電子写真方式を用いる画像形成においては、一様な電位に帯電された感光体を画像情報に応じた光で露光して静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像剤で現像して可視像化し、可視像化された画像を記録紙などに転写し、転写された記録紙上の現像剤を定着装置で定着させて堅牢な記録画像を形成する。
このような画像形成に用いられる定着装置は、一般的に、加熱ローラと加圧ローラとで構成される定着ローラを備え、加熱ローラに対して加圧ローラを圧接させることによって形成される両ローラの接触領域(以後、ニップ部と呼ぶことがある)へ、可視像を形成する現像剤の転写された記録紙を通過させる際、加熱ローラによる加熱と加圧ローラによる加圧とによって、未定着現像剤を溶融し固着するように構成される。
定着装置における定着動作時には、定着ローラによるニップ部で溶融された現像剤が、記録紙上にすべて固着されずに、その一部がローラの表面に付着する、いわゆるホットオフセットの発生することがある。たとえば加熱ローラに付着した現像剤は、後続して定着される記録紙上の本来白地であるべき部分に転写されて画像欠陥を発生させる。
また、加圧ローラでは、たとえば両面印字のように、搬送される記録紙の裏面にすでに固着している現像剤が、ニップ部を通過するときに熱で再溶融し、その一部が転移し付着することがある。このように加圧ローラに付着した現像剤も画像欠陥の原因となり、また記録紙裏面汚染の原因となる。
定着装置におけるホットオフセットによる画像欠陥は、モノクロ印字の場合、形成画像の白地かぶりまたは記録紙裏面汚れなど許容し得る範囲の欠陥にとどまることもあるけれども、フルカラー印字の場合、所定の色とは異なる色の現像剤が定着ローラから転写されるので実用上許容し得ない欠陥になることが多い。
このような問題を解決するために、定着装置には定着ローラの表面をクリーニングするクリーニング手段が設けられる。図7は、従来の定着装置1の構成を簡略化して示す側面図である。
定着装置1は、加熱ローラ2と、加圧ローラ3と、加熱ローラ2の温度を検出する温度センサ4と、加熱または加圧ローラ2,3に巻き付く記録紙を各ローラから剥離させる第1および第2剥離爪部材5,6と、加熱および加圧ローラ2,3のクリーニング手段である第1および第2クリーニングローラ7,8とを含んで構成される。
加熱ローラ2は、その内部に熱源であるたとえばヒータ9を有し、ヒータ9の発熱によって加熱昇温される。加熱ローラ2の加熱温度は、温度センサ4による検出出力に応じて不図示の制御部がヒータ9を動作制御することによって調整される。この昇温された加熱ローラ2によって記録紙上の現像剤であるトナーが加熱溶融される。加圧ローラ3は、その回転軸線が加熱ローラ2の回転軸線と平行になり、かつ加熱ローラ2に対して押圧されてニップ部10を形成するように配置される。加熱ローラ2と加圧ローラ3とで定着ローラを構成する。
第1および第2クリーニングローラ7,8は、回転可能であり、加熱および加圧ローラ2,3に対してそれぞれ接触しかつ摺動することができるように設けられる。第1および第2クリーニングローラ7,8の回転方向は、加熱および加圧ローラ2,3の回転方向に対して順方向であってもよく、また逆方向であってもよい。
ここで、順方向とは、軸線まわりの回転方向ではなく、接触する両ローラの表面が、当接部において同一方向へ移動するように回転することを意味し、逆方向とは、接触する両ローラの表面が、当接部において反対の方向へ移動、すなわち擦れ違うように回転することを意味する。この回転方向の順逆は、本明細書を通じて共通に用いられる。
第1および第2クリーニングローラ7,8は、互いに回転する加熱および加圧ローラ2,3のそれぞれと摺擦することによって、加熱および加圧ローラ2,3からなる定着ローラの表面に付着するトナーを除去しクリーニングする。しかしながら、定着ローラから除去して第1および第2クリーニングローラ7,8側に付着し堆積したトナーは、第1および第2クリーニングローラ7,8が回転を継続してクリーニング動作を続けるうちに、第1および第2クリーニングローラ7,8から定着ローラ側に再付着し、クリーニング効果が得られなくなる。定着装置1において、常に良好なクリーニング効果を得るためには、極めて高い頻度で第1および第2クリーニングローラ7,8を未使用品に交換しなければならないという問題がある。
