JP4534937B2 - 塗被紙 - Google Patents

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Description

本発明はトリスルホン酸カルシウム(以下サチンホワイト)を含有した塗被液を塗布した塗被紙に関し、白色度や色相の経時安定性に優れ、かつ表面平滑性、白紙光沢などの白紙品質や印刷適性に優れる塗被紙に関する。
一般に塗被紙は、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被液を塗布乾燥して製造され、塗被液の塗工量や塗被紙の仕上げ方法によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等の印刷用塗被紙や感熱記録紙、感圧記録紙、静電記録紙、インクジェット記録紙、タック紙等の特殊用塗被紙などに分類される。これら塗被紙は、これに多色印刷又は単色印刷を施して、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物、あるいは包装用紙や各種情報記録用紙として広く使用されている。
近年、印刷物のビジュアル化、カラー化が進み、印刷用塗被紙の高品質化の要求が高まっており、白紙光沢度、平滑度、白色度等の白紙品質、および印刷光沢等の印刷仕上りにおける外観等の品質が重要視されている。また、情報記録用等の特殊紙用塗被紙も最近は印刷を施すことが多くなっており、印刷用塗被紙と同様に白色度や各種印刷方式に対応する印刷適性の要望も重要視されている。これら印刷物や記録物は、美観の点から白色度や色相の経時安定性のあるものが要求されている。
塗被紙の白紙品質、および印刷仕上がり品質を向上させる手法としては、塗被層にサチンホワイトを配合して、塗被紙を高平滑化、高白紙光沢化する方法(特許文献1を参照)、およびサチンホワイトにカオリンやプラスチックピグメント等の顔料を組み合わせて使用し、塗被紙に高い表面平滑性や高い白紙光沢を付与する方法(特許文献2、3、4を参照)が紹介されている。
このサチンホワイトとは、トリスルホアルミン酸カルシウムが正式名であり、水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムとの反応によって生じる、下記一般式(1)によって表される無機錯体化合物である。その顔料粒子形状は針状であるが、サチンホワイトを塗被層に配合すると、塗被層面が高い表面平滑性を発現する特徴がある。
3CaO・Al・3CaSO・31〜32HO (1)
ところで、塗被紙は、一般にパルプ繊維を配合し抄紙して得た原紙上に、コーターで塗被組成物を塗被後、ドライヤーで乾燥した後、スーパーカレンダ等による加圧平滑化仕上げが行われるが、強アルカリ性のサチンホワイト(通常pH12.5前後)を含有した塗被組成物を塗布してなる塗被紙は、ドライヤーによる乾燥或いは熱スーパーカレンダ等の熱処理により、色戻り現象を助長することが確認されている。又、製造直後のものと比較すると、長期間保存後の白色度の低下が認められ、紙の黄色化、即ち、アルカリ成分による色戻り現象が見られることは良く知られており、印刷物や記録物等の経時褪色変化が大きな問題となっている。また、サチンホワイトを含有した塗被液を塗布した場合、白色度を上げるために添加する蛍光増白染料を、サチンホワイトを含有していない塗被液と同一の白色度にするためには、より多く添加しなければならないといった欠点もある。
サチンホワイトを含有したアルカリ性塗被層を設けた塗被紙の白色度や色相の経時褪色を防止する方法として、塗被紙の原紙に特定の銅価を持つ漂白化学パルプを使用し、原紙の動的濡れ値を特定することにより塗被紙の白色度低下を抑制する方法(特許文献5)、パルプ繊維が含有する有機塩素化合物に係る塩素量を400ppm以下とし、且つ原紙の相間強度(TAPPI−RC308)を50×10−3ft/lb/inとすることにより白色度や色相の経時褪色を改良する方法(特許文献6)、サチンホワイトを含有したアルカリ性の塗被層を塗布乾燥した直後とカレンダ仕上げした直後の両方の紙面温度を60℃以下で製造することにより、白色度の経時安定性や長期保存に優れた塗被紙を製造する方法(特許文献7)が紹介されている。
しかしながら、前記公報は、原紙や製造方法を改良した方法であり、通常の塗被紙製造とは異なる製造方法であるため、新たなシーケンスや装置の設置、操業の制限などがある。表面平滑性、白紙光沢などの白紙品質が優れるサチンホワイトを含有した塗被液を一般の塗被紙原紙に塗布乾燥、カレンダ仕上げしても、白色度や色相の経時安定性に優れた塗被紙が望まれている。
特開平11−247097号公報 特開平09−256295号公報 特開平09−67794号公報 特開平02−14098号公報 特許2834782号公報 特許3027875号公報 特開平07−279097号公報
本発明は、原紙上にサチンホワイトを含有した塗被液を塗布した塗被紙において、白色度や色相等の経時安定性に優れ、かつ表面平滑性及び印刷適性を有する塗被紙を提供することにある。
本発明は、原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗被液を少なくとも1層以上塗布、乾燥して得られた塗被層を有する塗被紙において、塗被層中にpHが8.5以上12.0未満であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有する塗被紙であって、前記トリスルホアルミン酸カルシウムが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともい。ずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれたものであり、前記塗被紙を下記条件で熱処理をおこなった場合、熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722)差が1.3未満であることを特徴とする。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
本発明は、原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗被液を少なくとも1層以上塗布、乾燥して得られた塗被層を有する塗被紙において、塗被層中にpHが8.5以上12.0未満であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有する塗被紙であって、前記トリスルホアルミン酸カルシウムが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれたものであり、前記塗被紙を下記条件で熱処理をおこなった場合、熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722)差が1.3未満であることを特徴とする。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加の直前の添加から所定時間が経過した後に行なわれることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)が、5.5〜7.0であることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数であることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12重量%以下であることが好ましい。
前記サチンホワイトを含有した塗被層が原紙と接する場合、白色度や色相等の経時安定性に優れる効果がより発揮される。
前記原紙が、紙面pH5.5以上である原紙の場合、白色度や色相等の経時安定性に優れる効果がより発揮される。
サチンホワイトが塗被層中の全顔料中、1〜30質量%含有されることが好ましい。
前記塗被層中に更にプラスチックピグメントが含有されことが好ましく、白紙光沢および表面平滑性がより優れたものとなる。

