JP4541264B2 - 光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
フォトニック・バンドギャップ型ファイバは、クラッドに周期構造を形成することで光をファイバ内側に閉じ込めるファイバである。
このダブルクラッドファイバ5は、第一クラッド6の面積を小さくして励起光密度を高くし、また、励起光の入射効率を高めるために高NA(Numerical Aperture、開口数)である必要がある。第一クラッド6の周囲に空孔を配置することで大きなNAをもつ構造とし、光増幅器やファイバレーザの高出力化を目的とした開発が進められている。
このようにキャピラリを束ねてフォトニッククリスタルファイバを製造する方法としては、特許文献1〜7に開示されている。
官寧,他"低曲げ損失用ホールアシスト型ホーリーファイバ"、信学技報、OFT2004−7(2004) 二口和督、他"エアホール型Yb添加ダブルクラッドファイバ"、2003年 電子情報通信学会総合大会、C−3−88 B. J. Mangan, L. Farr, A. Langford, P. J. Roberts, D. P. Williams, F. Couny, M. Lawman, M. Nason, S. Coupland, R. Flea and H. Sabert, "Low Loss (1.7dB/km) hollow core photonic bandgap fiber,"OFC, RDP24, 2004
・設計によって、外径の異なるキャピラリや中実棒を詰め込む場合があるが、そのような場合、同径のキャピラリや中実棒を最密に詰め込む場合よりも隙間が大きく、それぞれの位置がずれやすい。
・隙間をきれいに埋める方法として、キャピラリ外形及びサポート管の内面を六角形などの多角形に加工すると非常にコストがかかる。容易に手に入る円形のキャピラリやサポート管を用いて隙間を埋める方法が必要である。
・キャピラリの両端を封止して、隙間を減圧して隙間を埋める方法も提案されているが、封止する圧力を、キャピラリの長さ、空孔径、炉のヒートゾーンの長さ、温度などを考慮して封止しなければならない。さらに、キャピラリ全てを同一の圧力に封止することが難しい。また、一体化時に長手方向にキャピラリ内の圧力が変化してしまい、孔径、特性などが安定しない。よって、長手方向にきれいに母材を作製し、圧力を調整して紡糸する方法が望ましい。
特許文献2には、筒状のサポート管内に、サポート管の中心軸と平行に多数のキャピラリを最密充填すると共に、中実のコアとなるコア部材を該サポート管の中心軸部に配置してプリフォームを作製し、該プリフォームを線引き加工により細径化するフォトニッククリスタルファイバの製造方法において、図8に示すようにキャピラリ9の外周の横断面形状を六角形状とし、キャピラリ9同士が融着して隙間のないキャピラリ層10を形成することを特徴とする方法が開示されている。
しかし、このような外周の横断面形状が六角形のキャピラリ9を作製することは、通常の円管状(外周の横断面形状が円形)のキャピラリに比べて、さらに加工作業が必要であるため、最終的にプリフォーム製造コストが高くなるという問題がある。
しかし、特許文献3に記載された従来技術にあっては、特許文献2の方法と同様に、内壁の横断面形状が六角形をなしているサポート管を作製することが、通常の円管状(内壁の横断面形状が円形)をなしているサポート管の作製に比べ、さらに加工作業が必要であるため、最終的に製造コストが高くなるという問題がある。
水酸基の存在は、波長1.38μmの波長の光を吸収することから、光ファイバとして伝送損失の劣化を招き望ましくない。特許文献4記載の方法は、線引き加工時の水酸基の形成を抑制するには有効と思われるが、本発明者らが検討したところ、線引き工程で長手方向に空孔径が変化してしまい、安定した構造のフォトニッククリスタルファイバが製造できない可能性があった。これは、線引きが進むにつれて、両端封止したキャピラリ15内部の圧力が徐々に変化してしまうことが原因と考えられる。また、両端封止後の線引き工程では、封止したときの圧力が維持されているので、線引き工程中に空孔径の調整を行うことができず、歩留まりが悪くなる問題がある。
さらに、線引き工程でキャピラリ15の一部が変形してしまうという現象も生じた。これは、キャピラリ15の両端を封止する際に、それぞれのキャピラリ15で僅かながら内圧に差が生じてしまい、その結果、線引き工程において空孔サイズにばらつきが生じたためと考えられる。これを防止するには封止時に正確な内圧の管理が必要であり、安定してフォトニッククリスタルファイバの生産を行う上で問題がある。
しかし、このような圧力調整は、圧力制御部につなげる部分のプリフォーム加工が複雑になり、また圧力制御系も複雑であることからファイバの作製コストが高くなってしまうという問題がある。
(1)キャピラリの片端を封止する工程、
