JP4533506B2 - 化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル外部半導電層用剥離性半導電性樹脂組成物 - Google Patents

化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル外部半導電層用剥離性半導電性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの外部半導電層として用いる剥離性半導電性樹脂組成物及びこれを化学架橋ポリエチレン絶縁層上に被覆してなる化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルは、内部から外部に向けて導体、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、ジャケット層から構成されており、外部半導電層は、外部からの屈曲や、ヒートサイクル等により化学架橋ポリエチレン絶縁層との部分的剥離や空隙の発生により生ずるコロナ劣化や、他の絶縁劣化を防止するため低積固有抵抗値100Ω・cm程度の導電性にしてある。外部半導電層を上記の体積固有抵抗値にし、かつ化学架橋ポリエチレン絶縁層との密着性をよくし、外部からの屈曲や、ヒートサイクル等に追随し、部分的剥離や空隙の発生を防ぐには、柔軟で化学架橋ポリエチレンに対して密着性がよく、且つ大量のカーボンブラックの充填にもかかわらず機械的強度、伸び、柔軟性、加工性が低下しないポリマーが必要であり、従来代表的なものとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、アイオノマー、酸変性ポリエチレン等が使用されてきた。しかしながら、化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル同士を接続する場合、端末処理作業を容易にするため化学架橋ポリエチレン絶縁層から外部半導電層を剥ぎ取らなければならず、この作業を容易にするためには、剥離性のよい外部半導電層としなければならない。
【0003】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、アイオノマー、酸変性ポリエチレン等は密着性は良好であるが、逆に耐熱性等が不十分である。
従って、従来から化学架橋方法による電力ケーブルの外部半導電層に用いる剥離性半導電性樹脂組成物は、例えば、特開昭58−212007号、特開昭59−230205号、特開昭60−189110号、特開昭62−58518号、特開昭62−117202号、特開昭63−89552号、特開平3−29210号、特開平3−247641号の各公報等に数多く提案されてきた。
しかしながら、剥離性、耐熱性、高温押出加工性等が不十分であったり、機械的強度、伸び、耐寒性等が悪かったりし、すべての条件を満足する剥離性と密着性を有する外部半導電層用樹脂組成物およびそれで作った電力ケーブルはなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、絶縁層を化学架橋ポリエチレンで構成した電力ケーブルの外部半導電層として必要な下記の条件を満たす樹脂組成物及びこれを用いてつくった化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの提供を課題とする。
(1)外部半導電層用樹脂組成物は半導電性で、体積固有抵抗値が100Ω・cm以下。
(2)電力ケーブルを屈曲したり、ヒートサイクルをかけたとき、化学架橋ポリエチレン絶縁層との部分的剥離や空隙が発生しないための柔軟性、伸びを維持するために、伸び率が100%以上。
(3)化学架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面が平滑であり、微小な突起がない。
(4)外部半導電層を引き剥がすとき、外部半導電層自体が弱い引張力で切断しないために、引張強度が10MPa以上。
(5)耐寒性がある。
(6)外部半導電層を化学架橋ポリエチレン絶縁層から剥離するとき、ナイフで外部半導電層が比較的弱い力で切れ目が入れられ、化学架橋ポリエチレン層を傷つけない程度に容易に切断作業ができ、かつ容易に剥離でき、剥離した後の化学架橋ポリエチレン層の表面に残渣や傷が残らないために、化学架橋ポリエチレン絶縁層との界面間の剥離強度が4kg/0.5inch以下。
(7)有機過酸化物による架橋が行われなくとも120℃の加熱変形に耐える耐熱性のために、120℃の加熱変形率が40%以下。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の外部半導電層として必要な条件を満たす樹脂組成物を開発するため各種ポリマー及び配合剤を選択し、これらを特定量の割合で配合した場合にのみ、本発明の課題が解決できることを数多くの実験により実証し、本発明を完成させた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、化学架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの外部半導電層として用いる下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分からなる剥離性半導電性樹脂組成物が提供される
(a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上100重量部
(b)メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cmエチレン−ブテン−1共重合体及びエチレン−ヘキセン−1共重合体から選ばれた直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体55〜200重量部
(c)メルトマスフローレート0.5〜30.0g/10分、密度0.900〜0.920g/cmのポリプロピレン5〜50重量部
(d)シリコーンガムストック及びシリコーンオイルから選ばれたオルガノポリシロキサン0.5〜50重量部
(e)カーボンブラック10〜400重量部
(f)有機過酸化物0〜2.0重量部
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば第1の発明に係り、導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆した後、ジャケット層を押出被覆する化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法であって、導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程は、上記内部半導電層用樹脂組成物及び化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を被覆する工程が二層同時押出装置により行われ、次いで上記剥離性半導電性樹脂組成物を被覆する工程を行った後、200〜350℃に加熱して化学架橋を行うことを特徴とする化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法が提供される
