以下、本発明の実施の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書において、「奥行方向」とは、屋根傾斜方向K1(流れ方向)を水平面に射影したときの方向K2をいう(図2の参照)。また、「側面視」とは、対象物を奥行方向に直交する方向(図2のX矢視方向)から見ることをいい、「平面視」とは、対象物の上面を鉛直方向(図3のZ矢視方向)から見ることをいう。
第1の実施形態に係る建物T1は、図1(a)(b)に示すように、等脚台形を基調とした建物であって、対向して立設された等脚台形を呈する一対の壁体1,1と、この壁体1,1の上辺間に覆設された等脚台形を呈する屋根2と、壁体1,1の下辺間に配設された等脚台形を呈する床体3とを備えて構成されており、図2に示すように、壁体1の一対の斜辺1s,1sがなす角度A、屋根2の一対の斜辺2s、2sがなす角度Bおよび床体3の一対の斜辺3s,3sがなす角度Cが総て等しくなっている。すなわち、A=B=C=θ’(度)となっている。ここで、図2は、図1(a)を模式的に表した図である。なお、屋根面と水平面とがなす角度をθ(度)とすると、角度θ’(度)と以下のような関係がある。
sin(θ/2)=(sin(A/2))/(cos(B/2))=tan(θ’/2)
また、以下では、屋根面と水平面とがなす角度θ(度)を「屋根傾斜角θ(度)」あるいは単に「θ(度)」という。
図3は、建物T1の側面図(建物T1を奥行方向に直交する方向から見た図)である。この図に示すように、建物T1を側面視する(建物T1を奥行方向に直交する方向から見る)と、壁体1は、その上辺および下辺を斜辺とする等脚台形であることから、その上辺が水平線hに対して屋根傾斜角θ(度)で傾斜するとともに、その平行な二辺(短辺1t、長辺1u)が鉛直線vに対して角度θ/2(度)だけ背面側に傾斜することになる。また、図1(b)および図2に示すように、壁体1は、その短辺1tが床体3の長辺3u側に位置し、長辺1uが床体3の短辺3t側に位置するように立設されている。
また、図1(b)に示すように、壁体1は、複数の長尺材10(以下、「壁構成材10」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものであり、屋根2は、複数の長尺材20(以下、「屋根構成材20」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものであり、同様に、床体3は、複数の長尺材30(以下、「床構成材30」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものである。
言い換えると、建物T1は、図4に示すように、一対の壁構成材10,10と屋根構成材20と床構成材30とにより枠状に形成された複数のユニットU1を奥行方向に隙間なく連接して構成したものであるといえる。なお、以下の説明において、一の構成材と正面側に隣接する他の構成材あるいは背面側に隣接する他の構成材とを区別する場合には、構成材の符号に適宜「’」あるいは「”」を付すこととする。
壁構成材10は、図5に示すように、その上辺10tと下辺10uとを斜辺とする等脚台形を呈している。また、壁構成材10を側面視すると、上辺10tと壁構成材10の中心線pとがなす角度が90−θ/2(度)であり、同じく下辺10uと中心線pとがなす角度が90−θ/2(度)である。なお、壁構成材10は、床構成材30に垂直な面内であって、床構成材30の斜辺30t(図10参照)を含む面内に立設されるが、下辺10uと中心線pとがなす角度が90−θ/2(度)であることから、壁構成材10の中心線pが前記した面内において垂直線v(床体3が水平であれば鉛直になる)に対してθ/2(度)だけ傾斜し、且つ、上辺10tが水平線hに対してθ(度)で傾斜することになる。また、壁構成材10を側面視すると、壁構成材10の一対の斜辺(上辺10t、下辺10u)がなす角度は、屋根傾斜角θ(度)と等しい。なお、展開図で見れば、壁構成材10の一対の斜辺(上辺10t、下辺10u)がなす角度は、角度θ’(度)(図2参照)と等しい。
壁体1を構成する複数の壁構成材10は、その断面の寸法・形状が総て同一であるが、図3に示すように、その長さ寸法が正面側から背面側に向かうにしたがって、順次小さくなっている。すなわち、壁構成材10の平行な二辺は、その長辺が正面側に隣接する他の壁構成材10’の短辺と同じ長さになっており、また、その短辺が背面側に隣接する他の壁構成材10”の長辺と同じ長さになっている。なお、一の壁構成材10の長さ寸法は、展開図で見たときの幅寸法をDWとすると、その正面側に隣接する他の壁構成材10’よりも2DW×tan(θ’/2)だけ小さくなっている。
