JP4535649B2 - 液体供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体ボトル内の液体製剤を保持マット又は吸液マットに供給し、そのマットから液体製剤の有効成分を外部に供給する液体供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水洗トイレの貯水タンクの蓋上面の水受け部に配置されて使用される、所謂オンタンク式の液体供給装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
液体供給装置には、フラッシングが繰り返されても、液体製剤を安定供給し続けることが求められているが、この観点において従来の製品には、更なる改善が望まれていた。
また、液体供給装置に、芳香成分を室内に揮散する機能を持たせることが望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、液体製剤を長期にわたって安定供給でき、高い芳香効果を奏する液体供給装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1) 液体製剤を収容した液体ボトルと、前記液体ボトルから流出した液体製剤を吸収して保持する吸液マットと、前記液体製剤を前記吸液マットに供給する液体伝達部材とを有し、前記吸液マットの吸液率が、0.1〜0.9g/cm3であり、かつ、0.01〜0.2g/cm2であることを特徴とする液体供給装置。
(2) 前記吸液マットが、前記液体ボトルからの液体製剤を最初に吸収保持する貯留部と、前記貯留部から液体製剤が伝達される拡散部とを有し、前記貯留部の吸液性を前記拡散部の吸液性より高くし、前記拡散部に流水が接するように構成されていることを特徴とする前記(1)に記載の液体供給装置。
(3) 前記吸液マットが上下に重ねられた2枚のマットからなり、上方のマットが前記貯留部を形成し、下方のマットが前記拡散部を形成し、前記貯留部の側面が保護カバーで覆われている前記(2)に記載の液体供給装置。
(4) 前記吸液マットの所定箇所が保護カバーで覆われており、前記吸液マットの前記保護カバーで覆われた箇所に前記液体ボトルからの液体製剤が最初に供給されることを特徴とする前記(1)に記載の液体供給装置。
【0005】
本発明者らは、保持マット(吸液マット)の液保持性(吸液性)に着目した。吸液マットの液保持性(吸液性)が低ければ、液体ボトルから流出した液体製剤が迅速に吸液マットの全域に広がる(拡散速度が速い)ため、短い時間間隔でフラッシングが繰り返されるときにも、液体製剤を流水中に供給できる。しかし、吸液マットの液保持性(吸液性)が低いことは、吸液マットに芳香成分等の有効成分が保持されにくいことを意味し、このような吸液マットでは高い芳香効果を奏することができない。一方、吸液マットの液保持性(吸液性)が高ければ、液体製剤を迅速に吸液マットの全域に広げることができない。
上記(1)の構成のように、吸液マットの吸液率を適切な範囲に設定することで、液体製剤を迅速に吸液マットの全域に広げることができ、かつ、高い芳香効果を奏することができた。吸液マットは、液体製剤を吸液して保持するもの(吸液マット)でもよいし、表面に液を保持するための多数の溝等が設けられたもの(溝付マット)でもよいし、液を保持するための微孔が設けられたもの(多孔マット)でもよい。繊維マットやパルプマットでもよい。
上記(2)の構成によれば、フラッシング時に拡散部に流水が接して拡散部に保持された液体製剤が洗い流されても、貯留部に液体製剤が保持されているので、その貯留部に保持された液体製剤により高い芳香効果が得られる。そして、液体製剤を洗い流された拡散部に、貯留部からすみやかに液体製剤が供給されて、次のフラッシングまでには拡散部に液体製剤が十分保持される。貯留部と拡散部とは、別体に形成されてもよいし、一体に形成されてもよい。
上記(3)の構成によれば、貯留部に流水が直接当たるのを、保護カバーによって確実に防止でき、液体製剤の安定供給と高い芳香効果とを奏することができる。
上記(4)の構成によれば、吸液マットの保護カバーで覆われた箇所が、あたかも貯留部のように機能するので、少ない部品点数で、液体製剤の安定供給と高い芳香効果とを奏することができる。
【0006】
液体ボトルの材質、形状は特に限定されず、液体製剤を安定に収容できるものであればよく、その材質として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン等を例示できる。