本発明に係る塗被紙は、サチンホワイトを含有した塗被層を有していながら、白色度や色相の経時安定性に優れた特性を有する。
一般に塗被紙に使用する原紙は、酸性抄紙法あるいは中性抄紙法の2種類の抄紙方法がある。しかし、1980年代以降、紙の長期保存性に対する要求の高まりから、現在使用されている塗被紙の原紙はほとんどが中性抄紙法による原紙である。また、塗被紙製造時に発生する損紙処理の容易さよりからも中性抄紙法による原紙が用いられている。
一般にpHが12.0を超え、12.5〜12.7程度のサチンホワイトを塗被液中に配合させる際には、塗被液の安定性向上のためサチンホワイトを配合する前の塗被液には水酸化ナトリウムが添加され、結果としてサチンホワイトが配合された塗被液のpHは一般的に11.0を超えるものとなる。
アルカリ性塗被液を原紙に塗被する際、原紙中の漂白化学パルプに塗被液が浸透し、塗被液中のアルカリ成分によってパルプの色戻りが発生する。これはパルプ中のカルボニル基、カルボキシル基、水酸基が関与すると推測される。酸性抄紙法による原紙の場合は、紙中に存在する硫酸イオンが塗被液のアルカリ成分を中和するのでパルプの色戻りを抑制する作用があって、塗被紙の白色度などの経時変化を明確化させない。しかし、中性抄紙法による原紙は紙中の酸性物質が少ないため、塗被液のアルカリ成分によりパルプの色戻りが発生し、塗被液の白色度の経時変化が大きい。特に塗被液のpHが高い場合は、熱によってパルプの色戻りが著しく促進され、白色度や色相の経時低下が極めて大きくなる。
具体的には、塗被液にサチンホワイトを含有した場合は、コーターからスーパーカレンダの間やスーパーカレンダからカッターおよびワインダーの間での塗被紙の白色度や色相の経時変化が大きく製品価値を著しく落としている。
本発明の塗被層にサチンホワイトを含有する塗被紙では、塗被紙の白色度や色相の経時変化の原因となる塗被液のpHを下げること、つまりは塗被液のpHを上げる原因であるサチンホワイトのpHを12.0以下に下げることにより、アルカリ成分による色戻りを抑制させるものである。
その結果として、本発明の、塗被層中にサチンホワイトを含有する塗被紙は、70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理をおこなった場合に、熱処理前後の白色度(JIS−P8148による)差が2.8未満になり、白色度や色相等の経時安定性に優れた塗被紙を得ることが可能となった。
また、同様に本発明の、塗被層中にサチンホワイトを含有する塗被紙は、70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理をおこなった場合に、熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722による)差が1.3未満になり、白色度や色相等の経時安定性に優れた塗被紙を得ることが可能となった。
上記の品質特性を満足させるためには、塗被層中に含有するサチンホワイトのpHを12.0以下とする必要があり、pHが8.5以上11.0以下であることが好ましく、さらに好ましくはpH9.2以上10.5以下である。
サチンホワイトのpHが12.0を超える場合は、アルカリ成分による白色度や色相の経時変化が大きくなる。白色度や色相の経時変化を抑制するために、サチンホワイトのpHをできる限り低くした方がよいが、pH8.5未満である場合には、サチンホワイトの結晶形状が崩壊し、水酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物が混在するため、サチンホワイト本来の表面平滑性、白紙光沢などの白紙品質が低下するという理由で好ましくない。また、pH11.0以下のサチンホワイトは塗被液安定性のための水酸化ナトリウムを少量あるいは添加なしに塗被液の調製ができることから一般の顔料と同じ扱いができる利点もある。
上記の理由で、本発明のサチンホワイトを含有した塗被液のpHは11.0以下であることが好ましく、一般塗被紙並みの塗被液のpHである10.0以下にすることがさらに好ましい。
本発明のpH12.0以下のサチンホワイトを含有した塗被層を一層とするか、或いは、多層とするかは特に限定するものではない。また、多層にした場合、全ての塗被層にサチンホワイトを含有してもよいが、原紙と接する塗被層中にpH12.0以下のサチンホワイトを含有した場合、白色度や色相の経時変化の抑制効果が、従来のサチンホワイト(pH12.5前後)を含有した塗被層と比較して顕著になる。これは強アルカリの塗被液が直接、原紙と接することにより、パルプの色戻りが比較的短時間のうちに進行すると思われるからである。
さらに本発明における塗被層中のサチンホワイトの含有量は特に限定されるものではないが、塗被層中の全顔料中、1〜30質量%を含有させることが好ましく、特に3〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
サチンホワイトを塗被層に含有させることにより、塗被層の平滑、白紙光沢などの白紙品質が向上するが、サチンホワイトの含有量が全顔料のうち、1質量%未満である場合には白紙品質の向上が不充分であり、他方、サチンホワイトの含有量が30質量%を超えると、塗被層の白紙品質の向上に対しては有効であるが、塗被紙としての強度発現のために必要とされる接着剤量が多くなり、不経済であるため好ましくない。
本発明に用いるサチンホワイトについては、特願2005−123689号公報に記載の製造方法によって、得られる。
即ち、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれるものである。
なお、ここに、(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される(A)水酸化カルシウム懸濁液とは、複数段添加のうち第1段目の添加においては(硫酸アルミニウム水溶液の添加が行なわれる前においては)純粋な水酸化カルシウム懸濁液であるが、複数段添加のうち第2段目以降の添加においては(硫酸アルミニウム水溶液の添加が既に行なわれた後においては)水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムとの混合物を意味する。
即ち、まず本方法においては、水酸化カルシウム懸濁液に対して添加される硫酸アルミニウム水溶液を複数段に分割して添加することを特徴とする。
水酸化カルシウム懸濁液と硫酸アルミニウム水溶液を反応させてサチンホワイトを製造する場合において、サチンホワイトの反応原料である硫酸アルミニウムは水に完全に溶解して水溶液となり、その全量が直ちに反応が行なえる状態であるのに対して、もう一方の反応原料である水酸化カルシウムは水に対する溶解性が0.2%と極めて低く、ほとんど水に溶けない懸濁液の状態であるため、その全量は直ちに反応が行なえる状態にはない。
このため、反応性の鈍い水酸化カルシウム懸濁液に対して、所定量の硫酸アルミニウム水溶液を一度に添加するのではなく、直ちに反応することができる水酸化カルシウム量に見合うだけの硫酸アルミニウム量の範囲内で、所定量の硫酸アルミニウムを複数段に分割して添加することにより、反応系内において硫酸アルミニウムが過剰になる状態を回避し、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物の発生を抑制するものである。
さらに本方法では、前記した硫酸アルミニウム水溶液の分割添加に加えて、(A)水酸化カルシウム懸濁液に対して(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち、少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なうことを特徴とする。