また、壁構成材10は、図6に示すように、その長手方向に沿って互いに平行に配置された前側継手板11および後側継手板12と、この両継手板11,12間に配設された等脚台形を呈する外殻板13とを備えて構成されている。
前側継手板11および後側継手板12は、図7(c)に示すように、それぞれ外殻板13に垂直な面に対して角度θ/2(度)だけ傾斜している。また、図7(b)に示すように、両継手板11,12には、それぞれ段差が形成されており、一の壁構成材10の後側継手板12を他の壁構成材10”の前側継手板11に突き合わせたときに、一の壁構成材10の後側継手板12の外面12a(以下、「後側接合端面12a」という)と他の壁構成材10”の前側継手板11の外面11a(以下、「前側接合端面11a」という)とが隙間をあけて対向する。すなわち、壁構成材10は、その前後の縁部に互いに平行な前側接合端面11aと後側接合端面12aとを有しており、この後側接合端面12aを隣接する他の壁構成材10”の前側接合端面11aに突き合わせた状態で他の壁構成材10”と接合される。
なお、図6に示すように、両継手板11,12は、その先端部11b,12bが内側に折り曲げられており、内装材等を取り付ける際に利用される。また、このようにすると、壁構成材10の断面性能が向上し、さらに、壁構成材10を押出形材で形成する場合には、当該押出形材の押出精度が向上するという利点もある。また、壁構成材10の両継手板11,12は、屋根構成材20の両継手板21,22および床構成材30の両継手板31,32と干渉しないように、その長手方向の端部(図6中、符号11c,12cを付した部位)が切除されている。
また、図6に示すように、一の壁構成材10の後側継手板12と他の壁構成材10の前側継手板11との間には、平板状の補剛材41が介設される。
補剛材41は、図7(b)に示すように、一の壁構成材10の後側継手板12(後側接合端面12a)とこれに隣接する他の壁構成材10”の前側継手板11(前側接合端面11a)との間に形成された隙間にちょうど嵌り込む厚さに形成されており、一の壁構成材10の後側継手板12と他の壁構成材10”の前側継手板11とともに、リブR1を構成する。すなわち、一の壁構成材10の後側継手板12とこれに隣接する他の壁構成材10”の前側継手板11と補剛材41とにより、壁構成材10,10”の境界面に沿ってリブR1が形成されることになる。なお、各壁構成材10において、その長手方向に沿って形成された両継手板11,12は、それぞれ単独でも「リブ」として機能するが、補剛材41と一体にしてリブR1を形成することで、各ユニットU1の剛性をより一層向上させることができる。
なお、本実施形態では、平板状の補剛材41を使用したが、これに限定されることはなく、その断面形状等を適宜変更しても差し支えない。例えば、図13に示す補剛材44のように、断面T字形状のものであってもよく、さらには、図示は省略するが、長手方向に連続する中空部を備えたものであってもよい。このようにすると、壁構成材10,10の境界面に形成されるリブの剛性が格段に向上する。
さらに、図6に示すように、一の壁構成材10の前側継手板11と他の壁構成材10’の後側継手板12との間であって、壁構成材10と屋根構成材20(図4参照)との境界部分には、L字形状を呈する連結材51が介設され、同様に、壁構成材10と床構成材30(図4参照)との境界部分には、L字形状を呈する連結材52が介設される。そして、連結材51により、壁構成材10と屋根構成材20とが剛に接合され、また、連結材52により壁構成材10と床構成材30とが剛に接合されるので、ユニットU1の剛性が非常に高いものとなる。
屋根構成材20は、図8に示すように、壁構成材10の上辺10t(図5参照)と接する辺20t,20uを斜辺とする等脚台形を呈している。また、屋根構成材20を平面視すると、辺20t(20u)と中心線pとがなす角度は、90−θ/2(度)である。すなわち、屋根構成材20の一対の斜辺(辺20t,20u)がなす角度は、屋根傾斜角θ(度)と等しい。なお、展開図で見れば、屋根構成材20の一対の斜辺(辺20t、20u)がなす角度は、角度θ’(度)(図2参照)と等しい。
屋根2を構成する複数の屋根構成材20は、その断面の寸法・形状が総て同一であるが、図1(b)に示すように、その長さ寸法が正面側から背面側に向かうにしたがって、順次小さくなっている。すなわち、屋根構成材20の平行な二辺は、その短辺が正面側に隣接する他の屋根構成材20’の長辺と同じ長さになっており、また、その長辺が背面側に隣接する他の屋根構成材20”の短辺と同じ長さになっている。なお、一の屋根構成材20の長さ寸法は、展開図で見たときの幅寸法をDRとすると、その正面側に隣接する他の屋根構成材20よりも2DR×tan(θ’/2)だけ大きくなっている。