(2)片端を封止した複数本のキャピラリ、又は、片端を封止した複数本のキャピラリと少なくとも1本の中実棒とを、空孔を残すキャピラリは封止した片端を一方の側に向け、空孔を潰すキャピラリは封止した片端を他方の側に向けて束ね、これらをサポート管に詰め込む工程、
(3)次いで、サポート管の前記一方の側に真空排気装置に接続されたコネクタを接続すると共に、前記他方の側に差圧調整用ガスの供給装置に接続されたコネクタを接続する工程、
(4)次いで、前記サポート管の他方側近傍部をヒータにより、前記サポート管と前記複数本のキャピラリ、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒が軟化変形する温度まで加熱する工程、
(5)工程(4)の状態でサポート管の前記一方の側から真空排気装置で管内を排気すると共に、サポート管の前記他方の側から差圧調整用ガスを管内に供給し、前記加熱軟化された前記サポート管と前記複数本のキャピラリ、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒を一体化し、サポート管内空間を前記一方の側の空間Iと前記他方の側の空間IIとに分ける工程、
(6)次いで、空間Iを減圧し、空間IIをほぼ大気圧となるように制御する工程、
(7)次いで、ヒートゾーンをサポート管の一方の側に向けて緩やかに移動させ、前記サポート管と複数本のキャピラリの全長、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒の全長にわたって一体化を行って、複数の空孔が維持されたキャピラリと複数の空孔が潰れて形成されたロッド部分とが組み合わされた断面構造をもつ母材を作製する工程、
を含むことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法を提供する。
本発明の光ファイバ母材の製造方法において、前記工程(2)において1本のキャピラリを中心として、該中心のキャピラリを前記複数本のキャピラリで囲むように配置し、前記工程(6)において前記中心のキャピラリの空孔を維持して空孔コアからなるコア領域を形成することが好ましい。
本発明の光ファイバ母材の製造方法において、前記工程(6)における空間IIの大気圧との差圧を−0.50kPa〜+10kPaの範囲とすることが好ましい。
また、ロッド部分形成用のキャピラリの断面積(内径)を調整することで、これを潰して形成されるロッド部分の径が調整可能となる。
また、空孔形成用のキャピラリは、片端を封止し、一体化中に空孔を残すキャピラリ内の圧力を一定に保つことができるので、空孔径が母材の長手方向で安定した母材を作製することができ、キャピラリの全長にわたって安定した光学特性をもった光ファイバを製造することができる。
また、キャピラリを両端封止する場合に比べ、母材の設計、大きさによって圧力を調整する必要がなく、どのような形状の母材であっても簡単に製造することができる。
また、母材の段階で一体化することによって、紡糸時に空孔内の圧力制御だけ行えばよく、複雑な紡糸加圧系を作らなくてもよく、紡糸装置を簡略化できる。
また、一体化中は、最終的に2つの圧力を制御しているが、工程(5)によって母材の上部と下部で空間を分けることができるので、サポート管を2重にするなどの複雑な構造とすることなく一体化加工を行うことができ、一体化装置も簡略化することができる。
本発明の製造方法によれば、多数の空孔とキャピラリの空孔が潰れて形成されたロッド部分とが組み合わされた断面構造をもつ母材をほぼ100%の歩留まりで製造することができ、かつ該母材を紡糸して高い歩留まりで光ファイバを製造することができる。
図13は、本発明による光ファイバの製造方法の基本原理を説明するための断面図である。本例示では、空孔形成用のキャピラリ40Aと、空孔を潰してロッド部分を形成するためのキャピラリ40Bと、コア領域形成用の中実棒42とを、中実棒42を中心とし、それを複数本のキャピラリ40A,40Bで囲むように組み合わせ、サポート管41内に挿入した状態を示している。これらのキャピラリ40A,40Bと中実棒42とは、それぞれ同じ外径のものを用いている。
本実施形態の一体化工程では、まず、図14に示すように、キャピラリ40A,40Bに片端封止部45を形成する(工程(1))。この片端封止部45は、キャピラリ40A,40B内の内部空間と片端封止部45外部とのガス流通を完全に防ぐことができればよく、通常はキャピラリ40A,40Bの片方を加熱して溶断することにより行われる。この片端封止部45があまり長いと、サポート管41に余分な長さが必要となるため、この片端封止部45はできる限り短く形成することが望ましい。
また、ロッド部分形成用のキャピラリの断面積(内径)を調整することで、これを潰して形成されるロッド部分の径が調整可能となる。
また、空孔形成用のキャピラリは、片端を封止し、一体化中に空孔を残すキャピラリ内の圧力を一定に保つことができるので、空孔径が母材の長手方向で安定した母材を作製することができ、キャピラリの全長にわたって安定した光学特性をもった光ファイバを製造することができる。