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明に係り、導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆した後、ジャケット層を押出被覆する化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法であって、導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程が、三層同時押出装置により行われ、その後、200〜350℃に加熱して化学架橋を行うことを特徴とする化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法が提供される。
【0009】
さらに、本発明の第4の発明は、上記第2あるいは第3の発明によって製造される化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
1.導体及び内部半導電層
本発明で用いられる導体及び内部半電層は、通常化学架橋ポリエチレン絶縁電線において使用されるものならば何でもよい。それらのうち、導体としては、例えば、軟銅、半硬銅、硬銅、アルミニウム等を素材とする導体や撚線導体等が好ましい。また、内部半導電層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリエチレン系共重合体にカーボンブラック等を配合したものが好ましい。ポリエチレン系共重合体が内部半導電層に好んで用いられる理由は、内部半導電層を半導電性とする上で、大量のカーボンブラックを配合する必要があるが、ポリエチレン系共重合体が他の樹脂に比べてカーボンブラックとの混和性や分散性に優れ、かつ、導体や絶縁層との密着性にすぐれているためである。内部半導電層の役目は、電位傾向の改善や同電位化を図り、耐電圧性能を向上させることであり、その結果、屋外電線の長寿命化が計られる。
【0012】
内部半導電層用に配合されるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性のものが挙げられる。カーボンブラックの配合量は、ポリエチレン系共重合体100重量部に対してカーボンブラック8〜350重量部である。カーボンブラックの配合量が8重量部未満であると、たとえ良導電性のケッチェンブラックを使用しても、導電性能が不足し、一方、カーボンブラックの配合量が350重量部を超えると、経済性が悪くなる上、押出性、表面特性等が悪くなり望ましくない。
【0013】
2.化学架橋ポリエチレン絶縁層
本発明で用いられる化学架橋ポリエチレン絶縁層は、ポリエチレン系樹脂、有機過酸化物及び酸化防止剤等を絶縁層押出機に投入し(投入前にポリエチレン系樹脂に有機過酸化物や酸化防止剤を予めソーキングしたもの、又はポリエチレン系樹脂と有機過酸化物や酸化防止剤のマスターバッチを投入してもよい。)、押出機中で110〜150℃で加熱混練し、ダイより押出し、架橋管中で200〜350℃に加熱され化学架橋ポリエチレン絶縁層として形成される。
【0014】
上記ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体、直鎖状超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体、メタロセン触媒によって製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0015】
上記有機過酸化物としては例えば、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン−3等が使用される。有機過酸化物の使用量はポリエチレン系樹脂100重量部を基準として0.01〜10.0重量部が好ましい。
【0016】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂100重量部を基準として、0.001〜5重量部程度用いられる。
【0017】
3.外部半導電層
(1)剥離性半導電性樹脂組成物の成分
本発明の外部半導電層用剥離性半導電性樹脂組成物は、次の(a)〜(g)成分からなる。
(a)(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上の成分
(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量10〜50重量%、好ましくは15〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
酢酸ビニル含有量が10重量%未満であると、剥離性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えると引張強度が弱くなり、剥離作業がうまく行かず、これを用いて製造されたケーブルは、表面同士がくっつき望ましくない。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
【0018】
(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体成分
本発明で用いるエチレン−エチルアクリレート共重合体は、エチルアクリレート含有量10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
エチルアクリレート含有量が10重量%未満であると、剥離性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えたエチレン−エチルアクリレート共重合体は物性的には問題ないが製造が極めて困難である。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
【0019】
(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体成分
本発明で用いるエチレン−ブチルアクリレート共重合体は、ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
ブチルアクリレート含有量が10重量%未満であると、剥離性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えたエチレン−ブチルアクリレート共重合体は物性的には問題ないが製造が極めて困難である。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
