JP4448589B2 - 水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物及びこれを導体上に被覆してなる水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルは、内部から外部に向けて導体、内部半導電層、有機過酸化物によって化学架橋させた架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層から構成されてきた。
近年、架橋ポリエチレン絶縁層を従来の有機過酸化物による化学架橋方法による架橋ポリエチレンに代えて水架橋方法で形成された架橋ポリエチレンを用いる方法が低電圧分野の電力ケーブルに用いられるようになってきた。この理由は、化学架橋方法による電力ケーブルの製造では、架橋装置が高価であり、これとは反対に、水架橋方法による電力ケーブルの製造では、架橋装置が比較的安価ですむからである。
【0003】
ところで、従来の化学架橋方法による電力ケーブルにおいて、内部半導電層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−エチルアクリレート共重合体にカーボンブラックが配合された樹脂組成物でつくられている。この内部半導電層用樹脂組成物を、水架橋方法による水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層用として用いると、下記の不都合が生じる。
【0004】
(イ)化学架橋方法で電力ケーブルを製造する場合は、絶縁層用の化学架橋性ポリエチレン樹脂組成物は比較的に低温(約120〜150℃)で押出機より押出されるので内部半導電層も上記温度(約120〜150℃)に耐える程度の耐熱性があれば十分であるが、水架橋方法で水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを製造する場合は、絶縁層用の水架橋性ポリエチレン樹脂組成物は、比較的に高温(約210〜250℃)で押出機中で加熱混練しないと、ビニルシランのグラフト反応がおこらないので、かかる高温で加熱混練するが、この場合、内部半導電層も上記の高温(約210〜250℃)にさらされるか又は内部半導電層用樹脂組成物を高温で加熱混練して、押出被覆しなければならないので、化学架橋方法で用いる内部半導電層用樹脂組成物では、溶融粘度が低くなりすぎ、内部半導電層を形成したとき、層の厚さが不均一になったり、表面に突起が生じ、そこから水トリーが発生したり、架橋ポリエチレン絶縁層を部分的に破壊し、電力ケーブルの電気特性を低下させ、又電力ケーブルの寿命を短くする弊害がある。
【0005】
(ロ)近年、電力ケーブルの耐熱性の要求が高まっており、従来の化学架橋方法による電力ケーブルに用いる内部半導電層用樹脂組成物は、耐熱性が不十分であり、耐熱性をよくするため、内部半導電層用樹脂組成物に化学架橋剤を配合した場合は、高温(約210〜250℃)で押出すので、早期架橋がおこり、押出しが困難となり、又、ゲルやブツの発生のため、内部半導電層の電気特性が悪くなり、電力ケーブルの特性が悪化し、寿命も短くなり、望ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
内部半導電層は、外部からの屈曲や、ヒートサイクル等により導体や水架橋ポリエチレン絶縁層との部分的剥離や空隙の発生により生ずるコロナ劣化や、他の絶縁劣化を防止するため体積固有抵抗値を100Ω・cm程度の導電性にする必要がある。内部半導電層を上記の体積固有抵抗値にし、かつ導体や水架橋ポリエチレン絶縁層との密着性をよくし、外部からの屈曲や、ヒートサイクル等に追随し、部分的剥離や空隙の発生を防ぐには柔軟で、導体や水架橋ポリエチレンに対して密着性がよく、かつ大量のカーボンブラックの充填にもかかわらず機械的強度、伸び、柔軟性、加工性が低下しないポリマーが必要であり、従来代表的なものとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、アイオノマー、酸変性ポリエチレン等が使用されてきた。しかし上記のポリマーは、水架橋ポリエチレン層との密着性は良好であるが、耐熱性、押出加工時の安定性が不十分である。
【0007】
本発明は、絶縁層を水架橋ポリエチレンで構成した電力ケーブルの内部半導電層として必要な下記の条件を満たす樹脂組成物及びこれを用いてつくった水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの提供を課題とする。
(1)内部半導電層用樹脂組成物は半導電性で、体積固有抵抗値が100Ω・cm以下。
(2)電力ケーブルを屈曲したり、ヒートサイクルをかけたとき、導体や水架橋ポリエチレン絶縁層との部分的剥離や空隙が発生しないための柔軟性、伸びを維持するために、伸び率が100%以上。
(3)水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面が平滑であり、微小な突起がない。
(4)210〜250℃の高温で押出される水架橋ポリエチレン絶縁層と同様の高温での押出加工が可能。
(5)耐寒性がある。
(6)有機過酸化物による架橋が行われなくとも120℃の加熱変形に耐える耐熱性のために、120℃の加熱変形率が40%以下。
(7)導体や水架橋ポリエチレン絶縁層との密着性がよい。
【0008】
上記条件を満足する内部半導電性樹脂組成物として、本発明者等は、先に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(これは、エチレン−エチルアクリレート共重合体又はエチレン−ブチルアクリレート共重合体で置換してもよいし、これらの1種以上を混合してもよい。)、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体、オルガノポリシロキサン、カーボンブラック及び有機過酸化物からなる樹脂組成物を発明し、特願平11−162230号として特許出願した。
この樹脂組成物は、上記7つの条件を満たしているものの、近年、耐熱性、密着性、高温での押出加工性のレベルが高い物性の内部半導電性樹脂組成物が要求されてきている。従って、本発明は、本発明者等の先の発明(特願平11−162230号)を更に改良し、耐熱性、密着性、高温での押出加工性のレベルを更に向上させた水架橋ポリエチレン絶縁ケーブルの内部半導電性層用の樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、先に発明し、特許出願した特願平11−162230号に記載されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層用密着性半導電性樹脂組成物の耐熱性、密着性、高温での押出加工性のレベルを更に向上させるため、水架橋技術を適用し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明は、導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる半導電性水架橋性樹脂組成物であって、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分からなり、水架橋される内部半導電層の耐熱性、密着性、及び高温での押出加工性を向上させたことを特徴とする密着性半導電性水架橋性樹脂組成物である。
(a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上100重量部
(b)下記の式(A)
【0010】
【化3】
(式中、R1は脂肪族不飽和炭化水素基、R2は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、0≦x<1、0.5<y<3、1<x+y<3、0<a≦1、0.5≦b≦3である。)
で表されるオルガノポリシロキサン0.5〜50重量部
(c)カーボンブラック7.0〜350重量部
(d)不飽和アルコキシシラン0.5〜15重量部
(e)有機過酸化物0.05〜3.0重量部
(f)シラノール縮合触媒0.01〜15重量部
【0011】
また、本発明の第2の発明は、導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる半導電性水架橋性樹脂組成物であって、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)成分からなり、水架橋される内部半導電層の耐熱性、密着性、及び高温での押出加工性を向上させたことを特徴とする密着性半導電性水架橋性樹脂組成物である。
(a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれる1種又は1種以上100重量部
(b)下記の式(A)
【0012】
【化4】
(式中、R1は脂肪族不飽和炭化水素基、R2は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、0≦x<1、0.5<y<3、1<x+y<3、0<a≦1、0.5≦b≦3である。)
で表されるオルガノポリシロキサン0.5〜50重量部
(c)カーボンブラック7.0〜350×(1+Q/100)重量部
(d)不飽和アルコキシシラン0.5〜15×(1+Q/100)重量部
(e)有機過酸化物0.05〜3.0×(1+Q/100)重量部
(f)シラノール縮合触媒0.01〜15×(1+Q/100)重量部
(g)メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cm3の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体0〜200重量部
(但し、Qは(g)成分の配合量(重量部)である。)
【0013】
また、本発明の第3の発明は、上記第1の発明において、(a)及び(b)からなる樹脂組成物と(c)のカーボンブラック成分を150〜200℃で加熱混練し、これに(d)の不飽和アルコキシシラン、(e)の有機過酸化物及び(f)のシラノール縮合触媒を配合し、次いで、200〜250℃で加熱混練し不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトさせて作った導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物である。
【0014】
