JP4535719B2 - 鋼材の塑性加工用処理剤、塑性加工方法及び酸化抑制方法 - Google Patents
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Description
例えば、水溶性高分子化合物の水溶液に繊維状物質を分散させた潤滑剤(特許文献2)、高塩基性金属スルホネートを主成分とする潤滑剤をロール表面に供給することを特徴とする鋼材の厚板熱間圧延方法(特許文献3)、高塩基性金属塩スルホネート、黒鉛、炭酸カルシウム及びホスホン酸エステルを含有する圧延加工用潤滑剤組成物油性向上剤(特許文献4)、酸化硼素や他の酸化物が分散した水または、水を主体とする熱間圧延用潤滑剤(特許文献5)、層状ケイ酸塩鉱物、ワックス、飽和高級脂肪酸から構成された高温用潤滑剤組成物(特許文献6)、膨潤雲母を水に混合した液体(特許文献7、特許文献8)、膨潤雲母を水に混合した液体を主成分とする液体を圧延ロールの噛みこみ前に、材料表面に供給して圧延することを特徴とする方法(特許文献9)、孔形ロールの焼付き及び磨耗が発生する部分に、固形潤滑剤を押し付けて供給することを特徴とする圧延方法(特許文献10)などがあるが、いずれの潤滑剤も焼付き防止性が劣ることから、所期の目的を達成するに至っていない。
アルカリ金属、アルカリ土類金属、ホウ素、Al、Mn等を鋼板表面に塗布することを特徴とするスケール抑制方法(特許文献11)、高塩基性金属塩スルホネートを含有する熱間加工剤を用いたスケール抑制方法(特許文献12)、脂肪族カルボン酸のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩及び、アルカリ土類金属塩の少なくとも1種を含む水性スケール抑制剤(特許文献13)、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物と糖類とを組み合わせてなる酸化スケール抑制剤(特許文献14)、鋼帯に合成鱗片状珪酸化合物を主成分とする分散液を撒布して加熱によるスケールの発生を抑制する高温酸化抑制方法(特許文献15)、鋼材の熱間圧延によるスケールの増加を抑制し、且つ熱延後のスケールを容易に除去するための鋼材の粉状ガラス溶着装置(特許文献16)、ガラス系無機質耐熱塗料粉末を有機系又は無機系のバインダで混練りしたもの等を用いる酸洗性に優れた熱延鋼帯の製造方法(特許文献17)、熱間圧延ラインで特定組成の水溶液と特定ガスで生成した泡沫で熱間圧延鋼材を包囲することで鋼材表面に生成するスケールを抑制する方法(特許文献18)、仕上ロールスタンドとホットランスプレー間の圧延ラインに圧延直後の鋼板上面に向けた酸化防止剤噴射用のノズルと鋼板下面のテーブルローラを含有するシールボックスを設け、前記ノズルとシールボックスに酸化防止剤を注入し、鋼板表裏面塗布するようになした熱延鋼板の酸化防止装置(特許文献19)、熱間圧延に際し、コイル巻き取り直後にコイル端面、コイルの最内面および、外表面をシリコーン樹脂を主成分とした耐熱塗料にて塗布被覆することを特徴とする酸洗性の優れた熱延鋼板の製造方法(特許文献20)。
一方、高温塑性加工時の鉄系工具表面の酸化を抑制することで、工具表面の肌荒れを防止する方法としては、高塩基性アルカリ土類金属スルホネートを含む耐磨耗鋳鉄性圧延ロールの肌荒れ防止用潤滑剤(特許文献21)、カルボン酸、ポリカルボン酸、またはその無水物、部分エステルもしくは部分アミド、スルホン酸、ならびにこれらの塩からなることを特徴とするハイスロール表面の酸化抑制方法(特許文献22)、基油にホウ酸および/またはホウ酸塩のオイルサスペンジョンを10重量%以上含有させた熱間圧延用潤滑剤組成物(特許文献23)などがあるが、十分な効果をあげるに至っていない。
さらに詳細には、本発明の目的は、炭素鋼、ステンレス鋼、工具鋼、ケイ素鋼等の材質の板材、管材、棒材、線材、形鋼等の鋼材を200〜1200℃の範囲で加熱し圧延する際に材料全長への潤滑剤給油や、大圧下圧延を可能とし、従来の潤滑剤と比較して、摩擦係数をより高く維持し、かつ、ロールと材料間の焼付き防止性に優れた、鋼材の温間又は熱間圧延用潤滑剤及びこれを用いた圧延方法を提供することである。
本発明の他の目的は、鋼材又は、非鉄金属材料の熱間圧延、熱間鍛造、熱間ダイス加工、熱間プレス加工等の高温塑性加工時に、鋼材及び/又は鉄系工具の酸化を抑制することで、加工後の鋼材表面傷が激減するとともに、従来必要とされた、加工後の鋼材の酸洗いを省略または簡略化でき、大幅な生産効率の向上が可能となる、工程の追加を必要としない、現場で容易に実施可能な、鋼材の酸化抑制剤及びこれを用いた鋼材の酸化抑制方法を提供することである。
1.オルガノポリシロキサンを含有する鋼材の塑性加工用処理剤。
2.オルガノポリシロキサンが、シリコーンオイル、シリコーンゴム及びシリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