本発明の(a)成分としては、上記(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体並びに(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種を単独であるいは1種以上をブレンドしたものを用いることができる。
【0020】
(b)直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体成分
(b)成分は、メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cmの直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体で、120℃以上の加動変形テストに耐える性質を外部半導電層に付与し、また、外部半導電層の高温度での押出加工を可能とする。
(b)成分のメルトマスフローレートが0.1g/10分未満であると、加工性が悪くなり、30.0g/10分を超えると引張り強度が弱くなり、望ましくない。
また、密度が0.870g/cm未満であると、120℃以上の加熱変形テストに耐えることができなく、0.944g/cmを超えると、柔軟性がなくなり望ましくない。
(b)成分の使用量は、(a)成分100重量部に対して55〜200重量部、好ましくは75〜150重量部である。(b)成分の使用量が55重量部未満であると、外部半導電層は120℃の加熱変形テストに耐えることができず、200重量部以上であると、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり望ましくない。
【0021】
(b)成分の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体の例としては、マルチサイト触媒又はシングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、ブテン−1及びへキセン−1から選択して使用される。
【0022】
(c)ポリプロピレン成分
(c)成分は、メルトマスフローレート0.5〜30.0g/10分、密度0.900〜0.920g/cmのポリプロピレンで、外部半導電層に耐熱性と剥離性を付与するために使用する。
(c)成分のメルトマスフローレートが0.5g/10分未満であると、加工性が悪く、30.0g/10分を超えると、引張り強度が弱くなり望ましくない。
また、密度が0.900g/cm未満のものは、耐熱性が悪くなり望ましくなく、0.920g/cmを超えるものは柔軟性が悪くなり望ましくない。
(c)成分の使用量は、(a)成分100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは15〜30重量部である。(c)成分の使用量が5重量部未満であると、耐熱性や剥離性が不十分となり、50重量部を超えると、柔軟性、耐寒性、カーボンブラックの充填性が悪くなり望ましくない。
本発明で使用するポリプロピレンは、上記物性の範囲のものであれば、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンとエチレン又は他のオレフィンとの共重合体であってもよい。
【0023】
(d)オルガノポリシロキサン成分
(d)成分は、シリコーンガムストック及びシリコーンオイルから選ばれたオルガノポリシロキサンである。
【0025】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状、網状、立体網状などのいずれのものであってもよいが、鎖状のものが好適である。このオルガノポリシロキサンの重合度は特に限定されないが、エチレン系樹脂との混練に支障をきたさない程度の重合度が必要であり、250以上の重合度が望ましい。本発明において使用されるオルガノポリシロキサンを含むものとしては、例えば、シリコーンゴムの引き裂き強度改良材として市販されているいわゆるシリコーンガムストックが挙げられる。
また、本発明で使用される直鎖状のオルガノポリシロキサンは、次式(B)
【0026】
【化4】
Figure 0004533506
(式中、Rは非置換または置換1価炭化水素基を表し、nは10以上の数を表す。)
で表され、一般にシリコーンオイルと呼称されるものである。該式中のRは、アルキル基、アリール基、及び水素から選ばれる基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、水素が代表的なものであるが、全ての基が同一基であっても、一部のRが別の基であってもよく、Rの一部がビニル基、水酸基であってもよい。nは10〜10000であり、100〜1000が好適である。nが10未満であるとポリエチレンとの混練が困難であり、nが10000を超えると成形が困難となり望ましくない。
【0027】
本発明で使用される式(B)のオルガノポリシロキサン系重合体の23℃における粘度は、10cSt以上、好ましくは1,000〜1,000,000cStのものが望ましい。10cSt未満の粘度の場合、加熱混練が難しく、また成形品の表面からオルガノポリシロキサン系重合体が滲み出す場合もある。
オルガノポリシロキサンの使用量は、(a)成分100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは2.0〜50重量部、さらに好ましくは2.0〜10重量部である。オルガノポリシロキサンの使用量が0.5重量部未満であると剥離性が発現せず、50重量部を超えると、加工性、引張強度等が低下し望ましくない。
【0028】
(e)カーボンブラック成分
(e)成分は、カーボンブラック、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等であり、これらの中ではケッチェンブラックが特に望ましい。
ケッチェンブラックは、オランダのAKZO NOBEL社で開発された導電性の非常にすぐれたカーボンブラックであり、ケッチェンブラックECとケッチェンブラックEC600JDの2種類があり、ケッチェンブラックECは従来の導電性カーボンブラックに比べ1/2〜1/3の添加量で同等の導電性が得られるので、半導電性樹脂組成物の引張強度、加工性、柔軟性、伸び、界面での平滑性等の物性に大きな影響を与えることなく混練による導電性能の低下が少なく、良好な品質の半導電性樹脂組成物の提供を可能ならしめる。
カーボンブラックの使用量は、(a)成分100重量部に対して、10〜400重量部、好ましくは10〜350重量部、さらに好ましくは40〜300重量部である。カーボンブラックの使用量が10重量部未満であると、電力ケーブルの外部半導電層として必要な体積固有抵抗値が100Ω・cm以上となり望ましくない。400重量部を超えると引張強度、加工性、柔軟性、伸び等が悪くなり望ましくない。
【0029】
(f)有機過酸化物成分