このような問題を解決する従来技術に、定着装置に備わる定着ローラに、連続的に送出すことができる清掃部材を用いるローラクリーニング手段を設けるものがある(特許文献1参照)。
図8は、従来技術の定着装置に備わるローラクリーニング手段11の構成を簡略化して示す図である。図8では、定着ローラのうち加熱ローラ12に設けられるローラクリーニング手段11を図示する。ローラクリーニング手段11は、予め巻きまわされた帯状の清掃部材13を送出す送出ローラ14と、送出ローラ14から送出される清掃部材13を巻取る巻取ローラ15と、送出ローラ14と巻取ローラ15との間に清掃部材13を加熱ローラ12に対して押圧するように設けられる圧接ローラ16(ウェブ圧接ローラとも呼ばれる)とを含む構成である。
ローラクリーニング手段11は、巻取ローラ15および送出ローラ14と圧接ローラ16とを回転させずに静止させた状態で清掃部材13を矢符17方向に回転駆動する加熱ローラ12に対して押圧し、加熱ローラ12と清掃部材13とを摺擦させることによって、加熱ローラ12の外周面に溶融状態で付着したトナー18aを除去し、除去したトナー18bをほぼ溶融状態のまま圧接ローラ16と巻取ローラ15との間に位置する清掃部材13と加熱ローラ12の表面とで形成される間隙に貯留する。
前記間隙に貯留されるトナー18bがある程度の量に達したとき、ローラクリーニング手段11は、巻取ローラ15を矢符19方向に巻取動作させて清掃部材13を予め定める長さだけ巻取り、トナー18bを清掃部材13に付着させた状態で加熱ローラ12表面から離脱させる。
この清掃部材13を用いるローラクリーニング手段11によれば、清掃部材13がある程度の量のトナーをクリーニングした時点で、送出ローラ14から未使用の清掃部材13を送出してクリーニング能を回復させることができる。したがって、送出ローラ14に予め巻きまわした清掃部材13を使い切るまでは、ローラクリーニング手段11の交換作業をすることなく、長時間にわたって定着動作を継続することができる。
しかしながら、特許文献1に開示されるローラクリーニング手段11を備える定着装置には以下のような問題がある。
近年、画像形成装置には、画像形成速度すなわち印字処理速度の向上が強く望まれている。数年前には標準紙(JIS−P0138に規定されるA4サイズ横搬送)での印字処理速度が40〜60枚/分であったものが、現状では印字処理速度が100〜120枚/分を望まれるに至っている。100〜120枚/分の印字処理速度は、電子写真感光体の周速度いわゆるプロセス速度で500〜600mm/秒にも達する。500〜600mm/秒のプロセス速度で印字処理が実行されてトナー像の形成された記録紙は、同じ速度で定着装置に進入して定着ローラ間を通過するので、定着装置は該速度に対応して定着動作を完了しなければならない。
定着動作時、昇温している定着ローラから熱を奪う抜熱源としては記録紙が最大の物であり、プロセス速度が速く、定着ローラ間を通過する記録紙の枚数が多いことは、定着ローラから抜熱される頻度が高くなることを意味する。記録紙が通過することによって定着ローラから抜熱されると、定着ローラの温度が設定温度よりも低くなるので、定着ローラの温度を設定温度へ復帰させるために、定着ローラに備えられる加熱源が動作して定着ローラを昇温させる。昇温動作は、通常若干設定温度よりもオーバーヒートした後、設定温度まで低下する履歴をたどる。したがって、定着ローラ間を通過する記録紙の速度が速くなり、かつ枚数が増加すると、記録紙の抜熱による温度低下と、設定温度への復帰動作に伴う若干のオーバーヒートとを、極めて高い頻度で繰返すという状態になる。
設定温度に対して温度低下とオーバーヒートとを繰返す定着ローラの表面に付着したトナーは、温度低下時には固化するか、または溶融していても粘度が高くなり、オーバーヒート時には過剰に溶融軟化する。特に、温度低下時において固化または粘度上昇したトナーは、定着ローラに対する付着力が大きくなるので、特許文献1に開示されるような清掃部材13を定着ローラに対して摺擦させるだけでは、定着ローラの表面に付着するトナーを充分に除去することができないという問題がある。
