11では、エンジン冷却水温度T1 が一定温度T0 を越えているかどうかが制御装置20によりチェックされ、エンジン冷却水温度T1 >T0 ならば、エンジン1が温態始動状態であるとして、または、エンジン1の暖機が完了しているとしてステップS10へ戻るが、エンジン冷却水温度T1 ≦T0 ならば、エンジン1が冷態始動状態にあるとしてステップS12へ進み、制御装置20がバルブ11を作動させて分岐路10のエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導くことにより、それまで蓄熱器14に内蔵されて蓄熱器14により加熱されたエンジン冷却水を蓄熱器14の下流側へ押し出し、蓄熱器14を暖機モードとして、上記のように、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給され、エンジン1の暖機が促進される。
【0017】
ステップS13においては、図示しないタイマの経過時間tが0にリセットされ、通常は、エンジン1の回転数やアクセル開度等に応じて制御装置20がエンジン1の燃料供給量、吸気流量、点火時期等を制御する際、エンジン冷却水温度の高低によりそれぞれの上記制御量が補正されるが、次のステップS14ではエンジン冷却水温度の高低に応じた制御装置20による上記制御量補正が停止される。
【0018】
ステップS15ではタイマの経過時間tに単位時間が付加されてステップS16へ進み、外気温度を配慮しながらエンジンの稼動によりエンジン冷却水温度が十分上昇するに要するとされる設定時間t1 にタイマの経過時間tが達しているかどうかがチェックされ、経過時間tが設定時間t1 に達していなれけばステップS14に戻るが、経過時間tが設定時間t1 に達していればステップS17へ進み、エンジン冷却水温度の高低に応じた制御装置20による上記制御量補正が開始される。
【0019】
すなわち、エンジン1の冷態始動時に、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給されて、エンジン冷却水温度がエンジン1自体の温度と関係なく早急に上昇させられ、しかも、このエンジン冷却水温度は周囲の環境条件等により大きく変動して、一定値ともならないので、蓄熱器14を有効に利用している場合には、エンジン1自体の温度とエンジン冷却水温度との間に相関関係がなくなり、従って、エンジン冷却水温度の高低に応じて上記制御量補正が行われると、エンジン1の適正な制御を保証することができないが、エンジン1の稼動によりエンジン冷却水温度が十分上昇するまでは上記制御量補正が行われないので、エンジン1の不適切な制御を確実に防止することができる。
【0020】
さらに、図4に示されているように、ステップS20において、エンジン1が冷態始動状態にあるとして制御装置20がバルブ11を作動させ、分岐路10のエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導くことにより、それまで蓄熱器14に内蔵されて蓄熱器14により加熱されたエンジン冷却水を蓄熱器14の下流側へ押し出し、蓄熱器14を暖機モードとして、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給されてエンジン1の暖機が促進され、次のステップS21では蓄熱器14内のエンジン冷却水温度T2 が制御装置20へ入力されてステップS22へ進み、所定時間毎におけるエンジン冷却水温度T2 の変化量ΔT2 が計測される。
【0021】
ステップS23では、エンジン冷却水温度T2 の変化量ΔT2 が一定値Yより小さいかどうかがチェックされ、ΔT2 ≧YならばステップS20へ戻るが、ΔT2 <YならばステップS24へ進み、ウオーターポンプ2内の温度センサ17が検出したエンジン1入口側のエンジン冷却水温度T3 が制御装置20に入力され、次のステップS25で制御装置20の指示によりバルブ11が作動して、分岐路10に流入したエンジン冷却水が蓄熱器14をバイパスするようにされ、蓄熱器14を保温モードとする。
【0022】
ステップS26においては、温度センサ15が検出したエンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 が制御装置20に入力され、次のステップS27ではエンジン冷却水温度T1 とエンジン冷却水温度T3 との差ΔT3 が計測されてステップS28へ進み、温度差ΔT3 が所定値Zを越えているかどうかがチェックされる。
【0023】