(f)成分は、有機過酸化物で、分子内に(O−O)結合をもち、10分間半減温度が100〜220℃の有機過酸化物が好ましい。該有機過酸化物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、直鎖状・エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンおよびオルガノポリシロキサン等の樹脂成分を相互にグラフトし、カーボンブラックの充填性、分散性をよくするものであり、外部半導電層の引張強度や耐熱性をよくするものであり、本発明においては、外部半導電層を引き剥がす時、切断されることなく剥離できる効果がある。
有機過酸化物の例としては、下記のものが挙げられる。ただし括弧内は分解温度(℃)である。
コハク酸パーオキシド(110)、ベンゾイルパーオキシド(110)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(113)、p−クロロベンゾイルパーオキシド(115)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(115)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(135)、t−ブチルパーオキシウラレート(140)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(140)、t−ブチルパーオキシアセテート(140)、ジ−t−ブチルジパーオキシフタレート(140)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(145)、ジクミルパーオキシド(150)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(155)、t−ブチルクミルパーオキシド(155)、t−ブチルヒドロパーオキシド(158)、ジ−t−ブチルパーオキシド(160)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(170)、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド(170)、p−メンタンヒドロパーオキシド(180)、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド(213)、クメンヒドロパーオキシド(149)。
これらの中では、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、クメンヒドロパーオキシド等が望ましい。
【0030】
有機過酸化物の使用量は、(a)成分100重量部に対して、0〜2.0重量部である。有機過酸化物は、ポリマー同士のグラフト反応を促進するものであるから、高温で長時間せん断応力をかける場合は、メカノケミストリー的にラジカルが発生するので、その使用量は0でよい。しかしながら、多量に添加すると、スコーチ、やけ等が発生するデメリットがあるので、有機過酸化物を2.0重量部以下の範囲で使用した方が短時間にやや低温でもグラフト反応がおこり、しかも、スコーチ、やけ等の発生がなく、良好な品質の外部半導電層が形成できるので望ましい。
有機過酸化物の使用量が2.0重量部を超えると、低温でグラフトさせても架橋反応が同時におこり、ゲルが発生し、表面が平滑な外部半導電層が得られなく、界面から水トリー、電気トリーを発生させ、電力ケーブルの寿命を短かくし望ましくない。
【0031】
(g)その他の成分
本発明においては、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分以外に必要に応じて、(g)その他の成分として、架橋助剤、酸化防止剤、加工助剤等を使用してもよい。
【0032】
(2)樹脂組成物の製造
上記(a)、(b)、(c)、(e)、(f)及び必要に応じて(g)成分は、例えば下記の順番、組合せでグラフト反応、配合、ソーキング等を行って製造することができる。
(イ)(a)と(d)を高温(220℃)で加熱混練し、(a)と(d)のグラフト体をつくり、これと(b)、(c)、(e)、(f)を外部半導電層製造用押出機に投入する。
(ロ)(a)と(d)を低温(160℃)で(f)の有機過酸化物を使用して、(a)と(d)のグラフト体をつくり、これと(b)、(c)、(e)、(g)を外部半導電層製造用押出機に投入する。
(ハ)(a)、(b)、(c)、(d)及び(f)を低温(165℃)で加熱混練し、ポリマー同士の相互グラフト体をつくり、これと(e)、(f)を外部半導電層製造用押出機に投入する。
(ニ)(a)、(f)をソーキングさせ、(b)、(c)、(d)、(e)を(a)中に高濃度に配合したマスターバッチ、(g)を(a)中に高濃度に配合したマスターバッチ等を外部半導電層製造用押出機に投入する。
【0033】
4.ジャケット層
本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルのジャケット層は、通常ポリ塩化ビニル樹脂組成物を外部半導電層上に押出被覆して形成される。ジャケット層の形成は、内部半導電層、化学架橋ポリエチレン絶縁層及び外部半導電層をタンデム方式押出しやコモン三層押出しして、その後その上にポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆する。
【0034】
5.化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル
本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルは、導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程により作ることができる。これには、上記内部半導電層用樹脂組成物及び化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を、二層同時押出装置により二層同時に押出被覆し、次いで外部剥離性半導電性樹脂組成物を被覆し、200〜350℃で加熱架橋されて化学架橋ポリエチレン絶縁層を形成させるタンデム方式、あるいは上記内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部剥離性半導電性樹脂組成物を三層同時押出装置により三層同時に押出被覆し、例えば架橋管に送り200〜350℃で加熱架橋反応を起こさせ化学架橋ポリエチレン絶縁層を形成させるコモン三層押出しで被覆し、その後ジャケット層を押出被覆することによってつくられる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例における試験方法は以下の通りである。
(1)界面平滑性:化学架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面を目視で判断した。
(2)外部半導電層の加熱変形率:外部半導電層の120℃での耐熱性をJISC3005の加熱変形試験法に準拠して、下記の方法で測定した。