3.オルガノポリシロキサンが、シリコーンオイルであることを特徴とする上記1又は2記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
4.さらにチオ硫酸塩を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれか1項記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
5.グリースであることを特徴とする上記1〜4のいずれか1項記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
6.温間又は熱間圧延用潤滑剤である上記1〜5のいずれか1項記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
7.酸化抑制剤である上記1〜5のいずれか1項記載の鋼材の塑性加工用処理剤。
8.上記6記載の処理剤を、ロール表面及び/又は鋼材表面に給油することを特徴とする鋼材の温間又は熱間圧延方法。
9.上記7記載の処理剤を、鋼材の高温塑性加工時に工具表面及び/又は鋼材表面に供給し、鋼材及び/又は鉄系工具の表面酸化を抑制することを特徴とする酸化抑制方法。
本発明において使用する、オルガノポリシロキサンは、無機質のSi−O−Si結合と有機基とから構成されている化合物である。 オルガノポリシロキサンは、一般に、炭化水素の塩化物RClと金属ケイ素Siとを高温で直接反応させ、対応するオルガノクロロシランモノマーを合成し、このオルガノクロロシランモノマーを加水分解させて得られるシラノールを脱水縮合した、シロキサン(Si−O−Si)を出発原料とし、有機基を付加して作られる化合物をいう。本発明に使用するオルガノポリシロキサンはこの製法にとらわれるものではない。
シリコーンオイルとしては、メチルシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
以上のオルガノポリシロキサンの処理剤中の含有量は好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%である。5質量%未満の場合は、摩擦係数、焼付き防止、酸化抑制等に関して、効果が十分に得られない場合がある。
本発明に使用するチオ硫酸塩の粒径は、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下の微粉であることが望ましい。その理由は、潤滑剤に添加分散する際、粒径が小さい程、安定に分散することが可能になるからである。
本発明に使用するチオ硫酸ナトリウム5水塩は、俗にハイポと略称されている公知物質である。一般に、水酸化ナトリウムの水溶液にイオウ華を加えて熱し、五硫化ナトリウムの溶液を作り、これを冷却したのち硫化物の反応がなくなるまで亜硫酸水素ナトリウムの水溶液を加え、ロ過した溶液を冷却すると五水塩の結晶が得られる。この結晶をボールミル等の粉砕機を用い、粉砕するとチオ硫酸ナトリウム5水塩の粒子が得られる。このチオ硫酸ナトリウム5水塩の粒径は、先に説明したように粒径20μm以下の微粉であることが望ましい。
本発明の処理剤は、例えば、空気と処理剤を混合し、処理剤を噴霧するエアースプレイ方式や、高圧プランジャーポンプを用い処理剤をエアレススプレーするエアレススプレー方式や、水を噴射媒体として使用する、ウオーターインジェクション方式やプレミックス方式により給油することもできるし、フェルトやゴム製ワイパーや刷毛等で工具に直接塗布する方式など、従来、潤滑剤等を供給するために用いられた方法や設備がそのまま利用可能である。
特にグリース状等の粘度が高い形態で、水を噴射媒体として使用することが難しい場合には、エアースプレイ方式又は直接塗布方式により給油することが好ましい。
例えば、鋼材表面及び/又は鉄系工具表面にオルガノポリシロキサンを含有する処理剤を供給するには、一般に使用されている高温塑性加工時の潤滑剤供給方法を使用することができる。この場合、従来の潤滑剤供給装置を用いオルガノポリシロキサンを含有する処理剤をそのまま活用するか、あるいは、専用の供給装置を潤滑剤給油設備と併設することもできる。いずれにしろ、潤滑剤供給装置を活用することで、簡便に供給することが可能であり、かつ、新たな工程の追加を必要としないため、生産効率を低下させない。
試験例A
表1〜3に示す成分を所定の割合で混合して実施例1〜13、比較例2〜4の潤滑剤を調製し、その性能を以下の試験方法により評価した。結果を表1〜3に示す。比較例1は市販熱間圧延油であり、比較例5は無給油である。試験方法は以下のとおりである。
試験方法1
オプチモル社SRV摩擦磨耗試験機を用い、摩擦係数と焼付きを評価する。