さらに、本発明の第4の発明は、上記第2の発明において、(a)、(b)及び(g)からなる樹脂組成物と(c)のカーボンブラック成分を150〜200℃で加熱混練し、これに(d)の不飽和アルコキシシラン、(e)の有機過酸化物及び(f)のシラノール縮合触媒を配合し、次いで、200〜250℃で加熱混練し不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトさせて作った導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物である。
【0015】
さらに、本発明の第5の発明は、導体上に上記第1乃至第4の発明のいずれかに記載の内部半導電層用密着性内部半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程が、上記内部半導電層用樹脂組成物及び水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を被覆する工程を二層押出装置により行われ、かつ、該水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物は、モノシル方式で絶縁層押出機中で調製され、次いで上記外部半導電性樹脂組成物を被覆する工程を行うことを特徴とする水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法である。
【0016】
さらに、本発明の第6の発明は、導体上に上記第1乃至第4の発明のいずれかに記載の内部半導電層用密着性内部半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程が三層同時押出装置により行われ、かつ、該水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物は、モノシル方式で三層同時押出装置の絶縁層押出機中で調製されることを特徴とする水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法である。
【0017】
さらに、本発明の第7の発明は、上記第5あるいは第6の発明に記載の方法によって製造される水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.導体
本発明で用いられる導体は、通常化学架橋ポリエチレン絶縁電線において使用されるものならば何でもよく、例えば、軟銅、半硬銅、硬銅、アルミニウム等を素材とする導体や撚線導体等が好ましい。
【0019】
2.内部半導電層
(1)内部半導電性樹脂組成物の成分
本発明の内部半導電層用密着性半導電性樹脂組成物は、次の(a)〜(f)成分からなる。
(a)(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれる1種あるいは1種以上の成分
(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量10〜50重量%、好ましくは15〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
酢酸ビニル含有量が10重量%未満であると、密着性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えると耐熱性が悪くなり、電力ケーブルの寿命を短くし望ましくない。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
【0020】
(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体
本発明で用いるエチレン−エチルアクリレート共重合体は、エチルアクリレート含有量10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
エチルアクリレート含有量が10重量%未満であると、密着性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えたエチレン−エチルアクリレート共重合体は物性的には問題ないが製造が極めて困難である。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
【0021】
(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体
本発明で用いるエチレン−ブチルアクリレート共重合体は、ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、メルマストフローレート1.0〜100.0g/10分の特性を持つ。
ブチルアクリレート含有量が10重量%未満であると、密着性、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり、界面状態、加工性等が悪くなり界面から水トリー、電気トリーが発生し電力ケーブルの寿命が短かくなり望ましくなく、50重量%を超えたエチレン−ブチルアクリレート共重合体は物性的には問題ないが製造が極めて困難である。
また、メルトマスフローレートが1.0g/10分未満であると、加工性、柔軟性、伸び等が不十分であり、100.0g/10分を超えると、引張強度、耐熱性等が悪くなり望ましくない。
【0022】
本発明の(a)成分としては、上記(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)エチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上をブレンドしたものを用いることができる。
【0023】
(b)オルガノポリシロキサン成分
(b)成分は、下記の式(A)
【0024】
【化5】
(式中、R1は脂肪族不飽和炭化水素基、R2は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、0≦x<1、0.5<y<3、1<x+y<3、0<a≦1、0.5≦b≦3である。)
で表されるオルガノポリシロキサンを含むものである。
【0025】
前記式(A)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、R1としては、例えばビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などを、またR2基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、シクロヘキシル基、シクロブチル基などのシクロアルキル基や、これら炭化水素基の炭素原子に結合した水素を部分的にハロゲン原子、シアノ基、メルカプト基などで置換した基などをそれぞれ挙げることができ、これらはその同種又は異種の組み合わせでもよい。また、aが0であるとエチレン系樹脂との反応が起こらず望ましくないし、また1を超えると本発明の組成物が硬くなりすぎ、柔軟性、加工性が低下し望ましくない。bは0.5以上で、3以下であることが必要であり、好ましくは1〜2である。yが0.5以下であると本発明の組成物の混練が困難で加工性が低下するし、3以上であると本発明の組成物より製造されたケーブルが硬くなりすぎて望ましくない。
【0026】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサンの分子構造は式(A)の範囲内であれば、直鎖状、分岐鎖状、環状、網状、立体網状などのいずれのものであってもよいが、鎖状のものが好適である。
このオルガノポリシロキサンの重合度は特に限定されないが、エチレン系樹脂との混練に支障をきたさない程度の重合度が必要であり、250以上の重合度が望ましい。
本発明において使用されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、シリコーンゴムの引き裂き強度改良材として市販されているいわゆるシリコーンガムストックが挙げられる。また、本発明で使用される直鎖状のオルガノポリシロキサンは、次式(B)
【0027】
【化6】
(式中、Rは非置換または置換1価炭化水素基を表し、nは10以上の数を表す。)
で表され、一般にシリコーンオイルと呼称されるものである。該式中のRは、アルキル基、アリール基、及び水素から選ばれる基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、水素が代表的なものであるが、全ての基が同一基であっても、一部のRが別の基であってもよく、Rの一部がビニル基、水酸基であってもよい。nは10〜10000であり、100〜1000が好適である。nが10未満であるとポリエチレンとの混練が困難であり、nが10000を超えると成形が困難となり望ましくない。
【0028】
本発明で使用される式(B)のオルガノポリシロキサン系重合体の23℃における粘度は、10cSt以上、好ましくは1,000〜1,000,000cStのものが望ましい。10cSt未満の粘度の場合、加熱混練が難しく、また成形品の表面からオルガノポリシロキサン系重合体が滲み出す場合もある。
オルガノポリシロキサンの使用量は、(a)成分100重量部に対して、0.5〜50重量部である。オルガノポリシロキサンの使用量が0.5重量部未満であると他の樹脂成分やカーボンブラックの分散性が不十分となり、50重量部を超えると、加工性、引張強度等が低下し望ましくない。
【0029】
(c)カーボンブラック成分
(c)成分は、カーボンブラック、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等であり、これらの中ではケッチェンブラックが特に望ましい。
ケッチェンブラックは、オランダのAKZO NOBEL社で開発された導電性の非常にすぐれたカーボンブラックであり、ケッチェンブラックECとケッチェンブラックEC600JDの2種類があり、ケッチェンブラックECは従来の導電性カーボンブラックに比べ1/2〜1/3の添加剤で同等の導電性が得られるので、半導電性樹脂組成物の引張強度、加工性、柔軟性、伸び、界面での平滑性等の物性に大きな影響を与えることなく混練による導電性能の低下が少なく、良好な品質の半導電性樹脂組成物の提供を可能ならしめる。
カーボンブラックの使用量は、(a)成分100重量部に対して、本発明の第1の発明の場合、7.0〜350重量部、好ましくは40〜300重量部であり、本発明の第2の発明の場合、7.0〜350×(1+Q/100)重量部、好ましくは40〜300×(1+Q/100)重量部であるである。なお、ここでQは、(g)成分の配合量(重量部)を示し、以下も同様である。カーボンブラックの使用量が7.0重量部未満であると、電力ケーブルの内部半導電層として必要な体積固有抵抗値が100Ω・cm以上となり望ましくない。上記の上限値を超えると、内部半導電層の柔軟性、伸びが低下し、望ましくない。
【0030】
(d)不飽和アルコキシシラン成分
(d)成分の不飽和アルコキシシランとしては、一般式:
RR’SiY2
(式中、Rは、ポリエチレン系樹脂中に発生した遊離ラジカルと反応性を有する脂肪族不飽和炭化水素基またはハイドロカーボンオキシ基、Yはアルコキシ基、R’は水素原子またはオレフィン性不飽和基を含まない一価の炭化水素基を表す。)
で表されるアルコキシシラン化合物である。式中、Rの脂肪族不飽和炭化水素基としては、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基またはシクロペンタジエニル基が挙げられ、ビニル基が特に好ましい。Yは、例えばメトキシ基、エトキシ基またはブトキシ基が挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランは、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランである。
不飽和アルコキシシランの使用量は、(a)成分100重量部に対して、本発明の第1の発明の場合、0.5〜15重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部であり、本発明の第2の発明の場合、0.5〜15×(1+Q/100)重量部、好ましくは0.5〜5.0×(1+Q/100)重量部である。不飽和アルコキシシランの使用量が0.5重量部未満であると、内部半導電層の架橋度が低くなり、耐熱性、密着性、高温での押出加工性が不十分となる。一方、上記の上限値を超えて多量配合しても架橋度の向上が顕著に表れず、不飽和アルコキシシランは高価であるのでコストアップとなり、絶縁層と内部半導電層との間でガス化し、ボイドを発生させケーブルの品質を悪くし、望ましくない。
【0031】
(e)有機過酸化物成分
(e)成分の有機過酸化物は、加熱反応条件下において、樹脂成分に遊離ラジカル部位を生成させるものであり、反応温度において6分より短い半減期、好ましくは1分より短い半減期を有する任意の化合物を使用できる。有機過酸化物の代表的なものとしては、下記のものが挙げられる。ただし、括弧内は分解温度である。
コハク酸パーオキシド(110)、ベンゾイルパーオキシド(110)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(113)、p−クロロベンゾイルパーオキシド(115)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(115)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(135)、t−ブチルパーオキシラウレート(140)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(140)、t−ブチルパーオキシアセテート(140)、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート(140)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(145)、ジクミルパーオキシド(150)、2,5−ジ−メチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(155)、t−ブチルクミルパーオキシド(155)、t−ブチルヒドロパーオキシド(158)、ジ−t−ブチルパーオキシド(160)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(170)、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド(170)、p−メンタンヒドロパーオキシド(180)、2,5−ジメチルヘキサン−2,5ジヒドロパーオキシド(213)、クメンヒドロパーオキシド(149)。
これらの中では、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、クメンヒドロパーオキシド等が望ましい。
【0032】
有機過酸化物の使用量は、(a)成分100重量部に対して、本発明の第1の発明の場合、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であり、本発明の第2の発明の場合、0.05〜3.0×(1+Q/100)重量部、好ましくは0.05〜2.0×(1+Q/100)重量部である。有機過酸化物の使用量が0.05重量部未満であると、不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトさせる率が低くなり、架橋度が不足し、内部半導電層の耐熱性、密着性、高温での押出加工性が不十分となる。一方、上記の上限値を超えて多量配合すると、ゲルを発生し、表面が平滑な内部半導電層が得られなく、界面から水トリー、電気トリーを発生させ、電力ケーブルの寿命を短かくし望ましくない。
【0033】
(f)シラノール縮合触媒成分
(f)成分のシラノール縮合触媒は、本発明の樹脂成分にグラフトされた不飽和アルコキシシラン同士を加水分解し、脱水縮合反応を促進する触媒であり、その例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオリテート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、カプリル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ−イソプロピルチタン−エチルアミン、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
シラノール縮合触媒の使用量は、(a)成分100重量部に対して、本発明の第1の発明の場合、0.01〜15重量部、好ましくは0.03〜3.0重量部であり、本発明の第2の発明の場合、0.01〜15×(1+Q/100)重量部、好ましくは0.03〜3.0×(1+Q/100)重量部である。シラノール縮合触媒の使用量が0.01重量部未満であると、水架橋反応が促進されず、一方、上記の上限値を超えて使用しても、水架橋反応が顕著に向上するものでなく、かえって内部半導電層の電気的特性を悪化させ、望ましくない。
【0034】
(g)直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体成分
(g)成分は、必要に応じて配合される成分であり、メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cm3の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体である。(g)成分を配合すると、120℃以上の加熱変形耐性が更に増し、また、内部半導電層の高温度での押出加工を更に良くする効果がある。
(g)成分のメルトマスフローレートが0.1g/10分未満であると、加工性が悪くなり、30.0g/10分を超えると引張り強度が弱くなり、望ましくない。
また、密度が0.870g/cm3未満であると、120℃以上の加熱変形テストに耐えることができなく、0.944g/cm3を超えると、柔軟性がなくなり望ましくない。
(g)成分の使用量は、(a)成分100重量部に対して、0〜200重量部、好ましくは50〜200重量部である。(g)成分の使用量が0重量部より増加するほど、例えば、好ましくは50重量部以上配合すると内部半導電層の120℃の加熱変形耐性は良くなるが、200重量部を超えると、柔軟性、伸び、カーボンブラック充填性が悪くなり望ましくない。
【0035】
(g)成分の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体の例としては、マルチサイト触媒又はシングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が選択して使用される。
【0036】
(h)その他成分
本発明においては、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)成分以外に必要に応じて、(h)その他成分として、本発明の特性を損なわない範囲で、その目的に応じて、架橋助剤、老化防止剤、加工助剤、他のポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、天然ゴム、合成ゴム等を使用してもよい。
【0037】
(2)樹脂組成物の製造
上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び必要に応じて(g)及び(h)成分は、例えば下記の順番、組合せでグラフト反応、配合、ソーキング等を行って製造することができる。
【0038】
(イ)(a)から選択された樹脂成分、(b)からなる樹脂成分、任意樹脂成分としての(g)、カーボンブラック(c)を押出機又はバンバリーで150〜200℃で加熱混練し、これに不飽和アルコキシシラン(d)、有機過酸化物(e)及びシラノール縮合触媒(f)を配合し、次いで200〜250℃で加熱混練し、不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトし、かつカーボンブラック(c)とシラノール縮合触媒(f)を樹脂成分中に均一に配合する方法。
【0039】
(ロ)(a)から選択された樹脂成分、(b)からなる樹脂成分、任意樹脂成分としての(g)、カーボンブラック(c)及びシラノール縮合触媒(f)を押出機又はバンバリーで150〜200℃で加熱混練し、これに不飽和アルコキシシラン(d)及び有機過酸化物(e)を配合し、次いで200〜250℃で加熱混練し、不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトし、かつカーボンブラック(c)とシラノール縮合触媒(f)を樹脂成分中に均一に配合する方法。
【0040】
(ハ)(a)から選択された樹脂成分、(b)からなる樹脂成分、任意樹脂成分としての(g)を押出機又はバンバリーで150〜200℃で加熱混練し、これに不飽和アルコキシシラン(d)及び有機過酸化物(e)を配合し、次いで200〜250℃で加熱混練し、不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトして得た水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト樹脂を準備する。一方、カーボンブラック(c)のマスターバッチ及びシラノール縮合触媒(f)のマスターバッチを準備する。
内部半導電層を製造するとき、上記3成分を内部半導電層用押出機のホッパーに投入する。
【0041】