また、プロセス速度が速くなると、定着ローラのトナーが付着している個々のクリーニング必要部が、清掃部材13によって摺擦される時間が短くなるので、微視的には凹凸形状の表面を有する定着ローラの凹部に入り込んだトナーを充分にクリーニングできないという問題がある。
図1は本発明の実施の第1形態である定着装置20の構成を簡略化して示す図であり、図2は図1に示す定着装置20の加熱ローラ21付近の拡大図である。定着装置20は、1対の回転体から成り定着ローラを構成する加熱ローラ21および加圧ローラ22と、主クリーニング手段29と、クリーニング補助部材30と、第1および第2剥離爪部材31,32と、加熱ローラ21および加圧ローラ22の表面温度を検出する第1および第2温度センサ33,34とを含んで構成される。
また、定着装置20には、不図示であるけれども、加熱ローラ21に備わる熱源である加熱ヒータ35a,35bおよび加圧ローラ22に備わる熱源である加熱ヒータ36に電力を供給するヒータ制御電源、加圧ローラ22を加熱ローラ21に対して押圧する押圧手段、加熱ローラ21および加圧ローラ22を回転駆動させる駆動手段など、公知の定着装置に備えられるのと同様の各部が備えられる。
定着装置20は、たとえば電子写真方式の画像形成装置に搭載されて、未定着現像剤による画像が形成された記録媒体38を、加熱ローラ21と加圧ローラ22とで形成されるニップ部37に通過させることによって、未定着現像剤を記録媒体38上に溶融し固着する定着に用いられる。
加熱ローラ21は、円筒状の芯金部41と、芯金部41の外周面上に設けられる弾性表層部42と、芯金部41の内部に設けられる上記加熱ヒータ35a,35bとを含んで構成される。芯金部41は、アルミニウム合金またはステンレス鋼などの金属からなり、弾性表層部42は、耐熱性を有する弾性体であるたとえばシリコーンゴムなどからなる。加熱ローラ21は、内部の加熱ヒータ35a,35bによって昇温され、その温度が第1温度センサ33によって検出され、検出温度が加熱ヒータ35a,35bに電力供給するヒータ制御電源へ入力され、ヒータ制御電源によって加熱ローラ21の表面温度が定着設定温度になるように制御される。
加圧ローラ22は、加熱ローラ21の軸線と、その軸線が平行になるように、かつ上記の押圧手段によって加熱ローラ21に対して押圧され、ニップ部37を形成するようにして設けられる。加圧ローラ22は、加熱ローラ21に類似して円筒形状の芯金部43と、芯金部43の外周面上に設けられる弾性表層部44と、芯金部43の内部に設けられる加熱ヒータ36とを含んで構成される。芯金部43および弾性表層部44の素材は、加熱ローラ21のそれらと同じに構成される。本実施形態の加圧ローラ22では、加熱ローラ21と同様に内部に加熱ヒータ36を備える。これは、前述のように印字処理速度が速い画像形成装置に搭載される場合、定着ローラからの抜熱量が多いので、抜熱されて温度低下が生じたとき、早期に設定温度へ復帰させるために加圧ローラ22にも加熱ヒータ36が設けられているものである。
第1および第2剥離爪部材31,32は、断面形状が略楔状の部材であり、楔状の先端部分が定着ローラに当接するように設けられる。第1および第2剥離爪部材31,32は、加熱ローラ21と加圧ローラ22とによって形成されるニップ部37の近くであって、ニップ部37に関して加熱ローラ21と加圧ローラ22との回転方向下流側にそれぞれ配置され、記録媒体38が定着処理されて定着ローラに巻き付いたとき、該記録媒体38を剥離させるように動作する。
本実施形態の定着装置20では、主クリーニング手段29およびクリーニング補助部材30が、加熱ローラ21側と加圧ローラ22側との両方に設けられるけれども、その構成を同じくするので、加熱ローラ21側に設けられる主クリーニング手段29およびクリーニング補助部材30を代表例として構成を説明し、加圧ローラ22側に設けられる主クリーニング手段29およびクリーニング補助部材30については説明を省略する。