(イ)試験片の作製
外部半導電層用樹脂組成物を180℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2mm、150mm×180mmのシートをつくり、幅15mm、長さ30mmに打抜き、試験片とした。
(ロ)測定方法
径5mmの半円状の棒の半円部に試験片を載せ、試験片の上に平行板を重ね、120℃のオーブン中に入れ30分間加熱した後、2kgの圧力を平行板の上から加え30分経過後、試験片の厚さを測定して、厚さの減少率を測定した。
(3)外部半導電層の剥離テスト:下記の方法で行った。
(イ)試験片の作製
化学架橋性ポリエチレン樹脂組成物を熱プレス成形機(180℃、30分)で厚さ1.5mm、長さ150mm、幅180mmの架橋シートを得た。一方、外部半導電層用樹脂組成物を180℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2.0mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得た。両シートを180℃の温度、15MPaの圧力で一体化し、3mmのシートとした。この二層シートから幅12.7mm、長さ120mmの試験片を打ち抜き試験片とした。
(ロ)試験方法
引張試験機を用い、23℃において200mm/分の引張速度で剥離試験を行い、外部半導電層を化学架橋ポリエチレン層に対し180℃の角度で引き剥すときの力を剥離強度(kg/0.5inch)とした。
(4)外部半導電層の引張強度:外部半導電層用樹脂組成物を180℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2.0mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得て、試験片とし、JIS K−6760により引張強度を測定した。
(5)外部半導電層の伸び:引張強度に用いた試験片を用いJIS K−6760により伸びを測定した。
(6)化学架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:化学架橋ポリエチレン絶縁層から試料を取り、110℃のキシレン中に24時間浸漬し、抽出残渣をゲル分率とした。
(7)押出加工性:外部半導電層用樹脂組成物のメルトマスフローレートをメルトインデクサーで温度190℃、荷重21.6kgの条件でメルトマスフローレートを測定して評価した(JIS K−6760)。
(8)体積固有抵抗値:外部半導電層用樹脂組成物の体積固有抵抗値をJIS K−6723の方法で測定した。
【0036】
実施例1
(A)内部半導電層用樹脂組成物の調製
酢酸ビニル含有量が28重量%、メルトマスフローレートが20.0g/10分、融点が91℃の高圧法エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.5重量部と、アセチレンブラック60重量部を配合し、これを130℃で10分間混練した後、直径3mm、高さ3mmの円柱状のペレットとした。次いでこのペレットに有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン0.5重量部を添加し、これを70℃で5時間ゆっくり攪拌することにより、ペレット内部まで有機過酸化物を均一に含浸させ、内部半導電層用樹脂組成物を調製した。
【0037】
(B)化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物の調製
高圧法低密度ポリエチレン(密度0.92g/cm、メルトマスフローレート3.2g/10分)100重量部に有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂社製 パーヘキシン25B)1.6重量部、酸化防止剤4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(シプロ化成社製 シーノックスBCS(Seenox BCS)0.18重量部を配合したポリエチレン樹脂組成物を絶縁層用樹脂組成物として準備した。
【0038】
(C)外部半導電層用樹脂組成物
次の(a)〜(g)からなる外部半導電層用樹脂組成物を調製した。
(a)成分:酢酸ビニル含有量28重量%、メルトマスフローレート20.0g/10分、密度0.938g/cmのエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部
(b)成分:メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.922g/cmの気相法低圧法により製造した直鎖状エチレン−ブテン−1共重合体70重量部
(c)成分:メルトマスフローレート0.9g/10分、密度0.900g/cmのポリプロピレン20重量部
(d)成分:23℃における粘度が300,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.0%のシリコーンガムストック5重量部
(e)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学社製)30重量部
(f)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂社製 パーヘキシン25B)0.3重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
【0039】
(D)コモン三層押出装置の準備
ダイプレートにそれぞれ150メッシュ、250メッシュ、120メッシュのスクリーンパックを設置した3台の押出機を準備し、これらを連結することにより、内部半導電層押出機、絶縁層押出機および外部半導電層押出機となるように順次配置したコモン三層クロスヘッドを有する押出装置とした。
【0040】
(E)化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造
上記(A)〜(C)で調製した内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン樹脂組成物及び外部半導電層用樹脂組成物の各成分をそれぞれ三層コモン押出装置の内部半導電層押出機、化学架橋ポリエチレン層押出機及び外部半導電層押出機に供給した。
これらの各成分を、内部半導電層押出機では130℃、化学架橋ポリエチレン層押出機では130℃、外部半導電層押出機では160℃で加熱混練した後、それぞれ三層コモンクロスヘッドのダイスより硬銅撚線導体上に内部半導電層の厚みが1mm、化学架橋ポリエチレン絶縁層の厚みが4mm、外部半導電層の厚みが1mmとなるように同時に押出した。
次いで、230℃に加熱した架橋管で架橋反応を完結し、冷却後、ポリ塩化ビニルコンパウンドを厚み3mmとなるように被覆しジャケット層とし、本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを製造した。