液体ボトルは、液体ボトルに設けられた開口を塞ぐ中栓と、一端が液体ボトル内に位置するとともに他端が中栓を貫通して液体ボトル外の吸液マットに接する液体伝達部材とを備えた構成とすることができる。液体伝達部材としては、ポリプロピレン、ポリアセタール、ナイロン等のプラスチックからなるものや、ステンレススチール等の金属からなるものを例示できる。また、繊維集合体からなる液体伝達部材として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、人絹、綿、羊毛等からなるものを例示できる。更に、多孔質体からなる液体伝達部材として、プラスチックの焼結成形体、不織布、スポンジ体、金属焼結体、素焼(陶器、セラミク、レンガ)等からなるものを例示できる。
吸液マットの材質としては、パルプ、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PP不織布等を例示できる。
液体製剤としては、例えば、界面活性剤及び増粘剤、香料、溶剤(水、アルコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール(商品名ソルフィット クラレ(株)製)、濃グリセリン)、着色剤等を含むものを採用でき、更に洗浄、防汚、漂白、撥水、撥油、芳香、消臭、除菌、防黴、殺菌、忌避、防虫、殺虫等の成分を配合することができる。
上記界面活性剤としては、代表的にはアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤の少なくとも一方を挙げることができるが、実施可能なかぎりそれらに限定されない。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。図1に示す第1実施形態の液体供給装置10は、水洗トイレ用貯水タンクの上面(蓋)に形成された凹状の水受け部91に設置されて使用される。水受け部91には、貯水タンク内に連通した注水孔92が設けられている。
【0008】
液体供給装置10は、香料を含む液体製剤Lを収容した液体ボトル11と、液体ボトル11から流出した液体製剤Lを吸収して保持する吸液マット14とを備えている。本実施形態では、有底円筒状の収納部15の底壁上に、吸液マット14が設置されている。吸液マット14は、収納部15の底壁に対応した形状(ここでは円板状)に形成されるとともにその底壁上に敷かれた拡散マット14bと、拡散マット14b上の所定箇所(ここでは中央部)に敷かれた貯留マット14aとの二層からなる場合のものを備えている。液体ボトル11は、収納部15にセットした状態における下部が、上部より小径の円筒状になっている。液体ボトル11の最下部には開口が設けられている。その開口は、プラスチックやゴム等の弾性体からなる中栓12によって塞がれている。
【0009】
収納部15の周壁の下部には、周方向に間隔をあけて複数の通水口16が設けられている。収納部15の底壁にも、通水口(図示せず)が設けられており、その通水口を塞ぐか適度に開口された拡散マット14bが敷かれ、更に拡散マット14bの上面に貯留マット14aが敷かれている。貯留マット14a上に中栓12が配置されている。ここでは貯留マット14aが、拡散マット14bより小さく、かつ、中栓12と同等に又は中栓12より大きく形成されている。貯留マット14aは、液体ボトル11の最下部の開口内に嵌め込まれていてもよい。
【0010】
これに限定されないが、例えば、貯留マット14aとして、直径25mm、厚み3mmにカットした円板状のPP不織布(例えば日本バイリーン(株)製 OR125)を用いることができ、拡散マット14bとして、直径50mm、厚み2mmにカットした円板状のポリエチレン焼結体(例えばスペイシーケミカル社製 PE70)を用いることができる。
このように、貯留マットの吸液性を、拡散マットの吸液性より高くすることができる。液体ボトル11からの液量が少なく、貯留マットに保持された液はフラッシングの水で洗い流されないので、すみやかに貯留マット14aから拡散マット14bへ液が供給される。
マット素材には、例えば上記のいずれかを使用できるが、コスト面から不織布を採用するのが有利である。
【0011】
収納部15の底壁の中央部上面には、上方へ立ち上がって、拡散マット14b、貯留マット14a及び中栓12を貫通した、中空柱状(ここでは円筒状)の液体伝達部材18が設けられている。液体伝達部材18の上端は、液体ボトル11内の液体製剤Lの液面より突出している。液体伝達部材18の下端は、その外周面が吸液マット14に接している。液体伝達部材18の、中栓12を貫通する部分の外周面には、軸方向に沿った複数の溝(図示せず)が設けられている。液体ボトル11中の液体製剤Lは、それら溝を伝って、吸液マット14に供給される。
一方、収納部15の底壁の中央部下面には、水受け部91の注水孔92に挿通されて、液体供給装置10を水受け部91上で位置決めするための、位置決め部材19が設けられている。
【0012】