主クリーニング手段29は、清掃部材23、圧接ローラ24、送出ローラ25、巻取ローラ26、第1ガイドローラ27および第2ガイドローラ28を有し、第1および第2剥離爪部材31,32よりも、加熱ローラ21および加圧ローラ22の回転方向下流側にそれぞれ設けられる。
清掃部材23は、定着ローラに当接するように設けられて定着ローラの表面を清掃する。清掃部材23は、帯状の巻取り巻戻し可能な長い部材であり、加熱ローラ21の表面に溶融状態で付着している現像剤であるトナーを、微細な空間である空気層および/または空気間隙内に含浸(吸引)することができるような構造を有し、定着温度である200℃程度の温度における耐熱性を備えるものが用いられ、たとえばノーメックスペーパー(商品名)などが好適である。
圧接ローラ24は、加熱ローラ21に押圧される際にある程度変形し、加熱ローラ21との間に圧接領域51(以後、この圧接領域もニップ部51と呼ぶ)が形成されるように、少なくとも最外層が耐熱性を有する弾性素材によって形成される。圧接ローラ24は、その軸線が加熱ローラ21の軸線と平行になるように、かつ加熱ローラ21との間に介在させる清掃部材23を、不図示の押圧手段によって加熱ローラ21の表面に押圧するように設けられる。
送出ローラ25は、リール状の部材であり、予め定める長さの清掃部材23が巻きまわされている。送出ローラ25は、不図示の送出ローラ駆動部に接続され、送出ローラ駆動部によって、可逆回転可能にかつ回転速度制御可能に構成され、予めコイル状に巻きまわされた帯状の清掃部材23を送出すことができる。
巻取ローラ26は、送出ローラ25と同様のリール状の部材であり、送出ローラ25から送出され、圧接ローラ24で加熱ローラ21に押圧されてトナーを清掃した清掃部材23を巻取る。巻取ローラ26も、不図示の巻取ローラ駆動部に接続され、巻取ローラ駆動部によって、可逆回転可能にかつ回転速度制御可能に構成される。
第1ガイドローラ27は、圧接ローラ24と巻取ローラ26との間に清掃部材23に当接するように設けられ、第2ガイドローラ27は、送出ローラ25と圧接ローラ24との間に清掃部材23に当接するように設けられる。第1および第2ガイドローラ27,28は、たとえば鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの熱伝導性に優れる金属製のローラであることが好ましい。第1および第2ガイドローラ27,28が熱伝導性に優れる金属から成ることによって、加熱ローラ21の表面を清掃した清掃部材23がガイドローラに接して通過する際、清掃部材23に付着している溶融または軟化状態にあるトナーを、ガイドローラへ伝熱損失させることによって容易に固化することができるからである。
第1および第2ガイドローラ27,28は、圧接ローラ24と巻取ローラ26との間、また圧接ローラ24と送出ローラ25との間に張架される清掃部材23をさらに張出すことができるような位置に配置される。このように、清掃部材23がさらに張出されるように第1および第2ガイドローラ27,28を配置することによって、清掃部材23に加えられる張力の安定性が向上し、巻取動作中の清掃部材23の振動が抑制される。
以下、主クリーニング手段29の動作について簡単に説明する。送出ローラ25から清掃部材23を送出し、第2ガイドローラ28に張架させた後、圧接ローラ24と加熱ローラ21との間で形成されるニップ部51を通過させ、第1ガイドローラ27に張架させて清掃部材23の先端部を巻取ローラ26に噛込ませて巻取る。巻取ローラ26で清掃部材23の先端部を巻取るとき、送出ローラ25にブレーキ機能を発現させることによって、清掃部材23に張力が加えられる。
清掃部材23に張力が加えられた状態で巻取ローラ26の巻取動作も停止し、清掃部材23が静止した状態で、加熱ローラ21が回転動作することによって加熱ローラ21表面と清掃部材23とが摺接し、清掃部材23が加熱ローラ21の表面を清掃する。ある程度のトナーを清掃したとき、巻取ローラ26が清掃部材23を巻取る巻取動作を実行する。
すなわち巻取ローラ26は、間欠回転駆動する。なお、このときの清掃部材23の矢符52で示す巻取方向は、加熱ローラ21の矢符53で示す回転方向と逆方向である。