また、屋根構成材20は、図9(a)に示すように、その長手方向に沿って互いに平行に配置された前側継手板21および後側継手板22と、この両継手板21,22間に配設された等脚台形を呈する外殻板23とを備えて構成されている。
前側継手板21および後側継手板22は、図9(c)に示すように、それぞれ外殻板23に垂直な面に対して角度θ/2(度)だけ傾斜しており、その離隔距離yは、図7(c)に示す壁構成材10の両継手板11,12の離隔距離xと等しい。また、図9(b)に示すように、両継手板21,22には、それぞれ段差が形成されており、一の屋根構成材20の後側継手板22を他の屋根構成材20”の前側継手板21に突き合わせたときに、一の屋根構成材20の後側継手板22の外面22a(以下、「後側接合端面22a」という)と他の壁構成材20”の前側継手板21の外面21a(以下、「前側接合端面21a」という)とが隙間をあけて対向する。すなわち、屋根構成材20は、その前後の縁部に互いに平行な前側接合端面21aと後側接合端面22aとを有しており、この後側接合端面22aを隣接する他の屋根構成材20”の前側接合端面21aに突き合わせた状態で他の屋根構成材20”と接合される。
なお、図9(c)に示すように、両継手板21,22は、その先端部21b,22bが内側に折り曲げられており、内装材等を取り付ける際に利用される。また、このようにすると、屋根構成材20の断面性能が向上し、さらに、屋根構成材20を押出形材で形成する場合には、当該押出形材の押出精度が向上するという利点もある。また、図6に示す壁構成材10と同様に、屋根構成材20の両継手板21,22は、その長手方向の端部が切除されている。
また、図9(b)に示すように、一の屋根構成材20の後側継手板22と他の屋根構成材20”の前側継手板21との間には、平板状の補剛材42が介設されており、一の屋根構成材20の後側継手板22と他の屋根構成材20”の前側継手板21とともに、リブR2を構成する。なお、補剛材42の構成および機能は、前記した補剛材41と同様であるので、詳細な説明は省略する。
さらに、一の屋根構成材20の後側継手板22と他の屋根構成材20”の前側継手板21との間であって、壁構成材10と屋根構成材20(図5参照)との境界部分には、L字形状を呈する連結材51(図6参照)が介設される。
床構成材30は、図8および図9に示す屋根構成材20と同一である。すなわち、壁構成材10の下辺10u(図5参照)と接する辺を斜辺とする等脚台形を呈しており、その長手方向に沿って互いに平行に配置された前側継手板31および後側継手板32(図9参照)と、この両継手板31,32間に配設された外殻板33とを備えて構成されている。また、両継手板31,32は、外殻板33に垂直な面に対して角度θ/2(度)だけ傾斜している(図9(c)参照)。
また、図10に示すように、一の床構成材30の前側継手板31と他の床構成材30’の後側継手板32との間には、平板状の補剛材43が介設されており、一の床構成材30の前側継手板31と他の床構成材30’の後側継手板32とともに、リブR3を構成する。なお、補剛材43の構成および機能は、前記した補剛材41,42と同様であるので、詳細な説明は省略する。
さらに、図10に示すように、一の床構成材30の前側継手板31と他の床構成材30’の後側継手板32との間であって、壁構成材10と床構成材30との境界部分には、L字形状を呈する連結材52が介設される。
壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30をそれぞれ前記した規則に従って形成した場合には、これらの断面形状・寸法を同一にすることができる。言い換えれば、一種類の形材から壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30を形成することが可能となる。すなわち、図7(c)に示す断面を有する形材を、長手方向と直交する方向に対して角度θ’/2(度)(平面視したときにはθ/2(度))だけ傾斜させた面で切断するだけで、各構成材10,20,30を形成することができるので、非常に経済的である。
また、壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30は、アルミニウム合金製の押出形材とするのがよい。このようにすると、白蟻の食害を受けることがなく、さらには、雨水や湿気により腐食することもないので、供用後の維持管理費用を大幅に削減することができる。また、各構成材10,20,30は、押出形材を適宜な長さ・角度で切断するだけで製造することができるので、大量生産に適している。さらに、押出形材の寸法精度が木材等と比べて格段に高いので、複数の押出形材を連接した場合であっても、狂いの少ない建物とすることができる。また、強度の割に軽いアルミニウム合金製の押出形材で各構成材10,20,30を形成するため、現場での取り回しが容易になるという利点もある。