また、キャピラリを両端封止する場合に比べ、母材の設計、大きさによって圧力を調整する必要がなく、どのような形状の母材であっても簡単に製造することができる。
また、母材の段階で一体化することによって、紡糸時に空孔内の圧力制御だけ行えばよく、複雑な紡糸加圧系を作らなくてもよく、紡糸装置を簡略化できる。
また、一体化中は、最終的に2つの圧力を制御しているが、工程(5)によって母材の上部と下部で空間を分けることができるので、サポート管を2重にするなどの複雑な構成をとらずに一体化加工を行うことができ、一体化装置も簡略化することができる。
本発明の製造方法によれば、多数の空孔とキャピラリの空孔が潰れて形成されたロッド部分とが組み合わされた断面構造をもつ母材をほぼ100%の歩留まりで製造することができ、かつ該母材を紡糸して高い歩留まりで光ファイバを製造することができる。
以下、実施例により本発明の効果を実証する。
外径40mm、内径33mmの石英ガラス製のサポート管41に、多数の石英ガラス製のキャピラリ40A、エアコア形成用のキャピラリ44及び石英ガラス製の中実棒43を図18に示すように詰め込み、母材の一体化を行って、図19に示すような断面形状の母材51Aを作製した。
ここで、空孔形成用のキャピラリ40Aとエアコア形成用のキャピラリ44は、片端を封止し、図14において上部に封止側を向けて配置した。空孔形成用のキャピラリ40Aは、外径1.5mm、内径1.3mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。中実棒43は、外径1.5mm、長さ400mmの石英ガラス棒を用いた。中心のエアコア用のキャピラリ44は、外径3.9mm、内径3.5mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。
次に、母材を延伸機にセットし、キャピラリ40Aの下端から40mm上部にヒートゾーン中心が位置するようにセットし、1900℃で熱して、下部からArガスを供給しつつ上部から真空ポンプで吸引し、図15に示すように母材の一部を一体化した。
その後、図16に示す、空間Iは真空ポンプで減圧し、大気圧との差圧が−90kPaになるように調整し、空間IIは、大気圧との差圧が+0.5kPaの範囲になるように調整し、図17に示すように、1870℃でヒートゾーンを移動させながら、外径30mmに延伸することによって母材の全長を一体化した。その結果、図19に示すように、中心に空孔コア(エアコア)からなるコア領域53を有し、その周囲に六角形の空孔52と中実のロッド部分とが規則的に並べられた構造を有する母材51Aが得られた。
得られた母材51Aの断面は、母材の上部、下部で殆ど同じ空孔径であった。
外径40mm、内径33mmの石英ガラス製のサポート管41に、エアコア形成用のキャピラリ44と、多数の空孔形成用のキャピラリ40Aと、多数のロッド部分形成用のキャピラリ40Bを図20に示すように詰め込み、母材の一体化を行って、図21に示すような断面形状の母材51Bを作製した。
ここで、空孔形成用のキャピラリ40Aとエアコア形成用のキャピラリ44は、片端を封止し、図14において上部に封止側を向けて配置した。空孔を潰してロッド部分を形成するキャピラリ40Bは、片端封止して、図14において下部に封止側を向けて配置した。空孔形成用のキャピラリ40Aは、外径1.5mm、内径1.3mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。ロッド部分形成用のキャピラリ40Bは、外径1.5mm、内径0.7mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。中心のエアコア形成用のキャピラリ44は、外径3.9mm、内径3.5mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。
次に、母材を延伸機にセットし、キャピラリ40Aの下端から40mm上部にヒートゾーン中心が位置するようにセットし、1900℃で熱して、下部からArガスを供給しつつ上部から真空ポンプで吸引し、図15に示すように母材の一部を一体化した。
その後、図16に示す、空間Iは真空ポンプで減圧し、大気圧との差圧が−90kPaになるように調整し、空間IIは、大気圧との差圧が+0.5kPaの範囲になるように調整し、図17に示すように、1870℃でヒートゾーンを移動させながら、外径30mmに延伸することによって母材の全長を一体化した。その結果、図21に示すように、中心に略六角形の空孔コア(エアコア)からなるコア領域53を有し、その周囲に多数の三角形の空孔52と小さな六角形のロッド部分54及びこれらのロッド部分54同士をつなぐ薄い隔壁55とが規則的に並べられた構造を有する母材51Bが得られた。
得られた母材断面は、母材の上部、下部で殆ど同じ空孔径であった。
外径39mm、内径33mmの石英ガラス製のサポート管41に、エアコア形成用のキャピラリ44と、多数の空孔形成用のキャピラリ40Aと、多数のロッド部分形成用のキャピラリ40Bを図22に示すように詰め込み、母材の一体化を行って、図23に示すような断面形状の母材51Cを作製した。