この間欠回転駆動による1度の巻取機会で、巻取ローラ26が回転移動する周方向距離すなわち清掃部材23の移動距離は、加熱ローラ21に圧接ローラ24が押圧されて形成されるニップ部51の周方向距離Lnと同等またはそれ以上に設定される。このように巻取ローラ26で少なくとも距離Ln以上清掃部材23を巻取ることによって、清掃部材23の未使用部分を確実にニップ部51へ送ることができるので、巻取動作ごとに清掃部材23による清掃性能を確実に回復することができる。
次に、クリーニング補助部材30について説明する。クリーニング補助部材30は、主クリーニング手段29よりも加熱ローラ21の回転方向53上流側であって、第1剥離爪部材31よりも加熱ローラ21の回転方向53下流側において、加熱ローラ21の表面に接するとともに、清掃部材23の表面にも接するように設けられる。
参考例として記載するクリーニング補助部材30は、ローラ状部材であり、芯金部54と、芯金部54の外周面上に形成されて加熱ローラ21および清掃部材23に接する部分である弾性体層55とを含んで構成される。芯金部54は、円筒形または円柱形を有し、アルミニウム合金またはステンレス鋼などの金属からなる。弾性体層55は、発泡性の弾性部材からなり、独立泡構造を有することが好ましい。弾性体層55の素材は、独立泡構造を有する弾性部材であればよく、特に限定されるものではないけれども、ポリウレタンフォーム(たとえばモルトプレン;商品名、井上エムテーピー株式会社製)などが好適に用いられる。
図3は、クリーニング補助部材30の弾性体層55部分の構成を示す断面模式図である。弾性体層55は、独立泡56の発泡セル径dが、加熱ローラ21の十点平均粗さ(Rz)で表される表面粗さよりも小さく、また好ましくは独立泡56同士の仕切りを構成する壁(以後、発泡壁と呼ぶ)の厚みtも、加熱ローラ21のRzで表される表面粗さよりも小さくなるように形成される。
発泡部の構造が連泡構造であると、加熱ローラ21および清掃部材23から一部除去クリーニングされたトナーが、連なって形成される気泡の奥へと順次進入するので、クリーニング補助部材30に蓄積されるトナーが、加熱ローラ21に対して再付着することも想定される。しかしながら、独立泡構造であれば、トナーが蓄積されることがない。
加熱ローラ21は、使用されるトナーの種類(たとえばトナーの体積平均粒径が異なる種類など)によって、その表面仕上げが異なるので、表面粗さ(Rz)を一概に限定することはできないけれども、通常10μm未満になるように形成されることが多い。Rzの小さい方が、トナーの不要な付着を防止することができることによる。したがって、クリーニング補助部材30は、弾性体層55の発泡セル径dおよび発泡壁厚みtが、加熱ローラ21の仕上げ表面粗さ(Rz)として設定される10μm未満の値よりもさらに小さい値になるように形成される。弾性体層55の発泡セル径dおよび発泡壁厚みtの下限値は、特に限定されるものではないけれども、数μmすなわち2ないし3μm程度であればよい。数μmよりも極端に小さいと、加熱ローラ21の表面に付着するトナーを浮き上がらせ、またほぐすという、発泡構造とすることによる効果を充分に発現することができないからである。
発泡セル径dおよび発泡壁厚みtが、上記の範囲の大きさに設定されることによって、弾性体層55の表面硬さが好適な範囲の値となるので、クリーニング補助部材30が加熱ローラ21の表面を摺擦する際の摩擦力を適度なものにすることができる。このことによって、加熱ローラ21の表面に溶融軟化して付着しているトナーを、清掃部材23で除去クリーニングする前に、浮き上がらせるるとともにほぐすことができ、また定着装置を稼動開始するべく立上げるとき、前回の定着動作において加熱ローラ21に付着し、定着動作終了後加熱ローラ21が降温されたときに固化したトナーを、浮上がらせるとともにほぐすことができる。
図2に戻って、本実施形態の定着装置20においては、クリーニング補助部材30は、主クリーニング手段29よりも加熱ローラ21の回転方向上流側に、加熱ローラ21の回転方向53と清掃部材23の巻取方向52とに対して逆方向(矢符57方向)に回転することができるように設けられる。なお、クリーニング補助部材30も回転駆動手段が接続されることによって、上記方向への回転が可能になるけれども、回転駆動手段については図示を省略する。クリーニング補助部材30を、加熱ローラ21の回転方向53と清掃部材23の巻取方向52とに対して逆方向に回転させることによって、上記の加熱ローラ21に付着するトナーを浮上がらせ、またほぐす作用を、顕著に発現させることが可能になる。