【0041】
本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの性能評価結果を次に示す。
(1)界面平滑性:化学架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面は、平滑であり直径300μmを超える突起は認められなかった。
(2)外部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.0%であり耐熱性は十分であった。
(3)外部半導電層の剥離テスト:剥離強度は、1.3kg/0.5inchであり剥離性は十分であった。
(4)外部半導電層の引張強度:引張強度は、15.2MPaであり、外部半導電層を剥離するとき、引きちぎれないことを示した。
(5)外部半導電層の伸び:伸びは、434%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)化学架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:ゲル分率は82%であり、十分化学架橋しており、耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、55g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:体積固有抵抗値は、35Ω・cmであり適切な数値であった。
【0042】
実施例2
(A)内部半導電層用樹脂組成物の調製
エチルアクリレート含有量が23重量%、メルトマスフローレートが10g/10分、融点が98℃の高圧法エチレン−エチルアクリレート共重合体100重量部に対して、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.5重量部と、アセチレンブラック80重量部を配合し、これを130℃で10分間混練した後、直径3mm、高さ3mmの円柱状のペレットとした。次いでこのペレットに有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン0.5重量部を添加し、これを70℃で5時間ゆっくり攪拌することにより、ペレット内部まで有機過酸化物を均一に含浸させ、内部半導電層用樹脂組成物を調製した。
【0043】
(B)化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物の調製
高圧法低密度ポリエチレン(密度0.920g/cm、メルトマスフローレート3.2g/10分)100重量部に有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂社製 パーヘキシン25B)1.6重量部、酸化防止剤4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(シプロ化成社製 シーノックスBCS(Seenox BCS))0.18重量部を配合したポリエチレン樹脂組成物を絶縁層用樹脂組成物として調製した。
【0044】
(C)外部半導電層用樹脂組成物の調製
次の(a)〜(g)からなる外部半導電層用樹脂組成物を調製した。
(a)成分:エチルアクリレート含有量32重量%、メルトマスフローレート10.0g/10分、密度0.941g/cmのエチレン−エチルアクリレート共重合体 100重量部
(b)成分:メルトマスフローレート1.8g/10分、密度0.935g/cm、シングルサイト触媒を用いて溶液法でつくった直鎖状エチレン−ヘキセン−1共重合体 150重量部
(c)成分:メルトマスフローレート2.5g/10分、密度0.900g/cm、エチレン5重量%含有のプロピレン−エチレン共重合体40重量部
(d)成分:23℃における粘度が150,000cStで、メチルビニルシリコーン含量0.7%のシリコーンガムストック45重量部
(e)成分:ファーネスブラック(MMMカーボン社製 エンサコ250G)130重量部
(f)成分:有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂社製 パーヘキシン25B)1.8重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
【0045】
(D)各層押出機の準備
ダイプレートにそれぞれ150メッシュ、250メッシュ、120メッシュのスクリーンパックを設置した3台の押出機を準備し、それぞれを内部半導電層押出機、絶縁層押出機および外部半導電層押出機とした。
【0046】
(E)化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造
上記(A)〜(C)に準備した内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン樹脂組成物及び外部半導電層用樹脂組成物の各成分をそれぞれ三層コモン押出装置の内部半導電層押出機、化学架橋ポリエチレン層押出機及び外部半導電層押出機に供給した。
これらの各成分を、内部半導電層押出機では130℃、化学架橋ポリエチレン層押出機では130℃、外部半導電層押出機では160℃で加熱混練したのちそれぞれの押出機のクロスヘッドのダイスより硬銅撚線導体上に内部半導電層の厚みが1mm、化学架橋ポリエチレン絶縁層の厚みが4mm、外部半導電層の厚みが1mmとなるように同時に被覆した。
次いで、230℃に加熱した架橋管で架橋反応を完結し、冷却後、ポリ塩化ビニルコンパウンドを厚み3mmとなるように被覆しジャケット層とし本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを完成させた。本発明の化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの性能評価の実施例1に示した試験方法と同様な試験方法で行なった。その結果を以下に示す。
【0047】
(1)界面平滑性:化学架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面には平滑であり直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)外部半導電層の耐熱性:減少率は1.4%であり耐熱性は十分であった。
(3)外部半導電層の剥離テスト:剥離強度は1.4kg/0.5inchであり剥離性は十分であった。
(4)外部半電層の引張強度:12.8MPaであり、外部半導電層を剥離するとき、引きちぎれないことを示した。
(5)外部半導電層の伸び:381%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)化学架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:82%であり、十分化学架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレート(温度190℃、荷重21.6kg)は45g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:35Ω・cmであり適切な値であった。