(ニ)(a)から選択された樹脂成分、(b)からなる樹脂成分、任意樹脂成分としての(g)に、不飽和アルコキシシラン(e)をソーキングさせた樹脂及び(a)から選択された樹脂成分に有機過酸化物(f)をソーキングさせた樹脂を押出機又はバンバリーで200〜250℃で加熱混練し、不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトして得た水架橋性不飽和アルコキシシラングラフト樹脂を準備する。一方、カーボンブラック(c)のマスターバッチ及びシラノール縮合触媒(f)のマスターバッチを準備する。
内部半導電層を製造するとき、上記3成分を内部半導電層用押出機のホッパーに投入する。
【0042】
(ホ)(a)から選択された樹脂成分、(b)からなる樹脂成分、任意樹脂成分としての(g)、カーボンブラック(c)のマスターバッチ、不飽和アルコキシシラン(d)、有機過酸化物(e)及びシラノール縮合触媒(f)を同時に内部半導電層用押出機のホッパーに投入する。
【0043】
(ヘ)上記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)及び(ホ)において、酸化防止剤(h)をそのまま、又はマスターバッチ、又は不飽和アルコキシシラン(d)及び有機過酸化物(e)とのミックスチャー(混合物)として、他の成分に配合する方法。
【0044】
3.水架橋ポリエチレン絶縁層
本発明で用いられる水架橋ポリエチレン絶縁層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和アルコキシシラン、有機過酸化物、酸化防止剤、シラノール縮合触媒、その他の添加剤等を絶縁層押出機に投入し、これらの成分のすべてを押出機の胴部の最初の部分で混合し、混合が完了したならば、該混合物を同一押出機の胴部の次の部分で不飽和アルコキシシランがポリエチレン系樹脂にグラフト反応を完了するまで約210〜250℃の高温で加熱混練し、アルコキシシラン変性ポリエチレン系樹脂とし、これと上記の酸化防止剤、シラノール縮合触媒、その他の添加剤を同一押出機の胴部の最後の部分で均一に加熱混練し、ダイより押出し、水架橋性ポリエチレン絶縁層とし、その後水(高温の水蒸気又は温水、熱水)と反応させることにより形成される。
上記の方法は、モノシル法(Monosil process)といわれ、この方法自体は公知の方法であり、特公昭58−25583号公報に詳細に説明されている。
【0045】
上記ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体、直鎖状超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体、メタロセン触媒によって製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0046】
上記不飽和アルコキシシランとしては、一般式:
RR’SiY2
(式中、Rは、ポリエチレン系樹脂中に発生した遊離ラジカルと反応性を有する脂肪族不飽和炭化水素基またはヒドロカーボンオキシ基、Yはアルコキシ基、R’は水素原子またはオレフィン性不飽和基を含まない一価の炭化水素基を表す。)
で表されるアルコキシシラン化合物である。式中、Rの脂肪族不飽和炭化水素基としては、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基またはシクロペンタジエニル基が挙げられ、ビニル基が特に好ましい。Yは、例えばメトキシ基、エトキシ基またはブトキシ基が挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランは、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランである。
不飽和アルコキシシランの使用量は、ポリエチレン系樹脂100重量部を基準として0.5〜20重量部が好ましい。
【0047】
上記有機過酸化物としては例えば、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン−3等が使用される。有機過酸化物の使用量はポリエチレン系樹脂100重量部を基準として0.01〜4.0重量部が好ましい。
【0048】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、酸化防止剤の使用量は、ポリエチレン系樹脂100重量部を基準として、0.001〜5重量部程度である。
【0049】
上記シラノール縮合触媒は、シリコーンのシラノール間の脱水縮合を促進する触媒として使用されるものであり、その例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオリテート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、カプリル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ−イソプロピルチタン−エチルアミン、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、ピリジン等が挙げられる。このシラノール縮合触媒の配合量は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部程度であり、0.005〜5重量部が好ましい。
【0050】
なお、ポリエチレン系樹脂に不飽和アルコキシシラン及び/又は有機過酸化物を予め含浸させたもの、ポリエチレン系樹脂に酸化防止剤及び/又はシラノール縮合触媒を予め含浸させたもの等から選択して絶縁層押出機に投入してもよい。
【0051】
本発明で用いる水架橋ポリエチレン絶縁層の他の形成方法としては、不飽和アルコキシシラングラフト水架橋性ポリエチレン組成物を他の押出機で上記したモノシル方法又は2工程Sioplas方法(不飽和アルコキシシランをグラフトしたポリエチレン系樹脂を押出機で製造し、これに酸化防止剤、カーボンブラック、シラノール縮合触媒等を直接配合するか、マスターバッチとして配合した水架橋性ポリエチレン樹脂組成物の製法)で準備し絶縁層押出機に投入し、被覆する方法がある。上記の水架橋ポリエチレン絶縁層の形成方法は内部半導電層、水架橋ポリエチレン層及び外部半導電層を、順次押出被覆してもよいし、又は二層又は三層を同時押出し被覆(以降、コモン三層押出と略称することもある。)モノシル方法と三層同時押出方法を併用した場合が、コストが低く最も品質のよい水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルが得られる。本発明の密着性半導電性水架橋性樹脂組成物は上記した水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの各種製造方法で得られた電力ケーブルの外部半導電層として有効であるが、特に三層同時押出方法による電力ケーブルにおいて、最も効果を発現する。
【0052】
4.外部半導電層
本発明で用いられる外部半導電層は、絶縁層を水架橋ポリエチレンで構成した電力ケーブルの外部半導電層として必要な下記の条件を満たす樹脂組成物であれば何でもよい。
(1)外部半導電層用樹脂組成物は半導電性で、体積固有抵抗値が100Ω・cm以下。
(2)電力ケーブルを屈曲したり、ヒートサイクルをかけたとき、水架橋ポリエチレン絶縁層との部分的剥離や空隙が発生しないための柔軟性、伸びを維持するために、伸び率が100%以上。
(3)水架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面が平滑であり、微小な突起がない。
(4)210〜250℃の高温で押出される水架橋ポリエチレン絶縁層と同様の高温での押出加工が可能。
(5)外部半導電層を引き剥がすとき、外部半導電層自体が弱い引張力で切断しないために、引張強度が10MPa以上。
(6)耐寒性がある。
(7)外部半導電層を水架橋ポリエチレン絶縁層から剥離するとき、ナイフで外部半導電層が比較的弱い力で切れ目が入れられ、水架橋ポリエチレン層を傷つけない程度に容易に切断作業ができ、かつ容易に剥離でき、剥離した後の水架橋ポリエチレン層の表面に残渣や傷が残らないために、水架橋ポリエチレン絶縁層との界面間の剥離強度が4kg/0.5inch以下。
(8)有機過酸化物による架橋が行われなくとも120℃の加熱変形に耐える耐熱性のために、120℃の加熱変形率が40%以下。
【0053】
上記した外部半導電層用半導電性樹脂組成物としては、本発明の出願人が先に特許出願した特願平11−120937号に詳細に説明されており、下記(i)〜(n)成分からなる剥離性半導電性樹脂組成物が特に望ましい。
(i)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部
(j)メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cm3の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体55〜200重量部
(k)メルトマスフローレート0.5〜30.0g/10分、密度0.900〜0.920g/cm3のポリプロピレン5〜50重量部
(l)下記の式(A)
【0054】
【化7】
(式中、R1は脂肪族不飽和炭化水素基、R2は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、0≦x<1、0.5<y<3、1<x+y<3、0<a≦1、0.5≦b≦3である。)
で表わされるオルガノポリシロキサン1.0〜50重量部
(m)カーボンブラック10〜350重量部
(n)有機過酸化物0〜2.0重量部
【0055】
5.ジャケット層
本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルのジャケット層は、通常ポリ塩化ビニル樹脂組成物を外部半導電層上に押出被覆して形成される。ジャケット層の形成は、内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層及び外部半導電層をタンデム方式押出しやコモン三層押出して、その後その上にポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出被覆して形成する。
【0056】
6.水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル
本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルは、導体上に内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程により作ることができる。これには、上記内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物及び水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を二層同時押出装置により二層同時に押出被覆し、次いで外部半導電性樹脂組成物を被覆し、水蒸気または熱水と接触させて水架橋反応を起こさせ水架橋ポリエチレン絶縁層を形成させるタンデム方式、あるいは上記内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を三層同時押出装置により三層同時に押出被覆し、水蒸気または熱水と接触させて水架橋反応を起こさせ水架橋ポリエチレン絶縁層を形成させるコモン三層押出しで被覆し、その後ジャケット層を押出被覆することによってつくられる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例における試験方法は以下の通りである。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部部半導電層との界面を目視で判断した。
(2)内部半導電層の加熱変形率:内部半導電層の120℃での耐熱性をJISC3005の加熱変形試験法に準拠して、下記の方法で測定した。
(イ)試験片の作製
内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物を220℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2.0mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得て、これを幅15mm、長さ30mmに打ち抜き、試験片とした。
(ロ)測定方法
径5mmの半円状の棒の半円部に試験片を載せ、試験片の上に平行板を重ね、120℃のオーブン中に入れ30分間加熱した後、2kgの圧力を平行板の上から加え30分経過後、試験片の厚さを測定して、厚さの減少率を測定した。
(3)内部半導電層の密着性テスト:下記の方法で行った。
(イ)試験片の作製
水架橋性ポリエチレン樹脂組成物を220℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ1.5mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得た。一方、内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物を200℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2.0mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得た。両シートを180℃の温度、15MPaの圧力で一体化し、3mmのシートとし、80℃、水蒸気中で24時間水架橋を行った。この二層シートから幅12.7mm、長さ120mmの試験片を打ち抜き試験片とした。
(ロ)試験方法
引張試験機を用い、23℃において200mm/分の引張速度で密着試験を行い、内部半導電層を水架橋ポリエチレン層に対し180℃の角度で引き剥すときの力を密着強度(kg/0.5inch)とした。
(4)内部半導電層の引張強度:内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物を200℃で加熱混練し、熱プレス成形機で厚さ2.0mm、長さ150mm、幅180mmのシートを得て、試験片とし、JIS K−6760により引張強度を測定した。
(5)内部半導電層の伸び:引張強度に用いた試験片を用いJIS K−6760により伸びを測定した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:水架橋ポリエチレン絶縁層から試料を取り、110℃のキシレン中に24時間浸漬し、抽出残渣をゲル分率とした。
(7)押出加工性:内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物のメルトマスフローレートをメルトインデクサーで温度190℃、荷重21.6kgの条件でメルトマスフローレートを測定して評価した(JIS K−6760)。
(8)体積固有抵抗値:内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物の体積固有抵抗値をJIS K−6723の方法で測定した。
【0058】
実施例1
(A)内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物の調製
次の(a)〜(g)からなる内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物を調製した。
(a)成分:酢酸ビニル含有量28重量%、メルトマスフローレート20.0g/10分、密度0.938g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が300,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.0%のシリコーンガムストック5重量部
(c)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)30重量部
(d)成分:ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 A−151)2重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)0.3重量部
(f):ジブチル錫ジラウリレート0.2重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)及び(c)成分をバンバリーミキサーで180℃、10分間加熱混練し、これに(d)、(e)、(f)及び(g)成分を添加し、更に230℃、5分間加熱混練し、ビニルトリエトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に長さ3mm、直径3mmのペレットとした。このペレットは、調製後直ちに下記(E)工程で使用した。
【0059】
(B)水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物の調製
表面積300m2/g、平均粒径70μm、細孔直径100μmの多孔質シリカ担体に三酸化クロム、チタン酸テトライソプロピル、(NH4)2SiF6等を担持させた重合触媒を用い、ユニポール法気相流動床中で、エチレン90重量部、1−ブテン10重量部からなるモノマー流体を流動床下方より上方に向けて流動させ、温度90℃、圧力2.5MPa、Gmf5の条件で重合させた。表面積1000cm2/g、嵩密度0.4g/cm3、平均粒径0.8mmのグラニュラー状物を得た。これはエチレン−ブテン−1共重合体からなり、密度は0.920g/cm3、メルトマスフローレートは0.8g/10分であった。
上記グラニュラー状の直鎖状低密度エチレン−ブテン−1共重合体100重量部を温度60℃に予熱しておいたものと、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー製 NUCシランカップリング剤Y−9818)2重量部と、ジクミルパーオキシド(日本油脂製 パークミルD)0.1重量部を温度50℃に加熱したものとを、リボンブレンダーに投入した。温度60℃に加熱しながら30分間混合し、次いで、密閉容器中で温度60℃に保持しながら2時間静置し、不飽和アルコキシシランおよび有機過酸化物を含浸させた直鎖状低密度エチレン−ブテン−1共重合体を得た。
【0060】
一方、密度0.920g/cm3、メルトマスフローレート0.8g/10分の高圧法低密度ポリエチレン(日本ユニカー製 NUCポリエチレン)100重量部に、ジブチル錫ジウラウレート1重量部およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)2重量部を混合し、バンバリーミキサーで温度150℃、10分間混練してから造粒してシラノール縮合触媒および酸化防止剤等を配合したポリエチレンを得た。
上記不飽和アルコキシシランおよび有機過酸化物を含浸させた直鎖直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体95重量%に、上記シラノール縮合触媒および酸化防止剤等を配合したポリエチレン5重量%を加え、混合し、水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物とした。
【0061】
(C)外部半導電層用樹脂組成物
次の(i)〜(o)からなる外部半導電層用樹脂組成物を調製した。
(i)成分:酢酸ビニル含有量28重量%、メルトマスフローレート20.0g/10分、密度0.938g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部
(j)成分:メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.922g/cm3の気相法低圧法により製造した直鎖状エチレン−ブテン−1共重合体70重量部
(k)成分:メルトマスフローレート0.9g/10分、密度0.900g/cm3のポリプロピレン20重量部
(l)成分:23℃における粘度が300,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.0%のシリコーンガムストック5重量部
(m)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)30重量部
(n)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)0.3重量部
(o)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
【0062】
(D)コモン三層押出装置の準備
ダイプレートにそれぞれ150メッシュ、250メッシュ、120メッシュのスクリーンパックを設置した3台の押出機を準備し、これらを連結することにより、内部半導電層押出機、絶縁層押出機および外部半導電層押出機となるように順次配置したコモン三層クロスヘッドを有する押出装置とした。
【0063】
(E)水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造