また、壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30をそれぞれ前記した規則に従って形成した場合には、壁構成材10の前側継手板11と屋根構成材20の前側継手板21と床構成材30の前側継手板31とが同一平面上に位置することになり、且つ、壁構成材10の後側継手板12と屋根構成材20の後側継手板22と床構成材30の後側継手板31とが同一平面上に位置することになるので、壁構成材10,10”間のリブR1(図7(b)参照)、屋根構成材20,20”間のリブR2(図9(b)参照)および床構成材30,30”間のリブR3(図10参照)も同一平面上に形成されることになる(以下、リブR1,R2,R3を総称して「リブR」という)。そして、リブRにより、ユニットU1の面内方向の剛性(せん断剛性)が特に向上し、さらに、このようなリブRが、奥行方向に所定の間隔をあけて複数箇所に形成されることになるので、建物T2は、非常に高い剛性を有しているといえる。なお、複数のリブRは、互いに平行である。
さらに、ユニットU1において、壁構成材10がその上辺10tと下辺10u(図5参照)とを斜辺とする等脚台形であり、且つ、屋根構成材20と床構成材30とが同一であることから、壁構成材10と屋根構成材20との接合構造と、壁構成材10と床構成材30との接合構造が同一になる。
(建物の構築方法)
次に、建物T1の構築方法の一例を、図10を参照して説明する。
まず、既に枠状に組み立てられたユニットU1の床構成材30の前側継手板31に、その正面側に隣接するユニットU1’を構成する床構成材30’の後側継手板32を突き合わせる。
続いて、ユニットU1の床構成材30の前側接合端面31a(図9(b)参照)とユニットU1’の床構成材30’の後側接合端面32a(図9(b)参照)との間に形成された隙間に平板状の補剛材43を介設するとともに、壁構成材10との境界部分に連結材52を介設し、さらに、これらをボルトB1・ナットN1で一体にする。
次に、ユニットU1の壁構成材10の前側継手板11に、ユニットU1’の壁構成材10’の後側継手板12(後側接合端面12a)を突き合わせるとともに、ユニットU1の壁構成材10の前側接合端面11a(図7(b)参照)とユニットU1’の壁構成材10’の後側接合端面12a(図7(b)参照)との間に形成された隙間に平板状の補剛材41を介設し、さらに、屋根構成材20(図4参照)との境界部分に連結材51(図6参照)を介設した上で、これらをボルトB1・ナットN1で一体にする。
同様に、図示は省略するが、ユニットU1の屋根構成材20の前側継手板21に、ユニットU1’の屋根構成材20’の後側継手板22を突き合わせ、その間に補剛材42を介設した上で、これらをボルト・ナットで一体にする(図9(a)(b)参照)。
そして、このような作業を順次繰り返して、所定数のユニットU1を奥行方向に隙間なく連接し、その後、図11(a)に示すように、正面側の開口部に壁61、窓62、ドア63等を適宜設けるとともに、図11(b)に示すように、背面側の開口部に窓64等を適宜設け、さらに、図12(a)(b)に示すように、壁体1、屋根2および床体3の内面に各種仕上材65を貼り付けるとともに、間仕切壁66やロフト67等を設けると、建物T1の構築が完了する。なお、建物T1では、構造材たる各構成材10,20,30が隙間なく並べられているので、各構成材10,20,30が外装材を兼ねている。
なお、建物T1の間取り、窓等の形状・配置等は、適宜変更しても差し支えないことは言うまでもないが、例えば、天井高の大きい正面側にロフト67を設けることで、正面側に向かうに従って天井高さが漸増する建物T1の内部空間を有効に利用することが可能となり、さらに、天井高の大きい正面側の開口部の上部に窓62を設けることで、効率よく太陽光を取り入れることが可能となる。さらに、壁体1,屋根2および床体3だけで強固な構造体となるので、必ずしも建物内部に壁を配置する必要がなく、その結果、間取りの自由度が非常に高いものとなる。
このように、所定の規則に従って形成された複数の壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30を隙間なく連接するだけで天井高さや横幅が漸増・漸減する斬新なデザインの建物T1を容易に構築することができる。しかも、壁構成材10と屋根構成材20との接合構造と、壁構成材10と床構成材30との接合構造が同一になるので、組立作業を迅速に行うことができる。さらに、壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30を一種類の押出形材から形成することができるので、非常に経済的である。