試験ディスク:24Φ×厚さ7.9mm JIS G4805 SUJ2相当品
試験ボール:直径10mm JIS G4805 SUJ2相当品
ディスク加熱温度:300、500、700℃
ボール振動数:100Hz
試験荷重:100N
ボール振動幅:0.5mm
試験時間:1分間
給油法:潤滑剤直接塗布
摩擦係数評価:試験開始後1分後の摩擦係数
焼付き防止性の評価:試験終了後のディスクとボールの接触面の表面を顕微鏡観察で評価する。明らかな、ディスク表面からの材料の剥離が認められ、かつ、ボール表面にディスクからの材料が認められる場合、焼付きあり(×)と判定し、その他の場合を焼付きなし(○)と判定する。
高温潤滑性試験機(E−12型熱間潤滑性試験機)を用いて、下記条件にて評価する。
ロール材質:ハイスピードスチール124mmφ×80mm幅
ロール表面温度:試験前に80℃に加熱
ロール回転数:100rpm(39.8m/分)
試験片材質:SS400(20×20×800mm)
試験片温度:両端を固定し、電気抵抗ヒーターにより1000℃に加熱
給油方法:直接塗布
摩擦係数:軸トルク/(試験荷重×ロール半径)
焼付き防止性評価:試験荷重4.9kNにて10秒間テストし、ロール表面に焼付きが生じていることを目視で確認できる場合を(×)、焼付きが目視では確認できないが拡大鏡(倍率100倍)を用いて観察すると確認できる場合を(○)、拡大鏡(倍率100倍)を用いて観察しても確認できない場合を(◎)と判定する。
オルガノポリシロキサン2:液状シリコーンゴム(東芝シリコーン製TSJ3175)
オルガノポリシロキサン3:シリコーン樹脂(東芝シリコーン製TSR108)
オルガノポリシロキサン4:メチルフェニルシリコーンオイル(東芝シリコーン
製XF40A7968)
オルガノポリシロキサン5:ジメチルシリコーンオイル(東芝シリコーン製TSF451−100)
オルガノポリシロキサン6:高級脂肪酸変性シリコーンオイル(東芝シリコーン製TSF410)
オルガノポリシロキサン7:アルキル変性シリコーンオイル(東芝シリコーン製TSF4421)
精製鉱油1:ISOVG100鉱油
Li石けんグリース:基油としてISOVG100鉱油を用いたLi石けんグリース(増ちょう剤としてのLi石けんを11質量%含有)
微粒子シリカ:日本アエロジル製アエロジル200
表面処理炭酸カルシウム:味の素製トップフローS
黒鉛:富士黒鉛製G6M
無水チオ硫酸ナトリウム:関東化学製試薬一級
表4に示すA〜Fの7種類の製品を準備し、表5に示す高温圧延条件で使用し、酸化抑制性能を評価した。すなわち、炭素鋼鋼材の高温圧延時に本発明の処理剤をロール表面及び/又は材料表面に供給し、ロール表面及び/又は材料表面の酸化状態を観察し、処理剤の酸化抑制効果を評価した。
圧延ロール ハイスピードスチールロール 150mmΦ×150mmL
圧延材 SPHC鋼板 厚さ4mm 幅25mm 長さ100mm
同鋼板10枚をロールの同一個所で連続的に高温圧延する。
圧下率 40%、速度 14m/分
鋼材加熱温度 400℃、700℃、1000℃の3条件
供給方法 エアースプレー方式(AS)
ウオーターインジェクション方式(WI)
フェルトを活用したべた塗り(F)
(1)圧延後の材料表面の酸化状態
◎ 酸化が認められない。
○ 若干の酸化が認められる。
× 酸化している。
(2)材料10本終了後のロール表面
◎ 酸化が認められない。
○ 若干の酸化が認められる。
× 酸化している。
これに対して比較例の処理剤Gを使用した試験例7、処理剤を供給していない試験例11及び市販の酸化抑制剤を使用した試験例12では材料表面及び工具表面いずれも酸化していることがわかる。
Claims (6)
- オルガノポリシロキサンを24.5〜100重量%含有する鋼材の温間又は熱間圧延用グリース。
- オルガノポリシロキサンが、シリコーンオイル、シリコーンゴム及びシリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の鋼材の温間又は熱間圧延用グリース。
- オルガノポリシロキサンが、シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼材の温間又は熱間圧延用グリース。
- オルガノポリシロキサンが、高級脂肪酸変性シリコーンオイル又はシリコーン樹脂である請求項1記載の鋼材の温間又は熱間圧延用グリース。
- さらにチオ硫酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の鋼材の温間又は熱間圧延用グリース。
- 請求項1〜5いずれか1項記載の鋼材の温間又は熱間圧延用グリースを、ロール表面及び/又は鋼材表面に給油することを特徴とする鋼材の温間又は熱間圧延方法。
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