これは、本発明において、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加に対しては、所定量の水酸化カルシウム懸濁液に硫酸アルミニウム水溶液を長時間に渡って徐々に添加する、いわゆる「バッチ」方式を行なっても良いが、生成するサチンホワイトの粒子径を微小、かつ均一に制御することに関しては、「バッチ」方式よりも連続的に移送される水酸化カルシウム懸濁液に対して硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する「連続添加」方式の方が優れていることから、本発明に用いるサチンホワイトでは、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液のいずれかの添加において、前記「連続添加」方式による添加を、少なくとも最低1回は行なうものである。
また、本方法では、本発明の「連続添加」方式による硫酸アルミニウム水溶液の添加については、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、第1段目の添加を「連続添加」方式とすることもでき、さらに、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、最終の添加を除く全ての添加を「連続添加」方式とすることもできる。なお、最終の添加を含む全ての添加を「連続添加」方式とすることもできる。
また、本発明のサチンホワイトの生成においては、水酸化カルシウムの反応性を回復させて適正なサチンホワイト生成反応を維持させるために、該後続添加の直前の添加から所定時間の間隔を空けた後に、後続の硫酸アルミニウム水溶液を添加するものであり、安定化するのに要する所要時間は、混合組成物の状態にもよるが、15秒以上が必要である。
また、本方法においては、前記複数段に分割して行なわれる(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれてもよい。
ここにいう「後続添加」とは、水酸化カルシウム懸濁液に対して、複数段に分割して硫酸アルミニウム水溶液を添加する場合において、2段目〜最終段に行なわれる、それぞれの硫酸アルミニウム水溶液の添加をいう。
そして、ここにいう「該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物」とは、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液の混合物であって、まだ(B)硫酸アルミニウム水溶液の所定量(全量)が混合されておらず(即ち、最終段の添加がなされていない)、該後続添加によって(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される直前の組成物をいい、具体的には生成したサチンホワイトと未反応の水酸化カルシウムが残留する組成物のことを示す。
後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上であることの意義は次のように考えられる。
サチンホワイトの製造に関して、硫酸アルミニウム水溶液を添加する際に、原料である水酸化カルシウムの反応性を維持、回復させることが重要であることは前記した通りであるが、水酸化カルシウム懸濁液に対して硫酸アルミニウム水溶液を混合して得られた混合組成物のpHの変動状態を観測することにより、混合組成物における水酸化カルシウムの反応性の回復状況を把握することができることから、該混合組成物においては、硫酸アルミニウムを添加する前に充分に反応性を回復(=pHの上昇回復)しておくことが不可欠である。
したがって、本発明において、硫酸アルミニウムが添加される前の混合組成物のpHについては、11.0以上であることが好ましく、12.0以上とすることがより好ましく、水酸化カルシウムの反応性を完全に安定した状態まで回復させるためには、12.5〜13.0のpH範囲まで調整することが特に好ましい。硫酸アルミニウムを添加する前の混合組成物のpHが、11.0未満であると、混合組成物中の水酸化カルシウムの反応性回復が不十分である可能性が高く、該状態の混合組成物に対して硫酸アルミニウム水溶液を追添加すると、サチンホワイトの生成反応を適性、かつ安定して行なうことが困難となり、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムといった反応副生成物が多量に生じるため好ましくない。
本方法においては、サチンホワイトを生成させる際の、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段に分割して添加される(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)は、5.5〜7.0が好ましい。
(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aと、複数段に分割して添加される(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bと、の割合(a/b)は、理論的にはa/b=6.0であり、これは1モルのサチンホワイトの生成には、6モルの水酸化カルシウムと1モルの硫酸アルミニウムが必要であることを示している。したがって本発明におけるサチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)についてはa/b=6.0として、反応における無駄を最小限とすることが極めて好ましい。
しかしながら、水酸化カルシウムの反応性が非常に鈍いことから、完全な反応終了点で反応を終了させることは極めて困難である。したがって、本発明におけるサチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の範囲の下限については、a/b=5.5以上とすることが好ましく、5.8とすることがより好ましく、6.0とすることが特に好ましい。また水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の上限については、7.0以下とすることがより好ましく、6.0とすることが特に好ましい(通常、水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の範囲としては、a/b=5.5〜7.0が好ましく、a/b=5.8〜7.0の範囲内とすることが特に好ましい。)。サチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)について、5.5未満とすることは、水酸化カルシウムに対する硫酸アルミニウムの比率が過剰になり、酸化アルミニウムや硫酸カルシウム等の反応副生成物が多量に発生するため好ましくなく、また該反応モル比が7.0を超えることは、pHが12.0以下のサチンホワイトを得ることが難しくなり好ましくない。
ここに「(C)サチンホワイトを含有する組成物のpH」の測定方法としては、残留する水酸化カルシウムの状態安定化のために、硫酸アルミニウム水溶液の最終添加が終了した後、少なくとも10分以上、好ましくは5時間以上経過した後にpH測定を行なうことが好ましく、pH測定については、測定を行なう当日に少なくとも1回はpH標準校正溶液を用いて校正されたpH計を用いることが好ましい。例えば、硫酸アルミニウム水溶液の最終段添加が終了してから24時間後経過後の25℃の(C)サチンホワイトを含有する組成物のpHを測定するようにしてもよい。また測定器具としては、ラコムテスターpH計(pHScanWPBN型/アズワン製)を使用し、(C)サチンホワイトを含有する組成物の分散液中に直接pH電極を浸漬させて該組成物のpHを測定する。なお、pH測定に使用したpH計については、NIST基準校正液(pH6.86、およびpH9.18の2種類)を用いてpH校正を行なった後にpH測定を行う。
サチンホワイトの製造方法について、従来方法では、硫酸アルミニウムに対して常に水酸化カルシウムが過剰になる状態を堅持することによって、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物の発生を防止するものであったが、反面、水酸化カルシウムが過剰な状態を堅持するために、生成したサチンホワイト中にも、未反応の水酸化カルシウムが残留する状態が生じ、この残留する水酸化カルシウムが生成したサチンホワイト中に溶出するために、従来のサチンホワイト懸濁液のpHは強アルカリ性(pH12.5〜12.7)となることが短所であった。