上記(A)〜(C)で調製した内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン樹脂組成物及び外部半導電層用樹脂組成物の各成分をそれぞれ三層コモン押出装置の内部半導電層押出機、水架橋ポリエチレン層押出機及び外部半導電層押出機に供給した。
これらの各成分を、内部半導電層押出機では220℃、水架橋ポリエチレン層押出機では220℃、外部半導電層押出機では220℃で加熱混練した後、それぞれ三層コモンクロスヘッドのダイスより硬銅撚線導体上に内部半導電層の厚みが1mm、水架橋ポリエチレン絶縁層の厚みが4mm、外部半導電層の厚みが1mmとなるように同時に押出した。
次いで、80℃の水蒸気に24時間さらし、水架橋反応を完結し、乾燥後、ポリ塩化ビニルコンパウンドを厚み3mmとなるように被覆しジャケット層とし、本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを製造した。
【0064】
本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの性能評価結果を次に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面は、平滑であり直径300μmを超える突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.8%であり耐熱性は十分であった。
(3)内部半導電層と水架橋ポリエチレン絶縁層との密着強度:5.7kg/0.5inchであり、密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:引張強度は、16.2MPaであり、機械的強度が十分あることを示している。
(5)内部半導電層の伸び:伸びは、495%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:ゲル分率は、62%であり、十分水架橋しており、耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、37g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:体積固有抵抗値は、32Ω・cmであり適切な数値であった。
【0065】
実施例2
(A)内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物の調製
次の(a)〜(g)からなる内部半導電層用水架橋性樹脂組成物を、下記の方法で調製した。
(a)成分:エチルアクリレート含有量32重量%、メルトマスフローレート10g/10分、密度0.941g/cm3のエチレン−エチルアクリレート共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が150,000cStで、メチルビニルシリコーン含量0.7%のシリコーンガムストック45重量部
(c)成分:ファーネスブラック(MMMカーボン社製 エンサコ250G)70重量部
(d)成分:ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 A−151)3重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)1.2重量部
(f)成分:ジブチル錫ジラウリレート0.15重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)、(c)及び(f)成分をバンバリーミキサーで180℃、10分間加熱混練し、これに(d)、(e)及び(g)成分を添加し、更に230℃、5分間加熱混練し、(e)のビニルトリエトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に長さ3mm、直径3mmのペレットとした。このペレットは、調製後直ちに下記(E)工程で使用した。
【0066】
(B)水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物の調製
メルトマスフローレートが2.0g/10分、密度0.922g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン100重量部に、ジクミルパーオキシド0.1重量部及びビニルトリメトキシシラン2重量部を加え、230℃で押出機から押出してシラン変性ポリエチレンを製造した。
一方、メルトマスフローレートが3.0g/10分、密度が0.917g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン100重量部に、ジブチル錫ジラウレート1重量部、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)5重量部を配合した触媒マスターバッチを調製した。シラン変性ポリエチレンと触媒マスターバッチとを100:5の割合で混合して水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物とした。
【0067】
(C)外部半導電層用樹脂組成物
次の(i)〜(o)からなる外部半導電層用樹脂組成物を調製した。
(i)成分:エチルアクリレート含有量32重量%、メルトマスフローレート10g/10分、密度0.941g/cm3のエチレン−エチルアクリレート共重合体100重量部
(j)成分:メルトマスフローレート1.8g/10分、密度0.935g/cm3、シングルサイト触媒を用いて溶液法でつくった直鎖状エチレン−ヘキセン−1共重合体150重量部
(k)成分:メルトマスフローレート2.5g/10分、密度0.90g/cm3、エチレン5重量%含有のプロピレン−エチレン共重合体40重量部
(l)成分:23℃における粘度が150,000cStで、メチルビニルシリコーン含量0.7%のシリコーンガムストック45重量部
(m)成分:ファーネスブラック(MMMカーボン社製 エンサコ250G)130重量部
(n)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
【0068】
(D)各層押出装置の準備
ダイプレートにそれぞれ150メッシュ、250メッシュ、120メッシュのスクリーンパックを設置した3台の押出機を準備し、それぞれを内部半導電層押出機、絶縁層押出機および外部半導電層押出機とした。
【0069】
(E)水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造
上記(A)〜(C)で調製した内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン樹脂組成物及び外部半導電層用樹脂組成物の各成分をそれぞれ三層コモン押出装置の内部半導電層押出機、水架橋ポリエチレン層押出機及び外部半導電層押出機に供給した。
これらの各成分を、内部半導電層押出機では220℃、水架橋ポリエチレン層押出機では220℃、外部半導電層押出機では150℃で加熱混練した後、それぞれの押出機のクロスヘッドのダイスより硬銅撚線導体上に内部半導電層の厚みが1mm、水架橋ポリエチレン絶縁層の厚みが4mm、外部半導電層の厚みが1mmとなるように同時に被覆した。
次いで、80℃の水蒸気に24時間さらし、水架橋反応を完結し、乾燥後、ポリ塩化ビニルコンパウンドを厚み3mmとなるように被覆しジャケット層とし、本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを製造した。
【0070】
本発明の水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの性能評価結果を次に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面は、平滑であり直径300μmを超える突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.6%であり耐熱性は十分であった。
(3)内部半導電層と水架橋ポリエチレン絶縁層との密着強度:密着強度は、5.3kg/0.5inchであり密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:引張強度は、14.5MPaであり、機械的強度が十分であることを示している。
(5)内部半導電層の伸び:伸びは、435%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:ゲル分率は59%であり、十分水架橋しており、耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、32g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:体積固有抵抗値は、36Ω・cmであり適切な数値であった。
【0071】
実施例3
実施例1の内部半導電層用密着性半導電性水架橋性樹脂組成物に代えて、下記の(a)〜(g)からなる樹脂組成物を用い、その調製方法を下記の方法によった以外は、実施例1と同様な実験を行った。
(a)成分:ブチルアクリレート含有量17重量%、メルトマスフローレート5.0g/10分、密度0.937g/cm3のエチレン−ブチルアクリレート共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が3,000cStで、メチルビニルシリコーン含量0.8%のジメチルポリシロキサンオイル30重量部
(c)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)20重量部
(d)成分:ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 A−151)5重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)1.8重量部
(f)成分:ジブチル錫ジラウリレート1.2重量部
(g)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)、(c)及び(f)成分をL/D=32、φ=75mmの単軸押出機のホッパーに供給し、スクリューの外側を同軸に囲むシリンダー(Cylinderの頭文字Cと略称する。)を加熱し、スクリューで混練した。その際、シリンダーは、5つの部分から構成されており、押出機入口から出口にかけてシリンダーの各部分を順次C1、C2、C3、C4、C5と略称すると、C1、C2、C3、C4、C5部分の温度をそれぞれ160℃、180℃、200℃、220℃、220℃とし、C2部分において、(d)、(e)及び(g)を供給し、ビニルトリエトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に3mm、直径3mmのペレットとした。