手洗い用の水が水受け部91に供給されると、流水Wは、通水口16を通じて拡散マット14bに触れる。拡散マット14bには、液体製剤Lが含浸されており、その含浸された液体製剤が、拡散マット14bに触れた水に混合される。液体製剤を混合された水が、収納部15の底壁の通水口を通って、注水孔92に流入する。
保持した液体製剤Lを洗い流された拡散マット14bには、貯留マット14aから、液体製剤Lが順次供給される。貯留マット14aには、液体ボトル11から液体伝達部材18を介して、液体製剤Lが順次供給される。
【0013】
以上のような構成の液体供給装置10によれば、フラッシング時に拡散マット14bに流水Wが接して拡散マット14bに保持された液体製剤Lが洗い流されても、貯留マット14aに液体製剤Lが保持されているので、その貯留マット14aに保持された液体製剤Lにより高い芳香効果が得られる。そして、液体製剤Lを洗い流された拡散マット14bに、貯留マット14aから液体製剤Lが供給されて、次のフラッシングまでには拡散マット14bに液体製剤Lが十分保持される。
【0014】
図2に、第2実施形態である液体供給装置20の要部を示す。なお、以下に説明する実施形態において、既に説明した部材等と同様な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより説明を簡略化或いは省略する。
液体供給装置20は、液体ボトル11と、中栓12と、液体伝達部材18と、吸液マット14とを備えている。吸液マット14は、拡散マット14bと、拡散マット14bの上に敷かれた貯留マット14aとからなる。液体伝達部材18の一端は、拡散マット14b、貯留マット14a及び中栓12を貫通している。液体供給装置20は、第1実施形態と同様な収納部を備えてもよい。
【0015】
液体供給装置20は、更に、貯留マット14aの側面を外側から覆う保護カバー21を有している。すなわち貯留マット14aは、側面が保護カバー21で覆われており、下面が拡散マット14bの上面に接している。保護カバー21は、ここでは円筒状に形成されている。
【0016】
以上のような構成の液体供給装置20によれば、流水が、拡散マット14b上を流れて貯留マット14aに直接当たるのを、保護カバー21によって確実に防止できる。したがって、貯留マット14aにより、液体製剤の安定供給と高い芳香効果とを奏することができる。
【0017】
図3に、第3実施形態である液体供給装置30の要部を示す。液体供給装置30は、液体ボトル11と、中栓12と、液体伝達部材18と、保護カバー21と、吸液マット34とを備えている。液体供給装置30は、第1実施形態と同様な収納部を備えてもよい。
本実施形態における吸液マット34は、一枚のマットであり、二枚のマットを重ねた構成になっていない。吸液マット34上面と中栓12下面との間隔は、2mm以下とすることができる。液体伝達部材18の一端は、吸液マット34及び中栓12を貫通している。
【0018】
本実施形態では、吸液マット34の、保護カバー21で覆われた部分(以下「貯留部」という。ここでは中央部)が、貯留マット的な機能を果たし、保護カバー21で覆われた部分の外側の部分(以下「拡散部」という)が、拡散マット的な機能を果たす。すなわち、液体ボトル11から浸出した液体製剤は、先ず吸液マット34の貯留部に供給される。この貯留部に供給された液体製剤が、拡散部へと伝わる。フラッシング時に流水が拡散部に当たると、拡散部に保持された液体製剤は洗い流される。しかしこの時、貯留部には流水が当たらないため、貯留部に保持された液体製剤は洗い流されない。
【0019】
以上のような構成の液体供給装置30によれば、少ない部品点数で、液体製剤の安定供給と高い芳香効果とを奏することができる。
【0020】
[第1〜第3実施形態の試験]
上記第1〜第3実施形態の液体供給装置を、水洗トイレ用貯水タンクの水受け部に設置し、トイレ内の芳香強度の経時変化を確認した。なお、トイレ室内容積は2m3、トイレ室内温度は10℃、フラッシング間隔は1回/30分、水受け部への流水量は1リットル/1回とし、液体製剤としては以下の組成のものを用いた。
【0021】
試験の結果、第1実施形態によれば、長期にわたってトイレ内における強い芳香強度を維持することができた。また、第2実施形態によれば、長期にわたってトイレ内における高い芳香強度を維持することができた。第3実施形態によれば、若干芳香強度は弱かったが、長期にわたって実用に耐えうるレベルの芳香効果を奏することができた。
【0022】
比較のため、マット及び保護カバーを有しない形態(上記第3実施形態から保護カバーを取り除いた形態)について、同様な試験を行ったところ、芳香強度が弱く、実用に耐えうるレベルの芳香効果を奏することができなかった。