なお、建物T1の構築手順は、前記したものに限定されることはなく、適宜変更しても差し支えない。例えば、複数の床構成材30を奥行方向に連接して床体3を構成し、次いで、複数の壁構成材10を奥行方向に連接して構成した壁体1を床体1の斜辺に沿って立設し、その後、複数の屋根構成材20を奥行方向に連接して構成した屋根2を壁体1,1間に覆設する、という手順でもよい。
すなわち、複数の床構成材30を奥行方向に連接して床体3を構成するとともに、各床構成材30の両端部において隣接する他の床構成材30’との間にL字形の連結材52(図6参照)を介設しておき、次いで、複数の壁構成材10を奥行方向に連接して壁体1を構成したうえで、隣接する壁構成材10,10’間に床体3に配設された連結材52の上方へ立ち上がる部分を挿入して壁体1を床体3の斜辺に沿って立設し、その後、複数の屋根構成材20を奥行方向に連接して屋根2を構成するとともに、各屋根構成材20の両端部において隣接する他の屋根構成材20’との間にL字形の連結材51(図6参照)を介設したうえで、この連結材51の下方へ垂れ下がる部分を壁体1の上端部の隣接する壁構成材10,10間の挿入して屋根2を壁体1,1間に覆設する、という手順でもよい。
(屋根構成材の変形例)
図9に示す屋根構成材20に替えて、図13に示す屋根構成材20を使用してもよい。図13に示す屋根構成材20は、外殻板23の端縁から正面側に向かって延設された重ね部23aを有している。また、外殻板23の背面側には、重ね部23aに対応する段差部23bが形成されている。このようにすると、複数の屋根構成材20を連接したときに、一の屋根構成材20の重ね部23aが隣接する他の屋根構成材20’の段差部23b上に配設されることになるので、雨仕舞が良好になる。なお、図示は省略するが、隣接する屋根構成材20,20’の適宜な位置に、シール材を配置してもよい。
(他の実施形態)
第1の実施形態に係る建物T1では、壁体1、屋根2および床体3をそれぞれ等脚台形としたが、これに限定されることはなく、等脚台形以外の形状であってもよい。
すなわち、壁体を構成する壁構成材、屋根を構成する屋根構成材および床を構成する床構成材の形状を、等脚台形以外の形状にしてもよい。
ここで、長手方向に等断面を有する壁構成材、屋根構成材および床構成材を使用して本発明に係る建物を構築する場合に、屋根傾斜角θを確保するための条件を図14(b)を参照して説明する。
図14(b)に示すように、壁構成材Wを側面視したとき(奥行方向に直交する方向から見たとき)に、壁構成材Wの下辺uWと壁構成材Wの中心線pWとのなす角度が90−α(度)である場合、下辺uWを水平にした状態で壁構成材Wを立設すると、壁構成材Wの中心線pWが鉛直線vに対して角度α(度)だけ傾斜することになるが、この場合において上辺tWを水平線hに対して屋根傾斜角θ(度)で傾斜させるためには、壁構成材Wの上辺tWと中心線pWとのなす角度を90−θ+α(度)とする必要がある。なお、壁構成材Wを側面視したときに、壁構成材Wの一対の斜辺(上辺tWと下辺uW)がなす角度は、α+(θ−α)=θ(度)となる。
なお、図5に示すように、第1の実施形態に係る壁構成材10は、等脚台形(すなわち、α=θ−α(度))であるから、α=θ/2(度)である。したがって、壁構成材10の上辺および下辺をそれぞれ中心線pに直交する線に対して角度θ/2(度)で傾斜させれば、壁構成材10の中心線pが鉛直線vに対して角度θ/2(度)だけ傾斜し、上辺10tが水平線hに対して屋根傾斜角θ(度)で傾斜することになる。
また、前側継手板と後側継手板とを有する壁構成材、屋根構成材および床構成材を使用して屋根傾斜角θ(度)を有する建物を構築する場合に、壁構成材の前側継手板と屋根構成材の前側継手板と床構成材の前側継手板が同一平面上にあり、且つ、壁構成材の後側継手板と屋根構成材の後側継手板と床構成材の後側継手板とが同一平面上にあるための条件は、壁構成材Wを側面視したときに、壁構成材Wの中心線pWが鉛直線vに対して角度α(度)だけ傾斜し(図14(b)参照)、屋根構成材Rを平面視したとき(鉛直方向から見たとき)に、屋根構成材Rにおいて壁構成材Wの上辺tWに接する辺tRと屋根構成材Rの中心線pRとがなす角度が90−γ(度)であるとき(図14(a)参照)には、以下のようになる。
(1)壁構成材Wの前側継手板W1および後側継手板W2が、外殻板W3に垂直な面に対して角度γ(度)で傾斜していること(図14(d)参照)。