【0072】
その結果を以下に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と外部半導電層との界面は、平滑であり直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.1%であり耐熱性は十分であった。
(3)密着強度:5.6kg/0.5inchであり、密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:15.2MPaであり、機械的強度が十分であることを示した。
(5)内部半導電層の伸び:479%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:62%であり、十分水架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、45g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:45Ω・cmであり適切な値であった。
【0073】
実施例4
実施例1の内部半導電層用水架橋性樹脂組成物に代えて、下記の(a)〜(h)からなる樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様な実験を行った。
(a)成分:酢酸ビニル含有量45重量%、メルトマスフローレート20.0g/10分、密度0.945g/cm3のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が800,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.0%のシリコーンガムストック5重量部
(c)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)80.0重量部
(d)成分:ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 A−151)7重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)2.0重量部
(f)成分:ジブチル錫ジラウリレート5重量部
(g)成分:メルトマスフローレート0.8g/10分、密度0.922g/cm3の気相法低圧法により製造した直鎖状エチレン−ブテン−1共重合体180重量部
(h)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)、(c)及び(g)成分をバンバリーミキサーで180℃、10分間加熱混練し、これに(d)、(e)、(f)及び(h)成分を添加し、更に230℃、5分間加熱混練し、ビニルトリエトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に長さ3mm、直径3mmのペレットとした。
【0074】
その結果を以下に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面は、平滑であり直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.2%であり耐熱性は十分であった。
(3)密着強度:5.4kg/0.5inchであり、密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:12.3MPaであり、機械的強度が十分であることを示した。
(5)内部半導電層の伸び:410%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:62%であり、十分水架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、28.0g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:32Ω・cmであり適切な値であった。
【0075】
実施例5
実施例1の内部半導電層用水架橋性樹脂組成物に代えて、下記の(a)〜(h)からなる樹脂組成物を用い、その調製方法を下記の方法によった以外は、実施例2と同様な実験を行った。
(a)成分:エチルアクリレート含有量35重量%、メルトマスフローレート15.0g/10分、密度0.941g/cm3のエチレン−エチルアクリレート共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が100,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.5%のシリコーンガムストック45重量部
(c)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)20.0重量部
(d)成分:ビニルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 A−151)2重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)1.3重量部
(f)成分:ジブチル錫ジラウリレート0.8重量部
(g)成分:メルトマスフローレート10.0g/10分、密度0.930g/cm3のメタロセン触媒により製造した直鎖状エチレン−オクテン−1共重合体20重量部
(h)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)、(c)及び(g)成分をバンバリーミキサーで180℃、10分間加熱混練し、これに(d)、(e)、(f)及び(h)成分を添加し、更に230℃、5分間加熱混練し、ビニルトリエトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に長さ3mm、直径3mmのペレットとした。
【0076】
その結果を以下に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面は平滑であり、直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は1.3%であり耐熱性は十分であった。
(3)密着強度:5.6kg/0.5inchであり、密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:14.8MPaであり、機械的強度が十分であることを示した。
(5)内部半導電層の伸び:475%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:62%であり、十分水架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、38.0g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:42Ω・cmであり適切な値であった。
【0077】
実施例6
実施例1の内部半導電層用水架橋性樹脂組成物に代えて、下記の(a)〜(i)からなる樹脂組成物を用い、その調製方法を下記の方法によった以外は、実施例1と同様な実験を行った。
(a)成分:ブチルアクリレート含有量17重量%、メルトマスフローレート7.0g/10分、密度0.932g/cm3のエチレン−ブチルアクリレート共重合体100重量部
(b)成分:23℃における粘度が300,000cStで、メチルビニルシリコーン含量1.2%のシリコーンガムストック5重量部
(c)成分:ケッチェンブラックEC(三菱化学製)75重量部
(d)成分:ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー製 A−171)3重量部
(e)成分:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン(日本油脂製 パーヘキシン25B)1.2重量部
(f)成分:ジブチル錫ジラウリレート0.1重量部
(g)成分:メルトマスフローレート8.0g/10分、密度0.920g/cm3のメタロセン触媒により製造した直鎖状エチレン−ヘキセン−1共重合体5重量部
(h)成分:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカル社製 イルガノックス1010)0.3重量部
調製方法:(a)、(b)、(c)及び(g)成分をバンバリーミキサーで180℃、10分間加熱混練し、これに(d)、(e)、(f)及び(h)成分を添加し、更に230℃、5分間加熱混練し、ビニルトリメトキシシランを樹脂成分にグラフトし、各成分を均一に配合し、更に長さ3mm、直径3mmのペレットとした。
【0078】
その結果を以下に示す。
(1)界面平滑性:水架橋ポリエチレン絶縁層と内部半導電層との界面は、平滑であり直径300μm以上の突起は認められなかった。
(2)内部半導電層の加熱変形率:厚さの減少率は、0.8%であり耐熱性は十分であった。
(3)密着強度:5.0kg/0.5inchであり、密着性は十分であった。
(4)内部半導電層の引張強度:11.8MPaであり、機械的強度が十分であることを示した。
(5)内部半導電層の伸び:400%であり、ケーブルを曲げたとき、十分曲げに追随し得ることを示した。
(6)水架橋ポリエチレン絶縁層のゲル分率:62%であり、十分水架橋しており耐熱性は十分であった。
(7)押出加工性:メルトマスフローレートは、25g/10分であり押出加工性は十分であった。
(8)体積固有抵抗値:28Ω・cmであり適切な値であった。
【0079】
比較例1
実施例1において、(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、酢酸ビニル含有量8.0%のEVAに代替した以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の柔軟性伸びが悪化した。
【0080】
比較例2
実施例1において、(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、酢酸ビニル含有量55%のEVAに代替した以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の引張強度が弱くなり、内部半導電層の機械的強度が不十分であった。
【0081】
比較例3
実施例1において、(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、メルトマスフローレートが0.8g/10分のEVAに代替した以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の押出加工性、柔軟性、伸び等が不十分であった。
