JP4537785B2 - 防水工事用ブローンアスファルト及びその製造方法 - Google Patents
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さらに、最近ではブローンアスファルトを使用した防水工事現場において、その使用の際に、加熱溶融する過程において発生する煙や臭いの問題についての対応が求められている。
一般に、防水工事作業に供されるブローンアスファルトの粘度は60mPa・s〜100mPa・sの範囲で行われている場合が多いが、この粘度範囲を得るために、ブローンアスファルトはしばしば280℃程度まで加熱することを余儀なくされているのが実状である。
このような軽質分を吸着除去できる設備を備えている場合は問題ないが、例えば、マンション等の屋上においてアスファルト防水工事を行う場合、アスファルトルーフィングを接着するために、アスファルトケットル等簡易な設備で接着用ブローンアスファルトを280℃程度まで加熱するが、こういう状態では煙や臭いの発生量が多くなり、マンションに住んでいる住民等に迷惑をかけるケースが多々あり、都市の住宅の過密化と共にその対策が強く求められている。
また本発明は、さらに、引火点が280℃以上、フラースぜい化点が−15℃以下、だれ長さが8mm以下、250℃における加熱安定性試験後のだれ長さが15mm以下であることを特徴とする前記記載の防水工事用ブローンアスファルトに関する。
また本発明は、減圧残油、鉱油およびワックスの混合物をブローイングすることにより得られることを特徴とする前記記載の防水工事用ブローンアスファルトに関する。
さらに本発明は、減圧残油70〜83質量%と鉱油17〜30質量%の混合物100質量部に対し、ワックスを3〜10質量部配合してブローイングすることを特徴とする前記記載の防水工事用ブローンアスファルトの製造方法に関する。
本発明の防水工事用ブローンアスファルト(以下、本発明のブローンアスファルトともいう。)の軟化点は100℃以上であることが必要であり、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上である。軟化点が低すぎると、だれが生じやすくなって漏水の原因になったり、取扱性や作業性が低下したりするので好ましくない。したがって軟化点は高い方が望ましいが、高すぎると溶融温度が高くなるため工事がし難くなるという難点が生じるので、上限は120℃以下であることが必要である。
なお、ここでいう軟化点は、JIS K 2207「石油アスファルト−軟化点試験方法」により測定される値である。
なお、ここでいう針入度は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」により測定される25℃における針入度(1/10mm)のことをいう。
なお、ここでいう油じみ性とは、試料5gを表面積12.6cm2の容器に採取し、その下に適当な大きさに加工したタイプ用紙10枚を重ね、荷重100gを加えて、60℃の空気恒温槽で120時間静置後、油分がしみ出した紙の枚数のことをいう。
なお、ここでいう低温折り曲げ性は、JIS A 6013「改質アスファルトルーフィングシート」に規定される「折曲げ性能」に準拠して測定した。すなわち、エタノールと水の混合液(70:30)中で直径22cmの支持ローラとマンドレルにより3点曲げ試験を行う(供試体寸法は長さ100mm、幅40mm、厚さ1mm)。3点曲げ試験結果より、折り曲げ可能な最低温度を低温折曲げ性(耐折温度)として定義した。
なお、ここでいう粘度100mPa・sにおける温度および粘度60mPa・sにおける温度とは、石油学会法 JPI−5S−54−99「アスファルト−回転粘度計による粘度試験方法」に基づいて測定される異なる2つ以上の温度における粘度から、粘度−温度チャートを作成し、粘度100mPa・s、粘度60mPa・sに相当する温度を各々読み取った値のことをいう。
なお、ここでいう引火点は、JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法−クリーブランド開放式引火点試験方法」により測定される値である。
なお、ここでいうフラースぜい化点は、JIS K 2207「石油アスファルト−フラースぜい化点試験方法」により測定される値である。
なお、ここでいうだれ長さは、JIS K 2207「石油アスファルト−だれ長さ試験方法」により測定される70℃におけるだれ長さのことをいう。
なお、ここでいう250℃における加熱安定性試験とは、JIS K 2207「石油アスファルト−加熱安定性試験方法」に準拠するが、JIS規格の加熱温度を300℃から実際の加熱溶融温度に近い250℃に変更して行う試験のことをいう。また、加熱安定性試験後のだれ長さは、上述の250℃における加熱安定性試験終了後のブローンアスファルトをJIS K2207「石油アスファルト−だれ長さ試験方法」で測定することによって得られる値(mm)のことをいう。
なお、ここでいう針入度は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」により測定される25℃における針入度(1/10mm)の値である。
パラフィン系、アロマ系、ナフテン系鉱油は、各々選択する原油の種類に影響を受けるがその製法は特に制限されるものではない。例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等を適宜組み合わせて精製した留分を使用できる。特に原油を減圧蒸留して得られる潤滑油留分を、フルフラールを用いて潤滑油留分中の芳香族化合物やレジン分をとり除くフルフラール抽出などの溶剤抽出、減圧蒸留残渣油から液体プロパンを用いて潤滑油留分を抽出し、アスファルト分や樹脂分を分離するプロパン脱れきなどの溶剤脱れき、MEK等の溶剤を用いてろう分を除去するMEK脱ろうなどの溶剤脱ろう、及び水素化精製を組み合わせて得られる高粘度高級潤滑油成分(ブライトストック)などが好適に用いられる。