(2)屋根構成材Rの前側継手板R1および後側継手板R2が、外殻板R3に垂直な面に対して角度θ−α(度)だけ傾斜していること(図14(c)参照)。
(3)壁構成材Wの両継手板W1,W2の離隔をx、屋根構成材Rの両継手板R1,R2の離隔をyとしたときに、y=xであること(図14(c)(d)参照)。
(4)床構成材Fを平面視したときに、壁構成材Wの下辺sWに接する辺と中心線とがなす角度が90−γ(度)であること(図示略)。
(5)床構成材Fの前側継手板F1および後側継手板F2が、外殻板F3に垂直な面に対して角度α(度)だけ傾斜していること(図14(e)参照)。
(6)壁構成材Wの両継手板W1,W2の離隔をx、床構成材の両継手板の離隔をzとしたときに、z=xであること(図14(c)(e)参照)。
例えば、第1の実施形態に係る建物T1(壁構成材10、屋根構成材20および床構成材30)の条件(α=θ/2(度),γ=θ/2(度))を、前記した(1)〜(6)に当てはめると、以下のようになる。
(1−1)壁構成材10の前側継手板11および後側継手板12が、外殻板13に垂直な面に対して角度θ/2(度)で傾斜していること(図7(c)参照)。
(2−1)屋根構成材20の前側継手板21および後側継手板22が、外殻板23に垂直な面に対して角度θ/2(度)だけ傾斜していること(図9(c)参照)。
(3−1)壁構成材10の両継手板11,12の離隔をx、屋根構成材20の両継手板21,22の離隔をyとしたときに、y=xであること(図7(c),図9(c)参照)。
(4−1)床構成材30を平面視したときに、壁構成材10の下辺10sに接する辺と中心線pとがなす角度が90−θ/2(度)であること(図示略)。
(5−1)床構成材30の前側継手板31および後側継手板32が、外殻板33に垂直な面に対して角度θ/2(度)だけ傾斜していること(図9(c)参照)。
(6−1)壁構成材10の両継手板11,12の離隔をx、床構成材30の両継手板31,32の離隔をzとしたときに、z=xであること(図9(c)参照)。
また、図15(a)に示す第2の実施形態に係る建物T2は、複数の枠状のユニットU2を奥行方向に連接して構成した建物であって、対向して立設された側面視台形を呈する一対の壁体101,101と、この壁体101,101の上辺間に覆設された平面視長方形を呈する屋根102と、壁体101,101の下辺間に配設された平面視長方形を呈する床体103とを備えて構成されており、図15(b)に示すように、壁体101は、複数の長尺材110(以下、「壁構成材110」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものであり、屋根102は、複数の長尺材120(以下、「屋根構成材120」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものであり、同様に、床体103は、複数の長尺材130(以下、「床構成材130」という)をその短手方向に隙間なく連接して構成したものである。かかる建物T2において、壁構成材110の前側継手板111と屋根構成材120の前側継手板121と床構成材130の前側継手板131が同一平面上にあり、且つ、壁構成材110の後側継手板112と屋根構成材120の後側継手板122と床構成材130の後側継手板132とが同一平面上にあるための条件は、前記した(1)〜(6)より、以下のようになる。なお、壁構成材110は台形であり、壁構成材110を側面視したときに、壁構成材110の中心線pが鉛直線vに対して角度α(度)だけ傾斜しており(図16(b)参照)、屋根構成材120を平面視したときに、屋根構成材120において壁構成材110の上辺110tに接する辺120tと屋根構成材120の中心線pとがなす角度が90(度)(すなわち、γ=0(度))になっている(図16(a)参照)。
(1−2)壁構成材110の前側継手板111および後側継手板112が、外殻板113に垂直であること(図16(d)参照)。
(2−2)屋根構成材120の前側継手板121および後側継手板122が、外殻板123に垂直な面に対して角度θ−α(度)だけ傾斜していること(図16(c)参照)。
(3−2)壁構成材110の両継手板111,112の離隔をx、屋根構成材120の両継手板121,122の離隔をyとしたときに、y=xであること(図16(c)(d)参照)。
(4−2)床構成材130を平面視したときに、壁構成材110の下辺110sに接する辺と中心線とがなす角度が90(度)であること(図示略)。
(5−2)床構成材130の前側継手板131および後側継手板132が、外殻板133に垂直な面に対して角度α(度)だけ傾斜していること(図16(e)参照)。