このようなクリーニング補助部材30を、主クリーニング手段29よりも加熱ローラ21の回転方向53に関して上流側に加熱ローラ21の表面に接するように設けることによって、加熱ローラ21を清掃部材23でクリーニングする前に、クリーニング補助部材30によって予備的にクリーニングし、加熱ローラ21の表面に付着するトナーを、加熱ローラ21の表面から浮上がらせるとともにほぐすことができるので、プロセス速度が速く、加熱ローラ21の設定温度に対する変動が激しく、また加熱ローラ21と清掃部材23との清掃のための接触時間が短い場合であっても、主クリーニング手段29の清掃部材23による加熱ローラ21のクリーニングを確実に行うことができる。
またクリーニング補助部材30を、加熱ローラ21のクリーニングに使用した後、巻取ローラ26に巻取られる前の清掃部材23に対しても接するように設けるので、加熱ローラ21の表面から除去してクリーニング補助部材30の表面に付着するトナーを、清掃部材23によってクリーニングすることができる。
このことによって、清掃部材23は、定着ローラをクリーニングするだけでなく、定着ローラから除去されてクリーニング補助部材30に付着するトナーをも除去クリーニングすることができる。クリーニング補助部材30は、清掃部材23で清掃されることによって、定着ローラに対する予備的クリーニング能が回復するので、主クリーニング手段29とともに、長期間にわたって定着ローラに対する優れたクリーニング性能を発揮することが可能になる。
このような効果は、説明を省略する加圧ローラ22側においても、同様に発現される。したがって、クリーニング補助部材30と主クリーニング手段29とによって定着ローラに付着するトナーを充分に除去することができるとともに、清掃部材23を送出しながら長期間にわたって優れたクリーニング性能を発現することのできる定着装置20が実現される。
図4は、定着装置20においてクリーニング補助部材30を順方向に回転させる状態を示す図である。上記の事例では、定着装置20に備わるクリーニング補助部材30を、定着ローラの回転方向53と清掃部材23の巻取方向とに対して逆方向に回転させることを示すけれども、クリーニング補助部材30が回転される方向は、図4に示すように、定着ローラの回転方向53と清掃部材23の巻取方向とに対して順方向(矢符58方向)であってもよい。
順方向へ回転させることによって、定着ローラに対する負荷を軽減することができるので、定着ローラの回転ムラを低減することができる。すなわち、搬送される記録紙に対する搬送ムラを回避し、定着性能を安定化することができる。
図5は、本発明の実施の第2形態である定着装置60の構成を簡略化して示す図である。本実施形態の定着装置60は、実施の第1形態の定着装置20に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態の定着装置60において注目すべきは、クリーニング補助部材61は、定着ローラ(本実施形態では加熱ローラ21および加圧ローラ22の両方)および清掃部材23に接する部分が、繊維状のブラシからなるローラ状部材で構成されることである。
クリーニング補助部材61は、芯金部54の外周面に、外周面から半径方向に延びるように繊維状の毛材62を植込んだ構成を有する。毛材62の素材としては、特に限定されるものではないけれども、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステルなどの繊維状加工物が好適に用いられる。繊維状の毛材62は、その繊維径が定着ローラの十点平均粗さ(Rz)で表される表面粗さよりも小さいものが用いられる。前述のように、通常、定着ローラの表面粗さ(Rz)は、10μm未満になるように仕上げられるので、毛材62の繊維径は、10μm未満、数μm以上になるように形成される。