【0048】
実施例3
実施例1の外部半導電層樹脂組成物に代えて、下記の(a)〜(g)からなる樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様な実験を行った。
(a)成分:ブチルアクリレート含有量17重量%、メルトマスフローレート5.0g/10分、密度0.937g/cmのエチレン−ブチルアクリレート共重合体100重量部
(b)成分:メルトマスフローレート20.0g/10分、密度0.900g/cmの気相法低圧法でつくった直鎖状エチレン−ヘキセン−1共重合体100重量部
(c)成分:メルトマスフローレート1.2g/10分、密度0.910g/cmのポリプロピレン7重量部
(d)成分:23℃における粘度が3,000cStで、メチルビニルシリコーン含量0.8%のジメチルポリシロキサンオイル30重量部
(e)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)30重量部
(f)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂社製 パーヘキシン25B)1.8重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
【0049】
その結果を以下に示す。
(1)界面平滑性:化学架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面には平滑であり直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)外部半導電層の耐熱性:厚さの減少率は1.1%であり耐熱性は十分であった。
(3)外部半導電層の剥離テスト:剥離強度は1.8kg/0.5inchであり剥離性は十分であった。
(4)外部半電層の引張強度:10.6MPaであり、外部半導電層を剥離するとき、引きちぎれないことを示した。
(5)外部半導電層の伸び:421%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)化学架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:82%であり、十分化学架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレート(温度190℃、荷重21.6kg)は62g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:53Ω・cmであり適切な値であった。
【0050】
比較例1
実施例1において(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、酢酸ビニル含有量8.0%のEVAに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の柔軟性伸びが悪化した。
【0051】
比較例2
実施例1において(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、酢酸ビニル含有量55%のEVAを代替した以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の引張強度が弱くなり、外部半導電層の剥離作業がうまく行かなかった。
【0052】
比較例3
実施例1において(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、メルトマスフローレートが0.8g/10分ののEVAに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の押出加工性、柔軟性、伸び等が不十分であった。
【0053】
比較例4
実施例1において(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、メルトマスフローレートが120g/10分ののEVAに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の引張強度、耐熱性が不十分であった。
【0054】
比較例5
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトマスフローレートが0.08g/10分のものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の加工性が悪化した。
【0055】
比較例6
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトマスフローレートが35.0g/10分のものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の引張強度が弱くなった。
【0056】
比較例7
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体を、密度が0.85g/cmのものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の120℃以上の加熱変形率が悪化した。
【0057】
比較例8
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体を、密度が0.948g/cmのものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の柔軟性が悪化した。
【0058】
比較例9
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体の使用量を50重量部に代えた以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の120℃以上の加熱変形率が悪化した。
【0059】
比較例10
実施例1において(b)のエチレン−ブテン−1共重合体の使用量を220重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の柔軟性、伸び、カーボンブラックの充填性が悪化した。
【0060】
比較例11
実施例1において(c)のポリプロピレンを、メルトマスフローレートが0.3g/10分のものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の加工性が悪化した。
【0061】
比較例12
実施例1において(c)のポリプロピレンを、メルトマスフローレートが33.0g/10分のものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の引張強度が弱くなった。