しかしながら本方法においては、反応性の鈍い水酸化カルシウム懸濁液に対して、複数段に分割して所定量の硫酸アルミニウム水溶液を添加することによって、反応終了点まで硫酸アルミニウム水溶液を添加して、サチンホワイト懸濁液中の未反応の水酸化カルシウムの残留を抑制できることから、アルカリ性の低い高品質なサチンホワイトを安定して生成させることができる。
したがって、本方法により、硫酸アルミニウム水溶液の添加量を最適化することにより、生成するサチンホワイトを含有する組成物のpHを12.0以下まで調整することが可能となり、硫酸アルミニウム水溶液の添加量をより最適化することにより、11.0以下の好ましい値、10.5以下のより好ましい値にすることができるようになった。また、pHの下限としては、pHを8.5以上とすることが好ましく、9.2以上とすることが特に好ましい。
このpHは、硫酸アルミニウム水溶液の添加量によって調節することができ、具体的には、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)を変更することでpHを調節することができる。該割合(a/b)を高めればpHは上昇し、該割合(a/b)を低めればpHは低下するので、所定のpHになるように該割合(a/b)を5.5〜7.0の範囲で調節すればよい。
本方法においては、前記複数段に分割して行なわれる(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち、2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数となるようにしてもよい(添加モル数制限方法)。
(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12重量%以下であってもよい。
ここに水酸化カルシウム懸濁液の濃度は、硫酸アルミニウム水溶液が全く添加されていない状態(即ち、硫酸アルミニウム水溶液の第1段目の添加を行なう前)の反応を行なう前の状態における水酸化カルシウム懸濁液の濃度であり、水酸化カルシウム懸濁液において、水に溶解した状態の水酸化カルシウム(f1)と、固体のまま水に分散した状態の水酸化カルシウム(f2)と、の2者を併せた水酸化カルシウムの総含有量(質量F=f1+f2)による重量%をいう。
サチンホワイトは塩基である水酸化カルシウム懸濁液と、酸である硫酸アルミニウム水溶液を、瞬時に均一に混合させることが不可欠であるが、この際に各反応原料の濃度が濃すぎる場合には、各反応原料の瞬時、かつ均一な混合を行なうことが困難となり、また反応混合組成物(懸濁液)の粘度が2000mPa・sを越えるような高粘度となって、反応原料の混合を阻害する恐れが生じてしまう。
したがって、本方法においては、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12重量%以下であることが好ましく、少なくとも一方が、6%以下であることがより好ましく、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度が、共に6%以下であることが最も好ましい。
そして、反応原料を瞬時、かつ均一に混合させて、サチンホワイトの生成反応を安定して行なうためには、前記したように各反応原料の濃度はできる限り低い方が好ましいが、反応原料の濃度が極めて低い場合には、取り扱う反応液量が膨大となり、極めて大きな処理能力を有する製造設備の設置が必要となるため、必要以上に原料を低濃度化することは好ましくない。
したがって、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度の少なくとも一方が、0.1重量%以上であることが好ましく、少なくとも一方が、1%以上であることが特に好ましい。
本発明における塗被層のサチンホワイトの粒径については特に限定はしないが、塗被紙の平滑性、光沢発現性が低下したり、また塗工工程において粗粒顔料が塗被層を引っかいて傷つける「ストリーク」等の発生を防止するために、沈降方式によって測定された平均粒子径において、下限としては、0.1マイクロメートル以上とすることが好ましい。また粒子径の上限としては、1.5マイクロメートル以下とすることが好ましく、1.2マイクロメートル以下とすることがより好ましく、1.0マイクロメートル以下とすることが特に好ましい(通常、粒子径の範囲として、0.1〜1.5マイクロメートル、より好ましくは0.1〜1.0マイクロメートルである。)
この本方法により製造される(C)サチンホワイトの平均粒子径を大きくするには、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加段数を増加させたり、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加における流量を減少(即ち、連続添加における滞留時間を増加させる)させればよい。逆に、本方法により製造される(C)サチンホワイトの平均粒子径を小さくするには、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加段数を減少させたり、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加における流量を増加(即ち、連続添加における滞留時間を減少させる)させたり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち第1回添加における(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加量を減少させればよい。このためこれらの条件を適宜変更して所望の平均粒子径になるようにすればよい。
前記、沈降方式による平均粒子径測定とは、詳細は以下のものである。米国のマイクロメリティックス社製のセディグラフ5100を使用して、生成したサチンホワイトを含有する組成物の粒度分布を測定し、50累積質量%に該当する平均粒子径(d50)を求めた。なお、測定に供したサチンホワイトを含有する組成物は、反応終了後に得られたサチンホワイトを含有する組成物の分散液に対して、燐酸塩系分散剤(ピロリン酸ソーダ)の0.1%水溶液で、顔料固形分濃度が約4%になるよう希釈・分散して得た。また、測定条件としては、サチンホワイトの比重:1.77g/cm、測定温度:35℃で測定した。
ちなみに、サチンホワイトの平均粒子径が1.5μmを越える場合には、塗被層に対して平滑発現性、白紙光沢発現性の効果が少なく、他方、サチンホワイトの平均粒子径が0.1μmよりも小さい場合には、塗被紙の平滑発現性、白紙光沢発現性付与に対しては有効であるが、印刷用塗被紙として必要とされる強度発現のための接着剤要求量が多くなり、不経済になる。
本発明において、塗被層に含有する特定のサチンホワイト以外の顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スクメタイト、サチンホワイト等の無機顔料や、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等、通常の塗被紙分野に使用される顔料を使用することが可能であり、これらの中から1種あるいは2種以上を適宜選択して使用できる。なお、使用する顔料の平均粒子径は、0.1〜3.0μm程度である。
中でも、プラスチックピグメントは、白紙光沢および表面平滑性がより優れたものとなるため、好ましく用いられる。なお、含有量は塗被層中の全顔料中、1〜20質量%程度である。
本発明において、塗被層に含有する接着剤については、特に限定するものではないが、通常は分散型接着剤を使用する。分散型接着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックスなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上が、塗被層の接着剤成分として使用可能である。