クリーニング補助部材61の毛材62の繊維径が、上記の範囲の大きさに設定されることによって、毛材62が、定着ローラ表面の凹凸形状の凹部へも入り込むことが可能になるとともに適当な腰の強さを有するようになるので、実施の第1形態の発泡性弾性体層55と同様に、定着ローラおよび清掃部材23の表面に付着したトナーを、浮上がらせ、またほぐすという効果を奏することができる。
図6は、本発明のもう一つの実施形態である画像形成装置70の構成を簡略化して示す側部断面図である。図6に例示する画像形成装置70は、パーソナルコンピュータなどの外部装置や画像読取部71から入力される画像情報に応じて、所定のシート(記録用紙)に対して電子写真方式でモノクロ画像を形成することに用いられ、印字処理速度すなわちプロセス速度が速い(たとえばA4横換算で100〜120枚/分)、いわゆる高速型の装置である。
画像形成装置70は、大略、画像読取部71と、電子写真感光体72と、電子写真感光体72のまわりに配置される帯電器73、露光ユニット74、現像器75、転写ユニット76およびクリーナユニット77と、本発明の定着装置20と、用紙搬送路78と、自動給紙トレイ79と、手差給紙トレイ80と、排紙トレイ81とを含んで構成される。
画像読取部71は、複写画像を形成する場合の原稿画像情報を読取る部分であり、画像形成装置70の上部に設けられて、原稿載置&送り部85と光走査部86とを含む。画像読取部71では、原稿載置&送り部85に載置された原稿の画像情報を光走査部86が走査することによって読取り、読取られた画像情報は不図示の画像処理部へ入力される。
帯電器73は、電子写真感光体72の表面を所定の電位に均一に帯電させるための、帯電手段である。帯電器73には、チャージャー型の帯電器が用いられてもよく、また接触型のローラ型やブラシ型の帯電器が用いられてもよい。
露光ユニット74には、レーザ照射部および反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)が用いられる。本画像形成装置70は、高速印字処理を行うために、複数のレーザ光を利用して照射タイミングを高速化できるように2ビーム手法を採用している。露光ユニット74は、帯電器73によって均一に帯電された電子写真感光体72を、画像処理部から出力される画像情報に応じて露光することによって、電子写真感光体72の表面に、静電潜像を形成する。露光ユニットとしては、LSUを用いる手法に限定されるものではなく、発光素子をアレイ状に並べたELやLED書込みヘッドを用いる手法であってもよい。
現像器75は、電子写真感光体72上に形成された静電潜像を、現像剤である黒トナーで顕像化するものである。現像器75は、現像槽87と、トナープレチャージボックス88と、トナー補給ボックス89とを含む。現像槽87は、電子写真感光体72にトナーを供給する現像ローラ、現像ローラの外周面に形成されるトナー層の厚みを規制する層厚規制部材、現像槽87内で現像ローラに対してトナーを供給する撹拌供給ローラなどを含んで構成される。
トナープレチャージボックス88は、高速型の本画像形成装置の特徴とする部分である。印字処理速度があまり速くない画像形成装置では、トナー補給ボックスから現像槽へ直接にトナーが補給される。しかしながら、高速型の画像形成装置では、画像形成動作時、単位時間あたりのトナー消費量が多いので、トナー補給ボックスから現像槽へ直接にトナーを補給する構成にすると、トナー補給ボックスから現像槽へ補給されるトナーが極めて短い間に現像ローラへと供給されて、トナーを帯電させる時間を充分に確保することができず、画像濃度不良を生じることがある。したがって、高速型の本画像形成装置70では、トナー補給ボックス89と、現像槽87との間に、トナープレチャージボックス88を設け、トナー補給ボックス89から一旦トナープレチャージボックス88へと補給し、トナープレチャージボックス88でトナーを予備帯電させた後、トナープレチャージボックス88から現像槽87へ補給することによって、トナーの帯電不足を生じることなく、高速印字処理の現像に追随できるように構成される。