ここで、空孔形成用のキャピラリ40Aとエアコア形成用のキャピラリ44は、片端を封止し、図14において上部に封止側を向けて配置した。空孔を潰してロッド部分を形成するキャピラリ40Bは、片端封止して、図14において下部に封止側を向けて配置した。空孔形成用のキャピラリ40Aは、外径1.5mm、内径1.3mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。ロッド部分形成用のキャピラリ40Bは、外径1.5mm、内径0.7mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。中心のエアコア形成用のキャピラリ44は、外径6.5mm、内径5.8mm、長さ400mmの石英ガラス製の円管を用いた。
次に、母材を延伸機にセットし、キャピラリ40Aの下端から40mm上部にヒートゾーン中心が位置するようにセットし、1850℃で熱して、下部からArガスを供給しつつ上部から真空ポンプで吸引し、図15に示すように母材の一部を一体化した。
その後、図16に示す、空間Iは真空ポンプで減圧し、大気圧との差圧が−90kPaになるように調整し、空間IIは、大気圧との差圧が+0.02kPaの範囲になるように調整し、図17に示すように、1830℃でヒートゾーンを移動させながら、外径30mmに延伸することによって母材の全長を一体化した。その結果、図23に示すように、中心に略六角形の空孔コア(エアコア)からなるコア領域53を有し、その周囲に多数の三角形の空孔52と小さな六角形のロッド部分54及びこれらのロッド部分54同士をつなぐ薄い隔壁55とが規則的に並べられた構造を有する母材51Cが得られた。
図23に示す母材51Cは、実施例1の母材51Bと比べてロッド部分54の径が小さくなっていることが分かる。しかも、配列の乱れもなく作製することができた。
外径35mm、内径22mmの石英ガラス製のサポート管41に、多数の石英ガラス製のキャピラリ40A、コア領域形成用の石英ガラス製の中実棒42を図24に示すように詰め込み、母材の一体化を行って、図25に示すような断面形状の母材51Dを作製した。
ここで、空孔形成用のキャピラリ40Aは、片端を封止し、図14において上部に封止側を向けて配置した。この空孔形成用のキャピラリ40Aは、外径2.1mm、内径1.88mm、長さ500mmの石英ガラス製の円管を用いた。コア領域形成用の中実棒42は、外径2.1mm、長さ400mmの石英ガラス棒を用いた。
次に、母材を延伸機にセットし、キャピラリ40Aの下端から40mm上部にヒートゾーン中心が位置するようにセットし、1980℃で熱して、下部からArガスを供給しつつ上部から真空ポンプで吸引し、図15に示すように母材の一部を一体化した。
その後、図16に示す、空間Iは真空ポンプで減圧し、大気圧との差圧が−98kPaになるように調整し、空間IIは、大気圧との差圧が+1.0kPaの範囲になるように調整し、図17に示すように、2000℃でヒートゾーンを移動させながら、外径25mmに延伸することによって母材の全長を一体化した。その結果、図25に示すように、中心に断面六角形の中実のコア領域53を有し、その周囲に六角形の空孔52が薄い隔壁55を介して規則的に並べられた構造を有する母材51Dが得られた。
得られた母材51Cの断面は、母材の上部、下部で殆ど同じ空孔径であった。
外径35mm、内径22mmの石英ガラス製のサポート管41に、多数の石英ガラス製のキャピラリ40A、40Bを図26に示すように詰め込み、母材の一体化を行って、図27に示すような断面形状の母材51Eを作製した。
ここで、空孔形成用のキャピラリ40Aは、片端を封止し、図14において上部に封止側を向けて配置した。中実コア用のキャピラリ40Bは、片端封止して、図14において下部に封止側を向けて配置した。空孔形成用のキャピラリ40A、中実コア用のキャピラリ40Bともに、外径2.1mm、内径1.88mm、長さ500mmの石英ガラス製の円管を用いた。
次に、母材を延伸機にセットし、キャピラリ40Aの下端から40mm上部にヒートゾーン中心が位置するようにセットし、1980℃で熱して、下部からHeガスを供給しつつ上部から真空ポンプで吸引し、図15に示すように母材の一部を一体化した。
その後、図16に示す、空間Iは真空ポンプで減圧し、大気圧との差圧が−98kPaになるように調整し、空間IIは、大気圧との差圧が+1.0kPaの範囲になるように調整し、図17に示すように、2000℃でヒートゾーンを移動させながら、外径25mmに延伸することによって母材の全長を一体化した。その結果、図27に示すように、中心に断面六角形の中実の小さなコア領域53を有し、その周囲に六角形の空孔52が薄い隔壁55を介して規則的に並べられた構造を有する母材51Eが得られた。
この母材51Eのコア領域53は、キャピラリ40Bの空孔をつぶして中実にして形成したことにより、参考例2の母材51Dのコア領域53よりも小さな断面積とすることができた。