ポリオレフィンワックスは、例えば、オレフィンモノマーを原料とし、ラジカル触媒、チーグラーナッタ系触媒、メタロセン触媒等で重合させる製造方法、ポリマーを分解して製造する方法等で得ることができる。代表的なものとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。ポリオレフィンワックスは、その構造から高密度タイプと低密度タイプに分類され、アスファルトの各種の性能面から低密度タイプが適しており、GPC分析による数平均分子量が1000程度のものがさらに好ましい。
FTワックスは、例えば、天然ガス、石油系重質残油のガス化等により生成した一酸化炭素と水素とをFT触媒を用いて合成(FT合成)することで製造できる。
なお、実施例および比較例で用いた減圧残油、鉱油およびワックスとしては、以下に示すものを使用した。
(1)減圧残油
減圧残油A:新日本石油(株)根岸製油所製のストレートアスファルト60-80
減圧残油B:新日本石油(株)根岸製油所製のストレートアスファルト80-100 減圧残油C:新日本石油(株)水島製油所製のストレートアスファルト150-200
(2)鉱油
パラフィン系鉱油:新日本石油(株)根岸製油所製 N460
アロマ系鉱油:新日本石油(株)根岸製油所製 コーモレックス700
ナフテン系鉱油:三共油化工業(株)社製 SHN440
(3)ワックス
ポリオレフィンワックスA:三井化学(株)製 ハイワックス110P
ポリオレフィンワックスB:三井化学(株)製 ハイワックス420P
ポリオレフィンワックスC:三井化学(株)製 ハイワックス100P
ポリオレフィンワックスD:三井化学(株)製 ハイワックス400P
FTワックス:サゾールワックス社製 パラフリントワックスC80
表2の性状のうち、ワックスの密度はJIS K7112「プラスチック−非発泡プラスチックの密度および比重の測定方法B法(ピクノメーター法)」で測定した23℃における密度をいい、分子量はGPC分析(ゲル浸透クロマトグラフ分析)によって測定される重量平均分子量(Mw)、軟化点、針入度はJIS K2207で測定した軟化点、25℃における針入度のことをいう。
表3のブローンアスファルトの性状のうち、軟化点、針入度、針入度指数、フラースぜい化点、だれ長さ、加熱安定性試験は、いずれもJIS K 2207またはJIS K 2207に準拠した方法により測定した。引火点はJIS K2265、粘度はJPI−5S−54−99、特定の粘度相当の温度はJPI−5S−54−99に準拠する方法で測定した.
(1)溶融時の煙発生評価
ブローンアスファルト2Kgを250℃にて加熱溶融させ、その際に発生する煙の量を目視し、下記の判断基準で煙発生を評価した。
・ほとんど気にならないレベルの煙発生:○
・やや煙る程度のレベルの煙発生:△
・背景が見えなくなるほど煙るレベルの煙発生:×
(2)臭気評価
ブローンアスファルト試料1gを250℃に加熱したステンレス製の板上に置き、その試料から出る臭いをニオイセンサ(新コスモス電機(株)製ポータブルニオイセンサXP−329型)にて1分間測定し、その間に得られたデータの最大値の比較を行った。比較例1を基準として臭気の改善効果を求めた。100%より小さい値は比較例1より臭気の改善効果があることを意味し、100%を超える値は改善効果が無いことを意味する。なお、ニオイセンサのベースは実験室雰囲気を200として調整した。
(3)耐候性試験
ASTM D1169に準拠して、アルミ板(150×70×1mm)上に加熱したブローンアスファルトを厚さが1mm程度になるように加熱プレスし供試体を作製する。次に、供試体をサンシャイン・キセノンロングライフウェザーメータ(スガ試験機(株)製WEL−6XS−HC、光源:水冷式キセノンロングライフアークランプ6.0kW1灯)にて、光照射(51分間)、光照射および射水(9分間)、射水温度:7±3℃で供試体の表面に亀裂(ひび)が入る時間(hr)を測定した。
亀裂の有無は、導通液(水:93%、エタノール:5%、塩化ナトリウム:2%)を供試体表面に塗布し、導通液とアルミ板との電気的導通をテスターで測定することにより確認を行なった。なお、耐候時間は、長いほどひび割れが発生し難いことを意味する。
減圧残油C:80質量%とパラフィン系鉱油:20質量%の混合物を反応温度175〜245℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、9時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを3質量部、195℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度180〜250℃、空気気吹込量35L/hr/Kgで、10時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:70質量%とパラフィン系鉱油:30質量%の混合物を反応温度175〜260℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、8時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを10質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度175〜240℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、12時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスBを5質量部、210℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度180〜250℃、空気吹込量35L/hr/Kgで、8時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスCを5質量部、195℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度175〜240℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、12時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスDを5質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油B:