電子写真感光体72上で現像されて顕像化されたトナー像は、搬送される記録用紙上に転写ユニット76によって転写される。転写ユニット76は、駆動および従動ローラと、おおよそ1×109〜1×1013Ω・cmの範囲の抵抗を有して駆動および従動ローラに架橋される転写ベルトと、転写ベルトを介して電子写真感光体72に当接するように設けられて転写電界を印加することができる弾性導電性ローラと、転写ベルトの転写領域の下流側に設けられて、搬送される記録用紙が転写領域で印加された電界を除電する除電ローラと、転写ベルトのトナー汚れと転写ベルトの除電を行う転写クリーニングユニットとを含む。転写ユニット76では、転写ベルトでトナー像が形成された記録用紙を搬送しながら、トナー像が有する電荷の極性に対して逆極性の電界を弾性導電性ローラに印加することによって、電子写真感光体72から記録用紙上にトナー像を転写させる。たとえば、トナー像が(−)極性の電荷を有しているとき、転写ユニット76の印加極性は(+)極性とする。
電子写真感光体72の回転方向に関して転写ユニット76の下流側に設けられるクリーナユニット77は、転写動作によって電子写真感光体72から記録用紙上へ転写しきれなかったトナー、すなわち残留トナーを、電子写真感光体72の表面から除去・回収するものである。
転写ユニット76によってトナー像が転写された記録用紙は、定着装置20へ搬送される。本発明の定着装置20の構成は、前述の図1〜図3を参照する説明のとおりであり、ここでは説明を省略する。定着装置20に送り込まれた記録用紙は、定着ローラ間のニップ部37を通過する際、加熱・加圧され、加熱による溶融と、圧接とによって、記録用紙上への投鋲作用で未定着トナーが記録用紙上に定着される。
自動給紙トレイ79および手差給紙トレイ80は、画像形成に使用する記録用紙を蓄積し、送出すためのトレイであり、本画像形成装置70では、装置下部および側壁面に設けられる。画像形成装置70は、高速印字処理を行うことを目的とするので、自動給紙トレイ79は、第1〜第3自動給紙トレイ79a,79b,79cの3種類を備える。装置下部に設けられる自動給紙トレイ79のうち、第1自動給紙トレイ79aは、並列に配置される2つを1組とするカセットで構成され、各カセットには定型たとえばA4サイズで最大1500枚の記録用紙を収容することができ、定型サイズの記録用紙に対する高速印字処理に追随して記録用紙を供給できるようにしている。また画像形成のための給紙は、2つのカセットから交互に給紙できるように制御され、カセットから記録用紙を1枚ずつ送出すピックアップローラの動作所要時間に起因する記録用紙送出しのタイムロスをカバーする。第1自動給紙トレイ79aの下方に設けられる第2自動給紙トレイ79bは、上下に配置される2つのカセットを含み、定型外サイズの記録用紙を収容し、供給するユニバーサルカセットである。
装置の側壁面に接して第3自動給紙トレイ79cが設けられる。第3自動給紙トレイ79cは、大容量給紙トレイであり、複数種類のサイズの記録用紙のうちいずれかを、多量にたとえば8000枚程度収容することができる。また装置の側壁面であって、第3自動給紙トレイ79cの上方に、主として不定型サイズの印字等に用いる記録用紙を収容し供給する手差しトレイ80が配置される。
排紙トレイ81は、装置の手差しトレイ80と対向する反対側の側面に配置される。なお、排紙トレイ81に代えて、排紙される記録用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)、複数段排紙トレイなどが、設けられるような構成であってもよい。用紙搬送路78は、各給紙トレイから画像形成するための記録用紙を送給するための搬送路であり、また画像形成されて定着された記録用紙を排紙トレイ81まで搬送するための搬送路である。本画像形成装置70では、詳細を省くけれども、片面/両面印字、一括印字処理枚数の多少などの印字処理条件に応じて、排出される記録用紙の排紙形態を、フェイスアップ、フェイスダウンいずれも随意に選択できるように、用紙搬送路78が切換可能に構成させる。
この画像形成装置70によれば、定着装置20が備えられるので、高速度で印字処理を実行する場合であっても、定着ローラがクリーニング補助部材30と主クリーニング手段29とによって確実にクリーニングされ、トナー汚れのない高品質な画像を長時間にわたって形成することができる。