(6−2)壁構成材110の両継手板111,112の離隔をx、床構成材130の両継手板131,132の離隔をzとしたときに、z=xであること(図16(c)(e)参照)、である。
また、図17(a)(b)に示す第3の実施形態に係る建物T3は、図15(a)に示す建物T2と同様に、複数の枠状のユニットU3を奥行方向に連接して構成した建物であって、台形を呈する一対の壁体201,201と、長方形を呈する屋根202と、同じく長方形を呈する床体203とを備えて構成されたものであるが、図18(b)に示すように、壁体201を構成する壁構成材210の中心線pが鉛直になっている(すなわち、α=0(度))。かかる建物T3において、壁構成材210の前側継手板211と屋根構成材220の前側継手板221と床構成材230の前側継手板231が同一平面上にあり、且つ、壁構成材210の後側継手板212と屋根構成材220の後側継手板222と床構成材230の後側継手板232とが同一平面上にあるための条件は、前記した(1)〜(6)より、以下のようになる。
(1−3)壁構成材210の前側継手板211および後側継手板212が、外殻板213に垂直であること(図18(d)参照)。
(2−3)屋根構成材220の前側継手板221および後側継手板222が、外殻板223に垂直な面に対して角度θ(度)だけ傾斜していること(図18(c)参照)。
(3−3)壁構成材210の両継手板211,212の離隔をx、屋根構成材220の両継手板221,222の離隔をyとしたときに、y=xであること(図18(c)(d)参照)。
(4−3)床構成材230を平面視したときに、壁構成材210の下辺210sに接する辺と中心線とがなす角度が90(度)であること(図示略)。
(5−3)床構成材230の前側継手板231および後側継手板232が、外殻板233に垂直にであること(図18(e)参照)。
(6−3)壁構成材210の両継手板211,212の離隔をx、床構成材230の両継手板231,232の離隔をzとしたときに、z=xであること(図18(e)参照)。
このように、前記した(1)〜(6)を満たすように適宜各構成材の寸法・形状を設定すると、これらを組み立てて枠状のユニットを形成した場合に、壁構成材の前側継手板と屋根構成材の前側継手板と床構成材の前側継手板とが同一平面上に位置することになり、且つ、壁構成材の後側継手板と屋根構成材の後側継手板と床構成材の後側継手板とが同一平面上に位置することになり、その結果、各ユニットの面内方向の剛性(せん断剛性)が特に向上するので、地震力や風圧力等の水平力に対する変形抵抗が非常に高いものとなる。また、壁構成材と屋根構成材あるいは床構成材とを接合する場合に、各構成材の前側継手板同士および後側継手板同士を接合する構成にすれば、各構成材の前側継手板が同一平面上に位置し、且つ、各構成材の後側継手板が同一平面上に位置していることから、総ての接合部において、図10に示す接合構造を採用することが可能となる。
なお、図14において、γ=θ−α(度)とした場合には、壁構成材Wと屋根構成材Rとが同一の断面形状になることから、壁構成材Wと屋根構成材Rを一種類の形材で構成することができる。また、γ=α(度)とした場合には、壁構成材Wと床構成材Fとが同一の断面形状になることから、壁構成材Wと屋根構成材Rを一種類の形材で構成することができる。そして、α=θ/2(度)とした場合には、壁構成材Wと屋根構成材Rと床構成材Fとが同一の断面形状となることから、これを一種類の形材で構成することができる。例えば、図15に示す第2の実施形態に係る建物T2は、三種類の形材を必要とするが(図16(c)〜(e)参照)、図17に示す第3の実施形態に係る建物T3は、二種類の形材で構成することができ(図18(c)〜(e)参照)、さらに、図1に示す第1の実施形態に係る建物T1は、一種類の形材で構成することができる(図7(c)、図9(c)参照)。
なお、前記した建物T1〜T3の屋根形状は、「方流れ」タイプであったが、図19および図20に示す第4の実施形態に係る建物T4の屋根形状のように、「バタフライ」タイプのものであってもよい。
建物T4は、図19(a)に示すように、対向して立設された一対の壁体301,301と、この壁体301,301の上辺間に覆設された屋根302と、壁体301,301の下辺間に配設された床体303とを備えて構成されている。
壁体301は、図20に示すように、正面側から背面側に向かうに従って高さ寸法が漸減する第一の壁体301Aと、正面側から背面側に向かうに従って高さ寸法が漸増する第二の壁体301Bとからなる。両壁体301A,301Bは、ともに台形を呈しており、かつ、その境界での高さ寸法が等しい。