特許文献1の記載に従い、図6,図7に示すように、キャピラリとそれより外径の細いロッドを用い、フォトニックバンドギャップファイバの作製を試みたが、ロッドが細く、組上げているときに、ロッドの位置が移動してしまい、うまく母材を作製することができなかった。
特許文献7の実施例1,2の記載に基づいて、ガラス材料として純粋石英を用い、温度条件、圧力条件などを純粋石英に適した条件に変更してファイバ製造を試みた。しかし、ガラスキャピラリの隙間を減圧加熱している間は、キャピラリ内の空孔は両端封止状態にあるため、両端封止する条件が比較例1と同様に難しく、母材を加熱一体化している間に、空孔内圧力が変化してしまい、空孔径が母材の長手方向に安定しない。母材のある断面は、特許文献7の通り、きれいに隙間がないが、空孔径を長手方向に安定させることができなかった。よって、得られた母材を紡糸しても、長手方向に光学特性が変化してしまい、非常に歩留まりが悪かった。
実施例1〜3及び参考例1,2において、母材の歩留まりはほぼ100%、素線化時で歩留まりが、空孔の長手方向の安定性も含めて85%程度であった。
一方、比較例1,2では、ともに母材の歩留まりが40%程度、素線化時で歩留まりが、空孔の長手方向の安定性も含めて、10%程度であった。
Claims (8)
- (1)キャピラリの片端を封止する工程、
(2)片端を封止した複数本のキャピラリ、又は、片端を封止した複数本のキャピラリと少なくとも1本の中実棒とを、空孔を残すキャピラリは封止した片端を一方の側に向け、空孔を潰すキャピラリは封止した片端を他方の側に向けて束ね、これらをサポート管に詰め込む工程、
(3)次いで、サポート管の前記一方の側に真空排気装置に接続されたコネクタを接続すると共に、前記他方の側に差圧調整用ガスの供給装置に接続されたコネクタを接続する工程、
(4)次いで、前記サポート管の他方側近傍部をヒータにより、前記サポート管と前記複数本のキャピラリ、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒が軟化変形する温度まで加熱する工程、
(5)工程(4)の状態でサポート管の前記一方の側から真空排気装置で管内を排気すると共に、サポート管の前記他方の側から差圧調整用ガスを管内に供給し、前記加熱軟化された前記サポート管と前記複数本のキャピラリ、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒を一体化し、サポート管内空間を前記一方の側の空間Iと前記他方の側の空間IIとに分ける工程、
(6)次いで、空間Iを減圧し、空間IIをほぼ大気圧となるように制御する工程、
(7)次いで、ヒートゾーンをサポート管の一方の側に向けて緩やかに移動させ、前記サポート管と複数本のキャピラリの全長、又は、前記サポート管と前記複数本のキャピラリと前記少なくとも1本の中実棒の全長にわたって一体化を行って、複数の空孔が維持されたキャピラリと複数の空孔が潰れて形成されたロッド部分とが組み合わされた断面構造をもつ母材を作製する工程、
を含むことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 前記工程(2)において前記少なくとも1本の中実棒を中心として、該中実棒を前記複数本のキャピラリで囲むように配置することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記工程(2)において1本のキャピラリを中心として、該中心のキャピラリを前記複数本のキャピラリで囲むように配置し、前記工程(6)において前記中心のキャピラリの空孔を潰して中実のコア領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記工程(2)において1本のキャピラリを中心として、該中心のキャピラリを前記複数本のキャピラリで囲むように配置し、前記工程(6)において前記中心のキャピラリの空孔を維持して空孔コアからなるコア領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記工程(4)において加熱温度が1700℃〜2100℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記工程(6)において空間Iの大気圧との差圧を−0.50kPa〜−101kPaの範囲とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記工程(6)において空間IIの大気圧との差圧を−0.50kPa〜+10kPaの範囲とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光ファイバ母材の製造方法によって製造された光ファイバ母材を、その空孔内圧を制御しながら紡糸し、素線化して空孔を有する光ファイバを得ることを特徴とする光ファイバの製造方法。
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