ステップS28で温度差ΔT3 ≦ZならばステップS25へ戻るが、温度差ΔT3 >ZならばステップS29へ進み、制御装置20の指示によりバルブ11が作動して、分岐路10に流入した比較的高温のエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導き、そのエンジン冷却水により蓄熱器14に蓄熱作用を行わせる。
【0024】
すなわち、エンジン1の冷態始動時に、蓄熱器14内からエンジン1へ比較的高い温度のエンジン冷却水が送給されて、エンジン1の暖機が効果的に促進されるが、蓄熱器14によるエンジン冷却水の加熱作用が低下して、蓄熱器14内におけるエンジン冷却水温度T2 の時間的変化量ΔT2 が一定値Yより小さくなれば、分岐路10に流入したエンジン冷却水がバルブ11の作動により蓄熱器14をバイパスするようにし、このとき、蓄熱器14内へエンジン冷却水が導かれないため、分岐路10におけるエンジン冷却水の流動抵抗をそれだけ低減させることができる。
【0025】
なお、上記実施形態例では、エンジン1出口側のエンジン冷却水温度T1 と蓄熱器14内のエンジン冷却水温度T2 との差ΔT1 が所定値Xを越えたときに限り、分岐路10に流入した比較的高温のエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導いて、そのエンジン冷却水により蓄熱器14に蓄熱作用を行わせているが、エンジンの始動後に外気温度の高低を配慮してエンジン冷却水温度が十分上昇し、分岐路10に流入したエンジン冷却水により蓄熱器14に蓄熱作用を行わせることができるようになっただけの時間が経過したときに限り、分岐路10に流入したエンジン冷却水を蓄熱器14内へ導いて、そのエンジン冷却水により蓄熱器14に蓄熱作用を行わせるようにしても、蓄熱器14に良好な蓄熱作用を行わせることができるのはいうまでもない。
【0026】
また、上記各実施形態例では、蓄熱器14内の蓄熱材に蓄熱作用を行わせているが、蓄熱器14としては、断熱容器内に高温のエンジン冷却水自体を貯留しておき、エンジンの冷態始動時にそのエンジン冷却水をエンジンに導いて、エンジンの暖機作用を促進させるようにしても、上記各実施形態例と同様な作用効果を奏することができるものである。
【0027】
【発明の効果】
本発明にかかるエンジン冷却水制御装置においては、第1手段により検出されたエンジン冷却水のエンジン出口側温度が、第2手段により検出された蓄熱器内におけるエンジン冷却水の温度より高い場合に限り、回路中のエンジン冷却水を蓄熱器内へ導くように構成されていて、蓄熱器内には常に高い温度のエンジン冷却水が導かれることにより、蓄熱器が常に多くの熱量を効率よく蓄積することができるようになるので、その後エンジン稼動が停止されて、再度エンジンが冷態始動するときには、蓄熱器内からエンジンへ比較的高い温度のエンジン冷却水を送給することが可能となって、エンジンの暖機を強く促進させることができ、また、第2手段により検出されたエンジン冷却水温度の所定時間毎の変化量が一定値よりも小さくなれば、回路におけるエンジン冷却水が蓄熱器をバイパスすることになるので、エンジン冷却水の流動抵抗をそれだけ低減させることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例における概略配置図。
【図2】上記実施形態例の制御フローチャート。
【図3】上記実施形態例の制御フローチャート。
【図4】上記実施形態例の制御フローチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ウオーターポンプ
5 エンジン出口側回路
10 分岐路
11 バルブ
14 蓄熱器
15、16、17 温度センサ
20 制御装置
Claims (1)
- エンジン冷却水の回路に設けられて上記回路と蓄熱器との間における上記エンジン冷却水の流通を断続させるバルブ機構と、上記バルブ機構の制御手段と、上記エンジン冷却水のエンジン出口側温度を検出する第1手段と、上記蓄熱器内における上記エンジン冷却水の温度を検出する第2手段とを有し、上記制御手段は、上記第1手段により検出された上記エンジン冷却水温度が上記第2手段により検出された上記エンジン冷却水温度より高い場合に限り、上記バルブ機構を制御して上記回路におけるエンジン冷却水を上記蓄熱器内へ導き、かつ、上記第2手段により検出された上記エンジン冷却水温度の所定時間毎の変化量が一定値よりも小さくなれば、上記バルブ機構を制御して上記回路におけるエンジン冷却水に上記蓄熱器をバイパスさせるように構成されたエンジン冷却水制御装置。
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