【0062】
比較例13
実施例1において(c)のポリプロピレンを、メルトマスフローレートが2.0g/10分で、密度が0.895g/cmのものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の120℃以上の加熱変形率が悪化した。
【0063】
比較例14
実施例1において(c)のポリプロピレンを、メルトマスフローレートが5.4g/10分で、密度が0.925g/cmのものに代替した以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の柔軟性が悪化した。
【0064】
比較例15
実施例1において(c)のポリプロピレンの使用量を3重量部に代えた以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の加熱変形率と剥離性が不十分であった。
【0065】
比較例16
実施例1において(c)のポリプロピレンの使用量を55重量部に代えた以外は実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の柔軟性、耐寒性が悪化した。
【0066】
比較例17
実施例1において(d)のシリコーンガムストックの使用量を0.3重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の平面平滑剥離性が不十分であった。
【0067】
比較例18
実施例1において(d)のシリコーンガムストックの使用量を55重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の表面の平滑性が悪化し、引張強度が不十分であった。
【0068】
比較例19
実施例1において(e)のケッチェンブラックの使用量を8.0重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、半導電層の体積固有抵抗値が200Ω・cmであった。
【0069】
比較例20
実施例1において(e)のケッチェンブラックの使用量を420重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、半導電層の引張強度、加工性、柔軟性、伸びが不十分であった。
【0070】
比較例21
実施例1において(f)の有機過酸化物の量を10.0重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、半導電層の表面に多数の突起が発生し平滑な表面が得られなかった。
【0071】
【発明の効果】
本発明は、化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの外部半導電層として用いる剥離性半導電性樹脂組成物の構成において、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、オルガノポリシロキサン、カーボンブラック及び必要に応じて有機過酸化物を特定量づつ使用しているので、適切な半導電性、剥離性、引張強度、密着性、加工性、表面平滑性、耐寒性、耐熱性等においてすぐれた効果を発現する。

Claims (4)

  1. 導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、化学架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの外部半導電層として用いる下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分からなる剥離性半導電性樹脂組成物。
    (a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上100重量部
    (b)メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cmエチレン−ブテン−1共重合体及びエチレン−ヘキセン−1共重合体から選ばれた直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体55〜200重量部
    (c)メルトマスフローレート0.5〜30.0g/10分、密度0.900〜0.920g/cmのポリプロピレン5〜50重量部
    (d)シリコーンガムストック及びシリコーンオイルから選ばれたオルガノポリシロキサン0.5〜50重量部
    (e)カーボンブラック10〜400重量部
    (f)有機過酸化物0〜2.0重量部
  2. 導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び請求項1に記載の剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆した後、ジャケット層を押出被覆する化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法であって、
    導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程は、上記内部半導電層用樹脂組成物及び化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を被覆する工程が二層同時押出装置により行われ、次いで上記剥離性半導電性樹脂組成物を被覆する工程を行った後、200〜350℃に加熱して化学架橋を行うことを特徴とする化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法。
  3. 導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び請求項1に記載の剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆した後、ジャケット層を押出被覆する化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法であって、
    導体上に内部半導電層用樹脂組成物、化学架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び剥離性半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程が、三層同時押出装置により行われ、その後、200〜350℃に加熱して化学架橋を行うことを特徴とする化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法。
  4. 請求項2または3の方法によって製造される化学架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル。
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