特に、最外塗被層の形成に使用する上記分散型接着剤は、重合時のモノマーとしてアクリロニトリルを10〜35質量%、特に20〜30質量%含有していることが好ましい。分散型接着剤のアクリロニトリル含有量が10質量%未満であると、形成された最外塗被層のインク溶剤吸収性を満足できるほど低下させることができず、これに原因して印刷光沢が損なわれる心配がある。一方、分散型接着剤のアクリロニトリル含有量が35質量%を超える場合は、乳化重合が難しくなり、このものに満足できる結合力(binding power)を期待することができない。
最外塗被層の接着剤成分が、何れの分散型接着剤を使用する場合でも、分散した接着剤粒子の粒子径は、50〜120nm、特に50〜90nmの範囲であることが好ましい。
上記した分散型接着剤と共に水溶性接着剤を併用することができる。水溶性接着剤としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが例示できる。
また本発明においては、塗被層中の接着剤を全顔料に対して5〜20質量%、8〜15質量%とすることが特に好ましい。塗被紙に印刷を施す場合、必要とされる印刷強度を発現させるために、塗被層に接着剤を含有させるが、接着剤の含有量が全顔料に対して5質量%未満である場合には、塗被紙に対して充分な印刷強度を付与することが困難となるため好ましくなく、他方、接着剤の含有量が全顔料に対して20質量%を越える場合は、経済的に不経済になりこれ以上の使用は必要性に乏しい。
本発明の塗被層には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光増白染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
原紙上に設ける塗被層は、一層とするか、或いは2層以上の多層にするかは特に限定はなく、多層の場合、全てが同一である必要はなく、要求される品質レベルに応じて適宜調整することが可能である。
また、塗被層の塗被量も、特に限定されるものではなく、塗被紙の白紙品質、印刷品質などに応じて調整することが可能であるが、一般には、片面あたり5〜40g/m程度である。
本発明における塗被層を設ける際の塗工方法については、通常の塗被紙製造分野で使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種のブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が適宜使用することができる。
本発明における原紙については、限定がなく、酸性、中性〜アルカリ抄紙により製造された上質、中質、脱墨パルプ配合の原紙を適宜使用できるが、中性〜アルカリ抄紙法による原紙を使用した場合、従来のpHが12.5前後のサチンホワイトを含有した塗被層を有する塗被紙との差が顕著である。
なお、1層の塗被層もしくは2層以上の塗被層を有する塗被紙の場合、1層の塗被層や下塗り塗被層を設ける前に、原紙上に各種サイズプレス機およびロールコーターなどで澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール等の合成接着剤を用いてサイズ処理を行なうことも可能であり、本発明の原紙とはサイズ処理をおこなう場合は、サイズ処理後の原紙を意味するものである。
このようにして得られた塗被紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等に通紙して製品仕上げを施してもよい。
かくして得られた塗被紙は、塗被層に従来のpHが12.5前後のサチンホワイトを含有した塗被紙と比較して、白色度や色相の経時安定性が向上するのはもちろんであるが、白色度発現性もよくなる。この理由としては、アルカリ性が弱くなるため、白色度を高める目的で添加する蛍光増白染料を破壊しないからと考える。また、理由は良く分からないが、白紙光沢、表面平滑の白紙品質、印刷品質も向上する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、実施例や比較例で使用した顔料の平均粒子径は以下の方法で測定した。
(pH測定方法)
以下に示す実施例や比較例において、サチンホワイトを含有する組成物および塗被液のpHは以下の方法により測定した。
ラコムテスターpH計(pHScanWPBN型、アズワン製)を使用し、各種分散液および塗被液中に直接pH電極を浸漬させて顔料分散液、塗被液のpHを測定した。なお、pH測定に使用したpH計については、NIST基準校正液(pH6.86、およびpH9.18の2種類)を用いてpH校正を行なった後にpH測定を行なった。
(紙面pH)
テープを使用して塗被紙を分割し原紙面を露出させ、JAPAN TAPPI No.49−2に準じて、(株)共立理化学研究所の紙面測定用pH計、MPC型を用いて測定した。
(顔料の平均粒子径)
ピロリン酸ソーダの0.1%液中に顔料を超音波で5分間分散処理し、X線透過式粒度分布測定装置(機種名:セディグラフ5100、マイクロメリティクス社製)を用いて沈降法により測定した。平均粒子径は粗粒子分からの累積質量が50%に相当する点での粒子径で示した。
(共重合体ラテックスの平均粒子径)
共重合体ラテックスを含む試料を、透過型電子顕微鏡にて倍率5万倍で写真撮影し、得られた顕微鏡写真から共重合体ラテックス粒子を測定し、数平均で求めた。
(6%水酸化カルシウム懸濁液の調製)
Ca(OH)としての純度96.4%の水酸化カルシウム(商品名:JIS特号消石灰、奥多摩工業製)1.24kg(Ca(OH)分として1.20kg)を18.76kgの水に分散させて20.0kgとし、6%の水酸化カルシウム懸濁液を調製した。該懸濁液温度は40℃に調整した。
(硫酸アルミニウムの純度測定)
正確に秤量した所定量の硫酸アルミニウム(商品名:硫酸アルミニウム13〜14水和物、キシダ化学製、試薬)を500℃で5時間加熱して、結晶水を含まない状態の硫酸アルミニウム無水物(Al(SO)の純度を測定した。その結果、該試薬中の硫酸アルミニウム無水物(Al(SO)としての濃度は58.70%であった。
(6%硫酸アルミニウム水溶液の調製)
前記のように純度測定した硫酸アルミニウム(商品名:硫酸アルミニウム13〜14水和物、キシダ化学製、試薬)2.04kg(Al(SO無水物分として1.2kg)を17.96kgの水に溶解させて20.0kgとし、6%の硫酸アルミニウム水溶液を調製した。該水溶液温度は40℃に調整した。
実施例1
(サチンホワイトの調製)
(1)水酸化カルシウム懸濁液に対する第1段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加
9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記の6%水酸化カルシウム懸濁液を300g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を104g/分(基準モル数の45%。なお、基準モル数等の計算方法は後述する。)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を14分間連続して行なった。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をpH復元タンクに連続的に受け入れ30分間静置して、pH回復を行なった。pH回復後の該混合組成物(以下、「第1組成物」という。)のpHは12.7であった。
ここに基準モル数等の計算方法を簡単に説明しておく。
水酸化カルシウム、硫酸アルミニウムの分子量は、それぞれ74.1、および342.16であり、6%水酸化カルシウム懸濁液300g/分は、固形分として18g/分で、そのモル数(単位時間に装入されるモル数)は18/74.1=0.243である。従って、水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数は、0.243×1/6=0.0405モル/分となる。