【0082】
比較例4
実施例1において、(a)のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を、メルトマスフローレートが120g/10分のEVAに代替した以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の引張強度、耐熱性が不十分であった。
【0083】
比較例5
実施例1において、(b)のシリコーンガムストックの使用量を0.3重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の平面平滑性が不十分であった。
【0084】
比較例6
実施例1において、(b)のシリコーンガムストックの使用量を55重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の表面の平滑性が悪化し、引張強度が不十分であった。
【0085】
比較例7
実施例1において、(c)のケッチェンブラックの使用量を4重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、外部半導電層の体積固有抵抗値が300Ω・cmであった。
【0086】
比較例8
実施例1において、(c)のケッチェンブラックの使用量を450重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の引張強度、加工性、柔軟性、伸びが不十分であった。
【0087】
比較例9
実施例1において、(d)のビニルトリエトキシシランの使用量を0.4重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の耐熱性と引張強度が不十分であった。
【0088】
比較例10
実施例1において、(d)のビニルトリエトキシシランの量を18重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の表面に300μm以上の多数の突起が発生し、電力ケーブルの寿命が短くなった。
【0089】
比較例11
実施例1において、(e)の有機過酸化物の量を0.001重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の耐熱性と引張強度が不十分であった。
【0090】
比較例12
実施例1において、(e)の有機過酸化物の量を10重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の表面に多数の突起が発生し、平滑な表面が得られなかった。
【0091】
比較例13
実施例1において、(f)のジブチル錫ジラウリレートの量を0.005重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の耐熱性と引張強度が不十分であった。
【0092】
比較例14
実施例1において、(f)のジブチル錫ジラウリレートの量を50重量部に代えた以外は、実施例1と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の電気特性が悪くなり、又内部半導電層の表面に300μm以上の多数の突起が発生し、電力ケーブルの寿命が短くなった。
【0093】
比較例15
実施例4において、(g)のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトマスフローレートが0.08g/10分のものに代替した以外は、実施例4と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の加工性が悪化した。
【0094】
比較例16
実施例4において、(g)のエチレン−ブテン−1共重合体を、密度が0.948g/cm3のものに代替した以外は、実施例4と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の柔軟性が悪化した。
【0095】
比較例17
実施例4において、(g)のエチレン−ブテン−1共重合体の使用量を220重量部に代えた以外は、実施例4と同様な実験を行ったところ、内部半導電層の密着性、柔軟性、伸び、カーボンブラックの充填性が悪化した。
【0096】
【発明の効果】
本発明は、水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物の構成において、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等から選択された1種あるいは1種以上のエチレン系共重合体、オルガノポリシロキサン、任意樹脂成分としてのエチレン−α−オレフィン共重合体等を樹脂成分として用い、これらの樹脂成分に不飽和アルコキシシラン、有機過酸化物、カーボンブラック、シラノール触媒を配合しているので、内部半導電層として被覆されるときは、水架橋され適切な半導電性、引張強度、密着性、加工性、界面平滑性、耐寒性、耐熱性等に優れ、特に密着性、耐熱性及び引張強度が従来品と比較して優れている。
Claims (7)
- 導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる半導電性水架橋性樹脂組成物であって、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分からなり、水架橋される内部半導電層の耐熱性、密着性、及び高温での押出加工性を向上させたことを特徴とする密着性半導電性水架橋性樹脂組成物。
(a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種あるいは1種以上100重量部
(b)下記の式(A)
(c)カーボンブラック7.0〜350重量部
(d)不飽和アルコキシシラン0.5〜15重量部
(e)有機過酸化物0.05〜3.0重量部
(f)シラノール縮合触媒0.01〜15重量部 - 導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる半導電性水架橋性樹脂組成物であって、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)成分からなり、水架橋される内部半導電層の耐熱性、密着性、及び高温での押出加工性を向上させたことを特徴とする密着性半導電性水架橋性樹脂組成物。
(a)(I)酢酸ビニル含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体、(II)エチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−エチルアクリレート共重合体、並びに(III)ブチルアクリレート含有量10〜50重量%、メルトマスフローレート1.0〜100.0g/10分のエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれた1種又は1種以上100重量部
(b)下記の式(A)
(c)カーボンブラック7.0〜350×(1+Q/100)重量部
(d)不飽和アルコキシシラン0.5〜15×(1+Q/100)重量部
(e)有機過酸化物0.05〜3.0×(1+Q/100)重量部
(f)シラノール縮合触媒0.01〜15×(1+Q/100)重量部
(g)メルトマスフローレート0.1〜30.0g/10分、密度0.870〜0.944g/cm3の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体0〜200重量部(但し、Qは(g)成分の配合量(重量部)である。) - 請求項1の(a)及び(b)からなる樹脂組成物と(c)のカーボンブラック成分を150〜200℃で加熱混練し、これに(d)の不飽和アルコキシシラン、(e)の有機過酸化物及び(f)のシラノール縮合触媒を配合し、次いで、200〜250℃で加熱混練し不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトさせて作った導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物。
- 請求項2の(a)、(b)及び(g)からなる樹脂組成物と(c)のカーボンブラック成分を150〜200℃で加熱混練し、これに(d)の不飽和アルコキシシラン、(e)の有機過酸化物及び(f)のシラノール縮合触媒を配合し、次いで、200〜250℃で加熱混練し不飽和アルコキシシランを樹脂成分にグラフトさせて作った導体上に内部から外部に向けて内部半導電層、水架橋ポリエチレン絶縁層、外部半導電層及びジャケット層が形成されている水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの内部半導電層として用いる密着性半導電性水架橋性樹脂組成物。
- 導体上に請求項1乃至4のいずれかに記載の内部半導電層用密着性内部半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程は、上記内部半導電層用樹脂組成物及び水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物を被覆する工程が二層押出装置により行われ、かつ、該水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物は、モノシル方式で絶縁層押出機中で調製され、次いで上記外部半導電性樹脂組成物を被覆する工程を行うことを特徴とする水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法。
- 導体上に請求項1乃至4のいずれかに記載の内部半導電層用密着性内部半導電性水架橋性樹脂組成物、水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物及び外部半導電性樹脂組成物を順次被覆する工程が三層同時押出装置により行われ、かつ、該水架橋性ポリエチレン絶縁層用樹脂組成物は、モノシル方式で三層同時押出装置の絶縁層押出機中で調製されることを特徴とする水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルの製造方法。
- 請求項5あるいは6に記載の方法によって製造される水架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル。
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