【0023】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態である液体供給装置は、吸液マットの吸液率(保持量)を所定範囲内にしたものである。その他の構成は、例えば、第3実施形態と同様とすることができる。
本実施形態では、吸液マットの吸液率(保持量)を、0.1〜0.9g/cm3、かつ、0.01〜0.2g/cm2とする。すなわち、吸液マットの体積1cm3(1cc)あたり0.1〜0.9gの液体を吸液(保持)でき、表面積1cm2あたり0.01〜0.2gの液体を吸液(保持)できるるようにする。
【0024】
例えば、市販の室内用芳香器に使用されている吸液マット(吸液率(保持量)0.9g/cm3かつ0.45g/cm2、マット厚み5mm)を、液体供給装置に用いると、拡散速度が遅く、かつ、フラッシング時に水を多く吸収するので芳香強度が十分でなくなる。しかし、同じ材質の吸液マットを、マット厚み2mm、吸液率0.18g/cm2にして使用すると、拡散性及び芳香強度が著しく改善される。
なお、吸液マットの吸液率(保持量)を、0.26〜0.79g/cm3とし、0.03〜0.12g/cm2とすることがより好ましい。
【0025】
[第4実施形態の試験]
表1に示すような7種類の吸液マットを用意した。各吸液マットは、直径50mmの円板状にカットした。各吸液マットの吸液率(保持量)は、各吸液マットに十分に水を含ませ、その重量変化から求めた。
次に、少量の界面活性剤を含んだ水道水を、各吸液マットに十分に含ませた。その後、下記試験液を、できるだけ液が広がらないように、マットの中心に、シリンジを用いて200mg滴下した。
【0026】
【表1】
【0027】
各吸液マットを、直径100mmのプラスチックシャーレ上に置き、室内の温度を20℃にコントロールしたボックス(幅1000mm、奥行き2000mm、高さ1900mm)に、それらシャーレを置いた。そして、30分後に、10名の試験員によって芳香強度を評価した。評価は、5点:強い、4点:やや強い、3点:普通、2点:やや弱い、1点:弱い、という5段階で行った。
評価結果を、表1の「芳香強度」の欄に示す。すべての吸液マットが、十分な芳香強度のレベルである3点を上回った。
【0028】
比較のため、表2に示すような2種類の吸液マットを用意し、同様な試験を行った。すると、表2の「芳香強度」の欄に示すように、これらでは芳香強度が弱く、実用レベルに達しなかった。
【0029】
【表2】
【0030】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、上記実施形態を組み合わせた構成にすることもできる。
例えば、貯留マットを液体ボトルの開口内に嵌め込むことで、液体ボトルの開口付近の箇所を保護カバーとして機能させることもできる。
本発明は、トイレボウル内に吊り下げられるタイプの液体供給装置にも適用できる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液体製剤を長期にわたって安定供給でき、高い芳香効果を奏する液体供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す要部斜視図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
10,20,30 液体供給装置
11 液体ボトル
12 栓
14,34 吸液マット
14a 貯留マット
14b 拡散マット
Claims (4)
- 液体製剤を収容した液体ボトルと、前記液体ボトルから流出した液体製剤を吸収して保持する吸液マットと、前記液体製剤を前記吸液マットに供給する液体伝達部材とを有し、前記吸液マットの吸液率が、0.1〜0.9g/cm3であり、かつ、0.01〜0.2g/cm2であることを特徴とする液体供給装置。
- 前記吸液マットが、前記液体ボトルからの液体製剤を最初に吸収保持する貯留部と、前記貯留部から液体製剤が伝達される拡散部とを有し、前記貯留部の吸液性を前記拡散部の吸液性より高くし、前記拡散部に流水が接するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
- 前記吸液マットが上下に重ねられた2枚のマットからなり、上方のマットが前記貯留部を形成し、下方のマットが前記拡散部を形成し、前記貯留部の側面が保護カバーで覆われている請求項2に記載の液体供給装置。
- 前記吸液マットの所定箇所が保護カバーで覆われており、前記吸液マットの前記保護カバーで覆われた箇所に前記液体ボトルからの液体製剤が最初に供給されることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
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