一方、6%硫酸アルミニウム水溶液104g/分には、104g×6%=6.24g/分の硫酸アルミニウムが含まれており、これをモル数に換算すると6.24g/分×1/342.16=0.0182モル/分となる。
従って、第1段目に添加する硫酸アルミニウム水溶液の、基準モル数に対する割合の計算は、(0.0182モル/分)/(0.0405モル/分)=45%と計算される。
(2)第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加
前記(1)と同様にして、9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記混合組成物(第1組成物)を404g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を81g/分(基準モル数の35%)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を12分間連続して行なった。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をpH復元タンクに連続的に受け入れ30分間静置して、pH回復を行なった。pH回復後の混合組成物(以下、「第2組成物」という。)のpHは12.5であった。
(3)第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加(反応終了)
前記(2)と同様にして、9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記混合組成物(第2組成物)を485g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を34g/分(基準モル数の15%)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を10分間連続して行なった(反応終了)。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をクッションタンクに連続的に受け入れ、反応終了後の組成物(以下、「反応終了組成物」という。)を得た。反応終了組成物のpHは11.5であった。
(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)の計算方法について簡単に説明する。
まず、最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。
そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は219g/分×10分間=2190gであり、それに含まれる固形分としては131.4gであり、Al(SOモル数bとしては0.38モルである。
従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.4となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の95%(=45%+35%+15%)であった。
反応終了後の組成物(反応終了組成物)をフィルタープレスで脱水することで固形分が約32〜34%の組成物とし、続いて固形分27%となるように該脱水組成物を水に再分散させた。その再分散の際、あらかじめ水にポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成化学社製)を組成物(該脱水組成物)の固形分対比で0.5部の量を添加しておき、さらに該分散剤の添加量を調整して、再分散した該組成物分散液が約10mPa・s程度の低粘度になるように調整した。平均粒子径は0.44μmであった。
(塗被液の調製)
顔料として、微細カオリン(商品名:カオグロス、ヒューバー社製:米国)70%、および重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)20%、サチンホワイト10%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、王子コンスターチ社製)1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、クラレ社製)1部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、アクリロニトリルモノマー含有量:12質量%、平均粒子径:90nm、JSR社製)13部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
緊度が0.75g/cmである紙面pH7.6の上質原紙(米坪72.5g/m)の上に、塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が8g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行なって、塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度70℃、線圧200KN/mでスーパーカレンダに通紙して、塗被紙を得た。
実施例2
(サチンホワイトの調製)
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を185g/分(基準モル数の80%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を485g/分、硫酸アルミニウム水溶液を35g/分(基準モル数の15%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を520g/分、硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。
この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.8、および12.4であった。
実施例2において最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。
そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は231g/分×10分間=2310gであり、それに含まれる固形分としては138.6gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。
従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.0となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の100%であった。反応終了後の組成物のpHは10.6であった。平均粒子径は0.49μmであった。
(塗被液の調製および塗被紙の作製)
実施例1の塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にして塗被紙を得た。
実施例3
(サチンホワイトの調製)
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を58g/分(基準モル数の25%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を358g/分、硫酸アルミニウム水溶液を162g/分(基準モル数の70%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を520g/分、硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。
この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.8、および12.4であった。