屋根302は、図19(a)(b)に示すように、第一の壁体301A,301Aの上辺間に覆設される第一の屋根302Aと、第二の壁体301B,301Bの上辺間に覆設される第二の屋根302Bとからなる。第一の屋根302Bは、等脚台形を呈しており、正面側から背面側に向かうに従って幅(長さ)寸法が漸減している。また、第二の屋根302Bは、等脚台形を呈しており、正面側から背面側に向かうに従って幅(長さ)寸法が漸増している。
床体303は、図19(a)(b)に示すように、第一の壁体301A,301Aの下辺間に配設される第一の床体303Aと、第二の壁体301B,301Bの下辺間に配設される第二の床体303Bとからなる。第一の床体303Aは、等脚台形を呈しており、正面側から背面側に向かうに従って幅(長さ)寸法が漸減している。また、第二の床体303Bは、等脚台形を呈しており、正面側から背面側に向かうに従って幅(長さ)寸法が漸増している。
建物T4は、枠状に形成された複数のユニットU4を奥行方向に連接して構成したものである。また、ユニットU4は、前記した建物T1のユニットU1と同様に、壁構成材と屋根構成材と床構成材とにより構成されている。このユニットU4も、前記した(1)〜(6)を満たすように適宜各構成材の寸法・形状を設定すれば、これらを組み立てて枠状のユニットU4を形成した場合に、壁構成材の前側継手板と屋根構成材の前側継手板と床構成材の前側継手板とが同一平面上に位置することになり、且つ、壁構成材の後側継手板と屋根構成材の後側継手板と床構成材の後側継手板とが同一平面上に位置することになり、その結果、ユニットU4の面内方向の剛性(せん断剛性)が特に向上するので、地震力や風圧力等の水平力に対する変形抵抗が非常に高いものとなる。
また、前記した建物T1〜T4では、対向する一対の壁体が同一形状であり、また、床体が水平に配設されていたが、図21および図22に示す第5の実施形態に係る建物T5のように、形状が異なる二種類の壁体401,401’を対向させたものであってもよく、さらには、床体403の一部を傾斜させたものであってもよい。
すなわち、図21および図22(a)に示すように、一方の壁体401は、第一の壁体401Aと第二の壁体401Bとを組み合わせたものであり、他方の壁体401’は、第三の壁体401Cと第四の壁体401Dと第5の壁体401Eとを組み合わせたものである。
また、床体403は、長方形を呈する第一の床体403Aと台形を呈する第二の床体403Bと同じく台形を呈する第三の床体403Cとから構成されており、第三の床体403Cが水平面に対して傾斜している(図21、図22(b)参照)。
このような複雑な立体形状を呈し、斬新且つ奇抜なデザインの建物T5も、前記した建物T1と同様に、壁構成材と屋根構成材と床構成材とにより枠状に形成された複数のユニットを奥行方向に連接することにより容易に構成することができる。また、各ユニットにおいて、前記した(1)〜(6)を満たすように適宜各構成材の寸法・形状を設定すれば、これらを組み立てて枠状のユニットを形成した場合に、壁構成材の前側継手板と屋根構成材の前側継手板と床構成材の前側継手板とが同一平面上に位置することになり、且つ、壁構成材の後側継手板と屋根構成材の後側継手板と床構成材の後側継手板とが同一平面上に位置することになり、その結果、ユニットの面内方向の剛性(せん断剛性)が特に向上するので、地震力や風圧力等の水平力に対する変形抵抗が非常に高いものとなる。また、壁構成材と屋根構成材あるいは床構成材とを接合する場合に、各構成材の前側継手板同士および後側継手板同士を接合する構成にすれば、各構成材の前側継手板が同一平面上に位置し、且つ、各構成材の後側継手板が同一平面上に位置していることから、総ての接合部において、図10に示す接合構造を採用することが可能となる。
ちなみに、図19(b)に示すように、建物T5は、二種類の形材を組み合わせることで構築することができる。
また、前記した建物T1〜T5は、枠状を呈する複数のユニットを奥行方向に連接して構成したが、図23に示す第6の実施形態に係る建物T6のように、門形を呈する複数のユニットU6を奥行方向に連接して構成してもよい。
ユニットU6は、対向する一対の壁構成材10,10と、壁構成材10,10間に架設された屋根構成材20とを備えて構成されており、正面側からみると、門形を呈している。なお、壁構成材10および屋根構成材20は、第1の実施形態で説明したものと同一であるので、詳細な説明は省略する。
なお、前記した各実施形態では、壁構成材、屋根構成材および床構成材を断面溝形の押出形材で形成したものを例示したが、このような断面形状に限定されることはなく、適宜変更しても差し支えない。例えば、図示は省略するが、長手方向に中空部を有する形材で各構成材を形成してもよく、さらには、断面T字形の形材で各構成材を形成してもよい。