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度175〜245℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、9時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、195℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物100質量部に対して、ポリオレフィンワックスA:5質量部を配合したものを反応温度170〜240℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、14時間ブローイングしてブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度180〜240℃、空気吹込量25L/hr/Kgで、12時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、FTワックスを5質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:65質量%とパラフィン系鉱油:35質量%の混合物を反応温度170〜240℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、14時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、195℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:85質量%とパラフィン系鉱油:15質量%の混合物を反応温度180〜240℃、空気吹込量25L/hr/Kgで、12時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とアロマ系鉱油:25質量%の混合物を反応温度190〜235℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、10時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、195℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:75質量%とナフテン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度195〜255℃、空気吹込量24L/hr/Kgで、15時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、185℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油A:75質量%とパラフィン系鉱油:25質量%の混合物を反応温度185〜240℃、空気吹込量30L/hr/Kgで、10時間ブローイングして得られたブローンアスファルト100質量部に対して、ポリオレフィンワックスAを5質量部、200℃で加熱混合してブローンアスファルトを得た。その性状を表3に示す。
減圧残油C:80質量%とパラフィン系鉱油:20質量%の混合物を反応温度180〜240℃、空気吹込量24L/hr/Kgで、11時間ブローイングして得られた。その性状を表3に示す。
また、実施例1と比較例6の耐候性試験結果より、本発明のブローンアスファルトは耐候性にも優れていることが分かる。
Claims (6)
- 針入度が90〜180の減圧残油70〜83質量%とパラフィン系鉱油17〜30質量%の混合物をブローイングして得られるブローンアスファルト100質量部に対し、ワックス3〜10質量部を配合して加熱混合することにより得られる、軟化点が100〜120℃、針入度が25〜35、油じみ性が3以下、低温折り曲げ性が1℃以下、粘度が100mPa・sとなる温度が220℃以下、粘度が60mPa.sとなる温度が230℃以下であることを特徴する防水工事用ブローンアスファルト。
- 針入度が90〜180の減圧残油70〜83質量%とパラフィン系鉱油17〜30質量%の混合物100質量部に対し、ワックス3〜10質量部を配合してブローイングすることにより得られる、軟化点が100〜120℃、針入度が25〜35、油じみ性が3以下、低温折り曲げ性が1℃以下、粘度が100mPa・sとなる温度が220℃以下、粘度が60mPa.sとなる温度が230℃以下であることを特徴する防水工事用ブローンアスファルト。
- さらに、引火点が280℃以上、フラースぜい化点が−15℃以下、だれ長さが8mm以下、250℃における加熱安定性試験後のだれ長さが15mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の防水工事用ブローンアスファルト。
- 針入度が90〜180の減圧残油70〜83質量%とパラフィン系鉱油17〜30質量%の混合物をブローイングして得られるブローンアスファルト100質量部に対し、ワックス3〜10質量部を配合して加熱混合することにより、軟化点が100〜120℃、針入度が25〜35、油じみ性が3以下、低温折り曲げ性が1℃以下、粘度が100mPa・sとなる温度が220℃以下、粘度が60mPa.sとなる温度が230℃以下である防水工事用ブローンアスファルトの製造方法。
- 針入度が90〜180の減圧残油70〜83質量%とパラフィン系鉱油17〜30質量%の混合物100質量部に対し、ワックス3〜10質量部を配合してブローイングすることにより、軟化点が100〜120℃、針入度が25〜35、油じみ性が3以下、低温折り曲げ性が1℃以下、粘度が100mPa・sとなる温度が220℃以下、粘度が60mPa.sとなる温度が230℃以下である防水工事用ブローンアスファルトの製造方法。
- さらに、引火点が280℃以上、フラースぜい化点が−15℃以下、だれ長さが8mm以下、250℃における加熱安定性試験後のだれ長さが15mm以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の防水工事用ブローンアスファルトの製造方法。
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