実施例3において最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。
そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は231g/分×10分間=2310gであり、それに含まれる固形分としては138.6gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。
従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.0となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の100%であった。反応終了後の組成物のpHは9.7であった。平均粒子径は0.46μmであった。
(塗被液の調製および塗被紙の作製)
実施例1の塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にして塗被紙を得た。
実施例4
実施例3の塗被層用塗被液の調製において、サチンホワイト10%をサチンホワイト5%、プラスチックピグメント(商品名:AE−851、JSR社製)5%に変更した以外は、実施例3と同様にして塗被紙を得た。
実施例5
(下塗り塗被層用塗被液の調製)
下塗り塗被層用塗被液の調製において、顔料として、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)100%、からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)6部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)6部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
緊度が0.75g/cmである紙面pH7.6の上質原紙(米坪72.5g/m)の上に、下塗り塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が7g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、下塗り塗被層を設けた。次いで、実施例3の塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が9g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、最外層塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度70℃、線圧200KN/mでスーパーカレンダに通紙して、塗被紙を得た。
実施例6
(下塗り塗被層用塗被液の調製)
下塗り塗被層用塗被液の調製において、顔料として、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)90%、実施例3で調製したサチンホワイト10%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)6部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)6部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(最外層塗被液の調製)
顔料として、微細カオリン(商品名:カオグロス、前出)70%、および重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)30%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、前出)1部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)13部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
下塗り塗被層用塗被液、最外層塗被液以外は、実施例5と同様にして塗被紙を得た。
実施例7
実施例5の下塗り塗被層用塗被液を実施例6の下塗り塗被層用塗被液とした以外は、実施例5と同様にして塗被紙を得た。
実施例8
実施例7の最外層塗被液において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)をスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:スマーテックスPA2323、アクリロニトリルモノマー含有量:21質量%、平均粒子径:89nm、日本エイアンドエル社製)に変更した以外は、実施例7と同様にして塗被紙を得た。
実施例9
(塗被液の調製)
顔料として、微細カオリン(商品名:カオグロス、前出)35%、エンジニアードカオリン(商品名:コントラスト300、エンゲルハード社製、米国)35%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)20%、実施例3で調製したサチンホワイト10%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、前出)1部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)13部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
実施例1で用いた原紙上に、塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が8g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行って、塗被層を設け塗被紙を得た。
実施例10
(最外層塗被液の調製)
顔料として、微細カオリン(商品名:カオグロス、前出)35%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)45%、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業製)10%、実施例3で調製したサチンホワイト10%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、前出)1部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)13部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
実施例1で用いた原紙上に、実施例6の下塗り塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が7g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、下塗り塗被層を設けた。次いで、最外塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が9g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行って、最外層塗被層を設け塗被紙を得た。
実施例11
(塗被紙の作製)
実施例10で得られた塗被紙を温度40℃、線圧85KN/mでスーパーカレンダに通紙して塗被紙を得た。
比較例1
(サチンホワイトの調製)
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を104g/分(基準モル数の45%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を404g/分、硫酸アルミニウム水溶液を81g/分(基準モル数の35%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を485g/分、硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。
この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.8、および12.4であった。
比較例1において最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。
そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は196g/分×10分間=1960gであり、それに含まれる固形分としては196gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。
従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては7.1となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の85%であった。反応終了後の組成物のpHは12.5であった。平均粒子径は0.44μmであった。
(塗被液の調製および塗被紙の作製)
実施例1の塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にして塗被紙を得た。
比較例2
実施例5の最外層塗被液を比較例1の塗被液とした以外は、実施例5と同様にして塗被紙を得た。
比較例3
比較例2の下塗り塗被層用塗被液の調製において、顔料として、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)90%、比較例1で調製したサチンホワイト10%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースB、前出)6部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)6部(いずれも固形分換算)、および消泡剤、染料などの助剤を添加して、最終的には固形分濃度が59%の塗被液とした以外は、比較例2と同様にして塗被紙を得た。
比較例4
比較例1の塗被液を実施例6の最外層塗被液とした以外は、比較例1と同様にして塗被紙を得た。
かくして得られた塗被紙について、下記のごとき評価を行ない、得られた結果を表1にまとめて示した。なお本発明における塗被紙の測定および評価については、特に記載ない限り、23℃、50RH%の環境下で行った。
(白色度)
JIS−P8148に準じて、塗被紙の白色度を測定した。
(熱褪色性の評価試験)
恒温恒湿器を用いて、70℃、90%RHの条件化で24時間の熱処理をした後、白色度および色差を下記方法で測定し、熱褪色性を評価した。
(白色度差)
JIS−P8148に準じて、熱処理前後の白色度を測定し、その白色度の差(△W)を下記の式によって求めた。数値が小さい程、熱褪色性は良好である。
△W=熱処理前の白色度−熱処理後の白色度
(△b差)
JIS−Z8722に準じて、熱処理前後の色相を測定し△bを測定した。
(色差−△E)
JIS−Z8722に準じて、熱処理前後の色相を測定した。色差(△E)はJIS-Z8730に基づき、L表色系による色差式から求めた。数値が小さい程、熱褪色性は良好である。
(光沢度)
JIS−Z8741に準じて75°光沢度計を用いて測定し、その平均を求めた。
(塗被紙のPPS平滑度)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行ない、その平均を求めた。
(印刷適性)
RI印刷機にて、印刷インキ(商品名:Values−Gタイプ、墨 Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)を0.1cc使用して印刷を行い、転写したインキ濃度(インキ着肉性)およびインキの転写均一性(印刷平滑性)を総合的に目視で観察して評価した。
◎:印刷適性が特に優れる。
○:印刷適性が優れる。
△:印刷適性がやや劣るが、実用上問題ない。
×:印刷適性が劣る。
(印刷光沢)
印刷インキ(商品名:Values−G 墨 Sタイプ、大日本インキ化学社製)を0.7ccを使用して各塗被紙に印刷を施し、印刷物を24時間静置乾燥した。その後、各塗被紙の印刷面の60°光沢を、JIS Z8741−1997に準拠して測定した。
Figure 0004534937

Claims (11)

  1. 原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗被液を少なくとも1層以上塗布、乾燥して得られた塗被層を有する塗被紙において、塗被層中にpHが8.5以上12.0未満であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有する塗被紙であって、前記トリスルホアルミン酸カルシウムが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれたものであり、前記塗被紙を下記条件で熱処理をおこなった場合、熱処理前後の白色度(JIS−P8148による)差が2.8未満であることを特徴とする塗被紙。
    熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
  2. 原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗被液を少なくとも1層以上塗布、乾燥して得られた塗被層を有する塗被紙において、塗被層中にpHが8.5以上12.0未満であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有する塗被紙であって、前記トリスルホアルミン酸カルシウムが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれたものであり、前記塗被紙を下記条件で熱処理をおこなった場合、熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722)差が1.3未満であることを特徴とする塗被紙。
    熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
  3. 前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加の直前の添加から所定時間が経過した後に行なわれるものである、請求項1または2に記載の塗被紙。
  4. 前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれるものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗被紙。
  5. (A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)が、5.5〜7.0である、請求項1から4のいずれか1項に記載の塗被紙。
  6. 前記複数段の添加のうち1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数である、請求項1から5のいずれか1項に記載の塗被紙。
  7. (A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12重量%以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の塗被紙。
  8. 前記トリスルホアルミン酸カルシウムを含有した塗被層が原紙と接する、請求項1から7のいずれか1項に記載の塗被紙。
  9. 前記原紙が、紙面pH5.5以上である請求項1から8のいずれか1項に記載の塗被紙。
  10. 前記トリスルホアルミン酸カルシウムが塗被層中の全顔料中、1〜30質量%含有された、請求項1から9のいずれか1項に記載の塗被紙。
  11. 前記塗被層中に更にプラスチックピグメントが含有された、請求項1から10のいずれか1項に記載の塗被紙。
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